説明

受信装置、受信方法、通信システムおよび通信方法

【課題】時間によって様々なPDPを取る場合にも高精度な伝搬路推定が可能な受信装置を提供する。
【解決手段】参照信号を用いて第1の周波数応答推定値を算出する第1の周波数応答推定部b106と、所定の最大遅延時間を複数の区間に分割した候補区間から、少なくとも1つの区間を抽出して推定区間を求める区間抽出部と、前記第1の周波数応答と前記推定区間とを用いて復調用の周波数応答推定値である第2の周波数応答推定値を算出する第2の周波数応答推定部b108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、受信方法、通信システムおよび通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、特に広帯域伝送の場合、先行して受信するパスに加え、建物や山などの障害物からの反射を経由する等して遅延して到来するパスが存在し、このように複数のパスが到来する環境をマルチパス環境という。近年、このようなマルチパス環境で高速・高信頼伝送を実現する手法としてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)が注目されており、次世代移動通信システム、無線LAN、放送等の様々な分野で採用されている。受信装置がOFDM信号を復調する場合には、チャネル推定を行って、サブキャリア毎に伝搬路の周波数応答(Channel Frequency Response:CFR)を算出する必要がある。これを実現するため、受信装置がその波形(あるいは、その信号系列)を予め記憶するパイロットシンボルを、送信装置から受信装置へ送信する方法がある。そのパイロットシンボルを用いて高精度なチャネル推定を行うには、高精度な周波数相関が必要となる。
【0003】
非特許文献1には、スキャッタード・パイロットOFDMにおいて、MMSE(Minimum Mean Square Error)基準で周波数応答を推定する技術が記載されている。具体的に、非特許文献1は、PDP(Power Delay Profile:電力遅延プロファイル)をモデル化し、モデル化されたPDPから周波数相関を求め、その周波数相関を用いてMMSEによるチャネル推定を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.J. van de Beek, O. Edfors, M. Sandell, S.K. Wilson, and P.O. Borjesson, “On channel estimation in OFDM systems,” in Proc. VTC’95, vol. 2, pp. 815-819, Chicago, IL, July 1995.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際の伝搬環境は位置、あるいは時間によって様々なPDPを取りうるため、伝搬路のモデルを固定する非特許文献1の手法では推定精度の向上に限界がある。本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、時間によって様々なPDPを取る場合にも高精度な伝搬路推定が可能な受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の受信装置は、参照信号を用いて第1の周波数応答推定値を算出する第1の周波数応答推定部と、所定の最大遅延時間を複数の区間に分割した候補区間から、少なくとも1つの区間を抽出して推定区間を求める区間抽出部と、前記第1の周波数応答と前記推定区間とを用いて復調用の周波数応答推定値である第2の周波数応答推定値を算出する第2の周波数応答推定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
前記候補区間の区間長は全て同じ長さでもよい。
前記候補区間の区間長のうち少なくとも1つは長さが異なってもよい。
前記候補区間の遅延時間に基づいて区間長を決定してもよい。
【0008】
前記区間抽出部は、前記第1の周波数応答推定値に周波数時間変換を施して近似チャネルインパルス応答を算出する近似チャネルインパルス応答推定部と、前記近似チャネルインパルス応答を構成するパスのうち、所定の個数のパスを抽出するパス抽出部と、前記候補区間のうち前記抽出されたパスの、遅延時間を含む区間を前記推定区間として決定する対応区間決定部と、を備えてもよい。
【0009】
前記パス抽出部は、電力に基づいて前記所定の個数のパスを抽出してもよい。
前記パス抽出部は、前記近似チャネルインパルス応答を構成するパスのうち、電力が雑音電力に所定の値を乗算した値を上回るパスを抽出してもよい。
【0010】
前記対応区間決定部は、前記推定区間を構成するそれぞれの区間の面積を、その区間を決定するのに用いた遅延パスの電力に従って設定してもよい。
【0011】
前記区間抽出部は、前記パス抽出部と前記対応区間決定部を各々複数かつ同数備え、前記第1の周波数応答と前記対応区間決定部が出力する各々の推定区間とを用いてテスト周波数応答推定値を複数算出するテスト周波数応答推定部と、前記第1の周波数応答を用いて前記テスト周波数応答推定値のそれぞれの伝搬路適合度を算出する伝搬路適合度算出部と、前記伝搬路適合度に基づいて前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間を選択する比較部と、を備えてもよい。
【0012】
前記区間抽出部は、前記候補区間を組み合わせて推定区間候補とし、該推定区間候補からテスト周波数応答推定値を算出するテスト周波数応答推定部と、前記テスト周波数応答推定値から伝搬路適合度を算出する伝搬路適合度算出部と、をさらに備え、前記推定区間候補を複数求め、前記伝搬路適合度を用いて前記複数の推定区間候補から前記推定区間を算出してもよい。
【0013】
前記区間抽出部は、前記候補区間を少なくとも1つ選択する処理を繰り返し、前記推定区間を決定し、前記テスト周波数応答推定部は、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に、前記候補区間を少なくとも1つ追加して推定区間候補を作成し、前記伝搬路適合度であって、1つ前の繰り返し算出された前記伝搬路適合度の中で最大のものを下回った伝搬路適合度を算出するのに用いた前記候補区間を削除する不要候補区間除去部と、削除が行われた後の前記候補区間の残り個数が0であった場合、前記繰り返しを中止して1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間を前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間として決定する判断部と、前記伝搬路適合度の中で大きい順に所定の個数を抽出し、該伝搬路適合度を算出するのに用いた候補区間を、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に追加して新たな推定区間とし、テスト周波数応答推定部から始まる次の繰り返しに移行させる区間決定部と、を備えてもよい。
【0014】
前記区間決定部が1つの繰り返しで決定する候補区間の要素は1つでもよい。
前記判断部は、削除が行われた後の前記伝搬路適合度の個数が0と1以外の所定の個数以下であった場合、残った伝搬路適合度を算出するのに用いた候補区間の要素を、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に加えた新たな推定区間を前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間として決定する処理をさらに行ってもよい。
【0015】
前記伝搬路適合度算出部は、前記伝搬路適合度として前記テスト周波数応答推定値と前記第1の周波数応答推定値との平均二乗誤差を用いてもよい。
【0016】
前記伝搬路適合度算出部は、前記伝搬路適合度として前記テスト周波数応答推定値と前記第1の周波数応答推定値との相互相関を用いてもよい。
【0017】
前記伝搬路適合度算出部は、前記伝搬路適合度として、さらに前記テスト周波数応答推定値を算出するのに用いた前記推定区間の形状から決まるモデルエビデンスをペナルティとして加算したものを用いてもよい。
【0018】
前記伝搬路適合度算出部は、前記伝搬路適合度として、さらにベイズ情報量規準のペナルティを加算したものを用いてもよい。
【0019】
前記伝搬路適合度算出部は、前記伝搬路適合度として、さらに赤池情報量規準のペナルティを加算したものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、伝搬路推定精度を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】マッピング部a104がパイロットシンボルと変調信号をマッピングする例を示す図である。
【図3】マッピング部a104がパイロットシンボルと変調信号をマッピングする他の例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る受信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】区間抽出部b107の構成を示す概略ブロック図である。
【図6】第iシンボルの送信信号s(t)の構成を示す図である。
【図7】受信信号の第iシンボル付近の構成を示す図である。
【図8】実際に受信装置b1が受信信号を観測したときの遅延プロファイルとそのモデルとの不一致が大きい場合は、推定精度が低下する様子を示す図である。
【図9】8個の候補区間901〜908を用意した例を示す図である。
【図10】候補区間からいくつかを選択し、伝搬路を推定する場合の関係を示す図である。
【図11】チャネルインパルス応答を離散的と仮定した場合のパスの電力を示す図である。
【図12】抽出したパスの推定区間を示す図である。
【図13】第k要素を第k区間の面積に設定した場合の、抽出したパスの推定区間を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施形態に係る受信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図16】区間抽出部b207の構成を示す概略ブロック図である。
【図17】本発明の第2の実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施形態に係る受信装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図19】区間抽出部b307の構成を示す概略ブロック図である。
【図20】本発明の第3の実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る送信装置の構成を示す概略ブロック図である。以下、本実施形態では、送信装置をa1という。この図において、送信装置a1は、パイロット生成部a101、符号部a102、変調部a103、マッピング部a104、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部a105、GI挿入部a106、送信部a107、及び送信アンテナ部a108を含んで構成され、OFDM信号を送信する。
【0023】
パイロット生成部a101は、受信装置がその波形(あるいは、その信号系列)の振幅値を予め記憶するパイロットシンボルを生成し、マッピング部a104に出力する。なお、以下、本実施形態では、受信装置をb1という。受信装置b1では、パイロットシンボルを参照信号として伝搬路推定を行う。
【0024】
符号部a102は、受信装置b1に送信する情報ビットに対して畳込み符号、ターボ符号、LDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティ検査)符号などの誤り訂正符号を用いて符号化し、符号化ビットを生成する。符号部a102は、生成した符号化ビットを変調部a103に出力する。
【0025】
変調部a103は、符号部a102から入力された符号化ビットを、PSK(Phase Shift Keying:位相変調)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)などの変調方式を用いて変調し、変調シンボルを生成する。変調部a103は、生成した変調シンボルをマッピング部a104に出力する。
【0026】
マッピング部a104は、パイロット生成部a101から入力されたパイロットシンボル、及び変調部a103から入力された変調シンボルを、予め定められたマッピング情報に基づいてリソースエレメント(時間−周波数帯域)にマッピングして周波数領域の信号を生成し、生成した周波数領域の信号をIFFT部a105に出力する。なお、リソースエレメントとは、送信装置a1が送信するフレームにおいて1つのサブキャリアと1つの後述するFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)区間から成る、変調シンボルを配置する単位である。また、マッピング情報は、送信装置a1が決定し、送信装置a1から受信装置b1へ予め通知される。ただし、放送のような、通知を必要としないシステムの受信装置である場合は、通知は行わない。図2は、マッピング部a104がパイロットシンボルと変調信号をマッピングする例であり、第3.9世代移動通信システムであるLTE(Long Term Evolution)のパイロット配置の一つを示している。なお、図3は別のマッピング例であり、日本の地上デジタルテレビジョンであるISDB−Tのパイロット配置を示している。
【0027】
IFFT部a105は、マッピング部a104から入力された周波数領域の信号を周波数−時間変換し、時間領域の信号を生成する。ここで、IFFTを行う単位の時間区間をFFT区間という。IFFT部a105は、生成した時間領域の信号をGI挿入部a106に出力する。
【0028】
GI挿入部a106は、IFFT部a105から入力された時間領域の信号に対して、FFT区間の信号毎にガードインターバル(Guard Interval:GI)を付加する。ここで、ガードインターバルとは、FFT区間の信号の後方の一部を複製したものであるサイクリックプレフィックス(Cyclic Prefix:CP)やゼロ区間が続くゼロパディング、Golay符号等を用いた既知信号等であり、GI挿入部a106は、このような信号をこのFFT区間の信号の前方に付加する。
【0029】
なお、FFT区間と、GI挿入部a106がその時間区間の信号に付加したガードインターバルの時間区間(GI区間という)と、を併せてOFDMシンボル区間という。また、OFDMシンボル区間の信号をOFDMシンボルという。GI挿入部a106は、ガードインターバルを付加した信号を送信部a107に出力する。
【0030】
なお、ガードインターバルをFFT区間の後方に挿入してもよい。例えば、サイクリックプレフィックスを用いる場合、FFT区間の前方の一部の複製をFFT区間の信号の後方に付加する。また、サイクリックプレフィックスの場合は、OFDMシンボル区間で周期性が保たれるようにすればよく、前記の限りではない。
【0031】
送信部a107は、GI挿入部a106から入力された信号をデジタル・アナログ変換し、変換したアナログ信号を波形整形する。送信部a107は、波形整形した信号をベースバンド帯から無線周波数帯にアップコンバートし、送信アンテナa108から受信装置b1へ送信する。
【0032】
図4は、本実施形態に係る受信装置b1の構成を示す概略ブロック図である。この図において、受信装置b1は、受信アンテナb101、受信部b102、GI除去部b103、FFT部b104、デマッピング部b105、第1のCFR推定部b106、区間抽出部b107、第2のCFR推定部b108、復調部b109、復号部b110を含んで構成される。なお、図4中の点線で囲まれた第1のCFR推定部b106、区間抽出部b107、第2のCFR推定部b108を併せて伝搬路推定部と呼ぶ。なお、第1のCFR推定値は、パイロットサブキャリアにおいて、パイロット信号を用いたCFRの推定値のことを指し、第2のCFR推定値は、第1のCFR推定値を用いて雑音低減やパイロットサブキャリア以外への補間が行われた、復調に用いるCFR推定値のことを指す。
【0033】
受信部b102は、送信装置a1が送信した送信信号を、受信アンテナb101を介して受信する。受信部b102は、受信した信号に対して、周波数変換及びアナログ−ディジタル変換を行う。
【0034】
GI除去部b103は、受信部b102から入力された受信信号から、ガードインターバルを除去し、FFT部b104へ出力する。
【0035】
FFT部b104は、GI除去部b103から入力された時間領域の信号に対して時間周波数変換を行い、変換した周波数領域の信号をデマッピング部b105へ出力する。
【0036】
デマッピング部b105は、送信装置a1から予め通知されたマッピング情報に基づいてデマッピングし、分離されたパイロットシンボルが送信されたサブキャリアの受信信号を第一のCFR推定部b106に出力する。また、データが送信されたサブキャリアの受信信号を復調部b109に出力する。
【0037】
第1のCFR推定部は、パイロットサブキャリアにおいて、パイロットシンボルを用いて第1のCFR推定値を算出し、区間抽出部b107および第2のCFR推定部b108に出力する。
【0038】
図5は、区間抽出部b107の構成を示す概略ブロック図である。この図において、区間抽出部b107は、近似CIR(Channel Impulse Response:チャネルインパルス応答)推定部b107−1、パス抽出部b107−2、対応区間決定部b107−3を含んで構成される。
【0039】
近似CIR推定部b107−1は、第1のCFR推定部b106から入力される第1のCFR推定値にIFFT等の離散的な周波数時間変換を施し、近似CIR推定値に変換する。算出した近似CIR推定値をパス抽出部b107−2に出力する。
【0040】
パス抽出部b107−2は、近似CIR推定部b107−1から入力される近似CIR推定値を用いて、電力の高いパスを抽出する。抽出したパスの情報を、対応区間決定部b107−3に出力する。
【0041】
対応区間決定部b107−3は、パス抽出部b107−2から入力される抽出されたパスに対応する区間を推定区間として決定する。決定した推定区間を第2のCFR推定部b108に出力する。
【0042】
第2のCFR推定部b108は、対応区間決定部b107−3から入力される推定区間を用いて第2のCFR推定値を算出する。具体的には、推定区間の形状から周波数相関を求め、MMSE(Minimum Mean Square Error)基準のフィルタ係数を算出し、第1のCFR推定値をその係数でフィルタリングすることで第2のCFR推定値を算出する。
【0043】
復調部b109は、伝搬路推定部b106から入力される周波数応答を用いて、ZF(Zero Forcing)基準、MMSE基準等のフィルタ係数を算出する。復調部b109は、算出したフィルタ係数を用いて、信号の振幅と位相の変動の補償(伝搬路補償という)を行う。復調部b109は、復調処理の結果のビット対数尤度比(Log Likelihood Ratio:LLR)を復号部b110に出力する。
【0044】
復号部b110は、復調部b109から入力された復調シンボルに対して、例えば、最尤復号法(Maximum Likelihood Detection:MLD)、最大事後確率(Maximum A posteriori Probability:MAP)、log−MAP、Max−log−MAP、SOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)等を用いて、復号処理を行う。
【0045】
<動作原理について>
以下、受信装置b1の動作原理について、図4を参照しながら説明する。
受信部b102が受信した時刻tの受信信号r(t)は、次式(1)〜(3)で表わされる。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、Dは最大遅延時間、h(t,τ)は時刻tにおける遅延時間τの複素振幅、s(t)は送信信号、z(t)は雑音、s(t)は第iシンボルのみの送信信号、NはFFTポイント数、Si,nは第iシンボルの第nサブキャリアの変調信号、Tはガードインターバル長、TはOFDMシンボル区間の長さ、Δはサブキャリア間の周波数間隔である。なお、τ=0〜Dの複素振幅h(t,τ)をまとめて時刻tのチャネルインパルス応答という。ただし、送信信号と受信信号の先行波が同期しているものとしてモデル化を行った。
【0048】
図6に、第iシンボルの送信信号s(t)の構成を示す。送信信号s(t)は、これら1つ1つのOFDMシンボルが時間的に並んだ形で構成される。
【0049】
図7に、受信信号の第iシンボル付近の構成を示す。簡単のため、先行波と3つの遅延パスのみが到来する場合を示したが、実際は式(1)でモデル化したように、遅延パスは連続的に到来する。
【0050】
以後、第iシンボルの復調・復号について考える。受信部b102でディジタル領域の受信信号が得られ、GI除去部b103でGIを除去し、FFT部b104で時間周波数変換を行う。これらの結果、得られる第iシンボルにおける第nサブキャリアの受信信号Ri,nは、次式(4)、(5)で表される。
【0051】
【数2】

【0052】
ここで、Hi,nは第iシンボルにおける第nサブキャリアのCFR、Zi,nは第iシンボルにおける第nサブキャリアの雑音、Δはディジタル信号のサンプリング周波数であり、Δ=1/NΔの関係がある。なお、h(t,τ)がiT≦t<(i+1)Tの間は変化せず、c(τ)に固定されるものとし、DはTを超えていないものとしてモデル化を行った。このため、雑音以外に干渉は生じていない。
【0053】
ここでは、復調に用いるHi,nの推定値である第2のCFR推定値H’’i,nが得られているものとして、伝搬路推定部以外の受信装置b1の残りの機能を説明する。H’’i,nを推定する伝搬路推定部の動作原理は後述する。
【0054】
復調部b109は、例えばMMSE基準のフィルタリングを用いた場合、復調シンボルS’i,nを次式(6)を用いて算出する。
【0055】
【数3】

【0056】
ここで、YはYの複素共役であることを示す。また、式(6)においてσはZi,nの電力であり、復号の結果を用いて得られるSi,nのレプリカS’’i,nを用いて次式(7)のように推定することができる。
【0057】
【数4】

【0058】
ただし、N個全てのサブキャリアを使っていない場合は、適宜平均するサブキャリア数を調整する。この処理を、復号の終わっているシンボルで行えばよい。なお、式(7)のようにサブキャリア方向の平均化だけでなく、シンボルに関して平均(iに関する平均)してもよいし、その際に過去の結果ほど忘却するような重み付け平均を行ってもよい。また、S’’i,nとして、復号部b110の出力結果を用いて作成されるソフトレプリカを用いてもよいし、あるいはそれを硬判定したハードレプリカを用いてもよい。また、復号結果ではなく、復調結果S’i,nをそのまま用いてもよいし、あるいはそれを硬判定したハードレプリカを用いてもよい。また、パイロットシンボルに該当する場合は、そのままパイロットシンボルを用いればよい。
【0059】
復調部b109は、式(6)の復調シンボルS’i,nからビット対数尤度比を算出する。この算出処理には等価振幅利得が用いられる。具体的には、QPSKの場合、次式(8)で表わされる第iシンボルにおける第nサブキャリアの等価振幅利得μi,nに対して、ビット対数尤度比λは、次式(9)、(10)で表わされる。ここで、式(9)、(10)は、それぞれ、1ビット目のビットbi,n,0、2ビット目のビットbi,n,1のビット対数尤度比λ(bi,n,0)、λ(bi,n,1)である。
【0060】
【数5】

【0061】
次に図4および図5を参照しながら、伝搬路推定の動作を説明する。第1のCFR推定部b106は、次式(11)のように第1のCFR推定値H’i,nを算出する。
【0062】
【数6】

【0063】
これを行うためには、第nサブキャリアの信号Si,nが既知である必要があるが、パイロットサブキャリアにおいて、パイロットシンボルを用いればよい。なお、雑音電力の推定で述べたように、復調または復号を行ったシンボルも用いればパイロットサブキャリアでなくとも式(11)を実行できるので、H’’i,nを算出するために用いるH’i,nを増やしてもよい。以後の説明は、パイロットサブキャリアのみを用いた場合で説明する。
【0064】
ここで、第2のCFR推定部b108において、第1のCFR推定値と後述する区間抽出部b107から得られる推定区間を用いて第2のCFR推定値を算出する方法について説明する。まず、第iシンボルにおいて、式(11)を実行できるパイロットサブキャリアを、n(0)、n(1)、・・・、n(P−1)とし、そのサブキャリアにおける第1のCFR推定値を並べたベクトルHi,p(Hは太字)を次式(12)のように定義する。
【0065】
【数7】

【0066】
ただし、Pは第iシンボルにおけるパイロットシンボル数、太字はベクトル又は行列を表わし、Y(Yは太字)はY(Yは太字)の転置を表わす。なお、例えば図2における最初のOFDMシンボルのパイロットサブキャリアを考えると、n(0)は一番低いサブキャリア、n(1)はそれより6つ先のサブキャリア、n(2)はさらに6つ先のサブキャリア、・・・、ということになる。この推定値は、ただパイロットシンボルで除算しただけであり、雑音の影響が大きいため、伝搬路の統計的性質を用いて雑音を低減するのが望ましい。また、パイロットサブキャリア以外のサブキャリアではCFRが求まっていないため、同様に伝搬路の統計的性質を用いて補間する。具体的に、伝搬路の統計的性質として周波数相関を用い、その周波数相関は推定区間の形状から算出される。
MMSE基準を用いて推定を行う場合、第2のCFR推定値を要素として持つベクトルH(Hは太字)は、次式(13)〜(15)で表される。
【0067】
【数8】

【0068】
ここで、RHiHi,p(Rは太字)はH(Hは太字)とHi,p(Hは太字)の相互相関行列、RHi,pHi,p(Rは太字)はHi,p(Hは太字)の自己相関行列、ρn,mはサブキャリアnとmの相関係数である。ρn,mは次式(16)で表される。
【0069】
【数9】

【0070】
ただし、E[x]はxのアンサンブル平均を表す。E[|c(τ)|]は遅延プロファイルを表し、通常は未知であるため、式(16)はこのままでは計算できない。非特許文献1では、この遅延プロファイルをモデル化することで計算を可能にしているが、実際に受信装置b1が受信信号を観測したときの遅延プロファイルとそのモデルとの不一致が大きい場合は、推定精度が低下する。図8にそのような場合の一例を示す。801と802は実際に受信した受信信号の電力を表し、803は想定するモデルの電力を表すものとする。この場合、804と805の区間に遅延パスは存在しないため、このような区間は0として推定する方が推定精度を向上させることができる。
【0071】
これを実現するため、本発明では、複数の候補区間を用意し、それらの選び方を変化させ、推定精度の高いものを探索する。図9は、8個の候補区間901〜908を用意した例である。これら候補区間からいくつかを選択する。例えば、901、905、906を選んだとすると、図8の伝搬路を推定する場合に図10のような関係となり、実際の伝搬路である801、802と最も似た形になり、推定精度が向上する。なお、本発明では、図10のような候補区間を組み合わせて生成した区間を推定区間と呼ぶ。
【0072】
候補区間の個数をK、候補区間kの幅をΔ、大きさをα、候補区間kの開始位置における遅延時間をτとすると、式(16)は次式(17)、(18)で表すことができる。
【0073】
【数10】

【0074】
ここで、sinc(x)は、x=0のとき1であり、それ以外のときはsin(πx)/(πx)となる関数である。また、式(17)のΦは、選択した候補区間の番号の集合である。なお、Δはkによらず固定の値、例えばΔや2Δとしてもよいし、一般的に遅延プロファイルは、遅延時間が大きい位置の方が広がっている傾向が強いため、遅延時間の大きい領域の区間では大きめに取る等としてもよい。以降の説明では、Δに一致しているものとして説明する。また、Kの具体的な値は、GIを超える遅延波はないと仮定してτがT程度となるようなKとΔの組み合わせとしてもよいし、もっと長い遅延波が存在することを想定してさらに大きいKを設定してもよい。また、αは固定の値にしておけばよく、例えば0.5/Δなどにしておけばよい。
【0075】
次に、図5を参照しながら区間抽出部b107における本実施形態の推定区間の抽出方法について説明する。まず、第1のCFR推定値にIFFTを施すことで、遅延プロファイルの形状を近似的に把握する。Hi,p(Hは太字)に対するIFFT結果をc’(cは太字)とすると、次式(19)、(20)のように表すことができる。
【0076】
【数11】

【0077】
ただし、Lは観測する最大遅延の離散時間に対応し、LΔ>Dとなるようにする。図11は、c’(cは太字)の電力を表している。1101〜1110はチャネルインパルス応答を離散的と仮定した場合のパスである。これは、遅延プロファイルの形状を近似的に表していると考えることができる。そこで、c’(cは太字)の電力のうち、大きい順に事前に定められた個数だけパスを抽出する。これは、パス抽出部b107−2の処理である。例えば、図11で5パス抽出する場合、1101、1102、1105、1106、1107を抽出する。この個数は、受信装置b1の設計段階で決めておいてもよいし、可変として受信装置b1のファームウェアやソフトウェアをアップデートする際に更新する等をしてもよい。
【0078】
抽出したパスに対して、推定区間を決定する。具体的には、c’(cは太字)のうち、第k要素のパスを抽出した場合に、対応する推定に用いる区間は、kΔ≦τ<(k+1)Δの区間とする。図12は、図11において1101、1102、1105、1106、1107を抽出した場合の推定区間を示す。図10と同様、それぞれの区間には図9と同じ番号付けをしている。図11の1101、1102、1105、1106、1107に対応する区間が、それぞれ図12の901、902、905、906、907ということになる。なお、c’(cは太字)の第k要素を第k区間の面積に設定するようにしてもよい。ここでは、面積はαΔに一致する。この場合、推定区間は図13のようになり、より実際の遅延プロファイルに近づけることができるため、推定精度はさらに向上する。なお、ΔがΔと異なる値を取っており、候補区間kの始まりがkΔにはならない場合は、遅延時間kΔを含む候補区間を選べばよい。
【0079】
<受信装置b1の動作について>
図14は、本実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。なお、この図が示す動作は、図4の受信部b102が受信信号をGI除去部b103に出力した後の処理である。
【0080】
(ステップS101)GI除去部b103は、受信信号からガードインターバルを除去する。その後、ステップS102へ進む。
【0081】
(ステップS102)FFT部b104は、ステップS101で得られる信号に対して時間周波数変換を行う。デマッピング部b105は、得られた周波数領域の信号から、データとパイロットを分離する。パイロットサブキャリアの受信信号を第1のCFR推定部b106に出力した後、ステップS103へ進む。
【0082】
(ステップS103)第1のCFR推定部b106は、ステップS102で得られるパイロットサブキャリアの受信信号を用いて伝搬路推定を行い、第1のCFR推定値を算出して区間抽出部b107および第2のCFR推定部b108に出力する。その後、ステップS104へ進む。
【0083】
(ステップS104)区間抽出部b107中の近似CIR推定部b107−1は、ステップS103で得られる第1のCFR推定値にIFFTを施すことで近似CIRを算出する。その後、ステップS105へ進む。
【0084】
(ステップS105)パス抽出部b107−2は、ステップS104で得られる近似CIRのうち電力の高い順番に所定の数のパスを抽出し、対応区間決定部b107−3は、それらに対応する推定区間を設定する。設定した推定区間を第2のCFR推定部b108に出力し、ステップS106へ進む。
【0085】
(ステップS106)第2のCFR推定部b108は、ステップS103で得られる第1のCFR推定値とステップS105で得られる推定区間とを用いて第2のCFR推定値を算出する。その後、ステップS107へ進む。
【0086】
(ステップS107)復調部b109は、ステップS106で得られる第2のCFR推定値を用い、復調処理を行う。その後、ステップS108へ進む。
【0087】
(ステップS108)復号部b110は、ステップS107で得られる復調結果を用いて復号を行う。その後、受信装置b1は動作を終了する。
【0088】
このように、本実施形態によれば、伝搬路推定部は、まずパイロットシンボルを用いて第1のCFR推定値を算出し、第1のCFR推定値をIFFTすることで得られる近似CIRのうち、電力の高いパスを抽出し、抽出したパスから推定区間を決定し、第1のCFR推定値と推定区間を用いて第2のCFR推定値を算出する。これにより、推定に用いる電力遅延プロファイルを、実際に電力の存在する遅延時間に電力を割り振り、そうではない遅延時間には電力を割り振らない形にすることができ、雑音および干渉の抑圧効果を増加させることで、伝搬路推定精度を向上させることができる。
【0089】
なお、上記第1の実施形態において、通信システムはマルチキャリア信号の通信を行う場合について説明したが、本発明はこれに限らず、FFTを用いてシングルキャリア信号の通信を行う場合にも、適用することができる。このことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0090】
なお、上記第1の実施形態において、各候補区間は長方形であるとして説明したが、台形や三角形でもよく、これに限らない。例えば、K個に分割する前の区間が指数減衰するものとし、それをK個に分割する等でもよい。
【0091】
なお、上記第1の実施形態において、式(11)のようにあるシンボルにおいては、そのシンボルのパイロットサブキャリアを用いて第1のCFR推定値を算出するようにしたが、異なるシンボルのパイロットサブキャリアを用いてもよい。例えば、図2における最初のシンボルを考える。このとき、5つ目のシンボルまでの伝搬路の時間変動は充分小さいものとし、5つ目のシンボルのパイロットサブキャリアで求まる第1のCFR推定値を最初のシンボルでも用いるようにする。この場合、最初のシンボルのパイロットサブキャリアは、最初のサブキャリア、3個先のサブキャリア、6個先のサブキャリア、・・・、のように数を大幅に増加させることができる。また、パイロットサブキャリアを持たないシンボルにもこの推定値を適用してもよい。例えば、図2の2〜4つ目のシンボルの推定値を、上述した、最初のサブキャリア、3個先のサブキャリア、6個先のサブキャリア、・・・、の推定値にしてもよい。また、時間変動が無視できない場合は、パイロットサブキャリア間で線形補間を行えばよい。これは、例えば、図2の最初のサブキャリアにおいて、最初のシンボルと8個目のシンボルに挟まれる2〜7個目のシンボルにおいて行えばよい。このことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0092】
なお、あるOFDMシンボルで決定した推定区間を異なるOFDMシンボルで用いてもよい。例えば、第iOFDMシンボルで推定区間を設定しても、伝搬路の時間変動が小さい場合には、第i+1OFDMシンボルでも同じ推定区間を用いてもよい。このようにすることで、第i+1OFDMシンボルでは区間抽出部b107の処理を省略できるため、計算量を削減することができる。このことは、後述する他の実施形態においても同様である。
【0093】
なお、上記第1の実施形態において、近似CIR推定値からパス抽出を行う際に、電力の高い順に所定の数のパスを抽出する場合について説明したが、雑音電力に所定の値を乗算して閾値を作成し、その閾値を上回るパスを抽出するようにしてもよい。乗算する所定の値は受信装置b1を設計する段階で固定してもよいし、受信装置b1のファームウェアやソフトウェアをアップデートする際に更新する等でもよい。このことは後述する第3の実施形態においても同様である。
【0094】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。第1の実施形態では、送信装置a1がパイロットシンボルを周波数領域にマッピングするマルチキャリア信号等を送信し、受信装置b1が、パイロットサブキャリアにおいて第1のCFR推定値を算出し、第1のCFR推定値から算出される近似CIR推定値のうち電力の高いパスを抽出し、対応する推定区間を設定し、第1のCFR推定値と設定した推定区間とを用いることで第2のCFR推定値を算出する。本実施形態では、K個に分けた区間を候補区間とし、それらのどれを選択すべきかを、実際に第2のCFR推定値算出を行いながらテストすることを繰り返すことで決定する方法について説明する。
【0095】
図15は、本発明の第2の実施形態に係る受信装置b2の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る受信装置b2(図15)と第1の実施形態に係る受信装置b1(図4)とを比較すると、区間抽出部b207が異なる。しかし、その他の構成要素(受信アンテナb101、受信部b102、GI除去部b103、FFT部b104、デマッピング部b105、第1のCFR推定部b106、第2のCFR推定部b108、復調部b109、復号部b110)が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0096】
図16は、区間抽出部b207の構成を示す概略ブロック図である。この図において、区間抽出部b207は、テストCFR推定部b207−1、伝搬路適合度算出部b207−2、不要候補区間除去部b207−3、判断部b207−4、区間決定部b207−5から構成される。ここで、テストCFRとは、候補区間を組み合わせて推定区間候補とし、それと第1の周波数応答推定値を用いて算出される第2のCFR推定値であり、区間抽出部b207は、テストCFR推定値の推定精度を予想して、推定精度を向上させる推定区間を繰り返し処理により決定する。また、伝搬路適合度とは、ある推定区間候補を用いて推定されたテストCFR推定値が、第1のCFR推定値とどれだけ適合しているかを表す量であり、本発明では、この伝搬路適合度が高い推定値を推定精度の高い推定値と判断する。伝搬路適合度に関する詳細は後述する。
【0097】
また、区間抽出部b207は、推定区間を抽出するために一時記憶場所を持ち、以下のような変数で表す。
selected_interval: 選択した区間を保存する。初期値は空とする。
candidate_intervals: 候補区間を保存する。初期値は[0、1、・・・、K−1]とする。
estimate_interval_candidates: 推定区間候補を保存する。初期値は任意とする。
estimated_H: テストCFR推定値を保存する。初期値は任意とする。
channel_match: 伝搬路適合度を保存する。初期値は任意とする。
channel_match_prev: 1つ前の繰り返し処理で決定した伝搬路適合度を保存する。初期値は−∞とする。
【0098】
テストCFR推定部b207−1では、まずselected_intervalにcandidate_intervalsの各要素を加えて推定区間候補を作成し、estimate_interval_candidatesに保存する。次に、estimate_interval_candidatesの各候補を用いて、テストCFR推定値を式(13)〜(18)を用いて算出し、その結果をestimated_Hに保存する。例えば、初回処理ではselected_intervalは空、candidate_intervalsは[0、1、・・・K−1]であるため、estimate_interval_candidatesは[[0]、[1]、・・・、[K−1]]となる。また、例えば3回目の繰り返し処理において、selected_intervalが[0、2]、candidate_intervalsが[1、3、5]になっていた場合、estimate_interval_candidatesは[[0、2、1]、[0、2、3]、[0、2、5]]となる。
【0099】
伝搬路適合度算出部b207−2では、estimated_Hそれぞれに対して、伝搬路適合度を算出する。伝搬路適合度としては、例えばテストCFR推定値と第1のCFR推定値の平均2乗誤差を用いる。具体的には、次式(21)を用いる。
【0100】
【数12】

【0101】
ここで、第i’シンボルは、テストCFR推定値を算出した第iシンボルとは異なるシンボルである。例えば、図2において先頭のシンボルでテストCFR推定値を算出した場合、5番目のシンボルを第i’シンボルとすればよい。なお、それ以外の過去のシンボルや未来のシンボルを用いてもよい。第iシンボルとは異なるシンボルを用いるのは、同じ雑音系列の乗ったシンボルで比較を行うと、過学習が起こり、最終的な選択区間数が多くなる可能性があるためである。この計算を各テストCFR推定値に対して行い、channel_matchに保存する。
【0102】
不要候補区間除去部b207−3では、channel_matchに保存された複数の伝搬路適合度の中で、channel_match_prevに保存された1つ前の繰り返しで決定された伝搬路適合度より小さいものが存在した場合、対応するcandidate_intervalsの要素を削除する。これは、その区間を追加して推定を行っても、推定精度が向上していないと考えられ、これ以上考慮に入れる必要がないと判断できるためである。なお、初回処理の場合は、1つ前の繰り返しが存在せず、channel_match_prevに保存されている値は−∞となっているため、除去は行われない。
【0103】
判断部b207−4では、繰り返し処理を終了するか否かを判断する。まず、candidate_intervalsが空だった場合、1つ前の繰り返しで決定した区間に対して、どの候補区間を追加しても伝搬路適合度が向上しなかったことを意味するため、selected_intervalに保存された1つ前の繰り返しで決定された推定区間を最終結果として第2のCFR推定部b108に出力し、繰り返し処理を終了する。次に、candidate_intervalsの要素が残り1つだった場合、その残った候補区間は、1つ前の繰り返しで決定した区間に追加して伝搬路適合度が向上する最後の候補であることを意味するため、対応するestimate_interval_candidatesの要素を推定区間として第2のCFR推定部b108に出力して処理を終了する。上述した2つの条件に当てはまらなかった場合は、繰り返し処理を続行する。なお、第2のCFR推定部b108に出力するのを、推定区間ではなく、対応するテストCFR推定値としてもよい。この場合、第2のCFR推定部b108は推定を行わず、入力されたCFR推定値を第2のCFR推定値としてそのまま復調部b109に出力する。なお、candidate_intervalsの要素が残り1つでなくても、処理を終了するようにしてもよい。例えば、2つや3つのような少ない数であればよく、これに限るものではない。そのような場合、残った候補区間の要素を全て1つ前の繰り返しで決定した推定区間に加えてから出力してもよいし、最大のものだけを加えるようにしてもよい。
【0104】
区間決定部b207−5では、channel_matchの要素の中で、最大のものを選択し、それに対応する候補区間を新たな推定区間の一部として決定する。処理としては、選択したchannel_matchの要素をchannel_match_prevに保存し、candidate_intervalsから該当する候補区間を削除し、selected_intervalに新たな要素として追加する。その後、テストCFR推定部b207−1の処理に戻り、次の繰り返し処理に移行する。
【0105】
これらの動作は、判断部b207−4による終了判定が行われるまで繰り返し行われる。
【0106】
<受信装置b2の動作について>
図17は、本実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。なお、この図が示す動作は、図15の受信部b102が受信信号をGI除去部b103に出力した後の処理である。
【0107】
(ステップS201)GI除去部b103は、受信信号からガードインターバルを除去する。その後、ステップS202へ進む。
【0108】
(ステップS202)FFT部b104は、ステップS201で得られる信号に対して時間周波数変換を行う。デマッピング部b105は、得られた周波数領域の信号から、データとパイロットを分離する。パイロットサブキャリアの受信信号を第1のCFR推定部b106に出力した後、ステップS203へ進む。
【0109】
(ステップS203)第1のCFR推定部b106は、ステップS202で得られるパイロットサブキャリアの受信信号を用いて伝搬路推定を行い、第1のCFR推定値を算出して区間抽出部b207および第2のCFR推定部b108に出力する。その後、ステップS204へ進む。
【0110】
(ステップS204)区間抽出部b207中のテストCFR推定部b207−1は、既に決定されている推定区間に、残っている候補区間を追加して推定区間候補を生成し、その推定区間候補それぞれとステップS203で得られる第1のCFR推定値を用いたテストCFR推定値算出を行う。結果を伝搬路適合度算出部b207−2に出力し、その後、ステップS205へ進む。
【0111】
(ステップS205)伝搬路適合度算出部b207−2は、ステップS204で得られる各テストCFR推定値と、ステップS203で得られる第1のCFR推定値とを用いて伝搬路適合度を算出し、その結果を不要候補区間除去部b207−3に出力する。その後、ステップS206へ進む。
【0112】
(ステップS206)不要候補区間除去部b207−3は、ステップS205で得られる伝搬路適合度のうち、ステップS209で決定された1つ前の繰り返しにおける伝搬路適合度より小さかった場合、対応する候補区間を削除する。ただし、初回処理の場合はステップS209が実行されていないので、上述した比較および削除は行わない。その後、ステップS207へ進む。
【0113】
(ステップS207)判断部b207−4は、ステップS206の結果、候補区間が空になったことを検出した場合、ステップS209で決定された1つ前の繰り返しにおける推定区間を第2のCFR推定部b108に出力し、ステップS210へ進む。そうではない場合、ステップS208へ進む。
【0114】
(ステップS208)判断部b207−4は、ステップS206の結果、候補区間が残り1つになったことを検出した場合、ステップS204で得られるテストCFR推定値のうち、残った候補区間に対応するものを選び、そのテストCFR推定値算出に用いた推定区間候補を推定区間として第2のCFR推定部b108に出力し、ステップS210へ進む。そうではない場合、ステップS209へ進む。
【0115】
(ステップS209)区間決定部b207−5は、ステップS206の結果、残った伝搬路適合度のうち、最大のものを選択し、その伝搬路適合度を保存する。また、その伝搬路適合度に対応する候補区間の要素を候補区間から削除し、推定区間に追加する。それを新たに決定された推定区間とし、ステップS204へ戻る。
【0116】
(ステップS210)第2のCFR推定部b108は、ステップS208またはステップS209で得られる推定区間を用いて第2のCFR推定値を算出し、復調部b109に出力する。その後、ステップS211へ進む。
【0117】
(ステップS211)復調部b109は、ステップS210で得られる第2のCFR推定値を用い、復調処理を行う。その後、ステップS211へ進む。
【0118】
(ステップS212)復号部b110は、ステップS211で得られる復調結果を用いて復号を行う。その後、受信装置b2は動作を終了する。
【0119】
このように、本実施形態によれば、区間抽出部b207は、伝搬路適合度を向上させる候補区間を1つずつ検出し、推定区間を決定する。これにより、推定に用いる電力遅延プロファイルを、実際に電力の存在する遅延時間に電力を割り振り、そうではない遅延時間には電力を割り振らない形にすることができ、雑音および干渉の抑圧効果を増加させることで、伝搬路推定精度を向上させることができる。また、伝搬路適合度を向上できない区間を削除する動作を同時に行うことで、計算量を大幅に削減する。
【0120】
なお、上記第2の実施形態において、候補区間を1つずつ決定する場合について説明したが、一度に決定する候補区間を増やしてもよい。一度に決定する区間数は、予め決めておいてもよいし、設計段階では可変にしておき、受信装置b1のファームウェア、ソフトウェア等をアップデートするときに更新する等してもよい。
【0121】
なお、上記第2の実施形態において、候補区間を1つずつ検出し、同時に伝搬路適合度を増加できない候補区間を削除する方法について説明したが、削除を省略してもよい。
【0122】
なお、上記第2の実施形態において、式(17)のように、候補区間kの電力αは定数としているが、複数の候補から選ぶようにしてもよい。例えば、αの候補として0.5/Δ、0.25/Δ、0.125/Δを用意しておき、それぞれに対して伝搬路適合度を算出するようにしてもよい。その3つの中で最大の伝搬路適合度を、候補区間kの伝搬路適合度としてchannel_matchに保存するようにしてもよい。
【0123】
なお、上記第2の実施形態において、ある推定区間候補を用いて算出したテストCFR推定値の伝搬路適合度算出に用いる第1のCFR推定値を、異なるシンボルのものとしたが、違う雑音系列であればよく、これに限るものではない。例えば、図2の最初のシンボルにおいて、テストCFR推定値を算出するのに用いる第1のCFR推定値を、最初のサブキャリア、12個先のサブキャリア、24個先のサブキャリア、・・・、というように1つ飛ばしとし、飛ばした6個先のサブキャリア、18個先のサブキャリア、30個先のサブキャリア、・・・、の系列を伝搬路適合度算出に用いるようにしてもよい。
【0124】
なお、上記第2の実施形態において、伝搬路適合度としてテストCFR推定値と第1のCFR推定値との平均2乗誤差を用いる場合について説明したが、相互相関を用いてもよい。
【0125】
なお、上記第2の実施形態において、伝搬路適合度としてテストCFR推定値と第1のCFR推定値との平均2乗誤差や相互相関を用いる場合について説明したが、これに加えて推定区間の形状によって決まるペナルティを加算してもよい。ここで、その説明を行う。
【0126】
i,p(Hは太字)に加わっている雑音は、白色ガウス雑音とみなすのが一般的である。従って、Hi,p(Hは太字)の尤度関数p(Hi,p|H)(Hは太字)を次式(22)で表すことができる。
【0127】
【数13】

【0128】
ここで、H(Hは太字)はテストCFR推定値の変数ベクトルである。ただし、記述を簡単にするため、第iシンボルにおけるパイロットサブキャリアの要素のみを持つサイズPのベクトルとする。また、H(Hは太字)もガウス分布であると仮定すると、その事前分布p(H)(Hは太字)は次式(23)で表すことができる。
【0129】
【数14】

【0130】
尤度関数と事前分布を用いると、次式(24)で表される相関行列RHi,pHi,p(Rは太字)を用いたときの推定ベクトルH’(Hは太字)がどれだけ式(12)のHi,p(Hは太字)にフィッティングしているかを表すモデルエビデンスを、次式(25)のように計算することができる。
【0131】
【数15】

【0132】
ここで、式(24)は式(13)で得られる推定値のうち、第iシンボルのパイロットサブキャリアの要素のみを並べたベクトルを表す。
【0133】
式(25)がペナルティを加算する場合の伝搬路適合度であり、第1項はテストCFR推定値と第1のCFR推定値の相互相関に対して雑音電力で除算を行ったものを表す。相互相関の代わりに平均2乗誤差を用いてもよい。
【0134】
また、第2項はRHi,pHi,p(Rは太字)を用いたときのペナルティを表し、最終的な推定区間が必要以上に増加することを防ぐ。
【0135】
第3項は、RHi,pHi,p(Rは太字)によらない定数であるので、伝搬路適合度算出部b207−2では加算を行わない。このようなペナルティを含んだ伝搬路適合度を用いると、過学習の問題を防ぐことができ、伝搬路適合度算出に用いる第1のCFR推定値をテストCFR推定値と同じシンボルのものにすることができ、伝搬路が高速に変動している場合に有効となる。
【0136】
なお、ペナルティ値は、ベイズ情報量規準や赤池情報量規準のように、事前に決まった値であってもよい。例えば、区間抽出部b207の処理において、そのときに選択している区間の数をパラメータ数mと考えると、ベイズ情報量規準を用いる場合の伝搬路適合度は次式(26)のようになる。
【0137】
【数16】

【0138】
これを用いれば、ペナルティの計算は不要となる。なお、次式(27)のような赤池情報量規準を用いてもよいし、その他の情報量規準を用いてもよい。
【0139】
【数17】

【0140】
(第3の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第3の実施形態について詳しく説明する。第1の実施形態では、送信装置a1がパイロットシンボルを周波数領域にマッピングするマルチキャリア信号等を送信し、受信装置b1が、パイロットサブキャリアにおいて第1のCFR推定値を算出し、第1のCFR推定値から算出される近似CIR推定値のうち電力の高いパスを抽出し、対応する推定区間を設定し、第1のCFR推定値と設定した推定区間とを用いることで第2のCFR推定値を算出する。一方、第2の実施形態では、K個に分けた区間を候補区間とし、それらのどれを選択すべきかを、実際に第2のCFR推定値算出を行いながらテストすることを繰り返す。本実施形態では、第1の実施形態と同様に近似CIRのうち電力の高いパスを抽出し、対応する推定区間を設定し、第1のCFR推定値と設定した推定区間とを用いることで第2のCFR推定値を算出するが、抽出するパス数を複数パターン用意しておく。この結果得られる複数の第2のCFR推定値をテストCFR推定値とし、どれを復調用に用いるかを第2の実施形態で用いる伝搬路適合度により決定する方法について説明する。
【0141】
図18は、本発明の第3の実施形態に係る受信装置b3の構成を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る受信装置b3(図18)と第1の実施形態に係る受信装置b1(図4)とを比較すると、区間抽出部b307が異なる。しかし、その他の構成要素(受信アンテナb101、受信部b102、GI除去部b103、FFT部b104、デマッピング部b105、第1のCFR推定部b106、第2のCFR推定部b108、復調部b109、復号部b110)が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略する。
【0142】
図19は、区間抽出部b307の構成を示す概略ブロック図である。この図において、区間抽出部b307は、近似CIR推定部b107−1、パス抽出部b307−2−q、対応区間決定部b307−3−q、テストCFR推定部b307−4−q、伝搬路適合度算出部b307−5−q、比較部b307−6から構成される。ここで、q=1、2、・・・、Qであり、Qは複数存在する抽出するパス数の個数である。近似CIR推定部b107−1は、第1の実施形態の区間抽出部b107(図5)における近似CIR推定部b107−1と同じである。この機能の説明は省略する。
【0143】
パス抽出部b307−2−qは、近似CIR推定部b107−1から入力される近似CIR推定値を用いて、電力の高いパスを抽出する。ここで、抽出するパス数はqによって異なる。それぞれの抽出するパス数は、受信装置b3を設計した段階で固定してもよいし、受信装置b3のファームウェアやソフトウェアをアップデートする際に更新する等でもよい。パス抽出部b307−2−qが抽出したパスの情報を、対応区間決定部b307−3−qに出力する。
【0144】
対応区間決定部b307−3−qは、パス抽出部b307−2−qから入力される抽出されたパスに対応する区間を推定区間として決定する。決定した推定区間をテストCFR推定部b307−4−qに出力する。
【0145】
テストCFR推定部b307−4−qは、対応区間決定部b307−3−qから入力される推定区間と第1のCFR推定部b106から入力される第1のCFR推定値を用いてテストCFR推定値を算出する。推定値を伝搬路適合度算出部b307−5−qに出力する。
【0146】
伝搬路適合度算出部b307−5−qは、テストCFR推定部b307−4−qから入力されるテストCFR推定値と第1のCFR推定部b106から入力される第1のCFR推定値を用いて伝搬路適合度を算出する。この際に用いる伝搬路適合度は、第2の実施形態で説明したものを用いればよい。算出した伝搬路適合度を比較部b307−6に出力する。
【0147】
比較部b307−6は、伝搬路適合度算出部b307−5−qから入力されるQ個の伝搬路適合度のうち、最大のものを選択する。選択した伝搬路適合度に対応する推定区間を第2のCFR推定部b108に出力する。なお、Q個の伝搬路適合度のうち最大のものではなく、ある閾値を上回るものの中から任意に選んでもよい。その閾値は受信装置b3の設計段階で固定してもよいし、受信装置b3のファームウェアやソフトウェアをアップデートする際に更新する等でもよい。なお、選択した伝搬路適合度に対応するテストCFR推定値を第2のCFR推定部b108に出力してもよい。この場合は、第2のCFR推定部b108は推定を行わず、入力されたテストCFR推定値を第2のCFR推定値として復調部b109に出力する。
【0148】
<受信装置b3の動作について>
図20は、本実施形態に係る受信装置の動作を示すフローチャートである。なお、この図が示す動作は、図18の受信部b102が受信信号をGI除去部b103に出力した後の処理である。
【0149】
(ステップS301)GI除去部b103は、受信信号からガードインターバルを除去する。その後、ステップS302へ進む。
【0150】
(ステップS302)FFT部b104は、ステップS301で得られる信号に対して時間周波数変換を行う。デマッピング部b105は、得られた周波数領域の信号から、データとパイロットを分離する。パイロットサブキャリアの受信信号を第1のCFR推定部b106に出力した後、ステップS303へ進む。
【0151】
(ステップS303)第1のCFR推定部b106は、ステップS302で得られるパイロットサブキャリアの受信信号を用いて伝搬路推定を行い、第1のCFR推定値を算出して区間抽出部b307および第2のCFR推定部b108に出力する。その後、ステップS304へ進む。
【0152】
(ステップS304)区間抽出部b307中の近似CIR推定部b107−1は、ステップS303で得られる第1のCFR推定値にIFFTを施すことで近似CIR推定値を算出する。その後、ステップS305へ進む。
【0153】
(ステップS305)パス抽出部b307−2−qは、ステップS304で得られる近似CIR推定値のうち電力の高い順番に所定の数のパスを抽出し、対応区間決定部b307−3−qは、それらに対応する推定区間を設定する。設定した推定区間をテストCFR推定部b307−4−qに出力し、ステップS306へ進む。
【0154】
(ステップS306)テストCFR推定部b307−4−qは、ステップS305で得られる推定区間とステップS303で得られる第1のCFR推定値を用いてテストCFR推定値を算出する。その後、ステップS307へ進む。
【0155】
(ステップS307)伝搬路適合度算出部b307−5−qは、ステップS306で得られる伝搬路適合度とステップS303で得られる第1のCFR推定値を用いて伝搬路適合度を算出する。比較部S307−6は、算出した伝搬路適合度の中で最大のものを選択し、選択した伝搬路適合度に対応する推定区間を第2のCFR推定部b108に出力する。その後、ステップS308へ進む。
【0156】
(ステップS308)第2のCFR推定部b108は、ステップS307で得られる推定区間を用いて第2のCFR推定値を算出し、復調部b109に出力する。その後、ステップS309へ進む。
【0157】
(ステップS309)復調部b109は、ステップS308で得られる第2のCFR推定値を用い、復調処理を行う。その後、ステップS310へ進む。
【0158】
(ステップS310)復号部b110は、ステップS309で得られる復調結果を用いて復号を行う。その後、受信装置b3は動作を終了する。
【0159】
このように、本実施形態によれば、電力の高い順の抽出するパス数を伝搬路適合度により決定し、その数だけ抽出されたパスから推定区間を決定する。これにより抽出パス数を最適な数値に設定することができ、伝搬路推定精度を向上させることができる。また、繰り返し処理を伴わないため、計算量を削減することができる。
【0160】
なお、上記第3の実施形態において、パス抽出部b307−2−q、対応区間決定部b307−3−q、テストCFR推定部b307−4−q、伝搬路適合度算出部b307−5−qがQ個並列に並んでいる場合について説明したが、並列でなくともよい。例えば、パス抽出部、対応区間決定部、テストCFR推定部、伝搬路適合度算出部を1つだけ備え、抽出パス数を変えながら順番に動作させる等でもよい。
【0161】
なお、上述した実施形態における送信装置a1及び受信装置b1〜b3の一部、例えば、区間抽出部b107、復調部b109をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0162】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、送信装置a1又は受信装置b1〜b3に内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0163】
また、上述した実施形態における送信装置a1及び受信装置b1〜b3の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。送信装置a1及び受信装置b1〜b3の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0164】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明は、受信装置、受信方法、通信システムおよび通信方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0166】
a1 送信装置
a101 パイロット生成部
a102 符号部
a103 変調部
a104 マッピング部
a105 IFFT部
a106 GI挿入部
a107 送信部
a108 送信アンテナ部
b1 受信装置
b101 受信アンテナ
b102 受信部
b103 GI除去部
b104 FFT部
b105 デマッピング部
b106 第1のCFR推定部
b107、b207、b307区間抽出部
b107−1 近似CIR推定部
b107−2、b307−2−1〜Q パス抽出部
b107−3、b307−3−1〜Q対応区間決定部
b108 第2のCFR推定部
b109 復調部
b110 復号部
b207−1、b307−4−1〜Q テストCFR推定部
b207−2、b307−5−1〜Q 伝搬路適合度算出部
b207−3 不要候補区間除去部
b207−4 判断部
b207−5 区間決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照信号を用いて第1の周波数応答推定値を算出する第1の周波数応答推定部と、
所定の最大遅延時間を複数の区間に分割した候補区間から、少なくとも1つの区間を抽出して推定区間を求める区間抽出部と、
前記第1の周波数応答と前記推定区間とを用いて復調用の周波数応答推定値である第2の周波数応答推定値を算出する第2の周波数応答推定部と、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記候補区間の区間長は全て同じ長さであることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記候補区間の区間長のうち少なくとも1つは長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
前記候補区間の遅延時間に基づいて区間長を決定することを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記区間抽出部は、
前記第1の周波数応答推定値に周波数時間変換を施して近似チャネルインパルス応答を算出する近似チャネルインパルス応答推定部と、
前記近似チャネルインパルス応答を構成するパスのうち、所定の個数のパスを抽出するパス抽出部と、
前記候補区間のうち前記抽出されたパスの、遅延時間を含む区間を前記推定区間として決定する対応区間決定部と、
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記パス抽出部は、電力に基づいて前記所定の個数のパスを抽出すること
を特徴とする請求項5に記載の受信装置。
【請求項7】
前記パス抽出部は、
前記近似チャネルインパルス応答を構成するパスのうち、電力が雑音電力に所定の値を乗算した値を上回るパスを抽出することを特徴とする請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記対応区間決定部は、
前記推定区間を構成するそれぞれの区間の面積を、その区間を決定するのに用いた遅延パスの電力に従って設定することを特徴とする請求項6または7に記載の受信装置。
【請求項9】
前記区間抽出部は、
前記パス抽出部と前記対応区間決定部を各々複数かつ同数備え、
前記第1の周波数応答と前記対応区間決定部が出力する各々の推定区間とを用いてテスト周波数応答推定値を複数算出するテスト周波数応答推定部と、
前記第1の周波数応答を用いて前記テスト周波数応答推定値のそれぞれの伝搬路適合度を算出する伝搬路適合度算出部と、
前記伝搬路適合度に基づいて前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間を選択する比較部と、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項10】
前記区間抽出部は、
前記候補区間を組み合わせて推定区間候補とし、該推定区間候補からテスト周波数応答推定値を算出するテスト周波数応答推定部と、
前記テスト周波数応答推定値から伝搬路適合度を算出する伝搬路適合度算出部と、
をさらに備え、
前記推定区間候補を複数求め、前記伝搬路適合度を用いて前記複数の推定区間候補から前記推定区間を算出すること
を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項11】
前記区間抽出部は、
前記候補区間を少なくとも1つ選択する処理を繰り返し、前記推定区間を決定し、
前記テスト周波数応答推定部は、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に、前記候補区間を少なくとも1つ追加して推定区間候補を作成し、
前記伝搬路適合度であって、1つ前の繰り返し算出された前記伝搬路適合度の中で最大のものを下回った伝搬路適合度を算出するのに用いた前記候補区間を削除する不要候補区間除去部と、
削除が行われた後の前記候補区間の残り個数が0であった場合、前記繰り返しを中止して1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間を前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間として決定する判断部と、
前記伝搬路適合度の中で大きい順に所定の個数を抽出し、該伝搬路適合度を算出するのに用いた候補区間を、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に追加して新たな推定区間とし、テスト周波数応答推定部から始まる次の繰り返しに移行させる区間決定部と、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
前記区間決定部が1つの繰り返しで決定する候補区間の要素は1つであることを特徴とする請求項11に記載の受信装置。
【請求項13】
前記判断部は、
削除が行われた後の前記伝搬路適合度の個数が0と1以外の所定の個数以下であった場合、残った伝搬路適合度を算出するのに用いた候補区間の要素を、1つ前の繰り返しで決定された前記推定区間に加えた新たな推定区間を前記第2の周波数応答推定部が用いる推定区間として決定する処理をさらに行うことを特徴とする請求項11または12に記載の受信装置。
【請求項14】
前記伝搬路適合度算出部は、
前記伝搬路適合度として前記テスト周波数応答推定値と前記第1の周波数応答推定値との平均二乗誤差を用いることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項15】
前記伝搬路適合度算出部は、
前記伝搬路適合度として前記テスト周波数応答推定値と前記第1の周波数応答推定値との相互相関を用いることを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項16】
前記伝搬路適合度算出部は、
前記伝搬路適合度として、さらに前記テスト周波数応答推定値を算出するのに用いた前記推定区間の形状から決まるモデルエビデンスをペナルティとして加算したものを用いることを特徴とする請求項14または15に記載の受信装置。
【請求項17】
前記伝搬路適合度算出部は、
前記伝搬路適合度として、さらにベイズ情報量規準のペナルティを加算したものを用いることを特徴とする請求項14または15に記載の受信装置。
【請求項18】
前記伝搬路適合度算出部は、
前記伝搬路適合度として、さらに赤池情報量規準のペナルティを加算したものを用いることを特徴とする請求項14または15に記載の受信装置。
【請求項19】
マルチキャリア信号を復調する受信方法であって、
参照信号を用いて第1の周波数応答推定値を算出する第1の周波数応答推定過程と、
所定の最大遅延時間を持つ電力遅延プロファイルを所定の個数の区間に分割して候補区間とし、前記候補区間から少なくとも1つの区間を抽出して推定区間とする区間抽出過程と、
前記第1の周波数応答と前記推定区間とを用いて復調用の周波数応答推定値である第2の周波数応答推定値を算出する第2の周波数応答推定過程と、
を有することを特徴とする受信方法。
【請求項20】
請求項19に記載の受信方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−93714(P2013−93714A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234091(P2011−234091)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)