説明

受信装置及び復調出力選択方法

【課題】復調出力の誤選択が発生し、得られた通信結果にヌル領域を含有してしまうことを防ぐ。
【解決手段】Vb電圧出力部114は、Vb電圧を出力する。Vb電圧は、送受信アンテナ102に直列に接続された抵抗器105にかかる電圧がVb電圧より低い場合にASK復調回路107による復調出力がヌルとならず、抵抗器105に係る電圧がVb電圧より所定量高い場合にASK復調回路107による復調出力がヌルとなり、Qch復調回路109による復調出力がヌルとならない値である。そして、選択回路は、抵抗器105にかかる電圧がVb電圧以下である場合にASK復調部107による復調出力を選択して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
送信装置から信号を受信する受信装置及び復調出力選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードが普及している。非接触ICカードは、一般的にはリーダライタ装置から発信される搬送波の反射波によってリーダライタ装置との通信を行う。このとき、伝送される搬送波の振幅は、リーダライタ装置のアンテナと非接触ICカードのアンテナとの間の距離によって変化する。搬送波振幅と距離との関係は、ロードスイッチをオンにしたときとオフにしたときとで異なり、非接触ICカードとリーダライタ装置との距離によってはロードスイッチがオンになっているときとオフになっているときとで搬送波の振幅が一致することがある。このことをヌル(Null)が発生すると言う。ヌルが発生すると搬送波振幅の変化が0となるため、情報を伝送することができなくなる。
【0003】
そこで、特許文献1には、ヌルの発生を回避する技術が開示されている。具体的には、リーダライタ装置が、振幅変調と位相変調との2種類の方式で変調された信号をそれぞれ復調し、振幅の大きいほうの復調出力を選択するものである。
【0004】
図7は、特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置900の構成の一例を示す図である。
リーダライタ装置900は、ASK復調回路907(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)に加え、Ich復調回路908及びQch復調回路909を備える。なお、Ich復調回路908は、受信信号のIチャネル成分(In−phase:同相成分)に対して位相復調する回路であり、Qch復調回路909は、受信信号のQチャネル成分(Quadrature−phase:直交成分)に対して位相復調する回路である。送受信アンテナ902より入力された波形は、ASK復調回路907、Ich復調回路908、及びQch復調回路909にそれぞれ入力され、それぞれ復調される。復調された波形は、それぞれ波形品質比較回路916にて比較され、選択回路917にてもっとも良好な波形が選択され、出力される。
【0005】
図8は、特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置900における復調結果の例を示す図である。
ASK復調回路907による復調出力は、ヌルが発生する距離が存在する一方、他の復調出力と比較して通信距離は最大となる。
Ich復調回路908による復調出力は、ASK復調回路907による復調出力と比較して通信距離が短く、アンテナ間距離が短い位置でヌルが発生する。
Qch復調回路909による復調出力は、ASK復調回路907による復調出力と比較して通信距離が短い一方、ヌルが発生しない。
したがって、図7に示すリーダライタ装置900は、通信距離が最大であるASK復調回路907による復調出力と、ヌルが発生しないQch復調回路909による復調出力とを、それぞれヌルが発生していない範囲で切り替える選択信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−271775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7に示すリーダライタ装置900にて選択処理すると、得られる出力が図9に示す結果となるおそれがある。
図9は、特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置900における選択結果の例を示す図である。
図9に示す得られる出力には、図の通りASK復調によるヌルと、Qch位相復調の通信距離上限によるヌルが発生している。このヌル発生原因は以下の通りである。
【0008】
図10は、非接触ICカード通信におけるコマンドフレーム構成を示す図である。
送受信アンテナ902からの入力波形は、ASK復調回路907、Ich復調回路908、Qch復調回路909のそれぞれを経た後、復調波形品質確認回路910にて波形確認される。復調波形品質確認回路910は、通常、図10に示すコマンドのフレーム構成のうち先頭フィールド部分を用いて波形品質を判断する。これはコマンドの処理時間を考慮しての事であり、例えばコマンドの最終フレームまで待機して波形品質を判断すると、コマンド処理が遅れて間に合わなくなってしまうという問題があるためである。そのため、図10に示すコマンドフレームの先頭フィールド部分までヌルの発生が無かった場合、たとえ以降のフィールドにおいてヌルが発生したとしても、結果的にその波形は良好な波形と判断されてしまうことになる。
【0009】
まず、選択結果にASK復調によるヌルが含まれる理由について説明する。
ASK復調回路907においては、図9における地点Aよりヌルが発生している。ここで地点Aにおけるヌル発生が、図10に示すコマンドフレームにおける先頭フィールド以降で生じた場合、復調波形品質確認回路910は当該波形が良好な波形と判断することとなる。このため、波形品質比較回路916は本来ヌルの発生しないQch復調回路909による復調出力を選択するべきタイミングで、ASK復調回路907による復調出力を選択してしまう。
【0010】
同様に選択結果にQch位相復調の通信距離上限によるヌルが含まれる理由について説明する。
Qch復調回路909においては、地点Bが通信距離であり地点Bより遠ざかるほど、通信品質が悪化する。ここで図10に示すコマンドフレーム構成の先頭フィールド部分までは通信品質が維持されて、ヌルが発生していなかった場合、以降のコマンドフィールドでヌル発生したとしても、復調波形品質確認回路910は波形が良好であると判断し、波形品質比較回路916はQch復調回路909による復調出力を選択してしまう。
【0011】
このように、特許文献1に記載のカードリーダライタ装置900は、復調出力の誤選択が発生し、得られた通信結果にヌル領域を含有してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、送信装置から信号を受信する受信装置であって、前記送信装置に搬送波を送信し、当該送信装置から第1の方式及び第2の方式で変調された信号を乗せた反射波を受信するアンテナと、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧を測定する電圧測定部と、前記受信部が受信した信号を、前記第1の方式で復調する第1の復調部と、前記受信部が受信した信号を、前記第2の方式で復調する第2の復調部と、前記電圧測定部が測定した電圧が所定の下限閾値以下である場合に前記第1の復調部による復調出力を選択して出力する選択部とを備え、前記上限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より低い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとならず、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より所定量高い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとなり、前記第2の復調部による復調出力がヌルとならない値であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、送信装置から信号を受信する受信装置を用いた復調出力選択方法であって、アンテナは、前記送信装置に搬送波を送信し、当該送信装置から第1の方式及び第2の方式で変調された信号を乗せた反射波を受信し、電圧測定部は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧を測定し、第1の復調部は、前記受信部が受信した信号を、前記第1の方式で復調し、第2の復調部は、前記受信部が受信した信号を、前記第2の方式で復調し、選択部は、前記電圧測定部が測定した電圧が所定の下限閾値以下である場合に前記第1の復調部による復調出力を選択して出力し、前記上限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より低い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとならず、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より所定量高い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとなり、前記第2の復調部による復調出力がヌルとならない値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明において用いる下限閾値は、アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が下限閾値より低い場合に第1の復調部による復調出力がヌルとならず、当該抵抗器に係る電圧が下限閾値より所定量高い場合に第1の復調部による復調出力がヌルとなり、第2の復調部による復調出力がヌルとならない値である。そして、選択部は、抵抗器にかかる電圧が下限閾値以下である場合に第1の復調部による復調出力を選択して出力する。これにより、受信装置は、復調出力の誤選択が発生し、得られた通信結果にヌル領域を含有してしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】リーダライタ装置を搭載した携帯電話端末の例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による受信装置を備えるリーダライタ装置の構成を示す概略ブロックである。
【図3】送受信アンテナと対向アンテナとの通信距離と各方式における通信感度との関係の例を示す図である。
【図4】非接触ICカード通信におけるコマンドフレーム構成を示す図である。
【図5】送受信アンテナと対向アンテナとの距離と、抵抗器にかかる電圧との関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるリーダライタ装置の構成を示す図である。
【図7】特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置の構成の一例を示す図である。
【図8】特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置における復調結果の例を示す図である。
【図9】特許文献1に記載の技術を適用したリーダライタ装置における選択結果の例を示す図である。
【図10】非接触ICカード通信におけるコマンドフレーム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、リーダライタ装置100を搭載した携帯電話端末1の例を示す図である。
携帯電話端末1は、対向アンテナ200との通信を行い、情報の読み取り及び書き込みを行うリーダライタ装置100を備える。携帯電話端末1が対向アンテナ200に近接することで、リーダライタ装置100は、対向アンテナ200に対する情報の読み取り及び書き込みを行う。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態による受信装置を備えるリーダライタ装置100の構成を示す概略ブロックである。
リーダライタ装置100は、周期信号出力回路101、送受信アンテナ102(アンテナ)、並列共振用回路103、直列共振用回路104、抵抗器105、電圧監視回路106(電圧測定部)、ASK復調回路107(第1の変調部)、Ich復調回路108(第2の変調部)、Qch復調回路109(第2の変調部)、復調波形品質確認回路110、2値化回路111、Va電圧出力回路112、閾値Va比較器113、Vb電圧出力回路114、閾値Vb比較器115、波形品質比較回路116、選択回路117(選択部)、PLL回路118(Phase locked loop)、制御部119を備える。
【0018】
周期信号出力回路101は、送受信アンテナ102に周期信号を出力する。
送受信アンテナ102は、周期信号出力回路101から印加された周期信号から搬送波を生成し、対向アンテナ200に送信する。また、送受信アンテナ102は、対向アンテナ200から信号を載せた反射波を受信する。
並列共振用回路103は、送受信アンテナ102と並列に接続され、また直列共振用回路104は、送受信アンテナ102と直列に接続されることで、共振周波数を対向アンテナ200との通信に用いる周波数に設定する。
【0019】
抵抗器105は、送受信アンテナ102に直列に接続される。
電圧監視回路106は、抵抗器105にかかる電圧を監視する。
なお、送受信アンテナ102と対向アンテナ200との距離が近いほど送受信アンテナ102の相互インダクタンスが高くなるため、送受信アンテナ102と対向アンテナ200との距離が近いほど抵抗器105にかかる電圧は小さくなる。
【0020】
ASK復調回路107は、送受信アンテナ102が受信した信号に対してASK復調(第1の方式)を行う。
Ich復調回路108は、送受信アンテナ102が受信した信号のIチャネル成分に対して位相復調(第2の方式)を行う。
Qch復調回路109は、送受信アンテナ102が受信した信号のQチャネル成分に対して位相復調を行う。
復調波形品質確認回路110は、ASK復調回路107、Ich復調回路108、及びQch復調回路109のそれぞれによる復調出力の波形が正常であるか否かを判定する。
2値化回路111は、ASK復調回路107、Ich復調回路108、及びQch復調回路109のそれぞれによる復調出力の波形を2地化する。
【0021】
Va電圧出力回路112は、所定のVa電圧(上限閾値)を出力する。なお、Va電圧は、波形選択時の切り替え電圧の閾値となる電圧が予め制御部119によって設定される電圧であり、抵抗器105にかかる電圧がVa電圧より所定量高い場合にIch復調回路108及びQch復調回路109による復調出力がヌルとなる電圧である。
閾値Va比較器113は、電圧監視回路106が取得した電圧とVa電圧出力回路112が出力する電圧とを比較する。
【0022】
Vb電圧出力回路114は、所定のVb電圧(下限閾値)を出力する。なお、Vb電圧は、波形選択時の切り替え電圧の閾値となる電圧が予め制御部119によって設定されるVa電圧より低い電圧であり、以下に示す2つの条件を満たすものである。(1)抵抗器105にかかる電圧がVb電圧より低い場合にASK復調回路107による復調出力がヌルとならない。(2)抵抗器105にかかる電圧がVb電圧より所定量高い場合にASK復調回路107による復調出力がヌルとなり、Ich復調回路108またはQch復調回路109による復調出力がヌルとならない。
閾値Vb比較器115は、電圧監視回路106が取得した電圧とVb電圧出力回路114が出力する電圧とを比較する。
【0023】
波形品質比較回路116は、復調波形品質確認回路110からの波形品質確認結果と、閾値Va比較器113、閾値Vb比較器115からの閾値電圧との比較結果について条件判断を行い、選択する復調出力を決定する。具体的には、波形品質比較回路116は、電圧監視回路106が測定した電圧がVa電圧以上である場合、または電圧監視回路106が測定した電圧がVb電圧以下である場合に、ASK復調回路107による復調出力を選択する。他方、波形品質比較回路116は、電圧監視回路106が測定した電圧がVa電圧より低くかつVb電圧より高い場合に、Ich復調回路108による復調出力、またはQch復調回路109による復調出力のうち波形品質が良好であるものを選択する。
選択回路117は、2値化回路111の出力のうち、波形品質比較回路116が決定した復調出力を2値化したものを選択する。
【0024】
PLL回路118は、受信信号に同期したクロック信号を生成し、ASK復調回路107、Ich復調回路108、Qch復調回路109に出力する。
制御部119は、選択回路117によって選択された信号を受け付け、当該信号に基づく処理を実行する。
【0025】
図3は、送受信アンテナ102と対向アンテナ200との通信距離と各方式における通信感度との関係の例を示す図である。
ASK復調回路107による復調出力は、図3(a)に示すように、ヌルが発生する距離が存在する一方、他の復調出力と比較して通信距離は最大となる。
Ich復調回路108による復調出力は、図3(b)に示すように、ASK復調回路107による復調出力と比較して通信距離が短く、アンテナ間距離が短い位置でヌルが発生する。
Qch復調回路109による復調出力は、図3(c)に示すように、ASK復調回路107による復調出力と比較して通信距離が短い一方、ヌルが発生しない。
したがって、リーダライタ装置100は、通信距離が最大であるASK復調回路107による復調出力と、ヌルが発生しないQch復調回路109による復調出力とを、それぞれヌルが発生していない範囲で切り替える選択信号を出力することが好ましい。
【0026】
そのため、制御部119は、予めVa電圧を、Qch復調回路109による復調出力の限界距離における電圧である電圧Aより所定量低い電圧に設定し、Vb電圧を、ASK復調回路107による復調出力にヌルが発生する最近の距離における電圧である電圧Bより所定量低い電圧に設定する。
【0027】
次に、リーダライタ装置100の動作について説明する。
対向アンテナ200が送受信アンテナ102に近接すると、対向アンテナ200は、送受信アンテナ102が発する搬送波に情報を乗せて当該搬送波を反射する。送受信アンテナ102が、対向アンテナ200から反射波を受信すると、当該反射波に含まれる信号は、ASK復調回路107、Ich復調回路108、Qch復調回路109と電圧監視回路106にそれぞれ入力される。
【0028】
ASK復調回路107、Ich復調回路108、Qch復調回路109でそれぞれ信号が復調されると、復調波形品質確認回路110はASK復調回路107、Ich復調回路108、Qch復調回路109のそれぞれから入力された波形品質を確認する。
【0029】
図4は、非接触ICカード通信におけるコマンドフレーム構成を示す図である。
非接触ICカード通信のコマンドフレームは、プリアンブル部及び同期コード部からなる先頭フィールドと、コマンドフレームの長さを示すLEN(Length)部及びデータ部からなる情報フィールドと、EDC部(Error Detection and Correction)からなる最終フィールドとから構成される。
【0030】
復調波形品質確認回路110は、図4に示すコマンドのフレーム構成のうち先頭フィールド部分を用いて波形品質を判断する。そのため、先頭フィールド部分のみ波形品質良好であれば、以降の波形品質が悪化した場合でも良好な波形と判定されることがある。
【0031】
一方、電圧監視回路106で測定された受信信号の電圧は、閾値Va比較器113、閾値Vb比較器115に伝えられる。閾値Va比較器113、閾値Vb比較器115は、それぞれVa電圧出力回路112、Vb電圧出力回路114が出力したVa電圧及びVb電圧と、電圧監視回路106で測定された電圧とを比較し、結果を波形品質比較回路116に出力する。
【0032】
波形品質比較回路116は、閾値Va比較器113からの入力が、電圧監視回路106が測定した電圧がVa電圧以上であることを示す場合、ASK復調回路107による復調出力を選択することを決定する。また、波形品質比較回路116は、閾値Vb比較器115からの入力が、電圧監視回路106が測定した電圧がVb電圧以下であることを示す場合、ASK復調回路107による復調出力を選択することを決定する。また、波形品質比較回路116は、閾値Va比較器113からの入力が、電圧監視回路106が測定した電圧がVa電圧より低いことを示し、閾値Vb比較器115からの入力が、電圧監視回路106が測定した電圧がVb電圧より高いことを示す場合、Ich復調回路108による復調出力、またはQch復調回路109による復調出力のうち、復調波形品質確認回路110において波形品質が良好であると判定されたものを選択することを決定する。そして、選択回路117は、2値化回路111の出力のうち、波形品質比較回路116が決定した復調出力を2値化したものを選択し、制御部119に出力する。
【0033】
上記処理を実行することで、通信結果には、図3(d)に示すようにヌルが発生しなくなる。
以下に、図3(d)に示す通信結果について詳しく説明する。
【0034】
図5は、送受信アンテナ102と対向アンテナ200との距離と、抵抗器105にかかる電圧との関係を示す図である。なお、図5では、抵抗器105にかかる電圧をVmと示す。
図3に示す領域Aにおいて、復調波形品質確認回路110はASK復調回路107による復調出力、及びQch復調回路109による復調出力が良好な波形であると判定する。このとき、領域Aにおいて抵抗器105にかかる電圧Vmは、図5に示すようにVm≦Vbとなるので、Ich復調回路108及びQch復調回路109による復調出力は選択外となり、波形品質比較回路116はASK復調回路107による復調出力を選択することを決定する。
【0035】
図3に示す領域Bには、ASK復調回路107による復調出力がヌルとなる領域が含まれる。このとき、領域Bにおいて抵抗器105にかかる電圧Vmは、図5に示すようにVm>VbかつVa>Vmの範囲内となるので、ASK復調回路107による復調出力は選択外となる。このとき、位相復調であるIch復調回路108及びQch復調回路109による復調出力が選択される。なお、抵抗器105にかかる電圧Vmが電圧Bであるとき、Ich復調回路108の復調出力にヌルが発生するため、復調波形品質確認回路110は、Ich復調回路108の波形品質が悪いと判断する。他方、Qch復調回路109の波形品質はヌルが無く良好な通信結果であるため波形品質比較回路116はQch復調回路109の復調出力を選択することを決定する。
【0036】
図3に示す領域Cには、Ich復調回路108及びQch復調回路109による通信限界となる領域が含まれる。このとき、領域Cにおいて抵抗器105にかかる電圧Vmは、図5に示すようにVa≦Vmとなるので、Ich復調回路108及びQch復調回路109による復調出力は選択外となり、波形品質比較回路116はASK復調回路107による復調出力を選択することを決定する。
【0037】
以上の説明のように、本実施形態によるリーダライタ装置100によれば、ASK復調回路107による通信結果と、Ich復調回路108及びQch復調回路109による通信結果を適切に切り替えるができる。
【0038】
以下、本発明による受信装置による効果を説明する。
ヌルが発生している共振周波数帯域は利用する事が出来ないため、製品作りの際にはヌル発生の無い共振周波数帯域を厳選する必要がある。このため、ヌルの発生が多いほど利用できる共振周波数帯域が狭まる事となり、製品開発を困難としていた。本発明によればヌルの解消により利用できる共振周波数帯域を広げる事ができるため、製品開発をより容易にする事ができるという効果がある。
【0039】
また、波形の誤選択で発生するヌル領域は、通信状態が良好状態から悪化していく際において発生するため、発生頻度が一定ではなく、波形測定時の状況によってはヌルの発生を見逃してしまう場合がある。このため、ヌルの発生を慎重に測定する必要があり、開発期間の増大に繋がっていた。本発明によれば、あらかじめヌルが発生すると予想される電圧付近に電圧閾値を設定しておく事により、この電圧近辺でのヌル発生を抑制する事ができる。これにより波形測定時間の短縮を図ることができ、開発期間を削減することができる。
【0040】
また、各復調方式の波形選択に際し、コマンドフィールドの先頭で波形品質を判断するというアルゴリズムはコマンド処理必要時間的に必然の事であり、それに伴う波形の誤選択を避けることは困難であった。本発明によれば、コマンド処理時間に影響を与えずに、波形誤選択の問題を解決することができる。
【0041】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0042】
図6は、本発明の他の実施形態によるリーダライタ装置100の構成を示す図である。
例えば、図10に示すように、リーダライタ装置100が閾値レジスタ120を備え、Va電圧及びVb電圧の値を閾値レジスタ120に設定された値により変化させるようにしても良い。
【0043】
図7は閾値レジスタ120の内容の例を示す図である。
図7に示すように、条件A、B、C、D等の各条件に応じて閾値電圧Va、Vbを設定することができ、波形品質比較回路116での波形判定条件を柔軟に変更することができる。
なお、図6に示す閾値レジスタ120は、制御部119や制御部119に接続される記憶装置に搭載されていても良い。
【0044】
また、本実施形態では、リーダライタ装置100に備えられる受信装置を回路によって構成する場合を説明したが、これに限られず、リーダライタ装置100がコンピュータシステムを有し、上述した各回路に相当する動作を、当該コンピュータシステムに実行させるようにしても良い。この場合、各回路に相当する動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0045】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1…携帯電話端末 100…リーダライタ装置 101…周期信号出力回路 102…送受信アンテナ 103…並列共振用回路 104…直列共振用回路 105…抵抗器 106…電圧監視回路 107…ASK復調回路 108…Ich復調回路 109…Qch復調回路 110…復調波形品質確認回路 111…2値化回路 112…Va電圧出力回路 113…閾値Va比較器 114…Vb電圧出力回路 115…閾値Vb比較器 116…波形品質比較回路 117…選択回路 118…PLL回路 119…制御部 200…対向アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から信号を受信する受信装置であって、
前記送信装置に搬送波を送信し、当該送信装置から第1の方式及び第2の方式で変調された信号を乗せた反射波を受信するアンテナと、
前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧を測定する電圧測定部と、
前記受信部が受信した信号を、前記第1の方式で復調する第1の復調部と、
前記受信部が受信した信号を、前記第2の方式で復調する第2の復調部と、
前記電圧測定部が測定した電圧が所定の下限閾値以下である場合に前記第1の復調部による復調出力を選択して出力する選択部と
を備え、
前記下限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より低い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとならず、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より所定量高い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとなり、前記第2の復調部による復調出力がヌルとならない値である
ことを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記第1の方式の通信可能距離が前記第2の方式の通信可能距離より長い場合において、
前記選択部は、前記電圧測定部が測定した電圧が所定の上限閾値以下であるときに前記第1の復調部による復調出力を選択して出力し、前記電圧測定部が測定した電圧が前記上限閾値より低くかつ前記下限閾値より高いときに前記第2の復調部による復調信号を選択して出力し、
前記上限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該上限閾値より所定量高い場合に前記第2の復調部による復調出力がヌルとなる、前記下限閾値より大きい値である
ことを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記第1の方式は、振幅変調方式であり、
前記第2の方式は、位相変調方式である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
送信装置から信号を受信する受信装置を用いた復調出力選択方法であって、
アンテナは、前記送信装置に搬送波を送信し、当該送信装置から第1の方式及び第2の方式で変調された信号を乗せた反射波を受信し、
電圧測定部は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧を測定し、
第1の復調部は、前記受信部が受信した信号を、前記第1の方式で復調し、
第2の復調部は、前記受信部が受信した信号を、前記第2の方式で復調し、
選択部は、前記電圧測定部が測定した電圧が所定の下限閾値以下である場合に前記第1の復調部による復調出力を選択して出力し、
前記上限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より低い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとならず、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該下限閾値より所定量高い場合に前記第1の復調部による復調出力がヌルとなり、前記第2の復調部による復調出力がヌルとならない値である
ことを特徴とする復調出力選択方法。
【請求項5】
前記第1の方式の通信可能距離が前記第2の方式の通信可能距離より長い場合において、
前記選択部は、前記電圧測定部が測定した電圧が所定の上限閾値以下であるときに前記第1の復調部による復調出力を選択して出力し、前記電圧測定部が測定した電圧が前記上限閾値より低くかつ前記下限閾値より高いときに前記第2の復調部による復調信号を選択して出力し、
前記下限閾値は、前記アンテナに直列に接続された抵抗器にかかる電圧が当該上限閾値より所定量高い場合に前記第2の復調部による復調出力がヌルとなる、前記下限閾値より大きい値である
ことを特徴とする請求項4に記載の復調出力選択方法。
【請求項6】
前記第1の方式は、振幅変調方式であり、
前記第2の方式は、位相変調方式である
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の復調出力選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−212278(P2012−212278A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77005(P2011−77005)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】