説明

口内清掃具及びその製造方法

【課題】 口内の残滓が効果的に除去できるとともに、作業性にも優れた清掃具を提供することを目的とするもので、看護人が指にはめて口内を清掃することができるようになったため、清掃の程度は極めてよくなり、しかも速やかに清掃ができることとなった。
【解決手段】 長尺で看護人の指が入り込む深さの有底の穴をもつ軟質樹脂フォ−ムよりなる袋状基体と、当該袋状基体の外表面に穴に対してほぼ直角の波形の凹凸を形成したことによってポケットを構成した口内清掃具を提供する。1‥軟質樹脂フォ−ム、2‥有底、3‥穴、4‥波形、4a‥波形の穴の入口側の面、4b‥波形の穴の底側の面、5‥ポケット、θ‥波形の立ち上がり角度。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児、老人、病人等の自分で口内を清掃できない人に対する清掃具にかかるもので、入院患者や、口内外科等の治療時において、口内の清掃、薬品塗布、抜歯時等の血液や唾液の口外への除去等に用いて好適な口内清掃具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長期の入院を要する寝たきりの患者や、歯科や口内外科等の治療時においては、口内の不潔物を取り除くために、綿棒や、ピンセットの先端部に脱脂綿やガーゼを巻き付けたりしたものを用いて、口内の清掃、薬品塗布、抜歯時等の血液や唾液等の口外への除去等が行なわれている。
【0003】
そして、入院中の病人の退院までの日数は、口内を清潔にするか否かで大きく異なってくるとの報告もある。さて、通常の人の口内清掃は、自力で歯ブラシを用いて清掃するが、例えば病人が食後に口内清掃をすることができない場合が多く、看護する人が特別な清掃具にて口内を清掃してやるのが一般的である。
【0004】
図1は、現在市販されている口内清掃具の一つであり、軟質ウレタンフォ−ムブロック21と支持棒22とから形成され、軟質樹脂フォ−ムブロック21の表面に支持棒22の長手方向に添って複数の切込み(凹凸)23を備えたものである(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−56115号
【0006】
一方、うがい剤等の清掃液を口内に塗る等の口内清掃具の例としては、袋状に形成した繊維材料にて構成された浸漬部材の袋内に指を指し込んで口内を直接清掃する口内清掃具が存在する(特許文献2)。
【0007】
【特許文献2】実用新案登録第3086526号
【0008】
前記した従来の技術のうち、前者の技術にあっては、病人に口を開けてもらい、看護人が支持棒22を持ち、軟質樹脂フォ−ムブロック21の表面の凹凸にて口内に残る残滓を取り除く方法が取られている。しかしながら、上記の口内清掃具では支持棒22を持って清掃することから、残滓がある部位に軟質樹脂フォ−ムブロック21が到達したか否かは完全に分かるわけではなく、更に残滓が完全に取り除かれたかどうかも十分に分かるものでもない。このように、口内清掃は経験と感に頼る手段が採用されているため、その改良が要請されていたものである。
【0009】
しかも、支持棒21を回転させながら残滓を除去することになるため、看護人の指先が残滓を除去するという直接の作業以上に疲れやすく、この点でも十分な清掃具とは言えないものであった。
【0010】
一方、後者の技術にあっては、清掃液を口内に塗る等の道具としては有用ではあるものの、口内の残滓を除去するためには用いられず、又、これを取り除く機能を然程有していないという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上のような従来の技術に鑑みて新たな口内清掃具を提供するものであり、口内の残滓が効果的に除去できるとともに、作業性にも優れた清掃具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1は口内清掃具であって、長尺で有底の穴をもつ軟質樹脂フォ−ム(好ましくは軟質ウレタンフォ−ム)よりなる袋状基体と、当該袋状基体の外表面に波形の凹凸を形成したことを特徴とする清掃具を提供するものである。
【0013】
そして、本発明の第2は口内清掃具の製造方法であって、軟質樹脂フォ−ムを中央に波形を形成して二分割する第1工程、波形を外側として分割された軟質樹脂フォ−ムを重ね合わせる第2工程、有底の袋状に接着する第3工程、からなることを特徴とする清掃具の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1である口内清掃具について言えば、通常の状態で指にはめて口内を清掃することができるようになったため、清掃の程度は極めてよくなり、しかも速やかに清掃ができることとなったもので、その効果は極めて高いものである。
【0015】
更に、本発明の第2はその口内清掃具の製造方法の提供であり、より安価に、よりよいものが得られることとなったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の第1について述べれば、長尺で有底の穴とは通常は看護人の指の長さを言うものであり、かかる清掃具を指にはめ、これをもって口内の残滓を指の感覚をもって清掃するものである。勿論、指でない場合もあり、指程度の太さの棒にはめ、これをもって口内の清掃をしても構わないものである。尚、清掃具の基体をなす軟質樹脂フォ−ムは、例えば、ウレタンフォ−ム、ポリエチレンフォ−ム、ポリプロピレンフォ−ム、発泡ゴム等が例示されるが、以下、軟質ウレタンフォ−ムをもって説明する。
【0017】
かかる清掃具は特に軟質ウレタンフォ−ムにて袋状基体が構成されている。周知のように軟質樹脂フォ−ムは多孔体であり、この穴に残滓を引っ掛けて清掃が可能であるが、本発明にあっては特にその表面に波形の凹凸を形成してこの効果をよりすぐれたものとしたものである。更に言えば、波型の凹凸は長尺で有底の穴の方向に対してほぼ直角に或いは斜めに更にはほぼ平行して形成することができるが、好ましくは、ほぼ直角方向に形成するのが望ましい。なぜならば、口内に指を指し込んだり引き出したりして残滓を掻き出す効果が大きいからである。即ち、波形の凹凸内に残滓を引っ掛けた状態で清掃が可能となるからである。
【0018】
この波形の凹凸について更に言えば、波形を形成する面にあって、指を指し込む穴の入口側の面が穴の底側の面よりも立ち上がり角度が大きい形状がよく、これによって残滓に対してより引っ掛かり具合がよくなるからであり、特に好ましくは、前記波形を形成する面にあって、穴の入口側の面の立ち上がり角度が90度以上としてポケットを構成するのが最もよい。
【0019】
尚、指を指し込む穴は必ずしも一本の指のみが入るだけのものでなくともよく、複数の指が同時に差し込まれるものであってもよい。更に、この穴は二連或いは三連でもよいことは言うまでもない。例えば、二連の場合には看護人が人差し指と中指を穴内差し込んで口内を清掃することができるものである。
【0020】
更に、口内の清掃中に指を噛まれる危険性も考慮すると、例えばプラスチック製の環状体等の指保護部材を指に嵌めて口内清掃を行うことが好ましいことは言うまでもない。
【0021】
本発明の第2について述べれば、第1発明の口内清掃具の安価な製造方法の提供にあり、袋状基体となる軟質ウレタンフォ−ムの効果的な切断手段を提供して口内清掃具を安価に入手可能としたものである。即ち、一枚の軟質ウレタンフォ−ムシ−トより、口内清掃具の主材料に用いられる二枚の軟質ウレタンフォ−ムを効率よく得ることができたものであり、しかも得られたフォ−ム体を重ね合わせて接着することにより安価に口内清掃具を製造することができたものである。
【0022】
重ね合わせたウレタンフォ−ムの接着にあっては、加熱・加圧してウレタンフォ−ム同士を熱溶着する方法が最適であるが、高周波接着や超音波接着がよく、場合によっては接着剤をもって一体化してもよいことは言うまでもない。
【0023】
尚、接着した後にこれを指形状に切断する必要があるが、第3工程と同時或いはその後に、接着部或いはその周囲を切断する第4工程を付加すれば、極めて簡単に所望の形状の口内清掃具が得られるものである。
【実施例】
【0024】
以下、図面をもって本発明を更に詳細に説明すると、図2は本発明の第1の口内清掃具の側面図であり、図3は正面図、図4はA−A線での断面図である。
【0025】
図にあって、符号1は軟質ウレタンフォ−ムからなる袋状基体であり、これは有底2をなし、穴(すなわち袋部)3が看護人の指がはまる程度のものである。そして、この例では穴3に対して直角に波形4を形成した。そして、この例における波形4の形状は、穴3の入口側の面4aが穴3の底側の面4bよりも立ち上がり角度θが大きくなっており、特に角度θは約120度をなしている。従って、面4a、4bにより波形4の谷部にはポケット5が形成される。
【0026】
この口内清掃具を使用する看護人は、人差し指或いは中指を穴3内に挿入して装着し、口内の残滓を掻き出すように動かし、残滓をポケット5内に包み込んで清掃することになる。これは波形4が穴3と直角に形成された場合に特に有効であり、この場合には指を回転させる必要がないという特徴がある。
【0027】
図5は本発明の第2の製造工程の概要を示す工程図である。第1工程は袋状基体となる軟質ウレタンフォ−ム10を中央に波形を形成して二分割する工程である。所望の幅と厚さに裁断された軟質ウレタンフォ−ム10を圧縮しつつ波形カッタ−にて裁断して二分割(10A、10B)した。かかるカッタ−11の歯は左右対称に形成されており、分割された軟質ウレタンフォ−ム10A、10Bはいずれも同じ波形4を備えたものである。従って、これは、全く無駄なくいずれも本発明の口内清掃具の袋状基体1として用いることができるものである。
【0028】
第2工程は第1工程にて得られた軟質ウレタンフォ−ム10A、10Bの波形4形成面を外側にして重ね合わせるものである。尚、一方の軟質ウレタンフォ−ム(10A又は10B)を折り重ねて重ね合わせてもよいことは言うまでもない。
【0029】
第3工程は第2工程にて重ね合わされた軟質ウレタンフォ−ム10A、10Bを有底の袋状に接着する工程であり、例えば、指型にされた高周波電極12を押さえ付け、重ね合わされた軟質ウレタンフォ−ム10A、10Bを高周波溶着13して袋状とする。
【0030】
その後、高周波溶着13の周囲を裁断して口内清掃具を得るものであるが、溶着と同時に任意の押圧カッタ−にて裁断するのが好適である。
【0031】
図6はここで得られた口内清掃具であり、常態では扁平となる袋状となっている。
【0032】
このように、本発明の第2によれば、口内清掃具の基体となる軟質ウレタンフォ−ムが無駄なく効率よく得られることになり、口内清掃具を安価にしかも少ない工程数にて得られることとなったものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は以上の通りであり、口内清掃具は病人のみならず、健常者でも或いは乳幼児でも使用可能であり、その利用範囲は広い。尚、本発明の応用品としては、図1にて示す口内清掃具の軟質ウレタンフォ−ムブロック21の周囲に、複数の切込み(凹凸)23を支持棒22に対してほぼ直角の方向に本発明の波形を形成すれば、支持棒22を回転せずに掻き出す方向のみに動かせばよいという優れた清掃具も提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、市販されている口内清掃具の一例を示す図である。
【図2】図2は本発明の第1の口内清掃具の側面図である。
【図3】図3は図2の正面図である。
【図4】図4はA−A線での断面図である。
【図5】図5は本発明の第2の製造工程の概要を示す工程図である。
【図6】図6は本発明の第2の製造にて得られた口内清掃具である。
【符号の説明】
【0035】
1‥軟質樹脂フォ−ム、
2‥有底、
3‥穴(すなわち袋部)、
4‥波形、
4a‥波形の穴の入口側の面、
4b‥波形の穴の底側の面、
5‥ポケット、
10‥袋状基体となる軟質樹脂フォ−ム、
10A、10B‥二分割に裁断された軟質樹脂フォ−ム、
11‥波形カッタ−、
12‥高周波電極、
13‥高周波溶着部、
θ‥波形の立ち上がり角度。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺で有底の穴をもつ軟質樹脂フォ−ムよりなる袋状基体と、当該袋状基体の外表面に波形の凹凸を形成したことを特徴とする口内清掃具。
【請求項2】
軟質樹脂フォ−ムがウレタンフォ−ムである請求項1記載の口内清掃具。
【請求項3】
前記穴は看護人の指が入り込む深さである請求項1記載の口内清掃具。
【請求項4】
前記波形は穴に対してほぼ直角に形成した請求項1記載の口内清掃具。
【請求項5】
前記波形を形成する面にあって、穴の入口側の面が穴の底側の面よりも立ち上がり角度が大きい請求項4いずれか記載の口内清掃具。
【請求項6】
前記波形を形成する面にあって、穴の入口側の面の立ち上がり角度が90度以上である請求項5記載の口内清掃具。
【請求項7】
軟質樹脂フォ−ムを中央に波形を形成して二分割する第1工程、波形を外側として分割された軟質樹脂フォ−ムを重ね合わせる第2工程、有底の袋状に接着する第3工程、からなることを特徴とする口内清掃具の製造方法。
【請求項8】
第3工程の接着が熱溶着法である請求項7記載の口内清掃具の製造方法。
【請求項9】
第3工程の接着が高周波溶着法である請求項7記載の口内清掃具の製造方法。
【請求項10】
第3工程の接着が超音波溶着法である請求項7記載の口内清掃具の製造方法。
【請求項11】
第3工程と同時或いはその後に、接着部或いはその周囲を切断する第4工程を付加した請求項7記載の口内清掃具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−42893(P2006−42893A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224435(P2004−224435)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(591049055)ブリヂストン化成品東京株式会社 (9)
【Fターム(参考)】