説明

口腔内細菌の共凝集阻害剤及びそれを配合した口腔用組成物

【課題】 歯周病及びう蝕を根本的かつ有効に予防し、その進行を阻害もしくは遅延,治療するために重要な、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することが可能な剤及びそれを配合した口腔用組成物を提供する。
【解決手段】
A.シャクヤク,ホップ,ハマメリスの中の1種以上及び/または、
B.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上及び、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上の組合せ及び/または、
C.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上とドクダミ
から成る組合せから選ばれる植物体の乾燥粉末及び/または溶媒抽出エキスからなる口腔内細菌の共凝集阻害剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な口腔内細菌の共凝集阻害剤に関する。詳細には、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集を全て阻害する共凝集阻害剤及びそれを配合した口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内には500種を超える細菌が存在し、歯面等の表面では数種の菌が凝集体(プラーク)を作って共存している。このような他菌種間の付着は共凝集と呼ばれている。この共凝集の形成を事前に阻害することは、う蝕や歯周病の予防や治療にとって重要である。プラークの形成は、まず唾液の薄膜(ペリクル)によって覆われたエナメル質表面にストレプトコッカス ゴードニィ (Streptococcus gordonii),ストレプトコッカス オラリス (Streptococcus oralis),ストレプトコッカス サングイス (Streptococcus sanguis),アクチノマイセス ナエスランディ (Actinomyces naeslundii)等の初期定着細菌が吸着することにより始まる。次いでフゾバクテリウム ヌクレアタム (Fusobacterium nucleatum)に代表されるフゾバクテリウム属細菌が共凝集し、微生物細菌叢は通性嫌気性菌から偏性嫌気生菌へと遷移していく。そして、フゾバクテリウム属細菌にポルフィロモナス ジンジバリス (Porphyromonas gingivalis)やアグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス (Aggregatibacter actinomycetemcomitans),プレボテラ インターメディア (Prevotella intermedia)等の歯周病関連細菌が共凝集し定着すると考えられている。またストレプトコッカス ゴードニィとポルフィロモナス ジンジバリスのように初期定着細菌と歯周病関連細菌が共凝集することも明らかになっている。
【0003】
共凝集は細菌同士の非特異的静電気的相互作用やレクチン・レセプター型相互作用,粘着性多糖合成による付着作用,非特異的疎水的相互作用によって引き起こされるものであり病原性細菌の歯面への定着においては特に重要な役割を果たしている。したがって、口腔内細菌の共凝集を阻害することができれば、プラークから放出される種々のう蝕,歯周病の病原因子も事前に排除することができる。
【0004】
これまでに種々の植物の溶媒抽出物が抗う蝕および抗歯周病効果を有することが知られている。例えば、シャクヤク抽出物では抗菌性やコラゲナーゼ活性阻害作用が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。ホップ抽出物にはメチオナーゼ活性阻害作用があることが知られている(例えば、特許文献2参照。)。ハマメリス抽出物,オトギリソウ抽出物では不溶性グルカン形成に対する阻害作用が知られている(例えば、特許文献3参照。)。ドクダミ抽出物,サンザシ抽出物ではプロテアーゼ活性の阻害作用が知られている(例えば、特許文献4参照。)。マロニエ抽出物はマロニエタンニンとカンゾウエキスとを含有する口腔用組成物が開示されており(例えば、特許文献5参照。)、セイヨウサンザシ抽出物ではメチオナーゼ活性阻害作用,プロテアーゼ活性の阻害作用が知られている(例えば、特許文献6参照。)。セージ抽出物ではε-ポリリジン/またはその塩とセージ抽出物からなる口腔用組成物が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。ローマカミツレ抽出物ではローマカミツレエキスを含有する生体および環境への安全性が高い歯磨き剤組成物が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。セイヨウハッカ抽出物ではトリプシン活性の阻害作用が知られている(例えば、特許文献9参照。)。
【0005】
また病原性細菌の歯面への定着の阻害方法として、特定のアミノ酸を用いて口腔内細菌の共凝集を抑制することや(例えば、特許文献10及び11参照。)、キサンタンガム,ガム・トラガカンス,グアーガム等を用いて細菌凝集を阻害すること(例えば、特許文献12参照。)、ボダイジュ,シナモン,ブドウ,チャノキ,バラ,クランベリー,カカオ,リンゴ,イチョウ,ビワおよび月見草(メマツヨイグサ)より選ばれる植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスからなる口腔内細菌の共凝集を阻害するための阻害剤が報告されている(例えば、特許文献13参照。)。
【0006】
しかしながら、歯周病及びう蝕を根本的かつ有効に予防し、その進行を阻害もしくは遅延,治療するために重要な、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することは実現していなかった。なお、歯周病やう蝕予防の目的で抗菌剤が広く使用されている。しかし抗菌剤は、細菌が単独で存在している場合は高い殺菌作用を示すが、プラークのように多数の細菌の凝集体である物質内に浸透して殺菌することは容易でなく、また死滅した細菌であっても細菌の凝集における核となる可能性があるので根本的な解決手段とはなりえない。
【特許文献1】特開平11−279039
【特許文献2】特開2003−160459
【特許文献3】特開2004−196756
【特許文献4】特開2003−335648
【特許文献5】特開平11−222419
【特許文献6】特開2002−3353
【特許文献7】特開2004−123630
【特許文献8】特開2000−128753
【特許文献9】特開2006−182732
【特許文献10】特開2005−53851
【特許文献11】特開2005−53852
【特許文献12】米国特許第7349772
【特許文献13】特開2006−199661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、歯周病及びう蝕を根本的かつ有効に予防し、その進行を阻害もしくは遅延,治療するために重要な、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することが可能な阻害剤及びそれを配合した口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者等は、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することにより歯周病およびう蝕を根本的かつ有効に予防し、その進行を阻害,遅延しうる剤を得るべく鋭意研究を重ねた結果、ある種の植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスの組み合わせがかかる作用を有することを見出して本発明を完成した。
【0009】
詳細には、
A.シャクヤク,ホップ,ハマメリスの中の1種以上は1種のみで初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害する効果を得ることが可能である。
B.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上及び、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上の組合せは、サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上が初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌の阻害を行い、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上が初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行うことで全ての共凝集を阻害する効果を得る。
C.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上とドクダミから成る組合せは、ドクダミがフゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行い、サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上が初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行うことで全ての共凝集を阻害する効果を得る。
【0010】
即ち本発明は、
A.シャクヤク,ホップ,ハマメリスの中の1種以上及び/または、
B.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上及び、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上の組合せ及び/または、
C.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上とドクダミ
から成る組合せから選ばれる植物体の乾燥粉末及び/または溶媒抽出エキスからなる口腔内細菌の共凝集阻害剤である。そして、これらの口腔内細菌の共凝集阻害剤を配合した口腔用組成物である
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る阻害剤及びそれを配合した口腔用組成物は、歯周病及びう蝕を根本的かつ有効に予防し、その進行を阻害もしくは遅延,治療するために重要な、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で用いる「歯周病関連細菌」は歯周病に関与することが知られている細菌を示しており、例えばポルフィロモナス ジンジバリス (Porphyromonas gingivalis),アグリゲイティバクター アクチノミセテムコミタンス (Aggregatibacter actinomycetemcomitans),プレボテラ インターメディア (Prevotella intermedia),エイケネラ コローデンス (Eikenella corrodens),セレノモナス スプチゲナ (Selenomonas sputigena),カンピロバクター レクタス (Campylobacter rectus),タンネレラ フォーサイセンシス (Tannerella forsythensis)等のグラム陰性菌やトレポネーマ デンティコーラ (Treponema denticola)等のスピロヘータがある。本明細書中で用いる「フゾバクテリウム属細菌」の中で,口腔内に存在するものとしては、フゾバクテリウム ヌクレアタム (Fusobacterium nucleatum),フゾバクテリウム ペリオドンティクム (Fusobacterium periodonticum)等が例示できる。
【0013】
本明細書中で用いる「初期定着細菌」は歯面を覆うペリクルに付着する細菌を示し、例えばトレプトコッカス ゴードニィ (Streptococcus gordonii),ストレプトコッカス オラリス (Streptococcus oralis),ストレプトコッカス サングイス (Streptococcus sanguis),アクチノマイセス ナエスランディ (Actinomyces naeslundii)等が知られている。
【0014】
本明細書中で用いる「植物体」とは、植物を構成するいずれの組織を示し、例えば採取した全体の植物の他、その花,花穂,果皮,果実,茎,葉,枝,枝葉,幹,樹皮,根茎,根皮,根,種子である。また、本発明の剤に用いる植物は、通常,花,花穂,果皮,果実,茎,葉,枝,枝葉,幹,樹皮,根茎,根皮,根,種子等の植物体を乾燥し粉砕した乾燥粉末の形態またはそれらを溶媒に抽出させたエキスの形態で用いることができる。溶媒抽出エキスとしては上記の植物体または乾燥粉末を、例えば水,メタノール,エタノール,n-プロパノール,ブタノール,アセトン,ピリジン,ポリエチレングリコール,プロピレングリコール,クロロホルム,酢酸エチル,ジエチルエーテル,ベンゼン,トルエン,シクロヘキサン,四塩化炭素等から選ばれる1種または2種以上の溶媒に浸漬し、1〜7日間静置したり、あるいは0℃〜200℃にて攪拌して抽出した後、ろ過して得られた液体を濃縮乾固することにより得ることができる。本発明においては、かかる植物体の乾燥粉末や溶媒抽出エキスの1種または2種以上を組み合わせて配合しても良い。
【0015】
植物体の乾燥粉末および溶媒抽出エキスとしては、シャクヤクのシャクヤクリキッド(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス シャクヤク B(一丸ファルコス株式会社)、ホップのホップリキッド(一丸ファルコス株式会社)、ハマメリスのファルコレックス ハマメリス B(一丸ファルコス株式会社)、サンザシのファルコレックス サンザシ B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス サンザシ E(一丸ファルコス株式会社)、セイヨウサンザシのファルコレックス セイヨウサンザシ B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス セイヨウサンザシ E(一丸ファルコス株式会社),エコファーム セイヨウサンザシ E(一丸ファルコス株式会社),Cosmelene of Hawthorm(日光ケミカルズ株式会社/GREENTECH S.A.)、マロニエのファルコレックス マロニエ B(一丸ファルコス株式会社),Escin/β−sitosterol Phytosome(日光ケミカルズ株式会社/Indena S.p.A.)、オトギリソウのファルコレックス オトギリソウ B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス オトギリソウ E(一丸ファルコス株式会社)、セージのファルコレックス セージ B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス セージ E(一丸ファルコス株式会社),エコファーム セージ E(一丸ファルコス株式会社)、ローマカミツレのファルコレックス ローマカミツレ B(一丸ファルコス株式会社)、セイヨウハッカのファルコレックス ペパーミント B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス ペパーミント PO(一丸ファルコス株式会社)、ドクダミのファルコレックス ドクダミ B(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス ドクダミ E(一丸ファルコス株式会社),ファルコレックス ドクダミ W(一丸ファルコス株式会社)等が市販されている。
【0016】
本発明に係る口腔内細菌の共凝集阻害剤は,乾燥粉末または溶媒抽出エキスをそのまま用いてもよく、溶媒抽出エキスが液体の場合は減圧乾燥,凍結乾燥等の通常の手段により濃縮、あるいは乾固して用いてもよい。また向流分配法,液体クロマトグラフィー等を用いて精製して使用しても良い。これらの植物体の乾燥粉末または溶媒抽出エキスはその産地,製法,形態,成分組成等には特に限定はされない。
【0017】
本発明の口腔内細菌の共凝集阻害剤は口腔用組成物として使用することが好ましい。口腔用組成物は上記の植物体の乾燥粉末及び/または溶媒抽出エキスの1種または2種以上を自由に組み合わせて水やアルコール類を主成分とする組成物の全量に対して乾燥重量として0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%配合することにより口腔内細菌の共凝集阻害効果を得る。口腔内細菌の共凝集阻害剤の配合量が0.01重量%よりも少ない場合は満足する効果が得られ難く、一方10重量%よりも多い場合は組成物の着色・変色の原因となる可能性があるので好ましくない。
【0018】
本発明に係る口腔用組成物は、例えば練歯磨,液体歯磨剤,マウスウォッシュ,口腔用リンス,低粘度ジェル,歯磨剤,口腔用クリーム,うがい液,軟膏剤,貼付剤,口腔用ゲル,糖衣錠等の形態で用いることが可能である。
【0019】
本発明に係る口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、可溶化剤,界面活性剤,香味剤,甘味剤,粘結剤,研磨剤,湿潤剤,pH調整剤,賦形剤,滑沢剤,懸濁剤,皮膜形成物質,矯味剤または矯臭剤,着色料,保存剤,その他ビタミン類等の医薬組成物や従来の口腔用組成物に用いられていた薬効成分等を常法に従って配合することができる。
【0020】
可溶化剤としては、例えばエタノール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等を配合することができる。この中で、特に、エタノール,プロピレングリコールが使用感の点で好ましい。可溶化剤の配合量は口腔用組成物の全量に対して0.1〜30重量%が好ましく、1〜10重量%程度が特に好ましい。0.1重量%に満たないと充分な可溶化力が得られない場合があり、30重量%を超えると使用感の点で好ましくない場合がある。
【0021】
界面活性剤としてはアニオン界面活性剤,ノニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム,ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩,ラウロイルサルコシン酸ナトリウム,ミリストイルサルコシン酸ナトリウム等のアシルサルコシン酸塩,アシルグルタミン酸塩,パルミトイルグルタミン酸塩,N-メチル-N-アシルタウリン塩,N-メチル-N-アシルアラニン塩等のアシルアミノ酸塩,ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸塩,ラウリルスル酢酸塩,α−オレフィンスルホン酸塩,スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0022】
ノニオン界面活性剤としては、例えばショ糖脂肪酸エステル,マルトース脂肪酸エステル,ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル,脂肪酸アルカノールアミド類,ソルビタン脂肪酸エステル,脂肪酸モノグリセライド,脂肪酸ジエタノールアミド,ポリオキシエチレン付加モル数が8〜10であってアルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系ノニオン界面活性剤,アルキルグリコシド等が挙げられる。
【0023】
両性イオン界面活性剤としては、例えば、N-ラウリルジアミノエチルグリシン,N-ミリスチルジアミノエチルグリシン等のN-アルキルジアミノエチルグリシン,N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン,2-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム,脂肪酸アミドプロピルベタイン,N-[アルキル(1 2,1 4 )オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩,ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン,2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。これらの界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は組成物全量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0024】
香味剤としては、例えば、メントール,カルボン,アネトール,オイゲノール,サリチル酸メチル,リモネン,オシメン,n-デシルアルコール,シトロネール,α−テルピネオール,メチルアセタート,シトロネニルアセタート,メチルオイゲノール,シネオール,リナロール,エチルリナロール,チモール,スペアミント油,レモン油,オレンジ油,ローズマリー油,珪皮油,シソ油,冬緑油,丁子油,ユーカリ油,ピメント油等を配合することができる。これらの香味剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、組成物全量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度である。
【0025】
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム,アセスルファームカリウム,ステビオサイド,ネオヘスペリジルジヒドロカルコン,グリチルリチン,ペリラルチン,タウマチン,アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル,p-メトキシシンナミックアルデヒド等を配合することができる。これらの甘味剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は組成物全量に対して0.01〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%である。
【0026】
粘結剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム,カルボキシメチルヒドロキシセルロースナトリウム,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,カチオン化ヒドロキシエチルセルロース,結晶セルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム等のアルカリ金属アルギネート,アルギン酸プロピレングリコールエステル,キサンタンガム,トラガントガム,カラヤガム,アラビアガム,カラギーナン等のガム類、ポリビニルアルコール,ポリアクリル酸ナトリウム,カルボキシビニルポリマー,ポリビニルピロリドン等の合成粘結剤、シリカゲル,アルミニウムシリカゲル,ビーガム,ラポナイト等の無機粘結剤等を配合することができる。これらの粘結剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、組成物全量に対して10重量%以下である。
【0027】
研磨剤としては、例えばリン酸水素カルシウム,ピロリン酸カルシウム,炭酸カルシウム,シリカ,アルミナ,アルミノシリケート,水酸化アルミニウム,ゼオライト,カオリン等を配合することができる。これらの研磨剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は組成物全量に対して0.1〜30重量%,好ましくは1〜10重量%である。
【0028】
湿潤剤としては、例えばソルビット,グリセリン,ジグリセリン,エチレングリコール,1,3-ブチレングリコール,ポリプロピレングリコール,キシリット,マルチット,ラクチット等を配合することができる。これらの湿潤剤は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は組成物全量に対して5〜70重量%である。
【0029】
pH調整剤としては乳酸,パントテン酸,リン酸,リンゴ酸,クエン酸,およびこれらの塩等を使用することができる。
【0030】
ビタミン類としては、例えばビタミンC及びその塩,ビタミンE,ビタミンA,β−カロテン,ビタミンD群,ビタミンK群,ビタミンP等を配合することができる。
【0031】
賦形剤としてはショ糖,乳糖,デンプン,ブドウ糖,結晶性セルロース,マンニット,ソルビット,キシリトール,エリスリトール,パラチニット,パラチノース,マルチトール,トレハロース,ラクチトール,還元澱粉糖,還元イソマルトオリゴ糖,カップリングシュガー,ガムベース,アラビアガム,ゼラチン,セチルメチルセルロース,軽質無水珪酸,アルミン酸マグネシウム,メタ珪酸アルミン酸,カルシウム,炭酸水素ナトリウム,リン酸カルシウム等を配合することができる。
【0032】
滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム,タルク,硬化油等を配合することができる。懸濁剤としてはココナッツ油,オリーブ油,ゴマ油,落花生油,パセリ油,パセリ種子オイル,乳酸カルシウム,紅花油,大豆リン脂質等を配合することができる。
【0033】
皮膜形成物質としては、例えば酢酸フタル酸セルロースの炭水化物誘導体,アクリル酸,アクリル酸メチル等のアクリル系共重合体、メタアクリル酸,メタアクリル酸メチル等のメタアクリル系共重合体を配合することができる。
【0034】
矯味剤または矯臭剤としては、例えばサッカリンナトリウム,アスパルテーム,ステビアエキス,グラニュー糖,粉糖,水飴,食塩,オレンジ油,水溶性カンゾウエキス,メントール,ユーカリ油等を配合することができる。
【0035】
他の薬効成分としては、例えば酢酸dl−α−トコフェロール,コハク酸トコフェロール,ニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類及び、クロルヘキシジン,塩化セチルピリジニウム,塩化ベンゼトニウム等のカチオン性殺菌剤及び、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤及び、トリクロサン,イソプロピルメチルフェノール等の非イオン性殺菌剤及び、デキストラナーゼ,アミラーゼ,プロテアーゼ,ムタナーゼ,リゾチーム,溶菌酵素等の酵素及び、モノフルオロリン酸ナトリウム,モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート及び、フッ化ナトリウム,フッ化第一スズ等のフッ化物及び、トラネキサム酸,イプシロンアミノカプロン酸,アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン,ジヒドロコレステロール,グリチルリチン塩類,グリチルレチン酸,グリセロフォスフェート,クロロフィル,塩化ナトリウム,カロペプタイド,水溶性無機リン酸化合物等を配合することができる。これらの成分は1種または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【実施例】
【0036】
<試料>
シャクヤク ファルコレックス シャクヤク B (一丸ファルコス株式会社)
ホップ ホップリキッド (一丸ファルコス株式会社)
ハマメリス ファルコレックス ハマメリス B (一丸ファルコス株式会社)
ドクダミ ファルコレックス ドクダミ B (一丸ファルコス株式会社)
サンザシ ファルコレックス サンザシ B (一丸ファルコス株式会社)
セイヨウサンザシ ファルコレックス セイヨウサンザシ B (一丸ファルコス株式会社)
マロニエ ファルコレックス マロニエ B (一丸ファルコス株式会社)
セージ ファルコレックス セージ B (一丸ファルコス株式会社)
ローマカミツレ ファルコレックス ローマカミツレ B (一丸ファルコス株式会社)
セイヨウハッカ ファルコレックス ペパーミント B (一丸ファルコス株式会社)
アルニカ ファルコレックス アルニカ (一丸ファルコス株式会社)
オウゴン オウゴンリキッド (一丸ファルコス株式会社)
スイカズラ ファルコレックス スイカズラ SE (一丸ファルコス株式会社)
ウコン ファルコレックス ウコン B (一丸ファルコス株式会社)
キューカンバー ファルコレックス キューカンバー G (一丸ファルコス株式会社)
ニンジン ファルコレックス ニンジン B (一丸ファルコス株式会社)
オランダカラシ ファルコレックス オランダカラシ B (一丸ファルコス株式会社)
ゴボウ ファルコレックス ゴボウ B (一丸ファルコス株式会社)
オドリコソウ ファルコレックス オドリコソウ B (一丸ファルコス株式会社)
トウキンセンカ ファルコレックス トウキンセンカ (一丸ファルコス株式会社)

これらの各供試試料をイオン交換水に希釈して、試験液とした。
【0037】
<供試菌>
初期定着細菌として、ストレプトコッカス ゴードニィ ATCC35105 (Streptococcus gordonii ATCC35105,Sg)を用いた。
フゾバクテリウム属細菌として、フゾバクテリウム ヌクレアタム ATCC25586 (Fusobacterium nucleatum ATCC25586,Fn)を用いた。
歯周病関連細菌として、ポルフィロモナス ジンジバリス ATCC33277 (Porphyromonas gingivaliss ATCC33277,Pg)を用いた。
【0038】
Sg,Fn,およびPgをトリプチケース・ソイ・ブロス[ビタミンK3 (0.5mg/L),ヘミン (5mg/L)添加]培地に植菌し、37℃,10% CO2,10% H2,80% N2の条件下で対数増殖期から定常期まで培養した。それぞれの培養液を遠心分離(12,000rpm,15分,4℃)し、菌体を得た。これらの菌体に共凝集バッファー[トリスヒドロキシメチルアミノメタン (1m mol/L),塩化カルシウム (0.1m mol/L),塩化マグネシウム (0.1m mol/L),塩化ナトリウム (0.15mol/L),アジ化ナトリウム (0.02%),ppH8]を添加し、遠心分離(12,000rpm,15分,4℃)し、菌体を洗浄した。その後、菌体に共凝集バッファーを添加し、OD660nmで1.0に調製したものを菌体懸濁液とした。
【0039】
<共凝集阻害活性の測定法>
共凝集とは異なる2種以上の細菌を組み合わせることにより得られる凝集物である。実験において、PgおよびFn,FnおよびSg,PgおよびSgの3通りの組み合わせで共凝集を誘導した。96プレートに試験液10μL,2種の菌体懸濁液50μLずつを添加した。その後マイクロプレートリーダー(モレキュラーデバイス社製)を用い、40秒間隔で30分間吸光度(OD660nm)を測定し吸光度の変化率Vmax(mOD/min)を計算した。試験液を用いた場合に得られた値をVmax−test,試験液の代わりにイオン交換水を用いた場合に得られた値をVmax−controlとして共凝集抑制率を次の式で算出した。
【0040】
共凝集抑制率(%)=100−(Vmax−test)/(Vmax−control)×100
【0041】
濃度1重量%で試験した際の共凝集抑制率を表1に示す。共凝集抑制率が50%以上となった場合に共凝集抑制効果がある(○)と判定し、50%未満を共凝集効果が無い(×)と判定した。
【0042】
<表1>

【0043】
表1から明らかなように、
A.シャクヤク,ホップ,ハマメリスの中の1種以上は1種のみで初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害する効果がある。
B.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上及び、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上の組合せは、サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上が初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌の阻害を行い、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上が初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行うことで全ての共凝集を阻害する効果がある。
C.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上とドクダミから成る組合せは、ドクダミがフゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行い、サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上が初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌の共凝集の阻害を行うことで全ての共凝集を阻害する効果がある。
【0044】
一方、表1中のアルニカからトウキンセンカの植物体の抽出エキスには初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌のいずれかの組み合わせの共凝集を阻害する効果が認められなかった。
【0045】
次に、初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の共凝集の全てを阻害することが可能な口腔用組成物を作製した。
【0046】
実施例1 <マウスウォッシュ>
以下の処方によりマウスウォッシュを製造した。


【0047】
得られたマウスウォッシュについて、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。
【0048】
実施例2 <液体歯磨剤>
以下の処方により液体歯磨剤を製造した。


【0049】
得られた液体歯磨剤について、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。
【0050】
実施例3 <低粘度ジェル>
以下の処方により低粘度ジェルを製造した。


【0051】
得られた低粘度ジェルについて、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。
【0052】
実施例4 <歯磨剤>
以下の処方により,歯磨剤を製造した。

【0053】
得られた歯磨剤について、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。
【0054】
実施例5<練歯磨>
以下の処方により練歯磨を製造した。


【0055】
得られた練歯磨について、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。
【0056】
実施例6<口腔用ゲル>
以下の処方により口腔用ゲルを製造した。


【0057】
得られた口腔用ゲルについて、上記の共凝集評価試験法で評価した。初期定着細菌とフゾバクテリウム属細菌,フゾバクテリウム属細菌と歯周病関連細菌,初期定着細菌と歯周病関連細菌の全ての組み合わせについて優れた共凝集阻害効果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.シャクヤク,ホップ,ハマメリスの中の1種以上及び/または、
B.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニエの中の1種以上及び、セージ,ローマカミツレ,セイヨウハッカの中の1種以上の組合せ及び/または、
C.サンザシ,セイヨウサンザシ,マロニの中の1種以上とドクダミ
から成る組合せから選ばれる植物体の乾燥粉末及び/または溶媒抽出エキスからなる口腔内細菌の共凝集阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載された口腔内細菌の共凝集阻害剤を配合した口腔用組成物。

【公開番号】特開2011−63556(P2011−63556A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216849(P2009−216849)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】