説明

受信機およびナビゲーション装置

【課題】初めての地域でも、その地理的条件を基に適切な受信パラメータを設定することができる受信機およびこれを備えたナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】放送局からの電波を受信する受信部3と、自車の位置を検出する位置情報検出部4と、位置情報検出部4により検出された自車の位置の地理的条件を解析する位置情報解析部51と、受信部3の受信特性を決定する受信パラメータの地理的条件に対応する補正情報を記憶するデータ記憶部53と、位置情報解析部51による解析で得られた地理的条件に対応する補正情報をデータ記憶部53から読み出し、当該補正情報を用いて当該地理的条件に対応する受信パラメータを算出する受信パラメータ計算部52と、受信パラメータ計算部52により算出された受信パラメータを受信部に設定する受信パラメータ設定部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両などの移動体に搭載する受信機およびこれを備えたナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信機の受信特性に関する受信パラメータは所定値に設定する場合が多かった。例えば、自動音質制御(ATC)回路および自動分離制御(ASC)回路の受信パラメータは、平均的に適正とされる所定値に固定される。このため、車両の移動に伴って地理的条件が変わり、それに伴い電波環境が変化すると、予め設定した受信パラメータでは対応しきれず、良好な受信ができなくなることがあった。
上記不具合に対して、特許文献1の車載受信装置では、ATC回路およびASC回路のそれぞれに対して、地域に適した受信特性を設定するパラメータを予めメモリに記憶しておき、自車の現在位置を含む地域のパラメータを適宜読み出して受信機の受信特性を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−241907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に代表される従来の技術では、受信パラメータを予め求めておいた地域以外を走行した場合、ATC回路およびASC回路に適切な受信パラメータを設定することができないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、初めての地域でも、その地理的条件を基に適切な受信パラメータを設定することができる受信機およびこれを備えたナビゲーション装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る受信機は、移動体に搭載または保持される受信機において、放送局からの電波を受信する受信部と、移動体の位置を検出する位置情報検出部と、位置情報検出部により検出された移動体の位置の地理的条件を解析する解析部と、受信部の受信特性を決定する受信パラメータの地理的条件に対応する補正情報を記憶する記憶部と、解析部による解析で得られた地理的条件に対応する補正情報を記憶部から読み出し、当該補正情報を用いて当該地理的条件に対応する受信パラメータを算出する計算部と、計算部により算出された受信パラメータを受信部に設定する設定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、初めての地域でも、その地理的条件を基に適切な受信パラメータを設定することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る受信機を搭載したナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る受信機による受信パラメータ設定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る受信機を搭載したナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。図1において、実施の形態1に係るナビゲーション装置は、車両などの移動体に搭載されるナビゲーション装置であって、受信機1およびナビゲーション装置部2を備える。受信機1は、実施の形態1に係る受信機であり、受信部3、位置情報検出部4および受信パラメータ制御部5を備える。また、ナビゲーション装置部2は、受信機1との間で位置情報検出部4を共用するナビゲーション処理を行う構成であって、ナビゲーション処理部21および地図データベース(DB)22を備える。
【0010】
ナビゲーション処理部21は、位置情報検出部4によって検出された自装置を搭載する車両(自車)の位置情報、目的地の入力情報および地図DB22の地図データを用いて、ルート探索、ルート誘導および地図表示などのナビゲーション処理を行う処理部である。
地図DB22は、ナビゲーション処理や受信パラメータ設定で利用される地図データを格納するデータベースである。なお、地図データには、地形図データ、住宅地図データ、道路ネットワークなどがある。
【0011】
受信部3は、放送局から送信された放送波を受信する受信部であって、受信復調部31および受信パラメータ設定部32を備える。
受信復調部31は、アンテナで受信された放送波信号を復調する機能構成部である。
受信パラメータ設定部32は、受信部3の受信特性を決定する受信パラメータを、受信復調部31を含む受信部3に設定する設定部である。
なお、受信パラメータとは、受信部3の受信特性を決定するパラメータであり、RF(高周波)ゲイン係数、マルチパスフェージングを抑制する適応フィルタのフィルタ係数、IF(中間周波数)帯域フィルタのフィルタ係数、ハイブレンドの割合、ハイカットフィルタのフィルタ係数、オーディオフィルタのフィルタ係数、ソフトミュートのかけ方、ノイズキャンセラの強度、AGC(自動利得制御)時定数などである。
【0012】
位置情報検出部4は、自車の位置情報を検出する位置情報検出部であり、例えばGPS(Global Positioning System)衛星から受信したGPS電波の解析結果から自車の位置情報(緯度経度)を検出する。
【0013】
受信パラメータ制御部5は、自車が位置する地域の地理的条件に対応した受信パラメータを算出して受信機1に設定する制御部であって、位置情報解析部51、受信パラメータ計算部52およびデータ記憶部53を備える。
【0014】
位置情報解析部51は、位置情報検出部4が検出した自車の位置情報と、地図DB22の地図データとを用いて、自車が位置する地域の地理的条件を解析する解析部である。
例えば、自車位置から放送局までの距離、自車の進行方向を基準とした放送局の方向、および放送局の送信電力を求める。
また、地図データから自車が山の近くまたは山間を走行している場合、自車位置から山までの距離、自車の進行方向を基準とした山の方向、自車と放送局と山との相対的な位置関係を地理的条件として求める。
さらに、地図データから自車が市街地を走行しているか、郊外を走行しているかを判別し、建物の密集度を地理的条件として求める。
【0015】
受信パラメータ制御部5は、位置情報解析部51が解析した自車が位置する地域の地理的条件と、データ記憶部53が記憶する地理的条件ごとの受信パラメータの補正情報とを用いて、自車が位置する地域の地理的条件に合致した受信パラメータの値を算出する計算部である。
【0016】
データ記憶部53は、地理的条件ごとの受信パラメータの補正情報を示すテーブルデータを記憶する記憶部である。受信パラメータの補正情報とは、予め定めた地理的条件で適切な受信特性を与える上記受信パラメータの傾向を示す情報である。
例えば、地理的条件“自車位置から放送局までの距離”に対応するRFゲイン係数の補正情報には、自車位置から放送局までの距離が所定の閾値よりも大きければ、RFゲイン係数の値を大きくするように補正し、上記閾値以下であれば、RFゲイン係数を小さくするように補正することが規定される。
地理的条件“自車周辺の建物の密集度”や“自車と放送局と山との相対的な位置関係”に対応するマルチパスフェージングを抑制する適応フィルタのフィルタ係数の補正情報には、例えば、マルチパスフェージングの影響が強い場合、これを抑制する適応フィルタのフィルタ係数を大きくするように補正し、弱い場合は、適応フィルタのフィルタ係数を小さくするように補正することが規定される。
同様に、所定の地理的条件に対応付けて、IF帯域フィルタのフィルタ係数、ハイブレンドの割合、ハイカットフィルタのフィルタ係数、オーディオフィルタのフィルタ係数、ソフトミュートのかけ方、ノイズキャンセラの強度、およびAGC時定数の各補正情報を予め設定しておく。
【0017】
次に動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係る受信機による受信パラメータ設定処理の流れを示すフローチャートである。
まず、位置情報検出部4が、予め設定された走行距離ごとに自車の位置情報を検出する(ステップST1)。次に、位置情報解析部51は、位置情報検出部4が検出した自車の位置情報と、地図DB22の地図データとを用いて、自車が位置する地域における地理的条件を解析する。ここで、位置情報解析部51は、上述したように地理的条件として予め設定された条件内容で自車が位置する地域を解析する。
【0018】
続いて、受信パラメータ計算部52が、位置情報解析部51が解析した自車が位置する地域の地理的条件と、データ記憶部53が記憶する地理的条件ごとの受信パラメータの補正情報とを用いて、自車が位置する地域の地理的条件に合致した受信パラメータの値を算出する(ステップST2)。すなわち、受信パラメータ計算部52は、位置情報解析部51が求めた自車が位置する地域の地理的条件に基づいて、データ記憶部53から当該地理的条件に対応する受信パラメータの補正情報を取得し、受信部3に現在設定されている受信パラメータの値を補正して、自車が位置する地域の地理的条件に合致した受信パラメータを算出する。
【0019】
次いで、受信パラメータ設定部32が、受信パラメータ計算部52が算出した受信パラメータと、受信部3における現行の受信パラメータとの差が所定の閾値以上で変化したか否かを判定する(ステップST3)。
例えば、RFゲイン係数、IF帯域フィルタのフィルタ係数、ハイブレンドの割合、ハイカットフィルタのフィルタ係数、オーディオフィルタのフィルタ係数、ノイズキャンセラの強度、AGC時定数の補正後と現行との差を比較検討する。また、ソフトミュートのかけ方については、緩やかに掛けるか、急に掛けるかの変化などで規定以上の変化であるか否かを判定する。
【0020】
補正後の受信パラメータと現行の受信パラメータとの差が所定の閾値以上である場合(ステップST3;YES)、受信パラメータ設定部32は、受信パラメータ計算部52が算出した補正後の受信パラメータを、受信復調部31を含む受信部3に設定する(ステップST4)。一方、補正後の受信パラメータと現行の受信パラメータとの差が所定の閾値未満である場合(ステップST3;NO)には、ステップST1に戻り、上記処理を繰り返す。このように、自車が所定の走行距離を走行する度にその時点で自車が位置する地域の地理的条件に対応する受信パラメータが受信部3に設定される。
【0021】
なお、自車が位置する地域が複数の地理的条件に合致する場合、すなわち複数の地理的条件に対応する受信パラメータの補正情報がある場合は、受信パラメータ計算部52が、それぞれの地理的条件に対応する補正情報で当該受信パラメータの補正を行い、それらの値を荷重平均したものを補正後の受信パラメータとする。例えば、地理的条件ごとに重み付けを設定しておく。
【0022】
また、自車が所定の走行距離を走行する度に、地理的条件を解析する場合を示したが、所定の時間ごとに地理的条件を解析して受信パラメータを更新してもよい。
【0023】
以上のように、この実施の形態1によれば、放送局からの電波を受信する受信部3と、自車の位置を検出する位置情報検出部4と、位置情報検出部4により検出された自車の位置の地理的条件を解析する位置情報解析部51と、受信部3の受信特性を決定する受信パラメータの地理的条件に対応する補正情報を記憶するデータ記憶部53と、位置情報解析部51による解析で得られた地理的条件に対応する補正情報をデータ記憶部53から読み出し、当該補正情報を用いて当該地理的条件に対応する受信パラメータを算出する受信パラメータ計算部52と、受信パラメータ計算部52により算出された受信パラメータを受信部に設定する受信パラメータ設定部32とを備える。
このように構成することにより、初めての地域でも、その地理的条件を基に適切な受信パラメータを設定することができる。
【0024】
また、この実施の形態1によれば、ナビゲーション装置が、上記受信機1と、地図データを格納する地図DB22とを備え、位置情報検出部4が検出した自車の位置および地図DB22の地図データを用いて、ナビゲーション処理を行う。このように構成することにより、1つの位置情報検出部4を用いて、受信機1における受信パラメータの更新とナビゲーション装置部2におけるナビゲーション処理とを行うことができる。これにより、装置の簡素化を図ることができる。
【0025】
上記実施の形態1では、本発明に係るナビゲーション装置を、車載用のナビゲーション装置に適用した場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、車載用のみならず、携帯電話端末又は携帯情報端末(PDA;Personal Digital Assistance)に適用してもよい。また、車両、鉄道、船舶又は航空機等の移動体に、人が携帯して持ち込んで使用されるPND(Portable Navigation Device)等に適用してもよい。
【0026】
なお、本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 受信機、2 ナビゲーション装置部、3 受信部、4 位置情報検出部、5 受信パラメータ制御部、21 ナビゲーション処理部、22 地図DB、31 受信復調部、32 受信パラメータ設定部、51 位置情報解析部、52 受信パラメータ計算部、53 データ記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載または保持される受信機において、
放送局からの電波を受信する受信部と、
前記移動体の位置を検出する位置情報検出部と、
前記位置情報検出部により検出された前記移動体の位置の地理的条件を解析する解析部と、
前記受信部の受信特性を決定する受信パラメータの地理的条件に対応する補正情報を記憶する記憶部と、
前記解析部による解析で得られた前記地理的条件に対応する補正情報を前記記憶部から読み出し、当該補正情報を用いて当該地理的条件に対応する受信パラメータを算出する計算部と、
前記計算部により算出された受信パラメータを前記受信部に設定する設定部とを備えた受信機。
【請求項2】
請求項1記載の受信機と、
地図データを格納する地図データベースとを備え、
前記位置情報検出部により検出された前記移動体の位置、および前記地図データベースの地図データを用いて、ナビゲーション処理を行うナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9161(P2013−9161A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140585(P2011−140585)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】