説明

受信装置、フィードバック方法、及びプログラム

【課題】フィードバック対象であるチャネル推定結果のデータ量を少なくすることができる受信装置を提供する。
【解決手段】送信装置2から送信されたリファレンス信号を受信する受信部11、リファレンス信号を用いて、送受信間の各無線通信チャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部12と、チャネル推定値を逆フーリエ変換し、振幅と位相と遅延間隔を含む遅延プロファイルを生成する生成部13、遅延プロファイルのパス数を測定する測定部14、パス数がしきい値を超えているか判断する判断部15、チャネル推定結果を送信するフィードバック部17、パス数がしきい値を超えている場合に周波数領域のチャネル推定値をフィードバック部17に送信させ、パス数がしきい値を超えていない場合に遅延プロファイルをフィードバック部17に送信させる制御部18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リファレンス信号を用いたチャネル推定結果をフィードバックする受信装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のアンテナを介して空間多重により送信・受信を行う多入力多出力(MIMO:Multiple Input Multiple Output)方式の無線通信が行われている(例えば、特許文献1,2)。また、そのようなMIMO方式の無線通信における周波数領域でのチャネル推定に関する種々の方法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、そのようなMIMO方式の無線通信において、チャネル推定結果を送信側にフィードバックすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−338779号公報
【特許文献2】特開2005−328312号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M.K.Ozdemir,H.Arslan,「Channel estimation for wireless OFDM systems」、IEEE Communications Surveys&Tutorials,vol.9,no.2,p.18−48,2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、移動体無線通信システムにおいて、コンテンツダウンロードのような高速データ伝送の需要が高まってきている。これに対応するため、例えば、基地局、移動局間の距離の小さいフェムトセルやピコセルを設置し、基地局一つあたりの移動局収容数を減らすことによって、一回線あたりの伝送速度を高めることも行われている。さらに、複数のユーザに高速データ伝送を提供するために、マルチユーザMIMO技術も提案されている。
【0006】
FDD(Frequency Division Duplex)−OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式におけるマルチユーザMIMOの下り回線では、ほとんどの場合、受信局側でチャネル推定を行い、送信局側にチャネル推定結果をフィードバックする必要がある。特に、伝送速度を向上させるためには、より正確なチャネル推定結果のフィードバックが求められる。一方、そのチャネル推定結果のフィードバックは、無線リソースを消費することになり、そのことは、より正確なチャネル推定結果をフィードバックする場合に特に顕著となる。したがって、そのようなマルチユーザMIMOの通信等において、チャネル推定結果を送信側にフィードバックする際に、その送信するデータ容量を少なくしたいという要望があった。フィードバック対象のデータ量を少なくできれば、それだけより精度の高いフィードバックを行うことも可能だからである。
【0007】
一般的に言えば、受信側が送信側にチャネル推定結果をフィードバック送信する無線通信システムにおいて、そのフィードバック対象のデータ量を少なくしたいという要望があった。
【0008】
本発明は、上記事情に応じてなされたものであり、チャネル推定結果をフィードバックする際のデータ量を少なくすることができる受信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による受信装置は、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部と、受信部が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部と、チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部と、生成部が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定部と、測定部が測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断部と、周波数領域のチャネル推定値または遅延プロファイルを送信装置に送信するフィードバック部と、判断部の判断結果を用いて、パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値をフィードバック部に送信させ、パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルをフィードバック部に送信させる制御部と、を備えたものである。
このような構成により、遅延プロファイルのパス数に応じて、フィードバック対象を周波数領域のチャネル推定値とするのか、あるいは、時間領域の遅延プロファイルにするのかを決めるため、データ量の少ない方を適宜、選択してフィードバックすることができうる。そのため、例えば、より精度の高い遅延プロファイルを送信することも可能となりうる。
【0010】
また、本発明による受信装置では、生成部は、しきい値より小さい振幅のパスを除いた遅延プロファイルを生成してもよい。
このような構成により、ノイズ成分を除去した遅延プロファイルを生成することができる。その結果、遅延プロファイルのデータ量を削減することができる。また、チャネル推定性能も向上させることができうる。
【0011】
また、本発明による受信装置では、生成部が生成した遅延プロファイルをフーリエ変換するフーリエ変換部をさらに備え、フィードバック部は、周波数領域のチャネル推定値として、フーリエ変換部が遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を送信装置に送信してもよい。
このような構成により、周波数領域のチャネル推定値についても、ノイズ成分を除去することができる。
【0012】
また、本発明による受信装置では、受信部は、フーリエ変換部が遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行ってもよい。
このような構成により、ノイズ成分の除去された周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理がなされるため、より高い性能の等化処理を実現できうる。
【0013】
また、本発明による受信装置では、送信装置及び受信装置は、MIMO(MultipleInputMultipleOutput)により通信を行うものであり、送信装置は、2以上のアンテナを用いて送信を行ってもよい。
このような構成により、MIMOによる通信においても、フィードバックのデータ量を少なくすることができる。
【0014】
また、本発明によるフィードバック方法は、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信ステップと、受信ステップで受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定ステップと、チャネル推定ステップで取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成ステップと、生成ステップで生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定ステップと、測定ステップで測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断ステップと、判断ステップでの判断結果を用いて、パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値を送信装置に送信し、パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルを送信装置に送信するフィードバックステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明による受信装置等によれば、フィードバックするデータ量を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1による受信装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における受信部の構成を示すブロック図
【図3】同実施の形態における生成部の構成を示すブロック図
【図4】同実施の形態による受信装置の動作を示すフローチャート
【図5】同実施の形態における遅延プロファイルについて説明するための図
【図6】同実施の形態におけるコンピュータシステムの外観一例を示す模式図
【図7】同実施の形態におけるコンピュータシステムの構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による受信装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。
【0018】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による受信装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態による受信装置は、チャネル推定結果を送信側にフィードバックするものである。
【0019】
図1は、本実施の形態による受信装置1の構成を示すブロック図である。受信装置1は、送信装置2と通信を行うものである。本実施の形態では、受信装置が移動局(UE:User Equipment)であり、送信装置2が基地局(BS:Base Station)である場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。また、本実施の形態では、受信装置1と送信装置2とが複数のアンテナを介してMIMO通信を行う場合について説明するが、受信装置1と送信装置2とは、MIMO以外のチャネル推定結果をフィードバックする通信を行ってもよい。また、本実施の形態では、受信装置1が2個の受信アンテナ3,4を有する場合について説明するが、そうでなくてもよい。受信装置1は、1個以上の受信アンテナを有するものであればよい。また、本実施の形態では、受信装置1が1個である場合について説明するが、2個以上の受信装置が存在してもよい。その場合には、例えば、マルチユーザMIMO通信が行われてもよい。また、本実施の形態では、送信装置2から受信装置1に対して、OFDMによる通信が行われる場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。また、本実施の形態では、送信装置2が2個の送信アンテナ5,6を介して送信を行う場合について説明するが、そうでなくてもよい。送信装置2は、例えば、1個以上の送信アンテナを介して送信を行うものであればよい。なお、MIMOによる通信が行われる場合には、通常、送信装置2は2個以上の送信アンテナを有することになる。図1で示されるように、本実施の形態による受信装置1は、受信部11と、チャネル推定部12と、生成部13と、測定部14と、判断部15と、フーリエ変換部16と、フィードバック部17と、制御部18とを備える。
【0020】
受信部11は、送信装置2が送信アンテナ5,6から送信したリファレンス信号を、受信アンテナ3,4を介して受信する。また、受信部11は、フィードバックされた遅延プロファイルに応じたMIMOの受信を行ってもよい。本実施の形態では、前述のように、受信部11は、OFDMの送信信号を受信するものとする。図2は、その受信部11の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、受信部11は、低雑音増幅部31と、局部発振部32と、周波数変換部33と、AD変換部34と、フーリエ変換部35と、等化器36と、復調部37と、P/S(パラレル/シリアル)変換部38とを備える。なお、図2では、一の受信処理系列のみを示しているが、受信部11は、受信装置1の有するアンテナの個数に応じた受信処理系列を有してもよい。また、その場合には、P/S変換部38の後段等において、MIMOに関してアンテナごとの信号を抽出する処理部が存在してもよく(例えば、シングルユーザMIMOの場合等)、あるいは、存在しなくてもよい(例えば、プリコーディングの場合等)。
【0021】
低雑音増幅部31は、受信アンテナ3,4で受信された受信信号を受信し、その受信した受信信号を増幅する。局部発振部32は、周波数変換のための信号を生成する。周波数変換部33は、局部発振部32によって生成された信号を用いて、受信信号を周波数変換し、AD変換部34で変換できる等価ベースバンド帯域受信信号に変換する。AD変換部34は、等価ベースバンド帯域受信信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、このデジタル信号は、複数のサブキャリアに応じた複数の並列した信号となる。フーリエ変換部35は、AD変換後のデジタル信号を受け付け、それらの複数の信号を並列して高速フーリエ変換することによって、時間領域の信号を周波数領域の信号に変換する。等化器36は、後述するフーリエ変換部16が遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行う。復調部37は、等化処理後の信号を復調する。P/S変換部38は、サブキャリアごとの並列配列の信号を直列配列に変換する。その結果、受信部11は、送信装置2が送信した信号そのものを得ることができる。
【0022】
なお、受信部11の構成は、これに限定されるものではなく、他の構成であってもよい。例えば、高速フーリエ変換に代えて、離散フーリエ変換を用いてもよい。このように、受信部11の構成には任意性が存在する。また、受信部11は、OFDM以外による受信を行ってもよい。すなわち、受信部11は、OFDM以外による受信を行うことができる構成を有していてもよい。受信部11は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な部分については、受信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0023】
また、受信装置1において、送信時の周波数変換と、受信時の周波数変換で用いられる局部発振部は、送信の構成と、受信の構成とにおいて共用されてもよい。また、例えば、局部発振部32が生成する周波数が2.4GHzであり、受信アンテナ3,4で受信された受信信号の周波数が2.4GHzであり、周波数変換部33による周波数変換後の等価ベースバンド帯域の受信信号の周波数が0GHzであってもよい。なお、これらの周波数は一例であり、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0024】
チャネル推定部12は、送信装置2が複数の送信アンテナ5,6からそれぞれ送信したリファレンス信号を受信部11が受信した場合に、そのリファレンス信号を用い、複数の送信アンテナ5,6のそれぞれと、複数の受信アンテナ3,4のそれぞれとの組み合わせに応じた各チャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得する。すなわち、チャネルごとに周波数領域のチャネル推定値が取得されることになる。例えば、送信アンテナ5からリファレンス信号r,r,…が送信されたとする。なお、そのリファレンス信号は、あらかじめ決められている異なる周波数を介して送信される。例えば、OFDMの場合、そのOFDMのサブキャリア分のリファレンス信号が、各サブキャリアに応じた周波数で送信される。そして、そのリファレンス信号r,r,…が受信アンテナ3を介して受信部11によって受信されたとする。その受信されたフーリエ変換後の受信信号(すなわち、フーリエ変換部35の出力)がy,y,…であったとする。なお、yは、rと同じ周波数の信号である(n=1,2,…)。また、リファレンス信号rの伝搬された周波数における伝搬特性をhとすると、y=r×hとなる。なお、リファレンス信号はあらかじめ決められている既知の信号であるため、チャネル推定部12は、r,r,…を知ることができる。したがって、チャネル推定部12は、送信アンテナ5と、受信アンテナ3との間のチャネル推定値h,h,…を算出することができる。なお、リファレンス信号r,r,…は、複数の周波数に応じた信号を有する一の信号として送信されてもよい。したがって、リファレンス信号r,r,…は、複数の別々の信号であってもよく、一つの信号であってもよい。また、送信装置2の送信アンテナ5,6ごとに、送信装置2からリファレンス信号が送信され、そのリファレンス信号を用いて、受信装置1の受信アンテナ3,4ごとにチャネル推定値が算出される。このように、チャネル推定部12は、送信アンテナ5,6と、受信アンテナ3,4とのすべての組み合わせの無線通信チャネルについて、それぞれ複数のチャネル推定値の集合(すなわち、周波数領域におけるチャネル推定値)を算出することになる。なお、このチャネル推定値の集合のことも単にチャネル推定値を呼ぶものとする。本実施の形態では、チャネル推定部12は、送信アンテナ5,6と、受信アンテナ3,4との組み合わせ(すなわち、4個の組み合わせ)について、チャネル推定値を取得する。すなわち、チャネル推定部12は、送信アンテナ5と受信アンテナ3との間のチャネル推定値h11、送信アンテナ5と受信アンテナ4との間のチャネル推定値h12、送信アンテナ6と受信アンテナ3との間のチャネル推定値h21、送信アンテナ6と受信アンテナ4との間のチャネル推定値h22を取得する。なお、h11等は、前述のように、複数の周波数に応じた複数のチャネル推定値の集合である。また、送信アンテナがA個であり、受信アンテナがB個である場合には、チャネル推定部12は、A×B個のチャネル推定値を取得することになる。また、送信装置2が送信アンテナ5を介して送信するリファレンス信号と、送信アンテナ6を介して送信するリファレンス信号とは、時分割多重方式により送信されてもよく、符号分割多重方式により送信されてもよく、あるいは、チャネル推定を行うことができるその他の方法によって送信されてもよい。なお、チャネル推定値の取得の処理はすでに公知であり、例えば、前述の特許文献1,2、非特許文献1等を参照されたい。
【0025】
生成部13は、チャネル推定部12が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する。この遅延プロファイルは、時間領域でのチャネル推定結果である。また、生成部13は、しきい値より小さい振幅のパスを除いた遅延プロファイルを生成してもよい。本実施の形態では、生成部13がこのように、しきい値より小さい振幅のパスを除いた遅延プロファイルを生成する場合について説明する。本実施の形態による生成部13は、図3で示されるように、逆フーリエ変換手段41と、パス除去手段42と、遅延プロファイル生成手段43とを備える。
【0026】
逆フーリエ変換手段41は、周波数領域のチャネル推定値に対して逆高速フーリエ変換を行い、時間領域の信号に変換する。前述のように、チャネル推定値h11等は複数の周波数に応じた複数のチャネル推定値の集合である。そのチャネル推定値に逆高速フーリエ変換が行われることによって、例えば、図5(a)で示されるような時間領域の波形が得られる。この波形は、チャネルを構成している複数のパス(送信側のアンテナから、受信側のアンテナへの複数の伝搬経路)を示すものである。なお、逆フーリエ変換手段41は、各チャネルについて、逆高速フーリエ変換を行う。すなわち、本実施の形態の場合には、送信装置2と受信装置1との間の4個の各無線通信チャネルに対応したチャネル推定値h11、h12、h21、h22のそれぞれについて逆高速フーリエ変換が行われる。なお、逆フーリエ変換手段41は、逆高速フーリエ変換に代えて逆離散フーリエ変換を行ってもよい。
【0027】
パス除去手段42は、逆フーリエ変換手段41によって逆高速フーリエ変換された時間領域の信号に対して、しきい値よりも小さい振幅を除去する。ノイズ成分を除去し、フィードバックされる遅延プロファイルのデータ量を少なくするためである。例えば、逆高速フーリエ変換後の時間領域の信号及びしきい値のレベルが、図5(a)で示される場合には、パス除去手段42による処理を行うことによって、図5(b)のように、振幅の小さいパスが除去されることになる。パス除去手段42は、例えば、振幅をしきい値と比較する比較器と、その比較器による比較結果がしきい値よりも小さいことを示す場合には、出力を0とし、比較結果がしきい値よりも小さくないことを示す場合には、逆高速フーリエ変換後の信号そのものを出力する選択器とによって構成され、それらの構成要素によって、時間軸方向に順次処理をすることによって、小さいパスを除去してもよい。なお、結果として、小さいパスを除去できるのであれば、その方法は問わない。また、しきい値よりも小さい振幅に、しきい値そのものが含まれてもよく、含まれなくてもよい。そのしきい値は、ノイズ成分を適切に除去することができると共に、チャネル推定結果を劣化させない適切な値に設定されることが好適である。
【0028】
また、遅延プロファイル生成手段43は、小さいパスの除去された逆高速フーリエ変換の結果を用いて、遅延プロファイルを生成する。すなわち、小さいパスの除去された逆高速フーリエ変換後の波形から、チャネルを構成する各パスの遅延間隔と、振幅と、位相とを取得し、それらを含む遅延プロファイルを生成する。生成された遅延プロファイルは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。その遅延間隔は、逆高速フーリエ変換後の波形におけるパス(ピーク)間の時間間隔である。例えば、図5(b)のように、複数のパス(ピーク)が存在する場合には、各パスの間の時間間隔を示す複数の遅延間隔が取得される。なお、遅延間隔は、結果としてパス間の時間間隔を知ることができるのであれば、他の情報であってもよい。例えば、ある基準とする時点と、各パスとの間の時間間隔であってもよい。その基準とする時点は、例えば、1個目のパスの時点であってもよく、あるいは、他の同期等で用いられる時点であってもよい。また、振幅は、逆高速フーリエ変換後の波形におけるパスの実数振幅であり、位相は、そのパスの位相である。ここで、本実施の形態では、「振幅」は、複素振幅と明記しない限りは、実数振幅であるとする。したがって、遅延プロファイルは、遅延間隔と、複素振幅とを含むと言うこともできる。なお、遅延プロファイル生成手段43は、周波数領域のチャネル推定値h11、h12、h21、h22の逆高速フーリエ変換のそれぞれの結果において小さいパスが除去されたものから、遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を生成する。ここで、周波数領域のチャネル推定値hijに対応した遅延プロファイルをDPijとしている。このように、通常、一のチャネルに応じた周波数領域のチャネル推定値から、一の遅延プロファイルが生成される。
【0029】
ここで、結果として、しきい値よりも小さい振幅のパスを除いた遅延プロファイルを最終的に生成することができるのであれば、遅延プロファイルの生成と、振幅がしきい値よりも小さいパスの除去との処理の順序は問わない。例えば、逆高速フーリエ変換後の結果から遅延プロファイル生成手段43が遅延プロファイルを生成し、その遅延プロファイルについて、パス除去手段42が、しきい値よりも小さい振幅を特定し、その振幅と、その振幅に応じた位相を削除し、また、その振幅の削除に応じて遅延間隔を修正する必要がある場合(例えば、遅延間隔がパス間の時間間隔を示すものである場合等)には、その遅延間隔の修正(例えば、除去されたパスの両側の遅延間隔を加算する処理をすべての除去されたパスについて行うなど)を行ってもよい。
【0030】
測定部14は、生成部13が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する。パス数は、遅延プロファイルにおける振幅の数と同じであるため、測定部14は、遅延プロファイルにおける振幅数をカウントすることによって、パス数を測定してもよい。なお、このパス数の測定は、遅延プロファイルごとに行われる。すなわち、遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22のそれぞれについて、パス数PN11、PN12、PN21、PN22が取得されることになる。なお、遅延プロファイルDPijに対応したパス数をPNijとしている。
【0031】
判断部15は、測定部14が測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する。なお、この判断は、各遅延プロファイルのパス数について行われる。すなわち、パス数PN11、PN12、PN21、PN22のごとに、しきい値PTを超えているかどうか判断される。なお、パス数がしきい値PTと同じ場合に、しきい値PTを超えていると判断されてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。また、後述するように、パス数PNijがこのしきい値PTを超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値hij(あるいは、後述するように、遅延プロファイルDPijがフーリエ変換された周波数領域のチャネル推定値)がフィードバックされ、パス数がこのしきい値PTを超えていない場合には、遅延プロファイルDPijがフィードバックされることになる。そして、どちらのフィードバックが行われる場合であっても、フィードバック対象のチャネル推定結果のデータ量が、フィードバックされなかったチャネル推定結果のデータ量よりも少なくなっていることが好適である。したがって、そのような結果となるように、適切なしきい値PTが設定されることが好適である。
【0032】
フーリエ変換部16は、生成部13が生成した遅延プロファイルを高速フーリエ変換する。その結果、ノイズ成分の除去された周波数領域のチャネル推定値を得ることができる。なお、フーリエ変換部16は、各遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を高速フーリエ変換して、周波数領域のチャネル推定値h11NR、h12NR、h21NR、h22NRを取得する。なお、周波数領域のチャネル推定値h11NR等は、周波数領域のチャネル推定値h11等と同様に、リファレンス信号の各周波数に応じた値の集合であってもよい。ここで、遅延プロファイルDPijに対応した高速フーリエ変換後の周波数領域のチャネル推定値をhijNRとしている。また、この周波数領域のチャネル推定値hijNRは、受信部11の等化器36における等化処理で用いられることになる。等化器36は、チャネル推定部12によるチャネル推定結果を等化処理に用いることもできるが、フーリエ変換後のチャネル推定結果ではノイズが除去されているため、そのフーリエ変換後のチャネル推定結果を用いる方が、より適切な等化処理を行うことができることになる。フーリエ変換部16は、パス除去手段42によるパスの除去された信号に対して、高速フーリエ変換を行ってもよい。また、フーリエ変換部16は、高速フーリエ変換に代えて、離散フーリエ変換を行ってもよい。
【0033】
フィードバック部17は、フーリエ変換部16によるフーリエ変換後の周波数領域のチャネル推定値、または、生成部13が生成した遅延プロファイルを送信装置2に送信することによって、チャネル推定結果のフィードバックを行う。なお、フィードバック部17は、後述する制御部18によって決められた方のチャネル推定結果をフィードバックするものとする。フィードバック部17による送信は、例えば、OFDMによって行われてもよく、あるいは、その他の方式によって行われてもよい。なお、フィードバック部17による送信は、送信対象がチャネル推定値から遅延プロファイルである場合がある以外、従来例と同様であり、その詳細な説明を省略する。また、フィードバック部17は、ハードウェアによって実現されてもよく、あるいは送信デバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0034】
制御部18は、判断部15の判断結果を用いて、パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値をフィードバック部17に送信させ、パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルをフィードバック部17に送信させる。制御部18は、チャネルごとにこの判断を行ってもよい。すなわち、チャネルごとに、遅延プロファイルDPijと、チャネル推定値をhijNRとのどちらをフィードバックするのかが制御部18によって決定され、その決定に応じたフィードバックがフィードバック部17によって行われてもよい。なお、どちらのフィードバックが行われるのかは、遅延パス数に応じて行われることになり、その遅延パス数は、チャネルごとに大きく変わらないと考えられる。したがって、測定部14及び判断部15は、代表となる一のチャネルについて、パス数の測定や判断を行い、制御部18は、その判断結果に応じて、すべてのチャネルについてのフィードバック対象に関する制御を行うようにしてもよい。例えば、制御部18は、遅延プロファイルDP11のパス数がしきい値PTを超えている場合には、フィードバック部17に周波数領域のチャネル推定値h11NR、h12NR、h21NR、h22NRを送信させ、遅延プロファイルDP11のパス数がしきい値PTを超えていない場合には、フィードバック部17に遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を送信させてもよい。
【0035】
次に、受信装置1の動作について図4のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)受信部11は、リファレンス信号(RS)を受信したかどうか判断する。そして、リファレンス信号を受信した場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、ステップS109に進む。
【0036】
(ステップS102)チャネル推定部12は、リファレンス信号に応じた周波数領域のチャネル推定値を取得する。すなわち、チャネル推定部12は、例えば、送信アンテナ5と、受信アンテナ3,4との間の複数の周波数に応じたチャネル推定値、及び送信アンテナ6と、受信アンテナ3,4との間の複数の周波数に応じたチャネル推定値を取得する。その取得された周波数領域のチャネル推定値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。なお、2以上のリファレンス信号が送信される場合には、例えば、ステップS101とステップS102の処理がそのリファレンス信号の数だけ繰り返されてもよい。
【0037】
(ステップS103)生成部13の逆フーリエ変換手段41は、周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換する。そして、生成部13のパス除去手段42は、その逆フーリエ変換の結果において、振幅がしきい値よりも小さいパスを除去する。その後、生成部13の遅延プロファイル生成手段43は、振幅がしきい値よりも小さいパスの除去された逆フーリエ変換後の信号から遅延プロファイルを生成する。その遅延プロファイルは、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0038】
(ステップS104)フーリエ変換部16は、時間領域の遅延プロファイルをフーリエ変換し、周波数領域のチャネル推定値に戻す。そのフーリエ変換後のチャネル推定値は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。また、このチャネル推定値は、前述のように、等化器36での等化処理にも用いられる。
【0039】
(ステップS105)測定部14は、生成部13が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する。
【0040】
(ステップS106)判断部15は、測定部14が測定したパス数がしきい値PTを超えているかどうか判断する。そして、パス数がしきい値PTを超えている場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS108に進む。
【0041】
(ステップS107)制御部18は、フーリエ変換部16によるフーリエ変換後の周波数領域のチャネル推定値をフィードバック部17に送信させるように制御する。その結果、その周波数領域のチャネル推定値がフィードバック部17によって送信装置2に送信される。そして、ステップS101に戻る。
【0042】
(ステップS108)制御部18は、遅延プロファイルをフィードバック部17に送信させるように制御する。その結果、その遅延プロファイルがフィードバック部17によって送信装置2に送信される。そして、ステップS101に戻る。
【0043】
なお、ステップS105〜S108において、チャネルごとにこれらの処理が行われてもよく、あるいは、代表となるチャネルについてステップS105,S106の処理が行われ、その結果に応じて、すべてのチャネルについて、ステップS107またはS108の処理が行われてもよい。
【0044】
(ステップS109)受信部11は、MIMOの送信信号を受信したかどうか判断する。そして、MIMOの送信信号を受信した場合には、ステップS110に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。
【0045】
(ステップS110)受信部11あるいはその他の構成要素によって、受信された送信信号に応じた処理が行われる。そして、ステップS101に戻る。
【0046】
なお、チャネル推定結果として、周波数領域のチャネル推定値と、遅延プロファイルとのどちらのフィードバックが行われるのかは、それほど頻繁には変わらないと考えられる。したがって、測定部14によるパス数の測定や、判断部15による判断は、リファレンス信号の受信ごとに行われなくてもよい。例えば、パス数の測定や判断は、チャネル推定の周期よりは長い一定または不定の周期により、繰り返して行われ、制御部18は、新たな判断が行われるまで、最新の判断結果に応じて、フィードバック対象に関する制御を行うようにしてもよい。また、図4のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0047】
次に、本実施の形態による受信装置1の動作について、具体例を用いて説明する。
まず、送信装置2がリファレンス信号を送信するタイミングとなり、送信アンテナ5,6を介してリファレンス信号が送信されたとする。すると、そのリファレンス信号は、受信アンテナ3,4を介して受信部11で受信される(ステップS101)。そして、チャネル推定部12は、受信部11のフーリエ変換部35の出力を得ることによって、各チャネルの周波数領域におけるチャネル推定値h11、h12、h21、h22を取得し、生成部13の逆フーリエ変換手段41に渡す(ステップS102)。逆フーリエ変換手段41は、各チャネル推定値h11、h12、h21、h22を逆高速フーリエ変換し、それぞれの結果をパス除去手段42に渡す。パス除去手段42は、各チャネル推定値h11、h12、h21、h22の逆高速フーリエ変換の結果ごとに、振幅の小さいパスの除去を行い、フーリエ変換部16と、遅延プロファイル生成手段43とに渡す。遅延プロファイル生成手段43は、振幅の小さいパスの除去された逆高速フーリエ変換の結果ごとに、振幅、遅延間隔、位相を含む遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を生成し測定部14とフィードバック部17とに渡す(ステップS103)。それらの遅延プロファイルは、次のようであったとする。なお、t1は、リファレンス信号の受信時に応じた添字であるとする。また、振幅A11t11、A11t12、A11t13、A11t14等は、時間の順に4個のパスに対応した振幅である。また、遅延間隔DI11t11、DI11t12、DI11t13等は、その4個のパス間の3個の時間間隔(図5(b)参照)に対応したものである。位相P11t11、P11t12、P11t13、P11t14等は、時間の順に4個のパスに対応した位相である。
[遅延プロファイルDP11
振幅:A11t11、A11t12、A11t13、A11t1
遅延間隔:DI11t11、DI11t12、DI11t1
位相:P11t11、P11t12、P11t13、P11t1
[遅延プロファイルDP12
振幅:A12t11、A12t12、A12t13、A12t1
遅延間隔:DI12t11、DI12t12、DI12t1
位相:P12t11、P12t12、P12t13、P12t1
[遅延プロファイルDP21
振幅:A21t11、A21t12、A21t13、A21t1
遅延間隔:DI21t11、DI21t12、DI21t1
位相:P21t11、P21t12、P21t13、P21t1
[遅延プロファイルDP22
振幅:A22t11、A22t12、A22t13、A22t1
遅延間隔:DI22t11、DI22t12、DI22t1
位相:P22t11、P22t12、P22t13、P22t1
【0048】
また、フーリエ変換部16は、生成部13のパス除去手段42から受け取った、振幅の小さいパスの除去された逆高速フーリエ変換の結果を、高速フーリエ変換し、周波数領域のチャネル推定値h11NR、h12NR、h21NR、h22NRを取得し、受信部11の等化器36と、フィードバック部17とに渡す(ステップS104)。そして、その周波数領域のチャネル推定値が、等化処理に用いられ、また、フィードバックの対象となりうる。
【0049】
また、測定部14は、それらの遅延プロファイルに応じてパス数を測定する(ステップS105)。それらのパス数は、次のようであったとする。
遅延パス数PN11t1=4
遅延パス数PN12t1=4
遅延パス数PN21t1=4
遅延パス数PN22t1=4
【0050】
この具体例では、しきい値PTが「5」であったとすると、判断部15は、すべてのパス数がしきい値を超えていないと判断し、その判断結果を制御部18に渡す(ステップS106)。そのため、制御部18は、すべてのチャネルについて、遅延プロファイルDP11、DP12、DP21、DP22を送信するようにフィードバック部17を制御する。その結果、それらの遅延プロファイルがフィードバック部17によって送信装置2に送信される(ステップS108)。そして、そのチャネル推定結果は、例えば、プリコーディング等のために用いられてもよい。
【0051】
また、リファレンス信号の受信の間において、送信信号の受信が行われ、その受信に応じた処理が行われてもよいことは言うまでもない(ステップS109,S110)。
【0052】
また、パス数がしきい値を超えている場合には、前述のように、制御部18は、周波数領域のチャネル推定値を送信するようにフィードバック部17を制御し、その周波数領域のチャネル推定値h11NR、h12NR、h21NR、h22NRが送信装置2に送信される(ステップS107)。
【0053】
以上のように、本実施の形態による受信装置1によれば、遅延プロファイルのパス数に応じて、フィードバック対象を周波数領域のチャネル推定値とするのか、あるいは、時間領域の遅延プロファイルにするのかを決めるため、データ量の少ない方を適宜、選択してフィードバックすることができる。したがって、結果として、フィードバック対象のデータ量を減らしながらも、フィードバックするチャネル推定結果の精度を向上させることができ、例えば、より伝送速度の速い通信を実現することができるようになる。
【0054】
また、フェムトセルやピコセル等のように、比較的伝送距離が短く、見通しで、少ない数の散乱波数が小さな遅延時間で到来するような通信では、周波数領域におけるチャネル推定値を逆フーリエ変換した時間領域における遅延プロファイルをフィードバックした方が、フィードバック対象のデータ量を削減させることができる。一方、屋外や長距離等での通信では、遅延パス数が多くなることに伴って遅延プロファイルのデータ量が多くなるため、チャネル推定結果として、周波数領域のチャネル推定値をフィードバックした方が、フィードバック対象のデータ量を削減させることができる。したがって、本実施の形態のように、適宜、フィードバック対象を切り替えて送信することにより、フィードバックにおける無線リソースの消費を少なくすることができる。その結果として、例えば、より精度の高いチャネル推定結果のフィードバックも可能となる。このように、本実施の形態による受信装置1等は、例えば、フェムトセルやピコセルとの無線通信などのように、屋内の無線通信や短距離の無線通信、見通し無線通信等のように条件のよい無線通信と、屋外の無線通信や長距離の無線通信、見通しでない無線通信のように条件のよくない無線通信との両方で用いることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、パス除去手段42によって、振幅の小さい遅延パスを除去することによって、遅延プロファイルにおけるノイズ成分を除去することができ、その結果、時間領域におけるチャネル推定の性能を高めることができうる。また、その除去に応じて、フィードバック対象の遅延プロファイルのデータ量も削減できる。また、その振幅の小さい遅延パスの除去された遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を、等化処理や、フィードバックに用いることにより、その周波数領域のチャネル推定の性能をも高めることができうる。その結果、例えば、受信装置1において、より適切な信号の復調等が可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態では、受信部11の等化器36において、フーリエ変換部16によるフーリエ変換後の周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。受信部11の等化器36は、チャネル推定部12が取得した周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行ってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、フィードバック部17が、周波数領域のチャネル推定値を送信する際に、フーリエ変換部16によるフーリエ変換後の周波数領域のチャネル推定値を送信する場合について説明したが、そうでなくてもよい。フィードバック部17は、周波数領域のチャネル推定値を送信する際に、チャネル推定部12が取得した周波数領域のチャネル推定値を送信してもよい。
【0058】
また、本実施の形態において、周波数領域のチャネル推定値をフィードバックする場合に、その周波数領域のチャネル推定値のデータ量を削減してフィードバックするようにしてもよい。例えば、データの圧縮を行うことによって、周波数領域のチャネル推定値のデータ量を削減してもよく、あるいは、周波数領域のチャネル推定値のサンプル数を削減することによって、データ量を削減してもよい。ここで、その後者の場合について少し説明する。周波数領域のチャネル推定値には、例えば、OFDMの場合であれば、サブキャリアの個数分のサンプル数が存在する。したがって、サンプル数を減らす場合には、例えば、1以上のサブキャリアの周波数に対応するチャネル推定値を単に削除するだけでもよく、あるいは、2以上のサブキャリアの周波数に対応するチャネル推定値を補間することによって、新たな周波数に対応したチャネル推定値をリサンプリングし、1以上のサブキャリアの周波数に対応するチャネル推定値を削除すると共に、そのリサンプリングした新たな周波数に対応したチャネル推定値を追加するようにしてもよい。なお、削除されたサンプル数の方が、追加されたサンプル数よりも多いことが好適である。そのようなデータ量の削減として、例えば、周波数が隣接する2個のサブキャリアのサンプルを、その2個のサンプルの中間の周波数に対応した、その2個のサンプルの平均値に置き換えることによって、周波数領域のチャネル推定値を再構成してもよい。この処理によって、サンプル数が半分に減ることになり、データ量が半分になる。この処理は、例えば、生成部13やフーリエ変換部16、フィードバック部17等によって行われてもよく、あるいは、その他の構成要素によって行われてもよい。なお、データ量の圧縮については、時間領域の遅延プロファイルに対して行ってもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、生成部13において、パス除去手段42による小さい振幅の遅延パスの除去を行う場合について説明したが、そうでなくてもよい。生成部13は、小さい振幅のパスを除去しないで、遅延プロファイルを生成してもよい。
また、MIMOは通常、OFDMにより行われるため、OFDMによる通信が行われる場合について主に説明したが、OFDMではないMIMOによる通信が行われてもよいことは言うまでもない。
【0060】
また、本実施の形態では、主にシングルユーザMIMO通信を行う場合について説明したが、前述のようにマルチユーザMIMO通信のフィードバックにおいて、データ量を少なくするようにフィードバック対象のスイッチングを行ってもよい。また、MIMO通信以外のチャネル推定結果の送信が必要なシステムにおいて、本実施の形態のようにして、フィードバック対象のチャネル推定結果をスイッチングしてもよいことは言うまでもない。また、前述のように、受信装置1は1個の受信アンテナを用いて受信を行うものであってもよく、3個以上の受信アンテナを用いて受信を行うものであってもよい。すなわち、受信部11は、送信装置2が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信するものであってもよい。そして、チャネル推定部12は、受信部11が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するものであってもよい。
【0061】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、あるいは、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、あるいは、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いるしきい値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していない場合であっても、図示しない記録媒体において、一時的に、あるいは長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、あるいは、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、あるいは、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0064】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いるしきい値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していない場合であっても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、あるいは、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0065】
また、上記実施の形態において、受信装置1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、あるいは、別々のデバイスを有してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、あるいは、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。なお、上記実施の形態における受信装置1を実現するソフトウェアは、以下のようなプログラムである。つまり、このプログラムは、コンピュータを、送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部が受信したリファレンス信号を用いて、1以上の送信アンテナと、1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部、チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部、生成部が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定部、測定部が測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断部、判断部の判断結果を用いて、パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値を送信装置に送信させ、パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルを送信装置に送信させる制御部として機能させるためのプログラムである。
【0067】
なお、上記プログラムにおいて、上記プログラムが実現する機能には、ハードウェアでしか実現できない機能は含まれない。すなわち、ハードウェアでしか実現できない機能は、上記プログラムが実現する機能には少なくとも含まれないものとする。
【0068】
また、このプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、CD−ROMなどの光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。
【0069】
また、このプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、あるいは分散処理を行ってもよい。
【0070】
図6は、上記プログラムを実行して、上記実施の形態による受信装置1を実現するコンピュータの外観の一例を示す模式図である。上記実施の形態は、コンピュータハードウェア及びその上で実行されるコンピュータプログラムによって実現されうる。
【0071】
図6において、コンピュータシステム900は、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブ905、FD(Floppy(登録商標) Disk)ドライブ906を含むコンピュータ901と、キーボード902と、マウス903と、モニタ904とを備える。
【0072】
図7は、コンピュータシステム900の内部構成を示す図である。図7において、コンピュータ901は、CD−ROMドライブ905、FDドライブ906に加えて、MPU(Micro Processing Unit)911と、ブートアッププログラム等のプログラムを記憶するためのROM912と、MPU911に接続され、アプリケーションプログラムの命令を一時的に記憶すると共に、一時記憶空間を提供するRAM(Random Access Memory)913と、アプリケーションプログラム、システムプログラム、及びデータを記憶するハードディスク914と、MPU911、ROM912等を相互に接続するバス915とを備える。なお、コンピュータ901は、前述の送信や受信の処理を行うためのハードウェア、例えば、DA変換器やAD変換器、変調器や復調器等を含んでいてもよく、あるいは、それらのハードウェアに接続されていてもよい。また、コンピュータ901は、LANへの接続を提供する図示しないネットワークカードを含んでいてもよい。
【0073】
コンピュータシステム900に、上記実施の形態による受信装置1の機能を実行させるプログラムは、CD−ROM921、またはFD922に記憶されて、CD−ROMドライブ905、またはFDドライブ906に挿入され、ハードディスク914に転送されてもよい。これに代えて、そのプログラムは、図示しないネットワークを介してコンピュータ901に送信され、ハードディスク914に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM913にロードされる。なお、プログラムは、CD−ROM921やFD922、またはネットワークから直接、ロードされてもよい。
【0074】
プログラムは、コンピュータ901に、上記実施の形態による受信装置1の機能を実行させるオペレーティングシステム(OS)、またはサードパーティプログラム等を必ずしも含んでいなくてもよい。プログラムは、制御された態様で適切な機能(モジュール)を呼び出し、所望の結果が得られるようにする命令の部分のみを含んでいてもよい。コンピュータシステム900がどのように動作するのかについては周知であり、詳細な説明は省略する。
【0075】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上より、本発明による受信装置等によれば、フィードバックするデータ量を少なくすることができるという効果が得られ、例えば、チャネル推定結果を送信する受信装置等として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 受信装置
2 送信装置
3、4 受信アンテナ
5、6 送信アンテナ
11 受信部
12 チャネル推定部
13 生成部
14 測定部
15 判断部
16、35 フーリエ変換部
17 フィードバック部
18 制御部
31 低雑音増幅部
32 局部発振部
33 周波数変換部
34 AD変換部
36 等化器
37 復調部
38 P/S変換部
41 逆フーリエ変換手段
42 パス除去手段
43 遅延プロファイル生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部と、
前記受信部が受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部と、
前記チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部と、
前記生成部が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定部と、
前記測定部が測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断部と、
周波数領域のチャネル推定値または遅延プロファイルを前記送信装置に送信するフィードバック部と、
前記判断部の判断結果を用いて、前記パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値を前記フィードバック部に送信させ、前記パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルを前記フィードバック部に送信させる制御部と、を備えた受信装置。
【請求項2】
前記生成部は、しきい値より小さい振幅のパスを除いた遅延プロファイルを生成する、請求項1記載の受信装置。
【請求項3】
前記生成部が生成した遅延プロファイルをフーリエ変換するフーリエ変換部をさらに備え、
前記フィードバック部は、周波数領域のチャネル推定値として、前記フーリエ変換部が遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を前記送信装置に送信する、請求項2記載の受信装置。
【請求項4】
前記受信部は、前記フーリエ変換部が当該遅延プロファイルをフーリエ変換した周波数領域のチャネル推定値を用いて等化処理を行う、請求項3記載の受信装置。
【請求項5】
前記送信装置及び前記受信装置は、MIMO(Multiple Input Multiple Output)により通信を行うものであり、
前記送信装置は、2以上のアンテナを用いて送信を行う、請求項1から請求項4のいずれか記載の受信装置。
【請求項6】
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルについて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定ステップと、
前記チャネル推定ステップで取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成ステップと、
前記生成ステップで生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定ステップと、
前記測定ステップで測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断ステップと、
前記判断ステップでの判断結果を用いて、前記パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値を前記送信装置に送信し、前記パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルを前記送信装置に送信するフィードバックステップと、を備えたフィードバック方法。
【請求項7】
コンピュータを、
送信装置が1以上の送信アンテナから送信したリファレンス信号を、1以上の受信アンテナを介して受信する受信部が受信したリファレンス信号を用いて、前記1以上の送信アンテナと、前記1以上の受信アンテナとの組み合わせに応じたチャネルついて周波数領域のチャネル推定値を取得するチャネル推定部、
前記チャネル推定部が取得した周波数領域のチャネル推定値を逆フーリエ変換して、チャネルを構成する各パスの振幅と位相と遅延間隔とを含む遅延プロファイルを生成する生成部、
前記生成部が生成した遅延プロファイルのパス数を測定する測定部、
前記測定部が測定したパス数がしきい値を超えているかどうか判断する判断部、
前記判断部の判断結果を用いて、前記パス数がしきい値を超えている場合には、周波数領域のチャネル推定値を前記送信装置に送信させ、前記パス数がしきい値を超えていない場合には、遅延プロファイルを前記送信装置に送信させる制御部として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−175491(P2012−175491A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36680(P2011−36680)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「非線形マルチユーザMIMO技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】