説明

口内炎予防乃至治療薬

【課題】優れた口内炎の治療および予防薬を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子を含有するウガイ液、口腔内用軟膏等により解決する。
(MgaZnb1−xAlx(OH)(An−x/n・mHO (1)
但し、式中、An−はCO2−、SO2−またはClを示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40、 0.5≦a<1、 0<b≦0.5、 0≦m<1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子を含有する口内炎予防乃至治療薬に関する。
(MgaZnb1−xAlx(OH)(An−x/n・mHO (1)
但し、式中、An−はCO2−、SO2−またはClを示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40、 0.5≦a<1、 0<b≦0.5、 0≦m<1
【背景技術】
【0002】
口内炎は口腔粘膜に炎症が起きた状態で、口腔内粘膜、口角、口唇に発症するびらん、紅斑、潰瘍等の症状を言う。口内炎が重篤になると不快感だけでなく疼痛、出血も伴い、飲食、発話が困難になる。
【0003】
口内炎の発症原因としては、口内の損傷や食物、歯磨き等による刺激など口内に原因があって生じる場合、ストレスによる場合や全身的な病気の症状として起こる重症疾患、栄養失調、単純疱疹ウイルス感染、癌化学療法および放射線治療の副作用などがよく知られているが、発症のメカニズムが不明なものも少なくない。
【0004】
従来、口内炎の治療には、口内清浄、各種ビタミン剤(特許文献1)、ステロイド系抗炎症剤(特許文献2)、L−カルノシン亜鉛塩、L−カルノシン亜鉛塩とアルギン酸ナトリウムの併用薬剤(特許文献3)などが用いられてきたが、癌化学療法、放射線治療に伴う口内炎の治療にはアロプリノールやアルギン酸ナトリウムのうがい液投与が行われている。
【特許文献1】特開2003−55912号公報
【特許文献2】特開2007−226644号公報
【特許文献3】特開平10−17490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の口内炎治療法では症状の改善作用が弱く、重篤な口内炎に対して十分な効果があるとはいえず、また症状が改善するまで長時間を要するなどの問題点も多く、また有機物の安全性が懸念され、満足できる治療法とはいえなかった。従って、治療効果に優れ、安全性が高く、短期間で治療が可能な薬剤が強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、制酸剤、胃潰瘍防止効果があるとされているハイドロタルサイト粒子(化学式Mg6Al6(OH)16CO3・4H2O)に微量かつ特定量の亜鉛(Zn)を固溶体として含有させた複合ハイドロタルサイト粒子が、経口投与により制酸剤としての効果とともに、ハイドロタルサイト粒子よりはるかに優れた胃潰瘍防止、胃粘膜保護効果を有することを見出し、すでに提案した。本発明者等は、この複合ハイドロタルサイト粒子のさらに他の用途における効果を見出すべくさらに研究を進めた。その結果、複合ハイドロタルサイト粒子が口内炎の治療、予防に顕著な効果があることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子を含有する口内炎の予防乃至治療薬を提供するものである。
(MgaZnb1−xAlx(OH)(An−x/n・mHO (1)
但し、式中、An−はCO2−、SO2−またはClを示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40、 0.5≦a<1、 0<b≦0.5、 0≦m<1
この式(1)について具体的に説明する。式(1)中、An−は1価または2価のアニオンを示し、CO2−、SO2−またはClであり、CO2−またはSO2−が好ましく、CO2−が最も好ましい。これらアニオンは2種、例えばCO2−およびSO2−が同時に含まれてもよい。xは0.18≦x≦0.4を満足するが、0.2≦x≦0.35が好ましく、0.24≦x≦0.3がより好ましい。bは、0<b≦0.5を満足するが、0.0005≦b≦0.2が好ましく、さらに好ましくは0.006≦b≦0.1が特に好ましい。また、aは0.5≦a<1を満足するが、0.6≦a≦0.9が好ましい。mは結晶水の含有量を示し0≦m<1を満足するが、0.1≦m<1が好ましい。
【0007】
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子の製造法は、従来のハイドロタルサイト粒子の製造において、所定量の亜鉛の塩を添加すればよい。すなわち、Mg、ZnおよびAlの塩(硝酸塩、塩化物、および硫酸塩)を、目的の複合ハイドロタルサイト粒子を構成する金属元素の比率で含む水溶液と炭酸ナトリウム水溶液(NaCO/Al=0.35〜0.75)および水酸化ナトリウム水溶液とを接触させ、水酸化ナトリウム水溶液で反応液のpHを10〜10.5に保持して共沈殿させる。反応は室温ないし100℃の温度で行う。また反応生成物をそのまま、または洗浄し、懸濁液(水系)を70〜200℃の温度で0.5〜24時間水熱反応を行うこともできる。
【0008】
本発明の複合ハイドロタルサイト粒子は、特にその形状、粒子サイズ等は制限されないが、レーザー回折散乱法で測定された平均粒子径は、0.2〜20μmであるのが有利であり、BET法比表面積は5〜100m2/gであるのが望ましい。
また、本発明の複合ハイドロタルサイト粒子のLD50値は15,000mg/kg以上(ラット経口投与)であり、安全性が極めて高い。
【0009】
本発明に使用される複合ハイドロタルサイト粒子は、さまざまな公知成分を配合し、医薬品、医薬部外品および食品の形態として提供できる。具体的には練り歯磨、液体歯磨、うがい液、錠剤・散剤・顆粒剤を粉砕した懸濁剤、シロップ剤、乳剤、口腔用スプレー、口内貼付剤、口腔内軟膏剤、トローチ(舌下錠)、タブレット、チュアブル、カプセル、フィルム剤、顆粒、飴、チューインガムなどの形態でも好ましく、口内炎の状態により適宜使用することができる。
【0010】
これらの形態にあっては、通常の方法を用いて製造でき、本発明ではそれぞれの形態に応じて、その他の適当な添加剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤などの成分、例えば、注射用蒸留水、精製水、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、乳糖、ソルビット、マンニット、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース、ラクチトール、セルロース誘導体、アラビアゴム、トラガントゴム、ゼラチン、ポリソルベート80、タルク、ステアリン酸マグネシウム、水、エタノール、白色ワセリン、グリセリン、脂肪、脂肪油、グリコール類、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類、プラスチベース、パラフィン、ミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、サッカリン、パインシロップなど、食品処方設計に通常用いられるその他の添加剤、食品素材等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択、組み合わせて使用することができる。
【0011】
本発明の口内炎の予防薬乃至治療薬のうち口腔内軟膏剤は、白色ワセリン、パラフィン、ミツロウ、ステアリルアルコール、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等を適宜組み合わせ、加熱融解、混和することにより調整できる。この軟膏剤は、複合ハイドロタルサイト粒子を1〜60重量%、好ましくは2〜50重量%含有することが好ましい。また、歯磨き組成物においても複合ハイドロタルサイト粒子を同様の含有率で含有することが好ましい。
【0012】
実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
下記式の複合ハイドロタルサイト粒子20gを蒸留水200mLに懸濁させ、うがい液とした。
Mg0.735Zn0.0015Al0.25(OH)2(CO3)0.125・0.5H2O
【実施例2】
【0014】
白色ワセリン100gとミツロウ5gを容量1Lのビーカーに採り、60℃に加熱し、下記式の複合ハイドロタルサイト粒子100gを加え、特殊機化製ホモジナイザー、モデルIIを用い5分間攪拌し、軟膏を作成した。
Mg0.747Zn0.003Al0.25OH)2(CO3)0.125・0.5H2O
【実施例3】
【0015】
薬剤アレルギーのため、風邪薬により口腔内全体がびらんのため飲食不可の状態の男性が、市販の口内炎治療薬を投与したが効果はなかった。その男性に実施例1で作成したウガイ液で1日5〜6回、7日間のウガイを実施した結果、口腔内のびらんが完治した。
【実施例4】
【0016】
口唇に発生した潰瘍に実施例2で作成した軟膏を1日3回塗布した結果、5日間で完全に治癒した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される複合ハイドロタルサイト粒子を含有する口内炎予防乃至治療薬。
(MgaZnb1−xAlx(OH)(An−x/n・mHO (1)
但し、式中、An−はCO2−、SO2−またはClを示し、nは1または2を示し、x、a、bおよびmはそれぞれ下記条件を満足する値を示す。
0.18≦x≦0.40、 0.5≦a<1、 0<b≦0.5、 0≦m<1
【請求項2】
前記式(1)中、An−はCO2−またはSO2−である請求項1記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項3】
前記式(1)中、xは0.2≦x≦0.35を満足する請求項1記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項4】
前記式(1)中、bは0.0005≦b≦0.2を満足する請求項1記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項5】
前記式(1)中、bは0.006≦b≦0.1を満足する請求項1記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項6】
前記式(1)中、aは0.6≦a≦0.9を満足する請求項1記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項7】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子の口内炎予防乃至治療薬としての使用。
【請求項8】
うがい液、軟膏剤または貼付剤の形態として用いられる請求項1に記載の口内炎予防乃至治療薬。
【請求項9】
請求項1記載の複合ハイドロタルサイト粒子を有効成分として含む口内炎予防乃至治療用歯磨き組成物

【公開番号】特開2009−235053(P2009−235053A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115084(P2008−115084)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】