説明

口腔用組成物の製造方法

【課題】エマルションタイプの口腔用組成物を簡便なプロセスで製造でき、得られる口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性も良好な製造方法の提供。
【解決手段】(a)香料および薬効剤から選ばれる有効成分と、(b)多価アルコールと、(c)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、(d)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤と、(e)アニオン界面活性剤とを混合してなる油相を水相中に投入してエマルションとすることにより口腔用組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体歯磨剤、洗口剤、マウスウォッシュ等の液体の口腔用組成物としては、溶液タイプのものが使用されており、該口腔用組成物には通常、有効成分として殺菌剤、香料等が配合されている。また、清涼感の補助、ベタツキ改善、配合成分の溶解性向上による経時安定性の向上等の目的でエタノールが配合されている。しかしこのような口腔用組成物は、エタノールに由来する刺激や不快感の問題がある。
近年、エマルションタイプの口腔用組成物も開発されている。しかしエマルションタイプの口腔用組成物は、溶液タイプのものに比べて経時安定性が低い傾向がある。
このような問題に対し、エマルションタイプの口腔用組成物の配合成分や製造プロセスについて種々の検討がなされている。たとえば特許文献1には、エタノール由来の刺激を抑制でき、経時安定性も良好な口腔用組成物を得る方法として、油性成分を油相に含む特定組成のエマルションを別に調製し、これを、エタノールを含有する口腔用組成物に配合する方法が提案されている。また特許文献2には、外観や経時安定性の良好な口腔用組成物を得る方法として、油性有効成分を含む特定組成の油相混合液、アニオン界面活性剤水溶液をそれぞれ調製し、これらを混合する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−179231号公報
【特許文献2】特開2007−197411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1〜2に記載の方法の場合、配合工程が多いなど、製造プロセスが煩雑な問題がある。たとえば別に調製したエマルションを配合する場合、エマルションは性状(粘度)が大きくふれやすいため、粘度の規格化が難しい。また、エマルションを直接形成する場合、得られる口腔用組成物の経時安定性が充分でない場合がある。
さらに、これらの方法で得られる口腔用組成物は、使用時において口腔内への有効成分の滞留性が充分でない場合がある。特に有効成分として香料を用いる場合、滞留性が低く、香味の持続時間が短くなりやすい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、エマルションタイプの口腔用組成物を簡便なプロセスで製造でき、得られる口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性も良好な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討の結果、有効成分を含む特定の5成分を混合してなる油相を水相に投入するというシンプルな製造方法により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
上記課題を解決する本発明は以下の態様を有する。
[1](a)香料および薬効剤から選ばれる有効成分と、(b)多価アルコールと、(c)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、(d)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤と、(e)アニオン界面活性剤とを混合してなる油相を水相中に投入してエマルションとすることを特徴とする口腔用組成物の製造方法。
[2]前記油相は、前記(a)〜(e)成分を、(c)/[(b)+(d)+(e)]/(a)の値が0.01〜4.0の範囲内となる配合比率(質量比)で含有する、[1]に記載の口腔用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、エマルションタイプの口腔用組成物を簡便なプロセスで製造でき、得られる口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性も良好な製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明では、(a)香料および薬効剤から選ばれる有効成分(以下、(a)成分という。)と、(b)多価アルコール(以下、(b)成分という。)と、(c)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(以下、(c)成分という。)と、(d)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤(以下、(d)成分という。)と、(e)アニオン界面活性剤(以下、(e)成分という。)とを混合してなる油相を水相中に投入してエマルションとすることにより、口腔用組成物を得る。
具体的には、(a)〜(e)成分を混合してなる油相を調製する工程(油相調製工程)、および該油相を水相中に投入してエマルションとする工程(乳化工程)の2工程で口腔用組成物を得る。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0008】
<油相調製工程>
[(a)成分]
(a)成分は、香料および薬効剤から選ばれる有効成分である。
香料は、少なくとも1種の香料成分を含むものである。
香料としては、当該口腔用組成物に望まれる香味に応じて公知の香料および香料成分のなかから適宜選択できる。たとえばペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、シナモン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、オレンジ油、フェンネル油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油;l−メントール、l−カルボン、アネトール、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分;エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分;いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバー;等が挙げられ、いずれか単独でも2種以上を併用してもよい。
香料は必要に応じて溶剤(香料用溶剤)を含有してもよい。香料用溶剤としては特に限定されず、公知のものを使用できる。具体的には、たとえばエタノール、トリエチルシトレート、ジプロピレングリコール、ベンジルベンゾエート等が挙げられる。
【0009】
香料としては、特に、非水溶性香料が好ましい。
非水溶性香料における「非水溶性」は、常温(25℃)における水への溶解度が30%以下であることを意味する。該溶解度は、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
該溶解度は以下の方法により求められる。
まず、水と香料とをそれぞれ10g量り取り、50mL分液ロートにて混合し、2層に分離するまで静置した後、香料相と水相を取り分け、香料相の質量を測定し、混合前の香料の質量からの減少量(混合前の香料の質量−香料相の質量)を算出し、その値(香料相の質量減少量)が水に溶解した量と見なして、下記式より算出する。
溶解度=香料相の質量減少量÷香料と混合する前の水の質量×100(%)
【0010】
非水溶性香料としては、市販の香料のうち、所望の溶解度のものを用いてもよく、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に開示されている香料成分のいずれか、または複数を混合して所望の溶解度としたものを用いてもよい。
【0011】
薬効剤とは、疾患の治療、診断、予防または苦痛の軽減に有効な作用を及ぼす成分である。薬効剤としては特に限定されず、当該口腔用組成物に望まれる効果(たとえば殺菌、抗菌、抗炎症、洗浄、ビタミン供給等)に応じて、公知の薬効剤のなかから適宜選択できる。具体例として、たとえばトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール等の非カチオン性殺菌剤、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン性殺菌剤、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸等の抗炎症剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、アズレン、塩化リゾチーム、アスコルビン酸およびその誘導体等のビタミンC類、α−トコフェノールおよびその誘導体(たとえば酢酸dl−α−トコフェノール)等のビタミンE類、塩酸ピリドキシン等のビタミンB類、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン塩類、グリチルレチン酸類、ヒドロコレステロール、クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物、グルコン酸銅、カロペプタイド、ポリリン酸ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物、ポリビニルピロリドン、歯石防止剤、歯垢防止剤、硝酸カリウム、乳酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの薬効剤はいずれか単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、非カチオン性殺菌剤、カチオン性殺菌剤等の殺菌剤、抗炎症剤、酵素、ビタミンE類が好ましい。
薬効剤としては、特に、非水溶性のものが好ましい。「非水溶性」の定義は前記非水溶性香料の説明で述べたとおりである。非水溶性の薬効剤としては、非カチオン性殺菌剤、カチオン性殺菌剤等の非水溶性殺菌剤、ビタミンE類等の非水溶性ビタミン類が好ましく、非水溶性殺菌剤が特に好ましい。非水溶性殺菌剤としては、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が好ましい。
【0012】
(a)成分としては、香料および薬効剤の両方を配合してもよく、いずれか一方を配合してもよい。本発明においては、特に、滞留性の向上が顕著であり、本発明の有効性が高いことから、(a)成分として少なくとも香料を含むことが好ましい。つまり、(a)成分が、香料であるか、または香料と薬効剤の混合物であることが好ましい。
また、(a)成分としては、香料、薬効剤のいずれの場合にも、上述したように、非水溶性のものが好ましい。非水溶性のものであると、経時安定性、有効成分の滞留性に優れる。ただし本発明はこれに限定されず、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸などの抗炎症剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、リテックエンザイム等の酵素;フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム当のフッ化物;アズレン;塩化リゾチーム;アスコルビン酸等のビタミンC類;銅クロロフィリンナトリウム;タイム、オウゴン、チョウジ、ハマメリス等の植物抽出物;グルコン酸銅;カロペプタイド;ポリリン酸ナトリウム;水溶性無機リン酸化合物等の水溶性のものを用いてもよい。エマルションとした際、該油相は乳化粒子として水相中に分散するが、(a)成分が水溶性である場合でも、油相が界面活性剤(ノニオン、アニオン)成分を含むことにより(a)成分は乳化粒子中に安定に存在し、同様の効果が期待できる。
(a)成分の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、0.001〜5質量%が好ましく、0.001〜3質量%がより好ましく、0.001〜2質量%がさらに好ましい。該範囲の下限値以上であると所望の効果が充分に得られ、滞留性も良好である。一方、上限を超えて配合すると、組成物の経時安定性が低下するおそれがある。
【0013】
[(b)成分]
(b)成分は多価アルコールである。(b)成分は湿潤剤、安定剤として機能する成分であり、(b)成分を含有することにより、口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性が向上する。
「アルコール」とは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した化合物であり、「多価アルコール」とは、分子中に2個以上のヒドロキシ基をもつアルコールである。
(b)成分は、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等の重合体であってもよく、非重合体であってもよい。
重合体である場合、多価アルコールとしては、重量平均分子量(Mw)が100〜6000のものが好ましく、100〜2000のものがより好ましい。
非重合体である場合、多価アルコールとしては、2〜5価のアルコールが好ましく、2〜3価のアルコールがより好ましい。該多価アルコールは飽和、不飽和のいずれであってもよく、飽和であることが好ましい。また、該多価アルコールは直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、直鎖状であることが特に好ましい。該多価アルコールとして具体的には、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、キシリトール、マルチトール、マルトース、スクロース、フラクトース、ラクチトール、エリスリトール、パラチノース、パラチニット、グルコース、イソシトール、トレハロース等が挙げられる。
(b)成分としては、上記の中でも、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、キシリトール、マルトース、スクロース、フラクトース、ラクチトール、グルコース、PEG、PPGが好ましく、グリセリン、エチレングリコール、PEGがより好ましい。
(b)成分としては、いずれか1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(b)成分の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。該範囲内であると本発明の効果、特に経時安定性に優れる。一方、1質量%未満の場合、油相中に(c)〜(e)成分を均一に溶解させにくく、製造プロセスが煩雑になるおそれがある。逆に30質量%を超えると、(a)成分として非水溶性のものを用いた場合に、該(a)成分が分離するおそれがある。
【0014】
[(c)成分]
(c)成分は(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルである。(c)成分を含有することにより、口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性が向上する。これは、(c)成分が可溶化剤、乳化粒子の基剤として機能し、乳化粒子の安定性を向上させるためと考えられる。
(c)成分としては、グリセリンまたはポリグリセリンに高級脂肪酸がエステル結合したものが挙げられる。
ポリグリセリンとしては、平均重合度が2〜30のものが好ましく、2〜20のものが好ましい。平均重合度が該範囲内であると、本発明の効果に優れる。また、得られる口腔用組成物の風味が良好で、嗜好性が高まる。
高級脂肪酸は炭素数8以上の脂肪酸であり、該炭素数は8〜24が好ましく、8〜18がより好ましい。炭素数が該範囲内であると、本発明の効果に優れる。また、得られる口腔用組成物の風味が良好で、嗜好性が高まる。
該脂肪酸は直鎖状または分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることが特に好ましい。該脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよく、飽和であることが特に好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルの場合、グリセリンにエステル結合する脂肪酸の数は1〜3のいずれであってもよい。
【0015】
好ましい(c)成分として、下記のエステル(c1)〜(c2)等が挙げられる。
エステル(c1):グリセリンに炭素数8〜24の脂肪酸が1〜3つエステル結合したグリセリン脂肪酸エステル。
エステル(c2):平均重合度2〜30のポリグリセリンに炭素数8〜24の脂肪酸がエステル結合したポリグリセリン脂肪酸エステル。
エステル(c1)の具体例として、カプロン酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
エステル(c1)としては、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等のトリ脂肪酸グリセリルが好ましい。
エステル(c2)としては、モノエステル、ジエステルまたはトリエステルが好ましく、なかでもモノエステルが好ましい。該モノエステルとしては、たとえばヘキサグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノミリステート、デカグリセリンモノミリステート等が挙げられる。
【0016】
(c)成分としては、いずれか1種単独でも2種以上を併用してもよい。
本発明においては、(c)成分として、エステル(c1)および(c2)のいずれか一方または両方を含むことが好ましく、それら両方を含むことが特に好ましい。なかでも、トリ脂肪酸グリセリルとポリグリセリン脂肪酸モノエステルとの組み合わせが好ましい。
(c)成分の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、0.05〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.05〜5質量%がさらに好ましい。該範囲内であると本発明の効果に優れる。一方、該範囲の下限値未満の場合、エマルションが形成しにくくなり、得られる口腔用組成物の経時安定性や有効成分の滞留性も低下するおそれがある。上限値を超えて配合すると、油臭くなり、嗜好性が悪くなるおそれがある。
【0017】
[(d)成分]
(d)成分は(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤である。(d)成分を含有することにより、口腔用組成物の経時安定性および有効成分の滞留性が向上する。これは、(d)成分が、前記(c)成分とは作用の異なる可溶化剤として機能し、相乗的に乳化粒子の安定性を向上させるためと考えられる。
(d)成分としては、たとえば(c)成分に該当しない脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン型のエステル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン型のエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン(EOPO)ブロックポリマー型のノニオン界面活性剤等が挙げられる。
(c)成分に該当しない脂肪酸エステルとしては、たとえばグリセリンおよびポリグリセリン以外の多価アルコールまたは1価アルコールと脂肪酸とのエステルが挙げられる。
脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミドにおける脂肪酸としては前記(c)成分で説明した脂肪酸と同様のものが挙げられ、その炭素数は8〜24が好ましく、8〜18がより好ましい。
【0018】
(c)成分に該当しない脂肪酸エステルとして具体的には、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート等のショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、たとえばラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチル酸ジエタノールアミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
ポリオキシエチレン型のエステル系ノニオン界面活性剤としては、酸化エチレンの平均重合度が10〜100モルのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、酸化エチレンの平均重合度が10〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ポリオキシエチレン型のエーテル系ノニオン界面活性剤としては、酸化エチレンの平均重合度が6〜50モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、酸化エチレンの平均重合度が6〜50モルのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、酸化エチレンの平均重合度が6〜50モルのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
EOPOブロックポリマー型のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、得られる口腔用組成物の風味が良好で、嗜好性が高まることから、ポリオキシエチレン型のエステル系ノニオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が特に好ましい。
(d)成分としては、いずれか1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(d)成分の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、0.05〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%がさらに好ましい。該範囲内であると本発明の効果、特に経時安定性に優れる。
【0019】
[(e)成分]
(e)成分はアニオン界面活性剤である。(e)成分は洗浄成分であり、(e)成分を含有することにより口腔用組成物に要求される洗浄力が充分に得られる。また、(e)成分を含有することにより、殺菌効果も得られる。
(e)成分としては特に限定されず、従来、口腔用組成物等に配合されているものが利用できる。たとえば硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリン、アシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル・ナトリウム、アルキルリン酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩等が挙げられる。
これらの中でも、殺菌効果、発泡性等に優れることから、アシルアミノ酸塩が好ましく、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンが特に好ましい。
(e)成分としては、いずれか1種単独でも2種以上を併用してもよい。
(e)成分の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましい。該範囲内であると本発明の効果、特に経時安定性に優れる。一方、該範囲の下限値未満の場合、経時安定性が低下したり、洗浄効果や殺菌効果が充分に得られないおそれがある。上限値を超えて配合すると、経時安定性が低下するおそれがある。
【0020】
油相は、前記(a)〜(e)成分が溶融して均一な溶液となっているものである。
油相の調製方法は、前記(a)〜(e)成分を均一な溶液とすることができればよく、特に限定されない。
本発明においては、特に、(b)〜(e)成分を、該(b)〜(e)成分がすべて液体となる温度(たとえば50℃程度)に加温して混合し、冷却した後、(a)成分を添加し、均一な溶液となるまで混合する方法が好ましい。これにより、(a)成分として香料や比較的熱に弱い薬効剤を配合する場合でも、(a)成分を良好に配合できる。
各成分の混合は、公知の混合装置を用いて実施できる。混合装置としては、パドル翼、プロペラ羽根等の撹拌翼を備えた低剪断型の撹拌装置が好ましい。
(b)〜(e)成分を混合する際の温度、(a)成分添加時の温度(冷却温度)は、それぞれ、使用する(b)〜(e)成分の融点、(a)成分の安定性を考慮して適宜設定すればよい。たとえば(b)〜(e)成分を混合する際の温度は、40℃〜80℃が好ましい。冷却温度は、25℃〜40℃が好ましい。
各成分を混合した混合液が均一な溶液となったかどうかは目視にて確認できる。具体的には、該混合液の外観が相分離していなければ、均一な溶液であると判断できる。
【0021】
前記油相は、本発明の効果に優れることから、前記(a)〜(e)成分を、(c)/[(b)+(d)+(e)]/(a)の値が0.01〜4.0の範囲内となる配合比率(質量比)で含有することが好ましい。(c)/[(b)+(d)+(e)]/(a)の値は、0.03〜3.0が好ましく、0.03〜1.0がより好ましく、0.1〜1.0が特に好ましい。該範囲の下限値未満の場合、経時安定性や有効成分の滞留性が低下するおそれがある。上限値を超えて配合すると、経時安定性や有効成分の滞留性が低下するおそれがあり、また油臭くなって風味、嗜好性が悪くなるおそれがある。
【0022】
<乳化工程>
次に、前記油相を水相に投入してエマルションとする。
水相としては、水が用いられる。
水の配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、50〜98質量%が好ましく、60〜90質量%がより好ましい。該範囲内であると、得られる口腔用組成物の嗜好性や安定性が良好である。
該水相には、任意成分が溶解していてもよい。該任意成分としては、その用途(たとえば液体歯磨剤、液状歯磨剤、洗口剤、マウスウォッシュ等)に応じて適宜な成分を配合することができる。該成分としては、その用途において用いられている添加剤が利用でき、たとえば緩衝剤、アミノ酸、水溶性色素、清掃助剤、甘味料、保存剤(防腐剤)、pH調整剤等が挙げられる。
緩衝剤としては、たとえばフタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸及び炭酸並びにそれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩、リボ核酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、ホウ砂、塩酸炭酸水素塩等が挙げられる。
アミノ酸としては、たとえばグリシン、DL−アラニン、L−アラニン、L−アスパラギン酸ナトリウム、DL−セリン、L−セリン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
水溶性色素としては、たとえば青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号など、安全性の高い水溶性色素が好ましい。
清掃助剤としては、沈降性シリカ、ジルコノシリケート、アルミノシリケート、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。
甘味料としては、たとえばサッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、グリチルリチン酸ジカリウム、ネオヘスペリジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、アスパルテーム、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロキシカルコン、ペリラルラクチン、ショ糖、果糖、サクラミン酸ナトリウム等が挙げられる。
保存剤としては、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、低級脂肪酸モノグリセライド、p−ヒドロキシメチルベンゾイックアシッド、p−ヒドロキシエチルベンゾイックアシッド等が挙げられる。
pH調整剤としては、たとえばフタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸及び炭酸並びにそれらのカリウム塩、ナトリウム塩及びアンモニウム塩;リボ核酸及びその塩類;水酸化ナトリウム等が挙げられる。pH調整剤は1種又は2種以上を用いることができる。
口腔用組成物の25℃におけるpHは、一般に5〜10程度、好ましくは5〜8程度に調整される。
これらの添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。通常、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、合計で0.001〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲内となる量が用いられる。
【0023】
水相には、さらに、エタノールを配合してもよい。エタノールを配合することで、殺菌効果が得られ、清涼感も向上する。
ただし組成物の経時安定性、エタノール由来の刺激の防止等の観点から、エタノールの配合量は、口腔用組成物の全量(100質量%)に対し、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。該配合量の下限は特に限定されず、0質量%であってもよい。
【0024】
エマルションは、たとえば前記油相を水相に投入し、乳化操作を行うことで形成できる。
油相の水相への投入は、撹拌下で行うことが好ましい。該撹拌は、前述した油相の調製と同様、公知の混合装置を用いて行うことができ、低剪断型の撹拌装置が好ましい。
乳化操作は公知の乳化方法により実施できる。たとえばホモミキサーやアジホモ真空乳化機、ナウターミキサー、高圧ホモジナイザーなどの高剪断型の撹拌装置を用いて乳化することができる。これらのなかでも、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。高圧ホモジナイザーによる乳化では、剪断力の違いにより平均粒径が調整される。高圧ホモジナイザーを用いることにより、乳化粒子が微粒化し、経時安定性がさらに向上する。
高圧ホモジナイザーとして、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス インターナショナル CO製)、ゴーリンホモジナイザー(ラニーゴーリン社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)などが挙げられる。また、これらの機種に限定されず、同様な機構であればどのような機種の高圧ホモジナイザーも利用できる。
高圧ホモジナイザーを用いた乳化(高圧乳化)の際の圧力は通常30MPa以上であり、安定性の点から、30〜100MPaが好ましい。
油相の水相への投入および乳化操作は、(a)成分、特に香料の安定性の観点から、25〜40℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。
【0025】
上記のようにして、本発明の口腔用組成物を、水相中に、前記油相が乳化粒子として分散した水中油(o/w)型のエマルションとして得ることができる。
該エマルション中、乳化粒子の平均粒子径は通常50〜5000nm程度であり、50〜3000nmが好ましい。該平均粒子径は、下記測定方法により測定される値である。
平均粒子径の測定:大塚電子(株)製、光散乱光度計DLS−700を用いて、セルにエマルションを入れ、25℃での平均粒子径を測定。
なお、口腔用組成物(エマルション)中の乳化粒子中に含まれる成分は、該組成物に対し、70000rpm、30分間程度の遠心分離処理を行い、上澄液を回収し、液体クロマトグラフィーまたはガスクロマトクラフィーにて分析する検出できる。
本発明の口腔用組成物は、液体歯磨剤、液状歯磨剤、洗口剤、マウスウォッシュ等、従来、口腔内の処理(たとえば消臭、香りの付与、殺菌、抗菌、抗炎症、洗浄、ビタミン供給等を目的としたもの)に用いられている任意の剤型の液体処理剤として使用できる。
【0026】
上述したように、本発明の製造方法によれば、エマルションタイプの口腔用組成物を簡便なプロセスで製造でき、得られる口腔用組成物は、経時安定性および有効成分の滞留性に優れたものである。
上記効果を奏する理由としては、定かではないが、油相を調製した際、(b)成分中に他の成分が分散することで、水相投入時に乳化しやすく、過度なせん断力を加えなくてもエマルションとなるため、乳化粒子中に(a)成分が安定に存在していることが考えられる。
【実施例】
【0027】
本発明について、実施例を示してさらに具体的に説明する。ただし本発明はこれらの限定されるものではない。
[実施例1]
以下に示す製造手順(以下、製造法1という。)で表1に示す組成の口腔用組成物を得た。表1中、配合量の単位は質量%である。また、水の「残部」は口腔用組成物の全量が100質量%となる量である。
表1に記載の(b)成分(グリセリン30g、プロピレングリコール30g、PEG(Mw600)30g)に、予め加温溶解(50℃)した(c)成分(モノミリスチン酸デカグリセリル0.75g、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル0.75g)、(d)成分(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油7.5g)および(e)成分(ラウロイルサルコシンナトリウム1.5g)を250mLビーカー(ガラス製、内径70mm)に添加し、プロペラ翼(翼径60mm)、回転数500rpmで10分間撹拌混合した。続いて、25℃に冷却した後に、(a)成分(香料A3g、イソプロピルメチルフェノール0.75g)を添加し、各成分が完全に溶解して均一な溶液(目視にて確認)となるまで撹拌混合して、油相を調製した。
別途、1385.25gの水および表1に示す任意成分(クエン酸1.5g、クエン酸Na4.5g、安息香酸4.5g)をアジホモミキサー(プライミックス(株)製 HV−M型)に添加し、パドル回転数80rpmにて10分間、室温(25℃)で混合し、各任意成分を溶解させた。
そこに、調製した油相を50g/分の速度で投入し、パドル回転数80rpmにて10分間撹拌混合し、該撹拌の終了直前に45秒間ホモミキサーで回転数10000rpmにて撹拌して口腔用組成物1500gを得た。
【0028】
得られた口腔用組成物を、ベックマン・コールター社製卓上超遠心機L8−80Mを用いて、回転数70000rpmで30分間遠心分離を行った後、上澄液を回収した。該上澄液を、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)(香料)、液体クロマトグラフィー(LC)(イソプロピルメチルフェノール)にて分析した。その結果、該上澄液、つまり乳化粒子中に、表1に示す(a)成分が含まれることが確認できた。
GC−MSおよびLCの測定条件を以下に示す。
【0029】
<GC−MS測定条件>
・カラム:Ultra ALLOY PY−1(島津製作所社製;0.25mm×30m(0.25μm))
・注入口温度:320℃
・検出器温度:320℃
・注入量:1μL
・インジェクション方法:スプリット注入20/1
・プログラム:50℃(0min)−10℃/min−315℃(10min)
・MS条件 イオン化法:EI
【0030】
<LC測定条件>
・カラム:KANTO Mightysil RP−18GP(関東化学(株)製;5μm)
・カラム温度:50℃
・移動相:メタノール/水/リン酸=1300/700/1
・測定波長:UV 285nm
・インジェクション量:100μL
【0031】
[実施例2〜5]
配合する成分の種類および配合量を、表1に示した組成となるように変更した以外は前記実施例1と同じ手順(製造法1)で口腔用組成物1500gを得た。
【0032】
[比較例1(一括混合)]
以下に示す製造手順(以下、製造法2という。)で表2に示す組成の口腔用組成物を得た。
容量400mLの広口びん(マヨネーズびん)に蒸留水244.8gを仕込んだ。そこに、表2に示す各成分((a)〜(e)成分および任意成分)をそれぞれ個別に添加し、撹拌羽根(プロペラ型、直径100mm、シャフト直径×長さ:8×540mm)を用い、回転数500rpmにて15分間、室温で撹拌して口腔用組成物400gを得た。上記各成分のうち、(c)成分、(d)成分および(e)成分は、それぞれ、予め50℃で溶融させて添加した。また、(a)成分は、他の成分を混合し、室温(25℃)に冷却した後に添加した。
【0033】
[比較例2(エマルション配合)]
以下に示す製造手順(以下、製造法3という。)で表2に示す組成の口腔用組成物を得た。
まず、下記組成のエマルションBを以下に示す手順で調製した。
・モノミリスチン酸デカグリセリル 9.9質量%
・トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 49.5質量%
・グリセリン 14.85質量%
・イソプロピルメチルフェノール 1質量%
・水 24.75質量%。
50℃で溶融させた上記に示す所定量のモノミリスチン酸デカグリセリル、グリセリンおよび半量の水をアジホモミキサー(プライミックス(株)製 HV−M型)に添加し、パドル回転数80rpmにて10分間、室温で溶解混合した。その後、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリルを添加し、パドル回転数80rpmにて10分間、室温で撹拌混合し、更に該撹拌の終了直前に20秒間ホモミキサーで回転数10000rpmにて撹拌し、最後に残りの水を加えることによりエマルションBを調製した。
【0034】
次に、容量400mLの広口びん(マヨネーズびん)に蒸留水241.8gを仕込んだ。そこに、表2に示す各成分のうち、エマルションB以外の成分((a)、(b)、(d)成分、任意成分およびエタノール)をそれぞれ個別に表2に示す組成となるように添加した。このとき、上記各成分のうち、(b)成分および(d)成分は、予め50℃で溶融させて添加した。また、(a)成分は、他の成分を混合し、室温(25℃)に冷却した後に添加した。
次いでエマルションBを添加し、撹拌羽根(プロペラ型、直径100mm、シャフト直径×長さ:8×540mm)を用い、回転数500rpmにて15分間、室温の条件で撹拌し、口腔用組成物を得た。
【0035】
[比較例3〜5]
配合する成分の種類および配合量を、表2に示した組成となるように変更した以外は前記実施例1と同じ手順(製造法1)で口腔用組成物1500gを得た。
【0036】
得られた口腔用組成物について以下の評価を行った。その結果を表1〜2に示す。
[保存安定性]
5℃または50℃で1ヶ月間保存した後の口腔用組成物の外観を、目視にて以下の基準で評価した。評価結果が◎または○のものを合格と判定した。
(評価基準)
◎:分離、沈殿がなく、均一である。
○:ごくわずかに沈殿(おり)が認められるが均一である。
△:少量ではあるが、明確な分離と沈殿が認められ、不均一である。
×:かなりの分離と沈殿が認められ、不均一である。
【0037】
[イソプロピルメチルフェノール残存率]
口腔用組成物10mLを口に含み、30秒間すすいだ後、吐き出した。該吐出液の量(mL)と、該吐出液に含まれるイソプロピルメチルフェノール濃度をLCにより測定した。LC測定条件は実施例1と同じ条件を用いた。
調製直後の口腔用組成物中のイソプロピルメチルフェノール濃度(A1)、測定により求められた吐出液中のイソプロピルメチルフェノール濃度(A2)および吐出液量(B)から、下記計算式により、イソプロピルメチルフェノールの口腔内への残存率(%)を算出した。
残存率(%)= A2×100/A1/B×100
【0038】
[香味持続性]
パネラー10名が各口腔用組成物10mLを口に含み、30秒間洗口後、吐き出した。
吐出後、香味が持続した時間(吐出直後から香味が消えるまでの時間)を評価し、パネラー10名の平均の持続時間を求めた。該持続時間から、下記基準により香味持続性を評価した。評価結果が◎または○のものを合格と判定した。
(評価基準)
◎:香味の持続時間が15分以上である。
○:香味の持続時間が10分以上15分未満である。
△:香味の持続時間が5分以上10分未満である。
×:香味の持続時間が5分未満である。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
上記結果に示すように、実施例1〜5では、(a)〜(e)成分を混合して均一な溶液とした油相を水相中に投入するというシンプルな製法でエマルションタイプの口腔用組成物が得られた。また、該口腔用組成物は、5℃経時安定性、50℃経時安定性、イソプロピルメチルフェノール残存率および香味持続性のすべての評価結果が良好であった。特に、c/(b+d+e)/aの値が4.0以下の実施例1〜4の評価結果が良好であった。
一方、全成分を一括混合した比較例1の口腔用組成物は、実施例2と同じ組成であるにもかかわらず、経時安定性、有効成分の滞留性(イソプロピルメチルフェノール残存率、香味持続)のいずれも悪かった。
別に調製したエマルションBを配合した比較例2は、工程に手間がかかり、得られた口腔用組成物の香味持続性も不良であった。
(c)成分を配合しなかった比較例3、(b)成分を配合しなかった比較例4、(b)〜(e)成分を配合しなかった比較例4はどの評価結果も悪かった。
【0042】
上記実施例1〜5および比較例1〜5で用いた原料を以下に示す。
・イソプロピルメチルフェノール:大阪化成社製。
・グリセリン:阪本薬品工業(株)社製。
・プロプレングリコール:旭電化(株)社製。
・モノミリスチン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製。
・トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル:日本エマルジョン(株)社製。
・ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ社製。
・PEG(Mw600):Mw600のポリエチレングリコール、ライオン(株)社製「PEG#600」。
・ラウロイルメチルタウリンナトリウム:日光ケミカルズ社製。
・ラウロイルサルコシンナトリウム:日光ケミカルズ社製。
・クエン酸:扶桑化学社製。
・クエン酸ナトリウム:扶桑化学社製。
・サッカリンナトリウム:東洋製薬化成社製。
・安息香酸ナトリウム:日精バイリス社製。
・エタノール:純度95質量%以上、日本アルコール販売社製。
・香料A:下記表3に示す組成(単位:質量%)の香料組成物(水への溶解度:1%以下)。
【0043】
【表3】

【0044】
[実施例6〜12]
配合する成分の種類および配合量を、表4〜10にそれぞれ示した組成となるように変更した以外は前記実施例1と同様の方法により口腔用組成物を得た。
これらの口腔用組成物のうち、実施例6〜8の口腔用組成物は液体歯磨剤として適したものである。実施例9〜11の口腔用組成物は洗口剤として適したものである。実施例12の口腔用組成物はマウスウォッシュとして適したものである。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)香料および薬効剤から選ばれる有効成分と、(b)多価アルコールと、(c)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルと、(d)(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルに該当しないノニオン界面活性剤と、(e)アニオン界面活性剤とを混合してなる油相を水相中に投入してエマルションとすることを特徴とする口腔用組成物の製造方法。
【請求項2】
前記油相は、前記(a)〜(e)成分を、(c)/[(b)+(d)+(e)]/(a)の値が0.01〜4.0の範囲内となる配合比率(質量比)で含有する、請求項1に記載の口腔用組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−168506(P2011−168506A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31736(P2010−31736)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】