説明

口腔内清掃器具

【課題】口腔内清掃の目的を果たしたこと、つまり、口腔内の付着物を確実に除去できたことを確認する手段を有さず、口腔内清掃を実施する者は、何をもって確実な清掃が行えたかを判断することができず、いつまで、どのように口腔ケアを実施すればよいか決定することが出来なかった。本発明は、口腔内清掃の実施中に、どの程度口腔内の付着物が除去できたかを確認することが可能な、口腔内清掃器具を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくともハンドル部とヘッド部および検出手段を有し、ヘッド部を口腔内に挿入し歯面、口腔内粘膜の付着物を剥離し清掃を行う器具であって、剥離された付着物及び唾液等の液体が検出手段に導入され、付着物を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の食物残渣やプラークなど、歯面や口腔内粘膜の付着物を取り除くための口腔内清掃器具に係り、特にその付着物の除去程度を確認する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内清掃の目的は、舌、歯茎、歯周ポケット、頬などの粘膜表面、あるいは歯面など(以下、口腔内面と呼ぶ)に付着する食物残渣やプラーク、細菌などをその表面から剥離せしめ口腔内より除去し、もってその衛生度、清潔度を向上することにある。
【0003】
口腔内を清掃する器具に関しては、一般的に広く使用されている歯ブラシ、特許文献1に代表される電動ハブラシ、あるいは特許文献2や特許文献3に記載されるような、清掃により剥離した口腔内の付着物を吸引する手段を設け、主に要介護者など自身で口腔内ケアが出来ない対象者に口腔ケアを実施する際に用いられる口腔ケア用清掃器具などがある。
【0004】
これら従来の技術は、歯ブラシに振動を付加するとか、剥離した付着物を吸引するなどして、口腔内の付着物を除去する効果を高めることが出来る。
【特許文献1】特開2006−55178号公報
【特許文献2】特開平11−103938号公報
【特許文献3】特開2003−305061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、口腔内清掃の目的を果たしたこと、つまり、口腔内の付着物を確実に除去できたことを確認する手段を有さず、口腔内清掃を実施する者は、何をもって確実な清掃が行えたかを判断することができなかったため、いつまで、どのように口腔ケアを実施すればよいか決定することが出来なかった。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、口腔内清掃の実施中に、どの程度口腔内の付着物が除去できたかを確認することが可能な、口腔内清掃器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の口腔内清掃器具は、口腔内の清掃を行う器具であって、ハンドル部とヘッド部および検出手段を有し、ヘッド部を口腔内に挿入し歯面、口腔内粘膜の付着物を剥離し清掃を行う器具であって、唾液等の液体内に含まれる剥離された付着物が検出手段により検出される。
【0008】
上記構成によれば、口腔内を清掃する際に、口腔内の付着物の除去程度を確認できるため、確実な口腔内の清掃が行える。
【0009】
また、本発明の口腔内清掃器具は、ヘッド部に吸引口を備え、吸引口に連接された吸引配管および吸引手段および廃液タンクを有する。
【0010】
上記構成によれば、口腔内粘膜から剥離された付着物を口腔外へ排出できる上、付着物の除去程度を確認することができる。
【0011】
また、本発明の口腔内清掃器具は、吸引配管および吸引手段および廃液タンクをハンドル部内に有する。
【0012】
上記構成によれば、器具の小型化が可能なため一般的な電動歯ブラシ程度の大きさで口腔内の付着物を口腔外へ排出できる上、付着物の除去程度を確認することができる。
【0013】
また、本発明の口腔内清掃器具は、検出手段をヘッド部に備える。
【0014】
上記構成によれば、付着物の検出が検出部および制御手段のみの簡易な構成にて実現可能であり、歯ブラシやスポンジブラシなどの小型な口腔内清掃器具で付着物の検出を行うことが容易である。
【0015】
また、本発明の口腔内清掃器具は、検出手段が光学的検出手段である。
【0016】
上記構成によれば、検出手段が口腔内の液体と直接接触しないため、検出部のメンテナンスが不要である。
【0017】
また、本発明の口腔内清掃器具は、光学的検出手段が光源部及び受光部を備え、付着物を含む液体に対して光源部が光を照射し、生じた透過光を受光部が検出することで液体中の付着物を検出する。
【0018】
上記構成によれば、LEDとフォトダイオードなどの簡易で安価な光学系で検出手段を構築することができる。
【0019】
また、本発明の口腔内清掃器具は、光学的検出手段が光源部及び受光部を備え、付着物を含む液体に対して光源部が光を照射し、生じた散乱光を受光部が検出することで液体中の付着物を検出する。
【0020】
上記構成によれば、散乱光を検出することにより微量な付着物も検出することが可能で、剥離した付着物の量が少ない状態でも検出ができるため、より高い衛生状態を求められる口腔内の清掃状態を確認することが出来る。
【0021】
また、本発明の口腔内清掃器具は、光学的検出手段が撮像素子を備え、撮像素子が前記付着物を含む液体を撮影し、得られた画像から前記液体中の前記付着物を検出する。
【0022】
上記構成によれば、上記構成によれば、画像処理によって付着物の大きさ情報が得られるため、食べかすや歯垢など大きさの違う付着物の除去程度を確認することが出来る。
【0023】
また、本発明の口腔内清掃器具は、検出手段が電気的手段で構成されている。
【0024】
上記構成によれば、検出手段が電極および測定回路のみで実現可能であるため、簡易で安価な装置構成が可能である。
【0025】
また、本発明の口腔内清掃器具は、電気的検出手段が少なくとも一対の電極および狭窄部を備え、当該電極間に付着物を含む液体が通液され、電極間インピーダンスを計測することで液体中の付着物を検出する。
【0026】
上記構成によれば、検出する付着物が非常に微細な細菌などでも高感度に検出ができるため、口腔内清掃による口腔内の細菌数減少を清掃実施者が確認することが出来る上、付着物が狭窄部を通過する際のインピーダンス測定値から付着物の大きさの情報が得られるため、食べかすや歯垢など大きさの違う付着物の除去程度を確認することが出来る。
【0027】
また、本発明の口腔内清掃器具は、電気的検出手段が少なくとも一対の電極を備え、当該電極が付着物を含む液体中に含浸され、誘電泳動によって電極間に付着物を捕集し、かつインピーダンスを計測する。
【0028】
上記構成によれば、検出手段が電極のみの簡易な構成で、かつ検出する付着物が非常に微細な細菌などでも高感度に検出ができるため、口腔内清掃による口腔内の細菌数減少を確認することが出来る。
【発明の効果】
【0029】
清掃実施者が口腔内の清掃中に、口腔内の付着物の除去程度を確認できるため、充分かつ、確実な口腔内の清掃が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1に本発明の口腔内清掃器具を構成する一例を示す。口腔内清掃器具は装置本体1および清掃器具2より構成される。清掃器具2はヘッド部3およびハンドル部4より構成され、清掃実施者はハンドル部4を持ちヘッド部3を口腔内に挿入して口腔内の清掃を行う。図2にヘッド部3を正面から見た略拡大図を示す。ヘッド部3の表面の少なくとも1面に植毛面11が備わり、植毛面11に植毛部13が設けられており、植毛部13に歯ブラシの毛を植えつける。毛はナイロンなどの合成材料、馬毛などの天然材料などブラッシングに適した材料であればいずれも使用可能である。また、植毛面11には必ずしも毛を植える必要はなく、例えば、ウレタン樹脂などの材料を用いたスポンジなど、口腔内の付着物を剥離することが出来るものであれば良い。清掃実施者は、これらのブラシあるいはスポンジなどで口腔内面を擦過することによって付着物を剥離し、口腔内の清掃を実施する。
【0032】
ヘッド部3には更に、吸引口12が設けられており、ヘッド部3に設けられたブラシあるいはスポンジ等によって口腔内面から剥離した付着物および、唾液や洗口液などの液体を吸引する。吸引口12はヘッド部3のどこに設けても良いが、口腔内面に直接接触するブラシやスポンジ等の付近に設置することが望ましく、付着物を効率的に吸引することが出来る。
【0033】
吸引口12を通じて吸引された付着物および液体は、吸引配管5を通り装置本体1へと導入される。吸引配管5はヘッド部3から外部に分岐してもよいが、清掃器具2の内部を通しても良い。いずれの経路を通っても、最終的には本体1に連接され、更には本体1内部に設けられた検出手段6へと連接される。検出手段6には液体を吸引するための吸引手段8が排気配管21を通して連接され、更に、吸引した液体を貯留するための廃液タンク7が廃液配管22を通して連接される。この構成により、ヘッド部3の吸引口12から吸引された付着物および液体は吸引配管5を通り、検出手段6で付着物の量を計測しながら順次廃液タンク7へ貯留される。口腔内清掃が終了後、貯留された付着物および液体は破棄される。
【0034】
検出手段6を設けることにより、吸引される液体中に含まれる付着物の量あるいは濃度が検出できるため、単位時間当たりの付着物の通過量が測定できる。この通過量が多いときは口腔内に付着物が多く残っていることを示し、口腔内清掃の開始直後や口腔内の付着物が多い場合はこの状態となる。一方、通過量が少ないときは口腔内の付着物が少なくなっていることを示し、口腔内清掃が確実に行われていることを示す。
【0035】
装置本体1には、表示手段16が設けられており、検出手段6が検出した結果に応じて何らかの表示を行う。表示手段16はLED等の点灯やLCDなどの表示装置でも良いし、ブザーなど音で通知するなど、清掃実施者に付着物量を通知できればいずれの手段も使用可能である。例えば、一定量以上の付着物が検出されている、あるいは、付着物の量が一定量以下になった場合にLEDを点灯するなどする。清掃実施者は必要であれば操作パネル10によって吸引の開始・停止や吸引の強さなどを調整し、口腔内清掃を行い、表示手段16によって通知される付着物の減少状態を確認し、清掃を完了する。どの程度まで付着物を減少させればよいかについては、清掃を行う対象者の年齢や健康状態によって清掃実施者が判断すればよく、付着物検知の閾値を操作パネルにて設定できるようにするのも良い。これら一連の動作は、装置本体1内に設けられた、CPUやメモリなどの一般的な電子回路によって構成された制御部9によって行われる。
【0036】
以上のように、本実施の形態によれば、口腔内粘膜から剥離された付着物を口腔外へ排出できる上、付着物の除去程度を確認することができるため、確実な口腔内清掃が行えるという効果を有する。
【0037】
(実施の形態2)
図3に本発明の口腔内清掃器具を構成する、図1に示す検出手段6の一例を示す。検出手段6以外の構成は実施の形態1と同様である。バッファタンク23の上部に、吸引配管5が取り付けられている。また、バッファタンク23の上部側面には排気配管21が取り付けられており、排気配管21は吸引手段8と連接される。排気配管21を通じて吸引手段8が吸引動作を行うと、吸引配管5を通じ口腔内の付着物を含む液体がバッファタンク23内に導入され、バッファタンク23の底部に一時的に貯留される。排気配管21の開口部は、吸引配管5の開口部よりも上側に設けることで、吸引配管21に液体が流入することを防ぐことが出来る。また、バッファタンク23の底部には廃液タンク7に連接された廃液配管22が取り付けられ、バッファタンク23に一時貯留された液体を廃液タンク7へ導入する。
【0038】
バッファタンク23の下部側面には、透過窓26が設けられ、バッファタンク23の外側、透過窓26に隣接して光源部24および受光部25が設置される。光源部24はLEDやレーザーなど、付着物に吸収のある波長の光源であればいずれも使用可能であるが、透過光強度は比較的低出力の光源でも計測可能であるため、一般的なLEDが使用でき、簡易かつ安価に検出手段を構築することができる。本実施の形態1では、光源として波長365〜1550nmのLEDを使用している。透過窓26は当該波長を透過する材料であればいずれも使用可能であり、本実施の形態ではガラスを用いている。透過窓26を特に設けず、バッファタンク23を当該材料で構成しても同じ効果が得られる。
【0039】
光源部24に対向する位置には透過窓26を挟み、受光部25が設けられる。受光部25は光源部24の発する波長を透過する光学フィルタを設置するなど、当該波長を検出可能であればいずれも使用可能であるが、本実施の形態1ではフォトダイオードを用いている。
【0040】
バッファタンク23に一時貯留された口腔内の付着物を含む液体に対し、光源部24が光を照射し、その時の透過光強度を受光部25が検出する。光源部24が発した光は付着物に吸収を持つため、液体中に付着物が多ければ、受光部25が検出する透過光強度は弱くなる。逆に、付着物が少なければ透過光強度は強くなる。光源部24および受光部25は制御部9に接続され、制御部9の指示により光源部24は発光を行い、受光部25の検出結果は制御部9に渡される。
【0041】
制御部9は、得られた透過光強度に応じ、予め設定されたデータテーブルを参照するなどして液体中の付着物の量を判断し、表示手段16に表示する内容を決定する。
【0042】
検出手段6に光学的手段を用いることで、検出手段6が液体に直接接触することが無いため、洗浄などのメンテナンスが不要となる利点がある。
【0043】
(実施の形態3)
受光部25は光源部24の発した光が液体中の付着物に反射して生じる散乱光を測定しても良い。この場合、受光部25およびそれに隣接する透過窓26は光源部24に対向する必要は無く、散乱光強度を最も効率よく検出可能な位置関係に配置すればよい。その他の構成は実施の形態2と同様であるので説明は割愛する。
【0044】
受光部25が散乱光強度を測定する場合、液体中の付着物の量が多ければ散乱光強度は強くなり、少なければ弱くなる。散乱光によって液体中の物質を検出するためには、高出力の光源が必要であり、本実施の形態では光源部24に波長400〜1000nmのレーザーダイオードを用いている。散乱光によって検出を行う場合、微量な付着物も検出することが可能で、剥離した付着物の量が少ない状態でも検出ができるため、例えば口腔内衛生に関心が高い若年層など、より高い衛生状態が求められる口腔内清掃の状態を確認することが出来る。
【0045】
制御部9は、得られた散乱光強度に応じ、予め設定されたデータテーブルを参照するなどして液体中の付着物の量を判断し、表示手段16に表示する内容を決定する。
【0046】
(実施の形態4)
実施の形態2における光学的検出手段は、CCDなどの撮像素子を用いても良い。この場合、受光部25にCCDなどの撮像素子を設け、必要であれば発光部24に撮像を行うために必要な光量を確保するためにLEDなどを設ける。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0047】
撮像素子によって撮影された画像データは、制御部9に渡される。制御部9は画像データを付着物とバックグランドの色情報を元にバイナリ化し、撮像視野の面積に対する付着物の割合を算出し、その割合に応じて予め設定されたデータテーブルを参照するなどして液体中の付着物の量を判断し、表示手段16に表示する内容を決定する。また、個別の付着物面積を算出するのも容易であり、この面積データから個別の付着物の大きさを推定することが可能である。これにより、除去対象となる付着物の大きさ毎に除去効果を確認することが出来るため、例えば食物残渣の除去程度など、目的となる除去対象物に応じた清掃効果を確認することが出来る。
【0048】
(実施の形態5)
図4に本発明の口腔内清掃器具を構成する、検出手段6の望ましい構成のもう一つの例を示す。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0049】
バッファタンク23の下部、廃液配管22内に狭窄部29が設けられる。狭窄部29を挟み、バッファタンク23側および廃液タンク7側にそれぞれ第一の電極27および第二の電極28が設けられる。廃液配管22内を付着物を含んだ液体が通液し、狭窄部29を付着物が通ると、狭窄部29を含む廃液配管22の断面積と付着物の断面積の比に応じて、第一の電極27と第二の電極28間のインピーダンスや導電率など電気的な特性がパルス的に変化する。第一の電極27と第二の電極28は制御部9に接続されており、制御部9はこの電気特性を検出し、廃液配管22内を通過する単位時間当たりの付着物量を算出する。
【0050】
検出手段6が、電極と電気回路による構成で実現可能であるため、簡易で安価な装置構成が可能である。また、付着物6の量が正確にわかるのみならず、パルス変化の波高値によって付着物の大きさも判別できるため、例えば大きな付着物が少なくなれば清掃終了など、幅広い判断基準を設けることが出来る。
【0051】
(実施の形態6)
図5に本発明の口腔内清掃器具を構成する、検出手段6の望ましい構成のもう一つの例を示す。基本的な原理は、誘電泳動とインピーダンス計測を用いた粒子計測技術であり、詳細については、J.Phys D.Appl.Phys.32(1999)2814-2820を参照されたい。
【0052】
バッファタンク23の下部壁面に誘電泳動電極30が設けられる。図6は誘電泳動電極30を拡大図を示す。第一の電極27と第二の電極28は対向した櫛歯型構造をなしており、それぞれ制御部9に接続され、10KHzから10MHz、好ましくは100KHzの交流電圧を印加する。櫛歯電極のギャップ長は5μmから100μm、好ましくは10μmである。
【0053】
誘電泳動電極30に付着物を含む液体が接すると、液体中の付着物が交流電圧を印加した誘電泳動電極30のギャップ、すなわち、第一の電極27と第二の電極28の対向部分に誘電泳動力によって捕集される。このとき、第一の電極27と第二の電極28のインピーダンスは、捕集された付着物の量に応じて変化する。制御部9はこのインピーダンス変化を計測することで、液体中の付着物量を検出する。
【0054】
液体中に付着物量が多い場合は、インピーダンスの単位時間当たりの変化量は大きく、付着物量が少なくなると、インピーダンスの単位時間当たりの変化量は変化は小さくなる。この変化量を計測することで、制御手段9は液体中の付着物量を検出することが出来る。このとき、誘電泳動電極30のギャップ長が短すぎると、短時間でギャップが付着物で覆われるため、インピーダンス変化が飽和してしまうため、実用的ではない。逆に、ギャップ長が長すぎると、働く誘電泳動力が弱くなるため付着物が捕集できず、インピーダンス変化を計測できなくなる。そのため、本実施の形態ではギャップ長を10μmとしている。
【0055】
また、液体の導電率が高く、正の誘電泳動力が働きにくい場合は、バッファタンク23内に電気透析手段などを儲け、液体中のイオン濃度を低減すればよい。
【0056】
検出手段6を誘電泳動電極により実現すれば、細菌など代表寸法が1μm程度の微細な粒子でも付着物として検出することが可能になるし、液体に電極を含浸するのみで測定可能なため、複雑な形状の測定セルなどが必要なく、更に簡易な構成で実現可能である。
【0057】
(実施の形態7)
図7は本発明の口腔内清掃器具を構成する他の一例を示す。ここでは実施の形態1との差異のみを説明する。清掃器具2は実施の形態1と同様、ヘッド部3およびハンドル部4から構成され、その接続関係も同様であるが、検出手段6、廃液タンク7、吸引手段8、制御手段9、操作パネル10、表示手段16は全てハンドル部4に設けられる。吸引配管5はヘッド部3から清掃器具2内部を通り、ハンドル部4内の検出手段6を経由し、廃液タンク7に接続される。清掃実施者はヘッド部3を口腔内に挿入し、口腔内面の付着物を剥離する。付着物を含む液体の流れは実施の形態1と同様である。清掃実施者は検出手段6によって検出した結果に基づき、表示手段16が表示する付着物の減少状況を確認し、清掃を完了する。清掃が完了すれば、清掃実施者は廃液口14を通じ液体を清掃器具2内から外部へ排出する。本実施の形態によれば、小型な装置構成で付着物を口腔内から確実に除去し、かつ、清掃状態の確認を行うことができるという効果を有する。
【0058】
(実施の形態8)
図8は本発明の口腔内清掃器具を構成する他の一例を示す。ここでは実施の形態1との差異のみを説明する。本実施の形態では、清掃器具2にはハンドル部4に制御手段9、操作パネル10、表示手段16が設けられ、図9に示すように検出手段6はヘッド部3に設けられている。検出手段6と制御手段9は、ヘッド部3およびハンドル部4内部に備えられた検出部配線15によって電気的に接続される。
【0059】
図10に本実施の形態における検出手段6を拡大した略断面図を示す。植毛面11に測定空間11が凹状に形成されており、口腔内清掃中に測定空間11内が液体で満たされた状態で付着物を測定する。液体の表面張力によってヘッド部3の向きによらず測定空間11内に液体が保持できるように、直径1〜5mm、深さ1〜3mm程度の円筒形が望ましいが、本実施の形態では直径3mm、深さ3mmとしている。
【0060】
検出を光学的な手段で実現する場合、光源部24および受光部25を測定空間31の側面に配置する。検出に誘電泳動とインピーダンス計測を用いた粒子計測技術を用いる場合は、測定空間底面32に誘電泳動電極30を配置する。それぞれの検出方法については、前述の通りである。
【0061】
実際の清掃方法について説明する。清掃実施者はヘッド部3を口腔内に挿入し、口腔内面の付着物を剥離する。剥離した付着物を含む液体は、直ちにヘッド部3に備えられた検出部6に導入される。検出手段6では液体中に含まれる付着物の量あるいは濃度を検出し、表示手段16がその結果を表示する。本実施の形態では、検出手段6に導入された液体は通過することなく、検出手段6付近、あるいは口腔内に貯留し続けることになる。そのため、清掃開始直後は付着物の量は多く検出される。清掃実施者は付着物の剥離がある程度確認できれば、うがいや吸引装置などを用いて、一度口腔内をすすぐ。清掃実施者は清掃状態を確認するために、もう一度同様に清掃を行う。この時、清掃が確実に行われていれば、口腔内の付着物量はすすぐ前よりも減少しているはずであり、検出手段6に検出される付着物量も少なくなる。このとき、付着物が予め設定した量より少なければ、表示手段16はその旨を結果表示し、清掃を完了する。目標の付着物量に達していない場合は、もう一度口腔内をすすぎ、同様の操作を繰り返し、付着物の量が一定以下になるまで清掃を実施する。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、付着物の検出が検出部および制御手段のみの簡易な構成にて実現可能であり、歯ブラシやスポンジブラシなどの小型な口腔内清掃器具で付着物の検出を行うことができるという効果を有する。
【実施例】
【0063】
本発明の口腔内清掃器具を用いた実施例を示す。実施の形態1に記載の口腔内清掃器具を用い、検出部6は実施の形態6に記載の検出方法で実現されている。ヘッド部3を口腔内に挿入し、舌背上をブラッシングしながら、給水および吸引を行い、検出部6を通過する付着物の量を単位容量あたりの細菌数として算出し、清掃効果確認の根拠とした。
【0064】
ブラッシング開始1分後の細菌数は、7.2×10^9cells/mlであった。ブラッシングを継続し、開始2分後の細菌数は5.0×10^8cells/mlとなり、1/10以下となった。口腔内の細菌数に関する研究によれば、十分な口腔内清掃によって細菌数が1/10程度に低下する。詳細は、老年歯学・第16巻・第1号・pp3〜13、発行元:日本老年歯科医学会、2001年発行を参照されたい。
【0065】
これをもって、十分な清掃効果が得られたと判断され、表示手段16がその旨を表示し、口腔内の清掃を完了した。以上のように、本発明の口腔内清掃器具によれば、清掃中に口腔内の清掃度が分かるため、十分かつ適切な口腔内清掃が行える。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明の口腔内清掃器具によれば、清掃中に口腔内の清掃度が分かるため、十分かつ適切な口腔内清掃が行え、吸引、給水機能を有する口腔ケア器具や一般的な電動歯ブラシまたは歯ブラシなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1を表す口腔内清掃器具の図
【図2】実施の形態1におけるヘッド部の図
【図3】実施の形態2における検出手段の構成図
【図4】実施の形態5における検出手段の構成図
【図5】実施の形態6における検出手段の構成図
【図6】誘電泳動電極を示す図
【図7】実施の形態7を表す口腔内清掃器具の図
【図8】実施の形態8を表す口腔内清掃器具の図
【図9】実施の形態8におけるヘッド部の図
【図10】実施の形態8におけるヘッド部の略断面図
【符号の説明】
【0068】
1 装置本体
2 清掃器具
3 ヘッド部
4 ハンドル部
5 吸引配管
6 検出手段
7 廃液タンク
8 吸引手段
9 制御部
10 操作パネル
11 植毛面
12 吸引口
13 植毛部
14 廃液口
15 検出部配線
16 表示手段
21 排気配管
22 廃液配管
23 バッファタンク
24 光源部
25 受光部
26 透過窓
27 第一の電極
28 第二の電極
29 狭窄部
30 誘電泳動電極
31 測定空間
32 測定空間底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル部とヘッド部を有し、ヘッド部を口腔内に挿入し歯面や舌や口腔内粘膜への付着物を除去する器具であって、清掃によって剥離、除去された付着物の検出手段を備えることを特徴とする口腔内清掃器具。
【請求項2】
ヘッド部に吸引口を備え、吸引口に連接された吸引配管および吸引手段および廃液タンクを有することを特徴とする請求項1に記載の口腔内清掃器具。
【請求項3】
吸引配管および吸引手段および廃液タンクをハンドル部内に有することを特徴とする請求項2に記載の口腔内清掃器具。
【請求項4】
検出手段をヘッド部に備えることを特徴とする請求項1〜3に記載の口腔内清掃器具。
【請求項5】
検出手段が光学的検出手段であることを特徴とする請求項1〜4に記載の口腔内清掃器具。
【請求項6】
光学的検出手段が光源部及び受光部を備え、口腔内から剥離、除去された付着物を含む液体に対して光源部が光を照射し、生じた透過光を受光部が検出することで液体中の付着物を検出することを特徴とする請求項5に記載の口腔内清掃器具。
【請求項7】
光学的検出手段が光源部及び受光部を備え、前記付着物を含む液体に対して光源部が光を照射し、生じた散乱光を受光部が検出することで液体中の付着物を検出することを特徴とする請求項5に記載の口腔内清掃器具。
【請求項8】
光学的検出手段が撮像素子を備え、撮像素子が前記付着物を含む液体を撮影し、得られた画像から前記液体中の前記付着物を検出することを特徴とする請求項5に記載の口腔内清掃器具。
【請求項9】
検出手段が電気的手段であることを特徴とする請求項1〜4に記載の口腔内清掃器具。
【請求項10】
電気的検出手段が少なくとも一対の電極および狭窄部を備え、狭窄部に前記付着物を含む液体が通液され、電極間インピーダンスを計測することで液体中の付着物を検出することを特徴とする請求項9に記載の口腔内清掃器具。
【請求項11】
電気的検出手段が少なくとも一対の電極を備え、当該電極が前記付着物を含む液体中に含浸され、誘電泳動によって電極間に付着物を捕集し、かつ電極間インピーダンスを計測することで液体中の付着物を検出することを特徴とする請求項9に記載の口腔内清掃器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−119154(P2008−119154A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304753(P2006−304753)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】