説明

口唇化粧料

【課題】本発明は、口唇化粧料に関し、特に、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、及び一度塗りできれいに発色する化粧膜を演出することができる口唇化粧料に関するものである。
【解決手段】本発明は、(A)フィッシャートロプシュワックス、(B)マイクロクリスタリンワックス、(C)アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル、(D)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を含有することを特徴とする口唇化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸を含有する口唇化粧料に関し、特に、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、及び一度塗りできれいに発色する化粧膜を演出することができる口唇化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口紅やリップグロスに代表される口唇化粧料は、口唇に色彩を付与し、華やかな印象に仕上げるといった化粧効果を持つものである。近年、口唇化粧料には、色彩を付与する以外に、感触や発色の良さ等の様々な効果が求められており、その構成成分である、ワックス、油剤、及び粉体に関して検討がなされている。ワックスの配合比を規定し、保型性や塗布時ののびの良さを演出する技術(特許文献1)、また、ダイマージリノール酸誘導体を配合することで化粧効果の持続性を演出する技術(特許文献2)、また、特定のグリセロールまたはポリグリセリンと脂肪族酸またはヒドロキシル脂肪族酸および二塩基酸とのエステルを含むオイル状のゲル化剤を配合することで高いツヤ感と形状保持性を向上させる技術(特許文献3)、さらに、フィッシャートロプシュワックスと特定のワックスを組み合わせることで使用性と高温安定性を向上させる技術(特許文献4)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3909828号公報
【特許文献2】特開2004−269396号公報
【特許文献3】特表2010−521490号公報
【特許文献4】特開2009−234991号公報
【0004】
しかしながら、ワックスの配合比を規定することで、保型性や塗布時ののびの良さを演出する技術においては、高融点ワックスの比率が高くなるため、崩れるような軽い使用感に欠け、また、バルク塗布量が少ないため、一度塗りで発色する化粧膜を得ることが難しいといった欠点があった。また、ダイマージリノール酸誘導体を配合することで化粧効果の持続性を演出する技術に関しては、化粧持続効果は得られるものの、化粧膜が厚くなるため、負担感を生じてしまい、満足のいくものが得られなかった。また、特定のグリセロールまたはポリグリセリンと脂肪族酸またはヒドロキシル脂肪族酸および二塩基酸とのエステルを含むオイル状のゲル化剤を配合することで高いツヤ感は演出することができるものの、ゲル化剤がオイル状であるため、化粧膜がべたつき、使用時に違和感を感じる点で満足のいくものが得られなかった。さらに、フィッシャートロプシュワックスと特定のワックスを組み合わせることで使用性と高温安定性を向上させる技術においては、ワックスの配合量が多くなるにつれ、崩れるような軽い使用感に欠け、また、バルク塗布量が少ないため、一度塗りで発色する化粧膜を得ることが難しいといった欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本願は、塗布時にボロボロと崩壊するのではなく、とろけるように口唇に密着しながら崩れるような感触で化粧膜を形成し、軽い使用感を持ち、一度の塗布で十分な発色が得られる口唇化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
特定のワックス、すなわちフィッシャートロプシュワックスとマイクロクリスタリンワックスに、ペースト油であるアジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル、及びダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を組み合わせて使用することにより、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさが得られ、化粧料が使用時に崩れるように口唇に密着していくことで、唇へのバルク塗布量が多くなり、一度塗りで十分な発色が得られる口唇化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)フィッシャートロプシュワックス
(B)マイクロクリスタリンワックス
(C)アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル
(D)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)
を含有することを特徴とする口唇化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、及び一度塗りで発色する化粧膜を有する口唇化粧料に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明の口唇化粧料に使用される成分(A)のフィッシャートロプシュワックスは、フィッシャートロプシュ法により製造される合成の炭化水素ワックスである。特に制限されるものではないが、成分(A)の融点は70〜120℃のものであると、崩れるような使用感、一度塗りで発色する化粧膜を演出するものが得られ好ましい。この範囲の市販品としては、例えば、SASOLWAX C80、SASOLWAX H1(SASOL社製)、CIREBELLE108、CIREBELLE109L、CIREBELLE303(CIREBELLE社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明における、成分(A)は特に制限されないが3〜6質量%(以下、単に「%」とする)含有することが好ましい。この範囲であれば、崩れるような使用感、負担感のなさを演出する点で満足のいくものが得られる。
【0012】
本発明の口唇化粧料に使用される成分(B)のマイクロクリスタリンワックスは、主として石油から合成される炭化水素ワックスである。特に制限されるものではないが、成分(B)の融点は70℃〜100℃が好ましく、更には70℃〜80℃のものであると、崩れるような使用感、ツヤ感の演出の点で満足のいくものが得られ好ましい。これらの市販品としては、ビースクエア195A(バリコ社製)、ムルチワックスW−445(SONNE BORN社製)等が挙げられる。
【0013】
本発明における成分(B)は特に制限されないが1〜3%含有することが好ましい。この範囲であれば、崩れるような使用感、一度塗りで発色する化粧膜の演出の点で満足のいくものが得られる。
【0014】
本発明の口唇化粧料に含有される成分(A)と(B)は(A):(B)=1:1〜6:1の質量比で含有されることが好ましい。この範囲であれば、崩れるような使用感、一度塗りで発色する化粧膜の点で満足のいくものが得られる。
【0015】
本発明に使用される成分(C)のアジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステルは、混合脂肪酸ジグリセリンとアジピン酸とのジエステルであり、成分(A)及び(B)のワックスと、成分(D)と組み合わせることで、ツヤ感、一度塗りで発色する化粧膜を顕著に演出することができる。主として、カプリル酸、カプリン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸による混合脂肪酸ジグリセリンとアジピン酸とのジエステルであり、粘着性の半固形状油剤である、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling Name)ビスジグリセリルポリアシルアジペート−2が本発明において好適に使用できる。市販品としては、例えばSOFTISAN649(SASOL社製)等が挙げられる。
【0016】
本発明における成分(C)は特に制限されないが0.5〜10%含有されることが好ましい。この範囲であれば、ツヤ感、一度塗りで発色する化粧膜を演出する点で満足のいくものが得られる。
【0017】
本発明に使用される成分(D)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)は、主としてリノール酸を2〜3分子重合し得られたダイマー酸と、フィトステロール、イソステアリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールからなる混合アルコールとのエステルである。本発明において、ツヤ感、負担感のなさを演出するものである。市販品としては、INCI名がダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)であるPLANDOOL−S、PLANDOOL−H(日本精化社製)等が挙げられる。
【0018】
本発明に使用される成分(D)は特に制限されないが、12〜30%を含有することが好ましい。この範囲であれば、ツヤ感、負担感のなさの点で満足のいくものが得られる。また、成分(D)の含有量は、成分(C)との質量比が(C):(D)=1:4〜1:7の範囲であると、崩れるような使用感、負担感のなさの点で好ましい。
【0019】
本発明の口唇化粧料は、上記の必須成分(A)〜(D)の他に、通常化粧料に使用される成分、油性成分、粉体、界面活性剤、繊維、水性成分、紫外線吸収剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。
【0020】
油性成分としては、成分(A)〜(D)以外の化粧料に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリエチレンワックス、エチレン・プロピレンコポリマー、パラフィンワックス、モンタンワックス、ポリイソブチレン、ポリブテン、セレシンワックス、オゾケライトワックス等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のロウ類、ホホバ油、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、ロジン酸ペンタエリスリチル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド、リンゴ酸ジイソステアリル、トリメリト酸トリデシル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性オルガノポリシロキサン、ベヘニル変性オルガノポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、蔗糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
粉体としては、化粧料に一般に使用される粉体として用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的に例示すれば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン合成金雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の光輝性粉体、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機低分子性粉体、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体、レーヨン、ナイロン等の繊維、赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等や、赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。
【0022】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトールの脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル等のエステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等の非イオン界面活性剤、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩等のアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノールアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、アミノ酸タイプ、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型、レシチン等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0023】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、セルロース類、カルボキシビニルポリマー、アルキル付加カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子や、タンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の他の保湿剤を含有する事もできる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、α−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、1,2−ペンタジオール等が挙げられる。
【0024】
本発明の口唇化粧料は、口紅、リップグロス、口紅ベースコート、口紅オーバーコート、リップクリーム、リップトリートメント等が挙げられるが、特に口紅、リップグロスであることが好ましい。
【0025】
本発明の口唇化粧料は、ワックス、油剤を主成分とする油性、外層を油剤の連続相とする油中水型に適用されうるが、油剤や油溶性化合物である油性成分を連続相とする、水の含有量が1%以下である実質的に水を含まない油性が好ましい。形状は、液状、ペースト状、固形のいずれの形状でもよいが、崩れるような使用感を演出する上で固形状、さらにはスティック状であることが最も好ましい。さらに、崩れるような使用感、及び一度塗りで発色する化粧膜を効果的に演出する上で、口唇化粧料が固型状である場合の硬度は、テクスチャーアナライザーTAXT Plus/1(英弘精機(株)製)を用いてシリンダー型ステンレスプローブ2mmΦ、1mm/sec、35℃の条件下、10mm針入時の荷重値が50g以下であることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
実施例1〜10及び比較例1〜6:スティック状口紅
表1に示す組成のスティック状口紅を下記の製造方法により製造した。得られた各スティック状口紅について、以下に示す方法により、(a)崩れるような使用感、(b)ツヤ感、(c)負担感のなさ、(d)一度塗りで発色する化粧膜について評価した。この結果も併せて表1に示す。
【0028】
【表1】

※1:CIREBELLE109L(融点91〜96℃、CIREBELLE社製)
※2:ムルチワックスW−445(融点76〜82℃、SONNE BORN社製)
※3:PERFORMALENE655(融点96〜106℃、ニューフェーズテクノロジー社製)
※4:NC−1630キャンデリラワックス(融点70〜75℃、セラリカ野田社製)
※5:SOFTISAN649(SASOL社製)
※6:PLANDOOL−S(日本精化社製)
※7:パールリーム18(日油社製)
※8:PLANDOOL−G(日本精化社製)
※9:コスモール168ARNV(日清オイリオグループ社製)
※10:AEROSIL200(日本アエロジル社製)
※11:チミロンスーパーレッド(メルク社製)5%メチルポリシロキサン処理
【0029】
(製造方法)
A:成分(1)〜(13)を100℃〜110℃にて加熱溶解する。
B:Aに成分(14)〜(20)を加えて、均一に混合する。
C:Bを脱泡後、加熱してスティック状容器に直接流し込み、冷却後、口紅を得た。
【0030】
(評価方法)
(a)〜(d)の項目について、各試料について専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人が、各試料を口唇に塗布し、下記6段階絶対評価にて評点をつけ、パネル全員の評点合計からその平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
尚、評価項目(a)(b)は各試料を2度唇に塗布した直後に評価し、評価項目(c)については、試料を口唇に塗布し、パネルに通常の生活をしてもらった後8時間後に評価した。また、評価項目(d)については、唇に1度塗布した際に、試料の外観色と唇に塗布した色を比較して、塗布色が外観色と同じ色の発色を得られているかを評価した。
【0031】
<評価項目>
(a)崩れるような使用感
(b)ツヤ感
(c)負担感のなさ
(d)一度塗りで発色する化粧膜

<6段階絶対評価>
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:良い
3:やや良い
2:普通
1:やや悪い
0:悪い

<4段階判定基準>
◎:4点以上 :非常に良好
○:3点以上で4点未満 :良好
△:1.5点以上で3点未満 :やや不良
×:1.5点未満 :不良
【0032】
表1から明らかなごとく、本発明の実施例1〜10は、比較例1〜6に比べて、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、一度塗りで発色する化粧膜のすべての点で満足のいくものであった。
一方、成分(A)のフィッシャートロプシュワックスを含有しない比較例1では、口紅が固くなり、崩れるような使用感が得られずに、一度塗りで発色する化粧膜の点で満足がいくものではなく、化粧膜に負担感を感じるものであった。
成分(B)のマイクロクリスタリンワックスを含有しない比較例2では、比較例1と同様に口紅が若干固くなり、一度塗りで発色する化粧膜の点で満足のいくものが得られなかった。
成分(C)のアジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステルを含有しない比較例3では、口紅自体は柔らかいものの、唇に塗布する際に上滑りしてしまい、化粧膜がしっかり形成されずに、一度塗りで発色する化粧膜の点で満足のいくものが得られなかった。
また、成分(D)のダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を含有せずに重質流動イソパラフィンを配合した比較例4、及びダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)を含有した比較例5では化粧膜のべたつきが強く、負担感のなさの点で満足のいくものが得られなかった。
さらに、成分(A)、成分(B)のワックスを含有しない比較例6では、口紅が非常に固くなり、崩れるような使用感、一度塗りで発色する化粧膜の点で満足のいくものが得られなかった。
尚、実施例1〜10及び比較例2〜5は前記テクスチャーアナライザーを用いて35℃で測定した針入時の荷重値は50g未満であり、比較例1及び6は50gを超えるものであった。
【0033】
実施例11:スティック状リップグロス
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス※12 4
2.エチレン・プロピレンコポリマー※13 0.1
3.マイクロクリスタリンワックス※2 4
4.2−エチルヘキサン酸セチル 10
5.ポリブテン 10
6.重質流動イソパラフィン※14 5
7.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステリル/ベヘニル) 5
8.アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル※5 12
9.メチルフェニルポリシロキサン 5
10.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル)※6 5
11.酢酸液状ラノリン 10
12.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
13.リンゴ酸ジイソステアリル 10
14.2,6−ジ−ターシャリーブチル−パラクレゾール 0.1
15.シリル化処理無水ケイ酸※15 1
16.赤色202号 0.05
17.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)※16 5
18.ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・
エポキシ積層末※17 1
19.雲母チタン※18 5
20.酢酸トコフェロール 0.1
21.香料 0.1
※12:CIREBELLE108(融点79〜84℃、CIREBELLE社製)
※13:EPSワックス(日本ナチュラルプロダクツ社製)
※14:パールリーム24(日油社製)
※15:AEROSIL R972(日本アエロジル社製)
※16:メタシャイン1080RC−Y(日本板硝子社製)
※17:アルミフレークシルバー0.15mm(角八魚燐箔社製)
※18:TIMICA EXTRA BRIGHT 1500(BASF社製)
(製造方法)
A:成分(1)〜(14)を100〜110℃にて均一に溶解する。
B:Aに成分(15)〜(21)を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、加熱して口紅容器に直接流し込み、冷却後、リップグロスを得た。
実施例11のリップグロスは、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、一度塗りで発色する化粧膜のすべての点で満足のいくものであった。尚、実施例11のリップグロスは前記テクスチャーアナライザーを用いて35℃で測定した針入時の荷重値が50g未満であった。
【0034】
実施例12:金皿流し込みリップグロス
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス※1 1
2.エチレン・プロピレンコポリマー※13 4
3.マイクロクリスタリンワックス※19 3
4.2−エチルヘキサン酸セチル 10
5.パルミチン酸デキストリン※20 0.5
6.重質流動イソパラフィン※14 1
7.アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル※5 15
8.ジメチルポリシロキサン 5
9.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル)※21 35
10.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
11.リンゴ酸ジイソステアリル 5
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
13.酸化亜鉛 1
14.メチルシロキサン網状重合体※22 5
15.ベンガラ被覆雲母チタン※23 5
16.ローズマリーエキス 0.1
17.精製水 0.1
※19:ビースクエア195A(融点88〜93℃、バリコ社製)
※20:レオパールKL(千葉製粉社製)
※21:PLANDOOL−H(日本精化社製)
※22:トスパール2000B(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)
※23:クロイゾネルージュフランベ(BASF社製)2%パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩処理
(製造方法)
A:成分(1)〜(12)を100〜110℃にて均一に溶解する。
B:Aに成分(13)〜(17)を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、加熱して金皿に流し込み、冷却後、リップグロスを得た。
実施例12の金皿流し込みリップグロスは、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、一度塗りで発色する化粧膜のすべての点で満足のいくものであった。尚、実施例12のリップグロスは前記テクスチャーアナライザーを用いて35℃で測定した針入時の荷重値が50g未満であった。
【0035】
実施例13:固形リップクリーム
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス※1 5
2.カルナウバワックス※24 1
3.マイクロクリスタリンワックス※2 7
4.ロジン酸ペンタエリスリット 1
5.流動パラフィン 10
6.アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル※5 5
7.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
8.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル)※21 5
9.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
10.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
11.酸化亜鉛 1
12.ベンガラ 0.1
13.ナイロン繊維※25 0.1
14.天然ビタミンE 0.1
15.アルニカエキス 0.1
※24:精製カルナウバワックス1号(日本ナチュラルプロダクツ社)
※25:6デニール、0.5mm
(製造方法)
A:成分(1)〜(10)を100〜110℃にて均一に溶解する。
B:Aに成分(11)〜(15)を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、加熱して口紅容器に流し込み、冷却後、リップクリームを得た。
実施例13のリップクリームは、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさのすべての点で満足のいくものであった。尚、実施例13のリップクリームは前記テクスチャーアナライザーを用いて35℃で測定した針入時の荷重値が50g未満であった。
【0036】
実施例14:W/O型スティック状口紅
(成分) (%)
1.フィッシャートロプシュワックス※12 5
2.エチレン・プロピレンコポリマー※13 1
3.マイクロクリスタリンワックス※2 4
4.2−エチルヘキサン酸セチル 10
5.トリメチルシロキシケイ酸 2
6.重質流動イソパラフィン※14 2
7.ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステリル/ベヘニル) 5
8.アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル※5 12
9.デカメチルシクロペンタシロキサン 5
10.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル
/セチル/ステアリル/ベヘニル)※6 5
11.酢酸液状ラノリン 10
12.トリイソステアリン酸ジグリセリル 残量
13.セスキオレイン酸ソルビタン 3
14.精製水 10
15.1.3−ブチレングリコール 1
16.グリセリン 4
17.酸化チタン被覆ホウケイ酸(Ca/Al)※16 1
18.赤色226号 1
19.酸化チタン※26 1
20.黒酸化鉄※27 0.1
21.雲母チタン※18 0.1
22.ハチミツ 0.1
※26 2%パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩処理
※27 5%ジメチルポリシロキサン処理
(製造方法)
A:成分(1)〜(13)を100〜110℃にて均一に溶解する。
B:Aに成分(15)〜(22)を加え、均一に混合分散する。
C:Bを脱泡後、加熱して口紅容器に直接流し込み、冷却後、スティック状口紅を得た。
実施例14のスティック状口紅は、崩れるような使用感、ツヤ感、負担感のなさ、一度塗りで発色する化粧膜のすべての点で満足のいくものであった。尚、実施例14のスティック状口紅は前記テクスチャーアナライザーを用いて35℃で測定した針入時の荷重値が50g未満であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D);
(A)フィッシャートロプシュワックス;
(B)マイクロクリスタリンワックス;
(C)アジピン酸ジグリセリル混合脂肪酸エステル;
(D)ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル);
を含有することを特徴とする口唇化粧料。
【請求項2】
上記成分(A)のフィッシャートロプシュワックスと、上記成分(B)のマイクロクリスタリンワックスを(A):(B)=1:1〜6:1の質量比で含有することを特徴とする請求項1記載の口唇化粧料。
【請求項3】
上記成分(A)を3〜6質量%、及び上記成分(B)を1〜3質量%含有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の口唇化粧料。
【請求項4】
上記成分(C)を0.5〜10質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の口唇化粧料。
【請求項5】
上記成分(D)を12〜30質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の口唇化粧料。

【公開番号】特開2012−184216(P2012−184216A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152828(P2011−152828)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】