説明

受光素子、受発光素子、受発光装置および電子機器

【課題】光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子、かかる受光素子を備える受発光素子、受発光装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】 本発明の受発光素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、該光導電体層は、下記式(1A)で表されるテトラフェニルポルフィリン骨格を有する化合物を主材料として含有する。


[式(1A)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表す。
Rは置換基を意味し、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光素子、受発光素子、受発光装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特定の有機材料で構成される光導電体層上に、金属材料で構成される金属層を接触させ、前記光導電体層と金属層との間に電圧を印加した状態で、これらに光を照射すると、これに起因して光導電体層に電子が発生することが知られており、このような現象を用いた光導電体層と金属層とを備えた受光素子が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この現象は、光の照射によって金属層との界面付近の光導電体層にホールが蓄積され、このホールが形成する高電界によって金属層から大量の電子が光導電体層にトンネル注入されるために発生する。
このような受光素子を、高効率に発光させるには、光導電体層において高効率に電子を発生させることが求められる。
しかしながら、光の照射により高効率に電子を発生することができる光導電体層の構成材料(光導電体材料)については知られていないのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−341395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子、かかる受光素子を備える受発光素子、受発光装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の受光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(1A)で表されるテトラフェニルポルフィリン骨格を有する化合物を主材料として含有することを特徴とする。
【化1】

[式(1A)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表す。
Rは置換基を意味し、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基を表す。]
これにより、光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子とすることができる。
【0007】
本発明の受光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(1B)で表されるテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン化合物を主材料として含有することを特徴とする。
【化2】

[式(1B)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表し、4つのフェニル基が備える各水素原子は、フッ素原子により置換されていてもよい。]
これにより、光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子とすることができる。
【0008】
本発明の受光素子では、前記金属原子Bは、白金であることが好ましい。
これにより、光の受光により、より高効率で電子を発生させることができる。
本発明の受光素子では、前記光導電体層は、その膜厚が200nm以上、1500nm以下であることが好ましい。
これにより、光の受光により高効率で電子を発生させることができるとともに、光導電体層の高抵抗化を的確に防止または抑制することができる。
【0009】
本発明の受光素子では、前記第2の電極は、その構成材料の仕事関数が、4.0eV以上、4.5eV以下であることが好ましい。
これにより、光を照射していない時には、光導電体層側から光導電体層側への電子の移動を許容せず、光の照射時には、光導電体層側から光導電体層側への電子の移動を許容する機能を確実に発揮するものとなる。
【0010】
本発明の受光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(2A)で表されるチアジアゾール系化合物を主材料として含有することを特徴とする。
【化3】

[式(2A)中、2つのAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基、トリアリールアミンを示す。]
これにより、光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子とすることができる。
【0011】
本発明の受光素子は、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(3A)で表されるテトラセン系化合物を主材料として含有することを特徴とする。
【化4】

[前記式(3A)中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
これにより、光の受光により高効率に電子を発光する受光層を備える受光素子とすることができる。
【0012】
本発明の受発光素子は、本発明の受光素子と、該受光素子で発生した電子が供給されることで発光する有機エレクトロルミネッセンス素子で構成される発光素子とを備えることを特徴とする。
これにより、受光素子で発生した電子が供給されることで、発光素子が発光することとなる。
【0013】
本発明の受発光素子では、前記発光素子は、第2の電極と、第3の電極と、前記第2の電極と前記第3の電極との間に設けられた、光を発光する発光層とを有することが好ましい。
これにより、受光素子で発生した電子が供給されることで、発光素子が発光することとなる。
【0014】
本発明の受発光素子では、前記受光素子が有する前記第2の電極と、前記発光素子が有する前記第2の電極とが共通電極で構成され、
当該受発光素子は、前記第1の電極と、前記発光層と、前記第2の電極と、前記光導電体層と、前記第3の電極とがこの順に積層されてなるものであることが好ましい。
これにより、受光素子で発生した電子が供給されることで、発光素子が発光することとなる。
本発明の受発光素子では、さらに、前記受光素子で発生した電子を増幅させる増幅回路を備えることが好ましい。
これにより、受光素子で発生した電子が増幅されるため、発光素子をより高効率に発光させることができるようになる。
【0015】
本発明の受発光装置は、本発明の受発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性に優れる受発光装置とすることができる。
本発明の電子機器は、本発明の受発光装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性に優れる電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の受発光素子の第1実施形態における縦断面図である。
【図2】本発明の受発光素子の第4実施形態における縦断面を模式的に示す図である。
【図3】本発明の受発光素子の第5実施形態における縦断面を模式的に示す図である。
【図4】本発明の受発光素子の第5実施形態の変形例における縦断面を模式的に示す図である。
【図5】本発明の受発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図7】実施例1の受発光素子における印加電圧と電流密度との関係を示すグラフ(a)および印加電圧と発光輝度との関係を示すグラフ(b)である。
【図8】実施例9の受発光素子における印加電圧と電流密度との関係を示すグラフ(a)および印加電圧と発光輝度との関係を示すグラフ(b)である。
【図9】実施例10の受発光素子における印加電圧と電流密度との関係を示すグラフ(a)および印加電圧と発光輝度との関係を示すグラフ(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の受光素子、受発光素子、受発光装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
まず、本発明の受光素子を説明するのに先立って、本発明の受発光素子について説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の受発光素子の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の受発光素子の第1実施形態における断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0018】
図1に示す受発光素子1は、第1の電極3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子注入層6と、第2の電極7と、光導電体層8と、第3の電極9とがこの順に積層されてなるものである。すなわち、受発光素子1では、第1の電極3と第2の電極7との間に、第1の電極3側から正孔輸送層4と発光層5と電子注入層6とがこの順で積層された積層体(有機EL層)11が介挿されて、さらに、第2の電極7と第3の電極9との間に、光導電体層8が介挿されている。
【0019】
かかる構成の受発光素子1では、第1の電極3と積層体11と第2の電極7とにより発光素子10が構成され、第2の電極7と光導電体層8と第3の電極9とにより受光素子20が構成され、これらを第2の電極(共通電極)7を介して、積層した構成となっている。
そして、受発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材12で封止されている。
【0020】
このような受発光素子1にあっては、第1の電極3が第2の電極7に対して極性がプラスになるように電圧を印加した状態で、封止部材12および第3の電極9を透過して、光導電体層8に入射光が照射されると、光導電体層8が励起されることに起因して電子が発生し、この電子が第2の電極7側に移動することで、第3の電極9側から第2の電極7に電子が流れる。さらに、かかる現象によって、発光層5に対し、第2の電極7側から電子が供給(注入)されるとともに、第1の電極3側から正孔が供給(注入)される。すなわち、受光素子20への光の照射により電子が発生する。
【0021】
さらに、発光層5では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出する。そのため、発光層5が発光光を発光する。これにより、この発光光が、第1の電極3と基板2とを透過することにより、基板2側から出射される。すなわち、受光素子20からの電子の共給により、発光素子10が発光する。
【0022】
基板2は、第1の電極3を支持するものである。本発明の受発光素子1は、基板2側から発光光を取り出す構成であるため、基板2および第1の電極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1mm以上、30mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上、10mm以下であるのがより好ましい。
【0023】
以下、受発光素子1を構成する各部を順次説明する。
[第1の電極]
第1の電極3は、正孔輸送層4に正孔を注入する電極である。この第1の電極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
第1の電極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に、第1の電極3は、ITOで構成されているのが好ましい。ITOは、透明性を有するとともに、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料である。これにより、第1の電極3から正孔輸送層4へ効率的に正孔を注入することができる。
【0024】
また、第1の電極3の正孔輸送層4側の面(図1にて上面)は、プラズマ処理が施されているのが好ましい。これにより、第1の電極3と正孔輸送層4との接合面の化学的および機械的な安定性を高めることができる。その結果、第1の電極3から正孔輸送層4への正孔注入性を向上させることができる。
このような第1の電極3の平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上、200nm以下であるのが好ましく、50nm以上、150nm以下であるのがより好ましい。
【0025】
[正孔輸送層]
正孔輸送層4は、第1の電極3から注入された正孔を発光層5まで輸送する機能を有する(すなわち正孔輸送性を有する)ものである。
この正孔輸送層4は、正孔輸送性を有する材料(すなわち正孔輸送性材料)を含んで構成されている。
【0026】
この正孔輸送層4に含まれる正孔輸送性材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができ、例えば、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等のテトラアリールベンジジン誘導体、テトラアリールジアミノフルオレン化合物またはその誘導体(アミン系化合物)、フタロシアニン骨格を有する化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
中でも、正孔輸送層4に含まれる正孔輸送性材料としては、正孔注入性および正孔輸送性に優れるという観点から、アミン系材料であるのが好ましく、ベンジジン誘導体(ベンジジン骨格を有する材料)であるのがより好ましい。
このような正孔輸送層4の平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上、90nm以下であるのが好ましく、10nm以上、70nm以下であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層4は、第2の電極7および発光層5の構成材料や厚さ等によっては、省略してもよい。
【0028】
この発光層5は、発光材料を含んで構成されている。
発光材料は、第2の電極7側から電子が供給(注入)されるとともに、第1の電極3側から正孔が供給(注入)されることにより、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)するものである。
このような発光材料としては、特に限定されず、発光層5に発光させるべき発光色に応じて適宜選択され、各種蛍光材料、各種燐光材料を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。すなわち、発光材料の種類および組み合わせを適宜設定することにより、任意の色を発光層5に発光させることができる。
【0029】
具体的には、赤色の蛍光材料としては、例えば、下記化学式(4)で表わされる化合物(ジインデノペリレン誘導体)等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等が挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
中でも、赤色発光材料としては、ジインデノペリレン誘導体を用いるのが好ましい。これにより、赤色発光層をより高輝度で赤色発光させることができる。
青色の蛍光材料としては、例えば、下記化学式(5)または下記化学式(6)で示されるスチリルアミン系化合物等のスチリルアミン誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
緑色の蛍光材料としては、例えば、クマリン誘導体、下記化学式(7)に示すキナクリドン誘導体等のキナクリドンおよびその誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
黄色の蛍光材料としては、例えば、ルブレン系材料等のナフタセン骨格を有する化合物であって、ナフタセンにアリール基(好ましくはフェニル基)が任意の位置で任意の数(好ましくは2〜6)置換された化合物、モノインデノペリレン誘導体等を用いることができる。
赤色の燐光材料としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0036】
青色の燐光材料としては、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)等が挙げられる。
【0037】
緑色の燐光材料としては、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウム等が挙げられる。
【0038】
また、発光層5は、上述した発光材料に加え、この発光材料がゲスト材料として添加されるホスト材料を含んで構成されていてもよい。このような発光層5は、例えば、ゲスト材料である発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープすることにより形成することができる。
このホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、発光材料を励起する機能を有する。
【0039】
このようなホスト材料としては、特に限定されないが、発光材料が蛍光材料を含む場合、例えば、ルブレンおよびその誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ビスp−ビフェニルナフタセン等のナフタセン系材料、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(TBADN)等のアントラセン系材料、ビス−オルトビフェニリルペリレン等のペリレン誘導体、テトラフェニルピレンなどのピレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、スチルベン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、アリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、カルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、コロネン誘導体、アミン化合物、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、IDE120(製品名、出光興産社製)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。好ましくは、発光材料が青色または緑色の場合にはIDE120(出光興産社製)、アントラセン系材料、ジアントラセン系材料が好ましく、発光材料が赤色の場合には、ルブレンまたはルブレン誘導体、ナフタセン系材料、ペリレン誘導体が好ましい。
【0040】
また、ホスト材料としては、発光材料が燐光材料を含む場合、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、下記式(8)で表わされる4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム等のキノリノラト系金属錯体、N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、4,4’,4’’−トリス(9−カルバゾリル)トリフェニルアミン、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル等のカルバリゾル基含有化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0041】
【化8】

【0042】
前述したような発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、発光層5中における発光材料の含有量(ドープ量)は、0.1wt%以上、50wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以上、20wt%以下であるのがより好ましい。発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
また、発光層5の平均厚さは、30nm以上100nm以下であるのが好ましく、30nm以上70nm以下であるのがより好ましく、30nm以上50nm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本実施形態では、発光層5が1層の発光層を備えるものを例に説明しているが、発光層5は、複数の発光層が積層されてなる積層体であってもよい。この場合、複数の発光層の発光色が互いに同じであっても異なっていてもよい。また、発光層5が複数の発光層を有する場合、発光層同士の間に中間層が設けられていてもよい。
【0043】
[電子注入層]
電子注入層6は、第2の電極7からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層6の構成材料(電子注入性材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0044】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層6を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層6を構成することにより、発光層5は、高い輝度が得られるものとなる。
【0045】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0046】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、電子注入性材料としては、これらの材料に、Alq、アントラセン系化合物、フェナントロリンおよびバソフェナントロリン等のうちの少なくとも1種を添加したものを用いるようにしてもよい。
【0047】
電子注入層6の平均厚さは、特に限定されないが、1nm以上、200nm以下であるのが好ましく、10nm以上、100nm以下であるのがより好ましく、30nm以上、50nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、第2の電極7と発光層5との間の離間距離が最適化され、発光層5中に生じた励起子の励起エネルギーが第2の電極7側に移動することに起因する発光層5の発光効率の低下を的確に抑制または防止することができる。
なお、この電子注入層6は、第2の電極7および発光層5の構成材料や厚さ等によっては、省略してもよい。
【0048】
[第2の電極]
第2の電極7は、入射光を照射していない時には、光導電体層8側から電子注入層6側への電子の移動を許容せず、入射光の照射時には、光導電体層8側から電子注入層6側への電子の移動を許容する機能を有するものである。
かかる機能を付与するためには、例えば、第2の電極7と光導電体層8と第3の電極9とを取り出し、すなわち受光素子20を取り出して、第2の電極7を陽極(+)とし、第3の電極9を陰極(-)として電源に接続した際に、入射光が存在しない状況下では導電性を示さない特性を備えることが求められる。
このような第2の電極7としては、その構成材料の仕事関数が、4.0eV以上、4.5eV以下であるのが好ましく、特に、4.3eV程度であるのが好ましい。これにより、第2の電極7は、前記機能を確実に発揮するものとなる。
【0049】
また、第2の電極7の構成材料としては、具体的には、例えば、Al、Ti、Ta、Ag、Mo、W、Co、Cr、またはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体、複数種の混合層等として)用いることができる。これらのなかでも、Alであるのが好ましい。これにより、第2の電極7は、前記機能を確実に発揮するものとなるとともに、後述する反射膜としての機能に優れたものとなる。
【0050】
さらに、第2の電極7を、かかる構成材料で構成することで、第2の電極7が透光性を有さないものとなる。すなわち、第2の電極7が反射膜としての機能も発揮するものとなる。その結果、入射光の発光層5側への漏出が確実に防止されるため、発光光とともに基板2側から取り出されてしまうのを確実に防止することができる。
また、第2の電極7の平均厚さは、特に限定されないが、100nm以上、10000nm以下であるのが好ましく、100nm以上、500nm以下であるのがより好ましい。
【0051】
[光導電体層]
光導電体層8は、封止部材12および第3の電極9を介して入射(照射)された入射光の受光により、電子と正孔とを発生するものである。
このようにして発生した電子と正孔とのうち、電子は、第2の電極7に受け取られ、その後、第2の電極7中を移動して、電子注入層6に注入される。また、正孔は、第3の電極9に受け取られ、その後、第3の電極9中において消滅または中和される。
【0052】
光導電体層の材料としては、分子量が500以上、1000以下の有機物であることが好ましい。これにより、安定した蒸着レートで成膜することができる。また、分子内にπ共役部を有することが好ましい。これにより、光導電体層の内部を電荷が移動することができる。さらに、その仕事関数が5.0eV以上であることが好ましい。光導電体層の仕事関数が5.0eV以下であると、暗所であっても第2の電極7から電荷が注入されてしまう。
本発明では、この光導電体層8に主として含まれる構成材料(光導電体材料)に特徴を有し、下記式(1A)で表されるテトラフェニルポルフィリン化合物が用いられる。
【0053】
【化9】

[式(1A)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表す。
Rは置換基を意味し、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基を表す。]
【0054】
このテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン化合物としては、その具体例として、例えば、下記式(1B)で表されるテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン化合物が挙げられる。
【0055】
【化10】

[式(1B)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表し、4つのフェニル基が備える各水素原子は、フッ素原子により置換されていてもよい。]
【0056】
このような上記式(1A)および上記式(1B)で表されるテトラフェニルポルフィリン化合物を、光導電体材料として用いることで、入射光の受光により、高効率で電子と正孔とを発生させることができる。また、分子内に金属原子を有するためにモル吸光係数が大きく、より多くの光を吸収することができる。このため、光導電体層の膜厚を薄くすることができる。
また、金属原子Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルおよび亜鉛のうちいずれであっても良いが、白金であるのが好ましい。これにより、入射光の受光により、より高効率で電子と正孔とを発生させることができる。
【0057】
さらに、上記式(1A)および上記式(1B)で表される化合物は、可視光に加え、近赤外域での発光を吸収することでも導電性を示すため、可視光及び近赤外域での発光を受光して発光する受発光素子とすることができる。なお、本明細書において「近赤外域」とは700nm以上1500nm以下の波長域を言う。
この光導電体層8の平均厚さは、特に限定されないが、200nm以上、1500nm以下であるのが好ましく、500nm以上、1000nm以下であるのがより好ましい。これにより、入射光の受光により高効率で電子と正孔とを発生させることができるとともに、光導電体層8の高抵抗化を的確に防止または抑制することができる。
【0058】
[第3の電極]
第3の電極9は、光導電体層8への入射光の照射により、光導電体層8に生じた正孔(ホール)が、この第3の電極9にまで流れてきた際に、第3の電極9において、正孔を消滅または中和する機能を有する電極である。
また、この第3の電極9は、このものを介して入射光を光導電体層8にまで伝達する必要があるため、透光性に優れるものであるのが好ましい。
【0059】
このようなことから、第3の電極9の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ITO、IZO、ZnO、Ga含有ZnO(GZO)等の酸化物、Mg、Al、Agまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような第3の電極9の平均厚さは、透光性を付与し得るように、例えば、1nm以上、50nm以下であるのが好ましく、5nm以上、30nm以下であるのがより好ましい。
【0060】
[封止部材]
封止部材12は、第1の電極3、積層体11、第2の電極7、光導電体層8および第3の電極9を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材12を設けることにより、受発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0061】
封止部材12の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材12の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材12と第1の電極3、積層体11および第3の電極9との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0062】
また、封止部材12は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
また、封止部材12の上側の面、すなわち第3の電極9と接触する側の面は、第3の電極9と同様に入射光を透過させる必要がある。そのため、封止部材12の構成材料および封止部材12の上側の面の厚さ等は、かかる点を考慮して設定される。
【0063】
以上のように構成された受発光素子1によれば、受光素子20が備える光導電体層8の光導電体材料として、上記式(1B)で表されるテトラフェニルポルフィリン化合物を用いることで、入射光の受光により、受光素子20(光導電体層8)は、高効率で電子を発生させることができるようになる。
そして、発光素子10は、受光素子20からの電子を高効率で受け取ることができ、その結果、発光層5において高効率に発光することとなる。
なお、本実施形態では、発光素子10は、第1の電極3と積層体11と第2の電極7とで構成され、積層体11は、正孔輸送層4と発光層5と電子注入層6との3層で構成されることとしたが、かかる構成に限定されず、例えば、積層体11には、必要に応じて、正孔注入層および電子輸送層等の層が1層以上介挿されていてもよい。
【0064】
以上のような受発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に第1の電極3を形成する。
第1の電極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0065】
[2] 次に、第1の電極3上に正孔輸送層4を形成する。
正孔輸送層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成するのが好ましい。
なお、正孔輸送層4は、例えば、正孔輸送性材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、第1の電極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0066】
正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔輸送層4を比較的容易に形成することができる。
正孔輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0067】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、第1の電極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、第1の電極3の上面に親液性を付与すること、第1の電極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、第1の電極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(第1の電極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0068】
[3] 次に、正孔輸送層4上に、発光層5を形成する。
発光層5は、例えば、真空蒸着等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[4] 次に、発光層5上に、電子注入層6を形成する。
電子注入層6は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子注入層6は、例えば、その構成材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子注入層形成用材料を、発光層5上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0069】
[5] 次に、電子注入層6上に、第2の電極7を形成する。
第2の電極7は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[6] 次に、第2の電極7上に、光導電体層8を形成する。
光導電体層8は、例えば、真空蒸着等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0070】
[7] 次に、光導電体層8上に、第3の電極9を形成する。
第3の電極9は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、受発光素子1が得られる。
最後に、得られた受発光素子1を覆うように封止部材12を被せ、基板2に接合する。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の受発光素子の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態の発光素子について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第2実施形態の受発光素子1は、光導電体層8に用いられる構成材料(光導電体材料)の種類が異なること以外は、前記第1実施形態の受発光素子と同様である。
すなわち、本実施形態の受発光素子1では、光導電体層8の主材料として含まれる構成材料(光導電体材料)として、下記式(2A)で表されるチアジアゾール系化合物が用いられる。
【0072】
【化11】

[式(2A)中、2つのAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基、トリアリールアミンを示す。]
【0073】
このような上記式(2A)で表されるチアジアゾール系化合物を、光導電体材料として用いることで、入射光の受光により、高効率で電子と正孔とを発生させることができる。
また、光導電体材料としては、反応する光の波長を変更する観点から、下記式(2A−1)〜(2A−3)で表わされる化合物を用いるのが好ましく、具体的には、特に、下記式2A−4〜2A−6で表わされる化合物を用いるのが好ましい。このような化合物は、特に近赤外域での発光を良好に受光して導電性を示す。よって、このような化合物を用いることで近赤外域での発光を受光して発光する受発光素子とすることができる。
【0074】
【化12】

[式(2A−1)〜(2A−3)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す。また、隣合う2つのRの炭素同士が連結して環状をなしていてもよい。]
【0075】
【化13】

【0076】
なお、光導電体材料として、かかるチアジアゾール系化合物を用いる場合、光導電体層8の平均厚さは、特に限定されないが、500nm以上、2000nm以下であるのが好ましく、800nm以上、1300nm以下であるのがより好ましい。これにより、入射光の受光により高効率で電子と正孔とを発生させることができるとともに、光導電体層8の高抵抗化を的確に防止または抑制することができる。
【0077】
<第3実施形態>
次に、本発明の受発光素子の第3実施形態について説明する。
以下、第3実施形態の発光素子について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第3実施形態の受発光素子1は、光導電体層8に用いられる構成材料(光導電体材料)の種類が異なること以外は、前記第1実施形態の受発光素子と同様である。
すなわち、本実施形態の受発光素子1では、光導電体層8の主材料として含まれる構成材料(光導電体材料)として、下記式(3A)で表されるテトラセン系化合物が用いられる。
【0078】
【化14】

[前記式(3A)中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
【0079】
このような上記式(3A)で表されるテトラセン系化合物を、光導電体材料として用いることで、入射光の受光により、高効率で電子と正孔とを発生させることができる。
また、光導電体材料としては、さらなる反応する光の波長を変更する観点から、下記式3A−1〜3A−11で表わされる化合物を用いるのが好ましい。
【0080】
【化15】

【0081】
なお、光導電体材料として、かかるアントラセン系化合物を用いる場合、光導電体層8の平均厚さは、特に限定されないが、100nm以上、1000nm以下であるのが好ましく、200nm以上、600nm以下であるのがより好ましい。これにより、入射光の受光により高効率で電子と正孔とを発生させることができるとともに、光導電体層8の高抵抗化を的確に防止または抑制することができる。
【0082】
<第4実施形態>
図2は、本発明の受発光素子の第4実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、第4実施形態の発光素子について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第4実施形態の受発光素子1は、第2の電極7が、増幅回路および制御回路を含む積層体で構成され、基板2への各層の積層順が異なること以外は、前記第1実施形態の発光素子と同様である。
すなわち、図2に示す受発光素子1は、基板2上に、第3の電極9と、光導電体層8と、第2の電極7と、積層体11と、第1の電極3とが、この順に積層されてなるものである。そして、第2の電極7は、第1の電極3側から、第1の層7Aと、第2の層7Bと、第3の層7Cとで構成される3層からなる積層体で構成される。
【0083】
このような第2の電極7において、第2の層7Bは、光導電体層8で発生した電子を増幅する増幅回路と、この増幅回路の作動を制御する制御回路とを有している。
また、第1の層7Aは、電極として機能し、例えば、ITO、IZO、In、SnO等の金属酸化物で構成される。さらに、第3の層7Cは、電極として機能し、例えば、Al、Ti、Ta、Ag、Mo、W、Co、Cr、またはこれらを含む合金等で構成される。
【0084】
このような受発光素子1にあっては、第1の電極3が第1の層7Aに対して極性がマイナスになるように電圧を印加し、さらに、第2の電極7が第3の層7Cに対して極性がマイナスになるように電圧を印加する。そして、この状態で、基板2および第3の電極9を透過して、光導電体層8に入射光が照射されると、光導電体層8が励起されることに起因して電子が発生し、この電子が第2の電極7側に移動することで、第3の電極9側から第3の層7Cに電子が流れる。この電子(電流)を、第2の層7Bが備える増幅回路および制御回路を用いて増幅させ、さらに、増幅させた電子を、第1の層7Aを介して、積層体11に供給する。
かかる現象によって、積層体11(発光層5)に対して、第2の電極7側から供給する電子を増幅させることができる。そのため、積層体11が備える発光層5における発光効率の向上をさらに図ることができる。
【0085】
なお、かかる構成の受発光素子1は、前記第1実施形態の受発光素子1の製造方法で説明したのと同様に、基板2上に、順次、各層を積層することで形成される。
そのため、増幅回路および制御回路を備える第2の層7Bの形成にはエッチング工程を伴うことにより、この第2の層7Bよりも下側に位置する第3の電極9および光導電体層8がエッチング工程による影響を受けることとなる。しかしながら、第3の電極9および光導電体層8は、紫外線、酸等に対して比較的変質・劣化が生じにくい構成材料で構成されているため、上述したような順番で各層を積層したとしても、第3の電極9および光導電体層8の変質・劣化を的確に抑制または防止することができる。
【0086】
<第5実施形態>
図3は、本発明の受発光素子の第5実施形態を模式的に示す断面図である。
以下、第5実施形態の発光素子について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
第5実施形態の受発光素子1は、第2の電極7が、第1の絶縁層を含む積層体で構成され、さらに、増幅回路および制御回路を備える第4の層14が、第2の絶縁層13を介して第1の電極3の下側に設けられていること以外は、前記第1実施形態の発光素子と同様である。
【0087】
すなわち、図3に示す受発光素子1は、基板2上に、第4の層14と、第2の絶縁層13と、第1の電極3と、積層体11と、第2の電極7と、光導電体層8と、第3の電極9とが、この順に積層されてなるものである。そして、第2の電極7は、第1の電極3側から、第1の層7Aと、第2の層7Bと、第3の層7Cとで構成される3層からなる積層体で構成される。
【0088】
このような第2の電極7において、第2の層7Bは、絶縁層(第1の絶縁層)として機能し、例えば、二酸化ケイ素、フッ素含有シルセスキオキサン、炭素含有シルセスキオキサンのようなシリコン酸化物や、窒化シリコン、窒化チタンのような窒化物等の無機絶縁材料、ポリパラキシリレン、ポリビニルフェノール、ノボラック樹脂のような芳香族系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素系樹脂、アモルファスカーボンのようなカーボン材料等の有機絶縁材料等で構成される。また、第1の層7Aは、電極として機能し、例えば、Al、Ti、Ta、Ag、Mo、W、Co、Cr、またはこれらを含む合金等で構成される。さらに、第3の層7Cは、電極として機能し、例えば、Al、Ti、Ta、Ag、Mo、W、Co、Cr、またはこれらを含む合金等で構成される。
【0089】
また、第4の層14は、光導電体層8で発生した電子を増幅する増幅回路と、この増幅回路の作動を制御する制御回路とを有している。さらに、第2の絶縁層13は、第4の層14と第1の電極3とを絶縁するための膜として機能し、前記第2の層7Bで説明したのと同様の構成材料で構成される。
さらに、第4の層14は、それぞれ、第1の電極3および第3の層7Cに、配線を介して電気的に接続されている。
【0090】
このような受発光素子1にあっては、第1の電極3が第1の層7Aに対して極性がプラスになるように電圧を印加し、さらに、第2の電極7が第3の層7Cに対して極性がマイナスになるように電圧を印加する。そして、この状態で、封止部材および第3の電極9を透過して、光導電体層8に入射光が照射されると、光導電体層8が励起されることに起因して電子が発生し、この電子が第2の電極7側に移動することで、第3の電極9側から第3の層7Cに電子が流れる。この電子(電流)を、第4の層14が備える増幅回路および制御回路を用いて増幅させ、さらに、増幅させた電子を、第1の電極3を介して、積層体11に供給する。
かかる現象によって、積層体11(発光層5)に対して、第1の電極3側から供給する電子を増幅させることができる。そのため、積層体11が備える発光層5における発光効率の向上をさらに図ることができる。
【0091】
なお、かかる構成の受発光素子1は、前記第1実施形態の受発光素子1の製造方法で説明したのと同様に、基板2上に、順次、各層を積層することで形成される。
そのため、基板2上に、エッチング工程を伴う第4の層14を形成した後には、このようなエッチング工程を用いることなく各層を形成することができるため、いわゆるライン成膜で形成することができることから、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0092】
また、前記第4実施形態の受発光素子1の製造工程と比較して、第3の電極9および光導電体層8の形成後に、増幅回路および制御回路を備える層を形成する必要がないため、第3の電極9および光導電体層8の変質・劣化をより的確に抑制または防止することができる。
また、第5の実施形態の変形例として、図4に示す受発光素子1のように各層を積層し、基板側から入射光を受けるような構造としてもよい。
【0093】
すなわち、図4に示す受発光素子1は、基板2上に、第4の層14と、第2の絶縁層13と、第3の電極9と、光導電体層8と、第2の電極7と、積層体11と、第1の電極3とが、この順に積層されてなるものである。そして、第2の電極7は、第1の電極3側から、第1の層7Aと、第2の層7Bと、第3の層7Cとで構成される3層からなる積層体で構成される。
【0094】
係る構成とすることで、前記第4実施形態の受発光素子1と比較して、発光光を、増幅回路および制御回路を備える第4の層を透過させる必要がないため、発光光の透過率の向上を図ることができる。
なお、前記第1実施形態〜第5実施形態の各部の構成は、適宜組み合わせて用いることができる。
【0095】
次に、上述した本発明の受発光素子を備える受発光装置(本発明の受発光装置)について説明する。
なお、以下では、受発光装置をディスプレイ装置に適用した場合を一例に説明する。
(ディスプレイ装置)
図5は、本発明の受発光装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図5中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0096】
図5に示すディスプレイ装置100は、発光素子1と、その上側に設けられたカラーフィルタ19R、19G、19Bと、下側に設けられたカラーフィルタ19’R、19’G、19’Bとを有している。
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、基板21に支持されて設けられ、エポキシ層35を介して、発光素子1の上側に接合されている。
また、カラーフィルタ19’R、19’G、19’Bは、基板21’に支持されて設けられ、エポキシ層35’を介して、発光素子1の下側に接合されている。
【0097】
かかる構成のディスプレイ装置100において、その厚さ方向(上下方向)のカラーフィルタ19R、19’Rに対応する位置する受発光素子1により、カラーフィルタ19’Rを介して赤色の光を発光する受発光素子1Rが構成され、カラーフィルタ19G、19’Gに対応する位置する受発光素子1により、カラーフィルタ19’Gを介して緑色の光を発光する受発光素子1Gが構成され、カラーフィルタ19B、19’Bに対応する位置する受発光素子1により、カラーフィルタ19’Bを介して青色の光を発光する受発光素子1Bが構成される。
【0098】
そこで、ディスプレイ装置100の上側から入射光を照射すると、入射光のうち赤色の光Rが選択的にカラーフィルタ19Rを透過する。そして、この光Rが受発光素子1Rに導かれることで、受発光素子1Rは、例えば、白色の光Wを発光し、さらに、この白色の光Wは、カラーフィルタ19’Rを透過することで、赤色の光に変換される。
また、入射光のうち緑色の光Gが選択的にカラーフィルタ19Gを透過する。そして、この光Gが受発光素子1Gに導かれることで、受発光素子1Gは、例えば、白色の光Wを発光し、さらに、この白色の光Wは、カラーフィルタ19’Gを透過することで、緑色の光に変換される。
さらに、入射光のうち青色の光Bが選択的にカラーフィルタ19Bを透過する。そして、この光Bが受発光素子1Bに導かれることで、受発光素子1Bは、例えば、白色の光Wを発光し、さらに、この白色の光Wは、カラーフィルタ19’Bを透過することで、青色の光に変換される。
【0099】
したがって、カラーフィルタ19R、19’Rおよび受発光素子1Rにより、赤色の光Rを受発光するサブ画素100Rが構成され、カラーフィルタ19G、19’Gおよび受発光素子1Gにより、緑色の光Gを受発光するサブ画素100Gが構成され、さらに、カラーフィルタ19B、19’Bおよび受発光素子1Bにより、青色の光Rを受発光するサブ画素100Bが構成される。
このようなサブ画素100R、100G、100Bを組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0100】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成され、隣接するカラーフィルタ19’R、19’G、19’B同士の間には、遮光層36’が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
なお、ディスプレイ装置100は、上記のようにカラー表示するものの他、単色表示のものとすることも可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の受発光装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
なお、以下では、電子機器をディジタルスチルカメラに適用した場合を一例に説明する。
【0101】
(ディジタルスチルカメラ)
図6は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、前述のディスプレイ装置100が設けられている。
【0102】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)1304が設けられている。
光学レンズを介してディスプレイ装置100に導かれた被写体像は、このディスプレイ装置100により撮像信号に変換され、さらに、ケース(ボディー)1302の背面側において、電子画像として表示される。
したがって、ディジタルスチルカメラ1300において、ディスプレイ装置100は、被写体像を撮像信号に変換する撮像素子としての機能と、被写体を電子画像として表示するファインダとしての機能とを両立する。
【0103】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
よって、撮影者がディスプレイ装置100に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるディスプレイ装置100で表示されている撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0104】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0105】
なお、本発明の電子機器は、図6のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡等に適用することができる。
また、本発明の受光素子は、図1の受発光素子に組み込まれるものの他、センサー等として単独で用いることもできる。
【0106】
以上、本発明の受光素子、受発光素子、受発光装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、本発明の受光素子、受発光素子、受発光装置および電子機器は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
【実施例】
【0107】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.チアジアゾール系化合物
(合成例A1)上記式2A−5で表わされる化合物の合成
【0108】
【化16】

【0109】
合成(A1−1)
5リットルのフラスコに発煙硝酸1500mlを入れ冷却した。そこへ10〜50℃に保つようにして硫酸1500mlを分割添加した。さらにそこへ原料のジブロモベンゾチアジアゾールである化合物(a)を150gを1時間かけて少量ずつ添加した。その際に溶液温度は5℃以下になるように行った。全量添加後、室温(25℃)において20時間反応させた。反応後、氷3kgに反応液を注ぎ、一晩攪拌した。その後、ろ過してメタノール、ヘプタンで洗浄した。
ろ過して残った物を200mlのトルエンで熱溶解させた後、室温まで徐冷後にろ過し、残ったものを少量のトルエンで洗浄後、減圧乾燥させた。
これにより、HPLC純度95%の化合物(b)(4、7−ジブロモ−5、6−ジニトロ−ベンゾ[1、2、5]チアジアゾール)60gを得た。
【0110】
合成(A1−2)
Ar下、5リットルのフラスコに、得られたジブロモ体である化合物(b)30gとトリフェニルアミンのボロン酸体54.2g、トルエン2500ml、2M炭酸セシウム水溶液(152g/(蒸留水)234ml)を入れ、90℃で一晩反応させた。反応後ろ過、分液、濃縮し、得られた粗体52gをシリカゲルカラム(SiO 5kg)で分離し、赤紫色固体を得た。
これにより、HPLC純度96%の化合物(c)8.9gを得た。
【0111】
なお、トリフェニルアミンのボロン酸体の合成に際しては、Ar下、5リットルのフラスコに、4−ブロモトリフェニルアミン(市販品)246g、脱水テトラヒドロフラン1500mlを入れ、−60℃で1.6M n−BuLi/ヘキサン溶液570mlを3時間かけて滴下した。30分後ホウ酸トリイソプロピル429gを1時間かけて滴下した。滴下後は成り行きの温度で一晩反応させた。反応後、水2リットルを滴下し、その後トルエン2リットルで抽出、分液した。有機層を濃縮、再結晶し、ろ過、乾燥させて白色の目的物であるボロン酸体160gを得た。
得られたボロン酸体のHPLC純度は、99%であった。
【0112】
合成(A1−3)
Ar下、1リットルのフラスコに、得られたジニトロ体である化合物(c)8g、還元鉄7g、酢酸600mlを入れ、80℃で4時間反応させて室温まで冷却させた。反応後、反応液をイオン交換水1.5リットルに注ぎ、そこへ酢酸エチル1.5リットルをさらに添加した。添加後、固体が析出していたので、テトラヒドロフラン1リットルと食塩300gを添加し、分液した。水層は1リットルのテトラヒドロフランで再抽出した。濃縮乾燥したものを再度、少量の水、メタノールにて洗浄し、橙色固体を得た。
これにより、HPLC純度80%の化合物(d)7gを得た。
【0113】
合成(A1−4)
Ar下、1リットルのフラスコに、得られたジアミン体である化合物(d)1.5g、9,10−フェナントレンキノン0.6g、溶媒として酢酸300mlを入れ、80℃にて2時間反応させた。反応後、室温まで冷却させ、反応液をイオン交換水1リットルに注ぎ、結晶をろ過、水洗、2gの黒緑色固体を得た。そして、その黒緑色固体をシリカゲルカラム(SiO 1kg)で精製した。
これにより、HPLC純度99%の化合物(e)(前記式2A−5で表わされる化合物)1.5gを得た。この化合物(e)を質量分析したところ、M+:824であった。
さらに、得られた化合物(e)を設定温度340℃で昇華精製した。その昇華精製後の化合物(e)のHPLC純度は99%であった。
【0114】
2.テトラセン系材料
(合成例B1)前記式3A−2で表わされる化合物の合成
【0115】
【化17】

【0116】
合成(B1−1)
Ar下、300mlのフラスコに、4−ブロモビフェニル6gと乾燥ジエチルエーテル50mlを入れた。室温で1.6M n−BuLi/ヘキサン溶液14.5mlを滴下し、30分間反応させた。
一方、別途、Ar下、500mlのフラスコに、5、12−ナフタセンキノン2.7と乾燥トルエン100mlを投入した。そこへ先に調整したビフェニルリチウムを滴下し、3時間反応させた。反応後、20mlの蒸留水を添加し、30分攪拌後、メタノール中に入れ、固体をろ過分離した。得られた固体をシリカゲル(SiO 500g)で精製した。
これにより、白色固体(5、12−ビスビフェニル−4−イル−5、12−ジヒドロ−ナフタセン−5、12−ジオール)4.5gを得た。
【0117】
合成(B1−2)
合成(B1−1)で得られたジオール体4.5gと酢酸300mlを計量し、1000mlのフラスコに入れた。そこへ、塩酸(35%)5gに塩化スズ(II)(無水)5gを溶かしたものを入れ、30分攪拌した。その後、分液ロートに移し、トルエンを加えて、蒸留水にて分液洗浄し、乾燥させた。得られた個体をシリカゲル(SiO 500g)で精製し、黄色固体(前記式3A−2で表わされるビスビフェニリルテトラセン(BBT))4gを得た。
【0118】
3.テトラフェニルポルフィリン化合物
テトラフェニルポルフィリン化合物として、それぞれ、以下に示すものを用意した。
(M−1):Pt(II) Tetrahenyl tetrabenzo porphrin:Pt(TPTBP)(Frontier Scientific,INC 製)
(M−2):Pt-テトラフェニルポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−3):Pd(II)-テトラフェニルポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−4):Mg(II)-テトラフェニルポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−5):Ni(II)-テトラフェニルポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−6):Zn(II)-テトラフェニルポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−7):Pt(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
(M−8):Pd(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(Frontier Scientific,INC製)
【0119】
【化18】

【0120】
【化19】

【0121】
【化20】

【0122】
【化21】

【0123】
3.受発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nm(縦3.0mm×横3.0mm)のITO電極(第1の電極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理およびアルゴンプラズマ処理を施した。これらのプラズマ処理は、それぞれ、基板を70〜90℃に加温した状態で、プラズマパワー100W、ガス流量20sccm、処理時間5secで行った。
【0124】
<2> 次に、ITO電極上に、正孔注入兼正孔輸送材料(テトラキス−p−ビフェニリル―ベンジジン)を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ70nmの正孔輸送層を形成した。
<3> 次に、正孔輸送層上に、発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ40nmの発光層を形成した。発光層の構成材料としては、発光材料(ゲスト材料)としてファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)を用い、ホスト材料として3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)を用いた。また、緑色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)を7wt%とした。
【0125】
<4> 次に、発光層上に、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
<5> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
<6> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ100nmの第2の電極を形成した。
【0126】
<7> 次に、第2の電極上に、光導電体層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ1000nmの光導電体層を形成した。光導電体層の構成材料としては、前記式(M−1)で表されるPt(TPTBP)を用いた。
<8> 次に、電子注入層上に、MgとAgとを真空蒸着法により成膜した。これにより、MgAgで構成される平均厚さ10nmの第3の電極を形成した。
<9> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、受発光素子を製造した。
【0127】
(実施例2〜10)
前記工程<7>において、光導電体層の構成材料として、前記式(M−1)で表されるPt(TPTBP)に代えて、それぞれ、表1に示した化合物を用いた以外は、前記実施例1と同様にして受発光素子を製造した。
【0128】
4.評価
各実施例の受発光素子について、受発光素子が有する基板と光源との離間距離を2cmに維持した状態で、受発光素子に入射光を照射し、そのときの発光素子の電流密度[μA/cm]を電流密度測定器(株式会社東陽テクニカ製 「KEITHLEY2400」)を用いて測定した。
また、そのときの発光輝度[cd/m]を輝度測定器(コニカミノルタセンシング株式会社製 CS−200)を用いて測定した。
【0129】
さらに、各実施例の受発光素子について、受発光素子に入射光を照射しないときについても、発光素子の電流密度および発光輝度を測定した。
なお、これら電流密度および発光輝度の測定の際に、実施例1、9、10の受発光素子については、これらが備える第1の電極と第3の電極との間に印可する電圧を、0〜20Vの間で変化させた。また、実施例2〜8の受発光素子については、第1の電極と第3の電極との間に印可する電圧を20Vに固定した。
これらの測定結果を表1および図7〜9に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
まず、図7〜9から明らかなように、各実施例の受発光素子では、光源による受光素子に対する入射光の照射時には、発光素子による発光光の発光が認められ、これに対して入射光の非照射時には、発光光の発光が認められなかった。
また、このような傾向は、電極間に対する印加電圧が高くなるにつれて顕著に認められた。すなわち、高電圧を印加するにしたがって、電流密度と発光輝度との双方が高くなることが判った。
【符号の説明】
【0132】
1、1B、1G、1R……受発光素子 2……基板 3……第1の電極 4……正孔輸送層 5……発光層 6……電子注入層 7……第2の電極 7A……第1の層 7B……第2の層 7C……第3の層 8……光導電体層 9……第3の電極 10……発光素子 11……積層体 12……封止部材 13……第2の絶縁層 14……第4の層 20……受光素子 19B、19G、19R、19’B、19’G、19’R……カラーフィルタ 100……ディスプレイ装置 100R、100G、100B……サブ画素 21、21’……基板 35、35’……エポキシ層 36、36’……遮光層 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……光学レンズ 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ W……光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(1A)で表されるテトラフェニルポルフィリン骨格を有する化合物を主材料として含有することを特徴とする受光素子。
【化1】

[式(1A)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表す。
Rは置換基を意味し、水素原子、フッ素原子、アルキル基、アリール基を表す。]
【請求項2】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(1B)で表されるテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン化合物を主材料として含有することを特徴とする受光素子。
【化2】

[式(1B)中、Bは、白金、パラジウム、マグネシウム、ニッケルまたは亜鉛を表し、4つのフェニル基が備える各水素原子は、フッ素原子により置換されていてもよい。]
【請求項3】
前記金属原子Bは、白金である請求項1または2に記載の受光素子。
【請求項4】
前記光導電体層は、その膜厚が200nm以上、1500nm以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の受光素子。
【請求項5】
前記第2の電極は、その構成材料の仕事関数が、4.0eV以上、4.5eV以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の受光素子。
【請求項6】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(2A)で表されるチアジアゾール系化合物を主材料として含有することを特徴とする受光素子。
【化3】

[式(2A)中、2つのAは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基、トリアリールアミンを示す。]
【請求項7】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に設けられ、受光により電子を発生する光導電体層とを有し、
該光導電体層は、下記式(3A)で表されるテトラセン系化合物を主材料として含有することを特徴とする受光素子。
【化4】

[前記式(3A)中、2つのRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、アリールアミノ基を示す。]
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の受光素子と、該受光素子で発生した電子が供給されることで発光する有機エレクトロルミネッセンス素子で構成される発光素子とを備えることを特徴とする受発光素子。
【請求項9】
前記発光素子は、第2の電極と、第3の電極と、前記第2の電極と前記第3の電極との間に設けられた、光を発光する発光層とを有する請求項8に記載の受発光素子。
【請求項10】
前記受光素子が有する前記第2の電極と、前記発光素子が有する前記第2の電極とが共通電極で構成され、
当該受発光素子は、前記第1の電極と、前記発光層と、前記第2の電極と、前記光導電体層と、前記第3の電極とがこの順に積層されてなるものである請求項9に記載の受発光素子。
【請求項11】
さらに、前記受光素子で発生した電子を増幅させる増幅回路を備える請求項8ないし10のいずれかに記載の受発光素子。
【請求項12】
請求項8ないし11のいずれかに記載の受発光素子を備えることを特徴とする受発光装置。
【請求項13】
請求項12に記載の受発光装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45977(P2013−45977A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184071(P2011−184071)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】