説明

受信装置及び受信方法

【課題】電波環境の時間変動に対して良好な追従性を有し、妨害波が受信チャンネルの広い範囲に亘って存在する場合でも妨害波を効果的に抑圧できる受信装置を提供する。
【解決手段】受信装置1は、周波数分割多重化信号R(t)から生成された離散信号を一時的に記憶するデータ蓄積部11と、データ蓄積部11の出力である離散信号から妨害波信号を減算する減算部12と、データ蓄積部11の出力と減算部12の出力とのいずれか一方を選択する信号選択部13と、信号選択部13の出力を離散フーリエ変換するフーリエ変換部14と、フーリエ変換部14の出力を等化する等化処理部15と、フーリエ変換部14の出力と等化処理部15の出力とに基づいて周波数ドメイン妨害波成分を推定する妨害波推定部17と、周波数ドメイン妨害波成分を逆離散フーリエ変換して前記妨害波信号を生成する逆フーリエ変換部18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路を伝搬した周波数分割多重化信号を受信する技術に関し、特に、周波数分割多重化信号が伝送路から受けた歪みを補正する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直交周波数分割多重化(OFDM:Orthogonal Frequency Division multiplexing)方式を用いて情報を無線伝送するシステムが通信分野や放送分野で実用化されている。直交周波数分割多重化方式では、送信すべき情報(以下、「送信データ」ともいう。)は複数のサブキャリア(副搬送波)に割り振られ、各サブキャリアは、たとえば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)などのサブキャリア変調方式でデジタル変調される。これら変調されたサブキャリアは、互いに直交関係を有し、所定の周波数間隔で配置され且つ多重化されて伝送される。また、変調されたサブキャリアを受信機側で復調する際に利用される既知信号(以下、「パイロットキャリア」ともいう。)が、特定のサブキャリアとして多重化されることがある。実際には、送信機は、上記のパイロットキャリアを含む変調されたサブキャリアを逆フーリエ変換処理を用いた直交変換により多重化してベースバンドOFDM信号(基底帯域OFDM信号)を生成する。ベースバンドOFDM信号は、所望の搬送波帯域の信号に周波数変換された後に伝送される。
【0003】
より具体的には、送信機は、送信データを各サブキャリアの変調方式に従ってマッピングすることで複素データシンボルを生成し、これら複素データシンボルを逆フーリエ変換することで1有効シンボル期間のベースバンドOFDM信号を生成することができる。送信機は、さらに、ベースバンドOFDM信号の最後部のコピーを当該ベースバンドOFDM信号の先頭に付加することで1シンボル期間のOFDM信号を生成することが可能である。この先頭に付加された最後部のコピーは、ガードインターバル(サイクリックプレフィックス)と呼ばれている。ガードインターバルの付加により、受信機は、伝送信号の直接波とこの直接波に対してガードインターバル長以下の遅延時間を有する遅延波とを同時に受信したときでも、シンボル間干渉の影響を受けずに送信データを再生できることが知られている。
【0004】
また、直交周波数分割多重化方式では、全てのサブキャリアは互いに直交するため、送受信機間でサブキャリア周波数の同期が確立した場合には、送信データを正しく再生することができる。一般に、OFDM信号を受信する受信装置は、受信信号を直交復調により周波数変換する機能を有する。また、受信装置は、送受信機間のタイミング同期並びにサブキャリア周波数同期を確立しつつ、当該周波数変換された受信信号(以下、「時間ドメイン信号」ともいう。)にフーリエ変換を施してサブキャリア毎の周波数ドメイン信号を生成し、これら周波数ドメイン信号に対して復調を行う。
【0005】
従来の受信装置は、上記サブキャリア変調方式で変調された各サブキャリアを誤り無く復調するために、たとえば、送信信号にあらかじめ多重化(挿入)されているパイロットキャリアを用いて伝送路における各サブキャリアの振幅変動量及び位相変動量の推定(以下「伝送路推定」ともいう。)を行い、その推定結果に基づいてサブキャリアの振幅及び位相を補正(以下「等化」ともいう。)している。
【0006】
ところで、受信信号は、伝送路において様々な妨害波の影響を受けるため、受信品質の向上のためにはこれらの妨害波の影響をできるだけ小さくする技術が必要である。この種の技術の中で、同じ信号帯域内(以下、「同一チャンネル」ともいう。)に重畳された妨害波の影響を軽減するための技術(以下「同一チャンネル妨害抑圧技術」ともいう。)は、重要な要素技術の1つである。同一チャンネル妨害抑圧技術に関する先行技術は、たとえば、特開平11−252040号公報(特許文献1)及び特開2001−339320号公報(特許文献2)に開示されている。
【0007】
特許文献1には、パイロットキャリアに基づいて受信信号の周波数選択性妨害を検出し、誤り訂正部において妨害を受けているサブキャリアのデータを消失処理することで妨害の影響を軽減する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、デジタル受信信号中の妨害波(干渉波)に対して位相同期する位相同期手段と、この位相同期手段の出力に応じて当該妨害波のレプリカを生成するレベル調整手段と、受信信号から当該レプリカを減算する減算器とを有する干渉波除去回路が開示されている。位相同期手段としてはPLL(Phase−Locked Loop)回路が使用されている。
【0009】
また、同一の無線周波数を使用して信号を中継するSFN(Single Frequency Network)システムでは、中継局において受信信号と送信信号とが互いに干渉するため、この干渉を抑圧するための回り込みキャンセラが有効である。この回り込みキャンセラは、同一チャンネルに重畳された干渉成分を除去する機能を有することから、同一チャンネル妨害抑圧技術の一つといえる。たとえば、特開2003−273830号公報(特許文献3)に開示されている回り込みキャンセラは、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、受信部の出力からFIRフィルタの出力を減算する減算器と、この減算器の出力を用いて、受信信号の回り込み成分の伝送路特性を推定し、その推定結果に基づいて前記FIRフィルタのタップ係数を生成するフィルタ係数生成部とを有する。FIRフィルタは、減算器の出力に畳み込み演算を施して回り込み成分の複製(レプリカ)を生成することができるので、減算器は、受信部の出力から当該レプリカを減算することで妨害波を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−252040号公報(段落0016〜0017及び図1など)
【特許文献2】特開2001−339320号公報(段落0016〜0021及び図1など)
【特許文献3】特開2003−273830号公報(段落0059〜0078及び図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
電波環境(伝送路特性)が時々刻々と変動するとき、この変動に追従しながら同一チャンネル妨害を抑圧する必要がある。しかしながら、従来の同一チャンネル妨害抑圧技術では、特許文献2に開示されるようにPLL回路を用いて妨害波の位相に同期したレプリカを生成する方法や、特許文献3に開示されるように回り込み信号(妨害波)の複製を生成するFIRフィルタのタップ係数を逐次更新アルゴリズムにより更新する方法が採用されていた。このため、特許文献2,3に開示されている同一チャンネル妨害抑圧技術では、伝送路特性の時間変動に対する追従速度が遅いという問題がある。
【0012】
また、特許文献1に開示されている同一チャンネル妨害抑圧技術では、誤り訂正部が妨害を受けているサブキャリアのデータを消失処理するので、妨害波がOFDM信号の受信チャンネルの広い範囲に亘って存在する場合には十分な抑圧効果が得られないという問題がある。
【0013】
上記に鑑みて本発明の目的は、電波環境の時間変動に対して良好な追従性を有し、妨害波が受信チャンネルの広い範囲に亘って存在する場合でも妨害波を効果的に抑圧することができる受信装置及び受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様による受信装置は、既知のパイロットキャリアを含む複数の変調サブキャリアが多重化された周波数分割多重化信号を受信する受信装置であって、前記周波数分割多重化信号から離散信号を生成するフロントエンド部と、前記離散信号を一時的に記憶した後に出力するデータ蓄積部と、前記データ蓄積部により出力された当該離散信号から妨害波信号を減算して減算信号を生成する減算部と、前記離散信号と前記減算信号とのうちのいずれか一方を選択して出力する信号選択部と、前記信号選択部の出力に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を生成するフーリエ変換部と、前記複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて伝送路特性を推定し、当該推定された伝送路特性を用いて前記複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成する等化処理部と、前記複数の周波数ドメイン信号と前記複数の周波数ドメイン等化信号とに基づいて、前記複数の変調サブキャリアの周波数にそれぞれ対応する複数の周波数ドメイン妨害波成分を推定する妨害波推定部と、前記複数の周波数ドメイン妨害波成分に対して逆離散フーリエ変換を実行して前記妨害波信号を生成する逆フーリエ変換部と、前記データ蓄積部及び前記信号選択部の動作を個別に制御する制御部とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の態様による受信方法は、既知のパイロットキャリアを含む複数の変調サブキャリアが多重化された周波数分割多重化信号を受信する受信方法であって、前記周波数分割多重化信号から離散信号を生成するステップと、前記離散信号をデータ蓄積部に一時的に記憶させるステップと、前記データ蓄積部から前記離散信号を出力させるステップと、当該出力された離散信号に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を生成するステップと、前記複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて第1の伝送路特性を推定し、前記第1の伝送路特性を用いて前記複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成するステップと、前記複数の周波数ドメイン信号と前記複数の周波数ドメイン等化信号とに基づいて、前記複数の変調サブキャリアの周波数にそれぞれ対応する複数の周波数ドメイン妨害波成分を推定するステップと、前記複数の周波数ドメイン妨害波成分に対して逆離散フーリエ変換を実行して妨害波信号を生成するステップと、前記データ蓄積部から前記離散信号を再度出力させるステップと、当該再度出力された離散信号から前記妨害波信号を減算して減算信号を生成するステップと、前記減算信号に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を再度生成するステップと、当該再度生成された複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて第2の伝送路特性を推定し、前記第2の伝送路特性を用いて、前記減算信号から生成された当該複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、上記周波数ドメイン信号と周波数ドメイン等化信号とに基づいて周波数ドメイン妨害波成分が推定され、当該推定された周波数ドメイン妨害波成分に対して逆離散フーリエ変換を実行することで時間ドメインの妨害波信号が検出される。その後、離散信号から時間ドメインの妨害波信号を減算することで減算信号を生成し、これら減算信号に対して離散フーリエ変換と等化処理とを施すことにより、妨害波成分が抑圧された受信データシンボルを得ることが可能である。したがって、伝送路特性が高速に時間変動する通信環境下でも、同一チャンネル妨害成分を効果的に抑圧することができる。また、周波数ドメイン妨害波成分から時間ドメインの妨害波信号を生成し、離散信号から時間ドメインの妨害波信号を減算するという処理が行われるので、たとえ妨害波が受信チャンネルの広い範囲に亘って存在する場合でも、妨害波を効果的に抑圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態1の受信装置の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1の受信装置の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態2の受信装置の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態3の受信装置の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【図5】実施の形態3の受信装置を構成する遅延プロファイル推定部の構成例を示す機能ブロック図である。
【図6】(A),(B)は、伝送路特性の遅延プロファイルの例を示す図である。
【図7】実施の形態3の受信装置を構成する妨害波抑圧評価部の構成例を示す機能ブロック図である。
【図8】本発明に係る実施の形態4の受信装置を構成する妨害波抑圧評価部の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1及び図2は、本発明に係る実施の形態1の受信装置1の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。図1は、第1の動作モード(通常動作モード)で動作するときの構成を示す図であり、図2は、第2の動作モード(妨害波低減動作モード)で動作するときの構成を示す図である。
【0020】
図1に示されるように、この受信装置1は、無線伝送路または有線伝送路から搬送波帯域の直交周波数分割多重化(OFDM)信号R(t)をOFDMシンボル単位で受信するフロントエンド部10を備えている。フロントエンド部10は、受信したOFDM信号R(t)を増幅し、その増幅信号を周波数変換してベースバンドOFDM信号を生成する。その後、フロントエンド部10は、ベースバンドOFDM信号に対してシンボルタイミング同期及び搬送波周波数同期などの同期処理を実行し、同期確立後、1有効シンボル期間のベースバンドOFDM信号をA/D変換して離散信号を生成する。離散信号は、各OFDMシンボルに含まれるN個(Nは2以上の整数)の変調サブキャリアの周波数(以下、サブキャリア周波数と呼ぶ。)f,…,fN−1にそれぞれ対応するN個の時間ドメインの複素信号R,R,…,RN−1からなる。なお、n番目のサブキャリア周波数fは、f=n×f、で与えられる。1有効シンボル期間は、1/fである。
【0021】
図1を参照すると、受信装置1は、離散信号を一時的に記憶するデータ蓄積部11と、複素減算部12と、データ蓄積部11の出力と複素減算部12の出力とのうちのいずれか一方を選択する信号選択部13と、信号選択部13の選択出力にN点の離散フーリエ変換(DFT)を施すフーリエ変換部14と、フーリエ変換部14のN個の複素出力X,…,XN−1に等化処理を施す等化処理部15とを備えている。
【0022】
データ蓄積部11及び信号選択部13の動作は制御部19によって制御される。具体的には、制御部19は、データ出力制御信号(繰り返しタイミング信号)Saをデータ蓄積部11に供給して、データ蓄積部11が離散信号を出力するタイミングを制御する。また、制御部19は、切替制御信号(切り替えタイミング信号)Sbを信号選択部13に供給して信号選択部13の選択先(データ蓄積部11の出力あるいは複素減算部12の出力)を制御することができる。
【0023】
複素減算部12は、データ蓄積部11のN個の出力R,…,RN−1から後述の逆フーリエ変換部18のN個の出力をそれぞれ減算してN個の減算信号(時間ドメイン信号)を生成し、これら減算信号を信号選択部13に出力する。信号選択部13は、選択制御信号Sbの値に応じてデータ蓄積部11の出力あるいは複素減算部12の出力のいずれか一方を選択し、選択したN個の出力をフーリエ変換部14に出力する。通常動作モードでは、信号選択部13は、図1に示されるようにデータ蓄積部11の出力を選択し、妨害波低減動作モードでは、信号選択部13は、図2に示されるように複素減算部12の出力を選択する。ここで、データ蓄積部11に入力されるデータ出力制御信号Saと、信号選択部13に入力される切替制御信号Sbとは互いに同期している。フーリエ変換部14による1回分のフーリエ変換処理に使用されるデータは、データ蓄積部11の出力あるいは複素減算部12の出力のいずれか一方のデータのみである。
【0024】
フーリエ変換部14は、図1に示されるように、時間ドメインのN個の離散信号成分をフーリエ変換により周波数ドメイン信号であるN個の複素信号すなわち受信データシンボルX,…,XN−1に変換(OFDM復調)する機能を有する。
【0025】
等化処理部15は、伝送路特性推定部151と等化部152とを有する。伝送路特性推定部151は、N個の受信データシンボルX,…,XN−1に含まれる既知の受信パイロットシンボルを用いてサブキャリア周波数f,…,fN−1にそれぞれ対応するN個の伝送路特性h,…,hN−1を推定する機能を有する。受信パイロットシンボルは、たとえば、時間方向及び周波数方向にそれぞれ分散して配置されている。これら受信パイロットシンボルの伝送路特性を推定した後に、受信パイロットシンボル以外の受信データシンボルの周波数特性を補間することが可能である。たとえば、日本のデジタル放送規格であるISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting for Terrestrial)やDVB−T(Digital Video Broadcasting − Terrestrial)では、OFDM信号の1シンボル期間内で周波数方向に12サブキャリアおき、シンボル方向(時間方向)には4サブキャリアおきにパイロットキャリアが挿入されているため、パイロットキャリアに対して推定された伝送路特性を時間方向及び周波数方向に内挿補間することで全てのサブキャリア周波数に対する伝送路特性を求めることができる。
【0026】
等化部152は、たとえば、公知のZF(ゼロフォーシング)基準やMMSE(最小自乗誤差)基準による等化を行うことができる。ZF基準による等化を行う場合には、次式(1)に示されるように、サブキャリア周波数fに対応する複素信号Xを伝送路特性hで複素除算することで等化信号[X]を算出することができる。
[X]=X/d …(1)
【0027】
図1に示されるように、受信装置1はさらに信号点判定部16及び妨害波推定部17を備える。信号点判定部16は、等化部152から出力された周波数ドメインのN個の等化信号[X],…,[XN−1]にそれぞれ対応する信号点を判定する機能を有する。信号点は、サブキャリア変調に使用されたディジタル変調方式に従って判定される。ディジタル変調方式としては、たとえば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、多値QAMあるいは多値PSKが挙げられる。各等化信号が当該ディジタル変調方式で規定される信号点(たとえば、16QAMの場合は16個の信号点)のいずれに対応するかが判定される。
【0028】
妨害波推定部17は、フーリエ変換部14の等化前の出力X〜XN−1と等化処理部15の出力[X]〜[XN−1]とに基づいて、サブキャリア周波数f,…,fN−1にそれぞれ対応するN個の周波数ドメイン妨害波成分Z,…,ZN−1を推定する機能を有する。
【0029】
図1に示されるように、妨害波推定部17は、逆等化部171と妨害波成分抽出部172とを含む。逆等化部171は、信号点判定部16から出力された信号点のデータシンボルd,…,dN−1と伝送路特性の推定値h,…,hN−1とに基づいて、妨害波の影響が少ない受信データシンボルY,…,YN−1を推定する。具体的には、ZF基準による逆等化の場合には、次式(2)に示されるように、サブキャリア周波数fに対応するデータシンボルdに推定値hを複素乗算することで、サブキャリア周波数fに対応する受信データシンボルYを算出することができる。
=d×h …(2)
【0030】
妨害波成分抽出部172は、フーリエ変換部14の等化前の出力X〜XN−1から受信データシンボルY〜YN−1をそれぞれ複素減算することで周波数ドメイン妨害波信号を生成することができる。具体的には、次式(3)により、サブキャリア周波数fに対応する周波数ドメイン妨害波信号Zを算出することができる。
=X−Y …(3)
【0031】
妨害波低減動作モードは、通常動作モードが実行された後に実行される。このとき、図2に示されるように、データ蓄積部11は、同一の有効シンボル期間内の時間ドメインの複素信号R,R,…,RN−1を再度出力する。逆フーリエ変換部18は、妨害波成分抽出部172のN個の出力Z,…,ZN−1に対して逆離散フーリエ変換を実行することで時間ドメインのN個の複素妨害波信号z,…,zN−1を生成する。複素減算部12は、データ蓄積部11の複素出力R,…,RN−1から複素妨害波信号z,…,zN−1をそれぞれ複素減算することで、妨害波の影響が低減したN個の時間ドメイン信号を生成することができる。
【0032】
図2に示されるように、妨害波低減動作モードでは、信号選択部13の選択先は、複素減算部12の出力となる。このとき、フーリエ変換部14は、複素減算部12のN個の出力に対して離散フーリエ変換を実行して周波数ドメインのN個の複素データシンボルX(1),…,XN−1(1)を生成する(ステップS1)。また、等化処理部15では、伝送路特性推定部151は、複素データシンボルX(1),…,XN−1(1)に含まれる受信パイロットシンボルに基づいてN個の伝送路特性h(1),…,hN−1(1)を推定する(ステップS2)。等化部152は、伝送路特性h(1),…,hN−1(1)を用いてフーリエ変換部14の出力を等化することによりN個の等化信号[X(1)],…,[XN−1(1)]を生成することとなる(ステップS3)。
【0033】
また、信号点判定部16は、等化信号[X(1)],…,[XN−1(1)]にそれぞれ対応するN個の信号点の受信データシンボルd(1),…,dN−1(1)を出力する(ステップS4)。その後、逆等化部171は、受信データシンボルY(1),…,YN−1(1)を生成し(ステップS5)、次いで、妨害波成分抽出部172は、フーリエ変換部14の出力X(1)〜XN−1(1)から受信データシンボルY(1)〜YN−1(1)をそれぞれ複素減算することで周波数ドメイン妨害波信号Z(1)〜ZN−1(1)を生成する(ステップS5)。さらに、逆フーリエ変換部18は、周波数ドメイン妨害波信号Z(1)〜ZN−1(1)を逆離散フーリエ変換して時間ドメインのN個の複素妨害波信号z(1),…,zN−1(1)を生成する(ステップS6)。そして、複素減算部12は、データ蓄積部11の複素出力R,…,RN−1から複素妨害波信号z(1),…,zN−1(1)をそれぞれ複素減算することで、妨害波の影響が低減した時間ドメイン信号を生成することができる(ステップS7)。
【0034】
制御部19は、妨害波低減動作モードにおける以上のステップS1〜S7の処理を任意回数(0回も含む。)だけ繰り返し実行させることができる。
【0035】
以上に説明したように実施の形態1によれば、伝送路特性が高速に時間変動する通信環境下でも、伝送路特性の変動に対する追従性が高い処理を実行することができるため、同一チャンネル妨害成分を効果的に抑圧することができる。また、たとえ妨害波が受信チャンネルの広い範囲に亘って存在する場合でも、妨害波推定部17は、同一チャンネル妨害成分Z〜ZN−1を精度よく検出し、これら同一チャンネル妨害成分Z〜ZN−1を効果的に抑圧することができる。したがって、高い受信性能を確保することができる。特に移動体がOFDM信号を受信する場合には、伝送路特性が高速に時間変動しやすいため、本実施の形態の受信装置1は有効である。
【0036】
また、逆フーリエ変換部18は、推定された妨害成分Z〜ZN−1やZ(1)〜ZN−1(1)を時間ドメイン信号z,…,zN−1やz(1),…,zN−1(1)に変換し、複素減算部12は、これら時間ドメイン信号を受信信号R〜RN−1から除去している。その後、フーリエ変換及び等化処理が実行される。このため、特に妨害成分の電力が大きい場合には、複素減算部12によりフーリエ変換部14への入力信号の振幅が適切なレベルに変換されたうえで、離散フーリエ変換が実行されることとなる。したがって、フーリエ変換部14よりも後段の回路のダイナミックレンジを有効に活用することが可能である。また、同一チャンネル妨害抑圧後の受信性能を大幅に向上することができる。
【0037】
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図3は、実施の形態2の受信装置2の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。図3に示されるように、本実施の形態の受信装置2は、上記実施の形態1の構成に加えて誤差評価部20を有している。受信装置2の構成は、制御部19B及び誤差評価部20を除いて実施の形態1の受信装置1の構成と同じである。
【0038】
誤差評価部20は、周波数ドメインの等化信号[X],…,[XN−1]と信号点のデータシンボルd,…,dN−1との間の誤差成分(等化出力[X]〜[XN−1]に残留する雑音成分)を検出する機能を有する。制御部19Bは、実施の形態1の制御部19と同じ機能を有し、この機能に加えて、誤差評価部20による検出結果に応じてデータ蓄積部11及び信号選択部13の動作を制御する機能を有する。信号点判定部16の出力は、同一チャンネル妨害の影響が無視できない程大きい場合には、信号点を正確に再現するとは限らないため、判定誤差が生じている可能性がある。この場合には、その判定誤差の大きさや程度によっては、同一チャンネル妨害抑圧処理を行うことによってかえって受信性能が劣化する場合がある。そこで、本実施の形態では、制御部19Bは、誤差評価部20で検出された誤差成分に応じて、たとえば、上記の妨害波低減動作モード(同一チャンネル妨害抑圧処理を実行する動作モード)を実行するか否か、あるいは妨害波低減動作モードを継続するか否かを判断することができる。
【0039】
図3に示されるように、誤差評価部20は、誤差比較部201と誤差判定部202とを含む。誤差比較部201は、等化部152の複素信号出力と信号点判定部16の複素信号出力とを入力とし、これら複素信号出力の差分の振幅または振幅の2乗値を全サブキャリア周波数分算出し、その平均値(以下、「誤差平均値」ともいう)を算出する機能を有する。なお、振幅の2乗値は、当該差分Δと当該差分の複素共役Δとの積として算出され、振幅の値は、当該積の2乗根として算出される。より具体的には、通常動作モードでは、図3に示されるように、等化部152の複素信号出力[X]〜[XN−1]と信号点判定部16の複素信号出力d〜dN−1とを入力とするとき、誤差比較部201は、次式(4A),(4B)のいずれか一方に従って、誤差平均値<Δ>を算出することができる。
【数1】

【0040】
また、誤差評価部20は、通常動作モードの場合(同一チャンネル妨害成分を抑圧しない場合)と妨害波低減動作モードの場合(同一チャンネル妨害成分を抑圧した場合)とで誤差平均値を比較することができる。その比較結果は、たとえば、同一チャンネル妨害成分を抑圧していない場合の誤差平均値<Δ>から抑圧した場合の誤差平均値<Δ>を引き算した結果として出力されることができる。あるいは、誤差比較部201は、誤差平均値<Δ>,<Δ>の大小関係を表す信号とその差分(=<Δ>−<Δ>)の絶対値を表す信号とを出力してもよく、同一チャンネル妨害成分の抑圧効果を判定できる情報であれば出力信号の形式は、制限されるものではない。
【0041】
次に、誤差判定部202は、誤差比較部201の出力を入力とし、同一チャンネル妨害成分の抑圧効果を表す信号と外部から入力される誤差判定基準値Erefとに基づいて、同一チャンネル妨害成分の抑圧効果の有無を判定することができる。たとえば、誤差比較部201の出力が誤差平均値の引き算結果である場合には、その引き算結果を誤差判定基準値Erefと比較し、誤差平均値の引き算結果が誤差判定基準値Erefよりも大きい場合には同一チャンネル妨害の抑圧効果があったと判定し、その判定結果を制御部19Bに出力することができる。
【0042】
以上に説明したように実施の形態2によれば、誤差評価部20で検出された誤差成分に応じて、データ蓄積部11及び信号選択部13の動作を制御することができる。たとえば、制御部19Bは、通常動作モード実行時と妨害波低減モード実行時との間の誤差成分の大きさや変化に応じて妨害波低減モード(妨害抑圧処理)を実行するか否か判断することができるため、同一チャンネル妨害抑圧処理が不要な場合や、同一チャンネル妨害成分の検出誤差の影響などで受信性能がかえって劣化することが予想される場合には、妨害波低減モードの実行を回避することができる。したがって、伝送路特性の変動や妨害成分の変化、あるいは受信信号の状態に応じて適応的かつ適切に妨害成分を抑圧することができる。
【0043】
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図4は、実施の形態3の受信装置3の主要構成を概略的に示す機能ブロック図である。図4に示されるように、本実施の形態の受信装置3は、遅延プロファイル推定部21及び妨害波抑圧評価部22を有している。受信装置3の構成は、制御部19Cと遅延プロファイル推定部21と妨害波抑圧評価部22とを除いて、実施の形態1の受信装置1の構成と同じである。
【0044】
遅延プロファイル推定部21は、フーリエ変換部14の出力X〜XN−1に基づいて伝送路特性の遅延プロファイル(OFDM信号の希望波と遅延波と雑音成分との電力分布)を推定する機能を有する。また、妨害波抑圧評価部22は、遅延プロファイルの電力分布に基づいて妨害波が抑圧された否かを判定し、その判定結果を制御部19Cに通知することができる。制御部19Cは、上記実施の形態1の制御部19の機能に加えて、妨害波抑圧評価部22による判定結果に基づいてデータ蓄積部11及び信号選択部13の動作を制御する機能を有する。
【0045】
図5は、遅延プロファイル推定部21の構成例を示す機能ブロック図である。図5に示されるように、遅延プロファイル推定部21は、副伝送路特性推定部210と、逆フーリエ変換部214とパス電力算出部215とを有している。副伝送路特性推定部210はさらにパイロット伝送路特性推定部211とパイロット信号生成部212と伝送路特性内挿部213とを含む。
【0046】
パイロット伝送路特性推定部211は、フーリエ変換部14の複素信号出力X〜XN−1及びパイロット信号生成部212の複素信号出力とを入力とし、パイロット信号生成部212から供給された基準パイロット信号を用いて、入力された複素信号X〜XN−1中の受信パイロット信号から伝送路特性を推定する。具体的には、パイロット伝送路特性推定部211は、受信パイロット信号を既知の基準パイロット信号で複素除算することで受信パイロット信号に対する伝送路特性を複素信号として生成することができる。逆フーリエ変換部214は、伝送路特性内挿部213の出力を内挿補間することにより、各サブキャリア周波数に対する伝送路特性を算出して出力することができる。たとえば、伝送路特性内挿部213は、時間方向に内挿補間した結果を出力してもよいし、周波数方向に内挿補間した結果を出力してもよいし、あるいは、時間及び周波数方向に内挿補間した結果を出力しても良い。なお、伝送路特性推定部151で得られた内挿補間のデータを流用することもできる。
【0047】
逆フーリエ変換部214は、伝送路特性内挿部213の複素信号出力を入力とし、これら複素信号出力を逆離散フーリエ変換することで時間ドメインの複素信号を生成することができる。ここで、逆フーリエ変換部214で使用される入力データの点数Mは、サブキャリア周波数の全数N(>M)よりも少なくてもよい。よって、逆フーリエ変換部214は、時間ドメインにおけるM個の複素信号P,…,PM−1を出力することとなる。
【0048】
パス電力算出部215は、複素信号P,…,PM−1の振幅または振幅の2乗値を電力値として成分毎に計算することにより遅延プロファイルを生成する。図6(A),(B)は、遅延プロファイルを例示するグラフである。図6(A)では、送信機から送られてきた主波(希望波)に対し、反射などによって遅延した遅延波が存在し、さらに同一チャンネル妨害成分と熱雑音とが重畳された場合の遅延プロファイルの推定結果が示されている。すなわち、図6(A)の電力分布は、主波の電力分布30mと、遅延波の電力分布30dと、電力値Pn付近の雑音電力成分とを含む。主波の電力分布30mと遅延波の電力分布30dは、所望の電力成分(以下、「パス成分」と呼ぶ。)の電力分布30Pであり、それ以外の成分は、熱雑音及び同一チャンネル妨害成分(以下「雑音成分」とも呼ぶ。)の電力分布を意味している。パス電力算出部215は、パス成分、熱雑音成分及び同一チャンネル妨害成分全ての電力を遅延時間毎に算出する。同一チャンネル妨害が抑圧された信号から遅延プロファイルを再度推定すると、図6(B)に示すものとなり、パス成分以外の電力成分が抑圧前に比べて小さくなる。したがって、同一チャンネル妨害抑圧処理前後の遅延プロファイル推定結果をもとに、抑圧効果を高精度に推定することができる。
【0049】
次に、図7は、妨害波抑圧評価部22の構成例を示す機能ブロック図である。図7に示されるように、妨害波抑圧評価部22は、判定処理部220、成分分離部221、パス成分電力算出部222及び雑音電力算出部223を有している。判定処理部220はさらに、電力比算出部224、電力比記憶部225及び判定部226を有している。
【0050】
成分分離部221は、遅延プロファイルを示す信号から主波及び遅延波の電力分布と雑音電力分布とを分離し、主波及び遅延波の電力分布を示す信号をパス成分電力算出部222に供給し、雑音電力分布を示す信号を雑音電力算出部223に供給する。パス成分電力算出部222は、当該電力分布の電力値の全てを加算(積分)して第1の電力積分値を算出し、一方、雑音電力算出部223は、雑音電力分布の電力値の全てを加算(積分)して第2の電力積分値を算出する。
【0051】
判定処理部220は、希望波及び遅延波の電力分布と雑音電力分布とを比較し、その比較結果に基づいて妨害波が抑圧された否かを判定することができる。具体的には、電力比算出部224は、第1の電力積分値と第2の電力積分値との比率(以下、電力比と呼ぶ。)を算出し、この電力比を電力比記憶部225に記憶させる。また、電力比算出部224は、算出された電力比を判定部226に与える。
【0052】
判定部226は、電力比算出部224から供給された電力比に基づいて、妨害波が抑圧されたか否かを判定することができる。また、判定部226は、電力比記憶部225に記憶されている以前の電力比と、電力比算出部224から供給された現在の電力比とを比較して、電力比の変化を検出することが可能である。たとえば、判定部226は、電力比の現在値の方が電力比記憶部225に記憶されている以前の電力比よりも大きい場合に電力比が改善したと判定し、その改善量が再演算判定基準値RPrefよりも大きい場合には同一チャンネル妨害抑圧処理の効果があったと判定することができる。判定部226による判定結果は、制御部19Cに供給される。
【0053】
以上に説明したように実施の形態3では、制御部19Cは、遅延プロファイル推定結果の変化をもとに同一チャンネル妨害の抑圧効果を推定したうえで妨害抑圧処理を実行するか否か判断することができるため、同一チャンネル妨害抑圧処理が不要な場合や、同一チャンネル妨害成分の検出誤差の影響などで受信性能がかえって劣化するおそれがある場合には、同一チャンネル妨害抑圧処理の実行を回避することができる。また、伝送路変動や妨害成分の変化、受信信号の状態に応じて適応的かつ適切に妨害成分を抑圧することができる。
【0054】
実施の形態4.
図8は、本発明に係る実施の形態4の受信装置を構成する妨害波抑圧評価部22Mの構成を示す機能ブロック図である。本実施の形態の受信装置の構成は、妨害波抑圧評価部22Mを除いて、実施の形態3の受信装置3の構成と同じである。
【0055】
図8に示されるように、この妨害波抑圧評価部22Mは、判定処理部230、成分分離部231及び雑音電力算出部232を有する。判定処理部230はさらに、雑音電力記憶部233及び判定部234を有している。
【0056】
成分分離部231は、遅延プロファイルを示す信号から雑音電力分布を分離し、雑音電力分布を示す信号を雑音電力算出部232に供給する。判定処理部230は、雑音電力分布に基づいて妨害波が抑圧された否かを判定することができる。具体的には、雑音電力算出部232は、雑音電力分布の電力値の全てを加算(積分)して電力積分値を算出し、これを雑音電力記憶部233に記憶させる。また、雑音電力比算出部232は、算出された雑音電力比を判定部234に与える。判定部234は、雑音電力算出部234から供給された電力比に基づいて、妨害波が抑圧されたか否かを判定することができる。また、判定部234は、雑音電力記憶部233に記憶されている以前の電力比と、雑音電力算出部232から供給された現在の電力比とを比較して、電力比の変化を検出することが可能である。たとえば、判定部234は、雑音電力比の現在値の方が雑音電力記憶部233に記憶されている以前の電力比よりも大きい場合に電力比が改善したと判定し、その改善量が再演算判定基準値RPrefよりも大きい場合には同一チャンネル妨害抑圧処理の効果があったと判定することができる。判定部234による判定結果は、制御部19Cに供給される。
【0057】
以上に説明したように実施の形態4によれば、実施の形態3と同様に、遅延プロファイル推定結果の変化をもとに同一チャンネル妨害の抑圧効果を推定した上で妨害抑圧処理を実行するか否か判断することができるため、同一チャンネル妨害抑圧処理が不要な場合や、同一チャンネル妨害成分の検出誤差の影響等で受信性能がかえって劣化するおそれがある場合には、同一チャンネル妨害抑圧処理を回避することが可能となり、伝送路変動や妨害成分の変化、受信信号の状態に応じて適応的かつ適切に妨害成分を抑圧することができる。
【0058】
実施の形態1〜4の変形例.
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。たとえば、実施の形態2の構成と実施の形態3の構成とを組み合わせた実施の形態もあり得る。
【0059】
また、上記受信装置1〜3の機能の全部がハードウェア構成で実現されている必要はなく、受信装置1〜3の機能の一部が、マイクロプロセッサにより実行されるコンピュータプログラムで実現されてもよい。この場合、たとえば、マイクロプロセッサは、ハードディスク(磁気ディスク)、光ディスクまたはフラッシュメモリなどの記録媒体からコンピュータプログラムをロードし実行することによって当該機能の一部を実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
1〜3 受信装置、 10 フロントエンド部、 11 データ蓄積部、 12 複素減算部、 13 信号選択部、 14 フーリエ変換部、 15 等化処理部、 151 伝送路特性推定部、 152 等化部、 16 信号点判定部、 17 妨害波推定部、 171 逆等化部、 172 妨害波成分抽出部、 18 逆フーリエ変換部、 19,19B,19C 制御部、 20 誤差評価部、 201 誤差比較部、 202 誤差判定部、 21 遅延プロファイル推定部、 210 副伝送路特性推定部、 211 パイロット伝送路特性推定部、 212 パイロット信号生成部、 213 伝送路特性内挿部、 214 逆フーリエ変換部、 215 パス電力算出部、 22,22M 妨害波抑圧評価部、 220 判定処理部、 221 成分分離部、 222 パス成分電力算出部、 223 雑音電力算出部、 224 電力比算出部、 225 電力比記憶部、 226 判定部、 231 成分分離部、 232 雑音電力算出部、 233 雑音電力記憶部、 234 判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既知のパイロットキャリアを含む複数の変調サブキャリアが多重化された周波数分割多重化信号を受信する受信装置であって、
前記周波数分割多重化信号から離散信号を生成するフロントエンド部と、
前記離散信号を一時的に記憶した後に出力するデータ蓄積部と、
前記データ蓄積部により出力された当該離散信号から妨害波信号を減算して減算信号を生成する減算部と、
前記離散信号と前記減算信号とのうちのいずれか一方を選択して出力する信号選択部と、
前記信号選択部の出力に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を生成するフーリエ変換部と、
前記複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて伝送路特性を推定し、当該推定された伝送路特性を用いて前記複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成する等化処理部と、
前記複数の周波数ドメイン信号と前記複数の周波数ドメイン等化信号とに基づいて、前記複数の変調サブキャリアの周波数にそれぞれ対応する複数の周波数ドメイン妨害波成分を推定する妨害波推定部と、
前記複数の周波数ドメイン妨害波成分に対して逆離散フーリエ変換を実行して前記妨害波信号を生成する逆フーリエ変換部と、
前記データ蓄積部及び前記信号選択部の動作を個別に制御する制御部と
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置であって、
前記データ蓄積部及び前記信号選択部は、第1の動作モードと第2の動作モードとを有し、
前記第1の動作モードでは、前記データ蓄積部から前記離散信号が出力されるとともに、前記信号選択部により前記離散信号が選択され、
前記第2の動作モードでは、前記データ蓄積部から前記離散信号が再度出力されるとともに、前記信号選択部により前記減算信号が選択される
ことを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の受信装置であって、前記制御部は、前記データ蓄積部及び前記信号選択部を前記第1の動作モードで動作させた後に前記第2の動作モードで動作させることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の受信装置であって、
前記変調サブキャリアに適用されたディジタル変調方式に従って、前記複数の周波数ドメイン等化信号にそれぞれ対応する複数の信号点を判定する信号点判定部と、
前記複数の周波数ドメイン等化信号と複数の信号点との間の誤差を検出する誤差評価部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記誤差評価部による検出結果に基づいて前記データ蓄積部及び前記信号選択部の動作を制御する
ことを特徴とする受信装置。
【請求項5】
請求項4に記載の受信装置であって、
前記誤差評価部は、前記データ蓄積部及び前記信号選択部が前記第1の動作モードで動作したときの当該誤差と、前記データ蓄積部及び前記信号選択部が前記第2の動作モードで動作したときの当該誤差とを比較し、
前記制御部は、前記誤差評価部による比較結果に基づいて前記データ蓄積部及び前記信号選択部の動作を制御する
ことを特徴とする受信装置。
【請求項6】
請求項2または3に記載の受信装置であって、
前記複数の周波数ドメイン信号に基づいて前記伝送路特性の遅延プロファイルを推定する遅延プロファイル推定部と、
前記遅延プロファイルの電力分布に基づいて妨害波が抑圧された否かを判定する妨害波抑圧評価部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記妨害波抑圧評価部による判定結果に基づいて前記データ蓄積部及び前記信号選択部の動作を制御する
ことを特徴とする受信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の受信装置であって、
前記妨害波抑圧評価部は、
前記遅延プロファイルから希望波及び遅延波の電力分布と当該希望波及び遅延波以外の雑音電力分布とを分離する成分分離部と、
前記希望波及び遅延波の電力分布と前記雑音電力分布とを比較し、その比較結果に基づいて前記妨害波が抑圧された否かを判定する判定処理部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項8】
請求項7に記載の受信装置であって、
前記判定処理部は、
前記希望波及び遅延波の電力分布に基づいて第1の電力積分値を算出するとともに前記雑音電力分布に基づいて第2の電力積分値を算出する電力算出部と、
前記第1の電力積分値と前記第2の電力積分値との比率を算出し、前記比率の変化に基づいて前記妨害波が抑圧されたか否かを判定する判定部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項9】
請求項6に記載の受信装置であって、
前記妨害波抑圧評価部は、
前記遅延プロファイルから希望波及び遅延波以外の雑音電力分布を分離する成分分離部と、
前記雑音電力分布に基づいて前記妨害波が抑圧されたか否かを判定する判定処理部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項10】
請求項9に記載の受信装置であって、
前記判定処理部は、
前記雑音電力分布に基づいて電力積分値を算出する電力算出部と、
前記電力積分値の変化に基づいて前記妨害波が抑圧されたか否かを判定する判定部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項11】
請求項6から10のうちのいずれか1項に記載の受信装置であって、
前記遅延プロファイル推定部は、
前記複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて伝送路特性を推定する副伝送路特性推定部と、
前記副伝送路特性推定部により推定された伝送路特性に対して逆離散フーリエ変換を実行することにより時間ドメインの複素信号を生成する逆フーリエ変換部と、
前記複素信号の電力分布を前記遅延プロファイルとして算出する電力算出部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項12】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の受信装置であって、
前記変調サブキャリアに適用されたディジタル変調方式に従って、前記複数の周波数ドメイン等化信号にそれぞれ対応する複数の信号点を判定する信号点判定部をさらに備え、
前記妨害波推定部は、
前記複数の信号点と前記等化処理部により推定された当該伝送路特性とに基づいて、前記複数の信号点にそれぞれ対応する複数の受信データシンボルを推定する逆等化部と、
前記複数の周波数ドメイン信号から、当該推定された複数の受信データシンボルをそれぞれ減算することで前記複数の周波数ドメイン妨害波信号を生成する妨害波成分抽出部と
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項13】
既知のパイロットキャリアを含む複数の変調サブキャリアが多重化された周波数分割多重化信号を受信する受信方法であって、
前記周波数分割多重化信号から離散信号を生成するステップと、
前記離散信号をデータ蓄積部に一時的に記憶させるステップと、
前記データ蓄積部から前記離散信号を出力させるステップと、
当該出力された離散信号に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を生成するステップと、
前記複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて第1の伝送路特性を推定し、前記第1の伝送路特性を用いて前記複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成するステップと、
前記複数の周波数ドメイン信号と前記複数の周波数ドメイン等化信号とに基づいて、前記複数の変調サブキャリアの周波数にそれぞれ対応する複数の周波数ドメイン妨害波成分を推定するステップと、
前記複数の周波数ドメイン妨害波成分に対して逆離散フーリエ変換を実行して妨害波信号を生成するステップと、
前記データ蓄積部から前記離散信号を再度出力させるステップと、
当該再度出力された離散信号から前記妨害波信号を減算して減算信号を生成するステップと、
前記減算信号に対して離散フーリエ変換を実行することにより複数の周波数ドメイン信号を再度生成するステップと、
当該再度生成された複数の周波数ドメイン信号のうち前記パイロットキャリアに対応する受信パイロット信号に基づいて第2の伝送路特性を推定し、前記第2の伝送路特性を用いて、前記減算信号から生成された当該複数の周波数ドメイン信号に等化処理を施すことにより複数の周波数ドメイン等化信号を生成するステップと
を備えることを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−115708(P2013−115708A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261833(P2011−261833)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)