説明

口腔内用組成物

【課題】口腔内に効率よく広がり咽頭だけでなく口腔内を万遍なく殺菌することができる口腔内用組成物、特に洗口うがい剤を提供する。
【解決手段】第四級アンモニウム塩を0.001〜0.0075重量/容量%、非イオン性界面活性剤を0.05〜1重量/容量%、及びメントール類を0.0075〜0.06重量/容量%の割合で配合して口腔内用組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内用組成物、特に口腔内で良好に泡立ちする洗口うがい剤に関する。より詳細には、希釈せずにそのまま洗口及びうがいに使用できる非希釈タイプの口腔内用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器は、1)換気をあずかる上気道(鼻前庭、鼻腔、咽頭、喉頭)、2)下気道(気管、気管支、細気管支、終末気管支)と、3)拡散(ガス交換)をあずかる肺胞の3領域に分けられる。ガス交換の場である呼吸器は直接、外界と接することで微生物と接触し、感染症の発症頻度は高い。上気道における感染症としては風邪が挙げられ、下気道においては気管支炎などが挙げられる。
【0003】
これらの感染症を治療または予防する手段としては、当該微生物の流入口である口腔内や咽頭部を殺菌消毒することが有効であり、従来から「うがい」が広く行われてきている。上記のような感染症に対してうがいを行う際は、水道水で口腔内や咽頭部をガラガラ漱ぐといった物理的作用だけでは充分でなく、殺菌剤を配合した口腔内用組成物を用いることによって殺菌することが必要である。しかしながら、従来の口腔内用組成物では、例えば特許文献1に記載されているように、携帯簡便性から使用時に数〜数十倍に希釈して使用する濃縮タイプ(用時希釈タイプ)であり、希釈時にコップ内で発泡しないように成分が調整がされているため(例えば、特許文献1の段落[0010]参照)、口腔内での広がりに欠け、殺菌力が発揮できるのはうがい液が接触する部分に限られる。このため、口腔内に残存した微生物によって感染が生じるなど、充分な感染症予防効果が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−25735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決することを目的とするものであって、口腔内に効率よく広がり咽頭だけでなく口腔内を万遍なく殺菌することができる口腔内用組成物、特に洗口うがい剤を提供することを目的とする。さらに好ましくは、本発明は、上記殺菌効果に加えて、使用感、特に使用中及び使用後に不快感なく、すっきりした爽快な洗口感が得られる口腔内用組成物、特に洗口うがい剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、殺菌剤として第四級アンモニウム塩を用い、これに非イオン性界面活性剤及びメントール類を特定の割合で配合した液状の口腔内用組成物によれば、これを口に含んでうがいすることで、口腔内で効率よく適度に泡立ち、咽頭だけでなく口腔内を万遍なく殺菌することができることを見出すとともに、当該組成物によれば、使用中だけでなく使用後も泡立ちによる不快感はなく、むしろ爽快な洗口感が得られることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様を有する口腔内用組成物、特に洗口うがい剤を提供するものである。
【0008】
(1)第四級アンモニウム塩を0.001〜0.0075重量/容量%、非イオン性界面活性剤を0.05〜1重量/容量%、及びメントール類を0.0075〜0.06重量/容量%の割合で含有することを特徴とする口腔内用組成物。
(2)非イオン性界面活性剤の割合が0.06〜0.6重量/容量%であるか、又は/及びメントール類の割合が0.0075〜0.04重量/容量%であることを特徴とする(1)記載の口腔内用組成物。
(3)第四級アンモニウム塩が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)または(2)に記載する口腔内用組成物。
(4)非イオン性界面活性剤が、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンセチルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である、(1)乃至(3)のいずれかに記載する口腔内用組成物。(5)さらに、炭素数2−3の低級アルコール及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種のアルコール系溶剤を含有する(1)乃至(4)のいずれかに記載する口腔内用組成物。
【0009】
(6)アルコール系溶剤が、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及び重量平均分子量が200〜600のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、(5)に記載する口腔内用組成物。
(7)さらに甘味料を含有する(1)乃至(5)のいずれかに記載する口腔内用組成物。
(8)液状組成物である、(1)乃至(7)のいずれかに記載する口腔内用組成物。
(9)洗口うがい剤である、(1)乃至(8)のいずれかに記載する口腔内用組成物。
【0010】
なお、本明細書において「第四級アンモニウム塩」は「第四級アンモニウム塩型殺菌剤」とも称される。また、本明細書において「重量/容量%」または「w/v%」は、組成物100ml当たりの配合重量(g)を示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明の口腔内組成物は、希釈することなくそのままの状態で洗口及びうがいに使用することができる。また当該口腔内組成物を口に含んでうがいをすることで、口腔内で速やかに泡立つとともに泡が口腔内に万遍なく広がり、咽頭部だけでなく口腔内を隅々まで殺菌することができる。このため、本発明の口腔内組成物によれば、口腔内に残留した微生物が咽頭を通じて体内に侵入することによって発生する感染を効果的に予防することができる。さらに、本発明の口腔内組成物は、使用中及び使用後も不快感なく、爽快な洗口感を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の口腔内用組成物は、(A)第四級アンモニウム塩、(B)非イオン性界面活性剤、及び(C)メントール類を所定の配合割合で含有することを特徴とするものである。以下、本発明の口腔内用組成物を詳細に説明する。
【0013】
(A)第四級アンモニウム塩
本発明において第四級アンモニウム塩は、口腔内に適用することが薬学的に許容されるものであればよく、その限りにおいて特に制限されるものではないが、通常、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム、ジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、及びジデシルモノメチルヒドロキシエチルアンモニウムスルホネート等が例示される。なお、これらは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくは塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウムである。また、これらの化合物は、塩化セチルピリジニウムの水和物のように、水和物の状態で使用することもできる。
【0014】
本発明の口腔内用組成物において、(A)第四級アンモニウム塩の配合割合は、口腔内用組成物が本発明の効果を発揮する範囲、具体的には口腔内用組成物が口腔内で所望に泡立って殺菌効果を発揮し、且つ良好な使用感(清涼感や爽快感)を発揮する範囲であり、具体的には0.001〜0.0075重量/容量%の範囲を挙げることができる。好ましくは0.002〜0.007重量/容量%、より好ましくは0.003〜0.006重量/容量%、特に好ましくは0.004〜0.006重量/容量%の範囲である。
【0015】
(B)非イオン性界面活性剤
本発明において非イオン性界面活性剤もまた、口腔内に適用することが薬学的に許容されるものであればよい。その限りにおいて特に制限されるものではないが、通常、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が例示される。なかでも好適には、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート80)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレンセチルエーテル等を挙げることができる。より好ましくはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、特に好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である。なお、これらの非イオン性界面活性剤において、ポリオキシエチレンを構成するエチレンオキサイド基の平均モル数は特に制限されないものの、好ましくは20〜80モル、好ましくは40〜60モルを例示することができる。
【0016】
本発明の口腔内用組成物において、(B)非イオン性界面活性剤の配合割合は、口腔内用組成物が本発明の効果を発揮する範囲、具体的には口腔内用組成物が口腔内で所望に泡立って殺菌効果を発揮し、且つ良好な使用感(清涼感や爽快感)を発揮する範囲であり、具体的には0.05〜1重量/容量%の範囲を挙げることができる。好ましくは0.06〜0.6重量/容量%、より好ましくは0.06〜0.4重量/容量%の範囲である。
【0017】
(C)メントール類
本発明においてメントール類は、口腔内に適用することが薬学的に許容されるものであればよく、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオール、ゲラニオールを例示することができる。これらは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の口腔内用組成物において、(C)メントール類の配合割合は、口腔内用組成物が本発明の効果を発揮する範囲、具体的には口腔内用組成物が口腔内で所望に泡立って殺菌効果を発揮し、且つ良好な使用感(清涼感や爽快感)を発揮する範囲であり、具体的には0.0075〜0.06重量/容量%の範囲を挙げることができる。好ましくは0.0075〜0.05重量/容量%、より好ましくは0.0075〜0.04重量/容量%の範囲である。
【0019】
その他の配合成分
本発明の口腔内用組成物には、上記(A)〜(C)成分に加えて、本発明の効果を向上するか若しくは損なわない範囲で、(D)アルコール系溶剤、及び(E)甘味料の少なくとも1方を配合することができる。
【0020】
(D)アルコール系溶剤
アルコール系溶剤としては、炭素数2−3の低級アルコール及び多価アルコールよりなる群から選択される少なくとも1種の溶剤を例示することができる。
【0021】
ここで炭素数2−3の低級アルコールとしては、具体的には、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノールが例示される。また、多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、重量平均分子量が50〜2000(好ましくは100〜1000、更に好ましくは200〜600)のポリエチレングリコール等が例示される。これらの中でも、好ましくはエタノール、イソプロパノール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、及び重量平均分子量が200〜600のポリエチレングリコールが挙げられる。より好ましくはエタノール、グリセリン、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールである。
【0022】
これらのアルコール系溶剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上のアルコール系溶剤を使用する場合、その組合せ態様については、特に制限されないが、少なくとも1種の炭素数2−3の低級アルコールと少なくとも1種の多価アルコールとの組合せ;好ましくはエタノールと、グリセリン、プロピレングリコール及びジプロピレングリコールの少なくとも1種との組合せ;好ましくはエタノールとプロピレングリコールとの組合せが例示される。炭素数2−3の低級アルコールと多価アルコールを組み合わせて使用する場合、その混合比については特に制限されないが、一例として、炭素数2−3の低級アルコールの総量100重量部当たり、多価アルコールが総量で10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは50〜330重量部が例示される。
【0023】
(E)甘味料
甘味料としては、口腔内で甘味を発現する可食性成分であればよく、例えば糖類、糖アルコール、及び高甘味度甘味料を挙げることができる。ここで糖類としては砂糖、乳糖、ブドウ糖、及び果糖等;糖アルコールとしてはソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、トレハロース及び還元パラチノース等;高甘味度甘味料としてはステビア、甘草、ソーマチン、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース等を例示することができる。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくは糖アルコールである。糖アルコールの中でも好ましくはソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロースである。
【0024】
また、本発明の口腔内用組成物は、上記成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、口腔内用組成物に通常使用されている成分を配合することもできる。このような成分としては、例えば、粘稠剤、防腐剤、消炎剤、色素、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0025】
更に、本発明の口腔内用組成物は、その製剤形態に応じて、薬学的に許容される担体を含むことができる。具体的には、本発明の口腔内用組成物は液状、好ましくは上記成分を溶解した水溶液(水性液状)の形態を有するものであるため、担体として、精製水、イオン交換水、超純水、水道水等の水を用いることができる。
【0026】
口腔内用組成物の製造方法
本発明の口腔内用組成物は、上記(A)〜(C)成分を所定量、及び必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。本発明の口腔内用組成物の製造において、各配合成分の混合順番については特に制限されるものではないが、口腔内用組成物の調製時に成分の均一性、溶解性の確保を図るために、水系、油系成分が混在する場合、それぞれ水系、油系として製した後に混合することが望ましい。
【0027】
口腔用組成物の用途、形態
本発明の口腔内用組成物は、前述するように液状、特に水性液状であり、希釈することなくそのままの状態で洗口液及び含嗽剤(これらを総称して「洗口うがい剤」と称する。)として使用することができる。好ましくはうがい剤としての使用である。
【0028】
本発明の口腔内用組成物は、後述する試験例で示すように、咽頭のみならず口腔内での殺菌効果に優れているので、口腔内及びのどの殺菌、消毒、洗浄並びに口臭の除去に優れた効果を発揮することができる。このため本発明の口腔内用組成物は、口を通じて感染する各種の感染症の予防に有効に使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に、試験例及び実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、特に言及しない限り、配合量に関する「%」は「重量/容量%」を意味するものとする
試験例1
第四級アンモニウム塩として塩化セチルピリジニウム水和物、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、メントール類としてl−メントールを用いて、表1に記載する処方に従って液状の口腔内用組成物(実施例1)を調製した。また、比較のため、第四級アンモニウム塩、非イオン性界面活性剤、及びメントール類のいずれか1つを含まない液状の口腔内用組成物(比較例1〜4)を表1に記載する処方に従って調製した。これらの口腔内用組成物(実施例1、比較例1〜4)について、下記の方法により、泡立ち、味、使用感、及び殺菌力を評価した。
【0030】
(1)試験方法
(1-1)泡立ち、味、及び使用感
被験者(n=5)に、各口腔内用組成物(実施例1、比較例1〜4)20mLを口中に含み、約10秒間ガラガラうがいをしてもらい、口腔内での泡立ち、味、及び使用感を下記の5段階の規準に従って評価してもらった。
【0031】
評価基準:よい(5点)、ややよい(4点)、どちらでもない(3点)、やや悪い(2点)、悪い(1点)。
【0032】
なお、「泡立ち」は、口腔内で速やかに泡立ち、泡が適度に口腔内全体に広がる場合に「よい」という側に評価し、泡立ちが悪いかまたは口腔内からあふれ出すほど泡立ちすぎる場合を「悪い」という側に評価した。また「味」は、苦味や刺激感、油っぽさなどの不快味がない場合を「よい」という側に評価し、苦味や刺激感、油っぽさなどの不快味がある場合を「悪い」という側に評価した。さらに「使用感」は、うがい中に泡立ちによる不快感がなく、またうがい後にすっきりとした洗口感(清涼感、爽快感)が得られる場合を「よい」という側に評価し、うがい中に泡立ちによる不快感があるか、または/及びうがい後にすっきり感がなく不快な感覚が残る場合を「悪い」という側に評価した。
【0033】
判定方法(判定基準)
各口腔内用組成物(実施例1、比較例1〜4)についての被験者5名の評価点を合算し、その総数から、下記の規準に従って泡立ち、味、及び使用感を評価した。
◎:20より上25以下
○:15より上20以下
△:10より上15以下
×:10未満。
【0034】
(1-2)殺菌力試験
被験者について、予め口腔内の上顎部分に付着した菌を綿棒で掻き取り採取した後、口腔内用組成物(実施例1、比較例1〜4)20mLを口中に含み、約10秒間ガラガラうがいをしてもらった。うがい後、再び口腔内の上顎部分に付着した菌を綿棒で掻き取り採取した。うがい前後で採取した菌を、それぞれPBSで希釈後、固形培地(羊血液寒天培地、X-SA培地)に播種して、35℃で22〜40時間の所定時間培養した。次いで、感染性疾患に関与する菌(肺炎球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌)の細菌数(総数)を計測し、うがい前後の細菌数から、うがいによる細菌数の減少率を求め、各口腔内用組成物の殺菌力を下記の判定規準に従って評価した。
【0035】
判定基準
○:菌の減少率70%以上
×:菌の減少率70%未満。
【0036】
(2)試験結果
結果を、口腔内用組成物(実施例1、比較例1〜4)の処方とともに表1に記載する。
【0037】
【表1】

【0038】
この結果から、第四級アンモニウム塩、非イオン性界面活性剤、及びメントール類を所定量含有する口腔内用組成物(実施例1)は、泡立ち、味、使用感、及び殺菌力のすべての項目について極めて良好な結果が得られた。これに対して、第四級アンモニウム塩を含有しない口腔内用組成物(比較例1)は、殺菌力は勿論、泡立ちが不良であること;非イオン性界面活性剤を含有しない口腔内用組成物(比較例2)は、泡立ちが不良であるとともに、味や使用感にも悪影響が生じること、またこの場合、第四級アンモニウム塩の配合量を増量した場合でも、泡立ちは改善するものの、依然として味や使用感は不良なままであること(比較例4);またメントール類を含有しない口腔内用組成物(比較例3)は、味及び使用感が不良であること(比較例3)が確認された。
【0039】
このことから、泡立ち、殺菌力及び使用感、さらに好ましくは味において、本発明の効果を奏するためには、第四級アンモニウム塩、非イオン性界面活性剤、及びメントール類の3成分が必要であると判断された。
【0040】
試験例2
表2に示すように、第四級アンモニウム塩、非イオン性界面活性剤、及びメントール類の各配合量をそれぞれ変えた液状の口腔内用組成物(実施例1〜6、比較例5〜12)を調製し、試験例1と同様にして、泡立ち、味、使用感、及び殺菌力を試験評価した。
【0041】
結果を表2に併せて示す。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜3及び比較例5及び6の結果から下記のことがいえる。
【0044】
比較例5の結果からわかるように、非イオン性界面活性剤の配合量が0.01%以下であると泡立ちが悪く、第四級アンモニウム塩の配合量は実施例1〜3及び比較例6と同じであるにも関わらず、充分な殺菌効果を得ることができない。また、比較例6の結果からわかるように、非イオン性界面活性剤の配合量が2%以上であると、泡立ち過ぎて、殺菌効果は充分であるものの、使用感が悪く、また味にも悪影響が生じた。これに対して、非イオン性界面活性剤の配合量が0.01%より多く2%未満、好ましくは0.05〜1%の範囲、特に0.06〜0.6%の範囲であると、泡立ちが良好であるとともに殺菌力も優れており、さらに使用感と味も良好であった(実施例1〜3)。なかでも、非イオン性界面活性剤の配合量を0.06〜0.2%の範囲に調整することで、速やかに泡立ち、泡が口腔内に万遍なく広がり、また味及び使用感にも優れた口腔内用組成物(実施例1)が調製できることが確認された。
【0045】
また実施例4〜6及び比較例8の結果から下記のことがいえる。
【0046】
比較例8の結果からわかるように、メントール類を0.1%以上配合すると泡立ちが低下する傾向が認められるとともに、味及び使用感に悪影響が生じた。これに対して、メントール類の配合量が0.0075〜0.06%の範囲であると、泡立ちが良好であるとともに殺菌力も優れており、さらに使用感と味も良好であった(実施例4〜6)。なかでも、メントール類の配合量を0.0075〜0.04%の範囲に調整することで、速やかに泡立ち、泡が口腔内に万遍なく広がり、しかも味及び使用感にも優れた口腔内用組成物(実施例4及び5)が調製できることが確認された。
【0047】
以上のことから、非イオン性界面活性剤の配合量を0.05〜1%の範囲、メントール類の配合量を0.0075〜0.06%の範囲に調整することが好ましいと考えられた。また、第四級アンモニウム塩の配合量が0.01%以上であると、味が著しく低下するとともに、泡立ちすぎ、使用感も低下することが判明した(比較例7、9及び10)。なお、比較例11及び12は、特許文献1(特開平7−25735号公報)の実施例1に記載する含嗽剤を、段落[0014]の記載に従って、それぞれ水で100倍及び50倍に希釈した口腔内用組成物であるが、表2に示すように、泡立たず、抗菌力及び使用感が不良であるとともに、味も不良であった。
【0048】
試験例3
表3に示すように、第四級アンモニウム塩として、塩化セチルピリジウム水和物、塩化ベンザルコニウム、及び塩化デカニウム;非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、及びポリソルベート60;並びにメントール類としてl−メントール及びdl−メントールを用いて、各種の液状の口腔内用組成物(実施例7〜11)を調製した。これらの口腔内用組成物についても試験例1の方法に従って、泡立ち、味、使用感、及び殺菌力を試験評価した。
【0049】
結果を表3に併せて示す。
【0050】
【表3】

【0051】
この結果から、第四級アンモニウム塩、非イオン性界面活性剤及びメントール類を、その種を問わず所定量配合することで、本発明の効果(泡立ち、味、使用感、及び殺菌力)が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第四級アンモニウム塩を0.001〜0.0075重量/容量%、非イオン性界面活性剤を0.05〜1重量/容量%、及びメントール類を0.0075〜0.06重量/容量%の割合で含有することを特徴とする口腔内用組成物。
【請求項2】
非イオン性界面活性剤の割合が0.06〜0.6重量/容量%であるか、又は/及びメントール類の割合が0.0075〜0.04重量/容量%であることを特徴とする請求項1記載の口腔内用組成物。
【請求項3】
洗口うがい剤である、請求項1または2に記載する口腔内用組成物。

【公開番号】特開2012−153670(P2012−153670A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15818(P2011−15818)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】