説明

受信装置および通信システム

【課題】遅延ダイバーシチ及びプリコーディングを行う複数の送信アンテナを有する送信装置の簡易化を図ること。
【解決手段】送信装置は、複数の送信アンテナと、何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、複数の信号系列各々を、所定のプリコーディングベクトルを複数個含むコードブックから選択されたプリコーディングベクトルで重み付けするプリコーディング手段と、プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段とを有する。プリコーディング手段では、互いに異なるプリコーディングベクトルが、異なる信号系列に適用され、異なるプリコーディングベクトル及び異なる信号系列の対応関係は、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御で決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信の技術分野に関連し、特に複数のアンテナを備えた送信装置、送信方法、受信装置及び受信方法等に関連する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術分野では次世代移動通信方式に関する研究開発が急ピッチで進められている。W-CDMAの標準化団体3GPPは、W-CDMAやHSDPA、HSUPAの後継となる通信方式がとして、ロングタームエボリューション(LTE: Long Term Evolution)を検討している。LTEでは無線アクセス方式として下りリンクにOFDM方式を、上りリンクにSC-FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)を予定している (例えば、非特許文献1参照)。
直交周波数分割多重接続(OFDM)方式は、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各周波数帯上にデータを載せて伝送を行うマルチキャリア方式であり、サブキャリアを周波数上に、一部重なりあいながらも互いに干渉することなく密に並べることで、高速伝送を実現し、周波数の利用効率を上げることができる。
【0003】
シングルキャリアFDMA(SC-FDMA)は、周波数帯域を分割し、複数の端末間で異なる周波数帯域を用いて伝送することで、端末間の干渉を低減することができるシングルキャリア方式の伝送方式である。SC-FDMAでは、送信電力の変動が小さくなる特徴を持つことから、端末の低消費電力化及び広いカバレッジを実現できる。
【0004】
LTEは、上りリンク、下りリンクともに1つないし2つ以上の物理チャネルを複数のユーザ装置で共有して通信を行うシステムである。上記複数のユーザ装置で共有されるチャネルは、一般に共有チャネルと呼ばれ、LTEでは上り共有物理チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared Channel)により上りリンクの通信が、下り共有物理チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared Channel)により下り通信が行われる。
【0005】
これらの共有チャネルを用いた通信システムではサブフレーム(Sub-frame)(LTEでは1ms)毎に、どのユーザ装置に対して上記共有チャネルを割り当てるかをシグナリングする必要がある。このシグナリングに用いられる制御チャネルは、LTEでは、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control Channel)または、下りL1/L2制御チャネル(DL-L1/L2 Control Channel)と呼ばれる。上記物理下りリンク制御チャネルの情報には、例えば、下りスケジューリング情報又はダウンリンクスケジューリングインフォメーション(Downlink Scheduling Information)、送達確認情報(ACK/NACK: Acknowledgement information)、上りリンクスケジューリンググラント(Uplink Scheduling Grant)、オーバロードインジケータ(Overload Indicator)、送信電力制御コマンドビット(Transmission Power Control Command Bit)等が含まれる(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
上記下りスケジューリング情報や上りリンクスケジューリンググラントは、どのユーザ装置に対して上記共有チャネルを割り当てるかをシグナリングするための情報である。下りスケジューリング情報には、例えば、下りリンクの共有チャネルに関する、下りリンクのリソースブロック(RB: Resource Block)の割り当て情報、UEのID、MIMOが行われる場合のストリームの数、プリコーディングベクトル(Precoding Vector)に関する情報、データサイズ、変調方式、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)に関する情報等が含まれる。また、上記上りリンクスケジューリンググラントには、例えば、上りリンクの共有チャネルに関する、上りリンクのリソースの割り当て情報、UEのID、データサイズ、変調方式、上りリンクの送信電力情報、アップリンクMIMO(Uplink MIMO)におけるデモジュレーションレファレンスシグナル(Demodulation Reference Signal)の情報等が含まれる。
【0007】
マルチインプットマルチアウトプット(MIMO)方式は、通信に複数のアンテナを用いることで伝送信号の高速化及び/又は高品質化を図るマルチアンテナ方式の通信である。更に、送信信号のストリームを複製し、複製された各ストリームを適切な重みと共に合成して送信することで、指向性の制御されたビームで通信相手に信号を送ることができる。これは、プリコーディング方式と呼ばれ、使用される重み(ウエイト)はプリコーディングベクトル又はより一般的にプリコーディング行列と呼ばれる。
【0008】
図1はプリコーディングが行われる様子を模式的に示す。2つのストリーム(送信信号1,2)はそれぞれコピー部で2系統に複製され、各系統でプリコーディングベクトルが乗算され、合成された後に送信される。プリコーディングにはクローズドループ方式とオープンループ方式とがある。クローズドループ(閉ループ)方式の場合、オープンループ(開ループ)方式とは異なり、プリコーディングベクトルは、受信側(ユーザ装置)からのフィードバックに基づいて、より適切な値になるよう適応的に制御される。図1では、クローズドループの行われる様子が示されている。プリコーディング方式では、各ストリームが空間的に別様に送信されるので、ストリーム毎の品質改善効果を大きく期待できる。
【0009】
一方、遅延ダイバーシチ又はサイクリック遅延ダイバーシチ(CDD: Cyclic Delay Diversity)と呼ばれる技術も提案されている。これは、送信信号をアンテナ数分複製し、複製部から各アンテナに至るまでの経路遅延が意図的に異なるように設定される。同じ信号が時間的に異なるタイミングで伝送されるので、様々なストリームにわたって信号を均質化する観点から好ましい。
【0010】
図2に示されるように、複数のアンテナから時間的に異なるタイミングで同じ信号が送信される。受信側ではそれらは複数のパスとして受信され、それらを合成することでダイバーシチ効果を期待することができる。
【0011】
更に、プリコーディングとCDDを組み合わせることで、双方による品質改善効果を期待できるかもしれない。この場合に、プリコーディングのための信号処理とCDDのための信号処理の何れを先に行うかに依存して、送信される信号の特性は異なる。
【0012】
図3は、プリコーディングに関する信号処理を行った後にCDDに関する信号処理が行われる様子を模式的に示す。図4は、図3に示される要素の詳細図を示す。ここで、NFFTはFFTサイズ, τは遅延量、sknは第kサブキャリアの第nストリームである。
【0013】
図4に示されるように各信号成分に対する処理は行列形式で表現され、CDDに関する行列演算(Dk)とプリコーディングに関する行列演算(F)との積は一般には可換でない。このため、後に行われる信号処理の影響が送信信号に強く反映される。図示の例の場合、CDDによる信号品質改善効果がより強く発揮され、送信ストリーム間で品質が平均化されやすい。逆に、プリコーディングによる信号品質改善効果は比較的弱くなってしまう。この方式は、プリコーディングベクトルを一定に維持し、オープンループのプリコーディングに有利である。図4では、プリコーディングベクトルは「F」で示され、一定の重み付けがなされる。この種の方式については、例えば非特許文献3に記載されている。
【0014】
図5は、CDDに関する信号処理を行った後にプリコーディングに関する信号処理が行われる様子を模式的に示す。図6は、図5に示される要素の詳細図を示す。このような処理が行われる場合も、後に行われる信号処理の影響が送信信号に強く反映される。従って、図示の例の場合、プリコーディングによる信号品質改善効果がより強く発揮され、送信ストリーム毎の品質改善に有利になる。逆に、CDDによる信号品質改善効果は比較的弱くなってしまう。このため、プリコーディングベクトルは適応的に制御されることが好ましい。図5では、プリコーディングベクトルは「Ui」で示される。プリコーディングベクトルとして予め確保されたP個のプリコーディングベクトル{U1 U2 ・・・ UP}の内、通信相手からのフィードバック信号で決定された最適なベクトルUiが適応的に選択される。言い換えれば、この方式はクローズドループのプリコーディングが行われるのに有利である。この種の方式については、例えば非特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】3GPP TR 25.814 (V7.0.0), "Physical Layer Aspects for Evolved UTRA," June 2006
【非特許文献2】R1-070103, Downlink L1/L2 Control Signaling Channel Structure: Coding
【非特許文献3】3GPP R1-070236, "Precoding for E-UTRA downlink MIMO",LG Electronics, Samsung and NTT-DoCoMo
【非特許文献4】3GPP R1-072461, "High Delay CDD in Rank Adapted Spatial Multiplexing Mode for LTE DL", Ericsson
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、クローズドループのプリコーディングベクトル制御は、各ストリームを空間的に別様に送信するので、信号品質の観点からはかなり有利である。しかしながら、送信ビームを通信相手(ユーザ装置)に応じて適応的に切り替える必要があるので、通信相手が高速に移動する場合にはそのような制御は困難になってくる。この場合、プリコーディングよりもCDDによる品質改善効果を期待した方(図3,4のようにプリコーディングを先に行って固定し、CDDによる遅延分散効果を大きくすること)が得策である。このように、プリコーディング及びCDDを組み合わせる場合、図3,4のようにする第1方式及び図5,6のようにする第2方式は、通信状況に応じて有利になったり不利になったりする。
【0017】
図7はこのような観点から案出される一例を示す。図示の例では、第1方式及び第2方式の双方が実行できるように、双方の信号処理部を用意し、各方式が通信状況に応じて適宜切り替えられる。しかしながら、このようにすると、CDDに関する信号処理部(図4,6の「D1〜DK」)を二重に用意しなければならず、送信装置の構成が大幅に複雑化してしまう。
【0018】
本発明の課題は、遅延ダイバーシチ及びプリコーディングを行う複数の送信アンテナを有する送信装置の簡易化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
開示される発明による送信装置は、
複数の送信アンテナと、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、
前記複数の信号系列各々を、プリコーディング行列で重み付けするプリコーディング手段と、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段と、
を有し、
前記プリコーディング手段は、閉ループ制御を実行する場合、受信装置からのフィードバックされたプリコーディングマトリクスインジケータをもとに、コードブックから特定されたプリコーディング行列を使用し、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御を実行する場合、コードブックから特定されるとともに、互いに異なるプリコーディング行列を異なる信号系列に適用するようなプリコーディング行列を使用する送信装置である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、遅延ダイバーシチ及びプリコーディングを行う複数の送信アンテナを有する送信装置の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プリコーディングが行われる様子を模式的に示す図である。
【図2】遅延ダイバーシチの概念図である。
【図3】CDD及びプリコーディングを行う送信装置の概念図(その1)である。
【図4】図3の送信装置の詳細図を示す。
【図5】CDD及びプリコーディングを行う送信装置の概念図(その2)である。
【図6】図5の送信装置の詳細図を示す。
【図7】第1方式及び第2方式を切り替えることの可能な送信装置の一例を示す図である。
【図8】本発明による送信装置の概念図である。
【図9】本発明の一実施例による送信装置の機能ブロック図を示す。
【図10】各プリコーダでの第1実施例による演算処理の様子を示す図である。
【図11】プリコーディングベクトルとサブキャリアとの対応関係例を示す図である。
【図12A】プリコーディングベクトルとサブキャリアとの対応関係例を示す図である。
【図12B】プリコーディングベクトルとサブキャリアとの別の対応関係例を示す図である。
【図13】送信装置の変形例を示す図である。
【図14】各プリコーダでの第2実施例による演算処理の様子を示す図である。
【図15】各プリコーダでの第3実施例による演算処理の様子を示す図である。
【図16】(NTx,NRx)=(4,2)で非相関チャネルの場合におけるシミュレーション結果を示す図である。
【図17】(NTx,NRx)=(4,2)で相関チャネルの場合におけるシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図8に示されるように、本発明の一形態では、送信装置の動作モードにクローズドループモード及びオープンループモードが用意される。クローズドループでは従来と同様に図1,図5及び図6に示されるように、プリコーディングベクトルは、通信相手からのフィードバック信号に応じて、適切なものに適宜変更される。この動作モードは、通信相手が比較的低速でしか動いていない場合に有利である。オープンループでは、クローズドループの場合と異なるプリコーディングが行われる。本発明の一形態による送信装置では、あらかじめ決められた互いに異なるプリコーディングベクトルが、異なるサブキャリアの信号系列に適用される。ちなみに、クローズドループモードでは、ある一定数の連続するサブキャリアで伝搬路がほぼ一定であるとみなし、ユーザ装置からのフィードバックに基づいて、それら一定のサブキャリア間に同一のプリコーディングを適用する。
【0023】
サブキャリア毎に異なる重み付けがなされることは、送信信号に時間遅延を導入することに匹敵する。サブキャリア毎にプリコーディングベクトルを変えることで、オープンループの場合でも、CDDによる信号品質改善効果を促すことができる。様々なプリコーディングベクトルと各サブキャリアとの対応関係は、受信装置からのフィードバックによらず、オープンループ制御で簡易且つ速やかに決定される。しかも、図8に示されているように、CDDの信号処理部を二重に用意しなくてよい。このようにして遅延ダイバーシチ及びプリコーディングを行う複数の送信アンテナを有する送信装置の簡易化を図ることができるようになる。
【0024】
本発明の一形態では、プリコーディング手段は、互いに異なるプリコーディングベクトルを、同じ信号系列に異なる時点で適用してもよい。上記の形態では、異なるプリコーディングベクトルが周波数方向に並ぶように使用されるが、本形態では、それらが時間方向に並ぶように使用される。更には、周波数方向及び時間方向の双方向に、異なるプリコーディングベクトルが並ぶように使用されてもよい。様々なプリコーディングベクトルと様々なサブキャリア及び/又は様々な時間的タイミングとの対応関係は、受信装置からのフィードバックによらず、オープンループ制御で簡易且つ速やかに決定される。
【0025】
互いに異なるプリコーディングベクトルの数Pは、リソースブロック1つ分のサブキャリア総数の整数倍でもよいし、或いはシステム帯域に含まれているサブキャリア総数Kの整数分の1でもよい。このようにすることで、個々のプリコーディングベクトルの使用される頻度が各ベクトルで同程度になり、これは遅延分散効果の平均化を図る観点から好ましい。
【0026】
複数の異なる信号系列で又は複数の異なる時点で、複数のプリコーディングベクトルU1,…,UPが巡回的に使用されてもよい。これは、様々な信号に適用されるプリコーディングベクトルを簡易に別様にする観点から好ましい。
【0027】
隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に或るプリコーディングベクトルが共通に適用され、別の隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に別のプリコーディングベクトルが共通に適用されてもよい。特に1つのリソースブロックで使用されるプリコーディングベクトルが1種類に限定されてもよい。これは、リソースブロック毎のノイズレベルや干渉レベルを正確に判定し、スケジューリングひいてはスループットの改善を図る観点から好ましい。
【0028】
送信装置の動作モードにオープンモード及びクローズドモードが含まれ、クローズドモードでは、プリコーディングベクトルは、所定のプリコーディングベクトルを複数組含むコードブックの中から選択されてもよい。更に、オープンループで使用されるプリコーディングベクトルも、コードブックから選択されてもよい。何れの動作モードでもコードブックからプリコーディングベクトルが選択され、これは処理要素の共通化等を図る観点から好ましい。
【0029】
送信装置の動作モードは、高速移動を開始したユーザ装置等のような通信相手からの要求に応じて切り替えられてもよい。これは、自装置宛の通信に対して速やかにモードを切り替える観点から好ましい。
【0030】
変換手段から出力される複数の信号系列各々にサイクリック遅延ダイバーシチ用の重み付けが別途行われてもよい。これは、既存の遅延ダイバーシチによる処理をそのまま使用する観点から好ましい。
【0031】
説明の便宜上、本発明が幾つかの実施例に分けて説明されるが、各実施例の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例が必要に応じて使用されてよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされるが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。
【実施例1】
【0032】
(送信装置の機能ブロック)
図9は、本発明の一実施例による送信装置の機能ブロック図を示す。送信装置は移動通信システムでユーザ装置と通信する基地局装置として説明されるが、他の装置を構成してもよい。移動通信システムは、下りリンクにOFDM方式を採用するシステムであり、一例としてLTE方式のシステムでもよい。図9には、信号生成部902、直列並列変換部(S/P)904、プリコーディング部906、並列直列変換部(P/S)908、IFFT部910−1〜M、コードブック912、セレクタ914、サブキャリアマッピング部916、モード切替部918が図示されている。
【0033】
信号生成部902は、下りリンク伝送する信号を生成する。生成される信号は、最終的にはOFDM方式で伝送される適切な如何なる信号でもよい。一例として、信号生成部は、通信相手(典型的には、ユーザ装置)から報告されたCQIに基づいて、その通信相手宛に送信する信号について、データ変調方式、チャネル符号化方式、送信電力等を決定し、決定内容に応じた処理が行われる。また、下りリンクでのトラフィック量、送信アンテナ数及びユーザ装置の受信アンテナ数等に応じてストリーム数が決定されてもよい。
【0034】
直列並列変換部(S/P)904は、そこに入力された送信ストリームを、所定の周波数帯域に含まれるサブキャリア数分の信号系列に変換する。この信号系列は、それぞれ送信アンテナ数分の要素を有する。例えば、k番目のサブキャリアに関連付けられる信号系列skは、sk1,sk2,…,skSのようなS個の信号要素を有する。Sは送信ストリーム数を示す。送信ストリーム数Sは、送信アンテナ総数M以下の整数である。所定の周波数帯域は、例えば5MHz、10MHz、20MHz等のようなシステム帯域でもよい。
【0035】
プリコーディング部906は、サブキャリア毎に用意された信号系列各々をプリコーディングベクトルで重み付けする。図示の例では、サブキャリア総数はKであり、プリコーディング部906は、K個のプリコーダを有する。各プリコーダ1〜Kでの処理は、動作説明の際に言及される。説明の便宜上、プリコーディングベクトルが使用されるが、より一般的にはプリコーディング行列と言及されてよい。
【0036】
並列直列変換部(P/S)908は、直列並列変換部904と逆の処理を行う。並列直列変換部908は、そこに入力されたサブキャリア数分の信号系列を、送信に使用される送信ストリーム数に変換する。
【0037】
IFFT部910−1〜Mの各々は、そこに入力された送信ストリームをOFDM方式の送信シンボルストリームに変換する。例えば、IFFT部910−1は、第1の送信アンテナから送信される送信シンボルストリームを生成し、主に逆フーリエ変換(IFFT)を行ってOFDM方式での変調を施す。図示の簡明化を図るため、サイクリックプレフィックスの付加、ディジタルアナログ変換、周波数変換、帯域限定、電力増幅等の処理を行うための要素は図示されていない。
【0038】
コードブック912は、いくつかのプリコーディングベクトルを記憶している。例えば、P個のプリコーディングベクトルU1,U2,…, UPがコードブック912に予め用意されている。クローズドループ(CL: Closed Loop)のプリコーディングベクトル制御では、通信相手(ユーザ装置)からのフィードバック信号に基づいて、P個の内の何れかのプリコーディングベクトル(例えば、Ui)が選択され、モード切替部918を経てプリコーディング部906に入力される。通信相手からのフィードバック信号は、プリコーディングマトリクスインジケータ(PMI: Pre-coding Matrix Indicator)と呼ばれ、P個のプリコーディングベクトルの何れかを特定する。典型的にはユーザ装置がPMIの内容を決定する。
【0039】
セレクタ914は、クローズドループとは異なり、オープンループ(OL: Open Loop)で送信装置が動作する場合に使用される。セレクタ914は、コードブック912から所定の判断基準に従って何れかのプリコーディングベクトルを選択する。所定の判断基準については後述される。
【0040】
サブキャリアマッピング部916は、セレクタ914で選択されたプリコーディングベクトルとサブキャリアとの対応関係を決定し、決定内容はモード切替部918を経てプリコーディング部906に通知される。
【0041】
モード切替部918は、所定の判断基準に従って、送信装置の動作モードを切り替える。一例として、モード切替部918は、通信相手の移動速度に応じて動作モードを切り替えてもよい。この場合、通信相手の移動速度が低速であったならば、クローズドループの動作モードが選択され、通信相手の移動速度が高速であったならば、オープンドループの動作モードが選択される。或いは、上り又は下りの通信信号の品質が所定値未満になったことに応じて動作モードが変更されてもよい。モード切替は、ユーザ装置からの要求に応じてなされてもよいし、伝搬環境の測定値等に応じてなされてもよい。クローズドループでのプリコーディング行列に誤りがある可能性が高いと送信機が判断した場合もオープンループに切り替えることができる。いずれにせよ、送信装置でモード切替の所定のイベントが発生したことに応じて、動作モードが切り替えられてよい。
【0042】
(送信装置の動作:クローズドループ)
送信装置の動作モードには、クローズドループモード及びオープンループモードが用意される。クローズドループでは、従来と同様な動作が行われる。この場合、図1,図5及び図6に関して言及されたように、プリコーディングベクトルは、通信相手からのフィードバック信号(PMI)に応じて、適切なものに適宜変更される。典型的には、プリコーディングベクトルは、コードブック912の中に事前に格納済みの所定数個のベクトル(U1,U2,…,UP)の内の何れかである。従って、PMIは所定数個のベクトル(U1,U2,…,UP)の内の何れかを指定する。より一般的にはプリコーディングベクトルは、択一的な選択肢ではなく、適切な如何なるベクトルに適応的に調整されてもよい。但し、プリコーディングベクトルになり得るベクトルを択一的な選択肢に限定することは、ベクトル制御演算負担を軽減しつつ適応制御を可能にする観点から好ましい。クローズドループの動作モードは、通信相手の位置に依存してプリコーディングベクトルを適宜切り替える必要があるので、高品質化等の観点からは、通信相手が高速で移動している場合よりも、低速でしか動いていない場合に有利である。
【0043】
(送信装置の動作:オープンループ)
通信相手が高速に移動するような場合、プリコーディングベクトルを適応的に切り替えることは困難になる。このような場合は、プリコーディングベクトルの切り替えによる高品質化よりも、遅延ダイバーシチCDDによる高品質化が有利になる。CDDによる高品質化の影響を強めるには、CDDに関する演算処理をプリコーディングの後に行えばよいかもしれないが、そうするには図7に示したような回路構成が必要になり、装置の複雑化を招いてしまう。
【0044】
ところで、図4に示されるように、周波数領域で遅延ダイバーシチCDDを実現するための演算処理は、サブキャリアkの信号成分に或る行列Dkを演算することで表現され、より具体的には、或るサブキャリアで伝送されるストリーム数分(S個)の信号成分に、exp(-j(2πmτ/NFFT)k)をそれぞれ乗算することで表現される(m=0,…,M-1)。(Sは送信ストリーム数(S≦M)、Mは送信アンテナ数、NFFTはフーリエ変換及び逆フーリエ変換の信号処理ポイント数、τはCDDによる遅延量を表現する。)そこで、サブキャリア毎に異なるウエイトが各サブキャリア信号成分に乗算されるならば、乗算後の信号は何らかの遅延ダイバーシチ効果をもたらすかもしれない。本発明の発明者等はこのような考察に基づいて、サブキャリア毎に異なるプリコーディングベクトルを使用することで、CDDに関する演算部を二重に用意せずに、遅延分散効果を提供する方式を見出した。
【0045】
図10は図9の各プリコーダでの演算処理の様子を示す図である。従来とは異なり、複数のプリコーダの各々で異なるプリコーディングベクトルが使用される。例えば、第1サブキャリアs1にはプリコーディングベクトルU1が適用され、第2サブキャリアs2にはプリコーディングベクトルU2が適用され、第PサブキャリアsPにはプリコーディングベクトルUPが適用される。P+1番目以降のサブキャリアについては、プリコーディングベクトルU1,U2,…,UPが反復的に使用される。プリコーディングベクトルU1,U2,…,UPは、コードブック912に事前に格納済みのベクトルであり、クローズドループで使用されるものと同じである。サブキャリア毎に異なるベクトルを使用する観点からは、クローズドループ用に事前に用意されたベクトルU1,U2,…,UP以外のベクトルが別途用意され、それがオープンループで使用されてもよい。但し、CDDによる改善効果をもたらしつつ処理要素の共有化やメモリ量の節約等を図る観点からは、クローズドループでもオープンループでも同じコードブック912からベクトルを適宜選択することが好ましい。
【0046】
上述したように、プリコーディングベクトルU1,U2,…,UPは、クローズドループで使用されるものと同じであり、クローズドループでは通信相手(ユーザ装置)の位置に応じてそれらが適宜切り替えられる。従って、プリコーディングベクトルU1,U2,…,UPは、P通りの指向性ビームに関連付けて考えることができる。図10に示されるように、オープンループでこれらP個のプリコーディングベクトルを各サブキャリアに対して反復的に適用することは、jP+1番目のサブキャリア(1番目、P+1番目、2P+1番目、...)をU1の方向に送信し(j=0,1,2,…)、jP+2番目のサブキャリア(2番目、P+2番目、2P+2番目のサブキャリア、...)をU2の方向に送信し、以下同様に特定のサブキャリアの信号を特定の方向に送信することに対応する。従ってこの周波数帯域に含まれる各信号成分は、P通りの方向全てに分散され、これは信号のダイバーシチ効果を更に高める観点から好ましい。
【0047】
本発明に必須ではないが、図示の例では、サブキャリア総数K(=NFFT)がコードブック912に格納済みのベクトル数Pの倍数になっている。これは、様々に用意されたP個のベクトルを周波数帯域全体で均等に使うことを可能にし、信号の均質化を図る観点から好ましい。
【0048】
図11ではサブキャリア総数K(=NFFT)がコードブック912に格納済みのベクトル数Pの倍数になっていることに加えて、Pが単位リソースブロックに含まれるサブキャリア総数に対応している。下りリンクの無線リソースは、或る帯域幅(12サブキャリア)及び或る期間(例えば、1ms)にわたるリソースを1単位として各ユーザ装置に割り当てられる。図示のようにすることは、リソースブロック毎の均質化を更に図る観点から好ましい。
【0049】
図12Aでは、1つのリソースブロックの中で使用されるプリコーディングベクトルが1種類に固定されるが、隣接するリソースブロックで使用されるプリコーディングベクトルは異なる。この方法は、各リソースブロックに関するノイズレベルや干渉レベルを正確に測定する観点から好ましい。リソースブロック(RB)毎のノイズレベルや干渉レベル等はリソース割当等の基礎になるので、これらを正確に推定することはスケジューリングの適格性等を図る等の観点から好ましい。より一般的には、同じプリコーディングベクトルが使用される隣接サブキャリア数はいくつでもよい。図12Bでは、3サブキャリア毎にプリコーディング行列を巡回させている。
【0050】
上記の説明では、クローズドループ用に用意されているP個のプリコーディングベクトルが全てオープンループでも使用されているが、このことは本発明に必須ではない。コードブックに用意されているプリコーディングベクトルP個の内のいくつかだけがオープンループで使用されてもよい。
【0051】
また、MIMOシステムでは、伝搬環境に応じて空間多重する信号数Sが変化してもよい。本発明の実施例では、空間多重数Sに応じて、プリコーディング行列のサブキャリアマッピングが変更されてもよい。例えば、プリコーディングゲインの得られやすいS=1の場合、プリコーディングゲインを得るためにすべてのサブキャリアに同一のプリコーディング行列(例 U1)を用いる。Sが複数の場合は、ダイバーシティゲインを得るために図11のような複数のプリコーディング行列を用いた巡回配置が使用されてもよい。
【0052】
(変形例)
図10に示される例では、説明の簡明化を図るため、サブキャリア毎に異なるプリコーディングベクトルのみが各プリコーダ1〜Kで使用されていた。これにより、オープンループでもかなりの遅延ダイバーシチ効果を得ることができる。この場合に、各プリコーダ1〜Kに入力される信号が、直列並列変換部904からの出力であることは必須ではない。図13に示されるように、クローズドループで使用されていたCDDに関する処理要素CDD1〜Kが従前通り使用されてもよい。
【実施例2】
【0053】
第1実施例では、互いに異なるプリコーディングベクトルが、異なるサブキャリアに適用されたが、本発明の第2実施例では、互いに異なるプリコーディングベクトルが、同じサブキャリアの異なる時点で適用される。
【0054】
図14は図9の各プリコーダでの第2実施例による演算処理の様子を示す。或る時点(t=T)では全サブキャリアにプリコーディングベクトルU1が共通に適用される。別の時点(t=T+ΔT/P)では全サブキャリアにプリコーディングベクトルU2が共通に適用される。そして、或る時点(t=T+ΔT(P-1)/P)では全サブキャリアにプリコーディングベクトルUPが共通に適用される。このように、全サブキャリアに共通に使用されるプリコーディングベクトルが、或る期間ΔTにわたってU1,U2,…,UPに切り替えられる。ΔTは、P個のプリコーディングベクトルを順に切り替えるのに十分な期間以上に適宜設定される。
【0055】
上述したようにプリコーディングベクトルU1,U2,…,UPは、P通りの指向性ビームに関連付けて考えることができる。本実施例では、全サブキャリアに共通に使用されるプリコーディングベクトルを、或る期間ΔTにわたってU1,U2,…,UPに順に切り替えている。従ってこのようにすることは、この帯域で送信される信号を或る時点ではU1の方向に送信し、次の時点ではU2の方向に送信し、以下同様に順に異なる方向に送信し、P番目の時点ではUPの方向に送信し、以後サイクリックに同様な処理が続くことを意味する。従来とは異なり、通信相手の位置によらずプリコーディングベクトルは一方的に切り替えられることに留意を要する。第1実施例では、所定の帯域に含まれるサブキャリアの信号成分がP通りの方向に同時に分散されていた。第2実施例では、各サブキャリアの信号成分は瞬時的には特定の1つの方向に向いているが、ΔTの期間にわたってP通りの方向全てが網羅されるように順に切り替えられる。本実施例も信号の遅延分散効果を高める観点から好ましい。
【実施例3】
【0056】
本発明の第3実施例では、第1実施例及び第2実施例で使用された方法が組み合わせられる。即ち、第3実施例では、互いに異なるプリコーディングベクトルが異なるサブキャリアに適用され、且つ互いに異なるプリコーディングベクトルが同じサブキャリアに異なる時点で適用される。
【0057】
図15に示されるように、或る時点(t=T)ではサブキャリア1~KにプリコーディングベクトルU1〜UPがサイクリックに適用される。別の時点(t=T+ΔT/P)ではサブキャリア1~KにプリコーディングベクトルU2〜UP-1UPがサイクリックに適用される。そして、或る時点(t=T+ΔT(P-1)/P)ではサブキャリア1~KにプリコーディングベクトルUPU1〜UP-1がサイクリックに適用される。P個のプリコーディングベクトルの使用方法については、図11,図12等で説明済みの方法が使用されてもよい。
【0058】
本実施例によれば、各サブキャリア成分を周波数方向にも時間方向にも様々に分散させるので、これは遅延分散効果を更に高める観点から好ましい。
【0059】
上記の何れの実施例でも、異なるプリコーディング行列及び異なる信号系列の対応関係が複数種類存在しても良いし、異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係が、複数種類存在していてもよい。それら複数の対応関係はユーザ装置からの要求に応じて又は基地局の判断に応じて使い分けられてもよい。例えば、比較的長い時間周期でその対応関係が切り替えられてもよい。
【実施例4】
【0060】
図16及び図17を参照しながら本発明の実施例による送信装置のシミュレーション結果が説明される。シミュレーションでは、以下のパラメータが使用された。
【0061】
OFDMサブキャリア数NFFT:120
送信アンテナ数及び受信アンテナ数(NTx,NRx):(4,2)
プリコーディングベクトル数P:12
1リソースブロックに含まれるサブキャリア数:12
無線伝搬チャネル:相関チャネル又は非相関チャネル
受信機であるユーザ装置の移動速度:60km/h
なお、シミュレーションでは、CQIに基づく適応変調符号化が行われることが想定されている。
【0062】
図16に示されるグラフは、送信及び受信アンテナ数が(2,4)の場合における平均SNR(dB)及びスペクトル効率(bps/Hz)の関係を示す。横軸の平均SNR(dB)は左側が悪く、右側が良いことを示す。縦軸のスペクトル効率は、単位帯域当たりのスループット(誤り無く受信できた単位時間当たりのデータ量)を示す。従って、平均SNRが悪いほどスループットは低くなる。これは例えば、基地局から離れている場所のユーザや、高速移動ユーザに対応する。逆に、平均SNRが良いほどスループットは高くなる。これは例えば、基地局に近い場所のユーザや、低速移動ユーザに対応する。図示のシミュレーションでは、無線伝搬チャネルは非相関であること(送信及び受信アンテナ間の無線伝搬チャネルが互いに独立であること)が想定されている。
【0063】
図中、○印のプロットで表現されるグラフは、図3,4に示される従来の送信装置で得られるグラフを表す(便宜上、従来1と呼ぶ)。この送信装置はプリコーディングの後にCDDを行い、クローズドループ制御に適している。□印のプロットで表現されるグラフは、図5,6に示される従来の送信装置で得られるグラフを表す(便宜上、従来2と呼ぶ)。この送信装置はプリコーディングの前にCDDを行い、オープンループ制御に適している。◆印のプロットで表現されるグラフは、本発明による送信装置により得られるグラフ(オープンループで動作している場合)を示す。図示されているように60km/h程度の移動速度の場合、従来1と従来2では、クローズドループ制御が有利な従来1の方が良い特性を示している。クローズドループとオープンループを切り替える本発明の送信装置は、オープンループの場合でさえ、従来1と同程度以上の遅延分散効果を発揮できることが分かる。
【0064】
図17に示されるグラフは、図16と同様であるが、無線伝搬チャネルとして相関チャネルが想定されている点が異なる。
【0065】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、各実施例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。各実施例の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の実施例が必要に応じて使用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウエアで、ソフトウエアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【0066】
以下、具体的な実施の形態を例示的に列挙する。
【0067】
[付記項1]
複数の送信アンテナと、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、
前記複数の信号系列各々を、所定のプリコーディング行列を複数個含むコードブックから選択されたプリコーディング行列で重み付けするプリコーディング手段と、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段と、
を有し、前記プリコーディング手段では、互いに異なるプリコーディング行列が、異なる信号系列に適用され、
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係は、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御で決定される送信装置。
【0068】
[付記項2]
複数の送信アンテナと、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、
前記複数の信号系列各々を、所定のプリコーディング行列を複数個含むコードブックから選択されたプリコーディング行列で重み付けするプリコーディング手段と、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段と、
を有し、前記プリコーディング手段では、互いに異なるプリコーディング行列が、同じ信号系列に異なる時点で適用され、
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる時点の対応関係は、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御で決定される送信装置。
【0069】
[付記項3]
複数の送信アンテナと、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、
前記複数の信号系列各々にプリコーディング行列で重み付けするプリコーディング手段と、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段と、
を有し、前記プリコーディング手段では、互いに異なるプリコーディング行列が異なる信号系列に適用され、且つ互いに異なるプリコーディング行列が同じ信号系列に異なる時点で適用される送信装置。
【0070】
[付記項4]
前記互いに異なるプリコーディング行列の数は、前記所定の周波数帯域に所定数個含まれているリソースブロック1つ分のサブキャリア総数の整数倍である、又は前記周波数帯域に含まれているサブキャリア総数の整数分の1である付記項1乃至3の何れか1項に記載の送信装置。
【0071】
[付記項5]
複数の異なる信号系列で又は複数の異なる時点で、複数のプリコーディング行列が巡回的に使用される付記項1乃至3の何れか1項に記載の送信装置。
【0072】
[付記項6]
隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に或るプリコーディング行列が共通に適用され、別の隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に別のプリコーディング行列が共通に適用される付記項1乃至3の何れか1項に記載の送信装置。
【0073】
[付記項7]
隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に或るプリコーディング行列が共通に適用され、別の隣接するサブキャリアに対応する複数の信号系列に別のプリコーディング行列が共通に適用され、複数のプリコーディング行列が巡回的に使用される付記項1乃至3の何れか1項に記載の送信装置。
【0074】
[付記項8]
プリコーディング手段で使用されるプリコーディング行列は、所定のプリコーディング行列を複数個含むコードブックから選択される付記項3記載の送信装置。
【0075】
[付記項9]
当該送信装置の動作モードにオープンループモード及びクローズドループモードが含まれ、クローズドループドモードでは、前記プリコーディング手段で使用されるプリコーディング行列の少なくとも一部は、当該送信装置の通信相手からのフィードバック信号に応じて前記コードブックから選択される付記項7記載の送信装置。
【0076】
[付記項10]
前記動作モードは、当該送信装置で所定の条件が満たされたことに応じて切り替えられる付記項9記載の送信装置。
【0077】
[付記項11]
クローズドループモードでのフィードバック情報に誤りが検出された場合に、前記動作モードは、クローズドループモードからオープンループモードへ切り替えられる付記項10記載の送信装置。
【0078】
[付記項12]
前記変換手段から出力される複数の信号系列各々にサイクリック遅延ダイバーシチ用の重み付けを行う遅延ダイバーシチ手段を更に有し、
前記遅延ダイバーシチ手段からの出力信号が、前記プリコーディング手段に入力される付記項1乃至3の何れか1項に記載の送信装置。
【0079】
[付記項13]
前記変換手段から出力される複数の信号系列各々にサイクリック遅延ダイバーシチ用の重み付けを行う遅延ダイバーシチ手段を更に有し、
前記遅延ダイバーシチ手段からの出力信号が、前記プリコーディング手段に入力される付記項6記載の送信装置。
【0080】
[付記項14]
前記変換手段から出力される複数の信号系列各々にサイクリック遅延ダイバーシチ用の重み付けを行う遅延ダイバーシチ手段を更に有し、
前記遅延ダイバーシチ手段からの出力信号が、前記プリコーディング手段に入力される付記項7記載の送信装置。
【0081】
[付記項15]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係が、前記送信ストリーム数及び送信アンテナ数に応じて異なる付記項1又は3に記載の送信装置。
【0082】
[付記項16]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係が、複数種類存在し、
当該送信装置で所定の条件が満たされたことに応じて切り替えられる付記項1又は3に記載の送信装置。
【0083】
[付記項17]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係が、複数種類存在し、該複数の対応関係はユーザ装置に応じて使い分けられる付記項1又は3に記載の送信装置。
【0084】
[付記項18]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係が、複数種類存在し、該複数の対応関係はユーザ装置からの上り信号に応じて切り替えられる付記項1又3に記載の送信装置。
【0085】
[付記項19]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる時点の対応関係が、前記送信ストリーム数に応じて異なる付記項2又は3に記載の送信装置。
【0086】
[付記項20]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる時点の対応関係が、複数種類存在し、該複数の対応関係はユーザ装置に応じて使い分けられる付記項2又は3に記載の送信装置。
【0087】
[付記項21]
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる時点の対応関係が、複数種類存在し、該複数の対応関係はユーザ装置からの上り信号に応じて切り替えられる付記項2又は3に記載の送信装置。
【0088】
[付記項22]
複数の送信アンテナを有する送信装置で使用される送信方法であって、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換ステップと、
前記複数の信号系列各々を、所定のプリコーディング行列を複数個含むコードブックから選択されたプリコーディング行列で重み付けするプリコーディングステップと、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信するステップと、
を有し、前記プリコーディングステップでは、互いに異なるプリコーディング行列が、異なる信号系列に適用され、
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる信号系列の対応関係は、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御で決定される送信方法。
【0089】
[付記項23]
複数の送信アンテナを有する送信装置で使用される送信方法であって、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換ステップと、
前記複数の信号系列各々を、所定のプリコーディング行列を複数個含むコードブックから選択されたプリコーディング行列で重み付けするプリコーディングステップと、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信するステップと、
を有し、前記プリコーディングステップでは、互いに異なるプリコーディング行列が、同じ信号系列に異なる時点で適用され、
前記異なるプリコーディング行列及び前記異なる時点の対応関係は、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御で決定される送信方法。
【0090】
[付記項24]
複数の送信アンテナを有する送信装置で使用される送信方法であって、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換ステップと、
前記複数の信号系列各々にプリコーディング行列で重み付けするプリコーディングステップと、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信するステップと、
を有し、前記プリコーディングステップでは、互いに異なるプリコーディング行列が異なる信号系列に適用され、且つ互いに異なるプリコーディング行列が同じ信号系列に異なる時点で適用される送信方法。
【符号の説明】
【0091】
902 信号生成部
904 直列並列変換部(S/P)
906 プリコーディング部
908 並列直列変換部(P/S)
910 IFFT部
912 コードブック
914 セレクタ
916 サブキャリアマッピング部
918 モード切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナと、
何れかの送信アンテナに関連付けられる送信ストリーム1つ以上から、所定の周波数帯域幅に合わせて複数の信号系列を用意する変換手段と、
前記複数の信号系列各々を、プリコーディング行列で重み付けするプリコーディング手段と、
前記プリコーディング手段からの出力信号を送信アンテナ数分の信号に変換し、変換後の信号を各送信アンテナから送信する手段と、
を有し、
前記プリコーディング手段は、閉ループ制御を実行する場合、受信装置からのフィードバックされたプリコーディングマトリクスインジケータをもとに、コードブックから特定されたプリコーディング行列を使用し、受信装置からのフィードバックによらない開ループ制御を実行する場合、コードブックから特定されるとともに、互いに異なるプリコーディング行列を異なる信号系列に適用するようなプリコーディング行列を使用する送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−31212(P2013−31212A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204819(P2012−204819)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2009−520484(P2009−520484)の分割
【原出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】