説明

口腔内湿潤度の測定方法

【課題】専門家の立会いや、特定の測定器を必要とすることなく、測定者が簡便かつ精度よく、自らの口腔内の湿潤度を測定できる方法の提供。
【解決手段】崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である試験錠を口腔内に配置し、口腔内で崩壊が開始するまでの時間を測定し、口腔内の湿潤度を測定する。崩壊時間測定値は、試験錠を37℃の水により下部から湿潤させつつ、この試験錠に上方から特定のシェアをかけ、試験錠が崩壊するまでの時間である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便に口腔内の湿潤度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内の唾液量は、口腔内の健康において重要な因子である。唾液による口腔内の湿潤度を測定する方法としては、例えばキソウエット法が知られている。
キソウエット法は、薄層クロマトグラフィーの原理を応用したものであって、メンブレンフィルターをポリエステルフィルムに製膜した検査紙(商品名:KISO−WeT、販売者:KISOサイエンス株式会社)を用いて、口腔内の湿潤度を測定する方法である。具体的には、検査紙を舌背部などに一定時間接触させた後、取り外し、検査紙が唾液により湿潤した幅を測定する。
【0003】
また、特許文献1には、特定の口腔機能測定器を用いて、安静時唾液量、刺激時唾液量などの測定を短時間で精度良く行えるとした方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−295472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キソウエット法は、専門家の立会いのもとで行われる必要があった。また、特許文献1に記載の方法では、特定の測定器が必要であった。
このように従来の方法は、いずれも簡便性に欠けるものであった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、専門家の立会いや、特定の測定器を必要とすることなく、測定者が簡便かつ精度よく、自らの口腔内の湿潤度を測定できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の口腔内湿潤度の測定方法は、下記の方法で測定された崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である試験錠を口腔内に配置し、配置してから前記試験錠の崩壊が開始するまでの崩壊開始時間を計測することを特徴とする。
[測定方法]
試験錠の下部が37℃の水(崩壊試験液)の液面にわずかに接触するように、前記試験錠を保持すると同時に、前記試験錠の上に、直径が20mmで質量が15gの円柱状の押さえ具をその下面が前記試験錠に接触し、かつ、その軸線が鉛直方向に一致するように載置しつつ、該押さえ具を軸線を中心として回転数25rpmで回転させ、試験錠を崩壊させる。この際、試験錠の液面への接触と、押さえ具の試験錠への接触とを同時に行い、その時点から試験錠が崩壊した時点までの時間を測定し、これを崩壊時間測定値とする。
【0008】
前記試験錠は、少なくとも一方の底面の縁部がテーパー状に面取り加工された柱状であり、前記底面における前記縁部以外の中央平坦部の面積は、底面全体の投影面積の50%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、専門家の立会いや、特定の測定器を必要とすることなく、測定者が簡便かつ精度よく、自らの口腔内の湿潤度を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】崩壊時間測定値の測定に好適に使用される測定器の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1の測定器が具備する受け具の平面図である。
【図3】図1の測定器を用いた崩壊時間測定値の測定方法を説明する説明図である。
【図4】図1の測定器を用いた崩壊時間測定値の測定方法を説明する説明図である。
【図5】(a)円形錠(平錠)の側面図と軸方向に投影した投影図、(b)円形R錠の側面図と軸方向に投影した投影図である。
【図6】(a)円形すみ角平錠の側面図と軸方向に投影した投影図、(b)他の円形すみ角平錠の側面図と軸方向に投影した投影図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の口腔内湿潤度の測定方法は、試験錠を口腔内に配置した際において、配置した時点から試験錠が崩壊を開始するまでの時間(崩壊開始時間)から、口腔内の湿潤度を測定する方法である。
具体的には、試験錠を舌尖より約1cmの部分に配置し、口を閉じ、硬口蓋と舌とで試験錠を軽く挟むように保持する。この際、試験錠を噛んだり、舌で転がしたりしないように注意する。この状態を継続し、試験錠を口腔内に配置した時点から、試験錠が崩れ始めたと測定者本人が認識できた時点までの時間(崩壊開始時間)を計測し、その時間の長短から、口腔内の湿潤度を測定する。測定された時間が長いほど、口腔内の湿潤度が低い。
【0012】
このような測定方法においては、試験錠として、次に説明する方法により測定された崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下であるものを使用する。
【0013】
図1は、崩壊時間測定値の測定に好適に使用される測定器の一例を示す概略構成図である。
この測定器10は、恒温水槽15内に配置され、水などの崩壊試験液Lを恒温に保ちつつ保持するビーカーなどの容器11と、容器11内における崩壊試験液Lの液面Lsの高さを調整する図示略の液面高さ調整手段と、容器11内の所定の高さに図示略の固定手段により水平固定され、試験錠Mを保持する受け具12と、受け具12に保持された試験錠Mの上面に載置され、その自重により試験錠Mに圧力を加える錘状の押さえ具13と、押さえ具13をその軸線を中心として回転させるとともに、押さえ具13を鉛直方向に移動させる駆動シャフト14とを有している。
【0014】
この例の受け具12は、図2に示すように、厚みが0.05〜0.1mmのステンレスなどの金属からなる外径83mmの環状板12aと、この環状板12aの開口している内径32mmの中央円形部分に設けられたメッシュ部12bとからなる円盤型部材である。メッシュ部12bは、孔径1.0mmの孔が1.5mmピッチ(孔の中心同士の間隔)で形成されたパンチングメッシュ板から形成されている。
このようにメッシュ部12bとされている受け具12の中央円形部分に、試験錠Mを載置して保持するとともに、液面高さ調整手段により容器11内の崩壊試験液Lの液面Lsを調整して、後述するように受け具12の上面12cと、崩壊試験液Lの液面Lsとを面一にすることによって、試験錠Mの下部をメッシュ部12bを介して崩壊試験液Lの液面Lsにわずかに接触させ、試験錠Mを湿潤させられるようになっている。
【0015】
押さえ具13は、下側の底面(下面)13aが平坦に形成された円柱状の金属部材からなり、上側の底面(上面)には、駆動シャフト14の下端が接続されている。駆動シャフト14は、鉛直方向に沿って配置され、鉛直方向に往復自在であるとともに、その軸線を中心として回転自在となっている。このような構成により、押さえ具13は、その軸線が鉛直方向に一致する状態を維持したまま、駆動シャフト14の鉛直方向の移動に伴って、鉛直方向に移動し、また、駆動シャフト14の回転に伴って、その軸線を中心として回転するようになっている。
【0016】
なお、押さえ具13と駆動シャフト14とは鉛直方向には遊びを有して接続されていて、測定にあたって、後述のように駆動シャフト14を降下させ、押さえ具13を試験錠Mの上に載置した際には、押さえ具13の自重のみが試験錠Mに加わるように構成されている。
【0017】
液面高さ調整手段には、この例では、駆動シャフト14による押さえ具13の下降と連動して下降する、所定の体積の試験液上昇ブロックが使用されている。試験液上昇ブロックは、駆動シャフト14と連動して下降し、容器11中の崩壊試験液L内に沈むことによって、崩壊試験液Lの液面高さを調整する手段である。
【0018】
また、この測定器10は、試験錠Mが崩壊したことを検知するための図示略の検知手段を有している。詳しくは後述するが、試験錠Mが崩壊すると、受け具12の上面12cと押さえ具13の下面13aとが接触する。この例の検知手段は、このような受け具12の上面12cと押さえ具13の下面13aとの接触を電気的に検知して、試験錠Mの崩壊を検知するようになっている。
【0019】
この測定器10により、試験錠Mの崩壊時間測定値を測定する際には、まず、直径が20mmで質量が15gの円柱状の押さえ具13を駆動シャフト14の下端に取り付ける。また、受け具12のメッシュ部12a上に、試験錠Mを載置する。一方、容器11内には、崩壊試験液Lとして水(精製水)を入れ、恒温水槽15により、液温を37℃に維持する。この時点では、図1のように、試験錠Mの下部が崩壊試験液Lに接しないように、液面高さ調整手段により、受け具12の高さが調整されている。
ついで、駆動シャフト14を回転数25rpmで回転させるとともに降下させ、押さえ具13の下面13aを試験錠Mの上部(上面)へ接触させる。一方、液面高さ調整手段により、受け具12の上面12cと崩壊試験液Lの液面Lsとを面一にして、試験錠Mの下部を崩壊試験液Lにわずかに接触させ、図3の状態とする。この際、試験錠Mの崩壊試験液Lへの接触と、押さえ具13の下面13aと試験錠Mの上面との接触が、同時に行われるようにする。同時に行われた時点を測定開始時間Tとする。
【0020】
すると、崩壊試験液Lに接触して湿潤状態とされた試験錠Mに対して、回転している押さえ具13から剪断力(シェア)が加えられ、その結果、試験錠Mが崩壊し、崩壊して粒子化した試験錠Mが、メッシュ部12aからその下の崩壊試験液L中に落下する。その結果、図4に示すように、受け具12の上面12cと押さえ具13の下面13aとが接触し、検知手段が試験錠Mの崩壊を電気的に検知する。この時点を測定終了時間Tとする。
このようにして測定器10で試験錠Mを崩壊させる際において、時間T〜Tまでの時間を測定し、これを崩壊時間測定値とする。
【0021】
このような崩壊時間測定値の測定は、例えば特開2004−233332号公報に記載された試料錠崩壊装置や、富山産業株式会社製の口腔内崩壊錠試験器(型番:ODT−101)などにより行える。
【0022】
以上説明した測定方法は、試験錠Mの下部を崩壊試験液Lで湿潤させつつ、試験錠Mの上方から押さえ具13により圧力を加える方法であり、口腔内で試験錠Mが舌からの唾液で湿潤しながら舌と硬口蓋に挟まれて崩壊する状態を良好に反映している。
【0023】
本発明の口腔内湿潤度の測定方法では、このようにして測定された崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である試験錠Mを口腔内に配置して、口腔内の湿潤度を測定する。ここで崩壊時間測定値が1.5分を超える試験錠を用いた場合には、崩壊開始時間が長くなり過ぎてしまい、特に唾液量の少ない人の場合には崩壊しないケースも生じる。また、仮に崩壊した場合でも長時間を要するため、測定の簡便性や精度が劣る。好ましい崩壊時間測定値は、1分以下、さらに好ましくは30秒以下である。
一方、崩壊時間測定値が5秒未満である試験錠を用いた場合には、容易に崩壊しすぎるため、実際の口腔内の唾液量の多少が反映されにくく、測定値にも差が出にくくなり、その結果、測定は精度の低いものとなる。好ましい崩壊時間測定値は10秒以上である。
【0024】
本発明の方法で採用される試験錠Mは、上述した崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である限り、その組成、成型方法、形状、大きさなどには制限はない。
組成としては、例えば賦形剤、崩壊剤、滑沢剤の他、人口甘味料、香料など公知の成分を適宜組み合わせた組成とすることができる。賦形剤としては、セルロース類、糖アルコール類などが挙げられ、崩壊剤としては、でんぷん類、寒天などが挙げられる。滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウムなどが好ましく使用できる。これら成分のうち、齲蝕性がないものを選択すると、虫歯予防の点で好ましい。
試験錠Mの成型方法としても、錠剤成型器などによる圧縮成形法や、押し出し造粒法など制限はない。また、成型にあたって原料を湿潤させ、成型後に乾燥してもよい。
【0025】
試験錠Mの形状としては、例えば、図5(a)に示すような平たい円柱である円形錠(平錠)M、図5(b)に示すような平たい円柱の両底面が曲面状に形成された円形R錠M、図6(a)および(b)に示すような平たい円柱の両底面の縁部がテーパー状に面取り加工された円形すみ角平錠M、Mの他、楕円形錠、球形錠、各種異型錠等いずれでもよい。なかでも、図6(a)および(b)に示すように、少なくとも一方の底面の縁部Tがテーパー状に面取り加工された柱状であり、底面における縁部以外の中央平坦部Sの面積が、この底面全体の投影面積の50%以上である円形すみ角平錠M、Mは、当該底面が舌に接するように配置された場合には、舌尖と硬口蓋との間で安定するとともに、舌尖や硬口蓋との接触面積が大きくなる。そのため、これを用いることによって、より精度よく崩壊開始時間を測定できる。面取り加工のテーパーは、平面的なテーパー(図6(a))でも曲面的なテーパー(図6(b))でもよい。また、投影面積とは、円柱の軸方向に投影した面積である。
【0026】
試験錠Mの大きさには特に制限はないが、円柱状、球形である場合には直径が8〜13mmであると、崩壊開始時間が測定しやすい。角柱である場合には底面の対角線の最大長さ、楕円形である場合には長径が、8〜13mmであることが好ましい。また、厚さは3〜5mmであると、崩壊開始時間が測定しやすく好適である。
【0027】
以上説明したように、口腔内に試験錠を配置して崩壊開始時間を計測し、口腔内湿潤度を測定する方法によれば、専門家の立会いや、特定の測定器を必要とすることなく、測定者が自らの口腔内の湿潤度を簡便に測定できる。また、特に試験錠として、上述の方法で測定された崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である試験錠を用いることにより、簡便かつ精度よく、測定することができる。
【実施例】
【0028】
以下本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。
[製造例1〜8、製造比較例2]
表1に示す各組成の試験錠を製造した。
具体的には、試験錠を構成する各成分について、1000錠分の質量を計量してビニール袋に入れ、20回振って混合した。
この混合物をクリーンプレス12HUK(菊水製作所製)を用いてオープンフィードシューにて打錠して、表1に示す質量、形状の各試験錠を得た。この際、臼杵の杵として、表1に記載の直径(mm)の杵を用いた。
また、打錠の際には、錠剤破壊強度測定器TH−203CP(富山産業製)により測定される試験錠の錠剤硬度が30〜50kNになるように、あらかじめ打錠圧を調整した(回転盤回転数:10rpm、杵本数:12本)。
そして、得られた試験錠について、富山産業株式会社製の口腔内崩壊錠試験器(型番:ODT−101)を用いて、崩壊時間測定値を求めた。測定方法は、図1、図3、図4を例示して、先に説明したとおりである。具体的には、崩壊試験液Lとして37℃の精製水を用い、押さえ具13として直径が20mmで質量が15gの円柱状の錘を用い、受け具12として、孔径が1.0mmの孔が1.5mmピッチで形成されたパンチングメッシュ板をメッシュ部として備えた検出用シートを用いた。
崩壊時間測定値を表1に示す。
【0029】
[製造比較例1]
表1に示す組成の試験錠を製造した。
具体的には、試験錠を構成する各成分について、100錠分の質量を計量して乳鉢に入れ、粉砕しつつ混合した。
この混合物から1錠分の質量を取り出し、直径10mmの鋳型に入れ、杵で打ち、成型した。なお、杵の圧力は、8kNとした。これを40℃、89%RHの加湿下に12時間保存した後、40℃にて6時間乾燥して、製造比較例1の試験錠を得た。
そして、製造例1〜8および製造比較例2と同様にして、崩壊時間測定値を測定した。その値を表1に示す。
【0030】
【表1】

製造例1〜8で製造された試験錠を試験錠1〜8とし、製造比較例1および2で製造された試験錠を試験錠9および10とする。
また、表1中の試験錠の形状は以下の内容を示す。
スミ角平:図6(a)の円形すみ角平錠Mであり、中央平坦部の面積は、底面全体の投影面積の50%以上である。なお、表1中のd[mm]は、中央平坦部の直径である。また、h[mm]は、縁部の高さ(軸方向)である。
単R錠:図5(b)の円形R錠Mである。表1中のr[mm]は、曲面状に形成された底面の曲率半径である。また、h[mm]は、底面の周縁と底面の中心との高さの差(軸方向)である。
平:図5(a)の円形錠(平錠)Mである。
【0031】
[モニターの選定]
9名のモニターを選定した。
この9名は、下記のキソウエット法により測定された試験紙の湿潤幅が「3mm以上」である3名(モニター1、モニター2、モニター3)と、「1mm以上3mm未満」である3名(モニター4、モニター5、モニター6)と、「1mm未満」である3名(モニター7、モニター8、モニター9)により構成される。
「3mm以上」であれば口腔内は潤っていて、「1mm以上3mm未満」であれば乾き気味で、「1mm未満」であれば乾いていると判断される。
【0032】
(キソウエット法)
メンブレンフィルターをポリエステルフィルムに製膜した検査紙(商品名:KISO−WeT、販売者:KISOサイエンス株式会社)を舌背部に10秒間接触させた後、取り外し、検査紙が唾液により湿潤した幅(湿潤幅)を測定する方法。
【0033】
<実施例1〜8、比較例1および2>
[1]試験1
上記モニター1〜9の合計9名により、試験錠1〜10の崩壊開始時間を測定した。
具体的には、試験錠を各モニターの舌尖より約1cmの部分に配置し、口を閉じ、硬口蓋と舌とで試験錠を軽く挟むように保持した。この際、試験錠を噛んだり、舌で転がしたりしないように注意した。この状態を継続し、試験錠を口腔内に配置した時点から、試験錠が崩れ始めたと各モニターが認識できた時点までの時間(崩壊開始時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2に示されているように、試験錠1〜8のいずれを用いた場合でも、モニター1〜3のグループ、モニター4〜6のグループ、モニター8〜9のグループの順で、崩壊開始時間が短い結果となり、本実施例の測定方法は、キソウエット法と、良好に相関していることが示された。
一方、製造比較例1で製造された試験錠9を用いた場合には、上記3つのグループ間での崩壊開始時間の差が明確ではなく、キソウエット法との相関が認められ難かった。
また、製造比較例2で製造された試験錠10を用いた場合には、キソウエット法で口腔内が潤っていると評価されたモニター1〜3でさえも、崩壊開始時間が非常に長くなってしまった。また、キソウエット法で口腔内が乾いていると評価されたモニター7〜9の口腔内では、5分以上経過しても試験錠が崩壊しなかった。この結果から、試験錠10では、簡便かつ精度よく、口腔内の湿潤度を測定できないことが示された。
【0036】
[2]試験2
上記9名とは別のモニター10人(モニターA〜J)に対して、上記製造例で製造された各試験錠1〜8を用いて崩壊開始時間を計測し、湿潤度を測定した。
なお、表2の結果から、製造例1の試験錠1を用いた場合の判定基準を次のように決定し、表3中に示した。すなわち、
・試験錠1の崩壊開始時間が95秒未満:表3中「○」で示す。口腔内が潤っているレベルである。
・試験錠1の崩壊開始時間が95秒以上120秒未満:表3中「△」で示す。口腔内が乾き気味のレベルである。
・試験錠1の崩壊開始時間が120秒以上:表3中「×」で示す。口腔内が乾いているレベルである。
同様にして、試験錠2〜8を用いた場合の判定基準も、表2の結果から決定した。決定された判定基準は表3に設定範囲として記載のとおりである。
そして、モニターA〜Jの10名により、試験錠1〜8を用いて崩壊開始時間を計測して湿潤度を測定した。結果を表3に示す。
なお、モニターA〜Jには、予めキソウエット法も実施しておいた。その結果を表3中最下欄に示す。この欄における「○」は、キソウエット法により測定された試験紙の湿潤幅が「3mm以上」、「△」は「1mm以上3mm未満」、×は「1mm未満」であることを示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3に示すように、例えば試験錠1を用いた場合には、モニターB、C、Iの3名が、キソウエット法とは異なる結果となったが、その他のモニターは、キソウエット法と同じ結果となった。
試験錠2〜6を用いた場合も、試験錠1を用いた場合と同様に、一部のモニターはキソウエット法とは異なる結果となったが、その他のモニターは、キソウエット法と同じ結果となった。
試験錠7および8を用いると、モニターA〜J全員がキソウエット法と同じ結果となり、試験錠7〜8を用いると特に精度よく測定できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の方法で測定された崩壊時間測定値が5秒以上1.5分以下である試験錠を口腔内に配置し、配置してから前記試験錠の崩壊が開始するまでの崩壊開始時間を計測することを特徴とする口腔内湿潤度の測定方法。
[測定方法]
試験錠の下部が37℃の水(崩壊試験液)の液面にわずかに接触するように、前記試験錠を保持すると同時に、前記試験錠の上に、直径が20mmで質量が15gの円柱状の押さえ具をその下面が前記試験錠に接触し、かつ、その軸線が鉛直方向に一致するように載置しつつ、該押さえ具を軸線を中心として回転数25rpmで回転させ、試験錠を崩壊させる。この際、試験錠の液面への接触と、押さえ具の試験錠への接触とを同時に行い、その時点から試験錠が崩壊した時点までの時間を測定し、これを崩壊時間測定値とする。
【請求項2】
前記試験錠は、少なくとも一方の底面の縁部がテーパー状に面取り加工された柱状であり、前記底面における前記縁部以外の中央平坦部の面積は、底面全体の投影面積の50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の口腔内湿潤度の測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−232286(P2011−232286A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105191(P2010−105191)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】