受電装置、送電装置、及び無線電力伝送システム
【課題】無線電力伝送において、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を充分に高めることの可能な技術を提供する。
【解決手段】受電装置は、送電装置から送電される電力を送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、を備える。受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置される。
【解決手段】受電装置は、送電装置から送電される電力を送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、を備える。受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、送電装置、及び無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染や化石燃料の枯渇に対する懸念から、環境に配慮した車両として電気自動車やハイブリッド車などの電動車両が注目されている。この種の電動車両は、例えば二次電池に蓄えた電力で走行するタイプのものが公知である。また、ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。
【0003】
送電技術として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電技術が近年注目されている。例えば、自動車に搭載されている二次電池を充電する技術として、走行路に設けられた給電部から非接触で給電を受けて充電する技術(例えば、特許文献1を参照)がある。そして、このワイヤレス送電技術としては、磁界共鳴により離間している機器へ高い伝送効率で電力を送る技術が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120357号公報
【特許文献2】特開2008−301918号公報
【特許文献3】特開2006−42519号公報
【特許文献4】特開2009−005475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなコイル間の電磁誘導による無線電力伝送(ワイヤレス送電)方式では、送電側と受電側の接点の露出が不要となる利点があるものの、送電側及び受電側のコイル間隔(送電距離)が大きくなると電力の伝送効率(以下、「送電効率」ともいう)が極端に低下するのが現状である。
【0006】
電磁誘導方式の無線電力伝送(ワイヤレス送電)システムの他、共振周波数を合わせたコイル間(送電側回路〜受電側回路間)における磁界共鳴(磁気共鳴、磁場共鳴、磁界共振ともいう)を利用した磁界共鳴方式のワイヤレス送電システムが開発されている。磁界共鳴方式によるワイヤレス送電では、電磁誘導方式に比べて送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させた場合の電力の伝送効率(以下、「送電効率」という。)の低下が小さく、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させる距離、すなわち送電距離を上記電磁誘導方式に比べて大きくしても送電効率を維持できるという特徴がある。
【0007】
更に、近年では、電磁誘導方式および磁界共鳴方式を組み合わせた方式を採用した無線電力伝送システムも提案されている。この種の無線電力伝送システムは、送電装置側に、電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、電磁誘導によって送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを備え、受電装置側に、送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により送電側共鳴コイルからの電力を受電する受電側共鳴コイルと、受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを備えるシステム構成を挙げることができる。以下、本明細書においては、送電側電磁誘導コイル及び受電側電磁誘導コイルを「電磁誘導コイル」と総称し、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを「磁界共鳴コイル」と総称する場合がある。
【0008】
上記4コイル構成の無線電力伝送システムでは、一次コイルが送電側共鳴コイルと磁気的に結合され、二次コイルが受電側共鳴コイルと磁気的に結合される。ところで、電力の伝送効率(以下、「送電効率」ともいう)を可及的に高めるには、磁界共鳴を利用して送受電を行う送電側共鳴コイルと受電側共鳴コイルとの間の距離であるコイル間距離等の各種条件に応じて、受電側電磁誘導コイル及び受電側共鳴コイル間の結合係数、或いは、送電側電磁誘導コイル及び送電側共鳴コイル間の結合係数を適切な値に調整する必要がある。
【0009】
しかしながら、コイルケースの収容スペースによる制約からも、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を最適値まで充分に高めることは難しいのが実情である。特に、コイル抵抗低減のため、直径のより大きなコイルを採用することも多く、その場合には、上記結合係数を調整する自由度がより狭いものとなってしまう。
【0010】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされてものであって、その目的は、無線電力伝送において、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を良好に高めることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、磁界共鳴によって送電又は受電を行う磁界共鳴コイルを渦巻き状に巻回すと共に、その磁界共鳴コイルと磁気的に結合される電磁誘導コイルを磁界共鳴コイルに編み込むように配置することで、相互の結合を高めるようにした。
【0012】
より詳細には、本発明は、送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、前記送電装置から送電される電力を、前記送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、を備え、前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする受電装置である。
【0013】
上記のように構成することで、受電側電磁誘導コイルは、受電側共鳴コイルの渦巻き径方向、或いは、受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向の少なくとも何れかにおいて受電側共鳴コイルと相対することになる。これにより、受電側電磁誘導コイルと受電側共鳴コイルの間の結合を強めることができる。よって、受電側電磁誘導コイル及び受電側共鳴コイル間の結合係数を所望の値に一致させ、或いは可及的に近づけることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る受電装置において、前記受電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されていても良い。この場合、前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されても良い。
【0015】
更に、前記受電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されていても良い。この場合、前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されていても良い。
【0016】
また、本発明は、受電装置に電力を無線で送電する送信装置において、電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電され、前記受電装置側に設けられた受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルと、を備え、前記送電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記送電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする送電装置である。
【0017】
上記のように構成することで、送電側電磁誘導コイルは、送電側共鳴コイルの渦巻き径方向、或いは、送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向の少なくとも何れかにおいて送電側共鳴コイルと相対することになる。これにより、送電側電磁誘導コイルと送電側共鳴コイルの間の結合を強めることができる。よって、送電側電磁誘導コイル及び送電側共鳴コイル間の結合係数を所望の値に一致させ、或いは可及的に近づけることが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る送電装置において、前記送電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されていても良い。この場合、前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されても良い。
【0019】
更に、前記送電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されていても良い。この場合、前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されていても良い。
【0020】
また、本発明は、送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、電源から給電される送電側電磁誘導コイル、及び電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを有し、前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により該送電側共鳴コイルから受電する受電側共鳴コイル、及び前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを有し、前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする無線電力伝送システムである。
【0021】
本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無線電力伝送において、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を良好に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図である。
【図2】地面に埋め込まれた送電装置から受電装置へ送電する様子を示す図である。
【図3】第一実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図4】第一実施形態に係る送電用コイルケースに収容されている送電コイルの平面的な配置状態を説明するための説明図である。
【図5】第一実施形態に係る受電用コイルケースに収容されている受電コイルの平面的な配置状態を説明するための説明図である。
【図6】第一実施形態の第一変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図7】第一実施形態の第二変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図8】第一実施形態の第三変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図9】第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図10】第三実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図11】実施形態に係る各コイルパターンと送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図12】第四コイルパターンを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る無線電力伝送システムの実施の形態について、図面に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本実施形態に係る無線電力伝送システムは、車載バッテリに充電される電力を車両側にワイヤレス(無線)で送電するためのワイヤレス送電システムであり、送電装置は車両が停止する位置の地面側に、受電装置は車両側に設けられる。但し、本発明に係る無線電力伝送システムは車両用途に限定されず、家電、情報機器、玩具等、電力を用いる様々な機器に適用することが可能である。
【0025】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システム1の構成を示す図である。無線電力伝送システム1は、大きく分けて送電装置10および受電装置20を備える。受電装置20は、例えば電動車両(以下、単に「車両」ともいう)30の車体下部に設けられ、送電装置10は、車両30が停止する位置(例えば、駐車スペース)の地面側に設けられている。
【0026】
送電装置10は、アンテナ11、データ送受信ユニット12、コンバータ13、送電アンプ14、送電コイル15、共振制御ユニット16、送電コントローラ17、および発振回路18を備える。また、受電装置20は、受電コントローラ27、受電コイル25、共振制御ユニット26、整流回路28、DC/DCコンバータ29、アンテナ21およびデータ送受信ユニット22を備える。
【0027】
まず、送電装置10について説明する。送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。
【0028】
送電コントローラ17は、発振回路18、共振制御ユニット16、コンバータ13を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット12は、アンテナ11に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、コンバータ13は、外部電源から供給された交流の電力を直流電流へ変換して送電アンプ14へ送る装置である。なお、コンバータ13による出力電圧は、送電コントローラ17によって制御される。また、送電
アンプ14は、コンバータ13から送られた電力を、発振回路18から与えられた周波数で、送電コイル15へ入力する装置である。ここで、発振回路18によって与えられる周波数は、送電コントローラ17によって制御される。
【0029】
共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15に設けられた可変容量コンデンサC1の容量を制御する等の方法で、送電装置10の共振周波数を、発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。また、発振回路18は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15へ発振される周波数を目標値となるように制御する。
【0030】
一方、受電装置20における共振制御ユニット26は、前述の共振制御ユニット16と同様に、受電コントローラ27による指示に従って受電装置20の共振周波数を発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。その結果、送電装置10の共振周波数と受電装置20の共振周波数とは一致するように制御され、磁界共鳴による無線電力伝送が可能となる。ここで、受電コイル25は、車両底面の、地面に設置された送電装置10と対向する位置に設けられることが好ましい。
【0031】
また、受電装置20は、車載の充放電制御装置31を介して、バッテリ33と接続されている。なお、充放電制御装置31は、マイクロコンピュータ(マイコン)を有しており、アクセル操作に応じてバッテリ33から車両駆動用の電力を放電させ、また、ブレーキが操作された場合には、車輪を駆動し車両を前進あるいは後退させるためのモータ32によって発電された電力がバッテリ33に充電されるように制御する。また、バッテリ33は再充電可能な直流電源であり、例えばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池等で実現でき、また、大容量のキャパシタ等も適宜採用することができる。
【0032】
受電コントローラ27は、共振制御ユニット26、整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット22は、アンテナ21に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、受電コイル25には、送電コイル15との間の磁界共鳴によって電流が流れる。受電コントローラ27は、受電コイル25と送電コイル15との間で磁界共鳴を発生させるために、受電コイル25の共振周波数が送電装置10側と一致するように共振制御ユニット26を制御する。
【0033】
図示のように、送電コイル15は、一次コイル15a(送電側電磁誘導コイル)と送電側共鳴コイル15bから構成されている。送電側共鳴コイル15bの両端には可変容量コンデンサC1が接続されている。また、一次コイル15aは送電側共鳴コイル15bの内側に配置されている。また、受電コイル25は、二次コイル25a(受電側電磁誘導コイル)と受電側共鳴コイル25bから構成されている。受電側共鳴コイル25bの両端には可変容量コンデンサC2が接続されている。また、二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bの内側に配置されている。
【0034】
一次コイル15aは、送電アンプ14から直接電力が与えられるコイルである。送電アンプ14によって一次コイル15aに電流が流されると、一次コイル15aに流れる磁気変動により送電側共鳴コイル15bに電磁誘導が発生し、送電側共鳴コイル15bに高周波電流が流れるようになる。その際、共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って可変容量コンデンサC1の容量を制御し、送電側共鳴コイル15bの共振周波数を外部電源からの供給電力に対して発振回路18が付与する発振周波数と一致するように制御する。更に、共振制御ユニット26は、受電コントローラ27による指示に従って可変容量コンデンサC2の容量を制御し、受電側共鳴コイル25bの共振周波数が送電側共鳴コイル15bの共振周波数と一致するように制御する。その結果、送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間で磁界共鳴が発生して両者間のインピーダ
ンスが小さくなり、受電側共鳴コイル25bに大電流が効率良く流れるようになる。
【0035】
上記のように磁界共鳴によって受電側共鳴コイル25bに電流が流れると、受電側共鳴コイル25bに流れる電流によって生じる磁気変動によって二次コイル25aに電磁誘導が発生し、この二次コイル25aに電流が流れることとなる。二次コイル25aは、受電側共鳴コイル25bにより受電された電力を電磁誘導により取り出して整流回路28へ出力する。ここで、受電コイル25とバッテリ33との間には、整流回路28およびDC/DCコンバータ29が介在している。整流回路28は、二次コイル25aによって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ29は、受電コントローラ27からの制御信号に基づいて、整流回路28によって整流された電力をバッテリ33の電圧レベルに変換してバッテリ33へ出力する。また、受電コントローラ27は、例えば車載バッテリ33側によって取り出される電力を一定に保つように整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御することができる。
【0036】
上記のように構成される本実施形態に係る無線電力伝送システム1において、送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両30が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。送電コイル15と受電コイル25とがこのような所定の対向位置関係になると、例えば車室内に設けられた通信開始ボタン(図示省略)がユーザによって押されることをトリガーとして、送電コントローラ17と受電コントローラ27が各送受信ユニット12,22を介して互いに通信を開始する。そして、上記した如く送電装置10及び受電装置20との間に発生する磁界共鳴を利用して無線で送電装置10から受電装置20へと電力を伝送し、受電装置20が受電した電力をバッテリ33等に供給することができるようになっている。
【0037】
無線電力伝送システム1では、送電アンプ14から電力が直接給電されるコイルおよび受電側の負荷抵抗に直接接続されたコイル(ここでは、一次コイル15a及び二次コイル25a)と、磁界共鳴による電力伝送に用いられるコイル(ここでは、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25b)を物理的に接続せず、電磁結合によって接続することで、送電アンプ14や負荷抵抗等の構成によって磁界共鳴に用いるコイルの共振周波数等に悪影響が及ぶことを抑制している。
【0038】
次に、送電コイル15及び受電コイル25の詳細構成について説明する。図2は、地面に埋め込まれた送電装置から受電装置へ送電する様子を示す図である。図3は、第一実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。図2、図3に示されるように、送信装置10側においては送電コイル15(一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15b)が送電用コイルケース150に収容されている。一方、受信装置20側においては受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)が受電用コイルケース250に収容されている。送電コイル15及び受電コイル25は、いずれも導電性線材のコイル導線によって形成されており、その外表面は絶縁加工(絶縁皮膜)されており、コイル導線の外表面同士が接触したとしても導電経路の乱れ、ショート等の不具合が防止されるような構造となっている。また、送電コイル15及び受電コイル25の各コイルケース内への支持固定は、例えば樹脂等の絶縁性材料を用いて形成される支持固定部材(図示省略)等によって行われる。
【0039】
送信装置10から受信装置20への磁界共鳴を用いたワイヤレス送電が行われる際、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は、図2及び図3に示されるように対向配置された状態となる。図示の例では、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は直方体に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば円柱形状等の他の形状を適宜採用しても構わない。また、各コイルケース150,250の
材質としては例えば樹脂を採用することができる。
【0040】
送電用コイルケース150は、天板151、底板152、周壁153から構成されている。同様に、受信用コイルケース250は、天板251、底板252、周壁253から構成されている。ここで、天板151,251は、ワイヤレス送電時において互いに対向(対峙)する面であり、この面を「正面」として定義する。底板152,252は、それぞれ天板151、251と相対する面であり、この面を「背面」として定義する。
【0041】
送電用コイルケース150において、底板152の内側には、この底板152に沿うようにしてシールド部材(以下、「第一シールド部材」という)155が設置されている。第一シールド部材155は、非磁性かつ導電性を有している。第一シールド部材155は、例えばアルミニウム金属によって構成されているが、これに限られない。また、第一シールド部材155の内側、即ち第一シールド部材155の底板152側には、磁性体コア部材154が配置されている。
【0042】
次に、受電用コイルケース250においても、導電用コイルケース150と同様なシールド部材(以下、「第二シールド部材」という)255、磁性体コア部材254が設けられている。即ち、受電用コイルケース250の底板252の内側にはこれに沿うように第二シールド部材255が設置されており、さらに第二シールド部材255の底板252側には、磁性体コア部材254が配置されている。第二シールド部材253は、第一シールド部材155と同様、非磁性かつ導電性を有しており、例えばアルミニウム金属によって構成されている。
【0043】
各磁性体コア部材154,254は、例えばフェライトに代表されるような透磁率が大の強磁性体よりなり、磁束の高密度化機能やガイド機能を発揮する部材である。また、各シールド部材155,255は、導電体であってかつ非磁性体からなる部材であり、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されている。各シールド部材155,255は、送信装置10から受信装置20へ電力をワイヤレス送電する際に、外部に漏洩しようとする電磁波、即ちワイヤレス送電に寄与しなかった電磁波を、渦電流を発生させることで熱エネルギーに変換することで、送電に寄与しなかった電磁波の外部への漏洩を抑制する。
【0044】
送電用コイルケース150には、一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15bが収容されており、これらは共通のコイル周回軸AXLを中心に巻回されている。送電側共鳴コイル15bは、コイル周回軸AXLを中心に複層渦巻き状に巻回されており、その巻数(周回数、ターン数)は5ターンに設定されている。この巻数は、特定の数に限定されない。送電側共鳴コイル15bを形成するコイル導線の各ターンに相当する部分を、内側から(コイル周回軸AXLに近い順から)第1周回部#1〜第5周回部#5と呼ぶことにする。図3に示すように、送電側共鳴コイル15bは、送電用コイルケース150内において二つの周回面に跨るように積層されている。ここで、底板152に近い方の周回面を第一周回面ST1と称し、遠い方の周回面を第二周回面ST2と称する。第一周回面ST1及び第二周回面ST2の双方は、送電側共鳴コイル15bによって形成される渦巻き面と言える。
【0045】
また、第一周回面ST1及び第二周回面ST2の法線方向を送電側共鳴コイル15bの「積層方向Dbu」と定義する。この構成では、送電側共鳴コイル15bの積層方向がコイル周回軸AXLと平行となり、かつ、送電側共鳴コイル15bの「渦巻き径方向Dsr」に直交している。「渦巻き径方向」とは、送電側共鳴コイル15bによって形成される渦巻きの径方向を指す。
【0046】
図4は、送電用コイルケース150に収容されている送電コイル15の平面的な配置状態を説明するための説明図であり、送電用コイルケース150を受電装置20側から透視したときの送電側共鳴コイル15b及び一次コイル15aの平面的な配置状態を模式的に表した図である。図4に示す送電側共鳴コイル15bにおいて、第一周回面ST1を周回する部分を鎖線で示し、第二周回面ST2を周回する部分を実線にて示す。また、図中の破線は、一次コイル15aを表す。
【0047】
送電側共鳴コイル15bは、その第2周回部#2及び第4周回部#4(図4中、鎖線で図示)が第一周回面ST1を周回するように、また、第1周回部#1、第3周回部#3、第5周回部#5(図4中、実線で図示)が第二周回面ST2を周回するように巻回されている。送電側共鳴コイル15bは、その積層方向Dbuに互いに隣接する周回面内、即ち、第一周回面ST1及び第二周回面ST2を周回する部分同士が渦巻き径方向Dsrに沿って千鳥状に配置されている。図3に示す例では、第二周回面ST2を周回する第1周回部#1、第3周回部#3、第5周回部#5と、第一周回面ST1を周回する第2周回部#2、第4周回部#4とが、渦巻き径方向Dsrに沿って互い違いに配置される。この千鳥配置によれば、送電側共鳴コイル15bのうち、積層方向Dbuに互いに隣接する周回面(第一周回面ST1及び第二周回面ST2)を周回するコイル導線部分同士が、積層方向Dbu(上下方向)に重ならないように配置されている。
【0048】
一次コイル15aは、第一周回面ST1に配置され、かつ、送電側共鳴コイル15bにおける第1周回部#1よりも更に内側の部分を周回している。図3及び図4においては、一次コイル15aにおける巻数(周回数、ターン数)が1ターンに設定されているが、これに限定されるものではなく、巻数を複数ターンとしても良い。一次コイル15aは、送電用コイルケース150の底板152に設けられたコネクタ156と接続されている。コネクタ156は、配線ケーブルを介して送電アンプ14と接続されている。則ち、一次コイル15aと送電アンプ14がコネクタ156を介して接続されている。なお、コネクタ156を用いずに、直接引き出したコイル用導線を送電アンプ14と接続しても良い。
【0049】
送電側共鳴コイル15bを千鳥状に配置する際のコイル導線の巻線順序については、第一周回面ST1を周回するターンを全て巻いてから第二周回面ST2を周回するターンを巻くようにしても良いし、第一積層面、第二積層面、第一積層面、・・・の如く第一周回面ST1を周回するターンと第二周回面ST2を周回するターンとを交互に巻くようにしても良い。
【0050】
一方、受電用コイルケース250には、二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25bが収容されており、これらは共通のコイル周回軸AXL’を中心に巻回されている。受電側共鳴コイル25bは、コイル周回軸AXL’を中心に渦巻き状に巻回されており、その巻数(周回数、ターン数)は5ターンに設定されている。この巻数は、特定の数に限定されない。本明細書では、受電側共鳴コイル25bにおいて、各ターンに該当する部分を内側から(コイル周回軸AXL’に近い順から)第1周回部#1’〜第5周回部#5’と呼ぶ。図3に示すように、受電側共鳴コイル25bは、受電用コイルケース250内において二つの周回面に跨るように積層されている。ここで、底板252に近い方の周回面を第一周回面ST1’と称し、遠い方の周回面を第二周回面ST2’と称する。また、第一周回面ST1及び第二周回面ST2は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻き面と言える。
【0051】
第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’の各々は、受電用コイルケース250の底板252に平行となるように設定しているが、これに限定されるものではない。以下、第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’の法線方向を受電側共鳴コイル25bの「積層方向Dbu’」と呼ぶ。この構成では、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’はコ
イル周回軸AXL’と平行となり、かつ、受電側共鳴コイル25bの「渦巻き径方向Dsr’」に直交している。「渦巻き径方向Dsr’」は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻きの径方向を指す。
【0052】
図5は、受電用コイルケース250に収容されている受電コイル25の平面的な配置状態を説明するための説明図であり、受電用コイルケース250を送電装置10側から送電用コイルケース150を透視したときの受電側共鳴コイル25b及び二次コイル25aの平面的な配置状態を模式的に表した図である。図5に示す受電側共鳴コイル25bにおいて、第一周回面ST1’を周回する部分を鎖線で示し、第二周回面ST2を’周回する部分を実線にて示す。また、図中の破線は、二次コイル25aを表す。
【0053】
受電側共鳴コイル25bは、その第2周回部#2’及び第4周回部#4’(図5中、鎖線で図示)が第一周回面ST1’を周回するように、また、第1周回部#1’、第3周回部#3’、第5周回部#5’(図5中、実線で図示)が第二周回面ST2’を周回するように巻回されている。受電側共鳴コイル25bは、その積層方向Dbu’に互いに隣接する周回面内、即ち第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’を周回する部分同士が渦巻き径方向Dsr’に沿って千鳥状に配置されている。即ち、ここでは、第二周回面ST2’を周回する第1周回部#1’、第3周回部#3’、第5周回部#5’と、第一周回面ST1’を周回する第2周回部#2’、第4周回部#4’とが、渦巻き径方向Dsr’に沿って互い違いに配置される。このような千鳥配置により、受電側共鳴コイル25bのうち、積層方向Dbu’に互いに隣接する第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’を周回する部分同士が、積層方向Dbu’(上下方向)に重ならないようになっている。
【0054】
二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bにおける一の周回面と同一面内(第一周回面ST1’)に配置されている。また、この構成例では、その巻数が1ターンに設定されているが、巻数を複数ターンとしても良い。二次コイル25aは、受電用コイルケース250の底板252に設けられたコネクタ256に接続されている。コネクタ256は、配線ケーブルを介して整流回路28と接続されており、このコネクタ256を介して二次コイル25aと整流回路28が接続されている。なお、コネクタ256を用いず、直接引き出したコイル用導線を整流回路28と接続しても良い。また、受電側共鳴コイル25bを千鳥状に配置する際のコイル導線の巻線順序については、第一周回面ST1’を周回するターンを全て巻いてから第二周回面ST2’を周回するターンを巻くようにしても良いし、第一積層面、第二積層面、第一積層面、・・・の如く第一周回面ST1’を周回するターンと第二周回面ST2’を周回するターンとを交互に巻くようにしても良い。
【0055】
送電コイル15(一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b)、及び受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)は、これらを形成するコイル導線が中空構造となっている。無線電力伝送システム1では、各コイルに高周波の電流が流れるため、「表皮効果」によってコイル導線表面の電流密度が高くなる。そこで、このように各コイルを中空構造にすることで、全体の重量を増加させることなく電流密度の大きな領域を増やすことで、送電効率の向上を図るようにしている。但し、各コイルにこのような中空構造を採用しなくてもなんら問題なく、また、例えば比較的流れる電流量の多い磁界共鳴に関わる送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bのみを中空構造とするようにしても良い。
【0056】
また、送電側共鳴コイル15bにおける各周回部#1〜#5同士、或いは、受電側共鳴コイル25bにおける各周回部#1’〜#5’同士が互いに近接すると、「近接効果」に起因してコイル抵抗の増加を招く場合がある。「近接効果」とは、導体が過度に近接配置された場合に、電流の大きさ、向き、周波数等により各導体に流れる電流の密度分布が変化する現象である。
【0057】
これに対しては、上記のように送電側共鳴コイル15bを千鳥状に配置することで第1周回部#1〜第5周回部#5の各々同士の隙間を確保するようにし、近接効果によって送電側共鳴コイル15bを流れる電流抵抗が大きくなることを抑えるようにしている。同様に、受電側共鳴コイル25bを千鳥状に配置することで第1周回部#1’〜第5周回部#5’の各々同士の隙間を確保するようにし、受電側共鳴コイル25bの電流抵抗が大きくなることを抑えるようにしている。
【0058】
ここで、ワイヤレス送電時において互いに対峙する送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間の内法寸法を「コイル間距離」と称する。このコイル間距離は、送電効率を可及的に高めることの可能な、二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25b間の結合係数(以下、「受電側結合係数」という)に影響を及ぼすパラメータの一つであるが、従来では受電側結合係数をその最適値まで高めることが容易でなかった。
【0059】
そこで、本実施形態に係る無線電力伝送システム1では、二次コイル25aを、少なくとも、受電側共鳴コイル25bの一の周回面と同一面内に配置すると共にその周回面おいて隣接する受電側共鳴コイル25bのコイル導線間に挟まれて配置されるか、又は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻き面と直交する方向(積層方向Dbu’)に受電側共鳴コイル25bのコイル導線と重なる(相対する)ように配置するようにして、両コイルの結合を高めるようにした。より詳しくは、二次コイル25aを、受電側共鳴コイル25bにおける一の周回面(第一周回面ST1’)と同一面内に配置し、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面(第二周回面ST2’)を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるように配置するようにした。
【0060】
これによれば、二次コイル25aを、第1周回部#1’と積層方向Dbu’の双方に受電側共鳴コイル25bと重なるように配置させることができるので、両コイル間の磁気的結合度合いを容易に高めることができる。これにより、受電側結合係数の調整可能幅を充分に確保することができるようになり、受電側結合係数を例えばコイル間距離に応じた最適値に精度良く一致させ、あるいは、最適値に近似させることができる。
【0061】
上記までの例では、千鳥状に配置された受電側共鳴コイル25bに対して二次コイル25aを編み込むように配置することにより受電側結合係数を高めるようにしたが、同様に、千鳥状に配置された送電側共鳴コイル15bに対して一次コイル25aを編み込むように配置することで、一次コイル25aと送電側共鳴コイル15bとの間の結合係数(以下、「送電側結合係数」と称する)を高めることも可能である。
【0062】
その場合、一次コイル15aを、送電側共鳴コイル15bにおける一の周回面と同一面内(例えば第一周回面ST1)に配置し、送電側共鳴コイル15bにおける他の周回面(例えば第二周回面ST2)を周回する部分と積層方向Dbuに関して重なるように配置すると良い。このようにすることで、送電装置10における一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bにおける積層方向Dbuと渦巻き径方向Dsrの双方向に関して、送電側共鳴コイル15bを形成するコイル導線と相対するようになる。その結果、送電側結合係数を従来に比べて高めることができるため、その調整可能幅を拡大することができるのである。
【0063】
尚、本実施形態においては、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bの積層数を3層以上としても良い。その場合においても、二次コイル25a(一次コイル15a)を、受電側共鳴コイル25b(送電側共鳴コイル15b)における一の周回面と同一面内に配置し、かつ、受電側共鳴コイル25b(送電側共鳴コイル15b)における他の周回面を周回する部分とその積層方向Dbuに関して重なるように配置することで、受電
側結合係数(送電側結合係数)を良好に高めることができる。
【0064】
図6は、第一変形例に係る送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250の断面を示す図である。この図の構成例では、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bは共に2層渦巻き状に巻回されているが、千鳥配置とはされていない。本変形例では、図示のように、送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bが共に2層からなる格子状(グリッド状)に配置されている。
【0065】
そして、送電側共鳴コイル15bを構成するコイル導線の各周回部のうち、第2周回部#2及び第5周回部#5が第一周回面ST1を周回し、第1周回部#1、第3周回部#3、第4周回部#4が第二周回面ST2を周回するように配置されている。一次コイル15aは、このように格子状に形成された送電側共鳴コイル15bに編み込まれるように配置されている。また、受電側共鳴コイル25bを構成するコイル導線の各周回部のうち、第2周回部#2’及び第5周回部#5’が第一周回面ST1’を周回し、第1周回部#1’、第3周回部#3’、第4周回部#4’が第二周回面ST2’を周回するように配置されている。二次コイル25aは、このように格子状に形成された受電側共鳴コイル25bに編み込まれるように配置されている。
【0066】
図示の構成では、二次コイル25aが、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’に関しては第3周回部#3’と重なり合い、渦巻き径方向Dsr’に関しては第2周回部#2’と第5周回部#5’の双方に重なり合うように配置されるため、その受電側結合係数を充分に高めることができる。そして、送電装置10側においても、一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bの積層方向Dbuに関しては第3周回部#3と重なり合い、渦巻き径方向Dsrに関しては第2周回部#2と第5周回部#5の双方に重なり合うように配置されるため、その送電側結合係数を充分に高めることができる。
【0067】
また、図7は、第二変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの断面を示す図である。図示のように、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bは単層渦巻き状に巻回されている。本変形例においては、送電側共鳴コイル15bは、コイル周回軸AXLを中心に第一周回面ST1を5ターンするように構成されており、各ターンを内側から第1周回部#1〜第5周回部#5と呼ぶ。一方、受電側共鳴コイル25bは、コイル周回軸AXL’を中心に第一周回面ST1’を5ターンするように構成されており、各ターンを内側から第1周回部#1’〜第5周回部#5’と呼ぶ。
【0068】
ここで、一次コイル15aは送電側共鳴コイル15bが周回する第一周回面ST1内に配置されると共に、第一周回面ST1を周回する送電側共鳴コイル15bの第3周回部#3と第4周回部#4の間に挟まれるように配置されている。一方、二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bが周回する第一周回面ST1’内に配置されると共に、第一周回面ST1’を周回する送電側共鳴コイル15bの第3周回部#3’と第4周回部#4’の間に挟まれるように配置されている。
【0069】
上記のように各コイルを配置することで、一次コイル15aは、送電側共鳴コイル15bと渦巻き径方向Dsrに関して第3周回部#3と第4周回部#4’の双方に重なり合うように配置されるので、その送電側結合係数を良好に高めることができる。また、二次コイル25aは、受電側共鳴コイル25bと渦巻き径方向Dsr’に関して第3周回部#3’と第4周回部#4’の双方に重なり合うように配置されるので、その受電側結合係数を良好に高めることができる。
【0070】
また、図8は、第三変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの断面を示す図である。送電装置10側では、コイル周回軸AXLを中心として単層渦巻き状に第
一周回面ST1を巻回されている送電側共鳴コイル15bに対して、送電側共鳴コイル15bにより形成される渦巻き面(第一周回面ST1)と直交する方向(コイル周回軸AXL)に一次コイル15aを重ねて配置するようにした。具体的には、一次コイル15aを、送電側共鳴コイル15bにおける第3周回部#3の上方に配置することで双方が上下方向に重なり合う結果、送電側結合係数が良好に高められるようになっている。
【0071】
また、受電装置20側では、コイル周回軸AXL’を中心として単層渦巻き状に第一周回面ST1’を巻回されている受電側共鳴コイル25bに対して、受電側共鳴コイル25bにより形成される渦巻き面(第一周回面ST1’)と直交する方向(コイル周回軸AXL’)に二次コイル25aを重ねて配置するようにした。具体的には、二次コイル25a、受電側共鳴コイル25bにおける第3周回部#3’の下方に配置することで双方が上下方向に重なり合う結果、受電側結合係数が良好に高められるようになっている。
【0072】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。図9は、第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。本実施形態では、受電装置20における二次コイル25aの配置方法、即ち、二次コイル25aの受電側共鳴コイル25bとの相対関係だけが相違し、他の構成は図3に示した構成例と同様である。本構成例では、二次コイル25aが、千鳥配置されている受電側共鳴コイル25bの同一周回面(図示の例では、第一周回面ST1’)において渦巻き径方向Dsr’に互いに隣接するコイル導線の線材間(図示の例では、第2周回部#2’及び第4周回部#4’との間)に挟まれ、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面(図示の例では、第二周回面ST2’)を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるようにして配置される。
【0073】
この構成では、二次コイル25aが、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’に関して第3周回部#3’と相対し、渦巻き径方向Dsr’に関して第2周回部#2’及び第4周回部#4’と相対する。第一実施形態(図3)に係るコイルの配置パターン(以下、「第一コイルパターン」と称する)では、受電側共鳴コイル25bにおける二つの周回部に二次コイル25aが相対するように配置されているが、第二実施形態(図9)に係るコイルの配置パターン(以下、「第二コイルパターン」と称する)では、受電側共鳴コイル25bにおける三つの周回部に対して二次コイル25aを相対させることができる。このように、二次コイル25aが相対する受電側共鳴コイル25bの周回部の数を増やすことで、受電側結合係数をより顕著に高めることが可能となる。
【0074】
なお、図9では、受電側結合係数を高めるためのコイル配置例を説明したが、二次コイル25aを一次コイル15aに置き換え、受電側共鳴コイル25bを送電側共鳴コイル15bに置き換えるように、一次コイル15aと送電側共鳴コイル15bとの相対関係を規定することで、送電側結合係数を良好に高めることのできるコイル配置とすることができる。これによれば、一次コイル15aを、千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bの同一周回面において渦巻き径方向Dsr’に互いに隣接するコイル導線の線材間に挟み込み、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるように配置することができるので、送電側結合係数を顕著に高めることが可能となる。
【0075】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。図10は、第三実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。本実施形態では、送電装置10における一次コイル15aの配置方法、即ち、一次コイル15aの送電側共鳴コイル15bとの
相対関係だけが図9に示す構成例と相違する。本構成例では、図示のように、二次コイル15bを千鳥配置されている受電側共鳴コイル25bに対して編み込み配置することに加えて、一次コイル15aも千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bに対して編み込み配置することにした。即ち、一次コイル15aは、千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bの同一周回面(図示の例では、第一周回面ST1)において渦巻き径方向Dsrに互いに隣接するコイル導線の線材間(図示の例では、第2周回部#2及び第4周回部#4の間)に挟まれ、且つ、送電側共鳴コイル15bにおける他の周回面(図示の例では、第二周回面ST2)を周回する部分とその積層方向Dbuに関して重なるように配置される。
【0076】
この構成では、第二実施形態で説明した二次コイル25aと受電側共鳴コイル25bとの関係と同様、一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bの積層方向Dbuに関して第3周回部#3と相対し、渦巻き径方向Dsrに関して第2周回部#2及び第4周回部#4と相対する。この第三実施形態(図10)に係るコイルの配置パターン(以下、「第三コイルパターン」と称する)によれば、第二実施形態(図9)に係る第二コイルパターンに比べて送電側結合係数を高めることができるため、ワイヤレス送電時における送電効率をコイル間距離に応じた最大効率に一致させるための調整が容易となる。
【0077】
図11は、実施形態に係る各コイルパターンと送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。第一〜第三コイルパターンは前述の図3、9、10に示した各コイル構成例に対応している。図12は、第四コイルパターンを説明するための構成図である。第四コイルパターンにおいて、送電側共鳴コイル15b、受電側共鳴コイル25b、一次コイル15aの構成は図3に示す第一コイルパターンと同様である。第四コイルパターンでは、二次コイル25aが、第一周回面ST1’に配置され、かつ、受電側共鳴コイル25bにおける第1周回部#1’よりも更に内側(コイル周回軸AXL’側)の部分を周回するように配置されている。
【0078】
各シミュレーションにおいて、コイルパターン以外の条件は共通としている。例えば、一次コイル15aには、周波数2MHz、かつ1.5kWの高周波電力を供給する条件とし、コイル間距離は200mmに設定した。図11から判るように、コイルパターン毎の送電効率を比較すると、第一〜第三コイルパターンでの送電効率は何れも第四コイルパターンの送電効率を上回った。そして、第一コイルパターンよりも第二コイルパターンの方が送電効率に優れ、第二コイルパターンよりも更に第三コイルパターンの方が送電効率に優れていることが判る。
【0079】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得る。例えば、上述までの構成例では地面に送電コイルが埋められて車両側に送電する場合を例に説明したが、本発明は、壁に埋め込まれた送電装置で横方向へ送電したり、天井に埋め込まれた送電装置で下方向へ送電することも可能である。また、本発明に係る受電装置、送電装置、無線電力伝送システムは、上記実施形態に限定されるものではなく可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・無線電力伝送システム
10・・送電装置
15・・送電コイル
15a・一次コイル
15b・送電側共鳴コイル
20・・受電装置
25a・二次コイル
25b・受電側共鳴コイル
30・・電動車両
150・送電用コイルケース
250・受電用コイルケース
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置、送電装置、及び無線電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染や化石燃料の枯渇に対する懸念から、環境に配慮した車両として電気自動車やハイブリッド車などの電動車両が注目されている。この種の電動車両は、例えば二次電池に蓄えた電力で走行するタイプのものが公知である。また、ハイブリッド車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。
【0003】
送電技術として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電技術が近年注目されている。例えば、自動車に搭載されている二次電池を充電する技術として、走行路に設けられた給電部から非接触で給電を受けて充電する技術(例えば、特許文献1を参照)がある。そして、このワイヤレス送電技術としては、磁界共鳴により離間している機器へ高い伝送効率で電力を送る技術が開発されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−120357号公報
【特許文献2】特開2008−301918号公報
【特許文献3】特開2006−42519号公報
【特許文献4】特開2009−005475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなコイル間の電磁誘導による無線電力伝送(ワイヤレス送電)方式では、送電側と受電側の接点の露出が不要となる利点があるものの、送電側及び受電側のコイル間隔(送電距離)が大きくなると電力の伝送効率(以下、「送電効率」ともいう)が極端に低下するのが現状である。
【0006】
電磁誘導方式の無線電力伝送(ワイヤレス送電)システムの他、共振周波数を合わせたコイル間(送電側回路〜受電側回路間)における磁界共鳴(磁気共鳴、磁場共鳴、磁界共振ともいう)を利用した磁界共鳴方式のワイヤレス送電システムが開発されている。磁界共鳴方式によるワイヤレス送電では、電磁誘導方式に比べて送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させた場合の電力の伝送効率(以下、「送電効率」という。)の低下が小さく、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを離間させる距離、すなわち送電距離を上記電磁誘導方式に比べて大きくしても送電効率を維持できるという特徴がある。
【0007】
更に、近年では、電磁誘導方式および磁界共鳴方式を組み合わせた方式を採用した無線電力伝送システムも提案されている。この種の無線電力伝送システムは、送電装置側に、電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、電磁誘導によって送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを備え、受電装置側に、送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により送電側共鳴コイルからの電力を受電する受電側共鳴コイルと、受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを備えるシステム構成を挙げることができる。以下、本明細書においては、送電側電磁誘導コイル及び受電側電磁誘導コイルを「電磁誘導コイル」と総称し、送電側共鳴コイル及び受電側共鳴コイルを「磁界共鳴コイル」と総称する場合がある。
【0008】
上記4コイル構成の無線電力伝送システムでは、一次コイルが送電側共鳴コイルと磁気的に結合され、二次コイルが受電側共鳴コイルと磁気的に結合される。ところで、電力の伝送効率(以下、「送電効率」ともいう)を可及的に高めるには、磁界共鳴を利用して送受電を行う送電側共鳴コイルと受電側共鳴コイルとの間の距離であるコイル間距離等の各種条件に応じて、受電側電磁誘導コイル及び受電側共鳴コイル間の結合係数、或いは、送電側電磁誘導コイル及び送電側共鳴コイル間の結合係数を適切な値に調整する必要がある。
【0009】
しかしながら、コイルケースの収容スペースによる制約からも、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を最適値まで充分に高めることは難しいのが実情である。特に、コイル抵抗低減のため、直径のより大きなコイルを採用することも多く、その場合には、上記結合係数を調整する自由度がより狭いものとなってしまう。
【0010】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされてものであって、その目的は、無線電力伝送において、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を良好に高めることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、磁界共鳴によって送電又は受電を行う磁界共鳴コイルを渦巻き状に巻回すと共に、その磁界共鳴コイルと磁気的に結合される電磁誘導コイルを磁界共鳴コイルに編み込むように配置することで、相互の結合を高めるようにした。
【0012】
より詳細には、本発明は、送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、前記送電装置から送電される電力を、前記送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、を備え、前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする受電装置である。
【0013】
上記のように構成することで、受電側電磁誘導コイルは、受電側共鳴コイルの渦巻き径方向、或いは、受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向の少なくとも何れかにおいて受電側共鳴コイルと相対することになる。これにより、受電側電磁誘導コイルと受電側共鳴コイルの間の結合を強めることができる。よって、受電側電磁誘導コイル及び受電側共鳴コイル間の結合係数を所望の値に一致させ、或いは可及的に近づけることが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る受電装置において、前記受電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されていても良い。この場合、前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されても良い。
【0015】
更に、前記受電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されていても良い。この場合、前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されていても良い。
【0016】
また、本発明は、受電装置に電力を無線で送電する送信装置において、電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電され、前記受電装置側に設けられた受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルと、を備え、前記送電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記送電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする送電装置である。
【0017】
上記のように構成することで、送電側電磁誘導コイルは、送電側共鳴コイルの渦巻き径方向、或いは、送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向の少なくとも何れかにおいて送電側共鳴コイルと相対することになる。これにより、送電側電磁誘導コイルと送電側共鳴コイルの間の結合を強めることができる。よって、送電側電磁誘導コイル及び送電側共鳴コイル間の結合係数を所望の値に一致させ、或いは可及的に近づけることが可能となる。
【0018】
また、本発明に係る送電装置において、前記送電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されていても良い。この場合、前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されても良い。
【0019】
更に、前記送電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されていても良い。この場合、前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されていても良い。
【0020】
また、本発明は、送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、前記送電装置は、電源から給電される送電側電磁誘導コイル、及び電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを有し、前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により該送電側共鳴コイルから受電する受電側共鳴コイル、及び前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを有し、前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする無線電力伝送システムである。
【0021】
本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無線電力伝送において、磁気的に結合されるコイル同士の結合係数を良好に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第一実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図である。
【図2】地面に埋め込まれた送電装置から受電装置へ送電する様子を示す図である。
【図3】第一実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図4】第一実施形態に係る送電用コイルケースに収容されている送電コイルの平面的な配置状態を説明するための説明図である。
【図5】第一実施形態に係る受電用コイルケースに収容されている受電コイルの平面的な配置状態を説明するための説明図である。
【図6】第一実施形態の第一変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図7】第一実施形態の第二変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図8】第一実施形態の第三変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図9】第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図10】第三実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。
【図11】実施形態に係る各コイルパターンと送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。
【図12】第四コイルパターンを説明するための構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る無線電力伝送システムの実施の形態について、図面に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、本実施形態に係る無線電力伝送システムは、車載バッテリに充電される電力を車両側にワイヤレス(無線)で送電するためのワイヤレス送電システムであり、送電装置は車両が停止する位置の地面側に、受電装置は車両側に設けられる。但し、本発明に係る無線電力伝送システムは車両用途に限定されず、家電、情報機器、玩具等、電力を用いる様々な機器に適用することが可能である。
【0025】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システム1の構成を示す図である。無線電力伝送システム1は、大きく分けて送電装置10および受電装置20を備える。受電装置20は、例えば電動車両(以下、単に「車両」ともいう)30の車体下部に設けられ、送電装置10は、車両30が停止する位置(例えば、駐車スペース)の地面側に設けられている。
【0026】
送電装置10は、アンテナ11、データ送受信ユニット12、コンバータ13、送電アンプ14、送電コイル15、共振制御ユニット16、送電コントローラ17、および発振回路18を備える。また、受電装置20は、受電コントローラ27、受電コイル25、共振制御ユニット26、整流回路28、DC/DCコンバータ29、アンテナ21およびデータ送受信ユニット22を備える。
【0027】
まず、送電装置10について説明する。送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。
【0028】
送電コントローラ17は、発振回路18、共振制御ユニット16、コンバータ13を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット12は、アンテナ11に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、コンバータ13は、外部電源から供給された交流の電力を直流電流へ変換して送電アンプ14へ送る装置である。なお、コンバータ13による出力電圧は、送電コントローラ17によって制御される。また、送電
アンプ14は、コンバータ13から送られた電力を、発振回路18から与えられた周波数で、送電コイル15へ入力する装置である。ここで、発振回路18によって与えられる周波数は、送電コントローラ17によって制御される。
【0029】
共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15に設けられた可変容量コンデンサC1の容量を制御する等の方法で、送電装置10の共振周波数を、発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。また、発振回路18は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15へ発振される周波数を目標値となるように制御する。
【0030】
一方、受電装置20における共振制御ユニット26は、前述の共振制御ユニット16と同様に、受電コントローラ27による指示に従って受電装置20の共振周波数を発振回路18の発振周波数と一致するように制御する装置である。その結果、送電装置10の共振周波数と受電装置20の共振周波数とは一致するように制御され、磁界共鳴による無線電力伝送が可能となる。ここで、受電コイル25は、車両底面の、地面に設置された送電装置10と対向する位置に設けられることが好ましい。
【0031】
また、受電装置20は、車載の充放電制御装置31を介して、バッテリ33と接続されている。なお、充放電制御装置31は、マイクロコンピュータ(マイコン)を有しており、アクセル操作に応じてバッテリ33から車両駆動用の電力を放電させ、また、ブレーキが操作された場合には、車輪を駆動し車両を前進あるいは後退させるためのモータ32によって発電された電力がバッテリ33に充電されるように制御する。また、バッテリ33は再充電可能な直流電源であり、例えばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池等で実現でき、また、大容量のキャパシタ等も適宜採用することができる。
【0032】
受電コントローラ27は、共振制御ユニット26、整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御するコンピュータである。データ送受信ユニット22は、アンテナ21に接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、受電コイル25には、送電コイル15との間の磁界共鳴によって電流が流れる。受電コントローラ27は、受電コイル25と送電コイル15との間で磁界共鳴を発生させるために、受電コイル25の共振周波数が送電装置10側と一致するように共振制御ユニット26を制御する。
【0033】
図示のように、送電コイル15は、一次コイル15a(送電側電磁誘導コイル)と送電側共鳴コイル15bから構成されている。送電側共鳴コイル15bの両端には可変容量コンデンサC1が接続されている。また、一次コイル15aは送電側共鳴コイル15bの内側に配置されている。また、受電コイル25は、二次コイル25a(受電側電磁誘導コイル)と受電側共鳴コイル25bから構成されている。受電側共鳴コイル25bの両端には可変容量コンデンサC2が接続されている。また、二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bの内側に配置されている。
【0034】
一次コイル15aは、送電アンプ14から直接電力が与えられるコイルである。送電アンプ14によって一次コイル15aに電流が流されると、一次コイル15aに流れる磁気変動により送電側共鳴コイル15bに電磁誘導が発生し、送電側共鳴コイル15bに高周波電流が流れるようになる。その際、共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って可変容量コンデンサC1の容量を制御し、送電側共鳴コイル15bの共振周波数を外部電源からの供給電力に対して発振回路18が付与する発振周波数と一致するように制御する。更に、共振制御ユニット26は、受電コントローラ27による指示に従って可変容量コンデンサC2の容量を制御し、受電側共鳴コイル25bの共振周波数が送電側共鳴コイル15bの共振周波数と一致するように制御する。その結果、送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間で磁界共鳴が発生して両者間のインピーダ
ンスが小さくなり、受電側共鳴コイル25bに大電流が効率良く流れるようになる。
【0035】
上記のように磁界共鳴によって受電側共鳴コイル25bに電流が流れると、受電側共鳴コイル25bに流れる電流によって生じる磁気変動によって二次コイル25aに電磁誘導が発生し、この二次コイル25aに電流が流れることとなる。二次コイル25aは、受電側共鳴コイル25bにより受電された電力を電磁誘導により取り出して整流回路28へ出力する。ここで、受電コイル25とバッテリ33との間には、整流回路28およびDC/DCコンバータ29が介在している。整流回路28は、二次コイル25aによって取出された交流電力を整流する。DC/DCコンバータ29は、受電コントローラ27からの制御信号に基づいて、整流回路28によって整流された電力をバッテリ33の電圧レベルに変換してバッテリ33へ出力する。また、受電コントローラ27は、例えば車載バッテリ33側によって取り出される電力を一定に保つように整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御することができる。
【0036】
上記のように構成される本実施形態に係る無線電力伝送システム1において、送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両30が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられている。送電コイル15と受電コイル25とがこのような所定の対向位置関係になると、例えば車室内に設けられた通信開始ボタン(図示省略)がユーザによって押されることをトリガーとして、送電コントローラ17と受電コントローラ27が各送受信ユニット12,22を介して互いに通信を開始する。そして、上記した如く送電装置10及び受電装置20との間に発生する磁界共鳴を利用して無線で送電装置10から受電装置20へと電力を伝送し、受電装置20が受電した電力をバッテリ33等に供給することができるようになっている。
【0037】
無線電力伝送システム1では、送電アンプ14から電力が直接給電されるコイルおよび受電側の負荷抵抗に直接接続されたコイル(ここでは、一次コイル15a及び二次コイル25a)と、磁界共鳴による電力伝送に用いられるコイル(ここでは、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25b)を物理的に接続せず、電磁結合によって接続することで、送電アンプ14や負荷抵抗等の構成によって磁界共鳴に用いるコイルの共振周波数等に悪影響が及ぶことを抑制している。
【0038】
次に、送電コイル15及び受電コイル25の詳細構成について説明する。図2は、地面に埋め込まれた送電装置から受電装置へ送電する様子を示す図である。図3は、第一実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。図2、図3に示されるように、送信装置10側においては送電コイル15(一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15b)が送電用コイルケース150に収容されている。一方、受信装置20側においては受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)が受電用コイルケース250に収容されている。送電コイル15及び受電コイル25は、いずれも導電性線材のコイル導線によって形成されており、その外表面は絶縁加工(絶縁皮膜)されており、コイル導線の外表面同士が接触したとしても導電経路の乱れ、ショート等の不具合が防止されるような構造となっている。また、送電コイル15及び受電コイル25の各コイルケース内への支持固定は、例えば樹脂等の絶縁性材料を用いて形成される支持固定部材(図示省略)等によって行われる。
【0039】
送信装置10から受信装置20への磁界共鳴を用いたワイヤレス送電が行われる際、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は、図2及び図3に示されるように対向配置された状態となる。図示の例では、送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250は直方体に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば円柱形状等の他の形状を適宜採用しても構わない。また、各コイルケース150,250の
材質としては例えば樹脂を採用することができる。
【0040】
送電用コイルケース150は、天板151、底板152、周壁153から構成されている。同様に、受信用コイルケース250は、天板251、底板252、周壁253から構成されている。ここで、天板151,251は、ワイヤレス送電時において互いに対向(対峙)する面であり、この面を「正面」として定義する。底板152,252は、それぞれ天板151、251と相対する面であり、この面を「背面」として定義する。
【0041】
送電用コイルケース150において、底板152の内側には、この底板152に沿うようにしてシールド部材(以下、「第一シールド部材」という)155が設置されている。第一シールド部材155は、非磁性かつ導電性を有している。第一シールド部材155は、例えばアルミニウム金属によって構成されているが、これに限られない。また、第一シールド部材155の内側、即ち第一シールド部材155の底板152側には、磁性体コア部材154が配置されている。
【0042】
次に、受電用コイルケース250においても、導電用コイルケース150と同様なシールド部材(以下、「第二シールド部材」という)255、磁性体コア部材254が設けられている。即ち、受電用コイルケース250の底板252の内側にはこれに沿うように第二シールド部材255が設置されており、さらに第二シールド部材255の底板252側には、磁性体コア部材254が配置されている。第二シールド部材253は、第一シールド部材155と同様、非磁性かつ導電性を有しており、例えばアルミニウム金属によって構成されている。
【0043】
各磁性体コア部材154,254は、例えばフェライトに代表されるような透磁率が大の強磁性体よりなり、磁束の高密度化機能やガイド機能を発揮する部材である。また、各シールド部材155,255は、導電体であってかつ非磁性体からなる部材であり、例えばアルミニウム等の金属材料によって構成されている。各シールド部材155,255は、送信装置10から受信装置20へ電力をワイヤレス送電する際に、外部に漏洩しようとする電磁波、即ちワイヤレス送電に寄与しなかった電磁波を、渦電流を発生させることで熱エネルギーに変換することで、送電に寄与しなかった電磁波の外部への漏洩を抑制する。
【0044】
送電用コイルケース150には、一次コイル15a及び送電側共鳴コイル15bが収容されており、これらは共通のコイル周回軸AXLを中心に巻回されている。送電側共鳴コイル15bは、コイル周回軸AXLを中心に複層渦巻き状に巻回されており、その巻数(周回数、ターン数)は5ターンに設定されている。この巻数は、特定の数に限定されない。送電側共鳴コイル15bを形成するコイル導線の各ターンに相当する部分を、内側から(コイル周回軸AXLに近い順から)第1周回部#1〜第5周回部#5と呼ぶことにする。図3に示すように、送電側共鳴コイル15bは、送電用コイルケース150内において二つの周回面に跨るように積層されている。ここで、底板152に近い方の周回面を第一周回面ST1と称し、遠い方の周回面を第二周回面ST2と称する。第一周回面ST1及び第二周回面ST2の双方は、送電側共鳴コイル15bによって形成される渦巻き面と言える。
【0045】
また、第一周回面ST1及び第二周回面ST2の法線方向を送電側共鳴コイル15bの「積層方向Dbu」と定義する。この構成では、送電側共鳴コイル15bの積層方向がコイル周回軸AXLと平行となり、かつ、送電側共鳴コイル15bの「渦巻き径方向Dsr」に直交している。「渦巻き径方向」とは、送電側共鳴コイル15bによって形成される渦巻きの径方向を指す。
【0046】
図4は、送電用コイルケース150に収容されている送電コイル15の平面的な配置状態を説明するための説明図であり、送電用コイルケース150を受電装置20側から透視したときの送電側共鳴コイル15b及び一次コイル15aの平面的な配置状態を模式的に表した図である。図4に示す送電側共鳴コイル15bにおいて、第一周回面ST1を周回する部分を鎖線で示し、第二周回面ST2を周回する部分を実線にて示す。また、図中の破線は、一次コイル15aを表す。
【0047】
送電側共鳴コイル15bは、その第2周回部#2及び第4周回部#4(図4中、鎖線で図示)が第一周回面ST1を周回するように、また、第1周回部#1、第3周回部#3、第5周回部#5(図4中、実線で図示)が第二周回面ST2を周回するように巻回されている。送電側共鳴コイル15bは、その積層方向Dbuに互いに隣接する周回面内、即ち、第一周回面ST1及び第二周回面ST2を周回する部分同士が渦巻き径方向Dsrに沿って千鳥状に配置されている。図3に示す例では、第二周回面ST2を周回する第1周回部#1、第3周回部#3、第5周回部#5と、第一周回面ST1を周回する第2周回部#2、第4周回部#4とが、渦巻き径方向Dsrに沿って互い違いに配置される。この千鳥配置によれば、送電側共鳴コイル15bのうち、積層方向Dbuに互いに隣接する周回面(第一周回面ST1及び第二周回面ST2)を周回するコイル導線部分同士が、積層方向Dbu(上下方向)に重ならないように配置されている。
【0048】
一次コイル15aは、第一周回面ST1に配置され、かつ、送電側共鳴コイル15bにおける第1周回部#1よりも更に内側の部分を周回している。図3及び図4においては、一次コイル15aにおける巻数(周回数、ターン数)が1ターンに設定されているが、これに限定されるものではなく、巻数を複数ターンとしても良い。一次コイル15aは、送電用コイルケース150の底板152に設けられたコネクタ156と接続されている。コネクタ156は、配線ケーブルを介して送電アンプ14と接続されている。則ち、一次コイル15aと送電アンプ14がコネクタ156を介して接続されている。なお、コネクタ156を用いずに、直接引き出したコイル用導線を送電アンプ14と接続しても良い。
【0049】
送電側共鳴コイル15bを千鳥状に配置する際のコイル導線の巻線順序については、第一周回面ST1を周回するターンを全て巻いてから第二周回面ST2を周回するターンを巻くようにしても良いし、第一積層面、第二積層面、第一積層面、・・・の如く第一周回面ST1を周回するターンと第二周回面ST2を周回するターンとを交互に巻くようにしても良い。
【0050】
一方、受電用コイルケース250には、二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25bが収容されており、これらは共通のコイル周回軸AXL’を中心に巻回されている。受電側共鳴コイル25bは、コイル周回軸AXL’を中心に渦巻き状に巻回されており、その巻数(周回数、ターン数)は5ターンに設定されている。この巻数は、特定の数に限定されない。本明細書では、受電側共鳴コイル25bにおいて、各ターンに該当する部分を内側から(コイル周回軸AXL’に近い順から)第1周回部#1’〜第5周回部#5’と呼ぶ。図3に示すように、受電側共鳴コイル25bは、受電用コイルケース250内において二つの周回面に跨るように積層されている。ここで、底板252に近い方の周回面を第一周回面ST1’と称し、遠い方の周回面を第二周回面ST2’と称する。また、第一周回面ST1及び第二周回面ST2は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻き面と言える。
【0051】
第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’の各々は、受電用コイルケース250の底板252に平行となるように設定しているが、これに限定されるものではない。以下、第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’の法線方向を受電側共鳴コイル25bの「積層方向Dbu’」と呼ぶ。この構成では、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’はコ
イル周回軸AXL’と平行となり、かつ、受電側共鳴コイル25bの「渦巻き径方向Dsr’」に直交している。「渦巻き径方向Dsr’」は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻きの径方向を指す。
【0052】
図5は、受電用コイルケース250に収容されている受電コイル25の平面的な配置状態を説明するための説明図であり、受電用コイルケース250を送電装置10側から送電用コイルケース150を透視したときの受電側共鳴コイル25b及び二次コイル25aの平面的な配置状態を模式的に表した図である。図5に示す受電側共鳴コイル25bにおいて、第一周回面ST1’を周回する部分を鎖線で示し、第二周回面ST2を’周回する部分を実線にて示す。また、図中の破線は、二次コイル25aを表す。
【0053】
受電側共鳴コイル25bは、その第2周回部#2’及び第4周回部#4’(図5中、鎖線で図示)が第一周回面ST1’を周回するように、また、第1周回部#1’、第3周回部#3’、第5周回部#5’(図5中、実線で図示)が第二周回面ST2’を周回するように巻回されている。受電側共鳴コイル25bは、その積層方向Dbu’に互いに隣接する周回面内、即ち第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’を周回する部分同士が渦巻き径方向Dsr’に沿って千鳥状に配置されている。即ち、ここでは、第二周回面ST2’を周回する第1周回部#1’、第3周回部#3’、第5周回部#5’と、第一周回面ST1’を周回する第2周回部#2’、第4周回部#4’とが、渦巻き径方向Dsr’に沿って互い違いに配置される。このような千鳥配置により、受電側共鳴コイル25bのうち、積層方向Dbu’に互いに隣接する第一周回面ST1’及び第二周回面ST2’を周回する部分同士が、積層方向Dbu’(上下方向)に重ならないようになっている。
【0054】
二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bにおける一の周回面と同一面内(第一周回面ST1’)に配置されている。また、この構成例では、その巻数が1ターンに設定されているが、巻数を複数ターンとしても良い。二次コイル25aは、受電用コイルケース250の底板252に設けられたコネクタ256に接続されている。コネクタ256は、配線ケーブルを介して整流回路28と接続されており、このコネクタ256を介して二次コイル25aと整流回路28が接続されている。なお、コネクタ256を用いず、直接引き出したコイル用導線を整流回路28と接続しても良い。また、受電側共鳴コイル25bを千鳥状に配置する際のコイル導線の巻線順序については、第一周回面ST1’を周回するターンを全て巻いてから第二周回面ST2’を周回するターンを巻くようにしても良いし、第一積層面、第二積層面、第一積層面、・・・の如く第一周回面ST1’を周回するターンと第二周回面ST2’を周回するターンとを交互に巻くようにしても良い。
【0055】
送電コイル15(一次コイル15a、送電側共鳴コイル15b)、及び受電コイル25(二次コイル25a、受電側共鳴コイル25b)は、これらを形成するコイル導線が中空構造となっている。無線電力伝送システム1では、各コイルに高周波の電流が流れるため、「表皮効果」によってコイル導線表面の電流密度が高くなる。そこで、このように各コイルを中空構造にすることで、全体の重量を増加させることなく電流密度の大きな領域を増やすことで、送電効率の向上を図るようにしている。但し、各コイルにこのような中空構造を採用しなくてもなんら問題なく、また、例えば比較的流れる電流量の多い磁界共鳴に関わる送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bのみを中空構造とするようにしても良い。
【0056】
また、送電側共鳴コイル15bにおける各周回部#1〜#5同士、或いは、受電側共鳴コイル25bにおける各周回部#1’〜#5’同士が互いに近接すると、「近接効果」に起因してコイル抵抗の増加を招く場合がある。「近接効果」とは、導体が過度に近接配置された場合に、電流の大きさ、向き、周波数等により各導体に流れる電流の密度分布が変化する現象である。
【0057】
これに対しては、上記のように送電側共鳴コイル15bを千鳥状に配置することで第1周回部#1〜第5周回部#5の各々同士の隙間を確保するようにし、近接効果によって送電側共鳴コイル15bを流れる電流抵抗が大きくなることを抑えるようにしている。同様に、受電側共鳴コイル25bを千鳥状に配置することで第1周回部#1’〜第5周回部#5’の各々同士の隙間を確保するようにし、受電側共鳴コイル25bの電流抵抗が大きくなることを抑えるようにしている。
【0058】
ここで、ワイヤレス送電時において互いに対峙する送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bとの間の内法寸法を「コイル間距離」と称する。このコイル間距離は、送電効率を可及的に高めることの可能な、二次コイル25a及び受電側共鳴コイル25b間の結合係数(以下、「受電側結合係数」という)に影響を及ぼすパラメータの一つであるが、従来では受電側結合係数をその最適値まで高めることが容易でなかった。
【0059】
そこで、本実施形態に係る無線電力伝送システム1では、二次コイル25aを、少なくとも、受電側共鳴コイル25bの一の周回面と同一面内に配置すると共にその周回面おいて隣接する受電側共鳴コイル25bのコイル導線間に挟まれて配置されるか、又は、受電側共鳴コイル25bによって形成される渦巻き面と直交する方向(積層方向Dbu’)に受電側共鳴コイル25bのコイル導線と重なる(相対する)ように配置するようにして、両コイルの結合を高めるようにした。より詳しくは、二次コイル25aを、受電側共鳴コイル25bにおける一の周回面(第一周回面ST1’)と同一面内に配置し、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面(第二周回面ST2’)を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるように配置するようにした。
【0060】
これによれば、二次コイル25aを、第1周回部#1’と積層方向Dbu’の双方に受電側共鳴コイル25bと重なるように配置させることができるので、両コイル間の磁気的結合度合いを容易に高めることができる。これにより、受電側結合係数の調整可能幅を充分に確保することができるようになり、受電側結合係数を例えばコイル間距離に応じた最適値に精度良く一致させ、あるいは、最適値に近似させることができる。
【0061】
上記までの例では、千鳥状に配置された受電側共鳴コイル25bに対して二次コイル25aを編み込むように配置することにより受電側結合係数を高めるようにしたが、同様に、千鳥状に配置された送電側共鳴コイル15bに対して一次コイル25aを編み込むように配置することで、一次コイル25aと送電側共鳴コイル15bとの間の結合係数(以下、「送電側結合係数」と称する)を高めることも可能である。
【0062】
その場合、一次コイル15aを、送電側共鳴コイル15bにおける一の周回面と同一面内(例えば第一周回面ST1)に配置し、送電側共鳴コイル15bにおける他の周回面(例えば第二周回面ST2)を周回する部分と積層方向Dbuに関して重なるように配置すると良い。このようにすることで、送電装置10における一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bにおける積層方向Dbuと渦巻き径方向Dsrの双方向に関して、送電側共鳴コイル15bを形成するコイル導線と相対するようになる。その結果、送電側結合係数を従来に比べて高めることができるため、その調整可能幅を拡大することができるのである。
【0063】
尚、本実施形態においては、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bの積層数を3層以上としても良い。その場合においても、二次コイル25a(一次コイル15a)を、受電側共鳴コイル25b(送電側共鳴コイル15b)における一の周回面と同一面内に配置し、かつ、受電側共鳴コイル25b(送電側共鳴コイル15b)における他の周回面を周回する部分とその積層方向Dbuに関して重なるように配置することで、受電
側結合係数(送電側結合係数)を良好に高めることができる。
【0064】
図6は、第一変形例に係る送電用コイルケース150及び受電用コイルケース250の断面を示す図である。この図の構成例では、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bは共に2層渦巻き状に巻回されているが、千鳥配置とはされていない。本変形例では、図示のように、送電側共鳴コイル15bと受電側共鳴コイル25bが共に2層からなる格子状(グリッド状)に配置されている。
【0065】
そして、送電側共鳴コイル15bを構成するコイル導線の各周回部のうち、第2周回部#2及び第5周回部#5が第一周回面ST1を周回し、第1周回部#1、第3周回部#3、第4周回部#4が第二周回面ST2を周回するように配置されている。一次コイル15aは、このように格子状に形成された送電側共鳴コイル15bに編み込まれるように配置されている。また、受電側共鳴コイル25bを構成するコイル導線の各周回部のうち、第2周回部#2’及び第5周回部#5’が第一周回面ST1’を周回し、第1周回部#1’、第3周回部#3’、第4周回部#4’が第二周回面ST2’を周回するように配置されている。二次コイル25aは、このように格子状に形成された受電側共鳴コイル25bに編み込まれるように配置されている。
【0066】
図示の構成では、二次コイル25aが、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’に関しては第3周回部#3’と重なり合い、渦巻き径方向Dsr’に関しては第2周回部#2’と第5周回部#5’の双方に重なり合うように配置されるため、その受電側結合係数を充分に高めることができる。そして、送電装置10側においても、一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bの積層方向Dbuに関しては第3周回部#3と重なり合い、渦巻き径方向Dsrに関しては第2周回部#2と第5周回部#5の双方に重なり合うように配置されるため、その送電側結合係数を充分に高めることができる。
【0067】
また、図7は、第二変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの断面を示す図である。図示のように、送電側共鳴コイル15b及び受電側共鳴コイル25bは単層渦巻き状に巻回されている。本変形例においては、送電側共鳴コイル15bは、コイル周回軸AXLを中心に第一周回面ST1を5ターンするように構成されており、各ターンを内側から第1周回部#1〜第5周回部#5と呼ぶ。一方、受電側共鳴コイル25bは、コイル周回軸AXL’を中心に第一周回面ST1’を5ターンするように構成されており、各ターンを内側から第1周回部#1’〜第5周回部#5’と呼ぶ。
【0068】
ここで、一次コイル15aは送電側共鳴コイル15bが周回する第一周回面ST1内に配置されると共に、第一周回面ST1を周回する送電側共鳴コイル15bの第3周回部#3と第4周回部#4の間に挟まれるように配置されている。一方、二次コイル25aは受電側共鳴コイル25bが周回する第一周回面ST1’内に配置されると共に、第一周回面ST1’を周回する送電側共鳴コイル15bの第3周回部#3’と第4周回部#4’の間に挟まれるように配置されている。
【0069】
上記のように各コイルを配置することで、一次コイル15aは、送電側共鳴コイル15bと渦巻き径方向Dsrに関して第3周回部#3と第4周回部#4’の双方に重なり合うように配置されるので、その送電側結合係数を良好に高めることができる。また、二次コイル25aは、受電側共鳴コイル25bと渦巻き径方向Dsr’に関して第3周回部#3’と第4周回部#4’の双方に重なり合うように配置されるので、その受電側結合係数を良好に高めることができる。
【0070】
また、図8は、第三変形例に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの断面を示す図である。送電装置10側では、コイル周回軸AXLを中心として単層渦巻き状に第
一周回面ST1を巻回されている送電側共鳴コイル15bに対して、送電側共鳴コイル15bにより形成される渦巻き面(第一周回面ST1)と直交する方向(コイル周回軸AXL)に一次コイル15aを重ねて配置するようにした。具体的には、一次コイル15aを、送電側共鳴コイル15bにおける第3周回部#3の上方に配置することで双方が上下方向に重なり合う結果、送電側結合係数が良好に高められるようになっている。
【0071】
また、受電装置20側では、コイル周回軸AXL’を中心として単層渦巻き状に第一周回面ST1’を巻回されている受電側共鳴コイル25bに対して、受電側共鳴コイル25bにより形成される渦巻き面(第一周回面ST1’)と直交する方向(コイル周回軸AXL’)に二次コイル25aを重ねて配置するようにした。具体的には、二次コイル25a、受電側共鳴コイル25bにおける第3周回部#3’の下方に配置することで双方が上下方向に重なり合う結果、受電側結合係数が良好に高められるようになっている。
【0072】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。図9は、第二実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。本実施形態では、受電装置20における二次コイル25aの配置方法、即ち、二次コイル25aの受電側共鳴コイル25bとの相対関係だけが相違し、他の構成は図3に示した構成例と同様である。本構成例では、二次コイル25aが、千鳥配置されている受電側共鳴コイル25bの同一周回面(図示の例では、第一周回面ST1’)において渦巻き径方向Dsr’に互いに隣接するコイル導線の線材間(図示の例では、第2周回部#2’及び第4周回部#4’との間)に挟まれ、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面(図示の例では、第二周回面ST2’)を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるようにして配置される。
【0073】
この構成では、二次コイル25aが、受電側共鳴コイル25bの積層方向Dbu’に関して第3周回部#3’と相対し、渦巻き径方向Dsr’に関して第2周回部#2’及び第4周回部#4’と相対する。第一実施形態(図3)に係るコイルの配置パターン(以下、「第一コイルパターン」と称する)では、受電側共鳴コイル25bにおける二つの周回部に二次コイル25aが相対するように配置されているが、第二実施形態(図9)に係るコイルの配置パターン(以下、「第二コイルパターン」と称する)では、受電側共鳴コイル25bにおける三つの周回部に対して二次コイル25aを相対させることができる。このように、二次コイル25aが相対する受電側共鳴コイル25bの周回部の数を増やすことで、受電側結合係数をより顕著に高めることが可能となる。
【0074】
なお、図9では、受電側結合係数を高めるためのコイル配置例を説明したが、二次コイル25aを一次コイル15aに置き換え、受電側共鳴コイル25bを送電側共鳴コイル15bに置き換えるように、一次コイル15aと送電側共鳴コイル15bとの相対関係を規定することで、送電側結合係数を良好に高めることのできるコイル配置とすることができる。これによれば、一次コイル15aを、千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bの同一周回面において渦巻き径方向Dsr’に互いに隣接するコイル導線の線材間に挟み込み、且つ、受電側共鳴コイル25bにおける他の周回面を周回する部分とその積層方向Dbu’に関して重なるように配置することができるので、送電側結合係数を顕著に高めることが可能となる。
【0075】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。図10は、第三実施形態に係る送電用コイルケース及び受電用コイルケースの構成を示す断面図である。既に説明した構成については、同一符号を付すことでその詳細な説明を省略する。本実施形態では、送電装置10における一次コイル15aの配置方法、即ち、一次コイル15aの送電側共鳴コイル15bとの
相対関係だけが図9に示す構成例と相違する。本構成例では、図示のように、二次コイル15bを千鳥配置されている受電側共鳴コイル25bに対して編み込み配置することに加えて、一次コイル15aも千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bに対して編み込み配置することにした。即ち、一次コイル15aは、千鳥配置されている送電側共鳴コイル15bの同一周回面(図示の例では、第一周回面ST1)において渦巻き径方向Dsrに互いに隣接するコイル導線の線材間(図示の例では、第2周回部#2及び第4周回部#4の間)に挟まれ、且つ、送電側共鳴コイル15bにおける他の周回面(図示の例では、第二周回面ST2)を周回する部分とその積層方向Dbuに関して重なるように配置される。
【0076】
この構成では、第二実施形態で説明した二次コイル25aと受電側共鳴コイル25bとの関係と同様、一次コイル15aが、送電側共鳴コイル15bの積層方向Dbuに関して第3周回部#3と相対し、渦巻き径方向Dsrに関して第2周回部#2及び第4周回部#4と相対する。この第三実施形態(図10)に係るコイルの配置パターン(以下、「第三コイルパターン」と称する)によれば、第二実施形態(図9)に係る第二コイルパターンに比べて送電側結合係数を高めることができるため、ワイヤレス送電時における送電効率をコイル間距離に応じた最大効率に一致させるための調整が容易となる。
【0077】
図11は、実施形態に係る各コイルパターンと送電効率との関係をシミュレーションした結果を示す図である。第一〜第三コイルパターンは前述の図3、9、10に示した各コイル構成例に対応している。図12は、第四コイルパターンを説明するための構成図である。第四コイルパターンにおいて、送電側共鳴コイル15b、受電側共鳴コイル25b、一次コイル15aの構成は図3に示す第一コイルパターンと同様である。第四コイルパターンでは、二次コイル25aが、第一周回面ST1’に配置され、かつ、受電側共鳴コイル25bにおける第1周回部#1’よりも更に内側(コイル周回軸AXL’側)の部分を周回するように配置されている。
【0078】
各シミュレーションにおいて、コイルパターン以外の条件は共通としている。例えば、一次コイル15aには、周波数2MHz、かつ1.5kWの高周波電力を供給する条件とし、コイル間距離は200mmに設定した。図11から判るように、コイルパターン毎の送電効率を比較すると、第一〜第三コイルパターンでの送電効率は何れも第四コイルパターンの送電効率を上回った。そして、第一コイルパターンよりも第二コイルパターンの方が送電効率に優れ、第二コイルパターンよりも更に第三コイルパターンの方が送電効率に優れていることが判る。
【0079】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であって、本発明の本旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得る。例えば、上述までの構成例では地面に送電コイルが埋められて車両側に送電する場合を例に説明したが、本発明は、壁に埋め込まれた送電装置で横方向へ送電したり、天井に埋め込まれた送電装置で下方向へ送電することも可能である。また、本発明に係る受電装置、送電装置、無線電力伝送システムは、上記実施形態に限定されるものではなく可能な限りこれらの組合せを含むことができる。
【符号の説明】
【0080】
1・・・無線電力伝送システム
10・・送電装置
15・・送電コイル
15a・一次コイル
15b・送電側共鳴コイル
20・・受電装置
25a・二次コイル
25b・受電側共鳴コイル
30・・電動車両
150・送電用コイルケース
250・受電用コイルケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、
前記送電装置から送電される電力を、前記送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、
前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、
を備え、
前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記受電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、該受電側共鳴コイルにおける他の周回面を周回する部分と該受電側共鳴コイルの積層方向に関して重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記受電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されることを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
受電装置に電力を無線で送電する送信装置において、
電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、
電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電され、前記受電装置側に設けられた受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルと、
を備え、
前記送電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする送電装置。
【請求項5】
前記送電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、該送電側共鳴コイルにおける他の周回面を周回する部分と該送電側共鳴コイルの積層方向に関して重なるように配置されることを特徴とする請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記送電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されることを特徴とする請求項5に記載の受電
装置。
【請求項7】
送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、
前記送電装置は、電源から給電される送電側電磁誘導コイル、及び電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを有し、
前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により該送電側共鳴コイルから受電する受電側共鳴コイル、及び前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを有し、
前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項1】
送電装置から電力を無線で受電する受電装置において、
前記送電装置から送電される電力を、前記送電装置に設けられた送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により受電する受電側共鳴コイルと、
前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルと、
を備え、
前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記受電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、該受電側共鳴コイルにおける他の周回面を周回する部分と該受電側共鳴コイルの積層方向に関して重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記受電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、前記受電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されることを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
受電装置に電力を無線で送電する送信装置において、
電源から給電される送電側電磁誘導コイルと、
電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電され、前記受電装置側に設けられた受電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴によって該受電側共鳴コイルに送電する送電側共鳴コイルと、
を備え、
前記送電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記送電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記送電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする送電装置。
【請求項5】
前記送電側共鳴コイルは複層渦巻き状に巻回されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置され、且つ、該送電側共鳴コイルにおける他の周回面を周回する部分と該送電側共鳴コイルの積層方向に関して重なるように配置されることを特徴とする請求項4に記載の送電装置。
【請求項6】
前記送電側共鳴コイルは、コイルの積層方向に互いに隣接する周回面を周回する部分同士が千鳥状に配置されており、
前記送電側電磁誘導コイルは、前記送電側共鳴コイルの同一周回面において隣接する該送電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されることを特徴とする請求項5に記載の受電
装置。
【請求項7】
送電装置と受電装置とを備える無線電力伝送システムにおいて、
前記送電装置は、電源から給電される送電側電磁誘導コイル、及び電磁誘導によって前記送電側電磁誘導コイルから給電される送電側共鳴コイルを有し、
前記受電装置は、前記送電側共鳴コイルとの間で発生する磁界共鳴により該送電側共鳴コイルから受電する受電側共鳴コイル、及び前記受電側共鳴コイルが受電した電力を電磁誘導によって取り出す受電側電磁誘導コイルを有し、
前記受電側共鳴コイルは渦巻き状に巻回されており、
前記受電側電磁誘導コイルは、少なくとも、前記受電側共鳴コイルにおける一の周回面と同一面内に配置されると共にその周回面において隣接する該受電側共鳴コイルの線材間に挟まれて配置されるか、又は、前記受電側共鳴コイルによって形成される渦巻き面と直交する方向に前記受電側共鳴コイルの線材と重なるように配置されることを特徴とする無線電力伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−120411(P2012−120411A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270640(P2010−270640)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】
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