説明

口腔用組成物およびその使用

本発明は、親水相、疎水相、およびヒドロトロープを含む2相マウスウォッシュ組成物、ならびにその使用方法に関する。親水相と疎水相は分離したままであり、混合すると一時的なエマルジョンを形成する。このエマルジョンは静置後に自然に元の2相に戻り、エマルジョンを形成することはない。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 2相マウスウォッシュ(mouth wash)組成物は当技術分野で知られている。US Pat No.4,525,432は、油相と水相を含むマウスウォッシュ組成物を提供し、それらはそれらの使用直前に混合される。好ましくは、そのような組成物は本質的に洗浄剤を含まない。そこに述べられているように、口腔内での洗浄剤の使用は、歯肉後退、循環障害、露出組織の過剰ダイドレーション(hyperdydration)、浮腫、およびアレルギー反応などの有害な作用をもつ。US Pat No.6,465,521は、水相、水非混和性の油相、および一時的な水中油型エマルジョンの形成を可能にするための約0.003重量%から約2.0重量%までの陽イオン界面活性剤を含む、2相マウスリンス(mouth rinse)を提供し、その場合、エマルジョンはエマルジョン形成後、約10秒から30分までの期間内に崩壊および分離する。しかし、そのような組成物は完全には油相と水相に分離せず、30分より長時間持続する薄いエマルジョンが油相と水相の間にみられる場合があることが分かった。この薄いエマルジョンは組成物を入れた容器に付着する可能性があり、組成物をその後混合した後ですら容器に付着したままである。そのようなエマルジョンの存在は、汚染物が存在すること、使用後に連続したエマルジョン“リング”が容器に付着し続けること、あるいは組成物が完全には水相と油相に分離しないことを意味するであろうから、このエマルジョンの存在は組成物の利用者にとって魅力的でない可能性がある。
【0002】
[0002] 2相マウスウォッシュ組成物の有益性のひとつは、親水相は一般に疎水相より密度が高いので、疎水相が一般に親水相の上方にあることである。有効成分はたとえば空気に曝された際に普通は酸化により分解するので、そのような配置は親水相内にある有効成分の安定性にとって有益である。親水相の上に疎水相が分離していることにより、そのような有効成分の酸化が本質的に防止または抑制される。したがって、疎水相と親水相が完全には分離せずにたとえば組成物を静置状態に保持した後もエマルジョンが残る組成物の場合、親水相中の有効成分が酸化による分解を受ける。したがって、2つの別個の相に分離した親水相と疎水相を含み、かつこれらの相を互いに混合することにより形成されるマイクロエマルジョンを含まない口腔ケア組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】US Pat No.4,525,432
【特許文献2】US Pat No.6,465,521
【発明の概要】
【0004】
[0003] 特定のカップリング剤を2相マウスウォッシュ中に使用すると、2相マウスウォッシュを混合した際に一時的に安定であるマイクロエマルジョンが形成されることが、予想外に見いだされた。このマイクロエマルジョンは組成物の利用者が容易にみることはできず、2相のいずれかに存在する有効成分を口腔へ送達することができる。静置すると、マイクロエマルジョンはたとえば混合によるマイクロエマルジョン形成から2分以内に分離して疎水相と親水相に戻る。
【0005】
[0004] 本発明は、一部は、少なくとも2つの相、たとえば親水相および疎水相をもつマウスウォッシュに関する。親水相と疎水相は静置状態では分離したままである;しかし、振とうすると親水相中における疎水相の分散液、たとえば水中油型エマルジョンを生成する。この分散液はある用量のマウスウォッシュをたとえば利用者に投与しうるのに十分な期間は安定であり、静置すると分散液は2分以内に元の状態に戻る。
【0006】
[0005] 1態様において、本発明は組成物1.0、すなわち疎水相、親水相、およびヒドロトロープ(hydrotrope)成分を含む2相マウスウォッシュ組成物に関する。疎水相と親水相は混合した後に自然に分離し、混合した1時間後にマイクロエマルジョンを示さない。組成物の混合は容器内において手動で行なうことができ、たとえば容器を手動で最高1分間、たとえば30秒間、または10秒間、室温で振とうし、そして組成物を室温で放置して別個の相に沈降させる。
【0007】
[0006] 本発明のさらに他の組成物は、下記の組成物である:
1.1 ヒドロトロープ成分が、ポリグリコール、多価アルコール、またはその混合物を含む、組成物1.0;
1.2 ヒドロトロープ成分がジオールを含む、組成物1.0〜1.2;
1.3 ヒドロトロープ成分がトリオールを含む、前記のいずれかの組成物;
1.4 ヒドロトロープ成分がエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、キシリトール、およびその組合わせを、たとえば組成物の約1%から約70%まで、約5%から約60%まで、約10%から50%まで、約15%から約40%(重量)まで含む、前記のいずれかの組成物;
1.5 ヒドロトロープ成分が、約2:1から約1:2まで、たとえば約1:1の重量比のグリセリンとプロピレングリコールを含む、前記のいずれかの組成物;
1.6 ヒドロトロープ成分がソルビトールを含む、前記のいずれかの組成物;
1.7 疎水相が、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、および食用油、たとえばオリーブ油、トウモロコシ油、ヤシ油、大豆油、ならびにその組合わせから選択される油を含む、前記のいずれかの組成物;
1.8 親水相および/または疎水相が有効成分を含む、前記のいずれかの組成物;
1.9 疎水相および/または親水相が抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.10 疎水相がハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、前記のいずれかの組成物;
1.11 疎水相がトリクロサン(triclosan)を含む、前記のいずれかの組成物;
1.12 疎水相が精油を含む、前記のいずれかの組成物;
1.13 親水相がポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを含む、前記のいずれかの組成物;
1.14 親水相が、湿潤剤、増粘剤、粘度調節剤、およびその組合わせを含む、前記のいずれかの組成物;
1.15 着香剤および/または着色剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.16 親水相が、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン、フッ化アミン、フッ化アンモニウム、およびその組合わせから選択されるフッ化物イオン源を含む、前記のいずれかの組成物;
1.17 約50から約5000ppmまでのフッ化物イオン、たとえば約100から約1000ppmまで、約200から約500ppmまで、または約250ppmのフッ化物イオンを含む、前記のいずれかの組成物;
1.18 抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.19 下記のものから選択される抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物:ハロゲン化ジフェニルエーテル(トリクロサン)、草本エキスまたは精油(たとえばローズマリーエキス、チモール(thymol)、メントール、ユーカリプトール(eucalyptol)、サリチル酸メチル)、ビスグアニド系防腐剤(たとえばクロルヘキシジン(chlorhexidine)、アレキシジン(alexidine)またはオクテニジン(octenidine))、フェノール系防腐剤、ヘキセチジン(hexetidine)、ポビドンヨード(povidone iodine)、デルモピノール(delmopinol)、サリフルオル(salifluor)、金属イオン(たとえば亜鉛塩、たとえばクエン酸亜鉛)、サンギナリン(sanguinarine)、プロポリス(propolis)および酸素化剤(たとえば過酸化水素、緩衝化されたペルオキシホウ酸ナトリウムまたはペルオキシ炭酸ナトリウム);
1.20 トリクロサン含む、前記のいずれかの組成物;
1.21 全組成物重量の0.001〜約1%、約0.01〜約0.1%、または約0.03%(重量)の量の抗細菌剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.22 キレート化剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.23 ピロリン酸塩、たとえばピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはその組合わせを含む、前記のいずれかの組成物;
1.24 親水相が歯牙脱感作剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.25 カリウム塩、カプサイシン、オイゲノール、ストロンチウム塩、亜鉛塩、クロリド塩、またはその組合わせから選択される歯牙脱感作剤を含む、前記のいずれかの組成物;
1.26 約1容量%から約90容量%までの親水相を含む、前記のいずれかの組成物;
1.27 約5容量%から約90容量%までの疎水相を含む、前記のいずれかの組成物;
1.28 約15:85の疎水相−対−親水相の重量比をもつ、前記のいずれかの組成物;
1.29 親水相がヒドロトロープを含む、前記のいずれかの組成物;
1.30 実質的に界面活性剤を含まない、前記のいずれかの組成物;
1.31 実質的に陽イオン界面活性剤を含まない、前記のいずれかの組成物。
【0008】
[0007] 本発明は、方法2.0、すなわち口内の健康状態を改善するための方法であって、有効量の組成物1.0〜1.31のいずれかの態様の口腔用組成物をその必要がある対象の口腔に適用することを含む方法、たとえば下記のための方法をも包含する:
1.齲歯の形成を軽減または抑制する、
2.歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、
3.歯の過敏性を軽減する、
4.歯肉炎を軽減または抑制する、
5.口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、
6.歯垢の蓄積を処置および/または軽減する、
7.歯および/または口腔を清浄にする、ならびに/あるいは
8.口臭を処置および/または軽減する。
【0009】
[0008] 本発明の他の態様は当業者に認識されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0009] 本明細書中で用いるものとして、別途指示しない限り、本明細書に記載するすべての測定レベルは全組成物に対する重量%である。さらに、本明細書に引用するすべての参考文献は、それらの全体が本明細書に援用される。ただし、本発明の開示におけるいずれかの定義と引用した参考文献中の定義が矛盾する場合、本発明の開示が支配する。
【0011】
[0010] 本明細書中で用いる“安全かつ有効な量”は、口腔の組織および構造に損傷を与えることなく口腔を処置するのに十分な量、たとえば歯垢、歯肉炎および/または汚染を軽減するのに十分な量を意味する。
【0012】
[0011] 本明細書中で用いる“清浄”は、一般に標的表面上の汚染物質、汚れ、不純物、および/または異物の除去を表わす。たとえば、表面が歯のエナメル質である口腔表面に関して、清浄によりフィルムまたは汚染、たとえば歯垢バイオフィルム、ペリクルまたは歯石の少なくとも一部を除去することができる。
【0013】
[0012] 本発明の組成物は親水相および疎水相ならびにヒドロトロープ成分を含み、それらは混合されると一時的な水中油型エマルジョンを形成し、これは混合後5秒ないし1時間以内に崩壊および分離して疎水相と親水相に戻る。予想外に、親水相と疎水相の分離は完全であり、たとえば2相間にエマルジョンは存在しないと判定された。理論により拘束されるつもりはないが、ヒドロトロープ成分の高いHLBが2相の完全分離を可能にすると考えられる。
【0014】
[0013] 本発明組成物の疎水相は、口腔用として許容できるいずれかの疎水性液体、たとえば一般に安全であると認識されているものを含有することができる。そのような物質は当技術分野で既知であり、ミリスチン酸イソプロピル、流動パラフィン(鉱油)、食用油、たとえばオリーブ油、トウモロコシ油、ヤシ油、大豆油、ならびにその組合わせを含めることができる。好ましい疎水相は、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピルを含む。好ましくは、疎水相は約7から12まで、たとえば約10のHLBをもつ。
【0015】
[0014] 本発明組成物の親水相は水をベースとするもの、たとえば約40重量%から約90重量%までの水を含むものである。他の有用な物質には、口腔用として許容できるアルコール類、湿潤剤、またはポリマーを含めることができる。湿潤剤は、1態様においては純湿潤剤基準で一般にマウスウォッシュ組成物の約10%〜約50%、または他の態様においては約15%〜約25%(重量)含有される。親水相は、場合により1種類以上のポリマー、たとえばポリビニルメチルエーテル−マレイン酸コポリマー、多糖類(たとえばセルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロース、または多糖ガム、たとえばキサンタンガムもしくはカラギーナンガム)を、親水相中に含有することができる。本発明の組成物は、口腔用として許容できるポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸(PVME/MA)コポリマーを含有することができる。PVME/MAコポリマーは、約0.1%から約20%まで、たとえば約0.5%から約10%(重量)まで存在する。一般に、コポリマー中のメチルビニルエーテルと無水マレイン酸の比率は約1:4〜約4:1であり、コポリマーは約30,000〜約1,000,000、たとえば約30,000〜約500,000の平均分子量をもつ。好ましいPVME/MAコポリマーには、ISP(ニュージャージー州ウェイン)からのGANTREZ銘柄のものが含まれる。PVME/MAコポリマーは、抗細菌作用増強量で存在する場合、抗細菌作用増強剤としても作用することができる。
【0016】
[0015] ヒドロトロープは当技術分野で既知であり、疎水性化合物を水溶液に可溶化する化合物を含む。ヒドロトロープは低分子量の両親媒性化合物であり、それらは親水基をもつという点で界面活性剤に類似し、界面活性剤用語で低分子量疎水性物質と記述できるものである。親水基は、真の界面活性を付与するには短すぎる有機部分に結合していてもよい。本発明に有用なヒドロトロープは、芳香族スルホネート、芳香族ホスフェートエステル、ジおよびポリカルボキシレート、ポリグリコール、および多価アルコールを含めたアルコール類を含むことができる。本発明に有用なヒドロトロープは約7から約18までのHLB価をもつ。本発明にはいかなるヒドロトロープも使用できる(好ましくはGRAS)が、ヒドロトロープは疎水相のものに類似するHLBをもつことができ、したがって本発明組成物に有用な厳密なヒドロトロープは疎水相の組成に依存するであろう。好ましくは、このカップリング系のHLBは疎水相のHLBより大きく、たとえば疎水相のHLBより10%、15%、20%、または30%大きい。HLBを測定する方法は当業者に周知である。本発明におけるヒドロトロープ成分には、1種類以上のポリグリコールおよび/または多価アルコール、好ましくはジオールおよび/またはトリオールが含まれる。好ましくは、カップリング系はグリセリンおよびプロピレングリコールを含む。カップリング系中のグリセリンとプロピレングリコールの厳密な比率は、本発明のヒドロトロープ成分の目的とするHLBに依存するであろう。ヒドロトロープは界面活性をもたないので、水中の油相分散液は熱力学的に安定でなく、2相の混合により形成されたエマルジョンは混合直後に分離した別個の相に戻る。
【0017】
[0016] 本発明の組成物は、当技術分野で既知である1種類以上の界面活性剤を含む。適切な界面活性剤には、広いpH範囲にわたって妥当な程度に安定なもの、たとえば陰イオン、陽イオン、非イオンまたは両性イオン界面活性剤が含まれる。好ましい界面活性剤は、非イオン界面活性剤である。好ましくは、本発明組成物中の界面活性剤の量を減らして、エマルジョンの形成に際して相の混合から約2分以内に分離しない、親水相中における疎水相の分散を最小限に抑える。予想外に、界面活性剤の含量を最小限に抑えかつヒドロトロープを存在させることにより、2相の効率的な分離が可能になることが見いだされた。本発明の1態様において、口腔用組成物は界面活性剤、特に陰イオン、陽イオン、および両性イオン界面活性剤を含まないか、または実質的に含まない。非イオン界面活性剤は、限られた量で本発明に使用できる。そのような非イオン界面活性剤は、アルキレンオキシド基(親水性)と脂肪族またはアルキル芳香族いずれの性質であってもよい有機疎水性化合物との縮合により製造される化合物であると定義できる。適切な非イオン界面活性剤の例には下記のものが含まれるが、これらに限定されない;プルロニック(Pluronic)、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドおよびエチレンジアミンの反応生成物との縮合から誘導される生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖第三級アミンオキシド、長鎖第三級ホスフィンオキシド、長鎖ジアルキルスルホキシド、およびこれらの物質の混合物。本発明の組成物は、約0.0001重量%から約0.01重量%までの界面活性剤を含有することができる。
【0018】
[0017] 有効成分の疎水度に応じて、親水相および/または疎水相が有効成分を含有することができる。有効成分には、たとえばフッ化物、抗細菌活性剤、抗歯石剤、抗齲歯剤、抗炎症剤、抗過敏剤、酵素、栄養素などが含まれる。本発明に有用な有効成分は、場合により、安全かつ有効な量で本発明組成物中に存在する;これは、本発明の様式で用いた際に、その有効成分を投与するヒトまたは下等動物対象において目的とする治療効果または予防効果をもつのに十分であり、著しい有害な副作用(たとえば毒性、刺激、またはアレルギー反応)がなく、妥当なリスク/ベネフィット比に相応する量である。有効成分の具体的な安全かつ有効な量は、処置される個々の状態、対象の身体状態、併用療法(ある場合には)の性質、使用する具体的な有効成分、具体的な投与形態、使用するキャリヤー、および目的とする投与計画などの要因に応じて異なるであろう。
【0019】
[0018] フッ化物塩およびフッ化物イオン源、たとえば可溶性であってもよいフッ化物塩は当技術分野で周知であり、本発明の組成物に取り込ませることができる。代表的なフッ化物イオン源にはフッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン、フッ化アンモニウム、およびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、フッ化物イオン源にはフッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、およびその混合物が含まれる。特定の態様において、本発明の口腔ケア組成物は約50〜約5000ppmのフッ化物イオン、たとえば約100から約1000ppmまで、約200から約500ppmまで、または約250ppmのフッ化物イオンを供給するのに十分な量のフッ化物イオン源またはフッ素供給成分をも含有することができる。フッ化物イオン源は、約0.001重量%〜約10重量%、たとえば約0.003重量%から約5重量%まで、0.01重量%から約1重量%まで、または約0.05重量%のレベルで本発明の組成物に添加することができる;ただし、適切なレベルのフッ化物イオンを供給するフッ化物塩の重量がその塩中の対イオンの重量に基づいて明らかに異なることを理解すべきであり、当業者はそのような量を容易に決定することができる。好ましいフッ化物塩はフッ化ナトリウムであろう。理論により拘束されるつもりはないが、フッ化物塩および/またはフッ化物イオン源は本発明組成物の親水相内に存在する。
【0020】
[0019] 抗細菌剤を本発明の組成物中に使用することができ、それらは組成物の約0.001〜約3.0重量%の量で存在することができる。有用な他の口腔ケア化合物のリスト(限定ではない)には非イオン性抗細菌剤が含まれ、これには下記のものが含まれる:フェノール系およびビスフェノール系化合物、たとえばハロゲン化ジフェニルエーテル:トリクロサン(2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)、トリクロカルバン(triclocarban)(3,4,4−トリクロロカルボアニリド)を含む;ならびに2−フェノキシエタノール、安息香酸エステル、およびカルボアニリド、遊離塩基または塩の型の1種類以上の塩基性アミノ酸、たとえばアルギニン、ならびにその組合わせ。そのような作用剤は有効量で、たとえば選択する作用剤に応じて組成物の全重量を基準として約1重量%から約20重量%までの量で添加することができる。ハロゲン化ジフェニルエーテル、たとえばトリクロサンは、たとえば口腔用組成物の約0.3重量%まで、好ましくは約0.03重量%の量で存在することができる。
【0021】
[0020] 本発明の組成物は、1種類以上の抗過敏剤、たとえばカリウム塩、たとえば硝酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、およびシュウ酸カリウム;カプサイシン;オイゲノール;ストロンチウム塩;亜鉛塩;クロリド塩;およびその組合わせを含むことができる。それらの作用剤は、有効量で、たとえば選択した作用剤に応じて組成物の全重量を基準として約1重量%から約20重量%まで添加することができる。本発明の組成物は、歯に適用した際に象牙質細管の遮断によって過敏症を処置するために使用することもできる。
【0022】
[0021] 本発明の組成物は、当技術分野で既知の歯牙増白用または歯牙漂白用の組成物を含むこともできる。適切な増白用または漂白用の組成物は、過酸化物、金属亜塩素酸塩、ペルスルフェートを含む。過酸化物には、ヒドロペルオキシド類、過酸化水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物、有機ペルオキシ化合物、ペルオキシ酸、およびその混合物が含まれる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物には、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、およびその混合物が含まれる。他の過酸化物には、ペルボレート、過酸化尿素、およびその混合物が含まれる。適切な金属亜塩素酸塩には、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、および亜塩素酸カリウムを含めることができる。それらの作用剤は、有効量で、たとえば選択した作用剤に応じて組成物の全重量を基準として約1重量%から約20重量%まで添加することができる。
【0023】
[0022] 口腔用組成物は、場合により抗歯石組成物、たとえばUnited States Patent No.5,292,526,Gaffarらに付与、に述べられた1種類以上の抗歯石組成物を含む。多様な態様において、抗歯石組成物は1種類以上のポリホスフェートを含む。抗歯石組成物は、口腔用組成物中に有効な抗歯石量で存在する少なくとも1種類の完全または部分中和されたトリポリリン酸またはヘキサメタリン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を含有することができる。抗歯石有効成分には、抗歯石量の有効な少なくとも1種類の水溶性の直鎖分子内脱水ポリリン酸塩も含めることができる。抗歯石有効成分にはカリウム塩およびナトリウム塩の混合物も含めることができ、それらのうち少なくとも1種類は有効な抗歯石量でポリリン酸塩抗歯石剤として存在する。抗歯石有効成分には、ナトリウム塩およびカリウム塩の混合物として存在する、有効な抗歯石量の直鎖分子内脱水ポリリン酸塩である抗歯石剤も含めることができる。組成物中のカリウムとナトリウムの比率は最大で3:1未満であってもよい。ポリホスフェートは、口腔用組成物中に多様な量で存在させることができる:たとえば、ポリホスフェートイオンと抗細菌剤の重量比が0.72:1より多量から4:1未満までの範囲であり、または抗細菌性増強剤とポリホスフェートイオンの重量比が約1:6から約2.7:1までの範囲であり、または抗細菌性増強剤とポリホスフェートの重量比が約1:6から約2.7:1までの範囲である量。他の有用な抗歯石剤には、ポリカルボキシレートポリマーおよびポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸(PVM/MA)コポリマー、たとえばGANTREZ(登録商標)が含まれる。
【0024】
[0023] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により、細菌の細胞壁中にあるカルシウムを錯化することができる1種類以上のキレート化剤をも含有することができる。このカルシウムの結合は、細菌細胞壁を脆弱にし、細菌溶解を促進する。本発明に使用できる他のグループのキレート化剤は、可溶性ピロリン酸塩である。本発明組成物中に用いるピロリン酸塩は、いずれかのアルカリ金属ピロリン酸塩であってもよい。特定の態様において、塩類には四アルカリ金属ピロホスフェート、二アルカリ金属ジ酸ピロホスフェート(dialkali metal diacid pyrophosphate)、三アルカリ金属モノ酸ピロホスフェート(trialkali metal monoacid pyrophosphate)、およびその混合物が含まれ、それらにおいてアルカリ金属はナトリウムまたはカリウムである。これらの塩類は、それらの水和形および非水和形の両方が有用である。本発明組成物に有用なピロリン酸塩の有効量は、少なくとも0.1重量%、たとえば約0.5重量%から約5重量%まで、約1重量%から約3重量%まで、または約2重量%である。
【0025】
[0024] 本発明の口腔ケア組成物は、場合により1種類以上の酵素を含有することもできる。有用な酵素には、利用可能ないずれかのプロテアーゼ、グルカノヒドロラーゼ、エンドグリコシダーゼ、アミラーゼ、ムタナーゼ、リパーゼおよびムチナーゼ、またはその適合する混合物が含まれる。特定の態様において、酵素はプロテアーゼ、デキストラナーゼ、エンドグリコシダーゼおよびムタナーゼである。他の態様において、酵素はパパイン、エンドグリコシダーゼ、またはデキストラナーゼとムタナーゼの混合物である。本発明に使用するのに適切な他の酵素は、U.S.Pat.No.5,000,939,Dringらに付与;U.S.Pat.No.4,992,420;U.S.Pat.No.4,355,022;U.S.Pat.No.4,154,815;U.S.Pat.No.4,058,595;U.S.Pat.No.3,991,177;およびU.S.Pat.No.3,696,191に開示されており、これらのすべてを本明細書に援用する。本発明において、酵素、または幾つかの適合する酵素の混合物は、1態様においては約0.002%〜約2.0%、または他の態様においては約0.05%〜約1.5%、またはさらに他の態様においては約0.1%〜約0.5%を構成する。
【0026】
[0025] 口腔ケア組成物を調製する際、望ましい稠度を付与するために、または配合物の安定化もしくは性能増強のために、若干の増粘剤を添加することが必要であろう。特定の態様において、増粘剤はカルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ならびに水溶性セルロースエーテル塩、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムである。天然ガム、たとえばカラヤガム、アラビアゴム、およびトラガントゴムを含有させることもできる。本発明組成物のテキスチャーをさらに改善するために、コロイド状のケイ酸アルミニウムマグネシウムまたは微細に分割したシリカを増粘組成物の成分として使用できる。特定の態様において、全組成物の約0.05重量%〜約10重量%、たとえば約0.1%から7%まで、約0.5%から5%まで、または約1%、2%、もしくは約2%未満の量の増粘剤が用いられる。口腔用組成物中に用いる他の増粘剤には、天然および合成のガムおよびコロイド、たとえばカラギーナン(アイリッシュモス(Irish moss))、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロースが含まれる。
【0027】
[0026] 本発明の組成物は、当業者に既知である1種類以上の着香剤または着色剤をも含有することができる。本発明の実施に際して用いられる着香剤には、精油ならびに種々の芳香性アルデヒド類、エステル類、アルコール類、およびこれらに類する物質が含まれるが、これらに限定されない。精油の例には、スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン(wintergreen)、サッサフラス、チョウジ、セージ(sage)、ユーカリ、マヨラマ(marjoram)、ニッケイ、レモン、ライム、グレープフルーツ、およびオレンジの油が含まれる。メントール、カルボン(carvone)、およびアネトールなどの化学物質も有用である。特定の態様には、ペパーミントおよびスペアミントの油を用いる。着香剤は、口腔用組成物中に約0.1〜約5重量%、および約0.5〜約1.5重量%の濃度で含有される。
【0028】
[0027] 本発明は、本発明の口腔用組成物を使用して口腔表面および口腔を清浄にする方法およびプロセスを提供する。さらに、本発明の口腔用組成物は、場合により口腔状態、たとえば口内の炎症状態、歯垢および歯石を治療および抑制する。本発明の口腔用組成物は、当技術分野で既知のいずれか適切な様式で対象に適用することができる。一般に、親水相と疎水相を混和するのに十分な期間、組成物を混合または振とうする。次いで、混和した組成物を、適切なアプリケーターまたは送達デバイス、たとえばブラシ、デンタルストリップ、フィルム、注射器、または当技術分野で既知である他のいずれかのアプリケーターもしくは送達デバイスを用いて、利用者の口腔に導入する。本発明の口腔用組成物は、口内の健康状態、外観を増進および維持し、全身の健康状態を維持するなどのために、予防的な方法およびプロセスで使用できる。本発明の口腔用組成物は、汚染、歯垢、歯石(calculusまたはtartar)の形成を治療および/または抑制するために特定の処置計画に従って多数日にわたり対象に反復適用できる。処置計画を説明する指示を、商業生産して貯蔵する製品と共に市販パッケージ内に備えることができる。
【実施例】
【0029】
[0028] 本発明を、限定ではない以下の実施例によってさらに説明する。
[0029] 実施例1
[0030] 4種類のマウスウォッシュ組成物を下記の処方に従って調製する。
{使用のために好ましい非イオン界面活性剤を装入されたい}
【0030】
【表1】

【0031】
1−非イオン界面活性剤
2−陽イオン界面活性剤
3−陰イオン界面活性剤
実施例2
[0031] 実施例1の4種類のマウスウォッシュ組成物を室温において手動で30秒間振とうしてエマルジョンを形成させ、そして種々の長さの時間、静置する。組成物AおよびDには静置10秒目に相間にエマルジョンがみられず、一方、組成物B、CおよびEには1時間の静置後に相間にエマルジョンがみられるであろう。
【0032】
実施例3
[0032] 組成物C、DおよびEを1日につき30秒間で90日間、手動により振とうする。90日目の終了時に、組成物Cのペルオキシド活性は16%低下し、組成物Dのペルオキシド活性はわずか5%低下し、Eのペルオキシド活性は15%低下したことが認められるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水相;
親水相;および
ヒドロトロープ成分
を含む2相マウスウォッシュ組成物であって、相を混合した後に疎水相と親水相が自然に分離し、混合した1時間後にエマルジョンを含まない組成物。
【請求項2】
ヒドロトロープ成分が、ポリグリコール、多価アルコール、またはその混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒドロトロープ成分が、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、キシリトール、またはその組合わせを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
ヒドロトロープ成分がグリセリンおよびプロピレングリコールを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ヒドロトロープ成分がソルビトールを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
疎水相が、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、食用油、およびその組合わせから選択される油を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
有効成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ハロゲン化ジフェニルエーテル(トリクロサン)、草本エキスまたは精油(たとえばローズマリーエキス、チモール、メントール、ユーカリプトール、サリチル酸メチル)、ビスグアニド系防腐剤(たとえばクロルヘキシジン、アレキシジンまたはオクテニジン)、フェノール系防腐剤、ヘキセチジン、ポビドンヨード、デルモピノール、サリフルオル、金属イオン(たとえば亜鉛塩、たとえばクエン酸亜鉛)、サンギナリン、プロポリスおよび酸素化剤(たとえば過酸化水素、緩衝化されたペルオキシホウ酸ナトリウムまたはペルオキシ炭酸ナトリウム)から選択される抗細菌剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
ハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
トリクロサンを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
疎水相が精油を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
親水相がポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
親水相が、フッ化スズ(II)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン、フッ化アミン、フッ化アンモニウム、およびその組合わせから選択されるフッ化物イオン源を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
約50から約5000ppmまでのフッ化物イオンを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
キレート化剤を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
ピロリン酸塩を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
歯牙脱感作剤を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
約1容量%から約90容量%までの親水相を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
約15:85の疎水相−対−親水相の重量比を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
親水相がヒドロトロープ成分を含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
実質的に陽イオン界面活性剤を含まない、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
口内の健康状態を改善するための方法であって、下記のために、有効量の請求項1〜21のいずれか1項に記載の口腔用組成物をその必要がある対象の口腔に適用することを含む方法:
1.齲歯の形成を軽減または抑制する、
2.歯の脱灰を軽減または抑制し、再石灰化を促進する、
3.歯の過敏性を軽減する、
4.歯肉炎を軽減または抑制する、
5.口腔における微生物バイオフィルムの形成を抑制する、
6.歯垢の蓄積を処置および/または軽減する、
7.歯および/または口腔を清浄にする、ならびに/あるいは
8.口臭を処置および/または軽減する。

【公表番号】特表2011−526245(P2011−526245A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513747(P2011−513747)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/047383
【国際公開番号】WO2009/152507
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】