説明

口腔ケア組成物および方法

MMP−13阻害剤を含む組成物、および該組成物を用いる方法を本明細書に記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
[0001]本出願は、2009年12月21日出願の米国仮特許出願第61/288,359号に優先権を請求し、該出願は、本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
[0002]マトリックス・メタロプロテイナーゼはMMPと称され、大部分の哺乳動物に見られるカルシウムおよび亜鉛依存性エンドペプチダーゼの天然存在ファミリーである。MMPの過剰発現および活性化、またはMMPおよびMMP阻害剤の間の不均衡は、細胞外マトリックスまたは結合組織の破壊によって特徴付けられる疾患の病因形成における要因であると示唆されてきている。
【0003】
[0003]歯周組織(歯肉、セメント質、歯周靱帯および歯槽骨)の主な構成要素は有機マトリックスである。マトリックス・メタロプロテイナーゼ(MMP)は、歯周マトリックスのリモデリングに関与する。破壊性MMPは、生理学的および病的条件の両方において、細胞外マトリックスの多様な構成要素を分解する。破壊性MMPの病的過剰産生は、マトリックスの不適切でそして過剰な分解を導く。破壊性MMPの過剰産生によって、まず類骨(ミネラル化されていない、そして新規に合成された骨マトリックス)の分解により、そして次いでマトリックスの分解により、骨吸収が促進され、歯肉退縮、ポケット形成、付着喪失、歯のぐらつきおよび歯の喪失を含む、歯周炎の臨床徴候が生じる。
【0004】
[0004]MMP−13は、細胞外マトリックスの分解において役割を果たす、主な破壊性MMPの1つである。MMP−13発現レベルは、歯周炎臨床指標と相関する。MMP−13は、罹患歯周組織および歯肉溝滲出液において検出される;しかし、MMP−13は健康な口腔粘膜には検出されない。Uittoら American Journal of Pathophysiology, 152(6), 1489(1998)。
【0005】
[0005]マトリックス・メタロプロテイナーゼ−13は、関節リウマチおよび変形性関節症における骨吸収および軟骨破壊に関与する酵素として知られていた。MMP−13レベルの上昇はまた、慢性歯周炎患者の歯肉溝滲出液に存在することも知られる。さらに、MMP−13は、歯周病患者において、骨および結合組織破壊の両方に寄与することが知られる。Ilgenli, T.ら Oral Diseases, 12, 573(2006)。
【0006】
[0006]現在、抗菌剤、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、ビスホスホネートおよびテトラサイクリンが歯周病治療に用いられている。これらの剤はしばしば、適切な症状緩和を提供せず、そして疾患の天然進行を改変するとは考えられない。さらに、これらの療法のほぼすべてに伴う強力な副作用が見出される。したがって、これらの障害のための、安全でそして有効な療法に対する多大な必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Uittoら American Journal of Pathophysiology, 152(6), 1489(1998)
【非特許文献2】Ilgenli, T.ら Oral Diseases, 12, 573(2006)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]歯周病の多様な側面のための多くの治療があるが、骨吸収を促進し、そして組織破壊を引き起こす破壊性MMPをターゲットとする活性成分を含む、改善された口腔組成物を開発する必要があり続けている。特に、骨吸収および結合組織破壊の両方に寄与するMMP−13をターゲットとする、改善された口腔組成物を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]第一の側面において、マトリックス・メタロプロテイナーゼMMP−13を阻害するための方法であって、被験体に、療法的に有効な量のマトリックス・メタロプロテイナーゼMMP−13阻害剤を投与する工程を含み、該マトリックス・メタロプロテイナーゼMMP−13阻害剤が、クランベリー抽出物NDM、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
【0010】
[0009]該方法は、マトリックス・メタロプロテイナーゼMMP−13を有効に阻害し、そしてそれによってMMP−13発現によって引き起こされる状態を治療するかまたは防止するための新規機構を提供する。本発明者らは、驚くべきことに、クランベリー抽出物NDM、アセチルケト β−ボスウェル酸(AKBBA)、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその組み合わせが、マトリックス・メタロプロテイナーゼMMP−13を有効に阻害することを見出した。
【0011】
[0010]第二の側面において、口腔ケア組成物であって、該組成物が、口腔的に許容されうるキャリアー、ならびにクランベリー抽出物非透析性材料、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物を含み、該化合物がMMP−13を阻害するのに有効な量で存在する、前記組成物。
【0012】
[0011]第三の側面において、MMP−13発現によって引き起こされる状態を治療するかまたは防止するための、クランベリー抽出物非透析性材料、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される化合物を含む、口腔ケア組成物。
【0013】
[0012]また、細胞外マトリックスの分解、付着喪失、歯の喪失、歯のぐらつき、ポケット形成および骨喪失を治療する方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0013]本明細書全体において、範囲は、該範囲内のありとあらゆる値を記載するための簡単な表現として用いられる。範囲内のいかなる値を範囲の終端として選択してもよい。さらに、本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が、明確に本明細書に援用される。本開示および引用参考文献において、定義の矛盾が生じる場合は、本開示が統制する。
【0015】
[0014]別に明示しない限り、本明細書および明細書中の別の箇所に示す割合および量のすべては、重量パーセントを指すと理解されるべきである。与えられる量は、材料の活性重量に基づく。
【0016】
[0015]本明細書において、「香味剤(flavorant)」は、組成物の食味を増進させる任意の材料または材料の混合物を指す。
[0016]組成物
[0017]いくつかの態様において、組成物は、療法的に有効な量のMMP−13阻害剤および口腔的に許容されうるキャリアーを含む。いくつかの態様において、MMP−13阻害剤は、クランベリー抽出物非透析性材料、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその2またはそれより多い組み合わせからなる群より選択される。
【0017】
[0018]いくつかの態様において、MMP−13阻害剤は、クランベリー抽出物非透析性材料、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその2またはそれより多い組み合わせからなる群より選択される。
【0018】
[0019]いくつかの態様において、組成物はさらに、抗歯垢剤、ホワイトニング剤、抗細菌剤、クレンジング剤、フレーバー剤、甘味剤、接着剤、界面活性剤、泡調節剤、研磨剤、pH修飾剤、保湿剤、口腔感触剤(mouth feel agent)、着色剤、歯石調節(抗歯石)剤、フッ化物イオン供給源、唾液分泌刺激剤、栄養素、あるいは2またはそれより多いその組み合わせを含む。
【0019】
[0020]いくつかの態様は、甘味剤、アルコール、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリマー、アルキルポリグリコシド(APG)、ポリソルベート、ひまし油、またはメントールをさらに含む。
【0020】
[0021]いくつかの態様において、甘味剤は、サッカリンまたはサッカリンナトリウムである。いくつかの態様において、アルコールはエタノールである。いくつかの態様において、ポリマーはPOLOXAMER(登録商標)407またはPLURONIC(登録商標)F108(どちらもBASF社より入手可能)である。いくつかの態様において、ポリエチレングリコールはPEG40である。
【0021】
[0022]口腔的に許容されうる天然または合成香味剤、例えばフレーバー油、フレーバーアルデヒド、エステル、アルコール、類似の材料、およびその組み合わせを用いてもよい。香味剤には、バニリン、セージ、マージョラム、パセリ油、スペアミント油、シナモン油、ウィンターグリーン油(メチルサリチレート)、ペパーミント油、クローブ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、柑橘油、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アプリコット、バナナ、ブドウ、リンゴ、イチゴ、チェリー、パイナップル等に由来するものを含むフルーツ油および精油、豆およびナッツ由来フレーバー、例えばコーヒー、ココア、コーラ、ピーナッツ、アーモンド等、吸着されそして被包された香味剤、ならびにその混合物が含まれる。本明細書の香味剤にやはり含まれるのは、芳香、および/または冷却するかまたは暖める効果を含めて、口中で他の感覚的効果を提供する成分である。こうした成分には、メントール、酢酸メンチル、乳酸メンチル、樟脳、ユーカリ油、ユーカリプトール、アネトール、オイゲノール、カッシア(cassia)、オキサノン(oxanone)、[アルファ]−イリソン、プロピルグアイエトール(propyl guaiethol)、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミン、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メトングリセロールアセタール(MGA)、およびその混合物が含まれる。1またはそれより多い香味剤が、場合によって、総量の約0.01%〜約5%で、場合によって、多様な態様において、約0.05〜約2%で、約0.1%〜約2.5%で、そして約0.1〜約0.5%で存在する。
【0022】
[0023]本明細書において有用なものの中の甘味剤には、デキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥反転糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分的加水分解デンプン、水素付加デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリンおよびその塩、スクラロース、ジペプチドに基づく強甘味料、シクラメート、ジヒドロカルコン、およびその混合物が含まれる。
【0023】
[0024]口腔感触剤には、組成物の使用中に望ましい質感または他の感触を与える材料が含まれる。これらには、攪拌で破壊されるように設計されている凝集シリカ粒子、例えばPQ社、ペンシルバニア州バレーフォージより商業的に入手可能な、SORBOSIL(登録商標)BFGシリーズ(例えばBFG10、BFG50、BFG100等)、CBT60S、CBT70、またはAC33/43シリカが含まれてもよい。
【0024】
[0025]本明細書において有用なものの中で、着色剤には、ピグメント、色素、レーキ、並びにパール化剤(pearling agent)などの特定の艶または反射性を与える剤が含まれる。多様な態様において、着色剤は、歯の表面上に白色または淡色のコーティングを提供し、組成物によって有効に接触された歯の表面上の位置の指標として作用し、そして/または組成物の外見、特に色および/または不透過度を修飾して、消費者への魅力を増進させるように機能可能である。FD&C色素およびピグメント、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色、黄色、茶色および黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、チタン化雲母、オキシ塩化ビスマス、ならびにそれらの混合物を含む、口腔的に許容されうる任意の着色剤を用いてもよい。約0.001%〜約20%、例えば約0.01%〜約10%または約0.1%〜約5%の総量で、1またはそれより多い着色剤が場合によって存在する。
【0025】
[0026]特定の態様において、組成物は、例えば艶出し剤(polishing agent)として有用な、場合による研磨剤をさらに含んでもよい。任意の口腔的に許容されうる研磨剤を用いてもよいが、研磨剤のタイプ、細かさ(粒子サイズ)および量は、歯のエナメル質が、組成物の正常使用において、過剰に研磨されないように選択されなければならない。適切な場合による研磨剤には、例えば沈殿シリカの形またはアルミナと混合されたシリカ、不溶性ホスフェート、炭酸カルシウム、およびその組み合わせが含まれる。研磨剤として有用な不溶性ホスフェートの中には、オルトホスフェート、ポリメタホスフェートおよびピロホスフェートがある。例示的な例は、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウムおよび不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。
【0026】
[0027]特定の態様において、組成物は、場合によって、歯石調節(抗歯石)剤を含む。本明細書において有用なものの中の歯石調節剤には、これらの剤のいずれかの塩、例えばそのアルカリ金属およびアンモニウム塩:ホスフェートおよびポリホスフェート(例えばピロホスフェート)、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、スルホン酸ポリオレフィン、リン酸ポリオレフィン、ジホスホネート、例えばアザシクロアルカン−2,2−ジホスホネート(例えばアザシクロヘプタン−2,2−ジホスホン酸)、N−メチルアザシクロペンタン−2,3−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)およびエタン−1−アミノ−1,1−ジホスホネートおよびホスホノアルカンカルボン酸が含まれる。有用な無機リン酸塩およびポリリン酸塩には、一塩基性、二塩基性および三塩基性リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸一、二、三および四ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムおよびその混合物が含まれる。
【0027】
[0028]特定の態様において、組成物は、場合によってフッ化物イオン供給源を含み、そして例えば虫歯予防剤として有用である。任意の口腔的に許容されうるフッ化物イオン供給源を使用してもよく、これには、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムおよびフッ化アンモニウム、ならびにモノフルオロリン酸カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウムおよびモノフルオロリン酸アンモニウム、フッ化第一スズ、フッ化インジウム、フッ化アミン、例えばオラフルル(N’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−tris(2−エタノール)−ジヒドロフルオリド)、およびその混合物が含まれる。1またはそれより多いフッ化物イオン供給源は、場合によって、口腔組成物に臨床的に有効な量の可溶性フッ化物イオンを提供する量で存在する。
【0028】
[0029]特定の態様において、例えば口渇を改善する際に有用な唾液分泌刺激剤を場合によって含む。任意の口腔的に許容されうる唾液分泌刺激剤を用いてもよく、これには、限定なしに、食用の酸、例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸および酒石酸、ならびにその混合物が含まれる。場合によって、1またはそれより多い唾液分泌刺激剤が、唾液分泌を刺激するのに有効な総量で存在する。
【0029】
[0030]特定の態様において、組成物は、場合によって栄養素を含む。適切な栄養素には、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、およびその混合物が含まれる。ビタミンには、ビタミンCおよびD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、ビオフラボノイド、およびその混合物が含まれる。栄養補助剤には、アミノ酸(L−トリプトファン、L−リジン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチンおよびL−カルニチンなど)、脂肪作用剤(コリン、イノシトール、ベタイン、およびリノレン酸など)、およびその混合物が含まれる。
【0030】
[0031]多様な態様において、本発明記載の口腔組成物は、意図的に飲み込まれず、意図される有用性を達成するのに十分な時間、口腔中に保持される。他の持ち運び可能な態様(例えばロゼンジ、ミント、ビーズ、ウェーハ、小さい持ち運び可能なネブライザーからの口腔適用用に配合された液体、小さい持ち運び可能滴生成瓶からの口腔適用用に配合された液体、または柔らかい柔軟な錠剤)において、口腔組成物は、場合によって、意図される有用性を達成するのに十分な時間、口腔中に保持された後、意図的に飲み込まれる。
【0031】
[0032]多様な態様の口腔ケア組成物は、好ましくは、歯磨剤の形である。用語「歯磨剤」は、本説明全体において、ペースト、ジェル、または液体配合物を意味する。歯磨剤は任意の所望の型、例えば練り歯磨き;(ディープストライプ、表面ストライプ、多層、ジェルで囲まれている練り歯磨きを含む);粉末;ビーズ;口腔洗浄液;口腔リンス;ロゼンジ;歯のジェル;歯周ジェル;歯の表面にペイントするのに適した液体;チューインガム;溶解性、部分的溶解性または非溶解性フィルムまたはストリップ;ウェーハ;ワイプまたはウェットティッシュ;インプラント;泡;トローチ;デンタルフロス、小さい持ち運び可能なネブライザー(スプレー瓶)に入った口腔適用用に配合された液体;小さい持ち運び可能な滴生成瓶に入った口腔適用用に配合された液体;柔らかい柔軟な錠剤(「チューイー(chewie)」);あるいはその任意の組み合わせであってもよい。本明細書において、「口腔的に許容されうるキャリアー」は、組成物中で使用するのに安全であり、妥当な利益/リスク比と釣り合った材料または材料の組み合わせを指す。
【0032】
[0033]本明細書において、用語「口腔的に許容されうるビヒクル」または「口腔的に許容されうるキャリアー」は、任意の上記歯磨剤を配合する際に有用な任意のビヒクルを指す。適切な口腔的に許容されうるビヒクルには、例えば、1またはそれより多い以下:溶媒、アルカリ剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、研磨剤、抗歯石剤、着色剤、フレーバー剤、色素、カリウム含有塩、抗細菌剤、脱感作剤、ステイン減少剤、およびその混合物が含まれる。
【0033】
[0034]いくつかの態様はまた:ロゼンジ、ミント、ビーズ、ウェーハ、スプレーとしての口腔適用用に配合された液体中の前記混合物を含有する、小さい持ち運び可能ネブライザー、滴としての口腔適用用に配合された液体中の前記混合物を含有する、小さい持ち運び可能な瓶、および柔らかい柔軟な錠剤からなる群より選択される組成物も提供する。
【0034】
[0035]クランベリー抽出物非透析性材料(NDM)は、クランベリージュース濃縮物由来である。クランベリージュースは、宿主細胞への細菌接着とともに、多くの口腔細菌の共凝集を阻害する高分子量材料(NDM)を含有する。クランベリー抽出物NDMは、Weiss E; Lev−Dor, R.; Kashmamn, Y.; Goldhar, J.; Sharon, N.; Ofek, Itzhak, J. Am. Dent. Assoc. 129, 1719(1998)に記載される方法にしたがって調製された。
【0035】
[0036]アセチルケト β−ボスウェル酸(AKBBA)は、抗細菌、抗炎症および酸化防止活性を示す、ボスウェリア属(Boswellia)植物から単離された有用な活性化合物である。ボスウェリア属は、ボスウェル酸化合物を含む、抗炎症特性を有する抽出物を産生する樹木の属である。例えば、ボスウェリア・サクラ(Boswellia sacra)、B.フレレアナ(B. frereana);B.セラータ(B. serrata);およびB.パピリフェラ(B. papyrifera)およびその亜種が適切な抽出物を産生する。
【0036】
[0037]グルコシドおよびポリマーを含む分子ファミリーの親化合物であるレスベラトロール(resveratrol)(3,5,4’−トリヒドロキシスチルベン)は、フランス特許出願第9805673号、1998年5月5日出願に記載されるように、強力なAhRアンタゴニストである。該物質は、種子植物と分類される植物によって産生される抗真菌剤またはフィトアレキシンであり、このうち、蔓植物(vine)、ピーナッツおよび松が主な代表である(Soleasら, 1997, Clin Biochemistry, 30:91−113)。AhRアンタゴニストとして、化学名3,5,4’−トリヒドロキシスチルベンであるレスベラトロールは、一般的に、例えばハロゲン化およびポリ環状アリール炭化水素、多環芳香族炭化水素およびポリ塩化ビフェニルを含む、AhRリガンドへの環境曝露の毒性効果を防止するのに有用である。さらに、レスベラトロールは、炎症促進性サイトカイン、IL−1ベータのAhRリガンドによる誘導を防止することが立証されてきている(Casperら 1999, Molecular Pharmacology, 56:784−790)。
【0037】
[0038]使用法
[0030]いくつかの態様は、異常なMMP−13発現と関連する状態を治療するための方法であって、治療が必要な動物に、療法的に有効な量のMMP−13阻害剤を投与する工程を含む、前記方法を提供する。いくつかの態様において、組成物は、動物の口腔への投与または適用に適している。
【0038】
[0040]いくつかの態様において、異常なMMP−13発現に関連する状態を治療するための薬剤の製造におけるMMP−13阻害剤の使用を提供する。
[0041]他の態様において、MMP−13阻害剤は、クランベリー抽出物NDM、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメートおよび4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、あるいはその2またはそれより多い組み合わせからなる群より選択される。いくつかの態様において、MMP−13発現と関連する状態は、歯周病、細胞外マトリックスの分解、歯のぐらつき、歯の崩壊、付着喪失、歯の喪失、ポケット形成または骨喪失より選択される。
【実施例】
【0039】
[0042]実施例
[0043]副甲状腺ホルモン(PTH)は、MMP−13の転写を刺激する。実験法は、ラット骨芽細胞株由来の細胞であるUMR 106−01細胞において、MMP−13転写を刺激するためにPTHを利用する。UMR 106−01細胞株は、in vitroで、骨芽細胞に対するPTHの影響を研究するために有用なモデル系を提供する。例えば、Qin, L.ら Journal of Biological Chemistry, 278(22), 19723(2003)を参照されたい。
【0040】
[0043]材料
[0044]副甲状腺ホルモン(ラットPTH1−34)をSigmaより購入した。
[0046]細胞培養
[0047]25mM Hepes pH7.4、1%非必須アミノ酸、100単位/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび5%ウシ胎児血清を補充したイーグルの最小必須培地(EMEM)中でUMR 106−01細胞を培養した。
【0041】
[0048]リアルタイム定量的RT−PCR
[0049]12ウェルプレートにUMR 106−01細胞を植え付け、そして細胞培地中で2〜3日間培養した。細胞が集密になった際、細胞培地を1%ウシ胎児血清(5%ウシ胎児血清でなく)に交換して、細胞を一晩飢餓状態にした。細胞を活性成分と15分間プレインキュベーションし、そして次いで、PTH(10−8M)と4時間インキュベーションした。
【0042】
[0050]PTHを含みまたは含まず刺激されたUMR 106−01細胞から、TRIzol試薬を用いて総RNAを単離した。製造者の指示にしたがって、Invitrogen Superscriptキットを用いて、総RNA(0.1μg)をcDNAに逆転写した。プライマーを用いてcDNAに対してPCRを行い、そして用いた配列を以下に列挙する。各プライマー(0.2μM)および12.5μlの白金SYBRグリーンqPCR SuperMix UDG(Invitrogen)を含有するPCR混合物(22.5μl)に2.5μlのcDNAを添加することによって、すべてを増幅した。UDGによるdU含有DNAの汚染除去のため、反応を50℃で2分間プレインキュベーションし、次いで、95℃で2分間インキュベーションして、UDGを不活化し、そしてTaqを活性化した。95℃で15秒間の変性、60℃で30秒間のプライマーのアニーリングおよび伸長の49周期に渡って、PCRプログラムを続けた。遺伝子発現の倍変化が対照試料に対するものである2−デルタデルタCT法を用いることによって、遺伝子発現の相対的定量化を行った。すべての試料をβ−アクチンに対して規準化した。
【0043】
[0051]プライマー配列
【0044】
【化1】

【0045】
[0052]実施例1
[0053]PTHで刺激したMMP−13発現に対するクランベリー抽出物非透析性材料(クランベリー抽出物NDM)の阻害効果を試験した。
【0046】
[0054]Weissら J. Am. Dent. Assoc. 129(12), 1719(1998)に記載される方法にしたがって、クランベリー抽出物NDMを調製した。クランベリージュースを、高分子量カットオフ透析バッグを通じて透析することによって、クランベリー抽出物NDMが得られた。透析されずにバッグ中に残った物質が非透析性材料(NDM)である。
【0047】
[0055]単純な溶液中の10ppm、4ppmおよび1ppmのクランベリー抽出物NDMは、MMP−13阻害活性を示した。対照試料に比較した、MMP−13遺伝子発現の倍変化を表1に示す。
【0048】
表1
【0049】
【表1】

【0050】
[0056]表1に示す結果は、PTHが刺激したMMP−13遺伝子発現を、クランベリー抽出物NDMが減少させることを立証する。これは、クランベリー抽出物NDMが、MMP−13の発現を減少させることによって、マトリックス分解を防止することを示唆する。
【0051】
[0057]実施例2
[0058]PTHが刺激するMMP−13発現に対するAKBBAの阻害効果を試験した。AKBBAをSabinsa社より購入した。
【0052】
[0059]単純溶液中の10ppmのAKBBAは、表2において、MMP−13阻害活性を示した。対照試料に比較した、MMP−13遺伝子発現の倍変化を表2に示す。
表2
【0053】
【表2】

【0054】
[0060]表2に示す結果は、PTHが刺激したMMP−13遺伝子発現を、AKBBAが減少させることを立証する。これは、AKBBAが、MMP−13の発現を減少させることによって、マトリックス分解を防止することを示唆する。
【0055】
[0061]実施例3
[0062]レスベラトロール(3,5,4’−トリヒドロスチルベン)は、ブドウ、特にブドウの皮および種子中に見られるポリフェノール性化合物である。レスベラトロールをSabinsa社より購入した。
【0056】
[0063]単純溶液中の100ppm、50ppm、10ppm、1ppmおよび0.1ppmのレスベラトロールは、MMP−13阻害活性を示した(表3)。対照試料に比較した、MMP−13遺伝子発現の倍変化を表3に示す。
【0057】
表3
【0058】
【表3】

【0059】
[0064]表3に示す結果は、PTHが刺激したMMP−13遺伝子発現を、レスベラトロールが減少させることを立証する。これは、レスベラトロールが、MMP−13の発現を減少させることによって、マトリックス分解を防止することを示唆する。
【0060】
[0065]実施例4
[0066]化合物A(2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート)は、化合物Aの代表的な構造を有し、該構造は:
【0061】
【化2】

【0062】
である。単純溶液中の7ppmの化合物Aは、MMP−13阻害活性を示した(表4)。対照試料に比較した、MMP−13遺伝子発現の倍変化を表4に示す。
表4
【0063】
【表4】

【0064】
[0067]表4に示す結果は、PTHが刺激したMMP−13遺伝子発現を、化合物Aが減少させることを立証する。これは、化合物Aが、MMP−13の発現を減少させることによって、マトリックス分解を防止することを示唆する。
【0065】
[0068]実施例5
[0069]化合物B(4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート)は、化合物Bの代表的な構造を有し、該構造は:
【0066】
【化3】

【0067】
である。単純溶液中の10ppmの化合物Bは、MMP−13阻害活性を示した(表5)。対照試料に比較した、MMP−13遺伝子発現の倍変化を表5に示す。
表5
【0068】
【表5】

【0069】
[0070]表5に示す結果は、PTHが刺激したMMP−13遺伝子発現を、化合物Bが減少させることを立証する。MMP−13のレベルは、歯周炎臨床指標に相関するため、これは、化合物Bが、副甲状腺ホルモン(PTH)刺激でのMMP−13を減少させることによって、マトリックス分解を防止することを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常なMMP−13発現に関連する状態を治療するための方法であって、被験体に、療法的に有効な量のクランベリー抽出物NDM、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、あるいはその2またはそれより多い組み合わせを投与する工程を含む、前記方法。
【請求項2】
異常なMMP−13発現に関連する状態が、細胞外マトリックスの分解、1またはそれより多い歯の付着喪失、歯の喪失、歯のぐらつき、ポケット形成、骨喪失、およびその2またはそれより多い組み合わせからなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
療法的有効量のMMP−13阻害剤、および口腔的に許容されうるキャリアーを含む、組成物。
【請求項4】
MMP−13阻害剤が、クランベリー抽出物非透析性材料、アセチルケト β−ボスウェル酸、レスベラトロール、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメート、4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネート、およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項4の組成物。
【請求項5】
MMP−13阻害剤がクランベリー抽出物非透析性材料を含む、請求項4の組成物。
【請求項6】
MMP−13阻害剤がアセチルケトβ−ボスウェル酸を含む、請求項4の組成物。
【請求項7】
MMP−13阻害剤がレスベラトロールを含む、請求項4の組成物。
【請求項8】
MMP−13阻害剤が2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル 2−ヒドロキシフェニルカルバメートを含む、請求項4の組成物。
【請求項9】
MMP−13阻害剤が4−アセトアミドフェニル 2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルカーボネートを含む、請求項4の組成物。
【請求項10】
歯磨剤である、請求項4〜9のいずれか一項の組成物。
【請求項11】
歯磨剤が:練り歯磨き;ディープストライプ練り歯磨き;表面ストライプ練り歯磨き;多層練り歯磨き;ジェルで囲まれている練り歯磨き;粉末;ビーズ;口腔洗浄液;口腔リンス;ロゼンジ;歯のジェル;歯周ジェル;歯の表面にペイントするのに適した液体;チューインガム;溶解性、部分的溶解性または非溶解性フィルムまたはストリップ;ウェーハ;ワイプまたはウェットティッシュ;インプラント;泡;トローチ;デンタルフロス、小さい持ち運び可能な瓶に入った口腔適用用に配合された液体;小さい持ち運び可能な滴生成瓶に入った口腔適用用に配合された液体;柔らかい柔軟な錠剤;あるいはその2またはそれより多い組み合わせからなる群より選択される、請求項11の組成物。

【公表番号】特表2013−515075(P2013−515075A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546139(P2012−546139)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2010/061491
【国際公開番号】WO2011/084781
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】