説明

口腔環境において使用するための色変化性能を有する接着剤

【課題】口腔環境での使用に適切な接着剤を提供する。
【解決手段】接着剤は、充填剤と硬化性樹脂と硬化剤と着色剤とを含み、この組成物は、化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への組成物の露光に続いて初期色とは異なる最終色を有する。この接着剤を歯科矯正装置にプリコートすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の口部のような口腔環境での使用に適切な接着剤に関する。特に、この接着剤は鮮明な初期色を有し、これは化学放射線への露光時に最終色へと変化する性能を有する。初期色と最終色は異なるものである。
【背景技術】
【0002】
歯科矯正治療は、位置異常の歯を歯科矯正学的に正確な位置へ移動させることに関する。ブラケットとして知られる小型の歯科矯正装置は前歯、犬歯および両尖歯に連結され、アーチワイヤーがトラックを形成し、所望の位置への歯の移動が誘導される。従来、各装置を金属バンドに溶接または鑞付けし、次いでこれを所望の歯の上に置くことにより歯科矯正装置を歯に連結させていた。しかしながら、最近ではブラケットを歯の表面に直接接着することが好まれている。直接接着法は金属バンドの使用を最小限化し、従って、歯科矯正治療にしばしば関連する「金属的な口部」の外観を排除する。
【0003】
接着法の使用は典型的に他の工程の間に、ある量の接着剤をブラケット上に置く工程と、ブラケットを所望の、好ましくは前処理された歯に適用する工程と、過剰量の接着剤を除去する工程とを必要とする。従来の歯科矯正用接着剤は典型的に透明であるか、または接着剤に白色もしくは歯の色を与える顔料を含有する。ブラケットを歯の表面に接着させるのに十分であるが過剰ではない量の接着剤を使用することが望ましい。歯の上の過剰量の接着剤は最終的に、細菌蓄積の部位となる。歯科矯正治療は18から36ヶ月間継続され得るので、細菌蓄積は歯に損害を与え、そして接着剤の変色を導き、これらは両方とも非常に望ましくない。接着剤の色と歯の色に類似性がある場合、すなわち接着剤に対比的な色が不足するため、歯の表面から過剰量の接着剤を除去することは困難である。
【0004】
多くの当業者は、特に歯科矯正用途において、色が変化する接着剤の使用について探索してきた。例えばOrecTM Corporation,San Marcos,CAからは、光源による硬化時に色が変化する性能を有する歯科矯正用接着剤が市販品として入手可能である。この企業はCRYPSIS Color Change Orthodontic Bonding Adhesive(Photocure)として認識される製品を供給する。出願日現在、この接着剤は黄色の初期色を有し、容易に視覚化されて硬化前に過剰量の接着剤が除去されるものとしてOrecのウェブサイト(www.orec.com/Pg21.htm)に記載されている。この接着剤は一度硬化すると、歯と同様の色に変化する。
【0005】
特許文献1は、例えば歯科矯正用の光硬化性接着剤として有用な組成物を開示している。この組成物は、(a)フリーラジカル重合性モノマーと、(b)モノマーに溶解性であり、光化学的有効量の(i)ジアリールヨードニウム塩(「ヨードニウム塩」)、(ii)約300ナノメートルと1000ナノメートルとの間の波長範囲内で光吸収可能であり、2−メチル−4,6−ビス−(トリクロロメチル)−s−トリアジンを活性化させることが可能な増感化合物(「増感剤」)、および(iii)電子供与体化合物を含む光開始剤系とを含む。この供与体は増感剤とは異なる。さらに、供与体の酸化電位は0<Eox(供与体)≦Eox(p−ジメトキシベンゼン)であることが明示されている。この特許は非常に有用な光開始剤系を記載しているが、色変化性能を有する系または組成物を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,545,676号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
患者の歯への歯科矯正装置の適用に関して、実際の作業時間内で有効な色変化性能を示して歯科医を補助する接着剤がなお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、口腔環境で使用するのに適切な新規接着剤を提供する。この接着剤は歯科矯正用途に使用される。これは色変化性能を付与する着色剤と、任意に増感剤とを含有する。この接着剤は歯のような歯科構造とは著しく異なる鮮明な初期色(化学放射線露光前)を提供し、それにより、十分量を使用することや歯科構造領域内および領域上にそれを置くことに関して医師を補助する。有用な初期色としては、黄色に着色された接着剤と比べて、歯科構造に対してより良好な色対比を提供する傾向があるピンク色、赤色、青色、オレンジ色および緑色が挙げられる。色変化接着剤の製造法および使用法も提供される。
【0009】
簡単な概要として、本発明は、口腔環境で使用するための接着剤であって、充填剤と硬化性樹脂と硬化剤と着色剤とを含み、化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への露光後に最終色を有する接着剤に向けられている。初期色と最終色とは異なるものである。本発明の接着剤は、化学放射線露光の結果として約10より大きい色変化ΔE*を受けることが可能である。一つの発明の実施形態において、染料または染料の組合わせを使用して所望の初期色を付与することができる。
【0010】
有利には、接着剤の最終色が接着剤周囲の歯科構造に良好に調和することが好ましい。あるいは下地の歯の構造の色を透過でき、すなわち最終色は実質的に透明である。歯と同様の色調が得られるように接着剤を調合することにより、接着剤は歯の表面上に「審美的な」層を形成することができる。通常の歯の色および明度に調和する(すなわち、歯と同様な)歯科用材料は、特に、わずか近距離から見た時に歯科用材料が通常の歯の表面と識別不可能である場合、高い審美的品質を有するとしばしば考えられる。
【0011】
本発明のもう一つの有利な点は、接着剤が迅速に硬化するため使用が容易であることである。歯科矯正医のような医師は、従来の歯科用硬化光を使用してそれを容易に硬化することができる。
【0012】
本発明は、接着剤でプリコートされた歯科矯正装置であって、カプセル様容器に便利に包装された装置も提供する。プリコートされた装置は典型的に、その基部上に正確な量の接着剤を有する。プリコートされた装置は、歯科矯正医にとって重要な有利点を意味する。例えば、装置を歯の上に装着することを望む場合、装置は簡単に包装から取り出され、そして歯の表面上に直接置かれる。過剰量の接着剤を除去する必要は、仮にあるとしても少ない。
【0013】
接着剤およびプリコートされた歯科矯正装置を貯蔵するのに使用される包装部材は、ほとんど排除しないとしても、装置への可視線および近赤外線光の透過を最小限化することが好ましい。このようにして、接着剤および従って矯正装置の安定性を数年にわたる範囲の長期間、保持することができる。
【0014】
本明細書で使用される場合、次の用語は次の定義を有するように意図される。
「審美的層」は、慣例上、歯の上の目に見える位置(すなわち、臼歯の上部、切歯および犬歯の唇側表面)に存在する層を意味し、層が最も外側の層であるために目に見えるか、またはいずれかの重複層を通して見えるかのいずれかである。
【0015】
「硬化性」は、例えば、加熱して溶媒を除去するか、加熱して重合、化学的架橋、放射線誘起重合もしくは架橋を生じさせる等により硬化または凝固され得る材料の記述である。
【0016】
「光退色(性)」は、化学放射線に露光時における色の損失を意味する。
【0017】
「硬化剤」は、樹脂の硬化を開始する系を意味し、「開始剤系」の同義語として使用することができる。
【0018】
「歯科矯正装置」は、歯に接着されるように意図されるいずれかの装置を意味し、限定されないが、歯科矯正ブラケット、バッカルチューブ、リンガルボタンおよびクリートが挙げられる。この装置は接着剤を受ける基部を有し、これは金属、プラスチック、セラミックおよびそれらの組合わせから製造することができる。
「歯と同様な」色は、天然由来の歯の広範囲の色および明度を指し、例えば、しばしば歯科医師により使用される歯の色/明度基準、VitaTM−明度システム(A1からD4の範囲を包括する)を使用して定量することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この接着剤は口腔環境で使用されるため、無毒性であるべきであり、歯茎、舌および頬のような軟組織を刺激しないものでなければならない。それは鮮明な初期色を有し、それと歯との間で強い色対比を提供する。VitaTM−明度システムを使用して歯の色がB1であると評価された場合、歯の色と接着剤の初期色との間の色差が、ΔE*に換算して少なくとも40より大きいべきであり、好ましくは45より大きいく、より好ましくは50より大きく、そして最も好ましくは55より大きいべきである。
【0020】
この接着剤は、化学線光源を使用して硬化される。硬化時間は約60秒未満であり、好ましくは約45秒未満であり、そしてより好ましくは約30秒未満である。接着剤は光退色する。しかしながら、それは、通常の診察室条件下、すなわち通常の照明、約22℃〜26℃の室温、および約35%〜約65%の通常の相対湿度で歯科矯正医がそれを用いて作業している時に実質的に退色するべきではない。換言すると、接着剤は、歯科矯正医がそれを調製している時に、その初期色のほとんど全て(比色計を使用して測定した場合、少なくとも80%、好ましくは90%)を残しているべきである。典型的な作業時間は、1本の歯あたり約5〜15分の程度であり得る。プリコートされた歯科矯正装置の場合、作業時間は1本の歯あたり約5分未満である。
【0021】
接着剤の製造法および使用法、ならびにプリコートされた歯科矯正装置と同様に、各接着剤成分を以下に詳細に説明する。
【0022】
本明細書には「充填レベル」と記載され、接着剤の全重量を基準として重量%で表される充填剤の使用量は、充填剤、硬化性樹脂および他の接着剤成分の種類次第で変更される。好ましくは、接着剤の全重量を基準として、充填剤は約65重量%〜85重量%、より好ましくは約70重量%〜80重量%存在する。
【0023】
充填剤は、歯科用回復組成物等で現在使用されている充填剤のような、医療用途での使用に適切な1以上のいずれかの材料から選択されてよい。好ましくは、充填剤は超微粒子状であり、約50マイクロメートル未満の最大粒径および約10マイクロメートル未満の平均粒径を有する。充填剤は単峰性または多峰性(例えば、二峰性)粒径分布を有し得る。充填剤は無機材料であり得る。それは、硬化性樹脂に不溶性であり、任意に無機充填剤が充填された架橋有機材料でもあり得る。充填剤は、ラジオパク、ラジオルーセントまたは非ラジオパクであり得る。
【0024】
適切な有機充填剤粒子の例としては、充填されたか、または未充填の粉末状ポリカーボネート、ポリエポキシド等が挙げられる。
【0025】
適切な無機充填剤の例は、石英、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、例えば、Ce、Sb、Sn、Zr、Sr、BaおよびAlから誘導されたガラス、コロイド状シリカ、長石、ホウ珪酸ガラス、カオリン、タルク、チタニアおよび亜鉛ガラスのような天然由来または合成材料、米国特許第4,695,251号に記載のもののような低モース硬度充填剤、ならびにサブミクロンシリカ粒子(例えば、DeGussaにより販売される「Aerosil」シリーズ「OX50」、「130」、「150」および「200」シリカ、ならびにCabot Corp.により販売される「Cab−O−Sil M5」のような発熱原性シリカ)である。
【0026】
好ましい充填剤粒子は、石英、サブミクロンシリカおよび米国特許第4,503,169号に記載される種類の非ガラス質微小粒子である。IVA、VA、VIA、VIIA、VIII、IBまたはIIB群のもの、IIIB群のアルミニウム、インジウムおよびタリウム、ならびにIVB群のスズおよび亜鉛のような純粋な金属、あるいはそれらの合金から製造された粒子状金属充填剤のような金属性充填剤を使用してもよい。典型的に、銀、スズ、銅および亜鉛の混合物である従来の歯科用アマルガム合金粉末を任意に使用することができる。粒子状金属充填剤は、好ましくは約1〜100マイクロメートルの平均粒径を有し、より好ましくは約1〜50マイクロメートルの平均粒径を有する。有機および無機材料から製造された組合わせ充填剤と同様に、これらの充填剤の混合物も考えられる。未処理の、またはシラノール処理されたフルオロアルミノシリケートガラス充填剤を使用することができる。これらのガラス充填剤は、口腔環境に置かれた場合に、歯科作業部位において、フッ素を放出するという追加的利点を有する。
【0027】
充填剤と硬化性樹脂との間の結合を向上させるために、任意に、架橋剤のような表面処理により充填剤粒子の表面を処理してもよい。アクリレート、メタクリレート、エポキシド等のような反応性硬化基で架橋剤を官能化してもよい。架橋剤の例としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシ−シラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のようなシランが挙げられる。
【0028】
本発明の接着剤は、歯科構造と著しく異なる初期色を有する。着色剤の使用により、接着剤に色が付与される。好ましくは、着色剤は染料である。幾つかの実施形態において、開始剤系の成分である増感剤が接着剤に幾らかの色を提供する。しかしながら、増感剤は単独では着色剤として期待されず、すなわち、鮮明な初期色を接着剤に付与するにはそれを単独で使用しない。従って、幾つかの実施形態において、増感剤は、光活性化の提供と、接着剤への色の付与との二重の目的で有益である。
【0029】
着色剤は、全接着剤重量の約0.001重量%から約1重量%未満、好ましくは約0.01重量%〜0.1重量%を構成する。着色剤の量は、その吸光係数、人間の目の初期色を認める能力、および所望の色変化次第で変更されてよい。
【0030】
染料は顔料であってもよく、従って、適切な顔料のいずれの種類も含まれる。所望の色を達成する有効量で、着色剤を添加するべきである。保健的理由のため、食品、薬剤および化粧品グレードの染料が好ましい。最終色が初期色から識別可能となるために、本発明の接着剤の少なくとも1つの染料は反応性であるか、または光退色性である。所望の色を達成するために追加の染料を使用することができ、これは反応性または光漂白性であっても、またはなくてもよい。従って、非反応性染料は、所望の初期色を達成するために反応性染料と混合された時に、ある程度の色または明度を付与し得る。
【0031】
光漂白性染料の色形成および漂白特性は、例えば、雰囲気中の酸強度、誘電率、極性、酸素量および含水量のような多数の要因次第で変化する。しかしながら、接着剤を照射し、そして色変化を評価することにより、染料の漂白特性を容易に決定することができる。好ましくは、少なくとも1つの着色剤は硬化性樹脂に少なくとも部分的に溶解性である。
【0032】
本発明の接着剤に色を付与することができる適切な着色剤としては、例えば、メチレンブルー、アマランス、エリトロシン、フロキン、ローズベンガル、アシッドレッド、タルトラジン、サンセットイエローFCF、ファーストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン、フェノールフタレイン、スルホフタレイン、エールバイオレット、メチルオレンジ、蛍光発光、メチルビオロゲン、インドフェノール、ジムロスベタイン、ブロムエオシンY、ラウダミンB、チオニン、ニュートラルレッド、トルイジンブルーO、インドシアニングリーン、スルホブロモフタライン、ウラニン、リトールルビンB、レーキレッドC、リトールレッド、テトラクロロテトラブロム蛍光発光、ブリリアントレーキレッドR、ディープマロン、トルイジンレッド、テトラブロム蛍光発光、ファーストアシッドマゼンタ、パーマネントレッド、ジブロム蛍光発光、パーマネントオレンジ、ウラニン、キノンイエロー、WS、アリザリンシアニングリーンF、キニザリングリーンSS、ライトグリーンSFイエロー、パテントブルーNA、カルバスレンブルー、レゾルシノールブラウン、アリザリンパープルSS、ブリリアントファーストスカーレット、パーマネントレッドF5R、ポンソーSX、ファーストレッドS、オイルオレンジSS、ポラルイエロー5G、ファーストライトイエロー3G、ナフトールグリーンB、ジネアグリーンB、スーダンブルーB、アリザロールパープル、ナフトールブルーブラック、クロシン、クロシンブルー、オレンジパプリカ、クロロフィル、カルタミン、サフラワーイエロー、ビートレッド、ダイレクトファーストイエローGC、ダイレクトファーストオレンジ、ダイレクトファーストスカーレット4BS、ファーストレッド6BLL、ダイレクトスカイブルー5B、ダイレクトファーストトルコブルーGL、ダイレクトアズライト青2B、コポランチングリーンG、ダイレクトファーストブラックD、ミリングイエローO、アシッドブリリアントスカーレット3R、アシッドバイオレット5B、アザリンダイレクトブルーA2G、アシッドシアニン6B、アシッドシアニン5R、アシッドシアニングリーンG、ミリングブラウン3G、アシッドファーストブラックVLG、アシッドブラックWA、カチオンイエロー3G、カチオンゴールデンイエローGL、カチオンフラビン10G、カチオンイエロー5GL、カチオンオレンジR、カチオンブラウン3GL、カチオンピンFG、カチオンブリリアントレッド4G、カチオンレッドGTL、カチオンレッドBLH、カチオンレッド6B、カチオンレッド5B、カチオンブルーGLH、カチオンネービーブルーRHL、アリザリン、クロムファーストブルーMB、クロムファーストブラウンKE、クロムブラックP2B、クロムブラックT、ファーストスカーレットGベース、ナフトールAS、ナフトールAS−G、バットイエローGCN、バットオレンジRRTS、インジゴ、バットブルーRSN、バットブルーBC、バットブリリアントグリーンFFB、バットオリーブグリーンB、バットオリーブT、バットブラウンR、バットグレーM、分散ファーストイエローG、分散ピンクRF、分散ブルーFFR、分散ブルーグリーンB、分散イエロー5G、分散ゴールデンイエローGG、分散イエローRL、分散イエロー3G、分散オレンジB、分散イエローブラウン2R、分散ファーストルビー3B、分散ファーストレッドFB、分散レッドFL、分散レッドGFL、分散ブリリアントピンクREL、分散バイオレットHFRL、分散ブルーFB、分散トルコブルーGL、分散ネービーブルー2GL、分散顕色剤、蛍光性光沢剤WG、蛍光性光沢剤ERN、蛍光性光沢剤AT、蛍光性光沢剤SA、溶媒オレンジG、溶媒ファーストイエロー3RE、溶媒ファーストレッドB、溶媒ファーストブルーHFL、反応性イエロー3G、反応性オレンジ2R、反応性レッド3B、反応性スカーレット2G、反応性ブルー3G、反応性ブルーR、反応性ブルーBR、反応性トルコGF、反応性ブリリアントブルーR、反応性ブラックB、ファーストイエローG、ファーストイエロー10G、ジスアゾイエローAAA、ジスアゾイエローAAMX、フラバンイエロー、クロモフタルイエローGR、メチンイエローGR、メチンイエロー、サンセットイエローレーキ、アントラピリミジンイエロー、イソインドリノンイエローR、キノフタロンイエロー、ジニトロアニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、ジアニジンオレンジ、ペルシアンオレンジレーキ、ベンゾイミダゾロンオレンジHL、ペリノンオレンジ、ピラントロンオレンジ、パラレッド、ナフトールレッドFRR、トルイジンレッド、ナフトールカルミンFB、ナフトールレッドM、ナフトールレッドBS、ナフトールレッドRN、ピラゾロンレッド、パーマネントレッド2B、リトールレッド、ボンレーキレッドC、レーキレッドC、ブリリアントカルミン6B、ブリリアントカルミン3B、ボルドー10B、フォンマロンM、ブリリアントスカーレットG、ローダミン6Gレーキ、マダーレーキ、チオインジゴボルドー、ナフトールレッドFGR、ブリリアントカルミンBS、キナクリドンマゼンタ、ペリレンベルミリアン、ナフトールカルミンFBB、ペリレンレッドBL、クロモフタルスカーレット、アンスロンレッド、ナフトールレッドF5RK、エリトロシンレーキ、ジアントラキノリルレッド、ペリレンレッド、ペリレンマロン、ベンゾイミダゾロンカルミンHF4C、ペリレンスカーレット、アマランスレーキ、キナクリドンレッドE、ピラントロンレッド、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットレーキ、アリザリンマロンレーキ、キナクリドンレッド、ジオキジンドバイオレット、チオインジゴマゼンタ、ビクトリアブルーレーキ、ビクトリアブルー6Gレーキ、フタロシアニンブルー、アルカリブルーG、インダントロンブルー、ブリリアントグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、顔料グリーンB、フタロシアニングリーン6Y、ベンゾイミダゾロンブラウンHFR、アニリンブラック、ジアリリドイエローH10G、ジアリリドイエローHR、カルバゾールバイオレット、メタクレゾールパープル、ブロモフェノールブルー、クリスタルバイオレット、ゲンチアナバイオレット、ブロモクレゾールグリーン、ブロモチモールブルー等が挙げられる。
【0033】
特に好ましい染料としては、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセインおよびそれらの組合わせが挙げられる。本発明の接着剤の色は、付加的に、増感化合物により付与されてもよい。
【0034】
本発明の接着剤の色変化は光により開始される。好ましくは、接着剤の色変化は化学線放射を使用して、例えば十分な時間量で可視線または近赤外線(IR)光を放射する歯科用硬化光を使用して開始させる。本発明の組成物の色変化を開始する機構は、樹脂を硬化する硬化機構と別々であってよく、または実質的に同時であってもよい。従って、例えば化学的に(酸化還元)または熱的に重合が開始した時に接着剤が硬化し、化学放射線への露光時の硬化プロセスに続いて、初期色から最終色への色変化が起こり得る。
【0035】
初期色から最終色への接着剤の色変化は、好ましくは以下に記載される色試験により定量される。色試験を使用して、3次元色空間における総色変化を示すΔE*を決定する。通常の照明条件下において、人間の目では約3ΔE*単位の色変化を検出することができる。本発明の歯科用組成物は、好ましくは約20より大きい色変化ΔE*を有することが可能であり、より好ましくはΔE*は約30より大きく、最もΔE*は約40より大きい。
【0036】
本発明の歯科矯正接着剤は硬化性樹脂を含む。接着剤は、約10%〜40%、好ましくは15%〜35%、より好ましくは20%〜30%の硬化性樹脂を含む。硬化剤が存在する樹脂を硬化することが可能であり、例えばアクリレート樹脂、メタクリレート樹脂またはそれらの混合物のような網目状ポリマーを形成する。好ましくは、1以上のマトリックス形成オリゴマー、モノマーまたはポリマー、もしくはそれらのブレンドから硬化性樹脂を製造する。
【0037】
硬化性樹脂は、口腔環境で使用するのに適切であるべきであり、すなわち無毒性であるべきである。好ましくは、十分な強度および加水分解安定性を有する有機樹脂から樹脂を製造する。
【0038】
適切な樹脂の例としては、アクリレート、メタクリレート、ウレタンおよびカルバモイルイソシアヌレート樹脂、例えば、米国特許第3,066,112号、第3,539,533号、第3,629,187号、第3,709,866号、第3,751,399号、第3,766,132号、第3,860,556号、第4,002,669号、第4,115,346号、第4,259,117号、第4,292,029号、第4,308,190号、第4,327,014号、第4,379,695号、第4,387,240号および第4,404,150号に示されるもの、ならびにそれらの混合物および誘導体が挙げられる。
【0039】
好ましい硬化性樹脂の一種は、フリーラジカル活性官能基を有する材料であり、1以上のエチレン系不飽和基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマーが挙げられる。あるいは、硬化性樹脂は、カチオン系活性官能基を含む樹脂の種類からの材料であり得る。あるいは、カチオン系硬化性およびフリーラジカル硬化性基の両方を含む硬化性樹脂の混合物が使用されてもよい。
【0040】
フリーラジカル活性官能基を有する硬化性樹脂の種類では、本発明で使用するのに適切な材料は少なくとも1つのエチレン系不飽和結合を含有し、そして付加重合を受けることができる。かかるフリーラジカル重合性材料としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス−フェノールA(「Bis−GMA」)、ビス[1−(2−アクリルオキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタンおよびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートのジグリシジルメタクリレート、分子量200〜500のポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびビス−メタクリレート、米国特許第4,652,274号のもののようなアクリル化モノマーの共重合性混合物ならびに米国特許第4,642,126号のもののようなアクリル化オリゴマーのようなモノ−、ジ−またはポリ−アクリレートおよびメタクリレート、ならびにスチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペートおよびジビニルフタレートのようなビニル化合物が挙げられる。所望であれば、これらのフリーラジカル重合性材料の2つ以上の混合物を使用することができる。
【0041】
フリーラジカル重合(硬化)に関して、放射、熱または酸化還元/自動硬化化学反応を介して重合を開始する系から開始系または硬化剤を選択することができる。フリーラジカル活性官能基の重合を開始することができる開始剤の種類としては、フリーラジカル発生光開始剤が挙げられ、これは任意に光増感剤または促進剤と組み合わされる。かかる開始剤は典型的に、200nmと1200nmとの間の波長を有する光エネルギーに露光される付加重合に関して、フリーラジカルを発生することができる。
【0042】
本発明で有用なフリーラジカル重合性材料の光重合に、様々な可視線または近IR光開始剤系を使用してよい。例えばフリーラジカル重合(硬化)において、米国特許第4,071,424号に記載されるようなアミンとα−ジケトンとの二成分系を介して重合を開始する系から光開始系を選択することができる。あるいは、そして好ましくは、米国特許第5,545,676号に記載されるような三成分または三元光開始剤系と樹脂とを組み合わせることができる。好ましい開始剤系は、増感剤(これは色を付与しても、またはしなくてもよい)と電子供与体とを含む。任意に開始剤系はさらにオニウム塩を含んでもよく、従って開始剤系は三元系となる。
【0043】
光開始剤系の三成分は本発明の組成物中に「光化学的有効量」で存在し、すなわち、各成分は、所望の波長の光に露光した時にモノマーに光化学的ゲル化または硬化を受けさせるのに十分な量で存在する。
【0044】
三元光開始剤系において、第一成分はヨードニウム塩、例えばジアリールヨードニウム塩である。ヨードニウム塩は好ましくはモノマーに溶解性であり、増感剤および供与体の存在下で溶解された時に保存安定性(すなわち、自発的に重合を促進しない)である。従って、特定のヨードニウム塩の選択は、選択された特定のモノマー、ポリマーまたはオリゴマー、増感剤および供与体にある程度まで依存する。適切なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、第3,741,769号、第3,808,006号、第4,250,053号および第4,394,403号に記載されている。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl-、Br-、I-またはC45SO3-のようなアニオンを含有するもの)、あるいは金属錯体塩(例えば、SbF5OH-またはAsF6-を含有するもの)であり得る。所望であれば、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。好ましいヨードニウム塩としては、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートおよびジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレートのようなジフェニルヨードニウム塩が挙げられる。
【0045】
三元光開始剤系の第二成分は増感剤である。好ましくは、増感剤はモノマーに溶解性であり、400ナノメートルより大きく約1200ナノメートルまで、より好ましくは400ナノメートルより大きく約700ナノメートルまで、そして最も好ましくは400ナノメートルより大きく約600ナノメートルまでの波長範囲内で光吸収可能である。増感剤は、米国特許第3,729,313号に記載の試験手順を使用して、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジンを活性化することも可能である。また好ましくは、この試験を合格することに加えて、保存安定性についての考慮もある程度基準にして、増感剤は選択される。従って、特定の増感剤の選択は、選択された特定のモノマー、ポリマーまたはオリゴマー、ヨードニウム塩および供与体にある程度まで依存する。
【0046】
また増感剤は、染料または顔料着色剤により付与された色に加えて、光脱色可能な色を付与する。例えば、カンファキノンは本発明の材料に黄色を付与することができ、そしてローズベンガルは材料に赤みがかった色を付与することができる。
【0047】
適切な増感剤としては、次の分類の化合物、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、フルオロンアクリジン系染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料およびピリジニウム染料を挙げることができる。キサンテン染料としては、分子構造がキサンテンに関連しており、45000〜45999の範囲に及ぶ色指数を有する染料が挙げられる。好ましい増感剤は、ケトン(例えば、モノケトンまたはα−ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトンおよびp−置換アミノスチリルケトン化合物である。高い感応性を必要とする用途に関しては、ジュロリジニル部分を含有する増感剤を使用することが好ましい。深部硬化(例えば、高充填複合材料の硬化)を必要とする用途に関しては、光重合のための所望の照射波長で約1000より低い、より好ましくは約100より低い吸光係数を有する増感剤を使用することが好ましい。あるいは、照射時に励起波長において、光吸収または光退色の低下を示す染料を使用することができる。
【0048】
例えば、好ましい種類のケトン増感剤は、次式:
ACO(X)b
〔式中、XはCOまたはCR56であり、R5およびR6は同一または異なり得、そして水素、アルキル、アルカリールもしくはアラルキルであり得、bは0または1であり、そしてAおよびBは同一または異なり得、そして置換(1以上の非干渉置換基を有する)または非置換アリール、アルキル、アルカリールまたはアラルキル基であり得るか、あるいはAおよびBは一緒になって環式構造を形成し得、これは置換または非置換脂環式、芳香族、ヘテロ芳香族または縮合芳香族環であり得る。〕を有する。
【0049】
上記式の適切なケトンとしては、2,2−、4,4−もしくは2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−チオフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーのケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロチオキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−もしくは2−アセトナフトン、9−アセチルアントラセン、2−、3−もしくは9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−もしくは4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン等のようなモノケトン(b=0)が挙げられる。適切なジケトンとしては、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−およびp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−および1,8−ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−および9,10−ジアセチルアントラセン等のようなアラルキルジケトンが挙げられる。適切なα−ジケトン(b=0およびX=CO)としては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−、3,3’−および4,4’−ジヒドロキシベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノン等が挙げられる。
【0050】
三元開始剤系の第三成分は供与体(ドナー)である。好ましい供与体としては、例えば、アミン(アミノアルデヒドおよびアミノシランが挙げられる)、アミド(リンアミドが挙げられる)、エーテル(チオエーテルが挙げられる)、尿素(チオ尿素が挙げられる)、フェロセン、スルフィン酸およびそれらの塩、フェロシアニド塩、アスコルビン酸およびその塩、ジチオカルバミン酸およびその塩、キサンタン塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、ならびにテトラフェニルホウ酸塩が挙げられる。供与体は非置換であり得、または1以上の非干渉置換基で置換可能である。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リンまたはイオウ原子のような電子供与体原子、および電子供与体原子のα位の炭素またはケイ素原子に結合した抽出可能な水素原子を含有する。米国特許第5,545、676号に、多種多様な供与体が開示されている。
【0051】
あるいは、本発明に有用なフリーラジカル開始剤としては、欧州特許出願第173567号、米国特許第4,737,593号および英国特許第GB2,310,855号に記載されるようなアシルホスフィンオキシドの種類が挙げられる。かかるアシルホスフィンオキシドは、次の一般式、
(R92−P(=O)−C(=O)−R10
(式中、各R9は個々に、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルのようなヒドロカルビル基であり得、これはいずれもハロ−、アルキル−またはアルコキシ−基で置換可能であるか、あるいは2つのR9基が一緒になってリン原子に沿って環を形成することができ、そしてR10はヒドロカルビル基、S−、O−またはN−含有5もしくは6員環へテロ環式基、あるいは−Z−C(=O)−P(=O)−(R92基であり、Zは、2〜6の炭素原子を有するアルキレンまたはフェニレンのような二価のヒドロカルビル基を表す。)で表される。
【0052】
本発明で有用な好ましいアシルホスフィンオキシドは、R9およびR10基がフェニルまたは低級アルキル−もしくは低級アルコキシ−置換フェニルであるものである。用語「低級アルキル」および「低級アルコキシ」は、1〜4の炭素原子を有するかかる基を意味する。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NYから入手可能なIRGACURETM 819)である。
【0053】
アシルホスフィンオキシドと組み合わせて、第三アミン還元剤を使用してもよい。本発明で有用な第三アミンの実例としては、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。存在するエチレン系不飽和化合物の重量を基準にして、約0.1〜5重量%のアシルホスフィンオキシドと、存在するエチレン系不飽和化合物の重量を基準にして、約0.1〜5重量%の第三アミンのような触媒有効量で、開始剤を使用することができる。
【0054】
400nmより高く、約1200ナノメートルまでの波長で照射された時にフリーラジカル開始が可能な、市販品として入手可能なホスフィンオキシド光開始剤としては、重量で25:75のビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメトキシフェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの混合物(IRGACURETM 1700,Ciba Specialty Chemicals)、2−ベンジル−2−(N,N−ジメチルアミノ)−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(IRGACURETM 369,Ciba Specialty Chemicals)、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(IRGACURETM 784DC,Ciba Specialty Chemicals)、重量で1:1のビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの混合物(DAROCURTM 4265,Ciba Specialty Chemicals)、およびエチル−2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRINTM LR8893X,BASF Corp.,Charlotte,NC)が挙げられる。
【0055】
本発明の接着剤で使用することができる、もう一つの他のフリーラジカル開始剤系としては、ボレートアニオンおよび相補性カチオン系染料を含む、イオン系染料−対イオン錯体開始剤の種類が挙げられる。ボレート塩光開始剤は、例えば、米国特許第4,772,530号、第4,954,414号、第4,874,450号、第5,055,372号および第5,057,393号に記載されている。ボレート塩光開始剤は、光漂白性増感着色剤も使用してよい。
【0056】
これらの光開始剤で有用なボレートアニオンは、一般的に次式、
1234-
(式中、R1、R2、R3およびR4は、独立してアルキル、アリール、アルカリール、アリル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、脂環式、および飽和または不飽和へテロ環式基であり得る。)で表され得る。好ましくは、R2、R3およびR4はアリール基、より好ましくはフェニル基であり、R1はアルキル基、より好ましくは第二アルキル基である。
【0057】
カチオン系対イオンは、カチオン系染料、第四アンモニウム基、遷移金属配位錯体等であり得る。対イオンとして有用なカチオン系染料は、カチオン系メチン、ポリメチン、トリアリールメチン、インドリン、チアジン、キサンテン、オキサジンまたはアクリジン染料であり得る。特に、染料はカチオン系シアニン、カルボシアニン、ヘミシアニン、ローダミンおよびアゾメチン染料であってよい。有用なカチオン系染料の具体例としては、メチレンブルー、サフラニンOおよびマラカイトグリーンが挙げられる。対イオンとして有用な第四アンモニウム基は、トリメチルセチルアンモニウム、セチルピリジニウムおよびテトラメチルアンモニウムであり得る。他の有機親和性カチオンとしては、ピリジニウム、ホスホニウムおよびスルホニウムを挙げることができる。使用されてよい感光性遷移金属配位錯体としては、ピリジン、2,2’−ビピリジン、4,4’−ジメチル−2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、3,4,7,8−テトラメチルフェナントロリン、2,4,6−トリ(2−ピリジル−s−トリアジン)および関連配位子のような配位子を有するコバルト、ルテニウム、オスミニウム、亜鉛、鉄およびイリジウムの錯体が挙げられる。
【0058】
フリーラジカル活性官能基の重合を開始することが可能な、さらにもう一つの他の種類の開始剤としては、ペルオキシドトアミンとの組合わせのような従来の化学系開始剤系が挙げられる。これらの開始剤は、熱的酸化還元反応に依存して、しばしば「自動硬化開始剤」と称される。それらは典型的に、反応物が互いに別々に貯蔵され、次いで使用直前に組み合わせられる二部系として供給される。
【0059】
さらに他の態様において、フリーラジカル発生熱開始剤の存在下でフリーラジカル活性基の硬化または重合を開始するために、加熱または熱エネルギーを使用してもよい。例としては、例えばベンゾイルペルオキシドおよびラウリルペルオキシドのようなペルオキシド、ならびに例えば2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物が挙げられる。本発明の歯科用材料に適切な熱源の例としては、誘導型、対流型および放射型が挙げられる。熱源は、通常の条件下または高圧下で、少なくとも40℃〜150℃の温度を発生することが可能であるべきである。この手順は、口腔環境外部で生じる材料の重合を開始するのに好ましい。
【0060】
樹脂系の硬化を開始するか、またはその速度を高めるのに有効な量で、本発明の接着剤に開始剤化合物が好ましく提供される。本発明で有用な光重合性組成物は、「安全光」条件下で上記成分を単純に混合することにより調製される。この混合物を作成する時に、所望であれば適切な不活性溶媒を使用してもよい。接着剤成分と明白に反応しないいずれの溶媒も使用してよい。適切な溶媒の例としては、アセトン、ジクロロメタンおよびアセトニトリルが挙げられる。重合される液体材料を、他の重合される液体または固体材料に対する溶媒として使用してもよい。
【0061】
本発明の接着剤は、任意に、風味剤、抗微生物剤、香料、安定化剤、粘度調整剤、レオロジー調整剤、充填剤およびフッ素放出材料を含む、口腔環境での使用に適切な追加のアジュバントを含んでもよい。例えば、フッ素放出ガラスを本発明の材料に添加して、長期的なフッ素放出の利益を提供することができる。米国特許第5,332,429号に記載されるようなシラノール処理されたフルオロアルミノシリケートガラス充填剤のようなフルオロアルミノシリケートガラスが本発明に適切である。米国特許第4,871,786号に記載されるもののような有機フッ素供給源も本発明に適切である。他の適切なアジュバントとしては、蛍光発光および/または乳白光発光を付与する薬剤が挙げられる。
【0062】
最初に硬化性樹脂を硬化剤および着色剤と混合することにより接着剤を製造することができる。次いで、従来プロセスにより製造された充填剤を添加する。典型的に、混合プロセスは全体的に、可視線および赤外線光への成分の露光を最小限化する条件下で行われる。
【0063】
本発明のプリコートされた歯科矯正装置の製造方法は、米国特許第5,552,177号(Jacobsら)に記載されている。その特許は、次の工程、(a)ある量の接着剤をキャリア上に置く工程と、(b)接着剤の少なくとも一部分を周囲より低い温度まで冷却する工程と、(c)装置の基部を接着剤に接触させる工程と、(d)接着剤部分の温度を周囲より低い温度にしながら、接着剤をキャリアから開放させる工程とを含む、接着剤を歯科矯正装置の基部に適用する方法を開示している。さらに、接着剤の少なくとも一部分を冷却する工程が、接着剤の自動硬化を促進し、そして的確な量を装置上に残すように過剰量の接着剤の除去を向上させることが開示されている。この方法において、装置を患者の歯に取り付ける時に歯科医が費やす時間および労力は、あるとしても最小限である。この特許は、基材上に複数の穴を含有する有用な包装材料も開示している。この穴は、装置を保持するのに適切な大きさおよび寸法のものである。穴に適切な数の装置を詰めた後、蓋を使用して穴を覆う。適切な蓋材料としては、例えばポリエステル、金属蒸着フィルム、ホイルおよびフィルムラミネートが挙げられる。包装材料は全体的に、光、水、蒸気および酸素の透過に対する防護を提供するべきである。米国特許第5,015,180号、第5,172,809号、第5,354,199号および第5,429,299号も、接着剤がプリコートされた歯科矯正装置を開示している。
【0064】
他の有用な包装材料は、米国特許第5,762,192号(Jacobsら)、第5,538,129号(Chesterら)、第5,348,154号(Jacobsら)、第5,328,363号(Chesterら)および第5,221,202号(James)に開示されている。特に、本発明での使用に適切な包装材料の実例は、米国特許第5,772,192号の第2欄および第3欄に開示されている。この包装材料は、接着剤および接着剤でプリコートされた歯科矯正装置を室温(約22℃〜26℃)で少なくとも6ヶ月、好ましくは少なくとも12ヶ月、そして冷却温度(約35℃〜45℃)で少なくとも12ヶ月、好ましくは少なくとも18ヶ月安定に保持する。
【0065】
所望の量の接着剤を歯科矯正装置の基部に直接分配することは、もう一つの有用な方法である。シリンジ、ブラシ、または分配可能ユニットドーズデリバリー系を介する直接押し出しのように、微細な付け刃歯科用器具を使用して接着剤を分配することができる。接着剤を歯科矯正装置に置いたら、所望の歯の表面に装置を適用することができる。次いで、過剰量の接着剤(一般的に「フラッシュ」と称される)を除去する。次いで、接着剤を化学線放射に露光して、初期色から最終色へと色変化を開始することができる。色変化と同時に、組成物の硬化が起こり得る。光開始剤系を含む好ましい接着剤においては、色変化および硬化は、例えば歯科用硬化光を使用して達成できる。他の接着剤が熱的に、または酸化還元により硬化される場合、色変化は化学放射線に露光されるまで起こり得ない。
【0066】
米国特許第5,971,754号(Sondhiら)に開示されるような間接接着法で、本発明の接着剤を使用することができる。非常に簡単な要約として、この方法は次の工程を含む。最初に患者の歯列弓の型穴を取る。焼き石膏または「石」模型を使用して、この型穴から模型を作成する。石模型に分離剤の薄層を適用し、乾燥させる。それに続く歯科矯正装置の配置を補助するために、各歯の複製の唇側表面を横切って鉛筆で印を付ける。本発明の接着剤を使用して、装置を歯の複製に接着させる。接着剤と複製の歯の間との明白な色対比が過剰量のフラッシュの除去を容易にし、歯科矯正医の作業時間を最小限化する目的に一致する。間接接着法の次のプロセス工程は、特許第5,971,754号に見出され、例えば、マトリックス材料(例えば、Scheu DentalからのBioplastブランド透明プラスチックシート)を模型および装置上に置くことにより移送トレイを形成する工程、および熱を使用してマトリックス材料を軟化する工程が含まれる。
【0067】
歯の表面を調整することにより、歯科矯正装置と歯の表面との接着が向上され得る。好ましくは、接着剤を適用する前に表面にエッチングするか、またはプライミングすることができる。好ましくは、医師が本発明の材料を置くことを所望する歯の表面の位置で、エッチング組成物および/またはプライマ組成物を使用する。あるいは、またはエッチング組成物の使用に加えて、空気研磨系を使用してもよい。
【0068】
様々な方法を使用して、接着剤を光漂白させることができる。石英ハロゲンランプ、タングステン−ハロゲンランプ、水銀ランプ、プラズマアーク、発光ダイオードおよびレーザーのような紫外線または可視線光を放射する光源を使用することが便利である。
【0069】
色試験
400μmファイバー反射率プローブおよびSpectraWiz CIELAB比色計ソフトウェアを備えたStellarNet Portable Spectrometer Model EPP2000C(StellarNet,Inc.,Oldsmar,FL)を使用して、初期および最終色を決定した。
【0070】
試料を調製するために、少量の接着剤を直径1インチの金属リングの底のポリエステルライナー上に押し出す。接着剤の上に第二のライナーを置き、そして接着剤を2つのプレッキシガラスプレート間でプレスした。金属リングが厚さを0.040インチに制御する。未硬化接着剤の場合、上側のプレッキシガラスプレートを取り外す。白色反射率標準(すなわち、白色背景)の上に試料を置く。角度45°で試料上0.25インチにファイバー光学プローブを配置する。試料時間は1500ミリ秒であった。上側のポリエステルライナーを通して色測定を行う。
【0071】
2つのピレッキシガラスプレート間で保持している間に、3分間、TRIAD2000光硬化オーブン(Dentsply International,Inc.,York,PA)中で接着剤を硬化したことを除き、同一の様式で硬化試料を調製した。硬化接着剤ディスクを型から取り外し、白色反射率標準上に直接置いた。距離0.25インチおよび角度45°を維持した。
【0072】
***システムは、赤を表示する正のX軸、緑を表示する負のX軸、黄色を表示する正のY軸、青を表示する負のY軸、そして0(黒)から100(白)までの範囲であって開始点が50であるZ軸を有する3次元色空間を基準とする。ΔE*は3色次元における総色変化の算定であり、次の方程式、
ΔE*=((L1*−L2*2+(a1*−a2*2+(b1*−b2*2)の平方根で記載され、式中、下付き文字「1」は初期状態を示し、そして「2」は最終状態を示す。
【実施例】
【0073】
本発明の理解を助けるために次の実施例を提供するが、これは本発明の範囲を限定するように解釈されない。他に特記されない限り、全ての部およびパーセントは重量による。
【0074】
シラン処理された石英充填剤の調製
58.3g部の脱イオン水を1000mLビーカー中に計量する。水を約29〜33℃に予熱する。マグネチックスターラーで水を撹拌しながら、105gの石英充填剤(Coleman Quartz,Jessieville,AKから入手可能)を水に添加した。次いで、約1.7gのR−972 AEROSILシリカ(Degussa,Dublin,OHから入手可能)を石英スラリーにゆっくり添加した。1%トリフルオロ酢酸(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WIから入手可能)を使用して、スラリーのpHを約2.5と3.0との間に調整した。さらに5分間、混合を続けた。約3gの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(United Chemical Technologies,Inc.,Bristol,PAから入手可能)をスラリーに添加した。スラリーを2時間撹拌し、その後、平坦に約0.125〜0.5インチ(3.2〜12.7mm)の深さまでトレイ中に流し込んだ。トレイは予めポリエステルシートで裏張りした。スラリーを含有するトレイを12時間、約60℃で対流乾燥オーブン中に置き、乾燥ケーキを得た。乾燥サイクルの最後に、モルタルおよび乳鉢を使用して乾燥ケーキを破砕した。破砕された充填剤を8時間、約60℃で乾燥した。74マイクロメートルナイロンスクリーンを通して、破砕された充填剤をスクリーニングした。
【0075】
実施例1〜8
本発明の接着剤の様々な調合物を次のように製造した。最初に、樹脂先駆体を製造した。次いで、上記のように製造された充填剤を樹脂中に完全に混合し、接着剤を得た。次のように樹脂先駆体を製造した。ミキサーを備え、かつ光から保護された容器中に、次の表1に示される成分を装填して約100グラムの樹脂先駆体を製造した。使用された成分としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレート(BisGMA)、ビス(2−ヒドロキシエチル)ビスフェノール−A−ジメタクリレート(BisEMA、Akzo Chemicals,Inc.,Chicago,ILから入手可能なDIACRYL 101として、市販品で入手可能である)、2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、カンファキノン(CPQ)、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート(EDMAB)、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(DPIHFP)およびエリトロシンイエローブレンド(EYB、これは90重量部のエリトロシンと10重量部のエオシンYとのブレンドである)が挙げられる。表1中の数値は全て、先駆体樹脂の全重量を基準とする重量部である。
【0076】
【表1】

【0077】
接着剤が75重量部の充填剤および25重量部の先駆体樹脂を含有するように、充填剤を先駆体樹脂に添加した。各試料に上記色試験を受けさせ、その結果を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
表2に示されるように、全ての試料は、初期の未硬化状態から最終光退色状態までは45より大きい色変化ΔE*を有し、従って本発明に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔環境において使用するための接着剤であって、少なくとも1つの充填剤と、少なくとも1つの硬化性樹脂と、少なくとも1つの硬化剤と、少なくとも1つの着色剤とを含み、化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への露光に続いて最終色を有し、前記初期色が前記最終色とは異なる接着剤。
【請求項2】
接着剤の総重量を基準として、
(a)約70〜80部の充填剤と、
(b)約20〜30部の硬化性樹脂と、
(c)約0.01〜1部の硬化剤と、
(d)約0.01〜1部の着色剤と
を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
前記充填剤が石英とヒュームドシリカとを含み、前記硬化性樹脂がビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートと、ビス(2−ヒドロキシエチル)ビスフェノール−A−ジメタクリレートとを含み、前記硬化剤がカンファキノンと、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートと、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートとを含み、そして前記着色剤がエリトロシンイエローブレンドを含む、請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
前記初期色から前記最終色への色変化が約30より大きいΔE*値を有する、請求項1に記載の接着剤。
【請求項5】
初期色と、VitaTM明度B1の歯の色との間の色差がΔE*に換算して40より大きい、請求項1に記載の接着剤。
【請求項6】
前記着色剤が少なくとも1つの光脱色性染料である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項7】
前記硬化剤が増感化合物と、電子供与体と、ヨードニウム塩とを含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項8】
前記着色剤が、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセインおよびそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項9】
前記硬化性樹脂が無毒性であり、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌレートおよびそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の接着剤。
【請求項10】
前記最終色が歯と同様であるか、または下地表面の色を透過させることができる、請求項1に記載の接着剤。
【請求項11】
(a)歯に接着させるための基部を有する歯科矯正装置と、
(b)前記装置の基部上の接着剤であって、少なくとも1つの充填剤と、少なくとも1つの硬化性樹脂と、少なくとも1つの硬化剤と、少なくとも1つの着色剤とを含み、化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への露光に続いて最終色を有し、前記初期色が前記最終色とは異なる接着剤と
を含む物品。
【請求項12】
前記接着剤が、接着剤の総重量を基準として、
(a)約70〜80部の充填剤と、
(b)約20〜30部の硬化性樹脂と、
(c)約0.01〜1部の硬化剤と、
(d)約0.01〜1部の着色剤と
を含む、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記充填剤が石英とヒュームドシリカとを含み、前記硬化性樹脂がビスフェノールAジグリシジルエーテルジメタクリレートと、ビス(2−ヒドロキシエチル)ビスフェノール−A−ジメタクリレートとを含み、前記硬化剤がカンファキノンと、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエートと、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートとを含み、そして前記着色剤がエリトロシンイエローブレンドを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
接着剤の初期色と、VitaTM明度B1の歯の色との間の色差がΔE*に換算して40より大きい、請求項11に記載の物品。
【請求項15】
前記初期色から前記最終色への色変化が約30より大きいΔE*値を有する、請求項11に記載の物品。
【請求項16】
前記着色剤が少なくとも1つの光脱色性染料である、請求項11に記載の物品。
【請求項17】
前記硬化剤が増感化合物と、電子供与体と、ヨードニウム塩とを含む、請求項11に記載の物品。
【請求項18】
前記着色剤が、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセインおよびそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の物品。
【請求項19】
前記硬化性樹脂が無毒性であり、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌレートおよびそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の物品。
【請求項20】
前記最終色が歯と同様であるか、または下地表面の色を透過させることができる、請求項11に記載の物品。
【請求項21】
光、水蒸気および酸素の透過に対する防護を提供する容器に包装されている、請求項11に記載の物品。
【請求項22】
(a)歯に接着させるための基部を有する歯科矯正装置と、
(b)充填剤と、硬化性樹脂と、硬化剤と、着色剤とを含む接着剤であって、前記組成物が化学放射線に露光する前に初期色を有し、そして化学放射線への前記組成物の露光に続いて前記初期色とは異なる最終色を有する接着剤と、
(c)前記接着剤および装置の使用に関する説明
を含むキット。
【請求項23】
エッチング組成物をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
プライマ組成物をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
前記接着剤が前記歯科矯正装置の前期基部にプリコートされている、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
前記接着剤が、バイアル、シリンジまたは使い捨て可能なデリバリー系のような容器に貯蔵されている、請求項22に記載のキット。

【公開番号】特開2009−167207(P2009−167207A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−99295(P2009−99295)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【分割の表示】特願2002−533810(P2002−533810)の分割
【原出願日】平成13年10月4日(2001.10.4)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】