説明

受信装置

【課題】 位相回転補正処理を用いずに、FFT区間更新前後のシンボル差分電力を無効にし、周波数方向平均された雑音電力を用いてキャリア毎の尤度を算出する。
【解決手段】 設定部102が演算部103にFFT開始位置を設定又は位置更新し、当該位置更新通知情報を出力し、演算部103が受信時間信号を周波数信号に変換し、抽出部104が周波数信号からパイロットキャリアを抽出し、電力算出部106(204)がパイロットキャリアの差分電力を算出し、判定部106(206)が位置更新通知情報を用いて差分電力の有効を判定し、周波数方向平均部107が有効な差分電力の平均を算出し、それを平均雑音電力とする。また、推定部105がパイロットキャリアに対して周波数内挿を行うことで伝送路特性を推定し、等化部108が伝送路特性と受信周波数信号を用いて等化信号を算出し、尤度算出部109が等化信号と伝送路特性と平均雑音電力を用いて尤度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置にてOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調された信号を受信して復調処理および復号処理を行う受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
その直交性によりFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換アルゴリズムを利用したOFDM方式は、有線であると無線であるとを問わず、広く情報通信のデジタル変復調方式として用いられている。
【0003】
そして、OFDM方式において、雑音電力の算出は、一般に、受信装置での受信時間信号のガードインターバル区間の差分やFFT等により変換された受信周波数信号の既知信号の理想値との差分を用いることが知られている。
また、受信装置の復調処理および復号処理、誤り訂正処理などには、受信信号と雑音電力から尤度を算出して、それを与えることがある。
【0004】
特許文献1には、ゼロアウトされパイロット送信用に使用されていない少なくとも1つのパイロット・サブバンドによる雑音及び推定誤差の推定値を導き出して、前記雑音及び推定誤差の前記推定値を使用して、ログ尤度比(LLR)を計算する少なくとも1つのプロセッサと、前記少なくとも1つのプロセッサと結合されたメモリと、を備えた通信システムに適用される装置が記載されている。
【0005】
特許文献2には、OFDM信号を送信する無線送信装置から該OFDM信号を受信する受信手段と、前記受信したOFDM信号の伝搬路応答を推定する推定手段と、前記受信したOFDM信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換器と、前記変換されたOFDM信号を対象として周波数領域の中心周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアの受信信号を結合する結合手段と、前記推定された伝搬路応答に基づいて、前記2つのサブキャリアで送信された信号の各ビットの尤度を計算する計算手段と、複数の前記尤度のうち、前記2つのサブキャリアの帯域の両端から帯域の中心に向かって少なくとも1つ以上のサブキャリア番号に対応する尤度に1未満の重み係数を乗算する乗算手段と、を具備する無線受信装置が記載されている。
【0006】
特許文献3には、単数又は複数のアンテナに受信された直交周波数分割多重された信号から現時点以前の符号間干渉成分を取り除く第1適応等化処理と、現時点のキャリア間干渉又は現時点以降の符号間干渉成分を取り除く第2適応等化処理と、前記第1及び第2適応等化処理によって等化された信号を処理する信号検出処理と、誤り訂正復号する誤り訂正復号処理と、前記第1及び第2適応等化処理で用いられるチャネル応答を推定するチャネル推定処理とから構成されるOFDM(直交周波数分割多重)適応等化受信方式が記載されている。
【0007】
特許文献4には、参照信号として、空間多重されたパイロットサブキャリア信号を生成する参照信号生成手段と、マルチキャリア変調された受信信号から、空間多重されたパイロットサブキャリア信号を抽出する空間多重パイロットサブキャリア抽出手段と、前記参照信号生成手段により得られた参照信号と、前記空間多重パイロットサブキャリア抽出手段により得られた空間多重されたパイロットサブキャリア信号とを比較することで受信信号の位相誤差を検出し当該位相誤差を補償する位相補償手段と、を具備する無線通信装置が記載されている。
【0008】
特許文献5には、送信信号の判定結果、伝搬チャネルの推定結果、及び前記受信信号を基に、前記送信信号に対する誤差を推定する機能と、推定した誤差に基づいて重み付けられた、前記送信信号に対する尤度情報を用いて、誤り訂正復号処理を行う機能と、を有する、空間多重伝送された送信信号を受信する無線通信装置が記載されている。
【0009】
特許文献6には、送信されたOFDM信号を受信する受信手段と、前記受信手段により受信された受信信号をOFDM復調するOFDM復調手段と、前記OFDM復調手段により復調されたOFDM復調信号の信号強度を算出する重み係数算出手段と、前記OFDM復調信号から誤り検出反復復号を行うための尤度情報を生成する尤度生成手段と、前記重み係数算出手段における算出値を基に前記尤度情報を変更する尤度変更手段と、前記尤度変更手段により変更された尤度情報が前記誤り訂正復号単位分溜まるまで保持するバッファと、前記バッファに保持された尤度情報を用いて誤り訂正反復復号を行う誤り訂正反復復号手段を備える受信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2008−516563号公報
【特許文献2】特開2008−17144号公報
【特許文献3】特開2004−221702号公報
【特許文献4】特開2007−208967号公報
【特許文献5】特開2007−336532号公報
【特許文献6】特開2008−10987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
受信装置において、復調処理、復号処理および誤り訂正処理の性能を高めるために、サブキャリア毎の尤度算出が必要となる。
このサブキャリア毎の尤度算出には、送受信間の伝送路の特性、雑音電力の情報を参考とすることができる。
伝送路の状態は、例えば、プリアンブル信号やパイロット信号のような受信信号に含まれる既知信号から推定することができる。
【0012】
また、受信周波数信号の既知信号の理想値との差分を用いる場合は、その差分を正しく求めるため、前段に位相回転補正等の処理が必要となる。
代替策として、ある固定のFFT窓が設けられていれば、受信周波数信号の既知信号の1シンボル差分を用いることにより、雑音電力を算出することができる。なお、算出の原理・詳細については後述する。
【0013】
しかしながら、受信信号に含まれる既知信号の時間方向の差分を算出する場合、周波数信号に変換するための時間信号を与えるFFT区間が、時変動に追従するため更新することにより周波数信号の回転量が変化する。
このため、このFFT区間更新前後の既知信号の時間方向差分を用いても両者の位相回転量が異なるため正しい雑音電力を算出することができないという課題がある。
【0014】
また、FFT演算後に位相回転補正処理を加えれば、FFT区間更新前後のシンボルも用いることができるが、位相回転補正処理は回路規模が大きくなるという課題がある。
また、パイロットキャリアから算出された伝送路特性を用いて等化を行う場合、マルチパス等のフェージングにより電力が落ちたサブキャリアの箇所は雑音電力も持ち上がってしまうため、等化後の当該サブキャリアのS/Nは低下するという課題がある。
【0015】
本発明は、回路規模の大きい位相回転補正処理を用いずに、上記課題を解決する受信装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するために、入力時間信号に対するFFT区間更新検出を行い、その更新前後の既知信号の時間方向差分を無効とすることにより、伝送路特性と雑音電力の大きさを考慮した尤度を算出するものであり、回路規模の大きい位相回転補正処理を用いずに上記課題を解決する。
【0017】
具体的には、本発明に係る受信装置は、OFDM変調された信号を受信して復調処理および復号処理を行う受信装置であって、FFT開始位置設定手段がFFT演算手段にFFT開始位置を設定又は位置更新し、また、当該設定又は更新した位置をFFT位置更新通知情報として出力し、FFT演算手段が受信時間信号に対してFFT演算を行なって周波数信号に変換する。そして、パイロットキャリア抽出手段がFFT演算手段で変換された受信周波数信号からパイロットキャリア信号を抽出し、電力算出手段が当該抽出されたパイロットキャリアの差分電力を算出し、判定手段が前記FFT位置更新通知情報を用いて当該差分電力の有効および無効の判定し、平均雑音電力算出手段が有効とされた当該差分電力の平均雑音電力を算出する。また、伝送路特性推定手段が前記抽出されたパイロットキャリアに対して周波数内挿を行うことにより伝送路特性を推定し、等化手段が当該伝送路特性と前記変換された受信周波数信号を用いて等化信号を算出する。そして、尤度算出手段が前記等化信号と前記伝送路特性と前記平均雑音電力を用いて尤度の算出を行う。
【0018】
ここで、本発明における平均雑音電力算出手段は種々な態様を採用することができる。
例えば、平均雑音電力算出手段は、周波数方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出するものでもよく、或いは、周波数方向の平均演算と時間方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出するものでもよい。或いは、平均雑音電力算出手段は時間方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出し、当該平均雑音電力を周波数方向に内挿する周波数内挿手段を更に備える態様であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、時変動に追従するために更新するFFT区間の更新を検知し、更新前後の受信周波数信号の既知信号の差分を無効とすることで、位相回転補正処理がなくとも受信周波数信号に含まれる既知信号から雑音電力を算出することが可能となる。そして、受信周波数信号の既知信号を内挿補間した伝送路特性の推定結果と等化後の信号と雑音電力を用いてキャリア毎の尤度を算出することで、復調処理および復号処理、誤り訂正処理における品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施例に係る受信装置の要部の構成を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施例に係る1シンボル差分算出部の構成を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施例に係る1シンボル差分算出部の置換を用いた処理のタイミングチャートである。
【図4】本発明の第一の実施例に係る1シンボル差分算出部の平均を用いた処理のタイミングチャートである。
【図5】本発明の第一の実施例に係る差分電力有効/無効判定器の置換を用いた処理における真理値表である。
【図6】本発明の第一の実施例に係る差分電力有効/無効判定器の平均を用いた処理における真理値表である。
【図7】本発明の第二の実施例に係る受信装置の要部の構成を示す図である。
【図8】本発明の第二の実施例に係る1シンボル差分算出部の構成を示す図である。
【図9】本発明の第二の実施例に係る1シンボル差分算出部の処理のタイミングチャートである。
【図10】本発明の第二の実施例に係る差分電力有効/無効判定器の真理値表である。
【図11】本発明の第三の実施例に係る受信装置の要部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る受信装置を、図に示す実施の形態に基づいて具体的に説明する。
〈第一の実施例〉
図1には、本発明の第一の実施例に係るOFDM信号の受信装置の構成を示す。
本実施例の受信装置は、ガードインターバル(GI)相関算出部101と、FFT窓開始位置設定部102と、FFT演算部103と、パイロットキャリア抽出部104と、周波数内挿部105と、1シンボル差分算出部106と、周波数方向平均部107と、等化部108と、尤度算出部109と、を備える。
【0022】
ガードインターバル相関算出部101は、受信時間信号y(n,m)を有効シンボル長遅延させ、相関値COR(n,m)を算出し、FTT窓開始位置設定部102へ出力する。ここで、nはサンプル番号、mはシンボル番号である。
【0023】
FFT窓開始位置設定部102は、ガードインターバル相関算出部101の相関値COR(n,m)からFFT窓開始位置を設定又は更新し、設定又は更新した位置をFFT演算部103へ出力し、また、設定又は更新した位置を通知するためにフラグFLAGを1シンボル差分算出部106へ出力する。
このFFT窓開始位置は変動に追従するため、一定時間(シンボル)で更新する。
【0024】
FFT演算部103は、受信した時間信号y(n,m)をFFT窓開始位置設定部102により設定されたFFT窓開始位置を基に周波数信号Y(k,m)に変換し、パイロットキャリア抽出部104と等化部108へ出力する。ここで、kはキャリア番号である。
【0025】
パイロットキャリア抽出部104は、受信周波数信号Y(k,m)からパイロットキャリアを抽出し、抽出したパイロットキャリア信号Y(k,m)を周波数内挿部105と1シンボル差分算出部106へ出力する。ここで、このY(k,m)は、受信周波数信号Y(k,m)についてパイロットキャリア以外を0に置換したものである。
【0026】
周波数内挿部105は、入力されたパイロットキャリア抽出信号Y(k,m)を用いて、例えば、内挿フィルタや線形補間などの周波数内挿を行い、これによって推定される伝送路特性の結果H(k,m)を等化部108と尤度算出部109へ出力する。すなわち、この周波数内挿部105は、パイロットキャリアに対して周波数内挿を行なうことにより伝送路特性を推定する伝送路推定手段を構成している。
【0027】
1シンボル差分算出部106は、パイロットキャリア抽出部104で抽出されたパイロットキャリアの1シンボル差分電力N(k,m)を算出し、周波数方向平均部107へ出力する。
1シンボル差分算出部105について、図2を用いて詳しく説明する。
【0028】
図2に、1シンボル差分算出部106の構成を示す。
1シンボル差分算出部105は、実数部・虚数部分離器201と、実数部と虚数部とにそれぞれ設けた1シンボル遅延器202と、実数部と虚数部とにそれぞれ設けた加算器203と、電力算出器204と、シンボルカウンタ205と、差分電力有効/無効判定器206と、を備える。
【0029】
ここで、パイロットキャリアの1シンボル差分を用いて雑音電力が算出できる原理について説明する。この原理は当該シンボル間で伝送路の変動がない場合である。
パイロットキャリアのみを抽出した周波数軸の受信信号をr(k,m)とし、r(k,m)とその1シンボル前の信号をr(k、m−1)とすると、それぞれ数式1のように表される。
ここに、s(k,m)は受信信号r(k,m)の所望信号成分、n(k,m)は受信信号r(k,m)の雑音成分であり、s(k,m−1)は受信信号r(k,m−1)の所望信号成分、n(k,m−1)は受信信号r(k,m−1)の雑音成分である。
【数1】

(数式1)
【0030】
この2つ信号r(k,m)とr(k,m−1)の差分をとると、パイロットキャリアはs(k,m)=s(k,m−1)とみなして、この差分の電力N(k,m)は数式2のようになる。
【数2】

(数式2)
【0031】
ここで、電力N(k,m)の期待値について考える。
数式2を展開すると数式3となる。
ここに、*は複素共役を示す。
【数3】

(数式3)
【0032】
さらに、n(k,m)とn(k,m−1)はガウス雑音であると仮定し、互いに独立であるので、分散をσとすると、数式4及び数式5の関係式が成立する。
したがって、これらの関係式から、数式3は数式6のようにまとめられる。
【数4】

(数式4)
【数5】

(数式5)
【数6】

(数式6)
【0033】
以上から、パイロットキャリアの1シンボル差分により2倍の雑音電力が求まる。
【0034】
図3、図4に1シンボル差分算出部106の動作例のタイミングチャートを示す。
この動作例はFFT窓開始位置が10シンボル間隔で更新される場合を示したものである。
図3は前シンボルの値を0次ホールドしたもの、図4は直前の9シンボルの平均値で置換したものである。
【0035】
実数部・虚数部分離器201は、入力信号(パイロットキャリア抽出信号)Y(k,m)を実数部と虚数部に分離し、それぞれ1シンボル遅延器202と加算器203へ出力する。
【0036】
実数部では、1シンボル遅延器202は、入力信号real(Y(k,m))を1シンボル分遅延させて、加算器203へ出力し、加算器203は、入力信号real(Y(k,m))と1シンボル遅延させた信号real(Y(k,m−1))の和をとり、和E(k,m)を電力算出器204へ出力する。
【0037】
虚数部では、1シンボル遅延器202は、入力信号imag(Y(k,m))を1シンボル分遅延させて、加算器203へ出力し、加算器203は、入力信号imag(Y(k,m))と1シンボル遅延させた信号imag(Y(k,m−1))の和をとり、和E(k,m)を電力算出器204へ出力する。
【0038】
電力算出器204は、2つの入力信号を用いて電力N‘(k,m)の算出を行い、その電力を有効/無効判定器206へ出力する。
ここに、電力N‘(k,m)の算出は数式7により行なわれる。なお、数式7中の1/2は数式6での2倍をキャンセルするためのものである。
【数7】

(数式7)
【0039】
シンボルカウンタ205は、入力されたFFT窓更新フラグFLAGをカウンタリセットとして扱い、1シンボル毎にカウンタ値を増加させ、カウンタ値COUNTを有効/無効判定器206へ出力する。
【0040】
有効/無効判定器206は、入力されたカウンタ値を基に出力する信号N(k,m)を選択し、周波数方向平均部107へ出力する。
この信号の選択は、例えば、図5または図6に示すような真理値表で行う。なお、真理値表中のNはFFT窓開始位置更新間隔シンボル数である。
すなわち、有効/無効判定器206は、FFT窓更新フラグFLAGに基づくカウンタ値COUNTによって、FFT窓開始位置の更新前後の差分電力を無効として、有効な差分電力を周波数方向平均部107へ出力する。
【0041】
周波数方向平均部107は、入力された差分電力N(k,m)に対して、例えば、数式8のような周波数方向の平均演算を行い、算出結果N(m)を尤度算出部109へ出力する。
ここに、数式8において、Kは1シンボル内のキャリア数、Kは1シンボル内のパイロットキャリア数である。
【数8】

(数式8)
【0042】
等化部108は、受信周波数信号Y(k,m)と伝送路特性推定信号H(k、m)を用いて等化した信号X(k,m)を算出し、尤度算出部109へ出力する。
ここに、X(k,m)は、数式9のように算出できる。
【数9】

(数式9)
【0043】
尤度算出部109は、等化信号X(k,m)と伝送路特性推定信号とH(k、m)と周波数内挿された平均雑音電力N(k,m)を用いてキャリア毎の尤度L(k,m,d)を算出して、出力する。
ここで、対数尤度比LLR(k,m)は、一般的に数式10のように表される。なお、P(α)は確率であり、dはマッピング点に割り振られたビット列Dのi番目のビットである。
【数10】

(数式10)
【0044】
そして、数式10を展開すると、数式11のように表される。
ここで、Sは理想シンボル点である。
【数11】

(数式11)
【0045】
そして、数式11中のP(Y(k,m)|S)は数式12のように表される。
【数12】

(数式12)
【0046】
受信信号Y(k,m)と伝送路特性H(k,m)と等化後信号X(k,m)と理想シンボル点Sと雑音電力σを用いて、数式12より数式13のような比例関係に表される。
そして、数式13を変形すると、数式14となる。
そして、数式15とすると、数式16のようにまとめられる。
【数13】

(数式13)
【数14】

(数式14)
【数15】

(数式15)
【数16】

(数式16)
【0047】
数式16により、伝送路特性を考慮したキャリア毎の尤度を算出することができる。
本発明では、受信信号から算出した雑音電力N(m)を用いて、対数尤度比L(k,m,d)を数式17のように与えることができる。
【数17】

(数式17)
【0048】
上記の第一の実施例により、FFT区間更新前後のシンボル差分電力を無効にし、周波数方向に平均化された雑音電力を用いてキャリア毎の尤度を算出することが可能となる。
【0049】
〈第二の実施例〉
図7に、本発明の第二の実施例に係るOFDM信号の受信装置の構成を示す。
この受信装置は、ガードインターバル相関算出部101と、FFT窓開始位置設定部102と、FFT演算部103と、パイロットキャリア抽出部104と、周波数内挿部105と、1シンボル差分抽出部301と、周波数方向平均部107と、時間方向平均部302と、等化部108と、尤度算出部109と、を備える。
【0050】
本実施例において、ガードインターバル相関算出部101と、FFT窓開始位置設定部102と、FFT演算部103と、パイロットキャリア抽出部104と、周波数内挿部105と、周波数方向平均部107と、等化部108と、尤度算出部109は、上記の第一の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0051】
図8に1シンボル差分抽出部301の構成を示す。
1シンボル差分電力算出部301は、実数部・虚数部分離器201と、実数部と虚数部とにそれぞれ設けた1シンボル遅延器202と、実数部と虚数部とにそれぞれ設けた加算器203と、電力算出器204と、シンボルカウンタ205と、差分電力有効/無効判定器401と、を備える。
【0052】
本実施例において、実数部・虚数部分離器201と、1シンボル遅延器202と、加算器203と、電力算出器204と、シンボルカウンタ205は、上記の第一の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0053】
図9に1シンボル差分電力算出部301の動作例のタイミングチャートを示す。
この動作例はFFT開始位置が10シンボル間隔で更新される場合を示したものであ る。同図に示す通り、無効とする差分電力を0に置換する。
【0054】
有効/無効判定器401は、入力されたカウンタ値COUNTを基に出力する信号N(k,m)を選択し、周波数方向平均部107へ出力する。
この信号の選択は、例えば、図10に示すような真理値表で行う。
【0055】
時間方向平均部302は、周波数方向平均部107から入力されたN(m)を時間方向(シンボル方向)に平均をとり、その平均値N(m)を尤度算出部109へ出力する。
この平均値N(m)は例えば、数式18のように算出できる。
【数18】

(数式18)
【0056】
上記の第二の実施例により、FFT区間更新前後のシンボル差分電力を無効にし、周波数方向に平均化された雑音電力をさらに時間方向に平均化した雑音電力を用いて、より高精度なキャリア毎の尤度を算出することが可能となる。
【0057】
〈第三の実施例〉
図11に、本発明の第三の実施例に係るOFDM信号受信装置の構成を示す。
この受信装置は、ガードインターバル相関算出部101と、FFT窓開始位置設定部102と、FFT演算部103と、パイロットキャリア抽出部104と、周波数内挿部105と、1シンボル差分抽出部106と、周波数方向平均部501と、周波数内挿部105と、等化部108と、尤度算出部502と、を備える。
【0058】
本実施例において、ガードインターバル相関算出部101と、FFT窓開始位置設定部102と、FFT演算部103と、パイロットキャリア抽出部104と、周波数内挿部105と、1シンボル差分抽出部106と、等化部108は、上記の第一の実施例と同様であるため説明を省略する。
【0059】
時間方向平均部501は、1シンボル差分抽出部106から入力された信号N(k,m)に対してキャリア毎に平均をとり、その平均値N(k,m)を周波数内挿部105へ出力する。
この平均値N(k,m)は、例えば、数式19のように算出する。
そして、周波数内挿部105は、入力された平均値N(k,m)に対して、上記のような周波数方向の平均演算を行い、算出結果N(m)を尤度算出部502へ出力する。

【数19】

(数式19)
【0060】
尤度算出部502は、等化信号X(k,m)と伝送路推定信号H(k,m)と周波数内挿された平均雑音電力N(k,m)を用いて、キャリア毎の尤度L(k,m,d)を算出する。
この尤度L(k,m,d)は、数式17を基に数式20のように与えることができる。
【数20】

(数式20)
【0061】
上記の第三の実施例により、FFT区間更新前後のシンボル差分電力を無効にし、伝送路特性とキャリア毎の雑音特性を用いて、より高精度なキャリア尤度を算出することができる。
【符号の説明】
【0062】
101:ガードインターバル相関算出部、 102:FFT窓位置設定部、
103:FFT演算部、 104:パイロットキャリア抽出部、
105:周波数内挿部、 106:1シンボル差分算出部、
107:周波数方向平均部、 108:等化部、
109:尤度算出部、 201:実数部・虚数部分離器、
202:1シンボル遅延器、 203:加算器、
204:電力算出器、 205:シンボルカウンタ、
206:差分電力有効/無効判定器、 301:1シンボル差分算出部、
302:時間方向平均部、 401:差分電力有効/無効判定器、
501:時間方向平均部、 502:尤度算出部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM変調された信号を受信して復調処理および復号処理を行う受信装置において、
受信時間信号に対してFFT演算を行なって周波数信号に変換するFFT演算手段と、
前記FFT演算手段にFFT開始位置を設定又は位置更新し、当該設定又は更新した位置をFFT位置更新通知情報として出力するFFT開始位置設定手段と、
前記FFT演算手段で変換された受信周波数信号からパイロットキャリア信号を抽出するパイロットキャリア抽出手段と、
前記パイロットキャリア抽出手段で抽出されたパイロットキャリアの差分電力を算出する電力算出手段と、
前記FFT位置更新通知情報を用いて前記差分電力の有効および無効の判定をする判定手段と、
前記判定手段により有効とされた前記差分電力の平均雑音電力を算出する平均雑音電力算出手段と、
前記パイロットキャリア抽出手段で抽出されたパイロットキャリアに対して周波数内挿を行うことにより伝送路特性を推定する伝送路特性推定手段と、
前記伝送路推定手段から得られた伝送路特性と前記受信周波数信号を用いて等化信号を算出する等化手段と、
前記等化信号と前記伝送路特性と前記平均雑音電力算出手段から得られた平均雑音電力を用いて尤度の算出を行う尤度算出手段と、を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
請求項1記載の受信装置において、
前記平均雑音電力算出手段は、周波数方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出することを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項1記載の受信装置において、
前記平均雑音電力算出手段は、周波数方向の平均演算と時間方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出することを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項1記載の受信装置において、
前記平均雑音電力算出手段は時間方向の平均演算を行なって平均雑音電力を算出し、
当該平均雑音電力を周波数方向に内挿する周波数内挿手段を更に備えることを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−46137(P2013−46137A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181411(P2011−181411)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)