説明

口腔用組成物

【解決手段】(a)ヒノキチオール、(b)エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二カリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム二水塩から選ばれる少なくとも1種のエデト酸塩、(c)エタノール、(d)水を含有し、(b)成分の含有量が0.02〜1質量%、(c)成分の含有量が0.2〜10質量%、かつ(d)/(c)が質量比で3〜200であることを特徴とする口腔用組成物。
【効果】本発明の口腔用組成物は、ヒノキチオールの安定性に優れ、優れた抗菌活性が発揮され、かつ長期保存しても経時で変色や相液分離が生じることがほとんどなく、保存安定性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒノキチオールの安定性に優れ、高い抗菌活性が発揮され、かつ変色及び相液分離がなく経時保存安定性に優れた口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病の2大口腔疾患の原因は、口腔内プラーク中の各種細菌によるものであると考えられ、特に、う蝕は、ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans)等の連鎖球菌、歯周病はポルフィロモナス ジンジバリス(P.gingivalis)等の偏性嫌気性グラム陰性桿菌を主とした細菌による感染症であり、また、口臭の原因としてはフゾバクテリウム ヌクレアタム(F.nucleatum)等の口腔内細菌が関与している。従って、口腔内疾患の予防、改善に有効な手段としてプラークコントロール、即ち、口腔内の病原性細菌数を低レベルに保つことが有用であることが言われている。
【0003】
口腔内の病原性細菌数を低下させる手段としては、従来から優れた口腔組織吸着性を有し、抗菌力及びプラーク形成抑制作用が高く、かつ天然由来の抗菌剤であるヒノキチオールを口腔用組成物に配合することは知られている。
【0004】
しかしながら、ヒノキチオールを口腔用組成物に配合すると、その抗菌活性が低下したり、保存安定性に劣り、長期保存すると経時で変色や相分離が生じるという欠点があった。
【0005】
ヒノキチオールの抗菌活性を維持する手段としては、ヒノキチオールとカルボン酸型両性界面活性剤とを配合した口腔用組成物(特許文献1参照)や、ヒノキチオールとエデト酸又はその塩とカルボン酸型両性界面活性剤とを配合した口腔用組成物(特許文献2参照)、ヒノキチオールと水易溶性無機塩とを配合した口腔用組成物(特許文献3参照)、ヒノキチオールと生薬エキス及びアラントイン類を配合した口腔用組成物(特許文献4参照)、ヒノキチオールとユーカリ油とを配合した口腔用組成物(特許文献5参照)が提案されている。
【0006】
しかし、いずれの技術においても、ヒノキチオール由来の抗菌活性を満足に発揮させ難く、また、経時で変色や相液分離が生じたりして、良好な保存安定性を得ることは困難であった。
このようにヒノキチオールを口腔用組成物に配合することは、その抗菌活性ゆえに口腔内疾患の予防、改善の手段として有効であるが、ヒノキチオールの抗菌活性を維持しつつ、変色や相液分離を抑制して経時保存安定性をも両立させることは、従来技術では難しかった。
【0007】
【特許文献1】特開昭63−211217号公報
【特許文献2】特開昭63−211218号公報
【特許文献3】特開平4−198121号公報
【特許文献4】特開2002−20253号公報
【特許文献5】特開2004−300088号公報
【特許文献6】特開平10−194943号公報
【特許文献7】特開2006−117600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ヒノキチオールの製剤中での安定性に優れ、高い抗菌活性が発揮され、かつ長期保存しても変色や相液分離が抑制され、保存安定性に優れたヒノキチオール含有の口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ヒノキチオールを含有する口腔用組成物に、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二カリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム二水塩から選ばれる1種又は2種以上のエデト酸塩と、エタノールと、水とを適当な割合で配合することにより、ヒノキチオールの製剤中での安定性が高まり、高い抗菌活性が発揮される上、長期保存しても変色がほとんど生じることがなく、相液分離安定性に優れ、経時での保存安定性に優れた製剤が得られることを知見した。
【0010】
なお、ヒノキチオールは、タイワンヒノキや青森ヒバなどに含まれる天然由来の成分で結晶性酸性化合物であり、公知の天然由来の抗菌成分の中でも強い抗菌活性と広い抗菌スペクトルを有することが知られている(特許文献6、7参照)。特許文献6には、ウラジロガシ抽出物と生薬エキスを含有する口腔用組成物にサイシン抽出物やヒノキチオールを配合することにより、ウラジロガシのグルコシルトランスフェラーゼ阻害活性及び抗菌作用の安定性が保たれることが記載されている。特許文献7には、塩化リゾチームにカチオン性殺菌剤類、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール、ティートゥリーピル等を配合することで、抗菌作用や保存安定性に優れた口腔内装着器具洗浄剤及び口腔内装着器具用表面処理剤が得られることが記載されている。
【0011】
しかし、本発明者らが検討したところ、口腔用組成物に、ヒノキチオールを単に配合した場合、ヒノキチオールが有する活性の高さゆえに、即ち、ヒノキチオールの金属イオンとの各種錯塩形成作用により、製造設備由来の微量金属等と結合するなどして、ヒノキチオールの抗菌活性が低下したり、油溶性成分ゆえに容器内面へ吸着や相液分離が生じるなどして経時での保存安定性に劣り、このため、ヒノキチオールの抗菌活性を維持しつつ、変色や相液分離をも両立させることが難しかった。
これに対して、ヒノキチオールを含有する口腔用組成物に、上記エデト酸塩と、エタノールと、水とを特定の割合で組み合わせて配合することで、後述の実施例からも明らかなように、これら成分が相乗的に作用し、上記した抗菌活性の低下や容器内面への吸着が有効に抑制され、ヒノキチオールの安定性が格段に向上し、その抗菌活性が高まって優れた抗菌作用が発揮される上、長期保存後に変色や相液分離が生じることがなく、優れた保存安定性を有する製剤を得ることができる。なお、エデト酸塩は、キレート剤として公知で、口腔用組成物への配合成分として知られているが、本発明によれば、ヒノキチオール含有の口腔用組成物に、エデト酸塩と、エタノール及び水とを特定割合で併用することによって、上記必須要件のいずれかを欠く場合には達成できない格別の作用効果が得られるものである。
【0012】
従って、本発明は、(a)ヒノキチオール、(b)エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二カリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム二水塩から選ばれる少なくとも1種のエデト酸塩、(c)エタノール、(d)水を含有し、(b)成分の含有量が0.02〜1質量%、(c)成分の含有量が0.2〜10質量%、かつ(d)/(c)が質量比で3〜200であることを特徴とする口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の口腔用組成物は、ヒノキチオールの安定性に優れ、優れた抗菌活性が発揮され、かつ長期保存しても経時で変色や相液分離が生じることがほとんどなく、保存安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、洗口剤等として、特に練歯磨として調製されるもので、(a)ヒノキチオール、(b)エデト酸塩、(c)エタノール、(d)水とを必須に含有する。
【0015】
(a)成分のヒノキチオールは、通例、純度98%以上として規定されている市販品を用いることができ、例えばヒノキチオール(高砂香料製)を使用することができる。
【0016】
ヒノキオールの配合量は、抗菌活性及び変色の点から組成物全量に対して0.005〜0.2%(質量%、以下同様。)、特に0.01〜0.1%が好ましい。0.005%未満では十分な抗菌活性が発揮されない場合があり、0.2%を超えると変色が生じる場合がある。
【0017】
(b)成分のエデト酸塩としては、エデト酸二ナトリウム(正式名称:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、略称:EDTA ナトリウム)、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二カリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム二水塩から選ばれる1種又は2種以上が用いられ、中でもエデト酸二ナトリウムが好適である。
【0018】
上記エデト酸塩としては市販品を用いることができ、例えばエデト酸二ナトリウムはディゾルビンNA2(ライオン(株)製)、エデト酸三ナトリウムはゾノンT(第一化学薬品(株)製)、エデト酸二カリウム二水塩はキレスト2K−SD(キレスト(株)製)、エデト酸四ナトリウム二水塩はゾノンN(第一化学薬品(株)製)等を使用できる。
【0019】
(b)成分のエデト酸塩の配合量は、抗菌活性、変色並びに相液分離の点から組成物全量に対して0.02〜1%、好ましくは0.1〜0.5%である。0.02%未満では十分な抗菌活性や変色抑制効果が発揮されず、1%を超えると相液分離が生じたり、口腔粘膜に対して刺激が生じる。
【0020】
(c)成分のエタノールは、市販品、例えばエタノール(日本アルコール販売製)を使用することができる。なお、エタノールは、香料や他の製剤配合成分中に配合されていても良いし、配合成分として別添加しても良いが、エタノールの合計配合量は組成全体の0.2〜10%、好ましくは0.3〜5%、より好ましくは0.3〜3%である。0.2%未満では十分な変色抑制効果が発揮されない場合があり、10%を超えると相液分離や、口腔粘膜に対する刺激を生じる場合がある。
【0021】
(c)エタノールに対する(d)水の配合割合((d)/(c))は、変色並びに相液分離の点から質量比で3〜200、好ましくは10〜150、より好ましくは70〜130である。配合比が3未満の場合は相液分離を生じ、200を超えると十分な変色抑制効果が発揮されない。
なお、組成中の水分量は上記配合割合を満たせばよいが、20〜50%、特に30〜45%が好ましい。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、剤型等に応じて、上記必須成分に加えて他の公知の添加剤を本発明の効果を妨げない範囲で配合できる。例えば練歯磨の場合は、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、及び必要に応じて甘味剤、防腐剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合して通常の方法で製造できる。
【0023】
研磨剤としては、無水ケイ酸、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、二酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる(通常配合量2〜50%、特に10〜40%)。
【0024】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、分子量200〜6000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる(通常配合量5〜50%)。
【0025】
粘結剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル等の有機粘結剤、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられる(通常配合量0〜5%、特に0.1〜3%)。
【0026】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩等、両性界面活性剤として、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等、ノニオン性界面活性剤として、例えばアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる(通常配合量0.1〜3%、特に0.5〜2%)。
【0027】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、塩化ナトリウム、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェート等のキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物等が挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0029】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0030】
香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料は、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0031】
着色剤としては青色1号、責色4号、緑色3号等が例示される。
【0032】
本発明の口腔用組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、口腔用組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0033】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0034】
〔実験例〕
表1に示す組成の歯磨剤組成物(練歯磨)を下記方法で調製し、下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
(1)試験歯磨剤組成物の調製
表1に示す組成の歯磨剤組成物を常法により調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mm、口径8mmのラミネートチューブ(低密度ポリエチレン72μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂90μm/アルミニウム10μm/エチレン・アクリル酸共重合体樹脂35μm/直鎖状低密度ポリエチレン50μm,厚み257μm(大日本印刷社(株)製))に50g充填した。
【0036】
歯磨剤組成物の調製には、ヒノキチオール(高砂香料(株))、エデト酸二ナトリウム(ディゾルビンNA2、ライオン(株)、エデト酸三ナトリウム(ゾノンT、第一化学薬品(株))、エデト酸二カリウム二水塩(キレスト2K−SD(キレスト(株))、エデト酸四ナトリウム二水塩(ゾノンN、第一化学薬品(株))、エタノール(日本アルコール販売(株))、ポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株))を用いた。他成分については、いずれも医薬部外品原料規格の規格品を用いた。
なお、香料については、表2に示す香料A〜香料Dまでを作成し配合した。
【0037】
(i)抗菌力試験の評価方法
凍結保存してあったポルフィロモーナス ジンジバリス培養液40μLをそれぞれ5mg/Lヘミン(Sigma社製)及び1mg/LビタミンK(和光純薬工業社製)を含むトッドヘーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)培養液(THBHM)4mLに添加し、37℃で二晩嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)し、菌液とした。調製した歯磨剤組成物1gにTHBHM培地49mLを加え攪拌した後、さらにTHBHM培地を加え歯磨剤希釈倍率として400〜2400倍となるように各々の歯磨剤希釈培地を作成した。各々の歯磨希釈培地3mLに菌液50μLを添加し、37℃で10日間嫌気培養後、菌の生育の有無を外観、におい、顕微鏡を用いて判定した。なお、抗菌力は菌の生育が見られなかった最高希釈度で示した。
【0038】
(ii)変色の評価方法
歯磨剤組成物を60℃にて1ヶ月保存後、更紙上に5cm出し、目視にて下記基準で評価した。
評価基準;
◎:変色がない
○:ほとんど変色がない
△:やや変色がある
×:変色がある
【0039】
(iii)液分離の評価方法
歯磨剤組成物を60℃にて1ヶ月保存後、更紙上に5cm出し、目視にて下記基準で評価した。
評価基準;
◎:液分離がない
○:ほとんど液分離がない(1mm未満)
△:やや液分離がある(1mm以上5mm未満)
×:液分離がある(5mm以上)
【0040】
【表1−1】

*:組成中に含有する水分量の合計(以下、同様)。
【0041】
【表1−2】

【0042】
【表1−3】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

*表中、部はいずれも質量部である(以下、同様。)。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
表1の結果から、ヒノキチオール、エデト酸塩、エタノール、水のいずれかが無配合組成、あるいはこれら成分の配合量や配合比が不適切な組成(比較例)では、抗菌力に劣ったり、経時で変色や相液分離が生じ、保存安定性に劣る。これらに対して、ヒノキチオール、エデト酸塩、エタノール及び水を適切な配合量及び配合比で組み合わせて配合することにより(実施例)、ヒノキチオール由来の抗菌活性が高まり、優れた抗菌作用が発揮され、かつ長期保存後に変色や相液分離が生じることがほとんどなく、保存安定性にも優れることが確認された。
【0051】
次に、下記組成の口腔用組成物を調製し、同様に評価したところ、いずれも高い抗菌活性を有し、かつ経時での変色が生じることがなく、相液分離安定性にも優れることを確認した。
【0052】
[実施例16]練歯磨
ヒノキチオール 0.01%
エデト酸二ナトリウム 0.2
エタノール 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料A 1.0
ニンジンエキス 0.001
ローズマリーエキス 0.001
セージエキス 0.001
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.8
無水ケイ酸 20
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
キサンタンガム 0.8
ソルビット液(70%) 35
サッカリンナトリウム 0.2
プロピレングリコール 3.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.05
パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
酸化チタン 0.4
フッ化ナトリウム 0.21
水 35.017
計 100.0%
水/エタノールの質量比:67.3
【0053】
[実施例17]練歯磨
ヒノキチオール 0.01%
エデト酸二ナトリウム 0.2
エタノール 0.2
オウバクエキス 0.05
β−グリチルレチン酸 0.05
酢酸トコフェロール 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料A 1.0
ニンジンエキス 0.001
ローズマリーエキス 0.001
セージエキス 0.1
カミツレエキス 0.001
オウゴンエキス 0.1
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.0
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 1.0
無水ケイ酸 5.0
炭酸カルシウム 20
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ソルビット液(70%) 40
サッカリンナトリウム 0.2
プロピレングリコール 3.0
塩化ベンザルコニウム 0.01
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
水 24.947
計 100.0%
水/エタノールの質量比:113.4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒノキチオール、(b)エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸二カリウム二水塩、エデト酸四ナトリウム二水塩から選ばれる少なくとも1種のエデト酸塩、(c)エタノール、(d)水を含有し、(b)成分の含有量が0.02〜1質量%、(c)成分の含有量が0.2〜10質量%、かつ(d)/(c)が質量比で3〜200であることを特徴とする口腔用組成物。

【公開番号】特開2010−150155(P2010−150155A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327815(P2008−327815)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】