説明

口内炎改善剤

【課題】
効果が高く安全な口内炎改善剤と、その口内炎改善剤を含有する動物及びヒト用食品を提供する。
【解決手段】
ウロン酸基を有する酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジエキスを併用することによって、高い効果と即効性を有する口内炎改善剤。該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が5.0〜15.0であることが好ましい。ウロン酸はグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることが好ましい。
また、その口内炎改善剤を含有する動物用機能性食品または食品、ヒト用機能性食品または食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた生理活性を有し、しかも安全性の高い口内炎改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、癒しの為のコンパニオンアニマルとして、猫や犬等のペットの重要性が高まっているが、純系の犬や猫の増加に伴い、犬や猫の疾患も深刻化してきている。特に、猫で増加している口内炎は、歯石の蓄積による歯肉炎が主のものと、猫エイズウイルスや猫白血病に関連するカリシウイルスの感染による難治性口内炎に分けられ、難治性口内炎は動物病院の口内炎患者の5〜8割の疾患と言われている。口内炎の猫の初期症状は、流えん(よだれ)や口臭、疼痛による食事困難からくる元気消失等のQOL悪化であるが、難治性口内炎は完治しない為、食欲不振、脱水状態、慢性腎不全へと移行した後、衰弱死に至る。慢性腎不全は猫の死因1位であり、難治性口内炎はその最大の要因と言える。
【0003】
現在、難治性口内炎の治療の中心は、酢酸メチルプレドニゾロンやプレドニゾロン等のステロイドによる鎮痛剤、クリンダマイシンなどの抗生物質、猫インターフェロン等の併用療法である。しかし、これらの投薬では一時的な改善は見られるものの、投与後1ヶ月後には再発し、投薬効果の低下、慢性腎不全による衰弱死がほとんどのケースと言われている。また、ステロイド投薬はリバウンドによる口内炎悪化に加えて、糖尿病発症等の副作用の問題もある。猫は特に味覚が敏感な為、投薬困難なケースも多い。
【0004】
多くの研究機関で難治性口内炎の病態の研究もなされているが、未だに解明されてない点が多く、治療による完治は極めて困難な状況にあり、現状では対処療法による症状緩和が唯一の治療法となっている。従って、効果が高く、再発や副作用がなく、安全で経口投与し易い口内炎改善剤、特に、難治性口内炎改善剤の登場が期待されている。
【0005】
キシロオリゴ糖には、コーンコブやバガスから酵素処理により製造されるものや、リグノセルロースから酵素処理及びNF膜濃縮により製造されるものがあり、何れも整腸作用については既に開示されている(特許文献1及び2参照)。酸性キシロオリゴ糖(非特許文献1参照)に関しては、内服及び外用におけるアトピー性皮膚炎改善作用(特許文献3及び4参照)、美白作用(特許文献5参照)、抗脂血症改善作用(特許文献6参照)及び抗炎症作用(特許文献7参照)等の多くの生理作用が提案されているが、口内炎改善作用の開示はない。
【0006】
ハタケシメジエキスはハタケシメジ子実体から抽出したエキスであり、抗腫瘍作用(非特許文献2参照)、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用(非特許文献3参照)、コレステロール低下作用(非特許文献4参照)、血糖値低下作用(非特許文献5参照)等が開示されている。また、イヌ・ネコに対する皮膚脂漏症改善作用(非特許文献6参照)も報告されている。
【特許文献1】特許第2643368号公報
【特許文献2】特開2000−333692号公報
【特許文献3】特開2004−210664号公報
【特許文献4】特開2004−210666号公報
【特許文献5】特開2003−221307号公報
【特許文献6】特開2004−182615号公報
【特許文献7】特開2003−221339号公報
【特許文献8】特開2003−34647号公報
【非特許文献1】セルラーゼ研究会報 第16巻,p17-26,2001年
【非特許文献2】Journal of Bioscience and Bioengineering Vol90,No1,p98-104,2000年
【非特許文献3】日本食品科学工学会誌 第48巻,第1号,p58-63,2001年
【非特許文献4】日本食品科学工学会誌 第48巻,第7号,p520-525,2001年
【非特許文献5】Biol. Pharm. Bull. Vol.25,No9,p1234-1237,2002年
【非特許文献6】小動物臨床 第21巻,第6号,p457-462,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、優れた効果を持ち、安全で服用し易い口内炎改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決する為、鋭意研究した結果、ウロン酸残基が付加した酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖とハタケシメジエキスを併用することにより優れた口内炎改善効果が得られることを見出し、安全性も優れ、服用し易いことから、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジエキスを含有することを特徴とする口内炎改善剤」である。
【0010】
本発明の第2は、前記第1発明において、「該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が5.0〜15.0であることを特徴とする請求項1に記載の口内炎改善剤」である。
【0011】
本発明の第3は、前記第1または第2の発明において、「前記酸性キシロオリゴ糖が、リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たものであることを特徴とする口内炎改善剤」である。
【0012】
本発明の第4は、前記第1〜第3のいずれかの発明において、「ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする口内炎改善剤」である。
【0013】
本発明の第5は、「前記第1〜第4のいずれかの発明における口内炎改善剤を含有することを特徴とする猫用機能性食品または食品」である。
【0014】
本発明の第6は、前記第5の発明における「ペットが猫であることを特徴とする機能性食品または食品」である。
【0015】
本発明の第7は、「前記第1〜第4のいずれかの発明における口内炎改善剤を含有することを特徴とするヒト用機能性食品または食品」である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、優れた効果を持ち、安全で服用し易い口内炎改善剤を提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の構成について詳述するが、本発明はこれにより限定されるものではない。本発明の口内炎改善剤は酸性キシロオリゴ糖を有効成分として含有する。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明で使用する酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
該組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布または他の分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜15.0が好ましく、5.0〜15.0がより好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は15以下が好ましく、10以下がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸が好ましい。
なお、酸性キシロオリゴ糖は、他のオリゴ糖やキシロオリゴ糖と比較して、長鎖であっても耐酸性、耐熱性及び水溶性が非常に高いという特徴がある。
【0018】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法〔非特許文献2参照〕と、(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離する方法が挙げられる。
特に、(2)の方法が5〜15量体のように比較的高い重合度のものを大量に安価に製造することが可能である点で好ましく、以下にその概要を示す。
【0019】
酸性オリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いたろ過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0020】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
【0021】
樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0022】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0023】
以下、本発明において使用するハタケシメジエキスについて概説する。ハタケシメジ(Lyophyllum decastes Sing.)とは、ホンシメジと同じキシメジ科シメジ属に属する美味しい食用キノコである。自然界では、秋に林内や畑地において株状に生え、4〜9cmの褐色から灰褐色のまんじゅう形の傘をつける。近年、人工栽培技術が確立され、食用きのことして販売されている。
【0024】
ハタケシメジエキスに関しては、シイタケと同等以上の抗腫瘍活性が良く知られており、その活性本体はβ-1,6分岐を持つβ-1,3グルカンならびにβ-1,3分岐を持つ酸性β-1,6グルカンであることが明らかになっている。ハタケシメジエキスの製法は、得られるエキスが前記β-グルカンを含有すれば特に限定されないが、例えば、前記ハタケシメジの子実体または培養菌糸を原料として、熱水で抽出したエキスを濃縮して得ることが出来る。具体的には、ハタケシメジ子実体にイオン交換水を加え、一昼夜加熱抽出、固液分離、抽出液の濃縮後、スプレードライすることでハタケシメジエキスが粉末として得ることが出来る(特許文献8)。
【0025】
本発明において、酸性キシロオリゴ糖とハタケシメジエキスを混合して口内炎改善剤とする場合には、酸性キシロオリゴ糖のハタケシメジエキスに対する混合比率は1〜10倍が好ましく、1〜3倍がより好ましい。10倍を越えると、酸性キシロオリゴ糖単独の効果との相違が少なくなる。両者単独の効果に対して相乗効果を発揮するのは、1〜10倍であり、著しく相乗効果を発揮するのは、1〜3倍である。
本発明の口内炎改善剤における酸性キシロオリゴ糖の含有率は0.01質量%以上であるが、好ましくは10質量%以上である。また、酸性キシロオリゴ糖とハタケシメジエキスを混合する場合は、口内炎改善剤中の該混合物合計の含有率は0.01質量%以上であるが、好ましくは10質量%以上である。
【0026】
本発明の酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジを配合した口内炎改善剤の摂取形態としては直接摂取しても良いが、飲料に添加したり食品に添加したりすることが出来る。直接摂取する場合は、粉体化しても良いし、打錠により錠剤化しても良い。また、酸性キシロオリゴ糖の精製後の水溶液にハタケシメジエキスを添加したものをそのままか、或いは飲料や食品に添加して摂取しても良い。
粉末にする場合は、酸性キシロオリゴ糖組成物溶液とハタケシメジ抽出液を夫々公知のスプレードライ法などにより粉末化し、適当な比率で混合して得られた混合粉末を、本発明の口内炎改善剤として使用することが出来る。その際に、取り扱いを容易にするために澱粉などの物質を混合しても良い。
【0027】
本発明に於ける酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジエキスを配合した口内炎改善剤は、他の食品、経腸栄養剤、他の栄養成分、或いは医薬品と混合して医療用食品として使用することが出来る。また、一般的に医薬部外品や医薬品に使用される成分と混合し、医薬部外品や医薬品としても提供することも出来る。なお、上述の食品、医療用食品及び医薬品の対象としては、猫や犬等のペット用としてだけはなくヒトの食品や機能性食品としても用いることが可能であるが、特に猫の口内炎に対して高い効果を持っている。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要、本発明で有効成分として含有させた口内炎改善剤の調製例を示す。
【0029】
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
【0030】
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
【0031】
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
【0032】
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
【0033】
(5) 酸性キシロオリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
【0034】
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
【0035】
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0036】
<調製例1:酸性キシロオリゴ糖>
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP-5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、濾過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR-7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調製した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニン等の高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルター濾過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルター濾過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖をUX10とする。前述の測定方法により、UX10は平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0037】
<調整例2:ハタケシメジエキス>
ハタケシメジエキスは以下のように調整した。乾燥させたハタケシメジ子実体約50kgに5kLのイオン交換水を加えて、一昼夜加熱抽出後、固液分離、抽出液を濃縮した。得られた濃縮液にデキストリンが33質量%となるようにデキストリンを添加し、スプレードライヤーで粉末化することで、10kg(ハタケシメジ抽出物含量67質量%)のハタケシメジエキス粉末を得た。
【0038】
<調整例3:口内炎改善剤1>
調整例1で得た酸性キシロオリゴ糖粉末250mgを1包として、本発明の口内炎改善剤1を1000包作成した。
【0039】
<調整例4:口内炎改善剤2>
調整例1で得た酸性キシロオリゴ糖粉末250mgと調整例2で得たハタケシメジエキス粉末160mgを混合した混合粉末を1包として、本発明の口内炎改善剤2を1000包作成した。
【0040】
<調整例5:ハタケシメジエキス粉末剤>
調整例2で得たハタケシメジエキス粉末160mgを1包として、ハタケシメジエキス粉末剤を1000包作成した。
【0041】
<実施例1:口内炎改善試験1>
口内炎に対する効果を確認する為に、獣医師による口内炎症状(流えん、口臭及び食欲等のQOL)の所見とウイルス抗体検査から難治性口内炎と診断された猫への投与試験を行い、実施例1とした。以下にその概要を示す。
口内炎症状の見られる5匹の猫(体重約3〜5kg、日本猫、3〜7歳)に調整例3記載の口内炎改善剤1を市販のキャットフードに混ぜて投与(1包/日)し、定期的に獣医師により経過観察を行った。投与開始後の各時期の獣医師による所見「著明改善(劇的に改善)、改善(明らかに改善)、やや改善(何らかの改善)、不変、悪化」をもとに、改善以上となった投与期間を示す(表1)。なお、著明改善の3日後からは口内炎改善剤の投与を中止した。
【0042】
【表1】

【0043】
<実施例2:口内炎改善試験2>
実施例1と同様に、調整例4記載の口内炎改善剤2を用いて猫への投与試験を行い、実施例2とした。以下にその結果を示す(表2)。
【0044】
【表2】

【0045】
<比較例1:口内炎改善試験3>
実施例1と同様に、調整例5記載のハタケシメジエキス粉末剤を用いて猫への投与試験を行い、比較例1とした。投与開始後の各時期の獣医師による所見「著明改善(劇的に改善)、改善(明らかに改善)、やや改善(何らかの改善)、不変、悪化」を示す(表3)。
【0046】
【表3】

【0047】
本発明の酸性キシロオリゴ糖単独では7〜14日間の短期投与で十分な改善効果が見られた(実施例1)。また、酸性キシロオリゴ糖とハタケシメジエキスの併用では2〜3日で著明改善という劇的な効果を示した(実施例2)。一方、ハタケシメジ単独では1ヶ月間の投与でも十分な効果は認められなかった(比較例1)。以上の結果から、本発明の口内炎改善剤の有効性が明らかとなった。また、酸性キシロオリゴ糖とハタケシメジエキスの併用においては、ハタケシメジエキスの何らかの作用により酸性キシロオリゴ糖の口内炎改善作用が亢進し、鋭い切れ味を発揮するものと推定される。
【0048】
なお、実施例1及び実施例2の全ての猫は完治しており、投与終了1月後においても口内炎の再発は見られなかった。口内炎改善剤1及び2の試験期間中における猫の摂取状態は極めて良好であり、猫の服用剤としての問題はなかった。
【0049】
<実施例3:急性経口毒性試験>
調整例3の口内炎改善剤1と調整例4の口内炎改善剤2の60%水溶液を、それぞれ、ICR系マウス(雄、6週齢、日本チャールズリバー(株)製)に胃ゾンデを用いて、4週間、連日経口投与した(投与量:5g/マウス体重Kg/日、各群10匹)。投与期間及び投与後の4週間、マウス死亡例はなかった。また、ブランク(水投与群)と比較し、体重推移においても有意な差が認められなかった。これは、経口摂取における本発明の口内炎改善剤の安全性の高さを示す。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明で得られる酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジエキスを含有した口内炎改善剤は、安全性が高く、即効性及び優れた薬理活性を有しており、食品、医薬部外品及び医薬品分野に於いて利用することが出来る。また、特に、動物用の食品や医薬品としても用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖単独、または酸性キシロオリゴ糖及びハタケシメジエキスを含有することを特徴とする口内炎改善剤。
【請求項2】
該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、キシロースの平均重合度が5.0〜15.0であることを特徴とする請求項1に記載の口内炎改善剤。
【請求項3】
前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離して得たもの」であること特徴とする請求項1または請求項2に記載の口内炎改善剤。
【請求項4】
ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の口内炎改善剤。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の口内炎改善剤を含有することを特徴とするペット用機能性食品または食品。
【請求項6】
請求項5に記載のペットが猫であることを特徴とする機能性食品または食品
【請求項7】
請求項1〜4に記載の口内炎改善剤を含有することを特徴とするヒト用機能性食品または食品。

【公開番号】特開2007−22916(P2007−22916A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202403(P2005−202403)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】