説明

受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム

【課題】 比較的簡単な構成で、光分岐線路の断線点や損出の増大点となる障害点などを精度良く検出することができる受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを提供する。
【解決手段】 入出力ポートがそれぞれ2ポートの光カプラ31−1〜31−16の出力ポートに各分岐線路をそれぞれ接続する一方、各光カプラの一つの入力ポートにはスターカプラ33から分岐した各分岐線路を介して信号光を入力し、さらに残りの入力ポートには診断光用線路32−1〜32−8を介して診断光を入力できる構成をとることにより、1つの診断光が同時に伝送される分岐線路を2本に限定されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムに関し、特に1本の光ファイバを光カプラにより複数の分岐線路に分岐し、1台の親局に対して多数の加入者局を接続するファイバ網で、例えばFTTH(Fiber To The Home)を実現するものの前記各分岐線路の断線等の検出に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
受動分岐型光ファイバ線路は1本の光ファイバを光カプラにより複数の分岐線路に分岐し、1台の親局に対して多数の加入者局を接続するファイバ網である。FTTHの光ファイバでは1対1で接続される構成、光・電気変換器により能動的に分岐する構成の他に、前記受動分岐方式が実用化されている。
【0003】
図8に示すように、1対1で接続される光ファイバでは、光ファイバ1の断線や損失増加を検出するためにOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)2が利用されている。これは、光パルスを光ファイバ1の片端から送り、連続的に戻ってくるレーリー散乱光や端面からのフレネル反射光の時間遅れに基づき損失増加点や断線点を検出するものである。
【0004】
ところが、図9に示すように、1本の光ファイバ1をスターカプラ3により複数に分岐する受動分岐型光ファイバ線路において前記OTDR2を適用すると、断線によって生じたフレネル反射光がどの分岐線路1−1〜1−4から戻ってきたかが分からない。OTDR2には各分岐線路1−1〜1−4で生じたフレネル反射光やレーリー散乱が重畳して入射されるからである。
【0005】
このため、断線前の健全時のフレネル反射光パターンと各分岐線路1−1〜1−4の線路長を予め測定しておき、障害時に消失したフレネル反射の分岐ポートと新たに生じたフレネル反射の時間的位置から障害点を特定する方法が考えられている。しかし、この場合、健全時に各分岐線路1−1〜1−4の線路長が同一のものが存在すると、消失ポートの判別が困難となり、また断線した位置が他の分岐線路1−1〜1−4と同一長さになった場合も検出が困難となる。このため、分岐線路1−1〜1−4の線路長を管理してそれぞれ異なるようにする必要がある。また、断線には至らない場合で急峻な曲げ等による損失増加の検出も必要であるが、複数の分岐線路1−1〜1−4からのレーリー散乱光が重なると損失の増加点での変化量が著しく小さくなり、検出できない可能性がある。
【0006】
一方、分岐線路を判別するために、分岐線路毎に異なる波長を用いる方式も提案されている。
【0007】
その一例を図10に示す。同図に示す例は、波長分離フィルタ4−1〜4−8を用いる構成であるが、波長によっては複数の分岐線路1−1〜1−8に伝送される。このため、波長間の差分をとることによって分岐線路1−1〜1−8毎の散乱特性を得ているが、差分の計算により誤差が大きくなり、小さな損失の増加を検出することが難しい。
【0008】
このため、図11に示すように、もう一組の波長分離フィルタ5−1〜5−8を用いて各分岐線路1−1〜1−8毎に1波長を与える方法も検討されている。しかし、この場合には、光ファイバの交叉等により光伝送路の構成が複雑且つコスト高となり、不経済である。
【0009】
なお、図10及び図11に示す場合において、OTDR2からの診断光(本例では1605nm〜1675nm)は、波長分離フィルタ6を介して光ファイバ1に合波される。
【0010】
また、この種の従来技術を開示する公知技術としては、次の特許文献を挙げることができる。
【0011】
【特許文献1】特開平8−111665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来技術に鑑み、比較的簡単な構成で、光分岐線路の断線点や損出の増大点となる障害点などを精度良く検出することができる受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の構成は、次の点を特徴とする。
1) 1本の光ファイバをスターカプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路に、信号光とは異なる波長の診断光を送ることで診断光に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにした受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
入出力がそれぞれ2ポートの複数の光カプラの出力ポートに各分岐線路をそれぞれ接続する一方、各光カプラの一つの入力ポートには前記スターカプラから分岐した各分岐線路を介して信号光を入力し、さらに残りの入力ポートには診断光用線路を介して診断光を入力できる構成をとることにより、1つの診断光が同時に伝送される分岐線路を2本に限定されるようにすること。
【0014】
本発明によれば、信号光分岐用の光カプラにより診断光が分岐線路に送られるので、分岐線路には波長フィルタ素子を追加挿入する必要なく、2つの分岐線路に限定して診断光が送出される。
【0015】
2) 上記1)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記各診断光用線路を順次選択して各診断光用線路に診断光を順次入力するスイッチ手段を有すること。
【0016】
本発明によれば、スイッチ手段を介して各分岐線路に診断光を導入しているので診断光の波長は固定されていてもかまわない。したがって、波長可変式の高価なOTDR等の測定機器を使用する必要は必ずしもない。
【0017】
3) 上記2)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段は、多芯一括コネクタを介して前記診断光用線路に接続したものであること。
【0018】
本発明によれば、多芯一括コネクタを介して故障点を検出するための機器を接続することができるので、当該機器を現場まで携帯し、現場で所定の作業を行う際に有用なものとなる。
【0019】
4) 上記2)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段は、各分岐線路の近傍位置に配設した光スイッチであり、診断光は親局側など遠隔から送られること。
【0020】
本発明によれば、遠隔から診断光を送出することで、上記3)と同様の効果を得る。
【0021】
5) 上記4)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記光スイッチの切り替え駆動に必要な電力および切り替え制御信号は、遠隔にある診断光パルス用光源と同じ位置から同一の光線路を経由して供給すること。
【0022】
本発明によれば、故障点の検出に必要な診断光を光スイッチの制御に利用できるので、光スイッチの駆動制御を最も合理的に行うことができる。
【0023】
6) 上記2)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段の代わりにアレイ導波路回折格子を用いるとともに、このアレイ導波路回折格子で各診断光用線路に特定の波長の診断光を伝送するようにしたこと。
【0024】
本発明によれば、上記2)と同様の効果をパッシブな構成要素のみで実現し得る。
【0025】
7) 上記6)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記アレイ導波路回折格子の代わりに、それぞれの反射波長を違えて直列に接続した複数の波長分離フィルタであって、信号光はすべてを透過させる波長分離フィルタを用い、各波長分離フィルタを介して各診断光用線路に特定の波長の診断光を伝送するようにしたこと。
【0026】
本発明によれば、上記6)と同様の効果を波長分離フィルタを用いて実現し得る。
【0027】
8) 1本の光ファイバをスターカプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて信号光とは波長が異なる診断光を送ることで各診断光に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにした受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
入出力ポートがそれぞれ2ポートで、しかも反射波長がそれぞれ異なる波長分離フィルタを前記各分岐線路にそれぞれ介在させる一方、前記各波長分離フィルタを順次直列に接続し、各波長分離フィルタに固有の特定波長以上の診断光を各分岐線路に反射するとともに、前記特定波長未満の診断光は透過して次の波長分離フィルタに進むようにすることにより各分岐線路にそれぞれ異なる波長域の診断光を導入する一方、信号光は全ての分岐線路で前記各波長分離フィルタを透過するように構成したこと。
【0028】
本発明によれば、信号光はすべての波長分離フィルタを透過するので何の支障もなく、所定の情報の授受を行い得る。一方、診断光は各分岐線路に固有の波長のものが各波長分離フィルタで分離されて各分岐線路に導入される。したがって、親局側から順次波長を変えて診断光を送ることで各分岐線路を1本ずつ診断でき、障害点を高精度に検出することができる。また、この際に必要な検査用の光ファイバの本数を可及的に低減することができる。
【0029】
9) 上記8)に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記分岐線路は相互に異なる所定の波長域の診断光が与えられている複数のグループからなり、各グループにそれぞれ複数の分岐線路が含まれるように構成したこと。
【0030】
本発明によれば、分岐線路の数が多数になった場合でも支障なく所定の故障点等の診断を行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
上記構成の本発明によれば対象となる分岐線路が増えても精度の良い所定の故障点検出を行い得るばかりでなく、これに必要な構成も光ファイバの錯綜を回避した簡潔なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。なお、図10、図11及び各実施の形態で同一部分には同一番号を付し重複する説明は省略する。
【0033】
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態のシステムにおいては、16分岐のスターカプラ33を用いており、このスターカプラ33で16分岐された各分岐線路に入出力がそれぞれ2ポート(計4ポート)の光カプラ31−1〜31−16を介在させてある。かくして、各光カプラ31−1〜31−16の一つの入力ポートにスターカプラ33で分岐された分岐線路がそれぞれ接続され、且つ各出力ポートに2本づつ、合計32本の分岐線路が接続してある。
【0034】
各光カプラ31−1〜31−16の残りの各入力ポートには診断光用線路32−1〜32−16がそれぞれ接続してある。
【0035】
本形態によれば、信号光は上りが1310nm、下りが1550nmの波長の光として伝送を行う一方、例えば1600nm等の波長の診断光が同時に伝送される。即ち、光カプラ31−1〜31−16は信号光を分岐するとともに診断光を結合する役割を果たすため、分岐線路には診断光導入用の波長フィルタ素子を追加挿入する必要がない。従って、経済的であるとともに、診断を行っていない常時は通信品質への影響が殆どない。また、診断光については選択した2つの分岐線路に限定して送出されるため、従来のように32分岐全ての分岐線路に同時に送出される場合と比較して感度良く診断することができる。ここで、2本の分岐線路が同一長である場合等、特別の場合は、選択された分岐線路の何れの故障であるかを特定することができない場合が発生する。ただ、確率的な可能性を考慮すれば実用上問題はない。なお、診断光用線路には上り信号光も伝送されるが、信号光の波長を遮断する信号光波長遮断フィルタ36(例えば1600nm以上のみ透過するフィルタ)により容易に除去できる。
【0036】
<第2の実施の形態>
図2は本発明の第2の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態のシステムは、図1に示す第1の実施の形態における各診断光用線路32−1〜32−16を多芯一括コネクタ34を介してOTDR2側と接続するようにしたものである。さらに詳言すると、診断光用線路32−1〜32−16は、多芯一括コネクタ34を介し、MEMSスイッチなどで形成した1×16の光チャンネルセレクタ35に接続してあり、さらに光チャンネルセレクタ35がOTDR2に接続してある。この場合のOTDR2は、出力波長が特定の波長に固定される固定式のものであってもかまわない。ちなみに、第1の実施の形態で用いた波長可変式のOTDR2は高価であるため、波長固定式のOTDR2を用いた場合には当該システムのコストを低減し得る。
【0037】
本形態によれば、信号光は上りが1310nm、下りが1550nmの波長の光として伝送を行う一方、OTDR2から光チャンネルセレクタ35を介して例えば1600nm等、信号光とは異なる波長の診断光を、前記光チャンネルセレクタ35で選択した各診断光用線路32−1〜32−16に順次伝送し、光カプラ31−1〜31−16を介して2本一組の各分岐線路に伝送する。かくして、光信号の伝送に支障を与えることなく光通信を行いながら32分岐の各分岐線路の障害点を順次検出することができる。
【0038】
ここで、スターカプラ33は通常、電柱近傍のクロージャ内に配設してある。したがって、本形態の場合はOTDR2を、対象とするスターカプラ33が配設してある電柱の位置まで携帯し、その位置で多芯一括コネクタ34の電柱側と光チャンネルセレクタ35側とを接続することにより診断光用線路32−1〜32−16を介して診断光を検査対象である各分岐線路に伝送する。
【0039】
<第3の実施の形態>
図3は本発明の第3の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態に係るシステムは、図2に示す第2の実施の形態における光チャンネルセレクタ35の代わりに光スイッチ45を設けたものである。この光スイッチ45は、スターカプラ33の近傍、すなわち例えばスターカプラ33が配設してある電柱近傍のクロージャ内に配設してある。したがって、診断光用線路32−1〜32−16は、前記第2の実施の形態のように多芯一括コネクタ34を介することなく直接光スイッチ45に接続してある。一方、光スイッチ45には、OTDR2から送出し、波長分離フィルタ6で光ファイバ1に合波され、さらに波長分離フィルタ13で光ファイバ1から分離した診断光が入力される。その診断光は、診断光用線路32−1〜32−16のうち、光スイッチ45で選択された1本に伝送され、光カプラ31−1〜31−16を経由して診断対象である2本分岐線路に送られる。そこでフレネル反射又はレーリー散乱を生じた診断光は、同じ経路を遡ってOTDR2に返ってくる。なお、前記診断光において、光カプラ31−1〜31−16から光スターカプラ33へ伝わる成分は、波長分離フィルタ13において遮断される。また、光カプラ31−1〜31−16から光スイッチ45に入ってくる上り信号光も波長分離フィルタ13で遮断されるため、光スターカプラ33を通ってくる本来の信号光と混信することはない。本形態の場合のOTDR2も、前記第2の実施の形態と同様に、波長固定式のものでも良い。
【0040】
光スイッチ45は駆動用の電源が必要になるが、これは例えば太陽電池で好適に形成することができる。ここで、光スイッチ45の切り替え制御信号はOTDR2側から波長が1600nm以上で診断光の波長と異なる光信号を送信し、光スイッチ側には波長分離回路と受信器を設けることにより受信することが可能である。更には、診断光の光源を利用し、その光パルスパターンや変調周波数で制御信号を形成することもできる。
【0041】
また同様に、スイッチ駆動用電力を光線路を介して供給することも可能である。通信用の光ファイバでも数10mW以上の光パワーが送れるので、太陽電池で受光し、必要に応じて蓄電池に蓄えてスイッチの駆動に適用すれば良い。
【0042】
かかる本形態によれば、光スイッチ45が診断光用線路32−1〜32−16の何れか一つを順次選択し、その診断光用線路32−1〜32−16及び光カプラ31−1〜31−16を通じて各分岐線路に診断光を伝送する。この結果、遠隔のOTDR2で各分岐線路の故障診断を行うことができる。
【0043】
このように本形態によれば、現場には光スイッチ45を配設しておくだけで現場に出向くことなく遠隔で所定の故障診断を行うことができる。
【0044】
<第4の実施の形態>
図3に示す第3の実施の形態では光スイッチ45を用いたためにその駆動用の電源が必要になるが、光スイッチ45をなくしてパッシブな要素だけで構成することもできる。光スイッチ45を用いることなく、同等の機能をパッシブな要素で実現したのが本実施の形態である。
【0045】
図4は本発明の第4の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態に係るシステムは、図3に示すシステムの光スイッチ45の機能をアレイ導波路回折格子(AWG)51で実現したものである。すなわち、アレイ導波路回折格子(AWG)51は波長分離フィルタ13で光ファイバ1から分離した診断光を、波長がそれぞれ1602nm、1604nm、1606nm、1608nm、1610nm、1612nm、1614nm、1616nm、1618nm、1620nm、1622nm、1624nm、1626nm、1628nm、1630nm、1632nmの診断光に分離して各診断光用線路32−1〜32−16にそれぞれ入力するようになっている。
【0046】
かかる本形態によれば図4に示す第4の実施の形態と同様の故障診断をアレイ導波路回折格子(AWG)51というパッシブな要素で構成することができる。なお、本形態におけるOTDR2は出力波長が可変のものでなければならない。
【0047】
<第5の実施の形態>
図5は本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態に係るシステムは、図4に示す第4の実施の形態に係るアレイ導波路回折格子(AWG)51の機能を15個の波長分離フィルタ62−1〜62−15で代替したものである。ここで、各波長分離フィルタ62−1〜62−15はその分離波長が漸増するように構成してあり、それぞれを順次直列に接続してある。かくして、各波長分離フィルタ62−1〜62−15にそれぞれ固有の波長以下の診断光は透過する一方、それぞれ特定の波長以上の診断光は反射する(即ち別の線路に分離する)ように構成してある。この結果、診断光は特定の波長毎に分岐されて診断光用線路32−1〜32−16に伝送される。ちなみに、本形態における波長分離フィルタ62−1〜62−15の各反射波長は、順に1602nm以上、1604nm以上、1606nm以上、1608nm以上、1610nm以上、1612nm以上、1614nm以上、1616nm以上、1618nm以上、1620nm以上、1622nm以上、1624nm以上、1626nm以上、1628nm以上、1630nm以上である。
【0048】
かかる本形態によれば図4に示す第4の実施の形態のアレイ導波路回折格子(AWG)51の機能を波長分離フィルタ62−1〜62−15で代替することができる。
【0049】
<第6の実施の形態>
図6は本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、各分岐線路11−1〜11−8には入出力がそれぞれ2ポート(計4ポート)の波長分離フィルタ12−1〜12−8を介在させてある。ここで、各波長分離フィルタ12−1〜12−8はその分離波長が漸増するように構成してあり、それぞれを順次直列に接続してある。かくして、各波長分離フィルタ12−1〜12−8にそれぞれ固有の波長以下の信号光は全ての分岐線路11−1〜11−8で透過する一方、それぞれ特定の波長以上の診断光は各分岐線路11−1〜11−8毎に反射される。同時に、反射波長未満の診断光は透過して次に進む。このようにして、各分岐線路11−1〜11−8にはそれぞれ異なる波長域の診断光が導入される。
【0050】
この結果、各分岐線路11−1〜11−8には、各波長分離フィルタ12−1〜12−8の分離波長のいずれにも達しない波長の共通の信号光と、各分岐線路11−1〜11−8で波長が異なる診断光が伝送される。ちなみに、本形態における波長分離フィルタ12−1〜12−8の各反射波長は、順に1600nm以上、1610nm以上、1620nm以上、1630nm以上、1640nm以上、1650nm以上、1660nm以上、1670nm以上である。また、信号光の波長は、上りが1310nm、下りが1550nmである。
【0051】
一方、光ファイバ1にも波長分離フィルタ13を介在させてある。この波長分離フィルタ13はOTDR2からの診断光を反射する。本形態では1600nm以上の光を反射(分波)するようになっており、1600nm〜1680nmの光を波長分離フィルタ12−1〜12−8に導入するようになっている。
【0052】
本形態によれば、信号光は上りが1310nm、下りが1550nmの波長の光として伝送を行う一方、OTDR2から順次波長を変えて1600nm〜1680nmの光パルスを送ることで各分岐線路11−1〜11−8の障害点の検出を行うことができる。すなわち、1600nm以上で1610nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−2を透過して波長分離フィルタ12−1で反射される。この結果、分岐線路11−1に導入され、その後反射して戻った光によりこの分岐線路11−1における故障点等を検出する。
【0053】
同様に、1610nm以上で1620nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−3を透過して波長分離フィルタ12−2で、1620nm以上で1630nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−4を透過して波長分離フィルタ12−3で、1630nm以上で1640nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−5を透過して波長分離フィルタ12−4で、1640nm以上で1650nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−6を透過して波長分離フィルタ12−5で、1650nm以上で1660nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8〜12−7を透過して波長分離フィルタ12−6で、1660nm以上で1670nm未満の診断光は波長分離フィルタ12−8を透過して波長分離フィルタ12−7で、1670以上の診断光は波長分離フィルタ12−8で、それぞれ反射されて各分岐線路11−2〜11−8に導入され、同様に各分岐線路11−2〜11−8の故障点等の検出を行う。
【0054】
<第7の実施の形態>
図7は本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。同図に示すように、本形態は、図6に示す実施の形態における分岐線路11−1〜11−8のグループを4グループとしたものである。このように4グループとしたので、各グループA、B、C、Dに所定の波長域の診断信号を分配するための波長分離フィルタ21,22,23を設けてある。ここで、波長分離フィルタ21〜23は反射波長が漸減するように順次直列に接続してある。本形態では、各波長分離フィルタ21〜23の反射波長を1648nm以上、1632nm以上、1616nm以上としてある。
【0055】
かかる本形態によれば、1648nm以上の診断信号が波長分離フィルタ21で反射されてグループAに導入され、以下同様に1632nm以上の診断信号が波長分離フィルタ22で反射されてグループBに、 1616nm以上の診断信号が波長分離フィルタ23で反射されてグループCに導入されるとともに、1616nm未満の診断信号が波長分離フィルタ21〜23を透過してグループDに導入される。各グループA〜Dではこれらにそれぞれ導入した診断信号により、第6の実施の形態と同様に所定の故障点検出等が行われる。
【0056】
このように、波長分離フィルタ21〜23を設けることにより多数の分岐線路を任意の数のグループに分割した障害点検出システムを構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は受動分岐型光ファイバ線路を介して情報の授受を行う、例えばFTTHシステム等の光通信産業に利用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態に係る受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムを概念的に示す説明図である。
【図8】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第1の方法を示す説明図である。
【図9】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第2の方法を示す説明図である。
【図10】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第3の方法を示す説明図である。
【図11】従来技術に係る光ファイバの断線や損出増加を検出する第4の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 光ファイバ
2 OTDR
3 スターカプラ
11−1〜11−8 分岐線路
12−1〜12−8 波長分離フィルタ
31−1〜31−16 光カプラ
32−1〜32−16 診断光用線路
33 スターカプラ
34 多芯一括コネクタ
35 光チャンネルセレクタ
45 光スイッチ
51 アレイ導波路回折格子(AWG)
62−1〜62−16 波長分離フィルタ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の光ファイバをスターカプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路に信号光とは波長が異なる診断光を送ることで診断光に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにした受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
入出力がそれぞれ2ポートの複数の光カプラの出力ポートに各分岐線路をそれぞれ接続する一方、各光カプラの一つの入力ポートには前記スターカプラから分岐した各分岐線路を介して信号光を入力し、さらに残りの入力ポートには診断光用線路を介して診断光を入力できる構成をとることにより、1つの診断光が同時に伝送される分岐線路を2本に限定されるようにすることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項2】
請求項1に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記各診断光用線路を順次選択して各診断光用線路に診断光を順次入力するスイッチ手段を有することを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項3】
請求項2に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段は、多芯一括コネクタを介して前記診断光用線路に接続したものであることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項4】
請求項2に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段は、各分岐線路の近傍位置に配設した光スイッチであり、診断光は親局側など遠隔から送られることを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項5】
請求項4に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記光スイッチの切り替え駆動に必要な電力および切り替え制御信号は、遠隔にある診断光パルス用光源と同じ位置から同一の光線路を経由して供給することを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項6】
請求項2に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記スイッチ手段の代わりにアレイ導波路回折格子を用いるとともに、このアレイ導波路回折格子で各診断光用線路に特定の波長の診断光を伝送するようにしたことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項7】
請求項6に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記アレイ導波路回折格子の代わりに、それぞれの反射波長を違えて直列に接続した複数の波長分離フィルタであって、信号光はすべてを透過させる波長分離フィルタを用い、各波長分離フィルタを介して各診断光用線路に特定の波長の診断光を伝送するようにしたことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項8】
1本の光ファイバをスターカプラにより複数に分岐した複数の分岐線路を有し、一つの親局に対し前記各分岐線路を介して複数の加入者局を接続するファイバ網である受動分岐型光ファイバ線路の前記親局側から順次波長を変えて信号光とは波長が異なる診断光を送ることで各診断光に基づく各分岐線路における後方散乱光の戻り時間と強度特性を測定することにより各分岐線路の障害点を検出するようにした受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
入出力ポートがそれぞれ2ポートで、しかも反射波長がそれぞれ異なる波長分離フィルタを前記各分岐線路にそれぞれ介在させる一方、前記各波長分離フィルタを順次直列に接続し、各波長分離フィルタに固有の特定波長以上の診断光を各分岐線路に反射するとともに、前記特定波長未満の診断光は透過して次の波長分離フィルタに進むようにすることにより各分岐線路にそれぞれ異なる波長域の診断光を導入する一方、信号光は全ての分岐線路で前記各波長分離フィルタを透過するように構成したことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。
【請求項9】
請求項8に記載する受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システムにおいて、
前記分岐線路は相互に異なる所定の波長域の診断光が与えられている複数のグループからなり、各グループにそれぞれ複数の分岐線路が含まれるように構成したことを特徴とする受動分岐型光ファイバ線路の障害点検出システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−119079(P2006−119079A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309457(P2004−309457)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】