説明

受光素子及び受光センサー

【課題】接合容量を減らし、応答速度及び感度の優れた干渉フィルタを利用した受光素子を安価で提供する。
【解決手段】 少なくともP型層8とN型層9を含む半導体基板2と、前記半導体基板の表面に形成された絶縁膜3と、前記絶縁膜3上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタ6と、前記P型層に接続した第1電極4と、前記N型層に接続した第2電極5とを備えた受光素子において、前記第1電極4と前記第2電極5の少なくとも一方が前記絶縁膜3上に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光リモコンに好適な光学素子及びそれを用いた受光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
光リモコン及び光センサーに用いる受光部には、投光部より発光する特定波長の光のみ透過し、外乱光が受光部に入射するのを防止する干渉フィルタを受光部の前方に設ける必要がある。
【0003】
従来、この干渉フィルタはガラス基板上に光学多層薄膜を蒸着して受光素子前面に設置する構成が用いられていた。しかし、この構成の場合、専用ホルダを用いて前記ガラス基板を受光素子前面に設置し固定する必要があるため、装置全体の薄型化が困難であるとともに組み立て効率が悪い等の問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に示すように、金属酸化物薄膜層からなる干渉フィルタを直接受光素子に積層することが提案されている。しかし、この受光素子においては、絶縁膜の有無、フィルタ膜、ワイヤーボンド用電極との配置関係など、具体的な構造が開示されていなかった。
【0005】
また、特許文献2では、受光素子表面に絶縁膜を形成し、該絶縁膜上に導電性薄膜と金属酸化物薄膜の多層膜で構成される干渉フィルタを設けたものが提案されている。しかし、この受光素子において、干渉フィルタの最下層に設けられた導電性薄膜と半導体基板内のP層がシールド用にGND接続されていた。このため、これらシールド層は対向する半導体基板内のN層との間に一定の接合容量を有してしまい、受光素子としての応答速度の低下、感度の低下をもたらす等の弊害があった。
【特許文献1】特開平7−140324公報
【特許文献2】特開2005−45098公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで上記課題に鑑み、本発明は、上記弊害を改善した干渉フィルタを利用した受光素子の実用的な構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の構成は、少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記絶縁膜上に配置されていることを特徴とする受光素子である。
【0008】
また本発明は、上記構成の受光素子において、前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記絶縁膜上に配置され、前記干渉フィルタが最下層に金属酸化物薄膜を有することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記干渉フィルタ上に配置されていることを特徴とする受光素子である。
【0010】
また本発明は、上記構成の受光素子において、前記干渉フィルタが種類の異なる金属酸化物薄膜からなることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記構成の受光素子において、前記第1電極と前記第2電極の間を絶縁分離する分離溝を前記干渉フィルタに設け、前記干渉フィルタが金属酸化物薄膜と導電性薄膜を交互に積層した構造であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上記構成の受光素子において、前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記干渉膜上に配置され、前記第1電極と前記ガードリング電極の間を絶縁分離する分離溝を前記干渉フィルタに設けたことを特徴とする。
【0013】
また本発明は、少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記干渉フィルタ表面に更に第2絶縁膜が形成され、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記第2絶縁膜上に配置されたことを特徴とする受光素子である。
【0014】
また本発明は、上記構成の受光素子において、前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記第2絶縁膜上に配置され、前記干渉フィルタが金属酸化物薄膜と導電性薄膜を交互に積層した構造であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、上記受光素子を、赤外光に対して透光性を有し可視光に対して遮光性を有する樹脂で覆い形成したことを特徴とする受光センサーである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の構成によると、受光素子表面に絶縁膜を形成し、更に絶縁膜上に干渉フィルタを形成し、絶縁膜を一体に覆うことにより、光学的ノイズの発生を抑えることができるとともに、干渉フィルタを形成することによる接合容量の増加を抑えることができ、受光素子の応答速度の低下及び感度の低下を抑えることができる。
【0017】
また本発明の第2の構成によると、ガードリング電極と第1電極を接続することにより、電磁シールド性を向上させることができるとともに、干渉フィルタの最下層が金属酸化物薄膜で構成されることにより、N型層と対向する干渉フィルタの面は第1電極と接続されない。このため、N型層と対向する干渉フィルタの対抗面積は増大せず、接合容量の増大を抑えることができる。
【0018】
また本発明の第3の構成によると、上記第1の構成と同様の効果を発揮する。また、上記第1の構成の受光素子によると干渉フィルタの形成は半導体基板上に先に電極を形成した後、リフトオフ法により行なわれるため、薄膜形成装置内へのレジストの飛散及び薄膜内への不純物の混入が問題となっていたが、本構成によると先に干渉フィルタを形成した後、電極を取り付けることができるため、上記問題を解消することができる。
【0019】
また本発明の第4の構成によると、干渉フィルタが絶縁性を有する金属酸化薄膜からなり、導電性を有する薄膜を含まないため、干渉フィルタは完全な絶縁性を有することができる。したがって、受光素子の製造工程の中で干渉フィルタを電極と接触させて受光素子表面に形成しても第1電極、第2電極、及びガードリング電極は干渉フィルタを介して接続されることはなく、リークの発生や接合容量の増大を考慮する必要がない。したがって、簡易な製造工程で干渉フィルタ付きの受光素子を安価で提供することができる。
【0020】
また本発明の第5の構成によると、干渉フィルタは通常、光の入射角度を変化させると透過帯域がシフトする入射角度依存性を有するが、異なる種類の金属酸化物薄膜のみで構成される干渉フィルタより金属酸化物薄膜と導電性薄膜を交互に積層して構成する干渉フィルタの方がこの入射角度依存性を低く抑えることができる。したがって、光の入射角度に影響され難い受光素子を提供することができる。
【0021】
ここで、干渉フィルタが導電性薄膜を含む場合、干渉フィルタが導電性を持ち、第1電極と第2電極が干渉フィルタを介して電気的に接続されリークが発生するが、第1電極と第2電極の間を絶縁分離する分離溝を干渉フィルタに設けることで、両電極間は電気的に接続されず、リークの発生を防ぐことができる。
【0022】
また本発明の第6の構成によると、ガードリング電極を干渉フィルタ上に配置することで、電磁シールド性が向上する。また、ガードリング電極と対向するN型層との間に絶縁膜及び干渉フィルタが介される分、接合容量の増加を上記第2の構成による受光素子より抑えることができる。また、第1電極とガードリング電極の間を絶縁分離する分離溝を干渉フィルタに設けることで、干渉フィルタに導電性薄膜を含むものを用いた場合にも第1電極とガードリング電極は接合されることがなく、接合容量の増加をいっそう防ぐことができる。
【0023】
また本発明の第7の構成によると、半導体基板表面に第1絶縁膜、干渉フィルタ、第2絶縁膜を順に設けた受光素子において、第1電極と第2電極の少なくとも一方を第2絶縁膜上に配置することで、両電極は干渉フィルタを介して電気的に接続されることはない。従って、干渉フィルタに導電性薄膜を含むフィルタを用いても両電極間にリークが発生することはない。これにより、導電性薄膜を干渉フィルタとして用いることができ、干渉フィルタの入射角度依存性を抑えることができる。
【0024】
また本発明の第8の構成によると、ガードリング電極を干渉フィルタ表面に形成された絶縁膜上に配置し、干渉フィルタに金属酸化物と導電性薄膜を交互に積層したものを用いても干渉フィルタと第1電極が接続されることはない。また、ガードリング電極と対向するN型層との間に2層の絶縁膜及び干渉フィルタが介される分、接合容量の増加を上記第2の構成及び上記第4の構成による受光素子より抑えることができる。
【0025】
また本発明の第9の構成によると、赤外光に対して透光性を有し可視光に対して遮光性を有する樹脂で受光素子を覆いうことにより、干渉フィルタの赤外領域透過中心波長以外に現われる可視光領域の透過領域(850nm以下)を遮光することができ、可視光領域の光ノイズに対して優れた受光センサーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[実施例1]
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態1に係る受光素子1の断面図である。受光素子1はPIN型の半導体基板2で構成され、半導体基板2の表面には、絶縁膜3が形成されている。また、絶縁膜3上には第1電極4と、第2電極5と、干渉フィルタ6が形成されている。
【0027】
半導体基板2の表面中央にP型層8を形成し、このP型層8を囲むように、額縁状のN型層9を形成し、このP型層8とN型層9とI型の半導体基板2とによって、受光用のPIN接合が形成される。なお、P型層8とN型層9が接するように両者の幅を調整することによって、受光用のPN接合を形成することもできる。
【0028】
P型層8は、ホウ素(B)等のP型不純物を約1×1020cm-3の高濃度で、深さ1〜2μmに拡散して形成される。N型層9は、燐(P)等のN型不純物を約1×1020cm-3の高濃度で、深さ1〜2μmに拡散して形成される。
【0029】
また、受光素子1の上面は酸化シリコン(SiO)等の絶縁膜3によって覆われ、該絶縁膜3上には、干渉フィルタ6が形成されている。また、P型層8上方にはアルミニウムなどからなる第1電極4が設けられ、絶縁膜3を孔通してP型層8と接続している。同様に、第2電極5はN型層9と接続している。
【0030】
絶縁膜3は厚さが400〜600nmのSiO2やSiNXによって構成され、半導体基板2表面を保護するために設けられている。
【0031】
ここで、第1電極4及び第2電極5間に一定の逆バイアスを印加させると、半導体基板2へ入射した光のエネルギーにより、電子・正孔の対(キャリア)が生成される。これらの電子・正孔は、I型半導体層の内部電界に従ってそれぞれ、電子はN型層9へ、正孔はP型層8へと移動し光電流が発生する。
【0032】
このとき、半導体基板2表面に、不要な波長成分を除去し所定波長の光を選択的に透過させる干渉フィルタ6を設けることにより、入射する光の波長を選択することができる。
【0033】
つまり、特定波長領域の光が入射した場合にのみ受光素子1に光電流が発生するため、この受光素子1を用いて特定波長にのみ反応する受光センサーを製造することが可能となる。
【0034】
なお、通常、光は入射角度が大きくなるにしたがって透過波長が短波長側にシフトする入射角度依存性をもっているので、赤外線リモコンの一般的な使用状態における入射角度(30°前後)の光を基準とした透過波長がリモコンの使用波長(940nm前後)と一致するように干渉フィルタ6は光学設計される。その結果、入射角度が0°前後のときに波長が965nm前後の光を選択的に透過するように設計された干渉フィルタ6が使用される。
【0035】
この干渉フィルタ6は、種類が異なる金属酸化物薄膜が複数積層して構成されるか又は導電性薄膜と金属酸化物薄膜とを交互に複数積層して構成される。ここで、導電性薄膜としては、赤外線の吸収が無いか、あるいは赤外線の吸収が少ない金属、あるいは半導体を選択的に利用することができる。導電性薄膜の具体例として、SiやGe等を挙げることができる。また、金属酸化物薄膜の具体例として、TiO2、Ta25やSiO2等を挙げることができる。
【0036】
このような光学多層薄膜を構成する導電性薄膜と金属酸化物薄膜は、例えば1000nm以上の波長の光を反射あるいは吸収して除去し、それ以下の波長の光を透過させるような膜厚に、蒸着法、イオンプレーティング法、あるいはスパッタ法等を用いて形成される。
【0037】
また、干渉フィルタ6は、好ましくは受光領域のほぼ全面を覆うように形成されるのが好ましいが、導電性薄膜と金属酸化物薄膜とを交互に複数積層して構成される干渉フィルタ6は導電性薄膜を有するため、第1電極4と第2電極5の両方に接触させて干渉フィルタ6を形成してはならない。
【0038】
これは、干渉フィルタ6が導電性薄膜で構成されている場合、第1電極4と第2電極5の両方に干渉フィルタ6を接触させると両電極が電気的に接続され、P型層8及びN型層9でリークが発生するためである。したがって、本実施形態では、図1に示すように電極と干渉フィルタ6の間に絶縁用の隙間を設け両電極の接続を防止している。また、このような方法以外にも干渉フィルタ6上に両電極を絶縁分離する分離溝を設けてもよい。
【0039】
なお、干渉フィルタ6と電極の絶縁用の隙間は、受光領域であるP型層8の上方にない方が好ましいので、干渉フィルタ6が導電性薄膜で構成される場合、干渉フィルタ6は第1電極4と接触させ、第2電極5との間に隙間を設けるのが好ましい。また、干渉フィルタ6が導電性薄膜を含まず種類の異なる金属酸化物薄膜で構成される多層膜である場合、干渉フィルタ6は導電性を有さないため、上記隙間を設ける必要はない。
[実施例2]
次に図2の断面図に従い本発明の実施形態2に係る受光素子1を説明する。なお、実施例1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図2に示した受光素子1は、実施例1で示した基板構造と同様の構造を有するが、電極の取り出し方が異なる。本実施形態はP型層8に接続される第1電極4、N型層9に接続される第2電極5、N型層9を覆うガードリング電極7の3種類の電極が半導体基板2表面に形成された絶縁膜3上に配置されている。
【0040】
ガードリング電極7はN型層9に対する電磁シールド性を向上させる機能を有するため第1電極4と接続させる場合があるが、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜を交互に積層した多層膜で構成し、最下層に金属酸化物薄膜を配置して構成することで、対向するN型層9との接合容量の増加を防止することができる。
【0041】
これは、干渉フィルタ6の最下層に導電性薄膜を配置した場合、最下層の導電性薄膜とが第1電極4と接続されてしまい対向するN型層9との対向面積が増大し接合容量の増加につながるからである。
【0042】
また、実施例1と同様に、干渉フィルタ6は、好ましくは受光領域のほぼ全面を覆うように形成されるのが好ましく、干渉フィルタ6は導電性薄膜を有するため、第1電極4と第2電極5の両方に接触させて干渉フィルタ6を形成してはならない。
【0043】
次に本実施形態に係る受光素子1における干渉フィルタ6の形成工程を図3(a)〜(e)により示す。干渉フィルタ6はリフトオフ法により形成される。まず、第1電極4及び第2電極5とP型層8及びN型層9が接続され、表面が絶縁膜3で覆われた半導体基板2を準備する(図3(a)参照)。次に、第1電極4及び第2電極5の表面に電子線に対して感応性をもつレジスト10を被覆させる。(図3(b)参照)。次に第1電極4及び第2電極5を含む受光素子1の主面上全面に干渉フィルタ6を蒸着させ(図3(c)参照)、その後、レジスト10をアセトン等で除去すると(図3(d)参照)、レジスト10上の干渉フィルタ6はレジスト10とともに剥離するので,電極上のみ干渉フィルタ6が被覆していない受光素子1を得ることができる(図3(e)参照)。
[実施例3]
次に図4の断面図に従い本発明の実施形態3に係る受光素子1を説明する。なお、上記実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図4に示した受光素子1は、実施例1で示した基板構造と同様の構造を有するが、第1電極4及び第2電極5が干渉フィルタ6上に配置されている。
【0044】
このように、電極が干渉フィルタ6の上に配置される構造をとる場合、後述するように受光素子1の形成工程は干渉フィルタ6を形成した後、電極を形成することができる。従って、実施例2で示した干渉フィルタ6の形成工程とは異なり、電極と干渉フィルタの間に絶縁用の隙間を設けることが困難である。これにより、第1電極4及び第2電極5を電気的に接続させないためには干渉フィルタ6を絶縁性の金属酸化物薄膜からなる多層膜で構成するか、干渉フィルタ6上に両電極を絶縁分離する分離溝を設ける必要がある。なお、この分離溝については実施例5で説明する。
[実施例4]
次に図5の断面図に従い本発明の実施形態4に係る受光素子1を説明する。なお、上記実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図5に示した受光素子1は、実施例2で示した基板構造と同様の構造を有するが、実施例2と異なりP型層8に接続される第1電極4、N型層9に接続される第2電極5、N型層9を覆うガードリング電極7の3種類の電極が干渉フィルタ6上に配置されている。
【0045】
この構成をとる場合、実施例3で示したように干渉フィルタ6は種類の異なる金属酸化物薄膜(例TiO/SiO)で構成する必要がある。なぜなら、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜との多層膜とすると第1電極4及び第2電極5が干渉フィルタ6を介して電気的に接続され両電極間にリークが発生するからである。
【0046】
また、この構成によると、ガードリング電極7は第1電極4と接続させることによりN型層9に対する電磁シールド性を向上させることができ、ガードリング電極7と対向するN型層9との間に絶縁膜3(約0.4μm厚)及び干渉フィルタ6(約1.9μm厚)を介するため、絶縁膜3のみを介した実施例2の受光素子1と比較して接合容量の増加をいっそう抑えることができる。
[実施例5]
次に図6の断面図に従い本発明の実施形態5に係る受光素子1を説明する。なお、上記実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図6(a)に示した受光素子1は、実施例4で示した受光素子1と同様の基板構造、電極構造を有し、第1電極4、第2電極5及びガードリング電極7がともに干渉フィルタ6上に配置されている。しかし、第1電極4と第2電極5の間に干渉フィルタ6を切断分離する絶縁性の溝を設け第1電極4と第2電極5が電気的に接続されない構成になっているため両電極間で干渉フィルタ6を介したリークが発生することはない。このため、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜の多層膜で構成することができる。
【0047】
したがって、実施例1で上述した通り干渉フィルタ6は入射角度依存性を有し、通常入射角度が大きくなるにしたがって透過波長が短波長側にシフトするが、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜で構成することによりこの角度依存性を低く抑えることができる。なお、本実施例では、干渉フィルタ6に設けた絶縁性の溝により第1電極4と第2電極5の電気的接続を遮断しているが、溝を設けるだけでなく絶縁性材料を溝に埋め込み両電極間の絶縁性をさらに向上させることも可能である。
【0048】
また、ガードリング電極7は第1電極4と接続させることでN型層9に対する電磁シールド性を向上させることができるが、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜の多層膜で構成し、干渉フィルタ6の最下層に金属酸化物薄膜を配置して構成することで、対向するN型層9との接合容量の増加を防止することができる。
【0049】
これは、干渉フィルタ6の最下層に導電性薄膜を配置した場合、干渉フィルタ6の最下層が第1電極4と接続されてしまい対向するN型層9との対向面積が増大し接合容量の増加につながるからである。
【0050】
ただし、この構成であっても最下層に配置した金属酸化物薄膜のすぐ上の導電性薄膜が第1電極と接続されるため、対向するN型層9との間で接合容量を有してしまう。そこで、図6(b)に示すようにP型層8上の干渉フィルタ6がN型層9に対向しないようにP型層8とN型層9の境界に絶縁性の溝を設けることで、この接合容量の増加をさらに抑えることができる。また、この構成によると、ガードリング電極7と対向するN型層9との間に絶縁膜3(約0.4μm厚)及び干渉フィルタ6(約1.9μm厚)を介するため、絶縁膜3のみを介した実施例2の受光素子1と比較して接合容量の増加をいっそう抑えることができる。
[実施例6]
次に図7の断面図に従い本発明の実施形態6に係る受光素子1を説明する。なお、上記実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図7に示した受光素子1は、実施例4で示した受光素子1と同様の基板構造、電極構造を有しているが、第1電極4及び第2電極5間のリークを防止するため干渉フィルタ6上に第2絶縁膜3bを設け、第1電極4、第2電極5、ガードリング電極7は第2絶縁膜3b上に配置されている。
【0051】
ここで、干渉フィルタ6は上面、下面、側面の全てが第1絶縁膜3a又は第2絶縁膜3bで覆われているため、各電極は干渉フィルタ6の構成に関係なく電気的に接続されることはない。したがって、干渉フィルタ6を導電性薄膜と金属酸化物薄膜の多層膜で構成することができ、入射光の入射角度による透過波長のシフトを低く抑えることができる。
【0052】
また、この構成によるとガードリング電極7は対向するN型層5との間に2層の第1、第2絶縁膜3a、3b(約0.4μm厚)及び干渉フィルタ6(約1.9μm厚)の合計三層を介するため、実施例2及び実施例5と比較して接合容量をいっそう低く抑えることができる。
【0053】
次に本実施形態の受光素子1における干渉フィルタ形成工程を電極後付け法により説明する。図8、図9、図10は本実施形態に係る受光素子1の形成工程を示す断面図である。
【0054】
図8は干渉フィルタの形成工程を示すものである。まず、第1絶縁膜3a(膜厚0.4μm〜0.5μm)が表面に形成された半導体基板2を用意し第1絶縁膜3a上に干渉フィルタ6を蒸着させる。このとき、蒸着させる干渉フィルタ6には導電性薄膜(Si)と金属酸化物薄膜(TiO)が交互に積層された多層膜を用いる(図8(b)参照)。次に干渉フィルタ6上にP型層8及びN型層9と接続する部位を除いてレジスト10を塗布し(図8(c)参照)、フッ酸及び硝酸等を用いて、レジスト10が形成されていない部位における干渉フィルタ6及び絶縁膜3aを溶解させる(図8(d)参照)。これにより、P型層8及びN型層9と接続するためのコンタクトホールが形成される。次にアセトン等を用いて表面のレジスト10を全て除去する(図8(e)参照)。以上より半導体基板2表面に電極と接続するコンタクトホールを備えた第1絶縁膜3a及び干渉フィルタ6が形成される。
【0055】
図9は図8で示した工程により形成された干渉フィルタ6付き受光素子1表面にさらに第2絶縁膜3bを形成する工程を示すものである。まず、上記得られた受光素子1に形成された干渉フィルタ6表面全体に第2絶縁膜3bを被覆する。このとき、上記コンタクトホールも第2絶縁膜3bにより閉塞されるため当該箇所における第2絶縁膜3bを取り除く必要がある(図9(b)参照)。そのために、まず第2絶縁膜3b表面全体にレジスト10を塗布しコンタクトホール部のみ露光、現像し当該箇所のみレジスト10を取り除く(図9(c)参照)。次に、レジスト10が取り除かれたコンタクトホール部における第2絶縁層3bをフッ酸により溶解しエッチングを行い(図9(d)参照)、アセトン等を用いて、前記レジスト10を除去する(図9(e)参照)。以上よりP型層8又はN型層9と接続可能なコンタクトホールを有する第1絶縁膜3a、干渉フィルタ6、第2絶縁膜3bの3層が積層された受光素子1が得られる。
【0056】
図10は図9で示した工程により形成された受光素子1に電極を形成する工程を示すものである。上記工程により得られた受光素子1にアルミを蒸着し(図10(a)参照)、前記アルミ11表面にレジストを塗布し、電極とする部分以外のレジスト10を取り除いた後(図10(b)参照)、レジスト10が塗布されていない部分のアルミ11を取り除く(図10(c)参照)。その後、電極上のレジスト10を取り除き、アルミ11によるP型層8と接続する第1電極4、N型層9と接続する第2電極5、ガードリング電極7が半導体基板2上に形成される(図10(d)参照)。
【0057】
以上より、電極後付け法のよる受光素子1の製造工程は実施例2で示した受光素子1の製造工程と異なり、干渉フィルタ6を形成した後電極を形成するため、干渉フィルタ6形成装置内への電極形成の際使用したレジストの飛散又は干渉フィルタ6内への不純物の混入が発生しない。また、この電極後付け法による受光素子1の製造方法は本実施例6における受光素子1だけではなく実施例3,4,5に示す電極が干渉フィルタ6上に形成される受光素子1の製造に用いることができる。例えば、実施例4で示される受光素子1は図8に示す製造工程により干渉フィルタ6を形成した後、図10で示す電極の形成工程を用いることで製造することができる。
[実施例7]
次に干渉フィルタ6の波長透過性と、可視光に対して遮光性を有する樹脂の波長透過性について検討する。樹脂はエポキシ樹脂で構成され、受光素子1の受光領域全体を覆うように設けられている。また、このエポキシ樹脂は受光素子1の感度特性に合わせ赤外光を透過するが可視光を減衰させるフィルタ染料が混入してある。
【0058】
図11は、本実施形態に係る受光素子における干渉フィルタ6の透過度を示す図である。横軸として波長(μm)、縦軸として透過度(%)を示している。図11(a)は、干渉フィルタ6のみの透過曲線を示し、図11(b)は干渉フィルタ6をエポキシ樹脂でシールドしたときの透過曲線を示している。
【0059】
図11(a)において、0.9μm以下の波長光の透過が観察されたのに対し図11(b)では、0.9μm以下の波長光の透過は観察されたかった。従って、エポキシ樹脂で受光素子を覆うことにより受光素子に入射する0.9μm以下の波長光を遮断することができることがわかる。したがって、受光素子1を被覆するエポキシ樹脂の波長選択性により受光素子1は受光センサーとして用いる場合、より好ましい性能を得ることができる。
【0060】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、本発明を実施するにあたって単に最良の形態を示すに過ぎない前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求項の範囲内に該当する発明の全ての変更を包含し、形状、配置、構成などについて変更が可能である。例えば、図12(a)の断面図で示す受光素子1のように半導体基板2の上面にP型層8を配し下面にN型層9を配することも可能である。また、図12(b)に示すように上記実施形態は全てPとNを入れ替えて半導体基板を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、受光素子を用いてリモコン等の受光センサーに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】

【図1】実施例1に係る受光素子の断面図である。
【図2】実施例2に係る受光素子の断面図である。
【図3】実施例2に係る受光素子の製造工程を示す断面図である。
【図4】実施例3に係る受光素子の断面図である。
【図5】実施例4に係る受光素子の断面図である。
【図6】実施例5に係る受光素子の断面図である。
【図7】実施例6に係る受光素子の断面図である。
【図8】実施例6に係る受光素子の製造工程を示す断面図である。
【図9】実施例6に係る受光素子の製造工程を示す断面図である。
【図10】実施例6に係る受光素子の製造工程を示す断面図である。
【図11】実施例7において測定した透過度を示すグラフである。
【図12】実施例1から実施例7以外に構成可能な受光素子の断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 受光素子
2 半導体基板
3 絶縁膜
4 第1電極
5 第2電極
6 干渉フィルタ
7 ガードリング電極
8 P型層
9 N型層
10 レジスト
11 アルミ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記絶縁膜上に配置されていることを特徴とする受光素子。
【請求項2】
前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記絶縁膜上に配置され、前記干渉フィルタが最下層に金属酸化物薄膜を有することを特徴とする請求項1に記載の受光素子。
【請求項3】
少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記干渉フィルタ上に配置されていることを特徴とする受光素子。
【請求項4】
前記干渉フィルタが種類の異なる金属酸化物薄膜からなることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれか1に記載の受光素子。
【請求項5】
前記第1電極と前記第2電極の間を絶縁分離する分離溝を前記干渉フィルタに設け、前記干渉フィルタが金属酸化物薄膜と導電性薄膜を交互に積層した構造であることを特徴とする請求項1及至請求項3のいずれか1に記載の受光素子。
【請求項6】
前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記干渉膜上に配置され、前記第1電極と前記ガードリング電極の間を絶縁分離する分離溝を前記干渉フィルタに設けたことを特徴とする請求項5に記載の受光素子。
【請求項7】
少なくともP型層とN型層を含む半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜上に形成され、所定波長の光を選択的に入射させる多層から成る干渉フィルタと、前記P型層に接続した第1電極と、前記N型層に接続した第2電極とを備えた受光素子において、前記干渉フィルタ表面に更に第2絶縁膜が形成され、前記第1電極と前記第2電極の少なくとも一方が前記第2絶縁膜上に配置されたことを特徴とする受光素子。
【請求項8】
前記第1電極と接続されるガードリング電極が前記第2絶縁膜上に配置され、前記干渉フィルタが金属酸化物薄膜と導電性薄膜を交互に積層した構造であることを特徴とする請求項7に記載の受光素子。
【請求項9】
請求項1及至請求項7のいずれかの受光素子を、赤外光に対して透光性を有し可視光に対して遮光性を有する樹脂で覆い形成したことを特徴とする受光センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−27995(P2008−27995A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196294(P2006−196294)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】