説明

受信装置、送信装置及び無線通信方法

【課題】コスト上昇や処理遅延を抑制しつつ、非直交マルチアクセスを利用し得る受信装置、送信装置及び無線通信方法を提供する。
【解決手段】移動局200Aは、干渉キャンセラによる非直交信号のキャンセルに用いられる制御信号を受信する目的ユーザ制御信号検出部230及び干渉ユーザ制御信号検出部240を備える。制御信号は、他の移動局宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成される。移動局200Aは、当該制御情報に基づいて他の移動局宛ての無線信号を復調及びキャンセルする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非直交マルチアクセスに適応する受信装置、送信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システム、例えば、3GPPにおいて標準化されたLong Term Evolution(LTE)では、基地局とユーザ端末(移動局)との間において、複数の信号が互いに干渉しない直交信号を用いた直交マルチアクセスが広く用いられている。一方、移動体通信システムのキャパシティを増大させるため、非直交信号を用いた非直交マルチアクセスが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
非直交マルチアクセスでは、非線形信号処理による信号分離(干渉キャンセラ)が前提となっている。例えば、下りリンクの場合、基地局が複数のユーザ端末宛てに非直交信号を同時送信する。各ユーザ端末は、受信した非直交信号の中から、自端末よりもパスロスの大きい(セル端の)ユーザ端末への信号を信号処理により除去してから復調する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】D. Tse and P. Viswanath, “Fundamentals of Wireless Communication”, Cambridge University Press、2005年、インターネット<http://www.eecs.berkeley.edu/~dtse/book.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、非直交マルチアクセスの場合、各ユーザ端末、つまり、移動局は、自局よりもパスロスの大きい移動局への信号を信号処理により除去してから復調する必要がある。このため、移動局における処理負荷が高く、移動局のコスト上昇や処理遅延の問題が生じ得る。このような問題を解決するためには、直交マルチアクセスと非直交マルチアクセスとを併用するハイブリッド直交/非直交マルチアクセスの導入が考えられる。これにより、移動局のコスト上昇や処理遅延の問題は、ある程度抑制できると考えられる。
【0006】
しかしながら、実装上の観点からは、更なるコストや処理遅延の抑制を図るべく、各移動局は、非直交マルチアクセスとして多重されている移動局の状態を認識できることが好ましい。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、コスト上昇や処理遅延を抑制しつつ、非直交マルチアクセスを利用し得る受信装置、送信装置及び無線通信方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号を受信する無線信号受信部(物理チャネル分離部210)と、前記無線信号受信部が受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルすることによって、当該受信装置宛ての非直交信号を抽出する干渉キャンセル部(データ復調/復号部220)と、前記干渉キャンセル部による前記無線信号の復調及びキャンセルに用いられる制御信号を受信する制御信号受信部(目的ユーザ制御信号検出部230及び干渉ユーザ制御信号検出部240)と、前記干渉キャンセル部によって抽出された当該受信装置宛ての信号を復調する復調部(データ復調/復号部220)とを備え、前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成され、前記干渉キャンセル部は、前記制御情報に基づいて前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする受信装置(例えば、移動局200A)であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第2の特徴は、互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号をセル内に位置する複数の受信装置に向けて送信する無線信号送信部(ハイブリッド直交/非直交多重部130及び物理チャネル多重部160)と、前記受信装置が受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルするために用いられる制御信号を前記複数の受信装置に向けて送信する制御信号送信部(制御信号生成部140、制御信号リソース割当部150及び物理チャネル多重部160)とを備え、前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成される送信装置(基地局100)であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第3の特徴は、通信装置が、互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号を受信するステップと、前記通信装置が、受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号の復調及びキャンセルするために用いられる制御信号を受信するステップと、前記通信装置が、前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルするステップと、前記通信装置が、前記干渉キャンセル部によって抽出された当該受信装置宛ての信号を復調するステップとを含み、前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成され、前記非直交信号をキャンセルするステップでは、前記制御情報に基づいて前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする無線通信方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の特徴によれば、コスト上昇や処理遅延を抑制しつつ、非直交マルチアクセスを利用し得る受信装置、送信装置及び無線通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体通信システム1の全体概略構成図である。
【図2】直交マルチアクセス、非直交マルチアクセス、及びハイブリッド直交/非直交マルチアクセスの無線リソースの割当イメージを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基地局100の送信部の機能ブロック構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る移動局200Aの受信部の機能ブロック構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る基地局100における非直交信号への移動局のスケジューリングの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る無線リソースブロックの割当例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る制御信号の構成例1を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る制御信号の構成例2を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係る制御信号の構成例3を示す図である。
【図10】本発明の実施形態に係る制御信号の構成例4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0014】
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
図1は、本実施形態に係る移動体通信システム1の全体概略構成図である。図1に示すように、移動体通信システム1は、基地局100及び移動局200A, 200Bを含む。
【0016】
基地局100は、移動局200A, 200Bに向けて、具体的にはセルC1内に向けて無線信号を送信する。また、基地局100は、移動局200A, 200Bから無線信号を受信する。本実施形態において、基地局100は送信装置を構成し、移動局200A, 200Bは受信装置を構成する。
【0017】
移動局200Aは、セルC1内に位置するが基地局100からの無線信号のパスロスが大きいセルC1のセル端に位置する。移動局200Bは、セルC1内の中央に位置する。このため、基地局100からの無線信号のパスロスは、移動局200Aにおけるパスロスよりも小さい。
【0018】
本実施形態では、基地局100と移動局200A, 200Bとは、互いに直交する複数の直交信号と、互いに直交しない複数の非直交信号とが含まれた無線信号をセルC1に位置する移動局200A, 200Bに向けて送信する。すなわち、移動体通信システム1では、直交信号を用いた複数の移動局との同時通信を実現する直交マルチアクセスと、非直交信号を用いた複数の移動局との同時通信を実現する非直交マルチアクセスとが併用(以下、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセス)される。
【0019】
図2(a)〜(c)は、直交マルチアクセス、非直交マルチアクセス、及びハイブリッド直交/非直交マルチアクセスの無線リソースの割当イメージを示す。図2(a)に示すように、直交マルチアクセスでは、周波数領域/時間領域/空間領域における帯域において、各移動局(ユーザ)に割り当てられる無線リソースが重複しない。このため、直交マルチアクセスでは、原則的には、他の移動局に割り当てられる無線リソースによる干渉を除去する必要がない。直交マルチアクセスは、3GPPにおいて標準化されているLong Term Evolution(LTE)でも用いられている。
【0020】
図2(b)に示すように、非直交マルチアクセスでは、当該帯域において、各移動局に割り当てられる無線リソースが重複する。このため、移動局は、全てのマルチアクセス干渉を信号処理により除去する必要がある。具体的な信号処理については、上述した非特許文献1に記載された技術を用いることができる。
【0021】
図2(c)に示すように、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスでは、当該帯域において、各移動局に割り当てられる無線リソースが一部重複する。このため、移動局は、無線リソースの多重数に応じて、規定された数以下のマルチアクセス干渉を除去すればよい。
【0022】
本実施形態では、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスを導入することによって、マルチアクセス干渉の除去に伴う信号処理負荷を低減するとともに、移動局が除去すべきマルチアクセス干渉の数を認識できるような無線インターフェースが規定される。
【0023】
(2)機能ブロック構成
次に、移動体通信システム1の機能ブロック構成について説明する。図3は、基地局100の送信部の機能ブロック構成図である。図4は、移動局200Aの受信部の機能ブロック構成図である。
【0024】
(2.1)基地局100
図3に示すように、基地局100の送信部は、符号化/データ変調部110、基地局スケジューラ120、ハイブリッド直交/非直交多重部130、制御信号生成部140、制御信号リソース割当部150及び物理チャネル多重部160を備える。
【0025】
符号化/データ変調部110は、所定のユーザ(ユーザk)毎に、送信データの分割、チャネルコーディング/データ変調、送信電力設定、及びリソースブロック割当を実行する。特に、本実施形態では、符号化/データ変調部110は、移動局200A, 200Bに向けて送信される無線信号に含まれる直交信号及び非直交信号に無線リソースブロックを割り当てる。
【0026】
基地局スケジューラ120は、移動局200A, 200BからのCircuit State Information(CSI)のフィードバックや、基地局100〜移動局200A, 200B間のパスロスなどに基づいて、符号化/データ変調部110、ハイブリッド直交/非直交多重部130及び制御信号生成部140を制御する。
【0027】
特に、本実施形態では、基地局スケジューラ120は、非直交信号として多重される信号の複数の移動局(例えば、移動局200A, 200B)それぞれまでのパスロスに基づいて、当該パスロスの差が大きくなるように非直交信号として多重される信号を、当該複数の移動局にスケジューリングする。
【0028】
図5は、基地局100における非直交信号への移動局のスケジューリングの一例を示す。図5に示す例では、最大4ユーザ(移動局)が多重される非直交信号が用いられる。図5に示すように、非直交信号では、複数の信号が直交せず、つまり、周波数領域または時間領域において同一の無線リソースブロックが割り当てられている。
【0029】
本実施形態では、パスロスが小さい移動局宛ての信号から、パスロスが大きい移動局宛ての信号が、非直交信号として順次多重される。パスロスが小さい移動局宛ての信号は、所望のSNRを確保するための送信電力が小さくてよいため、図5の縦軸(送信電力)方向において占める割合が小さい。一方、パスロスが大きい移動局宛ての信号は、所望のSNRを確保するための送信電力が大きいため、図5の縦軸(送信電力)方向において占める割合が大きくなっている。
【0030】
このような非直交信号が用いられる場合、例えば、パスロスが2番目に小さいユーザ(移動局)は、当該ユーザよりもパスロスが大きい2つの移動局に割り当てられた信号からの干渉を除去する必要がある(図中の説明を参照)。
【0031】
なお、図5に示す例では、周波数領域及び時間領域において、異なる無線リソースブロックが割り当てられる、つまり、複数の信号が互いに直交する直交信号も用いられており、直交信号間では、上述したような干渉は生じないため、移動局は、当該干渉を除去する必要はない。
【0032】
ハイブリッド直交/非直交多重部130は、直交信号及び非直交信号を多重する。具体的には、ハイブリッド直交/非直交多重部130は、基地局スケジューラ120からの制御に基づいて、複数の符号化/データ変調部110から出力された信号(無線リソースブロック)を多重する。この結果、図5に示したように多重された信号が生成される。
【0033】
制御信号生成部140は、移動局200A, 200Bに報知される各種の制御信号を生成する。特に、本実施形態では、非直交信号として多重される信号の最大数は、基地局100及び移動局200A, 200Bにおいて既知(例えば、4多重)である。制御信号生成部140は、移動局が他の移動局(他装置)宛ての無線信号を復調及びキャンセルするために必要な制御信号を生成する。
【0034】
制御信号生成部140は、例えば、移動局が他の移動局(他装置)宛ての無線信号を復調及びキャンセルするため、以下のような制御情報または参照信号を含む信号を生成することができる。
【0035】
(a) ユーザ(移動局)が除去すべきマルチアクセス干渉の数を示す情報(0または1を含む)
(b) ユーザ(移動局)がマルチアクセス干渉の除去に必要な他のユーザの状態(割当無線リソースブロック、変調方式、チャネル符号化率など)を示す情報
(c) ユーザ(移動局)におけるコヒーレント復調に必要な参照信号
(d) ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスの無線リソースブロック割り当てに必要な情報(トランスポートブロック、無線リソースブロックの定義、送信電力制御、フィードバック制御信号など)
制御信号生成部140は、上述した(a)〜(d)の何れか、または複数を組み合わせた制御信号を生成してもよい。制御信号生成部140は、生成した制御信号を制御信号リソース割当部150及び物理チャネル多重部160を介して、移動局200A, 200Bに送信する。
【0036】
本実施形態では、制御信号生成部140、制御信号リソース割当部150及び物理チャネル多重部160によって、移動局200A, 200B(複数の受信装置)における他の受信装置(例えば、移動局200A)宛ての非直交信号のキャンセルに用いられる制御信号を移動局200A, 200Bに向けて送信する制御信号送信部が構成される。
【0037】
制御信号リソース割当部150は、制御信号生成部140から出力された制御信号に無線リソースブロックを割り当てる。
【0038】
物理チャネル多重部160は、ハイブリッド直交/非直交多重部130から出力されたベースバンド信号、及び制御信号リソース割当部150から出力された制御信号を物理チャネルに多重する。物理チャネル多重部160から出力された信号は、IFFTが施されるとともに、Cyclic Prefix(CP)が追加されて送信アンテナから移動局200A, 200Bに向けて送信される。本実施形態は、ハイブリッド直交/非直交多重部130及び物理チャネル多重部160によって、直交信号と非直交信号とをセルC1内に位置する複数の移動局(受信装置)に向けて送信する無線信号送信部が構成される。
【0039】
(2.2)移動局200A
図4に示すように、移動局200Aは、物理チャネル分離部210、データ復調/復号部220、目的ユーザ制御信号検出部230及び干渉ユーザ制御信号検出部240を備える。なお、移動局200Bも移動局200Aと同様の機能ブロック構成を有する。
【0040】
物理チャネル分離部210は、基地局100から送信された無線信号を受信し、当該無線信号に含まれる物理チャネルを分離する。上述したように、物理チャネル分離部210が受信する無線信号は、基地局100(1の送信装置)から送信された無線信号であって、互いに直交する直交信号と、互いに直交しない非直交信号とが含まれている。分離された物理チャネルは、データ復調/復号部220、目的ユーザ制御信号検出部230及び干渉ユーザ制御信号検出部240に出力される。本実施形態において、物理チャネル分離部210は、無線信号受信部を構成する。
【0041】
データ復調/復号部220は、複数設けられる。具体的には、データ復調/復号部220は、非直交信号として多重される信号(ユーザ)の数に応じて、干渉ユーザ用及び目的ユーザ用が設けられる。本実施形態では、最大4ユーザが多重されるため、データ復調/復号部220も4つ設けられることが好ましい。
【0042】
データ復調/復号部220は、無線リソースブロック抽出、干渉キャンセラ、チャネル推定、復調復号及び復号データの連結を実行する。
【0043】
特に、本実施形態では、データ復調/復号部220の干渉キャンセラは、受信した無線信号に含まれる直交信号(例えば、上述した制御情報や参照信号)を用いて、複数の非直交信号の中から、他の移動局(受信装置)宛ての無線信号を復調及びキャンセルすることによって、移動局200A宛ての非直交信号を抽出する。
【0044】
具体的には、干渉キャンセラは、物理チャネル分離部210(制御信号受信部)が受信した制御信号に基づいて、他の移動局(受信装置)宛ての無線信号を復調及びキャンセルする。より具体的には、干渉キャンセラは、目的ユーザ制御信号検出部230及び干渉ユーザ制御信号検出部240によって検出された制御信号に含まれる制御情報に基づいて他の移動局宛ての非直交信号をキャンセルする。
【0045】
また、干渉キャンセラは、多重される非直交信号の最大数が既知(本実施形態では、4多重)であるため、既知である非直交信号の最大数を超えない範囲で、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする。なお、干渉のキャンセル方法については後述する。
【0046】
また、データ復調/復号部220は、直交信号に含まれる移動局200A宛ての信号と、干渉キャンセラによって抽出された移動局200A宛ての信号とを復調する。
【0047】
目的ユーザ制御信号検出部230は、目的ユーザ、つまり自装置(移動局200A)宛ての制御信号を検出する。目的ユーザ制御信号検出部230は、検出した制御信号をデータ復調/復号部220(目的ユーザ用)に提供する。制御信号としては、上述したような(a)〜(d)の何れかまたは組み合わせが用いられる。
【0048】
干渉ユーザ制御信号検出部240は、干渉ユーザ、つまり、他装置(例えば、移動局200B)宛ての制御信号を検出する。干渉ユーザ制御信号検出部240は、目的ユーザ制御信号検出部230と同様に、検出した制御信号をデータ復調/復号部220(干渉ユーザ用)に提供する。本実施形態において、干渉ユーザ制御信号検出部240は、干渉キャンセラによる非直交信号のキャンセルに用いられる制御信号を受信する制御信号受信部を構成する。
【0049】
ここで、データ復調/復号部220の干渉キャンセラおける信号処理について簡単に説明する。まず、図1に示したように、移動局200AがセルC1のセル端に位置する場合、干渉キャンセラは、セルC1内の中央に位置する移動局200Bの信号を除去できないため、データ復調/復号部220は、そのまま復調/復号を実行する。具体的には、ユーザ1における信号処理は、以下のような計算式に基づいて説明することができる。
【数1】

【0050】
ここで、ユーザ1はセルC1のセル端に位置する移動局200Aを示し、ユーザ2はセルC1内の中央に位置する移動局200Bを示す。P1及びP2は、ユーザ1及びユーザ2の送信電力である。h1及びh2は、ユーザ1及びユーザ2のチャネル利得である。
【0051】
このように、移動局(ユーザ1)がセル端に位置する場合、受信信号(R1)には、セル中央に位置する移動局(ユーザ2)との干渉が含まれるが、ユーザ2と比較してSNRが悪いため、ユーザ2からの干渉を除去することができない。そこで、ユーザ1は、ユーザ2の信号を除去することなく、そのまま復調/復号を実行する。
【0052】
一方、ユーザ2における信号処理は、以下のような計算式に基づいて説明することができる。
【数2】

【0053】
このように、移動局(ユーザ2)がセル中央に位置する場合、受信信号(R2)には、セル端に位置する移動局(ユーザ1)との干渉が含まれるが、ユーザ1と比較してSNRが良いため、ユーザ1の信号を一旦復号することによって除去し、当該信号を除去した後、ユーザ2の信号の復調/復号を実行する。
【0054】
なお、このような信号処理は、上述した非特許文献1に記載されている方法と同様である。
【0055】
(3)制御信号の構成例
次に、制御信号の構成例について説明する。具体的には、図6〜図10を参照して、制御信号の構成例1〜4について説明する。
【0056】
(3.1)構成例1
まず、図6を参照して、本実施形態に係る無線リソースブロックの割当について説明する。図6は、本実施形態に係る無線リソースブロックの割当例を示す。本実施形態では、従来の周波数/時間領域といった無線リソースブロックの定義に加え、新たに非直交多重のための無線リソースの領域(レベル)が定義されている(以下、非直交多重領域という)。つまり、非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックは、周数数領域、時間領域及び非直交多重領域によって定義される。
【0057】
非直交多重領域は、移動局における干渉キャンセル数に応じた複数のレベルを有する。具体的には、基地局100と移動局200A, 200Bとの間のパスロスに応じて当該レベルが決定され、パスロスが小さい程、高いレベルの無線リソースブロックが割り当てられる。すなわち、基地局100の符号化/データ変調部110は、周数数領域、時間領域、及び移動局200A, 200Bにおける干渉キャンセル数に応じた複数のレベルを有する非直交多重領域によって定義された無線リソースブロックを非直交信号に割り当てる。
【0058】
移動局200A, 200B(自ユーザ)は、自装置が割り当てられた周波数/時間領域の無線リソースブロックに対して、非直交多重領域おいて自装置よりも下位のレベルに割り当てられた移動局(干渉除去対象のユーザ)の信号を除去する(図中の矢印は、上位レベルの移動局が除去しなければならない下位レベルの非直交信号に割り当てられた無線リソースブロックを示す)。つまり、移動局200A, 200Bの干渉キャンセラは、当該レベルが自装置よりも下位のレベルである無線リソースブロックが割り当てられた非直交信号をキャンセルする。
【0059】
このように非直交多重領域を定義することによって、割り当てられた無線リソースブロックによって自動的に干渉除去の対象となる移動局(ユーザ)及び無線リソースブロックが一意に定まる。
【0060】
また、各移動局は、干渉除去対象のユーザの無線リソースブロック割り当て、変調方式及び符号化率などの情報を認識する必要がある。そこで、本実施形態では、各移動局が、制御信号を用いて当該情報を認識できるようにする。
【0061】
図7は、制御信号の構成例1を示す図である。構成例1では、全ユーザの制御情報がまとめて符号化される。具体的には、全ユーザの制御情報は、Joint codingによって符号化される。すなわち、構成例1では、基地局100の制御信号生成部140は、複数の移動局の制御情報をまとめて符号化した制御信号を移動局200A, 200Bに向けて送信する。
【0062】
また、図7に示すように、制御信号は、他の移動局(受信装置)宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロック、変調方式、トランスポートブロックサイズ(符号化率)、及び送信電力比を含む制御情報によって構成される。なお、送信電力比は、当該移動局への非直交信号の送信電力と、他の移動局への非直交信号の送信電力の比である。また、制御情報は、その他の制御情報や、移動局の識別子(UE ID)を含んでもよい。また、変調方式、トランスポートブロックサイズ(符号化率)、及び送信電力比は、必ずしも必須でなく、制御信号には、これらの制御情報が含まれていなくても構わない。
【0063】
さらに、図7に示すように、制御信号生成部140は、複数の移動局宛ての非直交信号に割り当てられた無線リソースブロックの非直交多重領域におけるレベル(非直交多重レベル)を含む制御信号を送信してもよい。なお、非直交多重レベルは、ブラインド復調などによって直交多重レベルを判定できる場合には省略してもよい。
【0064】
なお、制御信号生成部140(制御信号送信部)は、非直交多重領域におけるレベルに応じて、制御信号のブラインド復調に用いるブラインド復号数を変化させてもよい。例えば、非直交多重領域におけるレベルが上位である程、ブラインド復号数を多くしてもよい。
【0065】
移動局200A, 200Bは、自装置よりも下位レベルであって、同一の周波数領域または時間領域における無線リソースブロックに割り当てられた移動局の制御情報を取得し、取得した当該制御情報を用いて、当該レベルが自装置よりも下位のレベルである無線リソースブロックが割り当てられた非直交信号をキャンセルする。
【0066】
このような制御情報は、非直交多重領域におけるレベルの昇順(または降順)にマッピングしてもよい。或いは、各制御情報に当該レベルを示す情報を含めることによって、当該レベルを直接移動局200A, 200Bに通知するようにしてもよい。
【0067】
(3.2)構成例2
図8(a)及び(b)は、制御信号の構成例2を示す図である。構成例2では、干渉除去の対象となる移動局(ユーザ)の干渉除去に必要な情報が、自ユーザ宛ての制御情報として送信される。
【0068】
図8(a)は、非直交多重領域における下位レベルのユーザ宛て制御信号の構成例を示す。図8(b)は、非直交多重領域における上位レベルのユーザ宛て制御信号の構成例を示す。
【0069】
図8(b)に示すように、上位レベル(所定レベル)のユーザ宛て制御信号には、当該上位レベルのユーザに加え、下位レベルのユーザ宛ての制御情報が多重される。一方、図8(a)に示すように、下位レベルのユーザ宛て制御信号には、他のユーザの干渉を除去する必要がないため、当該ユーザ宛ての制御情報のみが含まれている。
【0070】
すなわち、構成例2では、基地局100の制御信号生成部140は、非直交多重領域において上位のレベルである移動局の制御情報と、非直交多重領域において上位のレベルよりも下位のレベルである移動局の制御情報とを含む制御信号を送信する。
【0071】
(3.3)構成例3
図9は、制御信号の構成例3を示す図である。構成例3では、自ユーザ向けの制御信号に、干渉除去対象のユーザ宛て、具体的には、1つ下位のレベルユーザの制御信号を復調するための情報が含められる。具体的には、UE IDや、無線リソースブロックの位置を示す情報(例えば、Control Channel Element(CCE) indexなど)を用いることができる。
【0072】
構成例3の場合、移動局200A, 200Bは、下位レベルのユーザ制御信号を順次復調していく。例えば、移動局200Bの制御情報がレベル2であった場合、移動局200Bは、レベル1及びレベル0のユーザ(例えば、移動局200A)の制御信号を順次復調する。
【0073】
すなわち、構成例3では、基地局100の制御信号生成部140は、非直交多重領域において上位のレベルである移動局の制御情報に、当該上位のレベルよりも1レベル下位のレベルである他の移動局の制御情報を含む制御信号を送信する。
【0074】
(3.4)構成例4
図10(a)及び(b)は、制御信号の構成例4を示す図である。構成例4では、下位レベルのユーザの制御情報は、非直交信号に多重される全ユーザが復調可能な構成とされる。構成例4は、特に非直交多重領域におけるレベルが2段階のみの場合は有効である。
【0075】
図10(a)は、非直交多重領域における上位レベル(所定レベル)のユーザ宛て制御信号の構成例を示す。図10(b)は、非直交多重領域における下位レベルのユーザ宛て制御信号の構成例を示す。
【0076】
すなわち、構成例4では、基地局100の制御信号生成部140は、非直交多重領域において下位のレベルである移動局の制御情報を、複数の移動局(全ての移動局)において復調可能にした制御信号を送信する。なお、全ての移動局(ユーザ)が復調可能な構成としては、制御信号が多重される無線リソースブロック(CCE index)を固定とすることが挙げられる。
【0077】
(4)作用・効果の例
本実施形態に係る移動体通信システム1によれば、移動局200A, 200Bにおける非直交信号のキャンセルに用いられる制御信号は、他の移動局宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロック、変調方式、トランスポートブロックサイズ、及び送信電力比を含む制御情報によって構成される。このため、移動局200A, 200Bは、当該制御情報を用いることによって、非直交信号を用いたマルチアクセス干渉を除去する際の処理負荷を低減できるため、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスを導入する場合において、移動局などのコスト上昇や処理遅延を抑制できる。
【0078】
(5)その他の実施形態
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
【0079】
例えば、上述した本発明の実施形態では、基地局100から移動局200A, 200Bへの下り方向における例について説明したが、本発明は、上り方向に適用してもよい。また、本発明は、基地局と移動局との間に限らず、基地局間の無線通信に適用してもよい。
【0080】
さらに、上述した実施形態では、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスが導入されている場合を例として説明したが、本発明の適用範囲は、ハイブリッド直交/非直交マルチアクセスに限定されるものではなく、非直交マルチアクセスが用いられている移動体通信システムに適用できることは勿論である。
【0081】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0082】
1…移動体通信システム
100…基地局
110…符号化/データ変調部
120…基地局スケジューラ
130…ハイブリッド直交/非直交多重部
140…制御信号生成部
150…制御信号リソース割当部
160…物理チャネル多重部
200A, 200B…移動局
210…物理チャネル分離部
220…データ復調/復号部
230…目的ユーザ制御信号検出部
240…干渉ユーザ制御信号検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号を受信する無線信号受信部と、
前記無線信号受信部が受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルすることによって、当該受信装置宛ての非直交信号を抽出する干渉キャンセル部と、
前記干渉キャンセル部による前記無線信号の復調及びキャンセルに用いられる制御信号を受信する制御信号受信部と、
前記干渉キャンセル部によって抽出された当該受信装置宛ての信号を復調する復調部と
を備え、
前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成され、
前記干渉キャンセル部は、前記制御情報に基づいて前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする受信装置。
【請求項2】
前記制御信号受信部は、
前記非直交多重領域において、少なくとも前記受信装置よりも上位のレベルまたは下位のレベルの何れかである受信装置の制御情報を含む制御信号を受信し、
前記干渉キャンセル部は、前記制御信号受信部が受信した前記制御信号に基づいて、前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号をセル内に位置する複数の受信装置に向けて送信する無線信号送信部と、
前記受信装置が受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルするために用いられる制御信号を前記複数の受信装置に向けて送信する制御信号送信部と
を備え、
前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成される送信装置。
【請求項4】
前記非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックは、周数数領域、時間領域及び非直交多重領域によって定義され、
前記非直交多重領域は、前記受信装置における干渉キャンセル数に応じた複数のレベルを有し、
前記制御信号送信部は、前記複数の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられた無線リソースブロックの前記レベルを含む制御信号を送信する請求項3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記制御信号送信部は、前記複数の受信装置の制御情報をまとめて符号化した制御信号を送信する請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記制御信号送信部は、
前記非直交多重領域において所定のレベルである受信装置の制御情報と、
前記非直交多重領域において前記所定のレベルよりも下位のレベルである受信装置の制御情報と
を含む制御信号を送信する請求項4に記載の送信装置。
【請求項7】
前記制御信号送信部は、前記非直交多重領域において所定のレベルである受信装置の制御情報に、前記所定のレベルよりも1レベル下位のレベルである他の受信装置の制御情報の復調に必要な制御信号を送信する請求項4に記載の送信装置。
【請求項8】
前記制御信号送信部は、前記非直交多重領域において下位のレベルである受信装置の制御情報を、前記複数の受信装置において復調可能にした制御信号を送信する請求項4に記載の送信装置。
【請求項9】
前記制御信号送信部は、前記非直交多重領域におけるレベルに応じて、前記制御信号のブラインド復調に用いるブラインド復号数を変化させる請求項4に記載の送信装置。
【請求項10】
通信装置が、互いに直交しない複数の非直交信号が含まれた無線信号を受信するステップと、
前記通信装置が、受信した複数の非直交信号の中から、他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルするために用いられる制御信号を受信するステップと、
前記通信装置が、前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルするステップと、
前記通信装置が、前記干渉キャンセル部によって抽出された当該受信装置宛ての信号を復調するステップと
を含み、
前記制御信号は、前記他の受信装置宛ての非直交信号に割り当てられる無線リソースブロックを含む制御情報によって構成され、
前記非直交信号をキャンセルするステップでは、前記制御情報に基づいて前記他の受信装置宛ての無線信号を復調及びキャンセルする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−9290(P2013−9290A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227149(P2011−227149)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)