説明

口腔ケア組成物

バイオフィルムの形成により引き起こされる病気を処置するための口腔ケア組成物およびそのような口腔ケア組成物の使用を開示する。バイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解するための方法も開示する。その口腔ケア組成物はセスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含み、ここでそのセスキテルペノイドおよびその抗微生物剤は、口腔中でバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気を処置するための口腔ケア組成物およびそのような口腔ケア組成物の使用に関する。本発明は、バイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] ビサボロール(Bisabolol)は天然の単環式セスキテルペンアルコールである。それは天然では一般にカモミールの原理抽出物として見付かる。それは、特にその皮膚を癒す特性、ならびにその抗炎症、抗真菌、および抗細菌の利益のため、化粧産業において用いられる。
【0003】
[0003] Szalontai, M; Verzar-Petri, G.; Florian, E.; Gimpel, F., Pharmaz. Ztg, 120, 982 (1975)およびSzalontai, M., Verzar-Petri, G.; Florian, E.; Gimpel, F., Dtsch. Apoth. Ztg. 115, 912 (1975)は、α−ビサボロールを含むカモミールの生物学的に活性な物質の殺菌および殺真菌作用を開示している。
【0004】
[0004] Issac O., Dtsch. Apoth. Ztg 120, 567-570 (1980)は、ビサボロールが抗微生物および抗カビ作用を有することを開示している。
[0005] Luppold O., Pharmazie in unserer Zeit, 13,(1984), 3, p65-70は、カモミールが伝統医学における有効な医薬であることを開示している。この文献は、ビサボロール、特に(−)−α−ビサボロールはカモミール油の薬理学的作用に重要であり、消炎、鎮痙(spamolytic)および抗細菌活性を有することを開示している。
【0005】
[0006] ビサボロールが含まれるセスキテルペノイド類は、抗微生物剤に対する細菌の透過性を増大させることも分かっている。Brehm-Stecher, B.F., Johnson, E.A., Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47(10), (2003), p 3357-3360およびWO99/66796はそれぞれ、セスキテルペノイド類であるネロリドール(nerolidol)、ファルネソール(farnesol)、ビサボロールおよびアプリトーン(apritone)は、培養された細菌細胞の、抗微生物剤が含まれる特定の外来性化学化合物に対する透過性を非特異的に高めることが分かったことを開示している。
【0006】
[0007] バイオフィルムは、自身が発達させた(self−developed)ポリマー性細胞外マトリックス内に封入された微生物の構造化された集団である。バイオフィルムは典型的には生きた、または不活性な表面に接着している。ヒトまたは動物の体において、バイオフィルムはあらゆる内部または外部表面上で形成され得る。バイオフィルムは体における多種多様な微生物感染症に関わっており、従って、尿道感染症、中耳感染症、歯のプラークの形成および歯肉炎が含まれる多くの病気を引き起こすことが分かっている。
【0007】
[0008] 米国特許第5116602号は、安息香酸、保存剤、およびポリカルボキシレートおよびそれらの混合物からなるグループから選択される添加剤の存在下で歯のプラークの形成を阻害するための低濃度のセスキテルペンアルコール香味化合物を口腔用ビヒクル中に含有する抗プラーク口腔用組成物を開示している。そのセスキテルペンアルコール香味化合物は、それ自体で抗微生物剤として開示されているのではなく、その中で開示されている添加剤との組み合わせで用いられなければならない。
【0008】
[0009] JP58213706は、細菌のプラークの形成を抑制および阻害し、齲食および歯周症を予防することができる、口腔のための組成物を開示しており、それは口腔のための組成物をアミグダリン、インジゴ、サンショオール(sanshool)、ビサボロールおよびルチンから選択される有効成分とブレンドすることにより得られる。
【0009】
[00010] JP2005298357は、微生物により産生される糖脂質、それにより産生されるポリペプチド、およびそれらの誘導体から選択される生物系界面活性剤を含有し、さらにチモール、アネトール、ユージノール、ビサボロール、ファルネソールおよびネロリドールから選択される1、2またはより多くの種類の精油構成要素を含有する、口腔のための組成物を開示している。
【0010】
[00011] バイオフィルム中に存在する微生物は、同じ種の自由に浮遊している微生物とは著しく異なる特性を有する。これは、ポリマー性細胞外マトリックスがその微生物を周囲の環境から保護するように作用し、その微生物が自由に浮遊している微生物が示さない様々な方法で協力および相互作用することを可能にするためである。これらの微生物の複合的な共同体は、それらがしばしば伝統的な抗微生物制御の手段に対して耐性である点で独特の問題をもたらす。バイオフィルム中で生きている細菌は、濃密な細胞外マトリックスおよび外側の細胞の層がバイオフィルムの内部を抗生物質の作用から保護するため、抗生物質に対して増大した耐性を示す。従って、既知の抗微生物剤はバイオフィルム中に存在する細菌に対しては同じ作用を有しないであろう。
【0011】
[00012] 当技術において、バイオフィルムの形成を阻害し、バイオフィルムを分解させることができる向上した口腔用組成物を提供する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO99/66796
【特許文献2】米国特許第5116602号
【特許文献3】JP58213706
【特許文献4】JP2005298357
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Szalontai, M; Verzar-Petri, G.; Florian, E.; Gimpel, F., Pharmaz. Ztg, 120, 982 (1975)
【非特許文献2】Szalontai, M., Verzar-Petri, G.; Florian, E.; Gimpel, F., Dtsch. Apoth. Ztg. 115, 912 (1975)
【非特許文献3】Issac O., Dtsch. Apoth. Ztg 120, 567-570 (1980)
【非特許文献4】Luppold O., Pharmazie in unserer Zeit, 13,(1984), 3, p65-70
【非特許文献5】Brehm-Stecher, B.F., Johnson, E.A., Antimicrobial Agents and Chemotherapy 47(10), (2003), p 3357-3360
【発明の概要】
【0014】
[00013] 第1観点において、本発明はセスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含む口腔ケア組成物を提供し、ここでそのセスキテルペノイドおよび抗微生物剤は、口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。別の観点において、本発明は、セスキテルペノイドおよび抗微生物剤の抗バイオフィルム(殺傷特性)を向上させる抗微生物剤を含む口腔ケア組成物を提供する。
【0015】
[00014] 本発明に従う組成物は、口腔中のバイオフィルムの形成を阻害する、および/またはそれを分解するための新しい手段を提供する。本発明者らは、驚いたことに、セスキテルペノイドが抗微生物剤の抗バイオフィルム活性を高めることを見出した。セスキテルペノイドおよび抗微生物剤の両方の組み合わせは、バイオフィルムの阻害に関して相乗作用を提供することが分かった。1観点において、そのセスキテルペノイドはネロリドール、ファルネソール、ビサボロール、アプリトーン、およびそれらの混合物からなるグループから選択される。
【0016】
[00015] 第2観点において、本発明は、医薬品としての使用のための上記で定義したような組成物を提供する。本発明は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気の処置または予防のための、セスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含む組成物も提供する。本発明は、対象においてバイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解するための方法であって、その対象にセスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含む組成物を投与することを含む方法も提供する。その方法は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気を処置または予防するために用いられてよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】[00016] 図1は、ビサボロールまたは等しい濃度のEtOHの系列希釈物の存在下でのA.ビスコーサス(A.viscosus)のバイオフィルムの形成の%低減を示す。
【図2】[00017] 図2は、単独または組み合わせでのビサボロールおよびトリクロサンに関するバイオフィルム根絶(Eradication)濃度50(BEC50)を示す。
【図3】[00018] 図3は、トリクロサンのBEC50および5ppmのビサボロールの添加のトリクロサンのBEC50への作用を示す。
【図4a】[00019] 図4aは、12種類の既知の抗微生物剤の、50ppmビサボロールの非存在下(黒い棒)および存在下(灰色の棒)でのBEC50を示す;図4bは、図4aを拡大したものを示す。
【図4b】[00019] 図4aは、12種類の既知の抗微生物剤の、50ppmビサボロールの非存在下(黒い棒)および存在下(灰色の棒)でのBEC50を示す;図4bは、図4aを拡大したものを示す。
【図5】[00020] 図5は、トリクロサンおよびビサボロールの、単独での、または2:1 ビサボロール:トリクロサンの組み合わせでの、5種類の種のバイオフィルムの形成への作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[00021] 詳細な記述および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していないことは理解されるべきである。
【0019】
[00022] 下記の定義および限定的ではないガイドラインは、本明細書で述べるこの発明の記述の再吟味において考慮されなければならない。本明細書で用いられる見出し(例えば“導入”および“要約”)および副見出し(例えば“組成物”および“方法”)は、本発明の開示内の題目の全体的な組織化だけを意図しており、本発明の開示またはそのいずれかの観点を制限することを意図していない。特に、“導入”において開示されている主題は本発明の範囲内の技術の観点を含んでいてよく、先行技術の列挙を構成してはならない。“要約”において開示されている主題は、本発明の範囲全体またはそのあらゆる態様の余すところのない、または完全な開示では無い。この明細書の節の中での物質の特定の有用性を有するものとしての(例えば“有効な”または“キャリヤー”成分であるとしての)分類または論考は便宜のためになされており、その物質が、それがあらゆる所与の組成物中で用いられた際に、本明細書におけるそれの分類に必ず従って、またはそれにのみ従って機能しなければならないという推論を引き出すべきでは無い。
【0020】
[00023] 本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術である、または本明細書で開示される本発明の特許性に何らかの関連を有するという自認を構成しない。導入において引用されている参考文献の内容のあらゆる論考は、単にその参考文献の著者によりなされた主張の概略的な要約を提供することを意図しており、そのような参考文献の内容の正確さに関する自認を構成しない。
【0021】
[00024] その記述および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、明記された特徴を有する多数の態様の列挙は、追加の特徴を有する他の態様またはその明記された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の態様を除外することを意図していない。具体的な実施例は、この発明の組成物および方法をどのように作る、および用いるかの説明的な目的のために提供されており、別途明示的に記載しない限り、この発明の所与の態様が作られた、もしくは試験された、または作られていない、もしくは試験されていないという表現であることを意図していない。
【0022】
[00025] 本明細書で用いられる語“好ましい”および“好ましくは”は、特定の状況の下で特定の利益を与える本発明の態様を指す。しかし、同じ、または他の状況の下で他の態様も好ましくてよい。さらに、1個以上の好ましい態様の列挙は他の態様が有用ではないことを暗に意味せず、本発明の範囲から他の態様を除外することを意図していない。加えて、その組成物およびその方法は、その中で記述されている要素を含んでいてよく、本質的にそれで構成されていてよく、またはそれで構成されていてよい。
【0023】
[00026] 本明細書で用いられる語“含む”およびその変形は、リスト中の品目の列挙が、それもこの発明の材料、組成物、装置、および方法において有用である可能性がある他の同様の品目の除外では無いように限定的で無いことを意図している。
【0024】
[00027] 本明細書で用いられる用語“約”は、この発明の組成物または方法のパラメーターに関する値に適用される場合、その値の計算または測定が、その組成物または方法の化学的または物理的特性への実質的な作用を有しないいくらかのわずかな不正確さを許すことを示す。何らかの理由により、“約”により提供される不正確さが、当技術において別の状況でこの通常の意味では理解されない場合、本明細書で用いられる“約”はその値の5%までの可能性のある変動を示す。
【0025】
[00028] 本明細書で言及される際、全ての組成の百分率は、別途明記しない限り組成物全体の重量による。
[00029] 本発明の文脈で用いられる用語“バイオフィルム”は、自身が発達させた(self−developed)ポリマー性細胞外マトリックス内に封入された微生物のあらゆる集団を意味する。バイオフィルムは生きた、または不活性な表面に接着している可能性がある。例えば、口腔中で、バイオフィルムはプラークの形で歯に接着している可能性がある。対象における、バイオフィルムが接着する可能性のある表面の他の例は、尿道、耳、コンタクトレンズ、カテーテルである。
【0026】
[00030] そのバイオフィルムは、例えば細菌、古細菌、原生動物、菌類および藻類を含む1種類以上の異なるタイプの微生物から形成されてよい。そのバイオフィルムは好ましくは細菌から形成される。1態様において、そのバイオフィルムは細菌の単一の種から形成され、または細菌の複数の種から形成される。そのバイオフィルムは、A.ビスコーサス、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ストレプトコッカス・オラーリス(Streptococcus oralis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)およびベイヨネラ・パルブラ(Veillonella parvula)から選択される1種類以上の細菌から形成されてよい。バイオフィルムを形成することができる他の細菌には、皮膚の細菌種、およびAsas, J. A., et al, “口腔の正常な細菌フローラを明確にする” J. Clin. Microbiol. 43(11) 5721-32 (Nov. 2005)において記述されている口腔の細菌フローラの内の1種類以上が含まれる。
【0027】
組成物
[00031] 1態様において、本発明は抗微生物剤およびセスキテルペノイドを含む口腔ケア組成物を提供し、ここでそのセスキテルペノイドおよび抗微生物剤は口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。1観点において、そのセスキテルペノイドはネロリドール、ファルネソール、ビサボロール、アプリトーン、およびそれらの混合物からなるグループから選択される。
【0028】
[00032] 1態様において、本発明はビサボロールおよび抗微生物剤を含む口腔ケア組成物を提供し、ここでそのビサボロールおよび抗微生物剤は口腔中でバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。
【0029】
[00033] 本発明者らは、ビサボロールおよび抗微生物剤の両方を含む組成物はバイオフィルムの阻害および/またはバイオフィルムの分解に関して相乗作用を提供することを見出した。組成物中で一緒に存在する場合、ビサボロールおよびその抗微生物剤を別々に試験した場合と比較して、より低い濃度のビサボロールおよび抗微生物剤の両方を用いてバイオフィルム阻害に関して同じ作用を提供することができることが分かった。
【0030】
[00034] いずれかの動作原理により束縛されることを望むわけではないが、ビサボロールの抗バイオフィルム活性はビサボロールの抗微生物活性により引き起こされているのではないと考えられる。当技術において、ビサボロールは抗微生物特性を有する、すなわちそれは直接的に微生物を殺し、または微生物の増殖を阻害することが知られている。しかし、本発明者らは、ビサボロールの抗微生物活性は、トリクロサンおよび塩化セチルピリジニウムのような既知の抗微生物剤と比較した場合に、低いことを見出した。本発明者らは、ビサボロールはバイオフィルムの形成を単独で穏やかに阻害する一方で、それは抗微生物剤と組み合わせた場合にはるかに向上した活性を有することも見出した。さらに、抗微生物剤は、ビサボロールと組み合わせた場合、バイオフィルムに対して向上した活性を有することが分かった。
【0031】
[00035] 本発明に従う組成物中のビサボロールは特に限定されず、ビサボロールのあらゆる天然に存在する形または合成による形であってよい。そのビサボロールは、α−(−)−ビサボロール、その鏡像異性体であるα−(+)−ビサボロール、またはそのラセミ混合物であるα−(±)−ビサボロールであってよい。
【0032】
[00036] 1観点において、そのセスキテルペノイドはその組成物中に口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。好ましくは、そのセスキテルペノイドは、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気、例えば歯のプラーク、齲食、口臭、歯周疾患または歯肉炎から選択される病気を予防または処置するのに適した量で存在する。別の観点において、そのビサボロールはその組成物中に口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。好ましくは、そのビサボロールは、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気、例えば歯のプラーク、齲食、口臭、歯周疾患または歯肉炎から選択される病気を予防または処置するのに適した量で存在する。
【0033】
[00037] 典型的には、そのセスキテルペノイドはその組成物中に0.0001〜1重量%、好ましくは約0.025から0.075%までの濃度で存在する。限定的でない例として、ビサボロールは0.0001〜1重量%、好ましくは約0.025から0.075%までの濃度で存在することができる。
【0034】
[00038] 本発明に従う組成物中の抗微生物剤は特に限定されず、以下のものから選択されてよい:ハロゲン化ジフェニルエーテル(トリクロサン)、草の抽出物または精油(例えばローズマリーの抽出物、チモール、メントール、ユーカリプトール、サリチル酸メチル)、ビスグアニド系防腐剤(例えば、クロルヘキシジン、アレキシジンまたはオクテニジン)、フェノール系防腐剤、ヘキセチジン、ポビドンヨード、デルモピノール(delmopinol)、サリフルオル(salifluor)、金属イオンおよびそれらの塩類(例えば塩化亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化第一スズ、および塩化第一スズ)、サンギナリン、プロポリス、酸素化剤(例えば過酸化水素、緩衝したペルオキシホウ酸ナトリウム、またはペルオキシ炭酸ナトリウム)、塩化セチルピリジニウム、マグノリアの抽出物、マグノロール(magnolol)、ホノキオール(honokiol)、ブチルマグノロール、プロピルホノキオール、ならびにそれらの混合物。抗付着剤、例えばSolrol、およびプラーク分散剤、例えば酵素(パパイン、グルコアミラーゼ、等)も含まれ得る。
【0035】
[00039] 本明細書で論じるように、その抗微生物剤は、本発明に従って組成物中でビサボロールと共に提供された場合に、バイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解する向上した活性を有する。従って、ビサボロール無しで抗微生物剤を含む組成物と比較して、同じ活性を提供するためにより低い濃度の抗微生物剤が必要とされる。その抗微生物剤はその組成物中に、口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する。好ましくは、その抗微生物剤は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気、例えば歯のプラーク、齲食、歯周疾患、口臭、または歯肉炎から選択される病気を予防または処置するのに適した量で存在する。
【0036】
[00040] 典型的には、その抗微生物剤はその組成物中に0.01重量%から1.5重量%まで、好ましくは0.05重量%から0.75重量%までの濃度で存在する。その抗微生物剤がトリクロサンである1態様において、トリクロサンは好ましくはその組成物中に0.05重量%から0.75重量%までの濃度で存在する。
【0037】
[00041] 1態様において、本発明の他の箇所において詳細に述べるように、セスキテルペノイド、好ましくはビサボロール、および抗微生物剤の両方の組み合わせは、バイオフィルムの形成の阻害および/またはバイオフィルムの分解に関して相乗作用を提供する。本発明者らは、対照と比較して生物量(biomass)の50%より大きい低減が観察される最も低い濃度であるバイオフィルム根絶濃度(BEC50)における驚くべき低減を見出した。ビサボロールおよび抗微生物剤のBEC50は、それらをバイオフィルム阻害のために一緒に試験した場合に、それらを別々に試験した場合と比較してより低い。
【0038】
[00042] 従って、好ましい態様において、ビサボロールは、抗微生物剤の存在下で、その抗微生物剤の非存在下でのビサボロールのBEC50と比較して、50%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下のBEC50を有する。ビサボロールは好ましくは、抗微生物剤の存在下で、10ppm〜40ppm、より好ましくは20ppm〜30ppm、より好ましくは25ppm〜30ppm、および最も好ましくは27ppm〜28ppmのBEC50を有する。
【0039】
[00043] 好ましい態様において、その抗微生物剤は、ビサボロールの存在下で、ビサボロールの非存在下でのその抗微生物剤のBEC50と比較して、75%以下、より好ましくは50%以下、最も好ましくは25%以下のBEC50を有する。ビサボロールの存在下でのその抗微生物剤のBEC50は、その組成物中で用いられる具体的な抗微生物剤に依存する。その抗微生物剤は、典型的には、ビサボロールの存在下で700ppm以下のBEC50を有する。その抗微生物剤は、好ましくは、ビサボロールの存在下で20ppm以下、より好ましくは6ppm以下、最も好ましくは2ppm以下のBEC50を有する。その抗微生物剤がトリクロサンである1態様において、トリクロサンはビサボロールの存在下で1ppmから3ppmまでのBEC50、より好ましくは1.5ppmから2ppmまでのBEC50を有する。
【0040】
[00044] 1態様において、セスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含有する口腔用組成物のpHは3から9まで、好ましくは4から8までの範囲であることができ、最も好ましくはそのpHは約5である。その口腔用組成物には、好ましくは、リン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、クエン酸ナトリウム、およびそれらの混合物から選択される緩衝剤も含まれる。
【0041】
[00045] 本発明に従う組成物は、典型的には抗プラーク剤、白化剤、抗細菌剤、洗浄剤、香味剤、甘味剤、接着剤、界面活性剤、発泡調節剤(foam modulators)、研磨剤、pH修正剤(pH modifying agents)、湿潤剤、食感剤(mouth feel agents)、着色剤、研磨剤、歯石制御(抗歯石)剤、フッ化物イオンの源、唾液刺激剤、栄養素およびそれらの組み合わせから選択される1種類以上のさらなる薬剤も含んでいてよい。その組成物に添加することができる様々な構成要素には、例えば甘味剤、例えばサッカリン、またはサッカリンナトリウム、アルコール類、例えばエタノール、フッ化物イオンの源、例えばフッ化ナトリウム、およびグリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール類、ポロキサマーポリマー類、例えばPOLOXOMER 407、PLURONIC F 108(共にBASF Corporationから入手可能である)、アルキルポリグリコシド(APG)、ポリソルベート、PEG40、ヒマシ油、メントール、および同様のものが含まれる。
【0042】
[00046] 本明細書において有用である香味料の中の香味料には、その組成物の味を高めるように作用することができるあらゆる物質または物質の混合物が含まれる。あらゆる口に許容できる天然または合成の香味料、例えば香味油、香味アルデヒド類、エステル類、アルコール類、類似の物質、およびそれらの組み合わせを用いることができる。香味料には、バニリン、セージ、マヨラマ、パセリ油、スペアミント油、桂皮油、ウィンターグリーンの油(サリチル酸メチル)、ペパーミント油、チョウジ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、柑橘油、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アプリコット、バナナ、ブドウ、リンゴ、イチゴ、サクランボ、パイナップル等に由来する果実油およびエッセンス剤(essences)を含む果実油およびエッセンス剤、豆および木の実由来の香味、例えばコーヒー、ココア、コーラ、ピーナッツ、アーモンド等、吸着された、および封入された(encapsulated)香味料、ならびにそれらの混合物が含まれる。芳香および/または冷却または昇温作用を含む口の中の他の感覚作用を提供する成分も、本明細書における香味料の範囲内に含まれる。そのような成分には、メントール、酢酸メンチル(menthyl acetate)、乳酸メンチル、ショウノウ、ユーカリ油、ユーカリプトール、アネトール、ユージノール、カシア(cassia)、オキサノン(oxanone)、[アルファ]−イリゾン([alpha]−irisone)、プロペニルグエトール(propenyl guaiethol)、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミン(N−ethyl−p−menthan−3−carboxamine)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール(3−1−menthoxypropane−1,2−diol)、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メトングリセロールアセタール(methone glycerol acetal)(MGA)、およびそれらの混合物が含まれる。1種類以上の香味料は場合により約0.01%〜約5%、場合により様々な態様において約0.05から約2%まで、約0.1%から約2.5%まで、および約0.1から約0.5%までの総量で存在する。
【0043】
[00047] 本明細書において有用である甘味剤の中の甘味剤には、デキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥した転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分的に加水分解されたデンプン、水素化デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト(isomalt)、アスパルテーム、ネオテーム(neotame)、サッカリンおよびその塩類、スクラロース、ジペプチドに基づく強い甘味料、シクラメート類、ジヒドロカルコン類、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0044】
[00048] 食感剤には、その組成物の使用の間に望ましい質感または他の感触を与える物質が含まれる。
[00049] 本明細書において有用な着色剤の中の着色剤には、顔料、染料、レーキおよび特定の光沢または反射性を与える薬剤、例えばパール化剤(pearling agent)が含まれる。様々な態様において、着色剤は歯の表面上に白色または淡色のコーティングを提供し、その組成物により有効に接触された歯の表面上の位置の指標として働く、および/または、その組成物の外観、特に色および/または不透明度を改変して消費者への魅力を増進させるように作用することができる。FD&C染料および顔料、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色、黄色、茶色および黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、チタン化雲母(titaniated mica)、オキシ塩化ビスマス、ならびにそれらの混合物を含むあらゆる口に許容できる着色剤を用いることができる。1種類以上の着色剤は、場合により約0.001%〜約20%、例えば約0.01%〜約10%または約0.1%〜約5%の総量で存在する。
【0045】
[00050] 本発明の組成物はさらに例えば研磨剤(polishing agent)として有用な任意の研磨剤(abrasive)を含む。あらゆる口に許容できる研磨剤を用いることができるが、研磨剤のタイプ、粉末度(粒径)および量は、その組成物の通常の使用において歯のエナメル質が過度にすり減らされないように選択されるべきである。適切な任意の研磨剤には、例えば沈降シリカの形の、またはアルミナと混合されたものとしてのシリカ、不溶性ホスフェート類、炭酸カルシウム類、およびそれらの混合物が含まれる。研磨剤として有用な不溶性ホスフェート類の中には、オルトホスフェート類、ポリメタホスフェート類およびピロホスフェート類がある。説明的な例は、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウムおよび不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。
【0046】
[00051] 本発明の組成物は場合により歯石制御(抗歯石)剤を含む。本明細書において有用な歯石制御剤の中の歯石制御剤には、これらの薬剤のいずれかの塩類、例えばそれらのアルカリ金属およびアンモニウム塩類が含まれる:ホスフェート類およびポリホスフェート類(例えばピロホスフェート類)、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、ポリオレフィンスルホネート類、ポリオレフィンホスフェート類、ジホスホネート類、例えばアザシクロアルカン−2,2−ジホスホネート類(例えば、アザシクロヘプタン−2,2−ジホスホン酸)、N−メチルアザシクロペンタン−2,3−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)およびエタン−1−アミノ−1,1−ジホスホネート、ホスホノアルカンカルボン酸。有用な無機リン酸およびポリリン酸塩類には、一塩基性、二塩基性および三塩基性リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸一、二、三および四ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムならびにそれらの混合物が含まれる。
【0047】
[00052] 本発明の組成物は場合により、例えば抗齲食剤として有用なフッ化物イオンの源を含む。カリウム、ナトリウムおよびアンモニウムのフッ化物およびモノフルオロリン酸塩、フッ化第1スズ、フッ化インジウム、アミンフッ化物類、例えばオラフルール(olaflur)(N’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−トリス(2−エタノール)−ジヒドロフルオリド)、およびそれらの混合物を含む、あらゆる口に許容できる微粒子化されたフッ化物イオンの源を用いることができる。場合により、1種類以上のフッ化物イオンの源が、その口腔用組成物に臨床的に効果的な量の可溶性フッ化物イオンを提供する量で存在する。
【0048】
[00053] 本発明の組成物は場合により、例えば口内乾燥の改善において有用である唾液刺激剤を含む。限定では無いが食物酸(food acids)、例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸および酒石酸、ならびにそれらの混合物を含むあらゆる口に許容できる唾液刺激剤を用いることができる。場合により、1種類以上の唾液刺激剤が、唾液を刺激するのに有効な総量で存在する。
【0049】
[00054] 本発明の組成物は場合により栄養素を含む。適切な栄養素には、ビタミン類、鉱質、アミノ酸、およびそれらの混合物が含まれる。ビタミン類にはビタミンCおよびD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラアミノ安息香酸、バイオフラボノイド類、ならびにそれらの混合物が含まれる。栄養補給剤には、アミノ酸(例えばL−トリプトファン、L−リシン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチンおよびL−カルニチン)、脂向性物質(lipotropics)(例えばコリン、イノシトール、ベタイン、およびリノール酸)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0050】
[00055] 様々な態様において、本発明に従う口腔用組成物は意図して飲み込まれるのでは無く、むしろ意図される有用性を達成するのに十分な時間の間口腔中で保持される。他の携帯用の態様(例えばロゼンジ、ミント、ビーズ、ウェファー、小さな携帯用噴霧器からの口への適用のために配合された液体、小さな携帯用の液滴を生じさせるボトルからの口への適用のために配合された液体、または軟らかい柔軟な錠剤)では、その口腔用組成物は、場合により意図される有用性を達成するのに十分な時間の間口腔中で保持された後意図して飲み込まれる。
【0051】
[00056] 本発明に従う組成物は、好ましくは、マウスウォッシュ、練り歯磨き、歯科用クリーム、チューインガム、義歯用接着剤または携帯用投与物品、例えばロゼンジ、ミント、ビーズ、ウェファー、小さな携帯用噴霧器(スプレーボトル)での口への適用のために配合された液体、小さな携帯用の液滴を生じさせるボトルでの口への適用のために配合された液体、もしくは軟らかい柔軟な錠剤(“チューイー(chewie)”)(それらに限定されない)のような製品において、口に許容できるキャリヤーを含む。本明細書で用いられる際、“口に許容できるキャリヤー”は本発明の組成物中での使用に関して安全であり、適度な利益/危険性比と釣り合う物質または物質の組み合わせを指す。
【0052】
[00057] 本発明は、上記で定めた口腔ケア組成物を含む携帯用投与物品も提供し、ここでその携帯用投与物品はロゼンジ、ミント、ビーズ、ウェファー、スプレーとしての口への適用のために配合された液体中の前記の混合物を含む小さな携帯用噴霧器、液滴としての口への適用のために配合された液体中の前記の混合物を含む小さな携帯用のボトル、および軟らかい柔軟な錠剤から選択される。
【0053】
[00058] 従って、好ましくは、この発明において用いられるための具体的な物質および組成物は、医薬的に、または化粧的に許容でき、臨床的に有効であり、および/または臨床的に効果的である。本明細書で用いられる際、そのような“医薬的に許容できる”または“化粧的に許容できる”、“臨床的に有効な”、および/または“臨床的に効果的な”構成要素は、ヒトおよび/または動物での使用に適した構成要素であり、適切な量(臨床的に効果的な量)で提供されて、過度の有害な副作用(例えば毒性、刺激、およびアレルギー反応)無しに、適度な利益/危険性比と釣り合う望まれる療法的、予防的、感覚的、装飾的、または化粧的利益を提供する。
【0054】
使用の方法
[00059] 本発明に従う組成物は、ヒトまたは他の動物の対象に投与されて、または適用されてよい。その組成物は、バイオフィルムの形成および/またはバイオフィルムの分解を阻害するためのヒトまたは動物の対象の口腔への投与または適用に適している可能性がある。
【0055】
[00060] 従って、本発明は、医薬品としての使用のための上記で定義したような組成物を提供する。
[00061] 本発明は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気の処置または予防のための、セスキテルペノイド(例えばビサボロール)および抗微生物剤を含む組成物も提供する。本発明は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気の処置または予防のための医薬品の製造のための、セスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含む組成物の使用も提供する。1態様において、その予防または処置される病気は、歯のプラーク、齲食、歯周疾患、口臭、および歯肉炎から選択される。好ましくは、その組成物は上記で定義したような口腔ケア組成物である。
【0056】
[00062] 本発明は、対象においてバイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解するための方法であって、その対象にセスキテルペノイド、好ましくはビサボロール、および抗微生物剤を含む組成物を投与することを含む方法も提供する。その方法は、口への、および口以外(例えば皮膚、毛髪、爪、等)への適用のための組成物において、抗微生物剤をセスキテルペノイド、好ましくはビサボロールと組み合わせることにより、抗微生物剤の抗微生物活性を高めることもできる。1態様において、その組成物は上記で定義したような口腔用組成物であり、その組成物は口腔に適用される。好ましい態様において、その方法は、バイオフィルムの形成により引き起こされる病気を処置または予防するためのものである。好ましくは、そのバイオフィルムの形成により引き起こされる病気は口腔の病気であり、歯のプラーク、齲食、歯周疾患、口臭、または歯肉炎から選択されてよい。
【0057】
[00063] セスキテルペノイド(例えばビサボロール)および抗微生物剤を含む組成物は、対象において著しくバイオフィルムの形成を阻害する、および/または既存のバイオフィルムを分解することができる。その組成物は、口腔中のバイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解するのに特に有用である。本発明に従う組成物を含む医薬品は、患者に投与することができる。その医薬品は、相乗的な抗バイオフィルム作用を提供するビサボロールおよび抗微生物剤の両方の存在により、既知の抗細菌性口腔用組成物と比較して、より低い頻度で、および/またはより低い濃度で投与することができる。
【0058】
[00064] 本発明は、抗微生物剤の抗バイオフィルム活性を高めるためのビサボロールの使用も提供する。そのビサボロールおよび抗微生物剤は好ましくは本明細書で記述された通りのものである。
【0059】
[00065] 本明細書で引用されたそれぞれおよび全ての参考文献を、そのまま本明細書に援用する。ここで、様々な態様を、以下の限定的でない実施例に関連して記述する。
【実施例】
【0060】
実施例1:ビサボロールの最小阻止濃度
ビサボロール、トリクロサンおよび塩化セチルピリジニウム(CPC)の阻害作用を、一般的な口の細菌であるA.ビスコーサスに対して試験した。
【0061】
有効物質に関する最小阻止濃度を、アクチノマイセス・ビスコーサスの細菌をその有効物質の系列希釈物と共に24時間培養し、この種の増殖が阻害された最も低い濃度を決定することにより決定した。簡潔には、100μlの終体積の有効物質を、96ウェル平底マイクロタイタープレートの2通りのウェルにわたって、0.5×トリプティックソイブロス(TSB)中で系列希釈した。細菌の一夜培養物をOD610が約0.2になるように希釈し、これの100μlをそれぞれのウェルに添加した。プレートを37℃で一夜保温した。それぞれのウェルに関してOD610を読み取り、MICを細菌の増殖が阻害された最後のウェルにおける有効物質の濃度として決定した。その最小阻止濃度(MIC)を下記の表1で提供する。
【0062】
【表1】

【0063】
表1.2種類の既知の抗細菌剤およびビサボロールの、一般的な口の細菌(A.ビスコーサス)に対する最小阻止濃度。
表1から、ビサボロールはトリクロサンおよびCPCと比較した場合に比較的高いMICを有することを理解することができる。これは、ビサボロールが抗細菌剤としての役目を果たさないことを示唆する。従って、実施例2〜6で示されるようなビサボロールの生物増進(bioenhancing)およびバイオフィルム阻害作用は、それの抗微生物特性によるものであるとは考えられない。
【0064】
実施例2:ビサボロールのバイオフィルム形成の阻害
異なる濃度のビサボロールの、A.ビスコーサスのバイオフィルム形成の阻害への作用を試験した。
【0065】
A.ビスコーサスの細菌を、ビサボロールの系列希釈物または等しい濃度のEtOHの存在下で24時間増殖させた。バイオフィルムの形成を可視化するためにウェルを染色した。その結果を図1に示し、ここでx軸はビサボロール(または培地中EtOHの同等の溶液)の濃度を表し、y軸は培地のみの中で増殖させた対照のウェルと比較したバイオフィルムのパーセント低減を表す。
【0066】
その結果は、ビサボロールが単独で110ppmほどの低い濃度で単一の種のバイオフィルムの形成を阻害することができたことを示している。
実施例3:ビサボロールおよびトリクロサンのバイオフィルムの形成の阻害
ビサボロールを含む組成物、抗細菌剤トリクロサンを含む組成物、ならびにビサボロールおよびトリクロサンの両方を含む組成物を、抗バイオフィルム活性に関して試験した。
【0067】
ビサボロール(0.7%)を含む組成物、トリクロサン(0.05%)を含む組成物、ならびにビサボロール(0.7%)およびトリクロサン(0.05%)を含む組成物を、96ウェルプレートにおいてそれぞれ系列希釈した。A.ビスコーサスの培養物をそれぞれのウェルに添加し、プレートを37℃で保温してバイオフィルムの形成を起こらせた。バイオフィルムの形成の後、上清を除去し、ウェルを0.6%クリスタルバイオレットで15分間染色した。バイオフィルムの生物量を、590nmにおけるそれぞれのウェルの吸光度を読み取ることにより定量化し、培地のみの対照と比較した生物量の低減の百分率を算出した。
【0068】
結果はバイオフィルム根絶濃度(iofilm radication oncentration)(BEC50)として報告され、それは対照と比較して生物量の50%より大きい低減が観察される最も低い濃度である。
【0069】
図2は、ビサボロールおよびトリクロサンに関する、単独での、または互いとの組み合わせでのBEC50を示す。BEC50は、バイオフィルム形成の50%より大きい低減が観察される最小の濃度として定義される。
【0070】
図1における結果と一致して、ビサボロール単独は110ppmほどの低い濃度でバイオフィルムの形成を阻害した。トリクロサン単独はおおよそ3.9ppmの濃度でバイオフィルムの形成を阻害し、これはこの生物の他の研究と一致していた。しかし、その2種類の有効物質を組み合わせた場合、バイオフィルムの阻害は27.3ppmのビサボロールおよび1.95ppmのトリクロサンで観察され、これはバイオフィルム阻害に関する活性の増大および相乗作用を示唆している。言い換えれば、有効なバイオフィルム形成を達成するために必要なビサボロールおよびトリクロサンの量は、その2種類の有効物質を組み合わせた場合、50%より大きく、および75〜80%まで低減した。
【0071】
実施例4:ビサボロールによるトリクロサンの抗バイオフィルム活性の増進
トリクロサン単独を含む組成物ならびにビサボロールおよびトリクロサン両方を含む組成物の抗バイオフィルム作用を決定した。
【0072】
生物増進活性を決定するため、試験有効物質の50μlの系列希釈を、96ウェル平底マイクロタイタープレートの4通りの列で、0.5×TSB中で作製した。総体積50μlのビサボロールを試験有効物質を含有する列の内の2つに添加し、2つの列には示した終体積を2倍にするために純粋な培地を添加した。A.ビスコーサスの細菌の一夜培養物を、OD610が約0.4になるように0.5×TSB中で希釈し、100μlを96ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加し、終体積を200にした。プレートを37℃で24時間保温して細菌の増殖およびバイオフィルムの形成を可能にした。上清をプレートからデカントし、50μlの0.03%グラムクリスタルバイオレットをそれぞれのウェルに添加した。プレートを15分間染色させた後、染料をデカントして除いた。それぞれのウェルを10mMトリス、1mM EDTA洗浄緩衝液で1回洗浄した。プレートを乾燥させ、染色されたプレートをPerkin Elmer EnVisionマイクロプレートリーダー上で590nmにおける吸光度に関して読み取った。吸光度を、培地のみまたはビサボロールのみで処理したウェルの吸光度と適宜比較した。結果を、対照と比較してバイオフィルムの50%より大きい低減が観察される最も低い濃度として報告した。
【0073】
この試験を、5〜1000ppmの範囲の様々なビサボロール濃度で繰り返した。5ppmのビサボロールで実施された実験からの代表的なデータを図3に示し、ここで、トリクロサン単独を含む組成物中のトリクロサンは4.13ppmのBEC50を有し、一方でビサボロールを含む組成物中のトリクロサンは1.78のBEC50を有していた。また、ビサボロールを抗微生物剤と組み合わせた場合、同じまたは類似のバイオフィルムの低減を達成するのに必要な抗微生物剤の量は、50%を十分に超えて、および75%まで低減した。
【0074】
これらの結果を考慮すると、5ppmビサボロールの低い濃度においてさえも、単一の種のバイオフィルムの形成は、トリクロサン単独の4.13ppmと比較して、1.78ppmほどの低いトリクロサンの濃度で阻害されたことは明らかである。これは、単一の種、静的バイオフィルムモデルに関して、ビサボロールはトリクロサンの有効性を増大させ、それによりバイオフィルムの阻害に必要な最小濃度を低下させることができることを示している。
【0075】
実施例5:ビサボロールによる抗微生物剤の抗バイオフィルム活性の増進
ビサボロールの12種類の異なる抗微生物剤の抗バイオフィルム活性への作用を試験した。
【0076】
これらの試験を50ppmのビサボロールの存在下または非存在下で完了し、様々な程度の有効性を有する既知の抗微生物剤の集団に関してBEC50値を再度比較した。その結果を図4aおよび4bに示す。
【0077】
図4aは、12種類の既知の抗微生物剤の、50ppmビサボロールの非存在下(黒い棒)および存在下(灰色の棒)でのBEC50を示す。図4bは、図4aの拡大された領域を示す。*は有意差(p<0.05)を示す;+は有意性に近い傾向(p<0.1)を示す。
これらの結果は、ビサボロールが抗微生物剤の活性を増進する能力が非特異的であることを示す。
【0078】
実施例6:ビサボロールおよび抗微生物剤による多数種のバイオフィルムの阻害
トリクロサンおよびビサボロールを単独または組み合わせのどちらかで含む組成物の、バイオフィルム形成を阻害する能力を、バイオフィルムが5種類の代表的な口の細菌の種:A.ビスコーサス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・オラーリス、フソバクテリウム・ヌクレアタムおよびベイヨネラ・パルブラを含む多数種モデルにおいて試験した。唾液でコートしたヒドロキシアパタイト(HAP)ディスクに、この細菌の5種種混合物を、トリクロサン単独、ビサボロール単独、または2:1の濃度のビサボロール:トリクロサンの存在下で接種した。ディスクを48時間培養して、バイオフィルム形成を起こらせた。バイオフィルムを含有するディスクを1mlの0.25%トリプシン溶液中で37℃で45分間保温してバイオフィルムを遊離させ、生物量をそのトリプシン溶液のOD610として読み取った。
【0079】
図5はこれらの実験の結果を示す。20ppmのトリクロサン単独を含む組成物は非常に有効であり(バイオフィルム形成の60%より大きい低減)、これを超える追加の有効性を示すことが困難であることを理解することができる。トリクロサンの抗バイオフィルム作用を超えるあらゆる抗バイオフィルム作用を決定するために、トリクロサンの濃度をその阻止濃度より下に低減させる必要があった。従って、これらの実験を2ppmまたは5ppmのトリクロサンで実施した。図5は、このレベルのトリクロサン単独または2:1の濃度のビサボロール:トリクロサンの組み合わせでの作用を示す。
【0080】
トリクロサンのこれらの低い濃度において、ビサボロールおよびトリクロサンの組み合わせは、ビサボロールまたはトリクロサンどちらか単独よりも、モデルとなる口のバイオフィルムの形成の阻害においてより有効であることが分かった。ビサボロールおよびトリクロサン両方を含む組成物におけるバイオフィルム形成の有意な低減は、ビサボロールの存在がトリクロサンの抗バイオフィルムの有効性を有意に増進することを示す。ビサボロールは実施例5において抗微生物活性の非特異的増進剤として作用することが示されているため、この同じ傾向はおそらく図4aにおいて増進されたことが示された他の有効物質に関しても当てはまるであろう。
【0081】
実施例7:口腔用組成物
表2は、ビサボロールを単独で、および他の既知の口腔ケア有効成分との組み合わせで配合した歯磨組成物の例を説明する。それに関してビサボロールが生物増進作用を有する、口腔ケアで承認された療法剤の例には、トリクロサン、CPC、マグノリアの抽出物(天然または合成)、マグノロール、ホノキオール、ブチルマグノロール、プロピルホノキオール、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化第一スズ、または塩化第一スズが含まれるが、それらに限定されない。
【0082】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セスキテルペノイドおよび抗微生物剤を含む口腔ケア組成物であって、そのセスキテルペノイドおよび抗微生物剤が口腔中のバイオフィルムを阻害および/または分解するのに有効な量で存在する、前記口腔ケア組成物。
【請求項2】
そのセスキテルペノイドがその組成物中に1%w/wまでの濃度で存在する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
そのセスキテルペノイドがネロリドール、ファルネソール、ビサボロール、アプリトーン、およびそれらの混合物からなるグループから選択される、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
そのセスキテルペノイドがビサボロールである、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
そのビサボロールがその組成物中に0.025〜0.075%w/wの濃度で存在する、請求項4に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
その抗微生物剤がトリクロサン、塩化セチルピリジニウム、マグノリアの抽出物、マグノロール、ホノキオール、ブチルマグノロール、プロピルホノキオール、塩化亜鉛、乳酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フッ化第一スズおよび塩化第一スズから選択される、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
その抗微生物剤がトリクロサンである、請求項6に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
そのセスキテルペノイドが、抗微生物剤の非存在下におけるそのセスキテルペノイドのBEC50と比較して25%以下の抗微生物剤の存在下でのBEC50を有する、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
そのセスキテルペノイドがビサボロールであり、そのビサボロールが20ppm〜30ppmのBEC50を有する、請求項8に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
その抗微生物剤が、そのセスキテルペノイドの非存在下におけるその抗微生物剤のBEC50と比較して75%以下のセスキテルペノイドの存在下でのBEC50を有する、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
その抗微生物剤が、セスキテルペノイドの非存在下におけるその抗微生物剤のBEC50と比較して50%以下のセスキテルペノイドの存在下でのBEC50を有する、請求項108に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
その抗微生物剤がトリクロサンであり、そのトリクロサンが1ppmから3ppmまでのBEC50を有する、請求項9に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
その組成物が抗プラーク剤、白化剤、甘味剤、洗浄剤および香味剤から選択される1種類以上のさらなる薬剤を含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
その組成物が練り歯磨き、歯科用クリーム、マウスウォッシュ、チューインガムまたは義歯接着剤のための口に許容できるキャリヤーを含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
医薬品としての使用のための、いずれかの前記の請求項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項16】
バイオフィルム形成により引き起こされる病気の処置または予防のための、ビサボロールおよび抗微生物剤を含む組成物。
【請求項17】
その病気が口腔におけるものである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
その病気が歯のプラーク、齲食、歯周疾患、口臭、または歯肉炎から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
対象においてバイオフィルムの形成を阻害する、および/またはバイオフィルムを分解する方法であって、その対象にビサボロールおよび抗微生物剤を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項20】
その組成物が口腔に適用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
その方法が口腔中のバイオフィルムの形成により引き起こされる病気を予防または処置する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
その病気が歯のプラーク、齲食、歯周疾患、口臭、または歯肉炎から選択される、請求項2−に記載の方法。
【請求項23】
そのバイオフィルムが単一の種の細菌から形成される、請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
そのバイオフィルムが複数の種の細菌から形成される、請求項19〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
そのバイオフィルムがA.ビスコーサス、ラクトバチルス・カゼイ、ストレプトコッカス・オラーリス、フソバクテリウム・ヌクレアタムおよびベイヨネラ・パルブラから選択される1種類以上の細菌から形成される、請求項19〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
抗微生物剤の抗バイオフィルム活性を増進するための、セスキテルペノイドの使用。
【請求項27】
そのセスキテルペノイドがビサボロールである、請求項26に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−501782(P2013−501782A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524684(P2012−524684)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/053500
【国際公開番号】WO2011/019342
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】