説明

口腔内崩壊性マンニトール

本発明の対象は、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体であり、それらはリラクセーション時間が30〜100秒で、膨潤力が0.8〜3.0Nと測定される、試験Aに従って判定された崩壊挙動を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、口腔内崩壊性の微粒子径を有するマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体、およびこの共凝集体を得る方法である。
【背景技術】
【0002】
製薬産業はデンプンおよびマンニトールをトン単位で消費する。これらは特に、例えば硬質ゼラチンカプセルを充填するための粉末、水に即席に分散または溶解される小袋入り粉末、経口固形薬、および錠剤に代表される、乾燥形態の賦形剤として使用される。
【0003】
過去10年ほどの間に、常に持ち歩いてどこででも服用し得る薬剤である携帯型医薬製剤の一般化が見られる。
【0004】
これらの携帯型医薬製剤は、より具体的には口腔内崩壊性または速溶性の形態で存在し、水および噛みくだきなしに口内で数秒間で溶解、融解、または崩壊する特殊性を有する。
【0005】
これらは従来法で様々な技術に従って様々な組成物から製造され、主に錠剤形態、凍結乾燥形態、そしてより最近ではフィルム形態(「ストリップ」と称される)で販売される。
【0006】
様々な技術としては、主に
− 凍結乾燥法、
− 成形(圧縮−加熱成形−フラッシュ熱加工)、
− 直接圧縮、
− 昇華
が挙げられる。
【0007】
口腔内崩壊性形態の製造業者は、味覚、官能的感覚、口内崩壊時間、溶解、安定性、硬度、脆砕性などを改善することを常に求めているために、これらの製剤形態はここ数年間で大きく変化した。
【0008】
しかしこれらの修正は、主に、
− 糖およびポリオールベースの成分(直接圧縮賦形剤、甘味料、増量剤)を添加し、
− 一般に「超崩壊剤」として知られる強力な崩壊能がある薬剤を添加し、および/または発泡剤を添加し、
− 界面活性剤および/または流涎活性化薬を添加して、
複数成分を添加することにより導入される。
【0009】
口腔内崩壊性錠剤の分野において、粉末形態の賦形剤、およびこれらの粉末の混合から生じる製剤形態を評価する上で最も重要な特徴は、
− 製造装置内の流量:ホッパーから錠剤化チャンバー(すなわちダイ)への規則的供給
− 耐摩耗性(または非脆砕性)、および
− 錠剤硬度を決定する粒子圧縮後の凝集性
である。
【0010】
しかし製造される錠剤は、破壊に耐えるのに十分に固くなくてはならないが、同時に良好な崩壊特性を有さねばならない。
【0011】
口腔内崩壊性錠剤の調製において通常遭遇する賦形剤としては、
− マンニトール、ソルビトール、エリトリトール、マルチトール、イソモルト、およびパラチノール、
− セルロース、デンプン、
− 乳糖、スクロース、グルコース、果糖、マルトース、トレハロース、およびパラチノース
に言及できる。
【0012】
微結晶セルロースは直接圧縮賦形剤に期待される全ての要件を満たすが、それは依然として製造が困難であり比較的高価である。
【0013】
それはまた、保存中の水取り込みに続いて錠剤硬度の低下を引き起こすという欠点も有する。さらにそれは口内で非常に不快な感覚、粘膜が余りに迅速に乾燥するという事実に関連した窒息感を引き起こす。
【0014】
デンプンはその水中での膨潤能力のために良好な崩壊特性を有するが、超崩壊剤とは異なり、これをそのようにするためには、それを一般に最終剤形の15%を超えて大量に組み込まなくてはならない。
【0015】
デンプンはまた希釈剤としても機能し、低濃度では流動促進剤としてさえ機能し、または予備調理した場合はバインダーとしてさえ機能する。
【0016】
他方では、デンプンはその粒子の小さななサイズと低密度のために流れないという欠点を有する。その顆粒の高い弾性のために、錠剤化能力が非常に不良である、満足できる硬度の錠剤を製造するには不十分である。
【0017】
乳糖は、錠剤技術で広く使用されている希釈剤である。それは結晶性および噴霧乾燥の2つの主要形態で存在する。
【0018】
その圧縮特性を改善するために、乳糖は噴霧乾燥および凝集によって改質されている。
【0019】
噴霧乾燥乳糖は高度に圧縮性であり、その粒子の球形度はそれに満足できる流動特性を与えるが、それは結晶性乳糖に比べて安定性がより低く、貯蔵寿命がより短い。
【0020】
さらにそれは崩壊特性を有さない。
【0021】
噴霧乾燥乳糖から製造された錠剤は保存中に黄ばんだ色を生じ、それは結晶性乳糖一水和物によって生じる色よりも濃い。
【0022】
凝集乳糖は良好に流れる安定した粉末であるが、それは噴霧乾燥乳糖に比べて圧縮性がより低い。
【0023】
乳糖の錠剤化能力は依然として不十分であるが、乳糖に微結晶セルロースなどのより良い錠剤化能力を有する結合剤または希釈賦形剤を添加することによって、それを改善することが可能である。
【0024】
しかし微結晶セルロースは高価であって、(上で既述したような)非常に不快な口内感覚を有し、水取り込みに続いて形成された錠剤の硬度が低下するという欠点を有する。
【0025】
本出願人としては、その欧州特許第1,175,899号明細書において、非常にわずかにのみ吸湿性である一方、低下した脆砕性、効率的な流動、良好な錠剤化能力、および満足できる崩壊特性を有するデンプンと乳糖顆粒の組成物を提案している。
【0026】
このような顆粒を得るために、本出願人は顆粒デンプンと乳糖の混合物を使用すること、そして崩壊特性を保ちながら、適度な脆砕性、満足できる錠剤化能力、および効率的な流れが同時に得られるような適切な加工の使用によって、その物理的特性を改質することが得策であることを観察した。
【0027】
ポリオール使用の分野において、本発明で具体的に取り扱う分野、すなわち製薬賦形剤および食品産業で使用されるバルク甘味料に関して、満足できる解決方法は実のところ未だに提案されていない。
【0028】
いくつかの微粉ポリオールが一般に使用される。これらはソルビトールおよびキシリトールであるが、特にマンニトールである。
【0029】
これはマンニトールがその結晶形態の低吸湿性のために、特に活性薬剤に関するその安定性のために、優れた賦形剤を構成できるからである。
【0030】
可溶性賦形剤の中でもマンニトールは、活性成分に関するその非常に高い化学不活性、およびその水吸収の欠如により、固体薬剤形態に最大の安定性を与える。
【0031】
あいにく超飽和溶液を使用して水からの結晶化によって得られる製品は、なおも過剰な脆砕性を示す。
【0032】
さらに水から結晶化されたマンニトールのただでさえあまり良くない流動特性は、その結晶の斜方晶構造のために、上記マンニトールが微粒子を含有する場合に特に不良となる。
【0033】
これは使用装置に供給するためのホッパーおよびシュートに装填および排出するのに、特に有害である。
【0034】
これらの困難さの改善を試みて多数の解決方法が提案されているが、完全な満足は得られていない。
【0035】
噴霧乾燥または直接圧縮によって口腔内崩壊性錠剤を製造する分野において、例えば以下に言及できる。
− 国際公開第98/52541号パンフレットは、(マンニトールなどの)水溶性炭水化物などの低密度成分を噴霧乾燥することで、または圧縮することで得られる低密度顆粒から製造される速溶性チュアブル錠について記載するが、アルカリ土類金属塩(とりわけ炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム)の添加が必要である。
− 欧州特許第743,850号明細書では、噴霧乾燥技術を使用して速溶性の錠剤を製造する。
【0036】
しかしこれらの錠剤は、加水分解ゼラチンと、非加水分解ゼラチンと、増量剤(60%〜96%)としてのマンニトールと、1つ以上の医薬品の微粒子担体マトリックスの役割を果たす微粒子多孔性粉末との混合物を噴霧乾燥して生成される。
【0037】
ゼラチンの使用に加えて、崩壊剤などのその他の成分もまた添加し得る。
− 国際公開第93/01805号パンフレットは活性物質を含む60秒未満で崩壊する多粒子錠剤をカバーするが、それは少なくとも1つの超崩壊剤(架橋カルボキシメチルセルロースまたは架橋ポリビニルピロリドン)および少なくとも1つの膨潤剤(デンプン、変性デンプンまたは微結晶セルロース)、そして任意に場合により直接圧縮糖を含まなくてはならない。
【0038】
活性物質は多粒子であり、被覆された微結晶または被覆された微粒剤の形態である。
− 国際公開第02/69934号パンフレットは、活性薬剤および微粉末(マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリトリトール)の混合物から調製される迅速崩壊製剤について記載し、その粒子は5〜150μmの平均直径を有する。
【0039】
微粉末は噴霧乾燥によって調製されるが、これはまた超崩壊剤も含まなくてはならない。
− 特許出願国際公開第00/47233号パンフレットは、活性成分と、デンプンと、マンニトールおよび乳糖から選択される水溶性賦形剤との物理的混合物を含む錠剤調製品をカバーするが、それでもなおステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、および軽質無水ケイ酸から選択される1つ以上の滑沢剤を添加することが必要である。
− 国際公開第03/51338号パンフレットは、直接圧縮によって調製されて60秒未満で崩壊する口腔内崩壊性錠剤に関する。しかしこれは活性薬剤および超崩壊剤などの成分と共に、マンニトールおよびソルビトールを含む同時噴霧乾燥または同時造粒材料を要する。
− 国際公開第03/103629号パンフレットは、噴霧乾燥マンニトールに加えて、活性成分、超崩壊剤としての微結晶セルロース、そしてまた(不溶性の吸収剤として)クロスカルメロースナトリウム、および滑沢剤を含む、30秒未満で崩壊する錠剤について記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】欧州特許第1,175,899号明細書
【特許文献2】国際公開第98/52541号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第743,850号明細書
【特許文献4】国際公開第93/01805号パンフレット
【特許文献5】国際公開第02/69934号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/47233号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/51338号パンフレット
【特許文献8】国際公開第03/103629号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
上述の特許出願では、結果は、錠剤による水取り込みとそれがもたらす不安定性を避けるための必須賦形剤であるマンニトールを、むしろ極めて吸水性が高い賦形剤である超崩壊剤と共に組み込まなくてはらないことが多く、したがって所望されるのとは反対の結果が生じる。したがって本発明の目的はこれらの欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
出願人は相当な研究の後に顆粒デンプンと微粒子径マンニトールとをベースとする共凝集体を使用しさえすれば、上記目的が達成され得ることを有利にも発見した。
【0043】
「顆粒デンプン」という用語は、顆粒タイプのあらゆる天然またはハイブリッド起源の天然デンプン、および顆粒形態を保つ全ての化学的に変性されたデンプンを意味することが意図される。
【0044】
好ましくは、出願人によって「エクストラホワイトデンプン」の名称の下に販売される製品などの白色コーンスターチが用いられ、それにより完全に満足できる白色度がある顆粒が得られるようになる。
【0045】
「微粒子径マンニトール」という用語は、水から結晶化されて、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmであるマンニトールを意味することが意図される。
【0046】
好ましくは、この平均径は5〜100μm、なおもより好ましくは20〜50μmである。
【0047】
したがって本発明の目的は、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体である。
【0048】
本発明の目的はまた、硬度の観点からならびに迅速に口内で崩壊する能力の観点から顕著な特性を有する口腔内崩壊性錠剤を、直接圧縮によって調製できるようにすることを特徴とする、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体である。
【0049】
本発明の目的では「口腔内崩壊性錠剤」という用語は、口内に入れると1分30秒未満で完全に崩壊する錠剤を意味することが意図される。
【0050】
したがって本発明の目的は、口腔内崩壊性錠剤の調製のためのバインダーとしてならびに崩壊剤としての、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体の使用である。
【0051】
最後に本発明の目的は、結合および崩壊剤がレーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体で構成されることを特徴とする、口腔内崩壊性錠剤である。
【0052】
本発明の目的は、より具体的にはリラクセーション時間が30〜100秒間で膨潤力が0.8〜3Nと測定される、試験Aに従って判定された崩壊挙動を有することを特徴とする、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体である。
【0053】
この試験Aは、本発明に従った共凝集体から、直径16mmおよび厚さ4mmを有する錠剤を製造することにある。
【0054】
この試験Aのためには、Basle CH−4005のWilly A.Bachofen AG MaschinenfabrikからのTurbula T2C外転サイクロイドミキサーを使用して、98%の本発明に従った共凝集体と2%のステアリン酸マグネシウムとを5分間混合する。
【0055】
上記混合物を直径16mmのフラットパンチを装着した、Schwarzenbek D621493のFette GmbHからの交互プレス搭載Fette Exacta 21上で打錠する。
【0056】
100N〜110Nの硬度を有する1g(すなわち1000mg±20mg)の錠剤を製造するように、プレスを設定する。
【0057】
次に錠剤を内径24mmの中空容器に入れる。
【0058】
Instron(USA,Canton−MA)のInstron4502汎用引張圧縮試験機の直径5mmの円柱状パンチを使用して、3Nの初期力を錠剤に加える。
【0059】
錠剤を支えて上記錠剤と接触する容器の底に、温度20℃の2mlのスプリングウォーターを精密ピペットを使用して導入する。
【0060】
加わえられた力の変化を200秒間モニターする。最も詳細に測定された2つのパラメーターは次の通りである。
− リラクセーション時間(秒単位で表される)=錠剤崩壊、3Nの初期力が半分に低下する所要時間に相当する。
− 膨潤(N単位で表される)、水導入時の錠剤による容積増大に関連した初期力の即時の増大によって特徴付けられ、達成される最大力から最初に加えられた力を差し引いたものとして計算される。
【0061】
これらの値は、試験された本発明に従った共凝集体のそれぞれで実施した3回の試験について計算された平均値を表す。
【0062】
本発明に従った共凝集体は、この試験Aに従って測定されるリラクセーション時間が30〜100秒で、膨潤力が0.8〜3Nであるような崩壊挙動を有する。
【0063】
本発明に従った共凝集体はまた、42.8重量%の濃度で水中で懸濁状態にした場合、試験Bに従って測定される2.0〜10.0mPa.sの粘度によって特徴付けられる。
【0064】
試験Bは、Anton PaarからのPhysica MCR301レオメータを使用して、本発明に従ったマンニトールとデンプンとの共凝集体の水中の懸濁液の粘度変化を20℃の温度で15分間にわたりモニタリングすることにある。
【0065】
懸濁液は42.8%の濃度で調製される(20gの脱塩水中に15gのマンニトールとデンプンとの共凝集体)。
【0066】
本発明に従った共凝集体は、この試験Bに従って42.8重量%の濃度で水中で懸濁状態にした場合、2.0〜10.0mPa.sの粘度を有する。
【0067】
本発明に従った共凝集体は、試験Cに従って判定されるそれらの圧縮挙動によって特徴付けられる。
【0068】
試験Cは、硬度がN〜110Nの錠剤を製造するのに必要とされる圧縮力を測定することにある。
【0069】
この試験Cのために、Basle CH−4005のWilly A.Bachofen AG MaschinenfabrikからのTurbula T2C外転サイクロイドミキサーを使用して、98%の本発明に従った共凝集体と2%のステアリン酸マグネシウムとを5分間混合する。
【0070】
このようにして得られる混合物を直径16mmのフラットパンチを装着した、Schwarzenbek D621493のFette GmbHからの交互プレス搭載Fette Exacta 21上で打錠する。
【0071】
100N〜110Nの硬度がある1g(すなわち1000mg±20mg)の錠剤を製造するように、プレスを設定する。
【0072】
Heusenstamm D63150のErweka GmbHからのErweka TBH30 GMDデュロメーター上で錠剤の硬度を測定する。
【0073】
本発明に従った共凝集体は、この試験Cに従って、硬度100N〜110Nの上記錠剤を得るのに必要とされる圧縮力が40kN未満であるような圧縮挙動を有する。
【0074】
本発明に従った共凝集体はまた、マンニトール/デンプン比が90/10〜50/50であることでも特徴付けられる。
【0075】
出願人は、共凝集体中に含有されるデンプンに対して90%を超えるまたは50%未満のマンニトールでは、上記共凝集体が満足できる崩壊特性を有さないことを観察した。
【0076】
好ましくは80/20〜65/35のマンニトール対デンプン比が選択される。
【0077】
本発明に従ったレーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体は、マンニトールがβ結晶形態であることを特徴とする。
【0078】
マンニトールは、α、β、δの3つの結晶形態で販売される。
【0079】
本出願人は実のところ、マンニトールがαまたはδ結晶形態で存在する場合、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体は、β−結晶形態のマンニトールを含有するものに比べて約4倍以上より緩慢に口内で崩壊することを発見した。
【0080】
本出願人らは口内腔内の場合のように、少量の水と接触させるとα−またはδ−結晶形態にあるマンニトールが溶解し、次にβ形態で再結晶化することを発見した。
【0081】
しかしこの再結晶化は、所望の崩壊能力にとって有害である。
【0082】
本発明に従った共凝集体は60〜500μm、好ましくは100〜250μmのレーザー容積平均直径D4,3を有する。
【0083】
粒径分布値は、製造業者の操作ガイドおよび仕様書に従って、(乾燥処理)粉末分散モジュールを装着したBeckman−Coulter社からのLS 13−320レーザー回折粒度分析器で測定する。
【0084】
ホッパースクリュー速度および分散体シュートの振動強度の操作条件は、光学的濃度が4%〜12%、理想的には8%であるように定められる。
【0085】
LS13−320レーザー回折粒度分析器の測定範囲は、0.04μm〜2000μmである。結果は容積%として計算され、μmで表される。
【0086】
粒径分布曲線はまた、容積平均直径(算術的平均)D4,3の値を測定することを可能にする。
【0087】
本発明に従った共凝集体は、試験Dに従って、60秒未満、好ましくは40秒未満で口内崩壊する錠剤を調製することを可能にする。
【0088】
試験Dは訓練された個人のパネルによる生体内(インビボ)崩壊試験を実施することからなる。パネルは5人から構成される。各個人は少なくとも125mlのコップの水を飲み、次に30秒間待ってから舌の上に錠剤を載せる。
【0089】
崩壊期間全体を通じて、口は閉じたままであり、舌は小さくしか動かしてはならない。
【0090】
崩壊時間は、錠剤を口に入れた時点から、錠剤がいかなる凝集性ももはや有さない時点、すなわち口内にせいぜい顆粒または粉末の懸濁液だけが残る時点までの期間に対応する。
【0091】
5人のパネルは各錠剤を3回試験する。この試験で保持される値は、このようにして測定されるこれらの15の崩壊時間の平均である。
【0092】
本発明の別の実施態様によれば、共凝集体はマンニトールとデンプンとを含み、最終顆粒の所望の特性に有害でないことを条件として、特に香味料、染料、安定剤、バインダー、滑沢剤または保存料などの任意の適切な添加剤をさらに含有することができる。
【0093】
これは医薬品または植物防疫活性成分、または洗浄剤であってもよい。
【0094】
発明に従った共凝集体
上述の特徴を有する本発明に従った共凝集体は、特にマンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を噴霧乾燥するステップを含む方法に従って得られる。
【0095】
この目的はこれまでは、マンニトールとデンプンとの双方に応用できる当業者に知られている方法を使用して達成されていなかった。これは実のところデンプンには、水媒体中で加熱加工を使用した場合、調理されてその顆粒性ひいては崩壊性を失う欠点があるためである。
【0096】
好ましくは、
a)温度15〜25℃でマンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を調製するステップ
(ここで、
− マンニトール結晶は1〜200μm、好ましくは5〜100μm、なおもより好ましくは20〜50μmのレーザー容積平均直径D4,3を有し、
− マンニトール/デンプン比は90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35であり、
− その乾燥物質は40乾燥重量%〜60乾燥重量%である。)
と、
b)上記のマンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を15〜25℃の温度に保つステップと、
c)噴霧乾燥機上部で微粒子を再循環させて、高圧噴霧乾燥ノズルを装着したMSDタイプ噴霧乾燥機内で上記懸濁液を噴霧乾燥させるステップと、
d)このようにして得られたマンニトールとデンプンとの共凝集体を回収するステップと、
を実施することができる。
【0097】
したがって第1のステップは、温度15〜25℃でマンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を調製することからなり、
− 上記マンニトール結晶は1〜200μm、好ましくは5〜100μm、なおもより好ましくは20〜50μmのレーザー容積平均直径D4,3を有し、
− 上記マンニトール/デンプン比は90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35であり、
− 上記乾燥物質は40乾燥重量%〜60乾燥重量%である。
【0098】
本発明に従った方法では、マンニトールとデンプンとの懸濁液中に高含量のマンニトール結晶を有することが特に有利である。
【0099】
本出願人は、サイズが200μmを超える斜方晶マンニトール結晶は、共凝集体の均質性、ひいては錠剤の凝集性を低下させることを発見したことから、微小粒径の、すなわち1〜200μm、好ましくは5〜100μm、なおもより好ましくは20〜50μmのレーザー容積平均直径D4,3を有する結晶性マンニトールの使用が選択される。
【0100】
さらに、粒度が1μm未満の結晶性マンニトールは、本発明に従ったマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体の調製のために効率的には使用できない。
【0101】
マンニトールはあまり水溶性でない(20℃での最大濃度18g/l)ので、40%〜60%(例えば50%)の乾燥物質を有するマンニトールとデンプンとの懸濁液を、15〜25℃(例えば20℃)の温度で調製することが選択される。
【0102】
デンプン含量もまた重要なパラメーターであり、マンニトールに対するその比率についても同様である。
【0103】
したがって90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35のマンニトール/デンプン比が選択される。
【0104】
第2のステップは、上記マンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を15〜25℃の温度に保つことである。
【0105】
この温度に保つことで、懸濁液中のマンニトール結晶含量を安定化させることが可能になる。
【0106】
以下において例証されるように、およそ65%のマンニトールが結晶形態である場合に優れた結果が得られる。
【0107】
したがって第3のステップは、噴霧乾燥機上部で微粒子の再循環がある、高圧噴霧乾燥ノズルを装着したMSD(すなわち多段階乾燥機)タイプ噴霧乾燥機内で上記懸濁液を噴霧乾燥することにある。
【0108】
以下において例証されるように、本出願人らはNiro社によって販売されるMSD 20タイプ噴霧乾燥機の使用を推奨する。
【0109】
射出ノズルは、100〜150l/h、好ましくは約120l/hの流速で20〜50バール、好ましくは約30バールの圧力が得られるように選択される。
【0110】
入口空気温度は、以下のように設定される。
− タワー上部上流の入口空気:温度150〜180℃、好ましくは155℃
− 固定流動床:温度50〜120℃、好ましくは84℃
− 振動流動床:温度約20℃
【0111】
このようにして出口温度は55〜80℃、好ましくは約60℃である。
【0112】
最後に、本発明に従った共凝集体は、噴霧乾燥機出口で回収される。
【0113】
制限的でない様式で本発明の例証を意図する続く実施例から、本発明がより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0114】
実施例1:本発明に従った共凝集体の調製
本発明に従って噴霧乾燥することにより、それぞれ90/10、85/15、80/20、65/35、および50/50の比率のマンニトールとデンプンとからなる共凝集体の様々な組成物を調製する。
【0115】
本出願人らによってマンニトール35の名称で販売され、およそ50μmのレーザー容積平均直径を有する微粒子径の結晶性マンニトールと、「エクストラホワイト」コーンスターチとを使用する。
【0116】
これらの共凝集体を製造するための操作条件を以下の表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
本発明に従ったマンニトールとデンプンとの共凝集体の特徴を以下の表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
本発明に従ったマンニトール共凝集体の挙動は、以下の観点から完全に満足できる。
− 崩壊挙動および口内崩壊時間(これは、顆粒デンプンが効果的な崩壊剤として機能する能力を反映する)。
− 42.8%のDMにおける粘度(これは、再懸濁された共凝集体の均質性を反映し、追加されたデンプンが上記懸濁液の挙動を変えない)。
− 維持された圧縮力および硬度。
【0121】
最良の結果は、マンニトール/デンプン比が好ましくは80/20〜65/35の共凝集体で得られる。
【0122】
実施例2:本発明に従った共凝集体の調製
マンニトール35結晶性マンニトールと、「エクストラホワイト」コーンスターチ、ジャガイモデンプン、および本出願人によってClearam CR20/10の名称で販売されているヒドロキシプロピル安定化リン酸架橋ワキシーコーンスターチの3種の異なる顆粒デンプンとを用いて、本発明に従って噴霧乾燥することにより、比率80/20のマンニトールとデンプンとからなる3種の共凝集体を調製する。
【0123】
これらの共凝集体を製造するための操作条件を以下の表3に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
本発明に従ったマンニトールとデンプンとの共凝集体の特徴を以下の表4に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
本発明に従ったマンニトール共凝集体の挙動は、口内崩壊時間の観点から完全に満足できる。本発明は、顆粒形態を保つ天然デンプンまたは変性デンプンを用いて実現できる。
【0128】
実施例3:本発明に従った共凝集体の調製
「エクストラホワイト」コーンスターチと、出願人らにより販売されている、それぞれレーザー容積平均直径がおよそ25μmおよびおよそ50μmであるマンニトール25およびマンニトール35、そしておよそ110μmのレーザー容積平均直径D4,3を有する結晶性マンニトール粉末の異なる粒度の結晶性マンニトール粉末とを用いて、本発明に従って噴霧乾燥することにより、それぞれ比率80/20のマンニトールとデンプンとからなる3種の共凝集体を調製する。
【0129】
これらの共凝集体を製造するための操作条件を以下の表5に示す。
【0130】
【表5】

【0131】
本発明に従ったマンニトールとデンプンとの共凝集体の特徴を以下の表6に示す。
【0132】
【表6】

【0133】
本発明に従ったマンニトール共凝集体の挙動は、口内崩壊時間の観点から完全に満足できる。
【0134】
例4:比較例
実施例1のマンニトールとデンプンとの共凝集体「C」と、以下の化合物および混合物とを比較する。
− 本出願人による欧州特許第1,175,899号明細書の教示に従って調製される、乳糖とデンプンとの共凝集体。
− 本出願人によってPearlitol(登録商標)50Cの下に販売されるマンニトール。
− 比率80/20のPearlitol(登録商標)50Cと「エクストラホワイト」コーンスターチとの物理的混合物。
− 32%の乾燥物質を含有する懸濁液を噴霧乾燥して50℃に加熱し、存在するマンニトール「F」を完全に可溶化して調製される比率80/20のデンプンとマンニトールとの共凝集体。この共凝集体は大部分がα−結晶形態である。
【0135】
以下の表7に、得られた結果を示す。
【0136】
【表7】

【0137】
単独の、またはデンプンとの混合物のPearlitol(登録商標)50Cを用いて錠剤を調製するのは不可能であることが判明した。Pearlitol(登録商標)50Cおよび「エクストラホワイト」コーンスターチは非常に微細な粒子径を有し、その結果、自由流動性を示さない。したがって打錠プレス上で錠剤を得る最初のステップである型込めが不可能である。
【0138】
実施例5:活性成分含有口腔内崩壊性錠剤の直接圧縮による作成および特性解析
a)直接圧縮による口腔内崩壊性錠剤の配合
微粒子径のマンニトールと天然デンプンとの共凝集体をバインダー、希釈剤、および崩壊剤として使用する。植物ステアリン酸マグネシウム(Barlocher)を滑沢剤として使用する。各錠剤の組物を以下の表8に記載する。
【0139】
【表8】

【0140】
Basle CH−4005のWilly A.Bachofen AG MaschinenfabrikからのTurbula T2C外転サイクロイドミキサーを使用して、共凝集体および活性分子を5分間混合する。滑沢剤をこの混合物に添加する。配合物を外転サイクロイドミキサー内で5分間混合する。
【0141】
配合に適した直径(表9)を有する斜縁のフラットパンチを装着した、Korsch AG(Breitenbachstrasse 1(Germany))からのKorsch XP1機器搭載交互プレス上で一分当たり錠剤20個の速度で混合物を打錠する。
【0142】
【表9】

【0143】
b)口腔内崩壊性錠剤の特性解析
調合された錠剤を薬局方収載の方法に従って評価する:重量(Erweka TBH 30N精密てんびん)、厚さ(μm)、硬度(Schleuniger)、脆砕性(Erweka)。本明細書に記載したように試験Eを実施して、口内崩壊時間を測定する。結果を以下の表10にまとめる。
【0144】
【表10】

【0145】
作成された配合物は、マンニトール/デンプン共凝集体、活性薬剤、および圧縮滑沢剤の3成分のみを含有した。したがって口腔内崩壊性錠剤の配合は複雑であるというのが通説であるが、本発明に従った共凝集体によって口腔内崩壊性錠剤を迅速かつ容易に調合できるようになる。さらに活性成分を含有するこれらの3種の錠剤は全て、保健機関が推奨する30秒未満の非常に短い口内崩壊時間を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リラクセーション時間が30〜100秒間で且つ膨潤力が0.8〜3.0Nと測定される、試験Aに従って判定された崩壊挙動を有することを特徴とする、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体。
【請求項2】
42.8重量%の濃度で水に懸濁状態にした際に、試験Bに従って測定される2.0〜10.0mPa.sの粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の共凝集体。
【請求項3】
試験Cに従って、40kN未満の圧縮力で硬度が100N〜110Nの錠剤を与えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の共凝集体。
【請求項4】
マンニトール/デンプン比が90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の共凝集体。
【請求項5】
デンプンが、スタンダードコーンスターチ、「エクストラホワイト」コーンスターチ、およびジャガイモデンプンからなる群から単独または組み合わせで選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の共凝集体。
【請求項6】
60〜500μm、好ましくは100〜250μmのレーザー容積平均直径D4,3を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の共凝集体。
【請求項7】
試験Dに従って、60秒未満、好ましくは40秒未満で口内崩壊することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の共凝集体。
【請求項8】
マンニトール結晶とデンプンとの懸濁液を噴霧乾燥するステップを含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のレーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体を調製する方法。
【請求項9】
a)温度15〜25℃でマンニトール結晶と顆粒デンプンとの懸濁液を調製するステップ(ここで、
− 前記マンニトール結晶が1〜200μm、好ましくは5〜100μm、なおもより好ましくは20〜50μmのレーザー容積平均直径D4,3を有し、
− 前記マンニトール/デンプン比が90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35であり、
− 前記乾燥物質が40乾燥重量%〜60乾燥重量%である。)と、
b)マンニトール結晶と顆粒デンプンとの前記懸濁液を温度15〜25℃に保つステップと、
c)噴霧乾燥機上部で微粒子の再循環がある、高圧噴霧乾燥ノズルを装着したMSDタイプ噴霧乾燥機内で、前記懸濁液を噴霧乾燥するステップと、
d)このようにして得られたマンニトールとデンプンとの共凝集体を回収するステップ
を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
口腔内崩壊性錠剤を調製するためのバインダーおよび崩壊剤としての、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体の使用。
【請求項11】
食品、医薬品、植物防疫、および洗浄剤分野を対象とした口腔内崩壊性製剤中での請求項1〜7のいずれか一項に記載の共凝集体の使用、または請求項8および9のいずれか一項の方法で調製された共凝集体の使用。
【請求項12】
バインダーおよび崩壊剤が、レーザー容積平均直径D4,3が1〜200μmのマンニトールと顆粒デンプンとの共凝集体からなる、口腔内崩壊性錠剤。

【公表番号】特表2011−526612(P2011−526612A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515576(P2011−515576)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051293
【国際公開番号】WO2010/001063
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】