説明

口腔ケアシステムのためのペプチド組成物

口腔ケア組成物、口腔ケアシステム、口腔表面結合ペプチド、および口腔表面への粒子の適用方法が提供される。口腔ケアシステムは、口腔表面に対する親和性を有する第1の結合要素と、粒子のリガンド特性に対する親和性を有する第2の結合要素とを含む少なくとも1つのペプチド成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年3月30日に出願された米国仮特許出願第61/164,476号の利益を主張する。
【0002】
本明細書には、ペプチドベースの組成物、口腔ケアシステム、および口腔表面への粒子の適用方法が提供されている。
【背景技術】
【0003】
歯の美容的外観は、多くの人々にとって非常に重要である。これらの人々は、通常、「輝く」笑顔および白い歯を望んでいる。残念なことに、歯の表面の色は、一般に、歯科材料の吸収性のために時間と共にくすんで変色する。
【0004】
歯の着色は、年齢および遺伝的性質などの内因性因子と、種々の食品、飲料、薬物、および喫煙によって生じる染色などの外因性因子との組み合わせによって影響を受ける。定期的なブラッシングおよびフロッシングを用いても、染色性および変色性の物質にさらされると、顕著な変色が生じ得る。従って、歯を急速かつ安全に白くするための製品および方法が必要とされている。
【0005】
歯の変色の問題に対する1つの解決法は、ポーセレン、複合体またはセラミックで作られたベニヤフェーシング(veneer facing)の適用である。しかしながら、ベニヤフェーシングの適用は高価であり、訓練された歯科専門家の助けを必要とする。
【0006】
歯を白くするために漂白剤が使用され得る。一部の漂白剤の適用は、歯科専門家の助け(すなわち、高濃度の酸化剤の適用)および/または多数回の適用を必要とすることがあり、所望の白化度を達成できないこともある。店頭販売での漂白製品は、通常、より低濃度の漂白剤を使用し、多くの場合、所望の効果を達成するために製品を多数回適用する必要がある。しかしながら、漂白剤の使用は、化学熱傷、歯肉に対する刺激、および歯の敏感性の増大を含むいくつかの望ましくない副作用と関連している。
【0007】
歯を白くするために白色着色剤も使用され得る。通常、無毒性の着色剤は白色顔料であるか、あるいはより「自然な」白色の外観を達成するために白色顔料と他の非白色顔料との組み合わせである。しかしながら、歯の美容的外観を改善するための顔料粒子の使用は、一般に、所望の美容効果を達成するために必要とされる耐久性が欠けている。
【0008】
歯のホワイトニング剤の結合耐久性を高めるために、種々の試みが成されている。特許文献1には、歯のホワイトニング組成物として、シロキサン接着剤およびホワイトニング微粒子(ヒドロキシアパタイト粉末)の使用が記載されている。Shimakoらによる特許文献2には、(A)二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、および酸化ジルコニウムから選択される1つまたは複数の顔料と、(B)プルランと、(C)リゾチーム、カチオン化セルロースおよびポリリジンから選択される1つまたは複数のメンバーとを含む歯のホワイトニング組成物が開示されており、成分(B)および(C)は、金属酸化物粉末を歯の表面に取り付けるために使用される。どちらの参考文献にも、歯の表面に対する強力な親和性を有する第1の結合要素と、白色顔料などの微粒子状の有益剤(benefit agent)のリガンド特性に非共有結合で結合することができる第2の結合要素とを含むペプチドベースの試薬を含む歯のホワイトニングシステムは開示されていない。
【0009】
共有される特許文献3には、毛髪、皮膚および爪に高い親和性で結合するペプチド配列、ならびに毛髪、皮膚および爪のためのペプチドベースのコンディショナーおよび着色剤が開示されている。同時係属中の共有の特許文献4、5、および6には、バイオパニングによって同定されるいくつかの歯結合ペプチドが開示されている。
【0010】
歯を白くするための顔料の使用に加えて、様々な他の有益剤を口腔表面に送達するための粒子が使用されてもよい。非限定的な例としては、酵素、抗プラーク剤、抗染み剤、抗菌剤、抗う蝕剤、風味剤、冷却剤、または催唾剤を挙げることができる。従って、歯の表面などの口腔表面に対する微粒子状の有益剤の耐久性を高めるための組成物および方法を提供することが一般的に必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005−0069501号明細書(Ibrahimら)
【特許文献2】PCT公報の国際公開第2006/068011号パンフレット
【特許文献3】米国特許第7,220,405号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005−0226839号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2008−0152600号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008−0280810号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決すべき問題は、口腔ケアシステム、口腔ケアペプチド、および口腔ケア用有益剤をペプチド媒介により口腔表面に適用するためのこのような組成物の使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、口腔ケアシステム、口腔ケアペプチド、口腔ケアペプチドを含む口腔ケア組成物、および口腔ケア用有益剤を口腔表面に適用するための方法が提供されている。
【0014】
本明細書では、
(a)(i)口腔表面に対する親和性を有し、MB50値が10−5モル濃度以下である第1の結合要素、および
(ii)第2の結合要素
を含むペプチド組成物と、
(b)0.01ミクロン〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有する粒子を含む組成物であって、上記粒子が、
(i)有益剤、および
(ii)リガンド特性
を含む組成物と、
を含む口腔ケアシステムであって、第2の結合要素およびリガンド特性が非共有結合またはキレート化によって互いに会合される口腔ケアシステムが提供されている。
【0015】
一実施形態では、粒子を含む組成物は上記粒子の安定な分散液である。いくつかの実施形態では、提供される口腔ケアシステムは安定な分散液を有し、安定な分散液は電荷的に安定化されている。また、安定な分散液のゼータ電位の絶対値が少なくとも25mVであるシステムも提供される。安定な分散液は立体的に安定化されていてもよい。安定な分散液は、イオン性分散剤、非イオン性分散剤またはこれらの組み合わせなどの分散剤を含んでもよい。
【0016】
一実施形態では、第2の結合要素とリガンド特性との間の会合は、イオン結合に基づく、水素結合に基づく、キレート化に基づく、生物学的親和性に基づく、静電気に基づく、またはこれらの組み合わせである。
【0017】
一実施形態では、第2の結合要素およびリガンド特性は、ビオチンおよびアビジン、ビオチンおよびストレプトアビジン、ストレプトアビジンタグおよびストレプトアビジン、マルトース結合タンパク質およびマルトース、マルトース結合タンパク質およびアミラーゼ、ポリヒスチジンタグおよび金属イオンを含む親和性媒体、グルタチオンS−トランスフェラーゼおよびグルタチオン、エピトープタグおよび抗体、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
別の実施形態では、第1の結合要素は複数の口腔表面結合ペプチドを含み、いくつかの態様では、複数の口腔表面結合ペプチドは、同じ口腔表面結合ペプチドを2つ以上含む。
【0019】
別の実施形態では、口腔表面は歯の表面であり、歯の表面はエナメル質またはペリクル(pellicle)である。いくつかの態様では、第1の結合要素は、口腔表面に対して、粒子に対するよりも大きい結合親和性を有する。
【0020】
別の実施形態では、有益剤は、着色剤、ホワイトニング剤、酵素、抗プラーク剤、抗染み剤、抗菌剤、抗う蝕剤、風味剤、冷却剤、催唾剤またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0021】
別の実施形態では、有益剤は着色剤であり、着色剤は、TiOなどの顔料であり得る。いくつかの態様では、ペプチド組成物および粒子は、別の容器において提供される。
【0022】
別の実施形態では、口腔ケアシステムは、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、120、121、122、123、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、および144からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0023】
別の実施形態では、口腔ケアシステムは、配列番号145、146、147、148、149、150、および151からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0024】
別の実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号161、162、163、および166からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
【0025】
別の実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号116、117、119、152、153、154、155、156、157、165、および168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第2の結合要素を含む。
【0026】
本明細書では、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、120、121、122、123、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、および144からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0027】
一態様では、配列番号161、162、163、および166からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0028】
上記ポリペプチドを1つまたは複数含む口腔ケア組成物も提供される。
【0029】
本明細書では、口腔ケア用有益剤を口腔表面に適用するための方法も提供されており、本方法は、
(a)(i)(1)口腔表面に対する親和性を有し、MB50値が10−5モル濃度以下である第1の結合要素、および
(2)第2の結合要素
を含むペプチド組成物と、
(ii)0.01ミクロン〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有する粒子を含む組成物であって、上記粒子が、
(1)有益剤、および
(2)リガンド特性
を含む組成物と、
を含む口腔ケアシステムであって、第2の結合要素およびリガンド特性が非共有結合またはキレート化によって互いに会合される口腔ケアシステムを提供するステップと、
(b)口腔表面を(a)の口腔ケアシステムと接触させ、それにより、有益剤が上記口腔表面に適用されるステップと
を含む。
【0030】
本方法の一実施形態では、口腔表面はまずペプチド組成物と接触され、次に粒子を含む組成物と接触される。
【0031】
本方法の一実施形態では、粒子を含む組成物は上記粒子の安定な分散液である。いくつかの実施形態では、安定な分散液は電荷的に安定化されている。
【0032】
また、安定な分散液のゼータ電位の絶対値が少なくとも25mVである口腔ケアシステムおよび方法も提供される。安定な分散液は立体的に安定化されていてもよい。安定な分散液は、イオン性分散剤、非イオン性分散剤またはこれらの組み合わせなどの分散剤を含んでもよい。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[生物学的配列の簡単な説明]
本発明は、以下の詳細な説明および添付の配列の記述(本出願の一部を形成する)からより完全に理解することができる。
【0034】
以下の配列は、37C.F.R.1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)(WIPO)標準ST.25(1998年)ならびにEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)ならびに実施細則の第208条および付属書C)と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で規定される規則に従う。
【0035】
配列番号1〜40は、口腔表面結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0036】
配列番号41〜44、46、48、50〜62、および160は、ペプチドリンカーのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号45、47、および49はブランクである。
【0038】
配列番号63は、プライマーのヌクレオチド配列である。
【0039】
配列番号64〜94は、口腔表面結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号95は、合成ペプチド対照のアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号96〜115は、口腔表面結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号116は、ヒスチジン親和性タグ「HAT」ポリペプチドのアミノ酸配列である。
【0043】
配列番号117は、帯電ペプチドブロックのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号118は、実施例10に記載されるようないくつかの配列に対するN末端付加のアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号119は、ポリヒスチジンのアミノ酸配列である。
【0046】
配列番号120〜123は、ペプチド媒介によるCo−NTAポリスチレンビーズのエナメル質への接着を実証するために使用されるペプチド組成物のアミノ酸配列である。
【0047】
配列番号124は、シリカ結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号125〜144は、ペリクル結合ペプチドを含む第1の結合要素のアミノ酸配列である。
【0049】
配列番号145〜151は、負に帯電した顔料への静電結合のために設計されたペリクル結合性の結合体(pellicle−binding conjugate)のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号152〜157は、第2の結合要素のアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号158は、可動性の非帯電ペプチドリンカーのアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号159は、ベクターpKSI(C4)E−HC77643のヌクレオチド配列である。
【0053】
配列番号161は、ペプチドDenP03−Cのアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号162は、ペプチドDenP03−Dのアミノ酸配列である。
【0055】
配列番号163は、ペプチドDE118のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号164は、ペプチドDE118の第1の結合要素のアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号165は、ペプチドDE118の第2の結合要素のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号166は、ペプチドDE101のアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号167は、ペプチドDE101の第1の結合要素のアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号168は、ペプチドDE101の第2の結合要素のアミノ酸配列である。
【0061】
[詳細な説明]
本明細書には、組成物、口腔ケアシステム、粒子を口腔表面に非共有結合で結合させるためのその使用が提供されている。本明細書において記載される口腔ケアシステムは、口腔表面と粒子との間の相互作用を促進するためにペプチドベースの組成物を含む。
【0062】
本開示において、多数の用語および略語が使用される。他に具体的に記載されない限りは以下の定義が適用される。
【0063】
本明細書で使用される場合、本発明の要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」、および「the」は、その要素または成分の事例(すなわち、発生)の数に関して非限定的であることが意図される。従って、「a」、「an」および「the」は1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、要素または成分の単数の語形は、その数が明らかに単数形であることを意味しない限りは複数形も含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲において言及されるような規定の特徴、整数、工程、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、成分またはそれらの群の存在または付加を排除しない。「含む」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0065】
本明細書で使用される場合、使用される原料または反応物の量を修正する「約」という用語は、例えば、実際に濃縮物の製造または溶液の使用のために使用される典型的な測定および液体処理手順によって、これらの手順における不注意な誤差によって、組成物の製造または方法の実行のために使用される原料の製造、供給源、または純度の差異によって、そして同様のことによって生じ得る数量の変動を指す。また「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物に対する平衡条件が異なるために異なる量も包含する。「約」という用語によって修正されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲はその量と同等の量を含む。
【0066】
存在する場合、全ての範囲は包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「1〜5」の範囲が列挙される場合、列挙された範囲は、「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2および4〜5」、「1〜3および5」などの範囲を含むと解釈されるべきである。
【0067】
本明細書で使用される場合、「口腔ケアシステム」という用語は、口腔表面への粒子の適用(すなわち、非共有結合による結合)を促進する1つまたは複数のペプチド試薬と、粒子を含む組成物とを含むシステムを指す。一実施形態では、粒子を含む組成物は、粒子の安定な分散液である。口腔表面は、歯肉、舌、および頬などの軟組織を含む口腔内に見られる表面を含む。一実施形態では、口腔表面は、歯のエナメル質、ヒドロキシアパタイト、歯のペリクル、およびペリクル被覆ヒドロキシアパタイトを含む。好ましい実施形態では、口腔表面は、歯のエナメル質または歯のペリクルを含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「口腔ケア組成物」という用語は、口腔ケアシステムと、経口的に許容可能なキャリア媒体などの口腔ケア製品中に通常見られる成分とを含む組成物を指す。
【0069】
本明細書では、表面において所望の効果をもたらすように口腔表面への粒子の適用が企図される。このような効果は利益であると考えることができ、従って粒子は「有益剤」を含む。一実施形態では、利益はホワイトニングである。好ましい実施形態では、粒子は、ホワイトニング効果を生じる有益剤を含む。このような有益剤は、ホワイトニング剤または着色剤であってもよい。好ましい着色剤は、TiOなどの顔料を含む。一実施形態では、有益剤は、TiOを含む粒子またはシリカ被覆TiO粒子であってもよい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「システムのペプチドベースの部分」という用語は、少なくとも1つの第2の結合要素に結合された少なくとも1つの第1の結合要素を有する少なくとも1つのペプチドを含む口腔ケアシステムのペプチド成分を指す。一実施形態では、口腔ケアシステムのペプチドベースの部分は、第2の結合要素に共有結合された第1の結合要素を含む。
【0071】
「ペプチド組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、口腔ケアシステムのペプチドベースの部分を指す。ペプチド組成物は、好ましくは、「第1の結合要素」および「第2の結合要素」を含む。「第1の結合要素」は、スキャフォールドタンパク質のフレームワークを欠くと共に免疫グロブリンフォールドを欠いている単鎖ペプチドである。従って、第1の結合要素は、スキャフォールドタンパク質、抗体、抗体断片(Fab)、ならびに単鎖可変断片(scFv、免疫グロブリンの重鎖(V)および軽鎖(V)の可変領域の融合)および単一ドメインラクダ科抗体を含まない(Muyldermans,S.,Rev.Mol.Biotechnol.(2001年)74:277−302)。いくつかの実施形態については、第1の結合要素および第2の結合要素は互いに共有結合されることが想定される。例えば、本明細書において記載または例示される特定の実施形態では、ペプチド組成物は2つの結合要素で構成される線状ペプチドであるが、ただし、第2の結合要素はバイオパニングされたペプチドではない。
【0072】
[第1の結合要素]
「第1の結合要素」は、本明細書で使用される場合、口腔表面に対する強力な親和性を有する1つまたは複数の口腔表面結合ペプチドを含む線状ペプチドを指す。一実施形態では、第1の結合要素は、歯結合ペプチド(例えば、歯のエナメル質および/またはペリクルに対する強力な親和性を有するように選択されたペプチド)などの複数の口腔表面結合ペプチドを含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「口腔表面結合ペプチド」という用語は、口腔表面に結合するペプチドを指す。一実施形態では、口腔表面結合ペプチドは、ディスプレイライブラリーのバイオパニングによって同定および/または獲得される天然に存在しないペプチドである。別の実施形態では、バイオパニングから得られる2つ以上の口腔表面結合ペプチドが組み合わせられて第1の結合要素を形成してもよい。より長い結合領域を形成するための2つ以上の口腔表面結合ペプチドの組み合わせは、本明細書では、「結合ドメイン」と称してもよい。一実施形態では、口腔表面結合ペプチドは、長さが7アミノ酸〜60アミノ酸であり、より好ましくは長さが7アミノ酸〜25アミノ酸、最も好ましくは長さが7〜20アミノ酸である。好ましい実施形態では、口腔表面ペプチドは、コンビナトリアルに生成されたペプチドである。
【0074】
第1の結合要素は、好ましくは、バイオパニングによって同定される1つまたは複数の口腔表面結合ペプチドを含む。第1の結合要素が複数の口腔表面結合ペプチドを含む場合、これらは、場合によりペプチドスペーサーによって分離された、同一の配列を有する複数のペプチド、または異なる配列を有するペプチドの集合体であってもよい。異なる配列を有する複数のペプチドが使用される場合、これらは全て、同じ口腔表面に結合するように選択されてもよい(例えば、全てがペリクル結合ペプチド)。しかしながら、他の表面または基質に結合するペプチドも包含され得ることも企図されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の結合要素は、以下に記載される少なくとも1つの「歯結合ペプチド」を含む。いくつかの実施形態では、第1の結合要素は単一の口腔表面結合ペプチドを含む、または単一の口腔表面結合ペプチドからなる。
【0075】
第1の結合要素は、長さが7〜600アミノ酸、好ましくは長さが14〜600アミノ酸、より好ましくは長さが7〜200アミノ酸、最も好ましくは長さが14〜200アミノ酸の範囲であってもよい。
【0076】
口腔表面結合ペプチドは、歯の表面に結合するペプチドである「歯結合ペプチド」を含むことが認識されるであろう。「歯の表面」という用語は、歯のエナメル質(通常、専門的なクリーニングまたはポリッシングの後に露出される)または歯のペリクル(唾液タンパク質を含む獲得表面)で構成された口腔表面を指す。従って、「ペリクル結合ペプチド」または「エナメル質結合ペプチド」も含まれる。ヒドロキシアパタイトは、天然の歯のペリクル表面を模倣するために唾液糖タンパク質で被覆されてもよい。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ペリクル」および「歯のペリクル」という用語は、歯冠の表面上に生じる唾液糖タンパク質に由来する薄膜(通常、約20nm〜約200μmの範囲の厚さ)を指すであろう。毎日の歯磨きはペリクル表面の一部を除去する傾向しかないが、研磨性の歯のクリーニングおよび/またはポリッシング(通常、歯科の専門家による)は、歯のエナメル質表面のより多くを露出させるであろう。
【0078】
本明細書で使用される場合、「エナメル質」および「歯のエナメル質」という用語は、歯の外層を形成する高度に石灰化した組織を指すであろう。エナメル質層は、主として、水およびいくらかの有機材料と共に結晶性リン酸カルシウム(すなわち、ヒドロキシアパタイト)で構成される。
【0079】
同時係属中の共有の米国特許出願公開第2008−0280810−A1号明細書に開示されている歯結合ペプチドの例は、表Aにおいて提供される。付加的な歯結合ペプチドは本明細書において例示されている。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
第1の結合要素は、さらに、リンカー(「L」)および/またはスペーサー(「S」)を含んでもよい。スペーサーは、有機スペーサーおよび/またはペプチドスペーサーであってもよい。一実施形態では、スペーサーは、エタノールアミン、エチレングリコール、6個の炭素原子の鎖長を有するポリエチレン、3〜6個の繰り返し単位を有するポリエチレングリコール、フェノキシエタノール、プロパノールアミド、ブチレングリコール、ブチレングリコールアミド、プロピルフェニル、エチルアルキル鎖、プロピルアルキル鎖、ヘキシルアルキル鎖、ステリルアルキル鎖、セチルアルキル鎖、およびパルミトイルアルキル鎖からなる群から選択される。別の実施形態では、スペーサーはペプチドスペーサーである。適切なスペーサーおよびリンカーは、当該技術分野において、例えば、米国特許第7,220,405号明細書、ならびに米国特許出願公開第2005−0226839号明細書、米国特許出願公開第2007−0196305号明細書、米国特許出願公開第2006−0199206号明細書、米国特許出願公開第2007−0065387号明細書、米国特許出願公開第2008−0107614号明細書、米国特許出願公開第2008−0280810号明細書、米国特許出願公開第2007−0110686号明細書、米国特許出願公開第2006−0073111号明細書、米国特許出願公開第2006−0222609号明細書、米国特許出願公開第2008−0175798号明細書、および米国特許出願公開第2007−0265431号明細書などにおいて記載されている。適切なペプチドリンカー/スペーサーのいくつかの例は表Bにおいて提供される。
【0083】
【表3】

【0084】
また、参照によって本明細書中に援用される同時係属中の米国特許出願第12/632,831号明細書(Chengら)に記載されるような剛性ペプチドリンカーも適している。剛性リンカーには、一般式:(Xaa1−Xaa1−Ala−Ala−Xaa2−Xaa2)(配列番号57)または(Xaa1−Ala−Ala−Ala−Xaa2)(配列番号58)または(Xaa1−Ala−Ala−Ala−Xaa2−Xaa3−Xaa3)(配列番号59)(式中、Xaa1=GluまたはAsp、Xaa2=LysまたはArg、そしてXaa3=Leu、Val、Ile、Phe、Trp、MetまたはTyrであり、d=2〜10である)の塩橋安定化α−らせん体形成配列が含まれてもよいが、これらに限定されない。また、式:(Xaa4−Pro)(配列番号60)または(Pro−Xaa4)(配列番号61)または[(Xaa4−Pro)−Gly−Gly](配列番号62)(式中、e=2〜20であり、Xaa4は酸性または塩基性アミノ酸である)の伸長プロリンジペプチドも含まれる。
【0085】
[有益剤]
本明細書で使用される場合、「有益剤」という用語は、所望の/有益な効果または属性を口腔表面に提供する化合物または物質に適用される一般用語である。一実施形態では、口腔表面のための有益剤は、二酸化チタンなどの白色顔料およびヒドロキシアパタイトまたはジルコンなどの白色鉱物を含むがこれらに限定されない着色剤を含んでもよい。別の実施形態では、有益剤は、ホワイトニング剤、ならびに例えば、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、エステラーゼ、および多糖類ヒドロラーゼなどの酵素も含んでもよい。別の態様では、有益剤は、抗プラーク剤、抗染み剤、および抗菌剤を含んでもよい。抗菌剤には、抗菌ペプチド、マガイニン、セクロピン、殺菌剤(microbiocide)、トリクロサン、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、第4級アンモニウム化合物、クロロキシレノール(chlorxylenol)、クロロキシエタノール(chloroxyethanol)、フタル酸およびその塩、チモール、およびこれらの組み合わせが含まれてもよいが、これらに限定されない。また、有益剤は、フッ化ナトリウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウムなどの抗う蝕剤、およびウィンターグリーン油、ペパーミント油、もしくはスペアミント油、またはサリチル酸メチル、ユーカリプトール、もしくはバニリンなどの風味剤を含んでもよい。また、有益剤は、いくつか名前を挙げると、コハク酸ベースの冷却化合物などの冷却剤、および催唾剤も含んでもよい。本明細書で使用される場合、「催唾剤」という用語は、口腔ケア組成物中に存在する場合、ユーザーにおいてより多くの唾液分泌を促進する材料を指す。一実施形態では、有益剤は、口腔ケア製品における使用が認可された経口的に許容可能な材料である。別の実施形態では、経口的に許容可能な有益剤は、歯の美容的外観を改善するために使用される。
【0086】
いくつかの実施形態では、有益剤は微粒子であってもよい。他の実施形態では、有益剤は粒子に会合または負荷させてもよく、粒子は次に、リガンド特性を介して第2の結合要素と会合されるであろう。有益剤が本質的に微粒子状であろうと、粒子と会合していようと、いずれの場合も粒径は上記の平均粒径範囲内にとどまることが好ましい。
【0087】
本明細書に記載される口腔ケアシステムのために、有益剤は、平均粒径が少なくとも約0.01ミクロン〜約10ミクロンの微粒子状であるのが好ましい。さらにより好ましいのは、約0.1ミクロン〜約10ミクロンまたは約0.1ミクロン〜約1ミクロンの平均粒径を有する有益剤である。動的光散乱を用いて、約10ミクロン未満の粒径を測定してもよい。
【0088】
「平均粒径」は専門用語であり、均一または不規則な形状および寸法にかかわらず粒子の集団の特徴を説明するために使用される。平均粒径は、光散乱法などのなどの当該技術分野において知られている方法によって決定される。本明細書で言及される「粒径」が、レーザー回折(ISO 13320−1:1996、International Organization for Standards,Geneva,Switzerlandを参照)および/または動的光散乱(ISO 13321:1996を参照)方法(両方とも当該技術分野において知られている)などの光散乱法を用いて得られる粒径測定値を指し得ることは、当業者によって理解されるであろう。例示的なシステムは、Malvern Instruments Ltd.Worcestershire,United Kingdomから入手可能である。一実施形態では、粒径は、動的光散乱を用いて測定される。
【0089】
第2の結合要素およびリガンド特性の親和性対
「第2の結合要素」という用語は、本明細書で使用される場合、適用される有益剤のリガンド特性に対する親和性を有するように選択されたペプチド組成物の一部を指す。理論により束縛されないが、第2の結合要素は、「プレイ」リガンド特性を介するペプチド組成物と粒子との相互作用を促進する「ベイト」の役割を果たす。本発明の目的は、バイオパニング方法(ファージディスプレイ、mRNAディスプレイなど)による選択を必要とすることなくリガンド特性を介して粒子に結合する第2の結合要素を提供することである。第2の結合要素およびリガンド特性は、通常、粒子またはリガンド特性に対するバイオパニングに基づかない互いに対する親和性を有するであろう。
【0090】
本明細書で使用される場合、「リガンド特性」という用語は、有益剤(すなわち、「ベイトおよびプレイセット」の「プレイ」成分)に関連する特性を指し、有益剤をペプチド組成物の第2の結合ドメイン(すなわち、「ベイトおよびプレイセット」の「ベイト」成分、本明細書では「親和性セット」とも称される)と会合させる。いくつかの実施形態では、リガンド特性は有益剤に固有のものであってもよく、例えば、有益剤が負に帯電された顔料であり、第2の結合ドメインが負電荷と会合されてもよいし、あるいは別の例として、有益剤が金属または金属イオンであり、第2の結合ドメイン(「ベイト」)がその金属または金属イオン(「プレイ」)と会合されてもよい。他の実施形態では、リガンド特性を有益剤に付与してもよく、例えば、有益剤はストレプトアビジンに共有結合されてもよく、第2の結合ドメインは、ストレプトアビジン(「プレイ」)と会合されるビオチンである。あるいは、有益剤は、それ自体がペプチド断片と結合されていてもよく、第2の結合ドメイン(「ベイト」)は結合されたペプチド断片(「プレイ」)と会合される。有益剤は、リガンド特性が会合されていても、約0.01ミクロン〜約10ミクロンの平均粒径を保持することが好ましい。さらにより好ましいのは、約0.1ミクロン〜約1ミクロンの平均粒径である。
【0091】
適切な第2の結合要素およびリガンド特性のセットには、イオン結合、水素結合、疎水性相互作用、静電相互作用、キレート化、またはこれらの組み合わせによって相互作用をするものが含まれる。ただし、具体的に言うと、第2の結合要素およびリガンド特性の共有結合による物理的会合は除外される(すなわち、第2の要素および有益剤のリガンド特性は、共有結合によって互いに会合されない)。従って、適切な会合はイオン結合に基づく、水素結合に基づく、疎水結合に基づく、静電相互作用に基づく、またはキレート化に基づく成分であるか、あるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、第2の結合要素およびリガンド特性のセットは、アビジンに対するビオチンの親和性、ストレプトアビジンに対するビオチンの親和性、ストレプトアビジンに対するストレプトアビジンタグの親和性、マルトースに対するマルトース結合タンパク質の親和性、アミラーゼに対するマルトース結合タンパク質の親和性、金属(例えば、IMAC樹脂などのマトリックスに固定化された金属イオン)に対するポリヒスチジンタグの親和性、グルタチオンに対するグルタチオンS−トランスフェラーゼの親和性、抗体に対するエピトープタグの親和性、またはこれらの組み合わせに基づく。
【0092】
1つの好ましい態様では、第2の結合要素と有益剤のリガンド特性との間の会合はキレート化である。本明細書で使用される場合、「キレート化に基づく」対という用語はルイス酸およびルイス塩基の配位共有結合による錯体を指し、ここで、ルイス塩基はルイス酸に2つ以上の孤立電子対を供与する。キレート化に基づく対の例は、種々のアミノ酸側鎖と金属イオンとの相互作用である。キレート化に基づく対において使用するための例示的な金属には、二価の金属、例えばニッケル、銅、コバルト、および亜鉛が含まれる。
【0093】
ポリヒスチジンタグは、多くの場合、固定化された金属イオン、例えばニッケル(Ni2+)、銅(Cu2+)、コバルト(Co2+)、または亜鉛(Zn2+)などに結合するために使用される。金属イオンは、通常、ニトリロトリ酢酸(NTA)−アガロース、HisPurコバルト樹脂、イミノジ酢酸(IDA)樹脂、カルボキシルメチルアスパルタート(CMA)樹脂、TALON(登録商標)(または他の任意の固定化金属アフィニティークロマトグラフィ(IMAC)樹脂)などの媒体/樹脂中に包含される。金属親和性樹脂は、Thermo Fisher Scientific(Rockford,IL)、EMD BioSciences(Madison,WI)、およびClontech(Palo Alto,CA)などの種々の業者から市販されている。ポリヒスチジン親和性タグは、「HAT」タグ(KDHLIHNVHKEFHAHAHNK、配列番号116)(Clontech Laboratories,Mountain View,CA)などの、合成または天然に存在するヒスチジン親和性タグであってもよい。一実施形態では、ポリヒスチジンタグは、6〜10個のヒスチジン残基、好ましくは6〜8個のヒスチジン残基、最も好ましくは6個のヒスチジン残基を含む。別の実施形態では、ポリヒスチジンタグは、長さが6〜約10個、6〜約8個、または約6個の連続ヒスチジン残基の範囲である。
【0094】
一実施形態では、ペプチド成分は、微粒子状有益剤の表面の固定化金属イオン(すなわち、リガンド特性)に結合することができる少なくとも1つのポリヒスチジンタグ(例えば、第2の結合要素)を含む。別の実施形態では、微粒子状有益剤は、粒子の表面に有効量の適切な媒体(例えば、金属キレート樹脂)を含む。金属キレート樹脂は、微粒子状有益剤の表面の部分的または完全なコーティングとして適用されてもよい。別の実施形態では、微粒子状有益剤の表面に適用される樹脂は、四座の金属キレート剤を含む(参照によって本明細書中に援用される米国特許第5,962,641号明細書)。別の実施形態では、親和性対は、ポリヒスチジンタグ、すなわち、マイクロモルの親和性で樹脂固定化金属イオンに結合することができる有効な数のヒスチジン残基を含むアミノ酸モチーフを含むキレート化対である。ポリヒスチジンタグは第2の結合要素の役割を果たすペプチド成分中に組み込まれ、固定化金属イオンは微粒子状有益剤中に組み込まれ、ここで、金属イオンは、ニッケル、銅、コバルト、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0095】
一実施形態では、第2の結合要素および有益剤のリガンド特性は、イオン結合または静電相互作用で構成され得る。例えば、親和性セットはイオン結合対を含むことができる。本明細書で使用される場合、「イオン結合」対という用語は、一方が正味の正電荷を有し、他方が正味の負電荷を有する2つの部分の会合錯体を指す。静電相互作用は、共有結合の強度と同程度である最強の結合の1つであり、およそ50nmの長い範囲を有する(Isrealachvili,J.N.,Intermolecular and Surface Forces,第2版,Academic Press:New York,NY(1992年)32−34頁)。
【0096】
特定のアミノ酸は、イオン性側基、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖のカルボキシル基、ならびにリジン、アルギニン、およびヒスチジン残基にあるアミノ基を含有する。帯電アミノ酸のいずれかがペプチド配列内にある場合、ペプチドの中には、正味の電荷(正または負)および特定の電荷分布を含有するものが多い。第2の結合要素の全体(または一部)の正味の電荷は、逆に帯電した有益剤のリガンド特性との静電引力を引き起こすか、あるいは同様に帯電した有益剤の親和性対の第2の部分との静電反発力を引き起こすことができる。
【0097】
イオン(静電)結合対の例としては、正帯電微粒子状有益剤に結合された負帯電ペプチド、正帯電コーティング(例えば、アニオン交換樹脂)で構成または被覆された微粒子状有益剤に結合された負帯電ペプチド、負帯電微粒子状有益剤(例えば、マイカ、シリカ)に結合された正帯電ペプチド、および負電荷を提供するコーティング(例えば、SO−2などの基を有するカチオン交換樹脂)を含む微粒子状有益剤に結合された正帯電ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
微粒子状有益剤のリガンド特性の第2の部分の電荷および電荷密度は、適切な表面処理およびpH条件により獲得および調節することができる。電荷は、1)アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、およびヒドロキシル基などの表面官能基のイオン化によって、あるいは2)溶液からのイオンの特異的吸着によって生じ得る。これに関連して、「特異的吸着」は、吸着イオンが正味の表面電荷を作り出すことができるように吸着が部分的に非電気的性質を有することを暗示する。不活性な有益剤のために、当該技術分野における多数の表面処理法を使用して、イオン性官能基を形成することができる:1)表面を酸化するための酸素プラズマ、または表面ヒドロキシル基および他の基を形成するための特殊ガスのプラズマ重合を用いる(C.L.Rinschら、Langmuir(1996),12(2995−3002)、2)金属酸化物表面にシロキサン単分子層を形成するアミノプロピルシランなどの末端官能基により自己組織化単分子膜を形成する(Xia,Y.N.およびWhitesides,G.M.,Angew.Chem.Int.Ed.(1998),37:551−575)、3)多価電解質多層を任意の表面に吸着させて所望の電荷符号および電荷密度を帯電表面に与えるために多層構築法(layer−by−layer assembly process)を用いる(Decher,G.,Science(1997),277:1232−1237)、そして4)帯電ポリマーまたはゾルゲルの沈殿コーティング。微粒子状有益剤の表面電荷は、その表面等電点(IEP)、正味の表面電荷がゼロであるpH値によって特徴付けられ得る。従って、そのIEPよりも低いpHにおいて、微粒子状有益剤、特に微粒子状有益剤の親和性セット第2の部分は正電荷を有するが、そのIEPよりも高いpHでは、有益剤は負電荷を有する。
【0099】
静電相互作用の範囲は、さらに、イオン強度により調節することができ、イオン強度が低いほど長い相互作用範囲が提供され、イオン強度が高いほど短い相互作用範囲が提供される。相互作用範囲の調節は、低いイオン強度で安定なペプチド−有益剤付加生成物を獲得するが、より高いイオン強度で口腔表面への有益剤の送達を増強するように適用することができる。
【0100】
親和性セットの第1の部分の正味の電荷は、システムのpHに依存して、負であっても正であってもよい。一実施形態では、第2の結合ドメインの正味の電荷は特定のpHで正であり、この場合、pHは3.0〜約10の範囲であってもよい。別の実施形態では、第2の結合ドメインの正味の電荷は特定のpHで負であり、この場合、pHは3.0〜約10の範囲であってもよい。
【0101】
例えば、第2の結合要素は正に帯電されてもよく、配列KQPN(配列番号117)の反復または配列GKの反復を含んでもよく、負帯電顔料と物理的に会合されてもよい。好ましい態様では、負帯電顔料はシリカ被覆顔料である。さらなる態様では、負帯電粒子は、メソ多孔質シリカ粒子などのケイ質粒子である。
【0102】
好ましい実施形態では、第2の結合要素は、負帯電顔料(被覆または非被覆)と会合することが知られている正帯電アミノ酸のドメインである。静電気に基づく相互作用のために、第2の結合要素およびリガンド特性は逆に帯電されるべきであることが認識されるであろう。
【0103】
一態様では、第2の結合要素およびリガンド特性セットは、本明細書に記載されるような生物学的な対であってもよく、ビオチン:アビジン、ビオチン:ストレプトアビジン、ストレプトアビジンタグ:ストレプトアビジン、マルトース結合タンパク質(MBP):マルトースまたはアミラーゼ、およびグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST):グルタチオンを含んでもよいが、これらに限定されない。ペプチド成分の第2の結合要素がエピトープタグを含み、微粒子状有益剤が対応する抗体または抗体断片を含む限り、セットはエピトープタグ:抗体対を含んでもよい。市販のエピトープタグの例としては、HAタグ、FLAGタグ、Eタグ、Sタグ、およびmycタグが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、第2の結合要素およびリガンド特性対は、エピトープタグ:抗体対を含まない。
【0104】
別の実施形態では、第2の結合要素およびリガンド特性は、本明細書に記載されるシステムにおいて置き換えてもよい。例えば、ビオチンは、本明細書に記載されるようにペプチド組成物または結合剤のいずれに会合されているかによって、第2の結合要素またはリガンド特性のいずれかであると考えてもよい。反対に、ストレプトアビジンは、その会合に依存して、結合要素またはリガンド特性であると考えてもよい。
【0105】
本明細書に記載される口腔ケアシステムの実施形態のために、ペプチド組成物および有益剤は、それぞれ第2の結合ドメインおよびリガンド特性を介して互いに結合するであろう。第2の結合ドメインおよびリガンド特性の会合は、ペプチド組成物と有益剤との間の会合だけであり、第2の結合要素およびリガンド特性セットについて上記したように、会合はイオン結合に基づく、水素結合に基づく、疎水結合に基づく、静電気に基づく、またはキレート化に基づく、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、リガンド特性を有する有益剤を含む粒子に結合するよりも強力に口腔表面に結合する。いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、粒子に結合するよりも少なくとも1桁低いMB50値で口腔表面に結合する(すなわち、より強力に結合する)。他の実施形態では、第1の結合ドメインの口腔表面に対するMB50値は、第1の結合ドメインと粒子との値よりも少なくとも2桁低い。
【0107】
[安定な粒子分散液およびゼータ電位]
本明細書で使用される場合、「安定な分散液」は、粒子が分散されたマトリックスを指し、平均粒径は時間が経っても極めて一定に保たれる。本明細書に記載される目的のために、サンプル(すなわち、粒子分散液)は、サンプルの平均粒径が数日で50%を超えて増大しなければ、安定に分散されると考えてもよい。別の実施形態では、サンプル中の粒子の平均粒径が分散液の形成後2日以内に粒子の初期粒径よりも50%を超えて増大しなければ、サンプルは安定に分散され得る。特定の実施形態では、分散液の形成後3日以内の平均粒径の増大は50%に過ぎない。別の実施形態では、分散液の形成の少なくとも5日以内の平均粒径の増大は50%に過ぎない。さらに他の実施形態では、分散液の形成の7日以内の平均粒径の増大は50%に過ぎない。さらに別の実施形態では、50個の一次粒子よりも大きい凝集体を検出することなく、平均粒径が少なくとも7日で50%を超えて増大しない場合に、微粒子状分散液は安定であると考えてもよい。当業者は、粒子が最小のエネルギーで容易に再分散され得る(例えば、通常、口腔ケア組成物または口腔ケアシステム内の粒子の均一分散液を再形成するための手による混合/振とうと関連する手による穏やかな振とう/攪拌)限り、安定な粒子分散液は、時間と共にいくらかの沈降を有し得ることを認識するであろう。
【0108】
安定な分散液は、当該技術分野において知られている技術を用いて達成してもよい。いくつかの実施形態では、安定な分散液は電荷的に安定化されているか、あるいは立体的に安定化されている。いくつかの実施形態では、安定な分散液は分散剤を含む。本明細書で使用される場合、「分散剤」という用語は、液体媒体中の固体顔料粒子のコロイド溶液の形成を安定化する物質を指す。いくつかの実施形態では、分散剤はイオン性分散剤または非イオン性分散剤である。分散剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ポロキサマー407、n−ラウロイルサルコシンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、PEG−40ヒマシ油、TWEEN(登録商標)20、コカミドプロピルベタイン、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0109】
分散液の安定性は、ゼータ電位に関係し得る。ゼータ電位は、分散液中の同様に帯電した隣接する粒子間の反発力の度合いを示す。高いゼータ電位(負または正)を有するコロイドは電気的に安定化されており、低いゼータ電位を有するコロイドは凝固または凝結する傾向がある(「水および廃水におけるコロイドのゼータ電位」、ASTM標準D4187−82,American Society for Testing and Materials,1985)。
【0110】
ゼータ電位は、当該技術分野において知られている方法/装置を用いて測定することができる。簡単には、分散溶液は、印加電界において測定される。電界において分散した粒子の移動度は、レーザー光散乱を用いて測定される。移動度は、溶液の粘度に対する既知の定数を用いてゼータ電位に変換される。いくつかの実施形態では、電気的に安定な分散液のゼータ電位の絶対値は少なくとも25mVである。高い絶対ゼータ電位は、凝集および時間依存性の平均粒径の増大を阻止し得る電荷的に安定化された分散液を示す。
【0111】
[結合親和性]
「MB50」という用語は、ELISAベースの結合アッセイにおいて得られる最大シグナルの50%であるシグナルを与える結合ペプチドの濃度を指す(本実施例11および米国特許出願公開第2005−0226839号明細書を参照)。MB50値は、複合体の成分の結合相互作用または親和性の強度の表示を提供する。MB50値が低いほど、ペプチドと、その対応する基質との相互作用は強くなる。「結合親和性」という用語は、結合ペプチドと、所与の基質との相互作用の強度を指す。結合親和性は、本明細書では、ELISAベースの結合アッセイにおいて決定されるMB50値に関して定義される。
【0112】
標的表面に対する親和性を有するペプチド(すなわち、標的表面結合ペプチド)は、当該技術分野においてよく知られているコンビナトリアル法を用いて選択されてもよいし、あるいは実験的に生成されてもよい。ペプチド組成物の第1の結合要素は、それが1つの口腔表面結合ペプチドで構成されていても、あるいは複数の口腔表面結合ペプチドで構成されていても、約10−5M以下、より好ましくは約10−6M以下、さらにより好ましくは約10−7M以下、そしてさらにより好ましくは約10−8M以下のMB50値で測定されるような結合親和性によって口腔表面に結合することが好ましい。
【0113】
一実施形態では、「高い親和性」または「強力な親和性」という用語は、約10−5M以下、好ましくは約10−6M以下、より好ましくは約10−7M以下、そしてさらにより好ましくは約10−8M以下のMB50値によって測定されるような結合親和性を有する口腔表面結合ペプチドを説明するために使用されるであろう。
【0114】
[口腔ケアシステムの方法および使用]
本明細書では、口腔表面に粒子を適用する(すなわち、非共有結合させる)方法が提供および例示されており、本方法は、口腔表面をペプチド組成物と接触させ、続いて、リガンド特性を含む粒子とペプチド組成物とを接触させることとを含む。いくつかの実施形態では、粒子は口腔用有益剤も含む。一実施形態では、粒子は有益剤である。着色剤およびホワイトニング剤は、好ましい口腔用有益剤である。好ましい態様では、ホワイトニング剤は顔料TiOを含む。
【0115】
提供される特定の方法を実行するために、本明細書に記載されるようなペプチド組成物および粒子を提供することが必要である。ペプチド組成物を口腔表面に適用してもよく、続いて、微粒子状有益剤が適用される。ペプチド組成物、および微粒子状有益剤を含む組成物は、別の容器において提供されてもよい。好ましくは、ペプチド組成物は、微粒子状有益剤の適用の前に口腔表面に結合するのに十分な時間、口腔表面に適用および接触されることが認識されるであろう。好ましくは、微粒子状有益剤自体は、ペプチド組成物に結合するのに十分な時間、口腔表面に適用および接触される。
【0116】
提供されるペプチド組成物および第1の結合ドメインは、口腔ケアシステムにおいて使用してもよい。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、約10−5M以下のMB50値で口腔表面に結合する第1の結合要素を含み、さらに第2の結合要素も含む。口腔ケアシステムは、さらに、粒子または粒子の安定な分散液を含んでもよく、粒子は有益剤およびリガンド特性を含む。好ましいシステムでは、ペプチド組成物および粒子は、それぞれ第2の結合要素およびリガンド特性を介して会合する。
【0117】
[口腔表面結合ペプチドのバイオパニングおよび同定]
一実施形態では、口腔表面結合ペプチドはコンビナトリアルに生成され、長さが7アミノ酸〜60アミノ酸、より好ましくは長さが7アミノ酸〜25アミノ酸、最も好ましくは長さが7〜20アミノ酸の範囲である。ただし、その短い長さおよび直線的な性質のために、本発明の口腔表面結合ペプチドは、標的表面結合抗体および標的表面結合単鎖抗体を除外する。口腔表面結合ペプチドはランダムに生成され、次に標的表面(例えば、歯のエナメル質および歯のペリクルからなる群から選択される歯の表面)に対して選択されてもよい。
【0118】
ペプチドのランダムライブラリーの生成はよく知られており、細菌ディスプレイ(Kemp,D.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(7):4520−4524(1981年)、酵母ディスプレイ(Chienら,Proc Natl Acad Sci USA 88(21):9578−82(1991年))、コンビナトリアル固相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、および米国特許第5,639,603号明細書)、ファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、および米国特許第5,837,500号明細書)、リボソームディスプレイ(米国特許第5,643,768号明細書、米国特許第5,658,754号明細書、および米国特許第7,074,557号明細書)、およびmRNAディスプレイ技術(PROFUSIONTM、米国特許第6,258,558号明細書、米国特許第6,518,018号明細書、米国特許第6,281,344号明細書、米国特許第6,214,553号明細書、米国特許第6,261,804号明細書、米国特許第6,207,446号明細書、米国特許第6,846,655号明細書、米国特許第6,312,927号明細書、米国特許第6,602,685号明細書、米国特許第6,416,950号明細書、米国特許第6,429,300号明細書、米国特許第7,078,197号明細書、および米国特許第6,436,665号明細書)を含むがこれらに限定されない様々な技術によって達成してもよい。このような生物学的ペプチドライブラリーを生成するための技術は、Dani,M.,J.Receptor & Signal Transduction Res.,21(4):447−468(2001年)に記載されている。さらに、ファージディスプレイライブラリーは、New England BioLabs(Beverly,MA)などの会社から市販されている。
【0119】
標的表面結合ペプチドを得るための好ましい方法は、ファージディスプレイによるものである。ファージディスプレイはインビトロの選択技術であり、ペプチドまたはタンパク質がバクテリオファージのコートタンパク質に遺伝的に融合されて、ファージビリオンの外側に融合ペプチドのディスプレイをもたらすが、融合をコードするDNAはビリオン内に存在する。提示されたペプチドとそれをコードするDNAとの間のこの物理的な連結は、「バイオパニング」と呼ばれる簡単なインビトロの選択手順によって、対応するDNA配列にそれぞれが連結された膨大な数のペプチドの変異形のスクリーニングを可能にする。その最も簡単な形態では、バイオパニングは、ファージ提示変異形のプールをプレートまたはビーズ上に固定化された対象の標的と共にインキュベートし、結合していないファージを洗い流し、そしてファージと標的との間の結合相互作用を破壊することにより特異的に結合したファージを溶出させることによって実行される。溶出されたファージは次にインビボで増幅され、この過程が繰り返されて、最も堅固な結合配列に有利なファージプールの段階的濃縮がもたらされる。3回以上の選択/増幅の後、個々のクローンがDNA配列決定によって特徴付けられる。
【0120】
より具体的には、適切なペプチドライブラリーを生成するか購入した後、ライブラリーは次に適切な量の試験基質と接触される。ペプチドライブラリーは、通常は溶液中に懸濁されるかあるいはプレートまたはビーズ上に固定化されてもよい標的表面と接触させるために、適切な溶液中に溶解される。好ましい溶液は、界面活性剤を含有する緩衝生理食塩水溶液である。適切な溶液は、0.5%のTWEEN(登録商標)20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBS)である。溶液は、さらに、標的サンプル/表面へのペプチドの質量移動速度を増大させるために任意の手段によって攪拌され、それにより、最大結合を得るために必要とされる時間を短縮してもよい。
【0121】
従って、標的表面結合ペプチドを生成するために以下の方法を使用してもよい。コンビナトリアルに生成されたファージ−ペプチドのライブラリーは対象の標的表面(すなわち、歯の表面などの口腔表面)と接触され、ファージペプチド−標的表面複合体を形成することができる。ファージ−ペプチド−標的表面複合体は非複合ペプチドおよび非結合基質から分離され、ファージ−ペプチド−標的表面複合体からの結合ファージ−ペプチドは、好ましくは酸性溶液を用いて複合体から溶出される。次に、溶出されたファージ−ペプチドは同定および配列決定される。1つの基質に結合するが、別のもの、例えば、別の表面(すなわち、「非標的」表面、例えば、毛髪、皮膚、爪などの別の材料表面)に結合するペプチドには結合しないペプチド配列を同定するために、サブトラクティブパニング工程が使用されてもよい。具体的には、コンビナトリアルに生成されたファージ−ペプチドのライブラリーはまず非標的表面と接触されて、それに結合するファージ−ペプチドを除去する。次に、非結合ファージ−ペプチドは所望の基質と接触され、上記の過程が追随される。あるいは、コンビナトリアルに生成されたファージペプチドのライブラリーは、非標的および所望の基質と同時に接触されもよい。次に、ファージ−ペプチド−標的表面複合体はファージ−ペプチド−非標的複合体から分離され、所望のファージ−ペプチド−標的表面複合体に対して、上記の方法が追随される。
【0122】
一実施形態では、標的表面に対してより高い親和性を有するペプチドを単離するための修正ファージディスプレイスクリーニング法が使用されてもよい。修正法では、ファージ−ペプチド−標的表面複合体は上記のように形成される。次に、これらの複合体は溶出緩衝液で処理される。上記の溶出緩衝液のどれが使用されてもよい。好ましくは、溶出緩衝液は酸性溶液である。次に、残存する溶出耐性ファージ−ペプチド−標的表面複合体を使用して、大腸菌(E.coli)ER2738などの細菌宿主細胞を直接感染させることができる。感染した宿主細胞は、LB(Luria−Bertani)培地などの適切な成長培地中で成長され、この培養物は、IPTG(イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシド)およびS−GALTMを有するLB培地などの適切な成長培地を含有する寒天上に広げられる。成長後、DNA単離のためのプラークが採取され、配列決定されて、対象の標的表面に対する高い結合親和性を有するペプチド配列が同定される。
【0123】
別の実施形態では、Janssenらによって米国特許出願公開第2003−0152976号明細書に記載されるように、適切なプライマーを用いてファージ−ペプチド−標的表面複合体においてPCRを直接実行することによって、PCRを使用して上記の修正ファージディスプレイスクリーニング法から溶出耐性ファージ−ペプチドを同定することができる。
【0124】
ペプチドの産生
本明細書において記載されるペプチドは、当該技術分野においてよく知られている標準ペプチド合成法を用いて調製してもよい(例えば、Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,Pierce Chemical Co.,Rockford、IL,1984年、Bodanszky,Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag,New York,1984年、およびPenningtonら,Peptide Synthesis Protocols,Humana Press,Totowa,NJ,1994年を参照)。さらに、多くの会社がカスタムペプチド合成サービスを提供している。
【0125】
あるいは、本明細書に記載されるペプチドは、組換えDNAおよび分子クローニング技術を用いて調製されてもよい。ペプチドをコードする遺伝子は、異種宿主細胞、特に微生物宿主の細胞において産生され得る。
【0126】
本発明のペプチドの発現のために好ましい異種宿主細胞は微生物宿主であり、真菌または細菌ファミリーにおいて広く見出すことができ、幅広い温度、pH値、および溶媒耐性にわたって成長する。転写、翻訳、およびタンパク質生合成装置は細胞原料にかかわらず同じなので、機能性遺伝子は、細胞バイオマスを生成するために使用される炭素原料に関係なく発現される。宿主株の例としては、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロミセス属、ピキア属、カンジダ、ヤロウイア属、ハンゼヌラ属などからの真菌または酵母種、またはサルモネラ属、バチルス属、アシネトバクター属、ロドコッカス属、ストレプトミセス属、エシェリキア属、シュードモナス属、メチロモナス属、メチロバクター属(Methylobacter)、アルカリゲネス属、シネコシスティス属、アナベナ属、チオバチルス属、メタノバクテリウム属、およびクレブシエラ属などからの細菌種が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
様々な発現系を使用して本発明のペプチドを産生することができる。このようなベクターには、染色体、エピソームおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、トランスポゾン、挿入要素、酵母エピソーム、ウイルス(バキュロウイルス、レトロウイルスなど)由来のベクターと、これらの組み合わせに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝因子に由来するものなど)とが含まれるが、これらに限定されない。発現系構築物は、発現を制御すると共に引き起こす制御領域を含有し得る。一般に、これに関連して、宿主細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドを維持、増殖または発現させるために適切な任意の系またはベクターを発現のために使用することができる。微生物発現系および発現ベクターは、宿主細胞の成長に関連して異種タンパク質の高レベルの発現を指示する制御配列を含有する。制御配列は当業者によく知られており、例として、ベクター中の制御要素の存在を含む、化学的または物理的な刺激に応答して遺伝子の発現をオンまたはオフにさせるもの、例えばエンハンサー配列が挙げられるが、これらに限定されない。これらのいずれかが、本発明の結合ペプチドのいずれかの産生のためのキメラ遺伝子を構築するために使用され得る。これらのキメラ遺伝子は次に形質転換によって適切な微生物に導入され、ペプチドの高レベルの発現を提供し得る。
【0128】
適切な宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは当該技術分野においてよく知られている。通常、ベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、1つまたは複数の選択可能なマーカー、および自律複製または染色体の組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始の調節を含む遺伝子の領域5’と、転写終結を調節するDNA断片の領域3’とを含む。両方の調節領域が、形質転換宿主細胞と相同である遺伝子に由来する場合が最も好ましいが、このような調節領域は、産生宿主として選択された特定の種にネイティブな遺伝子に由来する必要はないことが理解されるべきである。選択可能なマーカー遺伝子は、大腸菌(E.coli)におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性など、形質転換宿主細胞の選択のための表現型形質を提供する。
【0129】
所望の宿主細胞におけるキメラ遺伝子の発現を駆動するために有用である開始調節領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。遺伝子を駆動することができる実質的にあらゆるプロモーターが本発明の結合ペプチドの産生に適しており、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属における発現のために有用)、AOX1(ピキア属における発現のために有用)、およびlac、pBAD、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)における発現のために有用)、ならびにamy、apr、nprプロモーターおよび種々のファージプロモーター(バチルス属における発現のために有用)が含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
また、終結調節領域も好ましい宿主にネイティブな種々の遺伝子に由来してもよい。場合により、終結部位は不要であってもよいが、含まれるのが最も好ましい。
【0131】
宿主が本発明のペプチドを発現できるようにするために、適切なDNA配列、および適切なプロモーターまたは調節配列を含有するベクターを用いて適切な宿主を形質転換してもよい。本発明のDNA構築物に由来するRNAを用いてこのようなペプチドを産生するために、無細胞翻訳系を用いることもできる。場合により、形質転換宿主の分泌産物として、本発明の遺伝子産物を産生することが所望されてもよい。成長培地への所望のタンパク質の分泌は、簡易化されたより安価な精製手順という利点を有する。発現可能なタンパク質の細胞膜を横切る能動輸送を促進する際に、分泌シグナル配列が有用である場合が多いことは、当該技術分野においてよく知られている。分泌が可能な形質転換宿主の作成は、産生宿主において機能性である分泌シグナルをコードするDNA配列の組込みによって達成してもよい。適切なシグナル配列を選択するための方法は当該技術分野においてよく知られている(例えば、欧州特許第546049B1号明細書および国際公開第93/24631号パンフレットを参照)。
【0132】
口腔ケア組成物
本明細書では、有効量の1つまたは複数の本発明のペプチド組成物と、有益剤を含む(または有益剤の機能を果たす)有効量の1つまたは複数の粒子を含む組成物とを含む口腔ケアシステムが企図される。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、歯のホワイトニングなどの所望の利益を達成するために口腔ケア組成物中に取り込まれた、少なくとも1つの本発明のペプチド組成物の量、あるいは有益剤を含む少なくとも1つまたは複数の粒子の量である。
【0133】
口腔ケア組成物は、粉末、ペースト、ゲル、液体、軟膏、錠剤の形態であってもよい。例示的な口腔ケア組成物としては、練り歯磨き、歯科用クリーム、ゲルまたは歯磨き粉、マウスウォッシュ、ブレスフレッシュナー、およびデンタルフロスが挙げてもよいが、これらに限定されない。口腔ケア組成物は、経口的に許容可能なキャリア媒体中に、有効量の本発明のペプチド組成物を含む。口腔ケア組成物中で使用するためのペプチド組成物および粒子を含む組成物(すなわち、口腔ケアシステム)の有効量は、製品のタイプに依存して変わってもよい。通常、口腔ケアシステムの有効量は、口腔ケア組成物の全重量に対して約0.01重量%〜約90重量%の割合である。さらに、異なる口腔ケアシステム(例えば、異なる有益剤を含む)の混合物が口腔ケア組成物中で使用されてもよい。混合物中の成分が、ペプチド組成物間に所望の効果を軽減する相互作用が存在しないように選択されることは認識されるであろう。本明細書において開示される口腔ケアシステムの適切な混合物は、日常的な実験を用いて当業者により決定されてもよい。口腔ケアシステムの混合物が組成物中で使用される場合、試薬(ペプチド組成物および微粒子状有益剤)の全濃度は、口腔ケア組成物の全重量に対して約0.01重量%〜約90重量%である。
【0134】
経口的に許容可能なキャリア媒体の成分は、Whiteらにより米国特許第6,740,311号明細書において、Lawlerらにより米国特許第6,706,256号明細書において、Fuglsangらにより米国特許第6,264,925号明細書において、そしてIbrahimらにより米国特許出願公開第2005−0069501号明細書において記載されており、これらはそれぞれ参照によってその全体が本明細書に援用される。例えば、口腔ケア組成物は以下のうちの1つまたは複数を含むことができる:研磨剤、界面活性剤、酸化防止剤、キレート化剤、フッ化物源、増粘剤、緩衝剤、溶媒、湿潤剤、キャリア、増量剤、ならびに酵素、抗プラーク剤、抗染み剤、抗菌剤、抗う蝕剤、抗炎症剤、減感剤、甘味剤、風味剤、ブレスフレッシュ剤、冷却剤、栄養物、および催唾剤などの口腔用有益剤。
【0135】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。本明細書において特定のアミノ酸を同定するために以下の略語が用いられる:
【0136】
【表4】

【実施例】
【0137】
一般的な方法:
本明細書で使用される標準組換えDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野においてよく知られており、Sambrook,J.およびRussell、D.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,第3版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2001年)、ならびにSilhavy,T.J.,Bennan、M.L.およびEnquist、L.W.,「Experiments with Gene Fusions」,Cold Spring Harbor Laboratory Cold Press Spring Harbor,NY(1984年)、ならびにAusubel,F.M.ら,「Short Protocols in Molecular Biology」,第5版,John Wiley and Sons,Inc.,N.Y.,2002年によって記載されている。
【0138】
細菌培養物の維持および成長に適した材料および方法も当該技術分野においてよく知られている。以下の実施例において使用するために適切な技術は、「Manual of Methods for General Bacteriology」,Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester、Willis A.Wood,Noel R.KriegおよびG.Briggs Phillips編,American Society for Microbiology,Washington,DC.,1994年、またはThomas D.Brockによる「Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology」,第2版,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA,1989年において見出すことができる。細菌細胞の成長および維持のために使用される全ての試薬、制限酵素および材料は、他に指定されない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、BD Diagnostic Systems(Sparks,MD)、Life Technologies(Rockville,MD)、またはSigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0139】
使用される略語の意味は以下の通りである:「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」は引力定数を意味し、「RCF」は相対遠心力を意味し、「rpm」は1分当たりの回転数を意味し、そして「pfu」はプラーク形成単位を意味する。
【0140】
実施例1
標準的なバイオパニングを用いる歯(ペリクル)結合ペプチドの選択
本実施例の目的は、標準的なファージディスプレイバイオパニングを用いて、歯のペリクルに結合するファージペプチドを同定することであった。
【0141】
圧縮ヒドロキシアパタイトディスク(HAPディスク、3mm直径)を使用して、ディスクをヒトの口中で1.5時間インキュベートすることによりペリクルを形成した後、TBSですすいだ。次に、SUPERBLOCK(登録商標)ブロッキング緩衝液(Pierce Chemical Company,Rockford,IL、製品#37535)中において、ディスクを室温で1時間インキュベートした後、TBST(0.05%のTWEEN(登録商標)20中のTBS)で3回洗浄した。14〜20のアミノ酸のランダムペプチドインサート(1011pfu)を含有するファージのライブラリーを各チューブに添加した。60分間の室温でのインキュベーションおよび50rpmでの振とうの後、各ウェルから液体を吸引することによって非結合ファージを除去した後、0.05%の最終濃度で洗剤TWEEN(登録商標)20(TBST)を含有する1.0mLのTBSにより6回洗浄した。
【0142】
次に、サンプルディスクを清浄なチューブに移し、0.2Mのグリシン−HCl中1mg/mLのBSAからなる200μLの溶出緩衝液(pH2.2)を各ウェルに添加し、10分間インキュベートして、結合ファージを溶出させた。次に、1Mのトリス−HClからなる32μLの中和緩衝液(pH9.2)を各ウェルに添加した。溶出緩衝液中およびサンプルディスク上にあるファージ粒子は、LB培地中に1:100で希釈された一晩培養物から希釈大腸菌(E.coli)ER2738細胞と共に37℃で4.5時間インキュベートすることにより増幅した。その後、細胞培養物を30秒間遠心分離し、上澄みの上部80%を新しいチューブに移し、1/6体積のPEG/NaCl(20%のポリエチレングリコール−800、2.5Mの塩化ナトリウム)を添加し、ファージを4℃で一晩沈殿させた。4℃で10,000×gにおける遠心分離によって沈殿物を捕集し、得られたペレットを1mLのTBS中に再懸濁させた。これは1回目の増幅ストックであった。次に、1回目の増幅されたファージストックを標準プロトコルに従って滴定した。2回目、3回目および4回目のバイオパニングのために、前の回からの2×1011pfuを超えるファージストックを使用した。バイオパニングプロセスを上記と同じ条件下であと2回繰り返した。4回目については、洗浄溶液が0.05%のTWEEN(登録商標)20の代わりに0.5%のTWEEN(登録商標)20を含むTBSであったことを除いて同じバイオパニング条件を使用した。
【0143】
4回目のバイオパニングの後、製造業者の使用説明書(New England Biolabs)に従って95のランダムな単一ファージプラークライセートを調製し、QIAprep Spin M13 Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて一本鎖ファージゲノムDNAを精製し、DuPont Sequencing Facilityにおいて−96gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’、配列番号63)を用いて配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドの直後に位置する。3回目および4回目の分析において存在するペプチド配列に基づいて、さらなるペリクル結合分析のために20のファージ候補を選択した。
【0144】
実施例2
ペリクル表面における歯(ペリクル)結合ペプチド候補のキャラクタリゼーション
合計20の選択されたファージ候補(実施例1)をファージELISA実験において使用した。精製ファージライセートを用いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合された抗M13ファージ抗体を用いてペリクル被覆HAPディスクに結合させた後、Pierce Biotechnology(商品#34021、Rockford,IL)から入手した発色剤TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)を添加した。プレートをA450nmにおいて読み取った。
【0145】
試験される各ファージ候補に対して、ペリクル被覆HAPディスク(3mm直径)を、TBS中2%の脱脂粉乳(Schleicher & Schuell,Inc.)からなる200μLのブロッキング緩衝液と共に室温で1時間インキュベートした。各チューブから液体を吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。TBST−0.05%からなる洗浄緩衝液でチューブを6回すすいだ。1mg/mLのBSA(ウシ血清アルブミン)を含有する200μLのTBST−0.5%をウェルに満たし、次に、10μL(1010pfuを超える)の精製ファージストックを添加した。サンプルをゆっくり振とうさせながら室温で60分間インキュベートした。TBST−0.5%で6回洗浄することによって非結合ファージを除去した。次に、ブロッキング緩衝液中に1:500で希釈されたホースラディッシュペルオキシダーゼ/抗M13抗体結合体(Amersham USA,Piscataway,NJ)を100μL添加し、室温で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、TBST−0.5%で6回洗浄した。TMB基質(200μL)を各ウェルに添加し、室温で5〜30分間、通常は10分間発色させた。次に、停止溶液(200μLの2MのHSO)を各ウェルに添加し、溶液を96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いてA450を測定した。得られた吸光度値は表1に与えられる。
【0146】
【表5】

【0147】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の配列を有する。
【0148】
実施例3
標準的なバイオパニングを用いる歯(エナメル質)結合ペプチドの選択
本実施例の目的は、標準的なファージディスプレイバイオパニングを用いて、歯のエナメル質に結合するファージペプチドを同定することであった。
【0149】
切歯からの非研磨ウシエナメル質ブロック(3mm角)および切歯からの研磨ウシエナメル質ディスク(3mm直径ディスク)をワックス内に埋め込み、意図される表面のみが露出されたウェルを形成した。次に、SUPERBLOCK(登録商標)ブロッキング緩衝液(Pierce Chemical Company,Rockford,IL、製品#37535)中で、エナメル質表面を室温(〜22℃)で1時間インキュベートした後、TBST(0.05%のTWEEN(登録商標)20中のTBS)で3回洗浄した。14〜20のアミノ酸のランダムペプチドインサート(1011pfu)を含有するファージのライブラリーを10分の前吸収のためにエナメル質ウェルに添加してワックス表面を滴定し、ウェルから液体を吸引することによって非結合ファージを除去した。次に、100μLの同じファージライブラリー(1011pfu)を50rpmでゆっくり振とうさせながら、室温で60分のインキュベーションのためにエナメル質ウェルに添加した後、0.05%の最終濃度で洗剤TWEEN(登録商標)20(TBST)を含有する1.0mLのTBSで6回洗浄した。
【0150】
次に、エナメル質ブロックをワックスウェルから切り出して清浄なチューブに移し、0.2Mのグリシン−HCl中1mg/mLのBSAからなる200μLの溶出緩衝液(pH2.2)を各ウェルに添加し、10分間インキュベートして、結合ファージを溶出させた。次に、1Mのトリス−HClからなる32μLの中和緩衝液(pH9.2)を各チューブに添加した。溶出緩衝液中およびエナメル質ブロック上にあるファージ粒子は、LB培地中に1:100で希釈された一晩培養物から希釈大腸菌(E.coli)ER2738細胞と共に37℃で4.5時間インキュベートすることにより増幅した。その後、細胞培養物を30秒間遠心分離し、上澄みの上部80%を新しいチューブに移し、1/6体積のPEG/NaCl(20%のポリエチレングリコール−800、2.5Mの塩化ナトリウム)を添加し、ファージを4℃で一晩沈殿させた。4℃で10,000×gにおける遠心分離によって沈殿物を捕集し、得られたペレットを1mLのTBS中に再懸濁させた。これは1回目の増幅ストックであった。次に、1回目の増幅されたファージストックを標準プロトコルに従って滴定した。2回目のバイオパニングのために、前の回からの2×1011pfuを超えるファージストックを使用した。バイオパニングプロセスを上記と同じ条件下であと1回繰り返した。3回目については、洗浄溶液が0.05%のTWEEN(登録商標)20の代わりに0.5%のTWEEN(登録商標)20を含むTBSであったことを除いて同じバイオパニング条件を使用した。
【0151】
3回目のバイオパニングの後、製造業者の使用説明書(New England Biolabs)に従って95のランダムな単一ファージプラークライセートを調製し、QIAprep Spin M13 Kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて一本鎖ファージゲノムDNAを精製し、配列番号63で与えられる−96gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’)を用いて、DuPont Sequencing Facilityにおいて配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドの直後に位置する。ペプチド配列に基づいて、さらなるペリクル結合分析のために20のファージ候補を選択した(表2)。「BoEn」はウシエナメル質を意味し、「BoEn P」は研磨ウシエナメル質を意味する。
【0152】
【表6】

【0153】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40の配列を有する。
【0154】
実施例4
エナメル質表面における歯(エナメル質)結合ペプチド候補のキャラクタリゼーション
合計11の選択されたファージ候補(実施例3)をファージELISA実験において使用した。精製ファージライセートを用いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合された抗M13ファージ抗体を用いてエナメル質ブロックに結合させた後、発色剤TMBを添加した。プレートをA450nmにおいて読み取った。
【0155】
試験される各ファージ候補に対して、研磨および非研磨エナメル質ブロックを、TBS中2%の脱脂粉乳(Schleicher & Schuell,Inc.)からなる200μLのブロッキング緩衝液と共に室温で1時間インキュベートした。液体を各チューブから吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。TBST−0.05%からなる洗浄緩衝液でチューブを6回すすいだ。1mg/mLのBSAを含有する200μLのTBST−0.5%をウェルに満たし、次に、10μL(1010pfuを超える)の精製ファージストックを添加した。サンプルをゆっくり振とうさせながら室温で60分間インキュベートした。TBST−0.5%で6回洗浄することにより非結合ファージを除去した。次に、ブロッキング緩衝液中に1:500で希釈されたホースラディッシュペルオキシダーゼ/抗M13抗体結合体(Amersham USA,(Piscataway,NJ))を100μL添加し、室温で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、TBST−0.5%で6回洗浄した。TMB基質(200μL)を各ウェルに添加し、室温で5〜30分間、通常は10分間発色させた。次に、停止溶液(200μLの2MのHSO)を各ウェルに添加し、溶液を96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,(Sunnyvale,CA))を用いてA450を測定した。得られた吸光度値は表3および4に与えられる。BoEn
Pはウシ研磨エナメル質を意味し、BoEnはウシエナメル質を意味する。
【0156】
【表7】

【0157】
【表8】

【0158】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはエナメル質または研磨エナメル質が含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号22、23、25、26、または28の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号22、23、25、26、または28の配列を有する。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号31、35、36、37、39、または40の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号31、35、36、37、39、または40の配列を有する。
【0159】
実施例5
標準的なバイオパニングを用いる歯(ペリクル)結合ペプチドの選択
本実施例の目的は、標準的なファージディスプレイバイオパニングを用いてインビボでウシエナメル質上に形成された歯のペリクルに結合するファージペプチドを同定することであった。
【0160】
ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を約5mm角に切断し、研磨して、表面のくずを除去した。エナメル質ブロックを滅菌し、エナメル質表面をヒトの口腔環境にさらすために口腔内リテーナーに縫い付けた。2〜4個のエナメル質ブロックを付けたリテーナーをヒトの口の中に30分間装着させ、エナメル質上にペリクル層を形成した。インキュベーションの後、エナメル質ブロックをリテーナーから除去し、水ですすぎ、成形材料を含有するウェルプレートに、ウェル内のペリクル被覆エナメル質表面のみを露出させるように埋め込んだ。プレートをUV光で10分間滅菌した。
【0161】
次に、基質をブロッキング緩衝液中、室温で1時間インキュベート(〜22℃、0.1%のTWEEN(登録商標)20(PBST)を有するリン酸緩衝食塩水(pH7.2)(Pierce BUPHTM #28372)中1mg/mLのウシ血清アルブミン)した後、PBSTで2回洗浄した。15〜20のアミノ酸のランダムペプチドインサート(1011pfu)を含有するファージのライブラリーを各ウェルに添加した。37℃における30分間のインキュベーションおよび50rpmでの振とうの後、各ウェルから液体を吸引することによって非結合ファージを除去した後、1.0mLのPBSTで6回洗浄した。
【0162】
次に、エナメル質ブロックを清浄なチューブに移し、0.2Mのグリシン−HCl中1mg/mLのBSAからなる1mLの溶出緩衝液(pH2.2)を各ウェルに添加し、10分間インキュベートして、結合ファージを溶出させた。次に、1Mのトリス−HClからなる167μLの中和緩衝液(pH9.1)を各ウェルに添加した。溶出緩衝液中およびエナメル質ブロック上にあるファージ粒子は、LB培地中に1:100で希釈された一晩培養物から20mLの希釈大腸菌(E.coli)ER2738細胞と共に37℃で4.5時間インキュベートすることにより増幅した。その後、細胞培養物を2分間遠心分離し、上澄みの上部15mLを新しいチューブに移し、2.5mLのPEG/NaCl(20%ポリエチレングリコール−800、2.5Mの塩化ナトリウム)を添加し、ファージを4℃で一晩沈殿させた。4℃で10,000×gにおける遠心分離によって沈殿物を捕集し、得られたペレットを1mLのPBS中に再懸濁させた。これは1回目の増幅ストックであった。次に、1回目の増幅されたファージストックを標準プロトコルに従って滴定した。次の回のバイオパニングのために、前の回からの2×1011pfuを超えるファージストックを使用した。1回目の後の付加的な回のバイオパニングのそれぞれには、水中0.5%のラウリル硫酸ナトリウム(Spectrum)による付加的な洗浄、炭酸塩緩衝液(pH9.4)(Pierce BUPHTM 炭酸塩−重炭酸塩緩衝液#28382)による2回の洗浄、および50mMのリン酸緩衝液(pH2.5)による2回の洗浄も含まれた。
【0163】
ファージストックをさらに口腔軟組織にさらして、バイオパニングプロセスを上記と同じ条件下でさらにあと3回繰り返した。8μLの2回目のファージストック+42μLのブロッキング緩衝液(PBST+1mg/mLのBSA)を60分間インキュベートすることによって、2回目のバイオパニングから増幅したファージストックをまずEPIORALTMおよびEPIGINGIVALTM軟組織(MatTek Corp,(Ashland,MA))にさらした。溶液を組織から除去し、付加的な50μLのPBSを組織と共に30分間インキュベートした。溶液を合わせ、上記のような付加的な回のバイオパニングにおいて使用した。
【0164】
3回目のバイオパニングおよびその後の各回の後に、95のランダムな単一ファージプラークを単離し、Illustra Templiphi 500 Amplification Kit(GE Healthcare,(Piscataway,NJ))を用いて一本鎖ファージゲノムDNAを調製し、−96gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’、配列番号63)を用いて、DuPont Sequencing Facilityにおいて配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドの直後に位置する。ペプチド配列に基づいて、さらなるペリクル結合分析のために31のファージ候補を同定した。
【0165】
【表9】

【0166】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、または94の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、または94の配列を有する。
【0167】
実施例6
ペリクル表面における歯(ペリクル)結合候補のキャラクタリゼーション
表5からの合計29の選択されたファージ候補をファージELISA実験において使用して、ペリクル基質上の各ファージの結合親和性および被覆度を決定した。精製ファージライセートを用いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合された抗M13ファージ抗体を用いてペリクル被覆ウシエナメル質に結合させた後、発色剤TMBを添加した。プレートをA450nmにおいて読み取った。
【0168】
エナメル基質を約7mm角に切断し、口の中で30分間インキュベーションするためにワックス台上に取り付けて、ペリクル被覆表面を形成した。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、ウェルプレート内に置き、実施例5のようにペリクル表面を露出させた。各ペリクル被覆基質を、PBST(0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するPierce BUPHTM♯28372)中1mg/mLのBSAからなる1mLのブロッキング緩衝液と共に室温で1.5時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。PBSTからなる洗浄緩衝液でチューブを2回すすいだ。ブロッキング緩衝液中に希釈することにより精製した1mLの1011pfuの精製ファージストックをウェルに満たした。サンプルをゆっくり振とうさせながら37℃で30分間インキュベートした。PBSTで5回洗浄することによって非結合ファージを除去した。次に、ブロッキング緩衝液中に1:500で希釈されたホースラディッシュペルオキシダーゼ/抗M13抗体結合体(Amersham USA,(Piscataway,NJ))を500μL添加し、室温(〜22℃)で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、PBSTで3回洗浄した。各エナメル基質をウェルから除去し、15mLの試験管中で5mLのPBSTにより再度洗浄した。次に、各エナメル基質を清浄なウェルプレート内に取り付け、エナメル質表面のみを露出させた。TMB基質およびHの1:1溶液(200μL)を各ウェルに添加し、室温(〜22℃)で5分間〜30分間の間、通常は10分間発色させた。次に、停止溶液(100μLの2MのHSO)を各ウェルに添加し、溶液を96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,(Sunnyvale,CA))を用いてA450を測定した。得られた吸光度値は表6に与えられる。30のペリクル結合候補全ての分析を2日間にわたって完了させ、結果を内部対照に対して正規化した。
【0169】
【表10】

【0170】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号64、65、66、67、68、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、または93の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号64、65、66、67、68、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、または93の配列を有する。
【0171】
実施例7
標準的なバイオパニングを用いるペリクル結合ペプチドの選択
本実施例の目的は、標準的なファージディスプレイバイオパニングを用いて、口の中に長期間さらして作られた歯のペリクルに結合するファージペプチドを同定することであった。
【0172】
ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を約7mm角に切断し、研磨して、表面のくずを除去した。エナメル質ブロックを滅菌し、エナメル質表面をヒトの口腔環境にさらすために口腔内リテーナーに縫い付けた。4個のエナメル質ブロックを付けたリテーナーをヒトの口の中に約8時間装着させた。リテーナーを被験者から取り出し、水中で練り歯磨きおよび柔らかい毛先のブラシを用いて各エナメル質ブロックを手でブラッシングした。リテーナーを被験者の口にさらに1分間再挿入した。エナメル質ブロックをリテーナーから除去し、水ですすぎ、成形材料を含有するウェルプレートに、ウェル内のペリクル被覆エナメル質表面のみを露出させるように埋め込んだ。プレートをUV光で10分間滅菌した。
【0173】
次に、基質をブロッキング緩衝液中、室温(〜22℃)で1時間インキュベート(0.1%のTWEEN(登録商標)20(PBST)を有するリン酸緩衝食塩水(pH7.2)(Pierce BUPHTM #28372)中1mg/mLのウシ血清アルブミン)した後、PBST(0.1%のTWEEN(登録商標)20中のPBS)で2回洗浄した。16〜20のアミノ酸のランダムペプチドインサート(1011pfu)を含有するファージライブラリーを各ウェルに添加した。37℃における30分間のインキュベーションおよび50rpmでの振とうの後、各ウェルから液体を吸引することによって非結合ファージを除去した後、1.0mLのPBSTで2回洗浄した。
【0174】
次に、エナメル質ブロックを清浄なチューブに移し、0.2Mのグリシン−HCl中1mg/mLのBSAからなる1mLの溶出緩衝液(pH2.2)を各ウェルに添加し、10分間インキュベートして、結合ファージを溶出させた。次に、1Mのトリス−HClからなる167μLの中和緩衝液(pH9.1)を各ウェルに添加した。溶出緩衝液中およびエナメル質ブロック上にあるファージ粒子は、LB培地中に1:100で希釈された一晩培養物から20mLの希釈大腸菌(E.coli)ER2738細胞と共に37℃で4.5時間インキュベートすることにより増幅した。その後、細胞培養物を2分間遠心分離し、上澄みの上部15mLを新しいチューブに移し、2.5mLのPEG/NaCl(20%ポリエチレングリコール−800、2.5Mの塩化ナトリウム)を添加し、ファージを4℃で一晩沈殿させた。4℃で10,000×gにおける遠心分離によって沈殿物を捕集し、得られたペレットを1mLのPBS中に再懸濁させた。これは1回目の増幅ストックであった。次に、1回目の増幅されたファージストックを標準プロトコルに従って滴定した。2回目、3回目、4回目および5回目のバイオパニングのために、前の回からの2×1011pfuを超えるファージストックを使用した。これらの後続の回のバイオパニングには、ファージの最初のインキュベーションの後に付加的な洗浄プロセスが含まれた。これらの洗浄には、水中0.5%のラウリル硫酸ナトリウム(Spectrum)、炭酸塩緩衝液(pH9.4)(Pierce BUPHTM 炭酸塩−重炭酸塩緩衝液#28382)による2回の洗浄、および50mMのリン酸緩衝液(pH2.5)による2回の洗浄、その後のPBSTによる5回の洗浄が含まれた。
【0175】
3回目およびそれに続く各回のバイオパニングの後、95のランダムな単一ファージプラークを単離し、Illustra Templiphi 500 Amplification Kit(GE Healthcare,(Piscataway,NJ))を用いて一本鎖ファージゲノムDNAを調製し、DuPont Sequencing Facilityにおいて−96gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’、配列番号63)を用いて配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドの直後に位置する。ペプチド配列に基づいて、さらなるペリクル結合分析のために23のファージ候補を選択した。これらの候補には、実施例5のパニングにおいて既に発見されている3つの配列が含まれた。
【0176】
【表11】

【0177】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクル、さらにより具体的にはブラッシングされたペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、74、70、または71の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、74、70、または71の配列を有する。
【0178】
実施例8
ペリクル表面における歯ペリクル結合候補のキャラクタリゼーション
合計18の選択されたファージ候補をファージELISA実験において使用した。精製ファージライセートを用いて、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合された抗M13ファージ抗体を用いてペリクル被覆ウシエナメル質に結合させた後、発色剤TMBを添加した。プレートをA450nmにおいて読み取った。
【0179】
エナメル基質を約4mm角に切断し、清浄にし、滅菌し、口の中で30分間インキュベーションするためにワックス台上に取り付けて、ペリクル被覆表面を形成した。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、ウェルプレート内に置き、実施例5のようにペリクル表面を露出させた。各ペリクル被覆基質を、PBST(pH7.2)(0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するPierce BUPHTM ♯28372)中1mg/mLのBSAからなる0.5mLのブロッキング緩衝液と共に室温(〜22℃)で1時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。ウェルをPBSTからなる洗浄緩衝液で2回すすいだ。ブロッキング緩衝液中に希釈することにより調製した1mLの1011pfuの精製ファージストックをウェルに満たした。サンプルをゆっくり振とうさせながら37℃で30分間インキュベートした。PBSTで5回洗浄することによって非結合ファージを除去した。次に、ブロッキング緩衝液中に1:500で希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ/抗M13抗体結合体(Amersham USA,(Piscataway,NJ))を500μL添加し、室温で45分間インキュベートした。結合体溶液を除去し、PBSTで5回洗浄した。各エナメル基質をウェルから除去し、15mLの試験管中で10mLのPBSTにより再度洗浄した。次に、各エナメル基質を清浄なウェルプレート内に取り付け、エナメル質表面のみを露出させた。TMB基質およびHの1:1溶液(200μL)を各ウェルに添加し、室温で5分間〜30分間の間、通常は10分間発色させた。次に、停止溶液(100μLの2MのHSO)を各ウェルに添加し、溶液を96ウェルプレートに移し、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,(Sunnyvale,CA))を用いてA450を測定した。得られた吸光度値は表8に与えられる。18のペリクル結合候補全ての分析を2日間にわたって完了させ、結果を、両方の日に測定したDenP3の結果に対して正規化した。
【0180】
【表12】

【0181】
本明細書において企図される口腔表面には、歯、より具体的にはペリクルが含まれる。一実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は、配列番号66、96、97、98、99、100、101、102、103、104、106、107、108、109、110、111、112、113、または114の配列を有する少なくとも1つのペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ペプチド組成物または第1の結合要素は複数のペプチドを含み、ペプチドの少なくとも1つは、配列番号66、96、97、98、99、100、101、102、103、104、106、107、108、109、110、111、112、113、または114の配列を有する。
【0182】
実施例9
ペプチド媒介によるCo−NTAポリスチレンビーズのウシエナメル質への接着
ウシエナメル質におけるファージディスプレイパニングによって発見された口腔表面(エナメル質)結合ペプチド(実施例3および4を参照)と、金属キレート化ニトリロトリ酢酸(NTA)への親和性を有する6個のヒスチジンの配列(以下、「His6」とも称する、配列番号119)とを組み込んだペプチド組成物を設計した。エナメル質結合ドメインの一般的な設計には、短いN末端配列と、それに続くペプチドリンカーによって離間された2つ以上の口腔表面結合ドメインとが含まれた。ポリヒスチジン配列はC末端に位置した。ペプチドベースの試薬を構築するために使用された配列は、表9に記載される。ペプチドサンプルを発酵により産生した(実施例15に記載される通り)。ペプチド「Soti13」は配列LNSMSDKHHGHQNTATRNQH(配列番号124)を有し、シリカ被覆TiOに対するバイオパニングによって同定した(米国特許出願公開第12/632,829号明細書(Fahnestockら)を参照
【0183】
【表13】

【0184】
ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を薄片にし、ダイヤモンド刃の付いたDREMEL(登録商標)rotary(Robert Bosch LLC,(Farmington Hills,MI))のこぎりを用いて、各辺約5mmのエナメルスラブに切断した。エナメルスラブを清浄にし、成形材料を含有するウェルプレートに、ウェル内のエナメル質表面のみを露出させるように埋め込んだ。
【0185】
コバルト−NTAコーティング(DYNABEADS(登録商標)TALON(登録商標))を有するポリスチレンビーズは、Invitrogen(商品#101.02D)から40mg/mLのスラリーとして入手した。スラリー(50μL、2mgのビーズ)を再懸濁させ、His6結合の調製において700μLの結合緩衝液(50mMのリン酸ナトリウム、pH8.0、300mMのNaCl、0.01%のTWEEN(登録商標)20)で洗浄した。
【0186】
ペプチドをリン酸緩衝食塩水(Pierce、pH7.2)中に20μMの濃度で溶解した。エナメルスラブを含有する各ウェル内にペプチド溶液(500μL)を入れた。この工程でPBSのみにさらしたエナメルスラブを対照として用いた。サンプルを穏やかに攪拌しながらペプチド溶液と共に30分間インキュベートした。ペプチド溶液およびPBSをウェルプレートから除去し、PBSを繰り返し添加して、各ウェルを3回すすいだ。TALON(登録商標)ビーズ(50μL)を各ウェルに添加し、穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。TALON(登録商標)溶液を除去し、サンプルを同じ結合緩衝液で3回洗浄した。
【0187】
各エナメル質サンプルをウェルプレートから除去し、緩衝液で再度すすいだ。ビーズ結合の後の観察により、ペプチドを含まない対照およびDE045を除く各エナメル質表面に薄い茶色が示された。1000X、2500Xおよび5000X倍率におけるElectron Microscopy(Hitachi TM−1000 Tabletop SEM Microscopy)によってエナメルスラブをさらに調査した。各ペプチドにさらした基質は、視野全体で1μmの粒子の実質的な被覆度を示した。DE045にさらした基質も他のサンプルよりも低い程度のビーズ結合を示した。ペプチドのない対照においては、ビーズは少ししか〜まったく見られなかった。コバルト−NTAコーティングを有するポリスチレンビーズに加えてシリカにも結合するように設計されたDE008は、エナメル質結合配列のみにより設計されたペプチドと同様の結果を有した。表10には、各ペプチドおよびペプチドのない対照の粒子被覆度が記載される。エナメル質表面にわたるビーズの優れた被覆度は、エナメル質表面およびCo−NTAビーズの両方に対するペプチド組成物の親和性を実証する。
【0188】
【表14】

【0189】
第1の結合要素および第2の結合要素を含むペプチド組成物も実証されており、ここで第2の結合要素はポリヒスチジンである。第2の結合要素と、リガンド特性を有する粒子(コバルト−NTA被覆ポリスチレンビーズ)との会合も実証される。一実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号120、121、122または123を含む。別の実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号121、122、または123を含む。
【0190】
実施例10
ペリクル表面における歯ペリクル結合候補のキャラクタリゼーション
本実施例の目的は、合成的に産生されたペプチドを用いて、ペリクル表面におけるペプチド組成物の結合を確認することである。
【0191】
表6から得られる配列を用いて合計20の合成ペプチドを製造した。ペプチドはSynBioSci Corp.(Livermore,CA)から入手され、N末端に付加的な配列(SSRP、配列番号118)、そしてC末端にビオチン標識リジンを含んでいた。
【0192】
エナメル基質を約7mm角に切断し、口の中で30分間インキュベーションするためにワックス台上に取り付けて、ペリクル被覆表面を形成した。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、ウェルプレート内に置き、実施例5のようにペリクル表面を露出させた。各ペリクル被覆基質を、PBST(0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するPierce BUPHTM ♯28372)中1mg/mLのBSAからなる1mLのブロッキング緩衝液と共に室温(〜22℃)で1時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。PBSTからなる洗浄緩衝液でチューブを2回すすいだ。ブロッキング緩衝液中に希釈することにより調製した500μLの20μMのペプチド溶液をウェルに満たした。サンプルをゆっくり振とうさせながら37℃で30分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄することによって非結合ペプチドを除去した。次に、PBST中に1:2000で希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ/ストレプトアビジン結合体(Pierce ♯22127)を500μL添加し、室温(〜22℃)で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、PBSTで4回洗浄した。
【0193】
各エナメル基質をウェルから除去し、15mLの試験管中で10mLのPBSTにより再度洗浄した。次に、各エナメル基質を清浄なウェルプレート内に取り付け、エナメル質表面のみを露出させた。TMB基質およびHの1:1溶液(200μL)を各ウェルに添加し、室温(〜22℃)で10分間〜20分間の間、通常は15分間発色させた。次に、各ウェル中に停止溶液(100μLの2MのHSO)を含有する96ウェルのリーディングプレートに各ウェルからの100μLの溶液を移した。マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いてA450を測定した。得られた吸光度値は表11に与えられる。20のペリクル結合候補の分析を2日間にわたって完了させ、結果を、1日目からの最良の結合候補(DenP03)に対して正規化した。3回再現したエナメル質被覆ペリクル基質を用いて各配列を試験した。
【0194】
【表15】

【0195】
ペリクル結合ペプチドおよびビオチンを含むペプチド組成物が提供される。一実施形態では、ペプチド組成物の第1の結合要素は、ペリクル結合ペプチド、または配列番号125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、もしくは144の配列を含むペプチドを含む。一実施形態では、第2の結合要素はビオチンを含む。
【0196】
実施例11
ペリクル表面におけるペプチド結合親和性の決定
本実施例の目的は、ペリクル結合ペプチドの、そして実施例10で同定されたペリクル結合ペプチドを含むペプチド組成物の、ELISAアッセイを用いてMB50値で測定される親和性および特異性を決定することであった。
【0197】
標準的な固体ファージ合成法を用いて、表11に記載されるようなペリクル結合ペプチド、DenP3およびDenP32を合成し、検出のために結合配列のC末端のリジン残基においてビオチン化した。
【0198】
エナメル基質を約4mm角に切断し、口の中で30分間インキュベーションするためにワックス台上に取り付けて、ペリクル被覆表面を形成した。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、ウェルプレート内に置き、実施例5のようにペリクル表面を露出させた。各ペリクル被覆基質を、PBST(0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するPierce BUPHTM ♯28372)中1mg/mLのBSAからなる1mLのブロッキング緩衝液と共に室温で1時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引することによってブロッキング緩衝液を除去した。PBSTからなる洗浄緩衝液でチューブを2回すすいだ。様々な濃度にわたってブロッキング緩衝液中に希釈することにより調製した500μLのペプチド溶液をウェルに満たした。サンプルをゆっくり振とうさせながら37℃で30分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄することによって非結合ペプチドを除去した。次に、PBST中に1:2500で希釈したアルカリホスファターゼ/ストレプトアビジン結合体(Pierce)を500μL添加し、室温で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、PBSTで4回洗浄した。
【0199】
各エナメル基質をウェルから除去し、15mLの試験管中で10mLのPBSTにより再度洗浄した。次に、各エナメル基質を清浄なウェルプレート内に取り付け、エナメル質表面のみを露出させた。4−リン酸メチルウンベリフェロン(4−MUP)(150μL)基質(Sigma)を各ウェルに添加し、周囲の光から保護して30分間インキュベートした。次に、96ウェルのリーディングプレートに各ウェルからの100μLの溶液を移した。マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,(Sunnyvale,CA))を用いて蛍光を読み取った。GraphPad Prism 4.0(GraphPad Software,Inc.,(San Diego,CA))を用いて、ペプチドの濃度に対する相対蛍光単位として結果をプロットした。ScatchardプロットからMB50値を計算し、表12に示す。
【0200】
【表16】

【0201】
一実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号127または144を含む。別の実施形態では、ペプチド組成物は、ペリクル結合ペプチドおよびビオチンを含む。一実施形態では、ペプチド組成物は、約10−5MのMB50でペリクル表面に結合する。
【0202】
実施例12(予測的(PROPHETIC))
有益剤表面におけるペプチド結合親和性の決定
本実施例の目的は、リガンド特性を含有する有益剤の表面に対して、ペリクル表面における結合要素の結合優先度を確認することである。ペリクル表面に対して既知の親和性を有するビオチン化ペプチドは、ポリヒスチジン部分(例えば、6個のヒスチジン残基)に結合するように設計されたビーズに対して試験される。
【0203】
コバルト−NTAコーティング(DYNABEADS(登録商標)TALON(登録商標))を有するポリスチレンビーズは、Invitrogen(商品#101.02D)から、40mg/mLのスラリーとして入手される。約50μLのスラリー(2mgのビーズ)を再懸濁し、700μLのPBSTで洗浄する。ブロッキング緩衝液(PBST中1mg/mLのBSA)中でビーズを室温(〜22℃)で1時間インキュベートする。磁石を用いて、ビーズを試験管の底に保持しながらブロッキング緩衝液を除去する。ビーズをPBSTで2回洗浄し、磁石を除去した後、攪拌により溶液中に再懸濁させる。様々な濃度にわたってブロッキング緩衝液中に希釈することによってペプチド溶液(500μL)を調製する。サンプルをゆっくり振とうさせながら37℃で30分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄することによって非結合ペプチドを除去する。次に、PBST中に1:2500で希釈したアルカリホスファターゼ/ストレプトアビジン結合体(Pierce)を500μL添加し、室温で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、ビーズをPBSTで4回洗浄する。ビーズを清浄な試験管に移した。4−リン酸メチルウンベリフェロン(4−MUP)基質(Sigma)を各試験管に添加し、周囲の光から保護して30分間インキュベートした。ビーズを磁石により再び管の底に保持し、各試験管からの100uLの溶液を96ウェルのリーディングプレートに移した。マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,(Sunnyvale,CA))を用いて蛍光を読み取った。GraphPad Prism 4.0(GraphPad Software、Inc.,(San Diego,CA))を用いて、ペプチドの濃度に対する相対蛍光単位として結果をプロットする。ScatchardプロットからMB50値を計算する。いくつかの実施形態では、MB50値によって、Co−NTA被覆ビーズに対する親和性はペリクル表面に対して測定されるよりも少なくともほぼ一桁高いことが示され、従って、結合要素は粒子よりもペリクル表面に対してより大きい親和性を有する。
【0204】
実施例13
ペプチド媒介によるストレプトアビジン被覆金粒子のウシエナメル質への接着
歯の表面におけるファージディスプレイパニングによって発見された結合ドメイン(実施例3を参照)と、ストレプトアビジンおよびアビジンタンパク質に対して既知の親和性を有するC末端にビオチン結合された第2の結合要素とを組み込んだペプチドを設計した。標準的な合成固体ファージ法によりペプチドサンプルを産生した。対照として、歯の表面に対する同じ結合ドメインを含む非ビオチン化ペプチドも試験した。
【0205】
【表17】

【0206】
ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を薄片にし、ダイヤモンド刃の付いたDREMEL(登録商標)のこぎりを用いて、各辺約5mmのエナメルスラブに切断した。エナメル質ブロックを清浄にし、それぞれをプラスチック微量遠心管に入れた。
【0207】
各エナメル質ブロックを、0.1%のTWEEN(登録商標)20(PBST)および1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を有するリン酸緩衝食塩水中、室温(22℃)で45分間インキュベートした。全てのブロックを、微量遠心管中でボルテックスしながらPBSTで2回すすいだ。ペプチドをまず水中10mMに希釈し、次に、1mg/mLのBSAを有するPBST中20μMの作業濃度を調製した。各サンプルをペプチド溶液またはペプチドを含まない緩衝液対照に室温で30分間さらした。インキュベーション中、サンプルをゆっくり回転させた。エナメル質ブロックをペプチド溶液から除去し、ボルテックスしながらPBSTで4回洗浄した。
【0208】
ストレプトアビジンで官能性を持たせた50nmの金ナノ粒子をNanocs Inc(New York,NY)から入手し、1mg/mLのBSAを有するPBST中0.006重量%に希釈した。次に、全てのエナメル質サンプルを、ゆっくり回転させながら金ナノ粒子溶液に室温で1時間さらした。サンプルを水で3回すすぎ、分析の前に乾燥させた。
【0209】
Electron Microscopyにより各エナメル質サンプルを調査した。電子帯電を低減するために、分析の前に、各サンプルを炭素で被覆した。Hitachi S4700 FESEMにおいて1000X、10000Xおよび30000Xの倍率で画像を集めた。顕微鏡写真あたりの粒子をカウントし、粒子被覆の密度を比較した(表14)。
【0210】
【表18】

【0211】
ビオチン含有配列で最初に被覆されたエナメル質表面におけるストレプトアビジン粒子の被覆度がより高いと、エナメル質表面およびストレプトアビジン被覆粒子の両方に対して設計されたペプチドの親和性が実証される。
【0212】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号161および162からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0213】
実施例14
ペプチドおよび顔料の連続適用による歯のホワイトニング
ペプチド組成物は、バイオパニングにおいて発見されたペリクル結合ドメインおよびシリカ被覆二酸化チタンなどの負帯電顔料に結合するように設計した第2の結合要素を含むように設計した。ペリクル結合ドメインは、2つのペリクル結合要素DenP03(配列番号66)およびリンカー「Lb2」配列番号54を含む。可動性の非帯電リンカー(GSSGPGSS、配列番号160)が2つの結合要素を結びつける。対照として、同じペリクル結合ドメインを組み込むが、負帯電顔料に結合する付加的なドメインを含まない第2のペプチドを設計した。実施例16に記載されるような発酵によってペプチドを産生した。
【0214】
【表19】

【0215】
シリカ被覆ルチル二酸化チタン(Luce II WW)は、US Cosmetics Corp.(Dayville,CT)から入手した。Millipore水により12重量%の顔料溶液を調製した。10WにおいてBranson Sonifier 150を用いるホーン超音波処理により溶液を分散させた。氷浴中、2分間の超音波処理期間で合計6分間、溶液を超音波処理した。ペプチド被覆エナメル質に適用するために10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中1重量%の作業溶液を作った。同じ緩衝液中に希釈したこの分散液の0.01%溶液をMalvern Zetasizer Nano 動的光散乱機器において測定した。分散液は、445nmの平均粒径(Z−avg)および−57mVのゼータ電位を有した。
【0216】
ウシエナメル質切歯は、E Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を薄片にし、ダイヤモンド刃の付いたDREMEL(登録商標)のこぎりを用いて各辺約7mmのエナメルスラブに切断した。エナメルスラブを清浄にし、軽く研磨して表面のくずを除去した。ヒトの染色された歯と同様の色に染色するためにエナメル質をコーヒーおよびお茶の混合物で前処理した。次に、各エナメル質ブロックをワックス台に取り付け、エチレンオキシドで滅菌した。取り付けたエナメル質ブロックを口の中で30分間インキュベートして、ペリクル被覆表面を形成した。取り付けたエナメル質ブロックを、歯ブラシおよびCOLGATE(登録商標)MAXFRESH(登録商標)練り歯磨き(Colgate−Palmolive Co.,(New York,NY))の1:2希釈物でブラッシングしてから、口の中に1分間再挿入した。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、水ですすぎ、ウェルプレートに入れた。各ペリクル被覆エナメル質スラブを、Konica−Minolta 2600d積分球分光光度計を用いて色について測定した。
【0217】
表15に記載されるペプチドをpH7.2のPBS緩衝液中に20μMの濃度で溶解した。各実験条件に対して3回再現した歯を用いた。各歯をペプチド溶液と共に30分間、あるいは対照として緩衝液単独でインキュベートした。エナメル質ブロックをペプチド溶液から除去し、PBS緩衝液ですすいだ。次に、エナメル質ブロックをシリカ被覆TiOの1%溶液中で30分間インキュベートした。エナメル質ブロックを除去し、10mMのリン酸緩衝液ですすぎ、吸い取り乾燥(blotted dry)した。各基質を色(L、a、b、C、h)値について測定した。ホワイトニングプロセスの全色差、デルタEabおよびメトリック色相差、デルタHabは、以下の式(1)および(2):
デルタEab=((L−L)+(a−a)+(b−b))1/2 (1)
デルタHab=(2(C−a−b))1/2 (2)
を用いて計算した。ここで、International Commission of Illumination(CIE)により定義され、ASTM D2244−09bに記載されるように、L=明度変数、aおよびbは色度座標およびCはCIELAB色空間の彩度であり、下付き文字1は初期色値を示し、下付き文字2は最終色値を示す。色測定値は表16に提供される。
【0218】
【表20】

【0219】
表16における色測定値は、ペリクル結合要素と、負帯電シリカ被覆二酸化チタンとの静電相互作用のために設計された第2の結合要素との両方を含有するペプチド配列が、ペプチドのない対照および第2の結合要素を含有しないペプチドと比較してより大きい色差測定値によって示されるように、粒子付着の改善をもたらすことを実証する。
【0220】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号164および167からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第1の結合要素を含む。
【0221】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号165および168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第2の結合要素を含む。
【0222】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号163および166からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0223】
実施例15(予測的)
ペプチドおよび顔料の連続適用による歯のホワイトニング
ペプチド組成物は、バイオパニングにおいて発見されたペリクル結合ドメインおよびシリカ被覆二酸化チタンなどの負帯電顔料に結合するように設計された付加的なドメインを含むように設計した(表17)。可動性の非帯電リンカー(GSSGPGSP、配列番号158)が2つの結合要素を結びつける。実施例16に記載されるような発酵によってペプチドを産生した。
【0224】
【表21】

【0225】
【表22】

【0226】
【表23】

【0227】
米国特許第2,885,366号明細書(Iler)に記載される方法によって、3%のシリカ負荷でシリカにより最初に被覆されたシリカ被覆二酸化チタンを、ルチル二酸化チタン(DuPont,(Wilmington,DE))を用いて調製する。SPEEDMIXERTM DAC150 FVZ−K(FlackTek Inc.,(Landrum,SC))において、約10gのシリカ被覆二酸化チタンを、25gの0.5mmのジルコニア−シリカビーズおよび40gの水と混ぜ合わせて安定な分散液を作る。混合物を合計20分間処理する。混合に続いて、溶液をろ過して、ジルコニア−シリカビーズを除去する。得られた顔料分散液は不透明な白色溶液であり、負のゼータ電位を有する安定な分散液である。シリカ被覆二酸化チタンの0.5%(固体重量)溶液を10mMリン酸緩衝液(pH7.2)中で調製する。
【0228】
SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手したウシ切歯からエナメル基質を約7mm角に切断する。各エナメル質ブロックをまずお茶およびコーヒーの組み合わせで2日間処理して、自然のヒト歯の色調と同様の色にブロックを染色する。基質を研磨し、滅菌し、口の中で30分間インキュベーションするためにワックス台上に取り付けて、ペリクル被覆表面を形成する。ペリクル被覆エナメル基質をワックスバッキングから除去し、積分球分光光度計(Minolta CM2600d)を用いて、各基質において色を測定する(L、a、b
【0229】
ペプチドをpH7.2のPBS緩衝液中に濃度10μMで溶解する。各歯をペプチド溶液と共に30分間、あるいは対照として緩衝液単独でインキュベートする。エナメル質ブロックをペプチド溶液から除去し、PBS緩衝液ですすぐ。次に、エナメル質ブロックを、シリカ被覆TiOの0.5%溶液中で30分間インキュベートする。エナメル質ブロックを除去し、10mMのリン酸緩衝液ですすぎ、吸い取り乾燥する。各基質を色(L、a、b、C、h)値について測定し、実施例14に記載されるように色の変化を計算した。好ましい実施形態では、ペプチド媒介による色の付着は、計算されたデルタEがペプチドのない対照よりも著しく大きいことによって認められる。
【0230】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号152、153、154、155、156、および157からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第2の結合要素を含む。
【0231】
いくつかの実施形態では、ペプチド組成物は、配列番号145、146、147、148、149、150、および151からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0232】
実施例16
発酵によるペプチドの生物学的産生
産生株の構築
大腸菌(E.coli)のために有利なコドンを用いて所与のペプチド配列コードするように、そして配列反復およびmRNA二次構造を回避するようにDNA配列を設計した。Gustafssonら(Trends in Biotechnol.,(2004年)22(7):346−355)によって記載される独自開発のソフトウェアを用いて、DNA 2.0,Inc.(Menlo Park,CA)により遺伝子配列を設計した。アミノ酸配列をコードするDNA配列の後には、2つの終結コドンおよびエンドヌクレアーゼAscIのための認識部位があった。
【0233】
合成オリゴヌクレオチドから遺伝子を構築し、DNA 2.0,Inc.によって標準プラスミドクローニングベクターにクローニングした。次に、DNA 2.0,Inc.によるDNA配列決定によって配列を検証した。合成遺伝子をエンドヌクレアーゼ制限酵素BamHIおよびAscIによりクローニングベクターから切り取り、標準組換えDNA法を用いて発現ベクター内に連結した。ベクターpKSI(C4)E−HC77643(配列番号159)(米国特許出願公開第2009−0029420−A1号明細書、参照によって本明細書に援用される)を用いて、ペプチドをコードする遺伝子を発現させた。ベクターpKSI(C4)E−HC77643は、発現ベクターpKSIC4−HC77623の誘導体である。特に、KSI(C4)封入体タグ中の5つの酸に不安定なアスパラギン酸残基を、タグをより耐酸性にするためにグルタミン酸で置換した。
【0234】
プラスミドpKSIC4−HC77623は、市販のベクターpDEST17(Invitrogen,(Carlsbad,CA))に由来した。このベクターの構築は、参照によって本明細書に援用される米国特許第7,285,264号明細書(O’Brienら)において既に記載されている。これには、酵素ケトステロイドイソメラーゼ(KSI)の断片をコードする市販のベクターpET31b(Novagen,(Madison,WI))に由来する配列が含まれる。KSI断片は、大腸菌(E.coli)における不溶性の封入体へのペプチドの分割を促進するために融合パートナーとして含まれた。標準変異誘発手順(QuickChange II,Stratagene,(La Jolla,CA))を用いて、野生型KSI配列中に見られる1つのCysコドンに加えて3つの付加的なCysコドンを含むように、pET31bからのKSIコード配列を修飾した。
【0235】
所望のペプチドをコードするDNA配列を、BamHI部位とAscI部位の間でベクター内の配列を置換することによってpKSI(C4)E−HC77643内に挿入した。ペプチドコード配列およびベクターDNAを含有するプラスミドDNAをエンドヌクレアーゼ制限酵素BamHIおよびAscIで消化し、次に、ペプチドコード配列およびベクターDNAを混合し、標準DNAクローニング手順を用いてファージT4DNAリガーゼにより連結した。ペプチドをコードする配列がpKSI(C4)E−HC77643に挿入された正確な構築物を制限分析により同定し、DNA配列決定により検証した。この構築物において、ペプチド結合体をコードする配列を、HC77643をコードする配列と置換した。配列をバクテリオファージT7遺伝子10プロモーター作動可能に連結させ、変異形KSIパートナーと融合された融合タンパク質として発現させた。
【0236】
ペプチドの発現を試験するために、発現プラスミドをBL21−AI大腸菌(E.coli)株(Invitrogen、カタログ番号C6070−03)に形質転換した。組換え融合ペプチドを産生するために、50mLのLB−アンピシリンブロス(10g/Lバクト−トリプトン、5g/Lのバクト−酵母抽出物、10g/LのNaCl、100mg/Lのアンピシリン、pH7.0)に形質転換細菌を接種し、OD600が0.6に到達するまで培養物を37℃で振とうした。0.5mLの20重量%のL−アラビノースを培養物に添加することによって発現を誘発し、振とうをさらに4時間継続した。
【0237】
成長条件
ペプチドをコードする発現プラスミドを含有する大腸菌(E.coli)BL21−AI細胞を、1Lの修正ZYP−5052自己誘導培地を含有する2.8LのFernbachフラスコ中で、攪拌(200rpm)しながら37℃で20時間成長させた(Studier,F.W,(2005) Protein Expression and Purification 41:207−234)。1リットルあたりの培地組成は、次の通りである:10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母抽出物、5g/LのNaCl、50mMのNaHPO、50mMのKHPO、25mMの(NHSO、3mMのMgSO、0.75%のグリセロール、0.075%のグルコースおよび0.05%のL−アラビノース(大腸菌(E.coli)BL21AIT7系のための誘発剤)。これらの条件下で、1リットルあたり約20g/Lの湿重量の細胞を得た。
【0238】
封入体の単離
1本の500mLビンの中で以下のプロセスを実施した。細胞を遠心分離により成長培地から分離し、200mL(10gの細胞ペースト/100mLの緩衝液)の20mMのトリス緩衝液および10mMのEDTA(pH8.0)で洗浄した。リゾチーム(5mg/200mL)を添加した200mLの20mMのトリス緩衝液および10mMのEDTA(pH8.0)中に細胞ペーストを再懸濁させ、少なくとも1回の凍結融解サイクルを通して、溶解を促進した。超音波処理により溶解を完了させ、遠心分離(9000RCF、4℃で20分間)により封入体ペーストを回収する。それぞれの付加的な洗浄工程は、封入体ペーストの再懸濁と、その後の超音波処理および遠心分離(9000RCF、4℃で20分間)とを含んだ。洗浄工程は、高pH洗浄(50mMのトリスHCL、pH9.0)と、その後の20mMのトリス−HCl(pH8.0)による付加的な洗浄を含んだ。通常、5g/Lの封入体ペーストを回収した。
【0239】
酸切断
回収した封入体ペーストを100mLの純水中に再懸濁し、HClを用いて混合物のpHを2.2に調整した。酸性化した懸濁液を攪拌しながら70℃に14時間加熱し、融合ペプチドを産物ペプチドから分離するアスパルチル−プロリル(DP)部位の切断を完了させた。
【0240】
IBTを対象のペプチドから分離するための酸化架橋
産物を〜5℃に冷却してから、NaOHを用いてpHを5.3に中和し、さらに1時間〜5℃に冷却して、システイン架橋KSI(C4)Eタグの沈殿を促進した。次に、混合物を、10000RCF、4℃において30分間遠心分離した。ペレットは、封入体融合パートナーKSI(C4)Eを含有した。
【0241】
酸化架橋後の結果:
沈殿ペーストおよび残存する可溶性画分の両方のSDS−PAGEゲル分析によって、不溶性ペースト中のKSI(C4)Eの存在と、所望のペプチドが可溶性画分中に残存することが示された。
【0242】
ペプチドを含有する上澄みをHPLCにより分析して、ペプチドの存在を確認した。単離したペプチドのLCMSによるさらなる分析によって、5つの潜在的な内部の酸切断可能な「D」配列および1つの好ましい酸切断部位(Asp−Pro)を含有するKSI(C4)バージョンで見られる汚染KSI断片の不在が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)口腔表面に対する親和性を有し、MB50値が10−5モル濃度又はそれ未満である第1の結合要素、および
(ii)第2の結合要素
を含むペプチド組成物と、
(b)0.01ミクロン〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有する粒子を含む組成物であって、該粒子が、
(i)有益剤、および
(ii)リガンド特性
を含む組成物と
を含み、ここで上記第2の結合要素および上記リガンド特性が非共有結合でまたはキレート化によって互いに会合する、口腔ケアシステム。
【請求項2】
粒子を含む前記組成物が前記粒子の安定分散液である、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項3】
平均粒径がレーザー回折または動的光散乱などの光散乱法によって測定される、請求項1または2に記載の口腔ケアシステム。
【請求項4】
第1の結合要素が複数の口腔表面結合ペプチドを含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項5】
口腔表面が歯の表面である、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項6】
歯の表面がエナメル質である、請求項5に記載の口腔ケアシステム。
【請求項7】
歯の表面がペリクルである、請求項5に記載の口腔ケアシステム。
【請求項8】
第1の結合要素が、粒子に対する親和性に比べて、口腔表面に対してより大きい結合親和性を有する、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項9】
第2の結合要素とリガンド特性との間の会合が、イオン結合に基づく、水素結合に基づく、キレート化に基づく、生物学的親和性に基づく、静電気に基づく、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項10】
第2の結合要素とリガンド特性との間の会合がキレート化に基づく、請求項9に記載の口腔ケアシステム。
【請求項11】
第2の結合要素がポリヒスチジンタグである、請求項10に記載の口腔ケアシステム。
【請求項12】
第2の結合要素とリガンド特性との間の会合が静電気に基づく、請求項9に記載の口腔ケアシステム。
【請求項13】
第2の結合要素およびリガンド特性が、ビオチンおよびアビジン、ビオチンおよびストレプトアビジン、ストレプトアビジンタグおよびストレプトアビジン、マルトース結合タンパク質およびマルトース、マルトース結合タンパク質およびアミラーゼ、ポリヒスチジンタグおよび金属イオンを含む親和性媒体、グルタチオンS−トランスフェラーゼおよびグルタチオン、エピトープタグおよび抗体、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の口腔ケアシステム。
【請求項14】
親和性媒体が、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、またはこれらの組み合わせの金属イオンを含む、請求項13に記載の口腔ケアシステム。
【請求項15】
有益剤が、着色剤、ホワイトニング剤、酵素、抗プラーク剤、防汚剤、抗菌剤、抗う蝕剤、香味剤、冷却剤、唾液分泌剤またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項16】
着色剤が顔料である、請求項15に記載の口腔ケアシステム。
【請求項17】
顔料がTiOを含む、請求項16に記載の口腔ケアシステム。
【請求項18】
安定分散液が電荷安定化されている、請求項2に記載の口腔ケアシステム。
【請求項19】
安定分散液が、少なくとも25mVの絶対値を有するゼータ電位を含む、請求項2に記載の口腔ケアシステム。
【請求項20】
安定分散液が立体的に安定化されている、請求項2に記載の口腔ケアシステム。
【請求項21】
安定分散液が分散剤を含む、請求項2に記載の口腔ケアシステム。
【請求項22】
分散剤がイオン性分散剤または非イオン性分散剤である、請求項21に記載の口腔ケアシステム。
【請求項23】
ペプチド組成物が、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、120、121、122、123、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、および144からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項24】
ペプチド組成物が、配列番号145、146、147、148、149、150、および151からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項25】
ペプチド組成物が、配列番号161、162、163、および166からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項26】
ペプチド組成物が、配列番号116、117、119、152、153、154、155、156、157、165、および168からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する第2の結合要素を含む、請求項1に記載の口腔ケアシステム。
【請求項27】
口腔ケア用有益剤を口腔表面に適用するための方法であって、
(a)(i)(1)口腔表面に対する親和性を有し、MB50値が10−5モル濃度又はそれ未満である第1の結合要素、および
(2)第2の結合要素
を含むペプチド組成物と、
(ii)0.01ミクロン〜10ミクロンの範囲の平均粒径を有する粒子を含む組成物であって、該粒子が、
(1)有益剤、および
(2)リガンド特性
を含む組成物と
を含み、ここで上記第2の結合要素および上記リガンド特性が非共有結合またはキレート化によって互いに会合する口腔ケアシステムを備えることと、
(b)口腔表面を上記(a)の口腔ケアシステムと接触させ、それにより、該有益剤を該口腔表面に適用することと
を含む、上記方法。
【請求項28】
口腔ケアシステムのペプチド組成物を、口腔表面と接触させた後、粒子を含む組成物と接触させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
口腔ケアシステムのペプチド組成物および粒子を含む組成物が同時に前記口腔表面に適用される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
ペプチド組成物が、配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、および115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
配列番号64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、120、121、122、123、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、および144からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項32】
161、162、163、および166からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項33】
請求項31または32に記載のポリペプチドを含む口腔ケア組成物。
【請求項34】
組成物が散剤、パスタ剤、ゲル剤、液剤、軟膏剤、または錠剤の形態である、請求項33に記載の口腔ケア組成物。

【公表番号】特表2012−522059(P2012−522059A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503588(P2012−503588)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/029139
【国際公開番号】WO2010/117753
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】