説明

口腔用組成物

【課題】アプリケーター一体型容器に用いるための、毎回有効量を当該アプリケーター一体型容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる、カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】アプリケーター一体型容器に用いるための、カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物であって、
(I)以下(A)〜(C)を含有し、
(A)カチオン性殺菌剤を0.05〜0.5質量%
(B)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種のノニオン性増粘剤を0.05〜2.5質量%
(C)水を50質量%以上
(II)剪断速度8s−1で500〜15000mPa・sの粘度を有する、
口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より効率的に罹患した部位に薬剤を塗布したり、その部位を清浄にするために、アプリケーター一体型容器が用いられる。当該容器は、薬剤を貯蔵する貯蔵部、罹患部位へ当該薬物を塗布するための塗布部、必要に応じて、該貯留部から該塗布部へと該薬物を輸送するための送路部、等を備える。
【0003】
罹患部位が口腔内である場合、当該容器の塗布部を口腔内へ入れる必要がある。すると容易に罹患部位まで塗布部を届かせるためには、塗布部が口腔内へ入れることができる程度の大きさであって、当該塗布部に細長い筒状(棒状)のものが連結した形態を有するものであることが好ましい。また、貯蔵部には、口腔用組成物を適切な量貯蔵できる容量が求められる。
【0004】
このような口腔疾患用のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物には、当該容器に応じた適切な物性を有することが求められる。すなわち、当該口腔用組成物は、適当な押圧で適量が塗布部から吐出されるものであることが好ましい。また、当該口腔用組成物は、吐出遅れが無いことが好ましい。さらに、当該口腔用組成物は塗布部や送路部等で目詰まりを起こすことがないものが好ましい。
【0005】
口腔用のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物として、例えば特許文献1には、組成物収容用内蔵型貯蔵器を備えた歯ブラシに用いるための口腔用組成物が記載されている。また、特許文献2には、電動歯ブラシを用いて少量使用するための液体歯磨剤組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、口腔用のアプリケーター一体型容器に用いるための、口腔疾患部に適用する有効成分を含有した口腔用組成物は、これまでに開発されていない。
【0007】
口腔用途でアプリケーター一体型容器を用いて効率的、実用的に活用するためには、毎回有効量の口腔用組成物が塗布部から供給されることが好ましく、従って当該容器に予め充填される(すなわち、プレフィルドされる)組成物の特性が重要となる。特に、適当な押圧により有効量が吐出され、吐出遅れが少なく、塗布部や送路部において目詰まりしない組成物であることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第04/032674号
【特許文献2】国際公開第04/032889号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アプリケーター一体型容器に用いるための、毎回有効量を当該アプリケーター一体型容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる、カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、驚くべき事に、増粘剤の選択と、所定の剪断速度での粘度をコントロールすることで、アプリケーター一体型容器から、一定の押圧にて有効量が吐出され吐出遅れが少なく、かつ目詰まりのない口腔用組成物を提供できることを見出し、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は例えば以下の項1〜5に記載の口腔用組成物に係るものである。
【0012】
項1.
アプリケーター一体型容器に用いるための、カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物であって、
(I)以下(A)〜(C)を含有し、
(A)カチオン性殺菌剤を0.05〜0.5質量%
(B)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種のノニオン性増粘剤を0.05〜2.5質量%
(C)水を50質量%以上
(II)剪断速度8s−1で500〜15000mPa・sの粘度を有する、
口腔用組成物。
項2.
カチオン性殺菌剤が、第四級アンモニウム塩及び/又はビグアニド系殺菌剤である、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
さらにグリセリンを5〜15質量%含有する、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
アプリケーター一体型容器のアプリケーター塗布部がブラシ形態である、項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
前記アプリケーター一体型容器が、塗布部、送路部、貯蔵部及び貯蔵部に隣接した送り出し機構を備え、
前記口腔用組成物が、前記貯蔵容器から前記送路部を介して前記塗布部に輸送される、
項1〜4のいずれかに記載のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアプリケーター一体型容器に用いるための口腔用組成物であれば、アプリケーター一体型容器において繰り返し使用しても、当該容器の塗布部や送路部を目詰まりさせることがなく、毎回有効量を当該容器の塗布部に簡便かつ安定して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1a】アプリケーター一体型容器の一態様である吐出試験用容器の、外観概略図を示す。
【図1b】アプリケーター一体型容器の一態様である吐出試験用容器の、断面概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、さらに詳細に説明する。
【0016】
本発明の口腔用組成物は、アプリケーター一体型容器に用いるためのものである。当該口腔用組成物は、アプリケーター一体型容器に用いた際、目詰まりをおこさず、毎回有効量が簡便かつ安定して供給されるものである。
【0017】
本発明の口腔用組成物は、カチオン性殺菌剤を含有する。本発明の口腔用組成物に含まれるカチオン性殺菌剤は、特に制限されないが、第四級アンモニウム塩およびビグアニド系殺菌剤が好ましく、例えば塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンゼトニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩や、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アレキシジン、酢酸アレキシジン、グルコン酸アレキシジン等のビグアニド系殺菌剤等のカチオン性殺菌剤が含まれる。中でも、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジンが好ましく、特に、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンが好ましい。なお、これらのカチオン性殺菌剤は1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0018】
カチオン性殺菌剤の配合量は、口腔用組成物全量に対して、好ましくは0.05〜0.5質量%、より好ましくは0.1〜0.5質量%、さらに好ましくは0.1〜0.4質量%、特に好ましくは0.1〜0.3質量%である。
【0019】
また、本発明の口腔用組成物は、増粘剤を含有する。増粘剤のなかでも、ノニオン性増粘剤であることが好ましい。ノニオン性であることによりカチオン性殺菌剤に影響を与えることが少ない。当該増粘剤により組成物に適当な粘性を与えることができる。具体的には、本発明の口腔用組成物にはノニオン性増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びメチルセルロース(MC)からなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましく、中でもヒドロキシエチルセルロースを用いるのが特に好ましい。
【0020】
これら以外のノニオン性増粘剤を用いてもよいが、アプリケーター一体型容器に用いたときの塗布部への供給の遅れが生じたり、カチオン性殺菌剤との相溶性が悪くなるなどする場合は、上述のものを用いるのが好ましい。
【0021】
ノニオン性増粘剤の配合量としては、口腔用組成物全量に対して、好ましくは0.05〜2.5質量%、より好ましくは1〜2質量%である。特にヒドロキシエチルセルロースを用いる場合は、さらに好ましくは1〜1.5質量%、よりさらに好ましくは1〜1.2質量%である。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、ゲル製剤、乳化製剤等、いずれの形態であってもよいが、特にゲル製剤であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の口腔用組成物には、上記のものの他に、一般に口腔用組成物に添加されるものを配合することもできる。
【0024】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、Nーラウリルジアミノエチルグリシン、NーミリスチルジエチルグリシンなどのNーアルキルジアミノエチルグリシン、NーアルキルーNーカルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムがあげられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1〜5質量%である。
【0025】
香味剤として、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d−カンフル、d−ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリンなどの香料を、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して0.01〜1質量%配合することができる。
【0026】
また、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p−メトキシシンナミックアルデヒドなどの甘味剤を、組成物全量に対して0.01〜1質量%配合することができる。
【0027】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコールなどを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0028】
なお、本発明の口腔用組成物には、カチオン性殺菌剤以外の薬効成分として、酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなどのアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫などのフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、カルバゾクロム、ヒノキチオールなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0029】
本発明の口腔用組成物は、50質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上の水を含む。さらに、本発明の口腔用組成物には、湿潤剤としてグリセリンを加えることが好ましく、その配合量は口腔用組成物全量に対して、5〜15質量%、好ましくは5〜10質量%である。なお、グリセリンを配合することで、組成物が目詰まりをおこしにくくなり、味も改善される。
【0030】
さらに、本発明の口腔用組成物は、アプリケーター一体型容器に用いるためのものであるから、適切な粘度を有するものが好ましい。具体的には、常温(25℃)おいて
剪断速度8s−1で500〜15000mPa・s、好ましくは500〜10000mPa・s、より好ましくは550〜5800mPa・sである。なお、粘度は、ブルックフィールド社粘度計により測定することができる。
【0031】
本発明は、当該粘度を指標として、カチオン性殺菌剤、ノニオン性増粘剤及び水を含有する、アプリケーター一体型容器に用いるためのカチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物を製造する方法をも提供する。なお、好ましいカチオン性殺菌剤、ノニオン性増粘剤の種類や含有量、水の含有量については上述の通りである。
【0032】
本発明の口腔用組成物を充填するアプリケーター一体型容器は、口腔用組成物を充填、貯蔵するための貯蔵部と、口腔用組成物を口腔疾患部に塗布するための塗布部を備えるものである。また、必要に応じて、当該貯蔵部と塗布部とを連結し、口腔用組成物を輸送するための送路部を備える。当該容器において、貯蔵部は取り外し及び反復充填が可能であってもよく、予め充填(プレフィルド)された状態で上市され使い捨てされるものであってもよい。
【0033】
当該塗布部は、口腔内に適用するために適切な大きさであることが好ましい。また、塗布部は、送路部の出口そのものであってもよいし、ブラシ(例えば、1又は2以上の毛束を植えた歯ブラシ又は歯間ブラシのようなブラシ)やはけ、筆、スポンジ等の、組成物を塗布しやすい形態であってもよく、特に制限はされない。
【0034】
また、当該貯蔵部は貯蔵できる口腔用組成物量を多くするためには大きめのものが好ましい。しかし、当該アプリケーター一体型容器が手に持って使用するものである場合は、当該容器が手に握ることができるよう貯蔵部の大きさを設定することが好ましい。具体的には、例えば貯蔵部が筒状である場合には、容積が3〜15mL、長さが30〜80mm程度のものが好ましい。
【0035】
また、当該アプリケーター一体型容器は、塗布部と貯蔵部とを連結して口腔用組成物の輸送を行う送路部を備えていてもよい。口腔用アプリケーター一体型容器は、使用する際、塗布部を口腔内の奥まで到達させる必要がある。よって、送路部は細い管状であることが好ましい。しかし、あまりに細い形状であると、貯蔵部から塗布部まで組成物を輸送するのに不適である。また、あまりに太い形状であると、使用後、送路部に多くの組成物が残ることになり、有効使用量の確保の点から好ましくない上、その太さのため口腔内に適用しづらくなる。当業者であれば、このような状況を考慮しつつ適当な送路部を設定することができるが、例えば長さ40〜80mm、容積が0.025〜0.2mlであることが好ましい。
【0036】
上述したような範囲に貯蔵部および送路部を設定すると、貯蔵部の底面積と送路部の断面積が大幅に異なることとなる。例えば、容器が筒状である場合、(貯蔵容器の底面積:管状路の断面積)が、上記の貯蔵部の大きさと送路部の要件を満たしつつ、(1000:5以上)であることが好ましく、(1000:5〜50)であることがより好ましく、(1000:5〜20)であることがさらに好ましく、(1000:10〜15)であることがよりさらに好ましい。
【0037】
このような貯蔵部の底面積に比べ送路部の断面積が小さい場合には、貯蔵部から送路部に口腔用組成物が送り出される際、口腔用組成物の輸送スピードが急激に増すことになるため、毎回安定した量を送路部を介して塗布部へ供給することが難しい。
【0038】
このため、本発明に係るアプリケーター一体型容器は、貯蔵部内の口腔用組成物を一定量送路部を介して塗布部へと送り出すことのできる送り出し機構を備えることが好ましい。特に、貯蔵部に隣接して備えることが好ましい。
【0039】
このような送り出し機構は特に制限されるものではなく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、特許文献1(国際公開第04/032674号)に記載のように電気的に作動するポンプ輸送システム又は手動操作によるポンプ輸送を実現する機構を用いることができる。また、特開2007−319392に開示される、容器の一部に位置する回動体を一方向に回転させることによって収納部内に貯蔵した組成物を押圧して当該組成物を吐出口から外方に押し出し可能にする機構が好適である。好ましい一態様では、貯蔵部に接してピストン体などの中皿が設けられており、アプリケーター一体型容器末端に設けられた回動体と当該中皿が接続されていて、この回動体を一方向に回転させることにより、中皿が貯蔵部を押圧して、貯蔵部内の組成物が送路部を通じて塗布部へと供給される。
【0040】
上述した本発明に係る口腔用組成物は、特にこのようなアプリケーター一体型容器にプレフィルドして用いるのに好適である。当該口腔用組成物であれば、当該アプリケーター一体型容器の貯蔵部から送路部に送り出される際、輸送スピードが急激に増すが塗布部への供給量は安定する。また、繰り返し長期にわたり塗布部へ供給されても、塗布部や送路部での目詰まりを起こさない。さらに、送り出し機構により安定した量が毎使用時に塗布部に供給される。
【0041】
例えば塗布部がブラシ形態である場合は、ブラシの付け根部分に送路部の出口が存在し、当該出口から口腔用組成物が吐出されることで当該ブラシ形態の塗布部に口腔用組成物が供給される。そして、当該ブラシにて口腔疾患部位に口腔用組成物を塗布できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0043】
最適粘度の検討
<口腔用組成物の調製>
グリセリンに各種増粘剤(アルギン酸ナトリウム(NaArg)、キサンタンガム、及びヒドロキシエチルセルロース(HEC) )を分散させ、これを蒸留水に撹拌しながら加え、1時間強撹拌した。撹拌後、一晩室温で静置し、各種口腔用組成物を調製した。
【0044】
なお、当該組成物中、グリセリンは10質量%配合した。また、増粘剤は、組成物調製後の終濃度が表1に記載の値(質量%)となる量を配合した。
【0045】
用いた増粘剤を以下に示す。

ヒドロキシエチルセルロース :フジケミHEC CF-Y (住友精化 (株))
メチルセルロース :METOLOSE SM-4000 (信越化学工業(株))
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:METOLOSE 60SH-4000 (信越化学工業(株))
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC H (日本曹達(株))
プルラン :プルラン ((株)林原生物化学研究所)
ポリビニルアルコール :ゴーセノール EG-30 (日本合成化学工業(株))
キサンタンガム :ケルデント (CP Kelco社)
アルギン酸ナトリウム :ダックアルギンNSPH ((株) 紀文フードケミファ)
【0046】
<吐出試験用容器>
内径14mm、長さ50mmの円柱状の貯蔵容器に、内径1mm、長さ60mmの円管状路を連結し、さらに当該貯蔵容器を特開2007−319392号公報の図面に開示される送り出し機構を組み込み、組成物の吐出試験用容器とした。すなわち、当該吐出試験用容器はアプリケーター一体型容器の一態様であり、グリップ部分及び送路部からなり、グリップ部分内部には貯蔵部に接してピストン体の中皿が設けられており、その中皿にはグリップ部分内をピストン状に移動するための機構がグリップ部分末端に設けられた回動体から接続されている。この回動体を一方向に回転させることにより、中皿が貯蔵部を押圧して、貯蔵部内の組成物が送路部を通じて送路部末端から吐出される。当該吐出試験用容器の外観概略図を図1aに、断面概略図を図1bに、それぞれ示す。
【0047】
貯蔵容器内には表1に記載の調製済み各種口腔用組成物を充填した。
【0048】
<吐出試験>
上記の吐出試験用容器において、0.03mL/sの速度で組成物が吐出されるよう送り出し機構の回動体を回転させ、0.03mLの組成物が吐出されるまでに要する時間を計測した。当該計測値が大きいものほど、組成物の後引き性が高く、好ましくないことがわかる。具体的には、当該計測値が0.5秒未満のものを「○」、0.5秒以上1.0秒未満のものを「△」、1.0秒以上のものを「×」として評価した。結果を表1に示す。
【0049】
<粘度測定試験>
ブルックフィールド社粘度計HVDV-II、RVDV-II、LVDV-IIにて、コーン型スピンドルNo.52又は41を用いて、25℃で剪断速度0.2〜10.0s−1にて剪断応力を測定し、粘度を算出した。結果を表1に示す。
【0050】
<CPC相溶性>
得られた各組成物に、CPC(塩化セチルピリジニウム)を各組成物中0.3質量%となるように配合した。当該配合後の組成物の白濁の有無を目視で確認し、白濁したものを「×」、無色透明であるものを「○」と評価した。なお、全ての組成物は、CPCを配合する前は無色透明であった。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示されるように、アルギン酸ナトリウム及びキサンタンガムはCPC相溶性が悪く、CPCとともに用いるのは好ましくない。一方、HECはCPC相溶性が良好であり、本発明の口腔用組成物に用いるのに好ましい。
一方、組成物吐出試験結果に注目すると、アルギン酸ナトリウム又はキサンタンガムを1.5質量%含有する口腔用組成物は吐出性が良好であり、これ以上含有量が大きくなると、大きくなるにつれ吐出性は不良となった。一方HECを1.0〜1.2質量%含有する口腔用組成物は吐出性が良好であり、これ以上含有量が大きくなると、大きくなるにつれ吐出性は不良となった。
【0053】
ところで、表1にも示されるように、用いる増粘剤の種類及び量、並びに剪断速度等によって、組成物の粘度は大きく異なる値を示すため、粘度を指標として本発明の好適な口腔用組成物を見出すことは難しい。しかしながら、表1の結果から、剪断速度8s−1の時の粘度が、約6000mPa・s未満の場合は吐出の遅れがなく、6000mPa・s以上17000mPa・s未満の場合は若干の吐出遅れが生じ、17000mPa・s以上の場合は、大きな遅れが生じることが見て取れる。このことから、剪断速度8s−1の時の粘度を指標とすれば、本発明の好適な口腔用組成物を選抜することが可能であることがわかった。
【0054】
目詰まりの検討
次に、表2に示す口腔用組成物を下記のようにして調製し、各種試験及び目詰まりの検討を行った。
【0055】
CPC、グリセリン、各種増粘剤、及び水を撹拌して混合し、各種口腔用組成物を調製した。なお、これらの成分は表2に記載の値(質量%)ずつ用いた。
【0056】
これらの各種口腔用組成物を上記検討例1で用意したのと同じ吐出試験用容器に充填し、管状部末端から当該口腔用組成物を吐出(0.03mL/sの速度で0.03mL)させた後、管状部末端の口腔用組成物を拭き取り、40℃で48時間静置した。そして、再度口腔用組成物を吐出(0.03mL/sの速度で0.03mL)させ、管状部末端が目詰まりするか検討した。判定基準は以下の通りとした。
【0057】
○:薬剤吐出試験時と同等の時間で0.03mL吐出される
△:薬剤吐出試験よりも時間がかかるが、0.03mL吐出される。
×:口腔用組成物が吐出されない。
【0058】
なお、その他の検討(吐出試験、粘度測定、CPC相溶性検討)は、上記「最適粘度の検討」にて記載した方法と同様に行った。
【0059】
結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
以下に本発明に係る口腔用組成物の処方例を示す。
【0062】
処方例1
成分 質量%
塩化セチルピリジニウム 0.1
塩化亜鉛 1.2
ヒドロキシエチルセルロース 1.1
グリセリン 15.0
プロピレングリコール 3.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
ウイキョウ油 0.1
シンナムアルデヒド 0.2
チモール 0.2
水 残部
合計 100.0

内径14mm長さ50mmの円柱状の貯蔵容器に、内径1.0m、長さ40mmの円管状路を連結したアプリケータ一体型容器にプレフィルドしたところ、吐出遅れ及び目詰まりは認められなかった。以下(処方例2〜7)、同様にアプリケータ一体型容器にプレフィルドして使用したが、吐出遅れ及び目詰まりは認められなかった。
【0063】
処方例2
成分 質量%
塩酸クロルヘキシジン 0.2
フッ化ナトリウム 0.2
ヒドロキプロピルメチルセルロース 1.0
グリセリン 12.0
クエン酸3ナトリウム 0.1
クエン酸 0.01
サッカリンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
エタノール 10.0
サリチル酸メチル 0.1
ハッカ油 0.2
バニリン 0.1
水 残部
合計 100.0
【0064】
処方例3
成分 質量%
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
塩化セチルピリジニウム 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
塩酸ピリドキシン 0.02
メチルセルロース 1.0
グリセリン 7.0
クエン酸3ナトリウム 0.1
クエン酸 0.01
サッカリンナトリウム 0.01
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 0.5
エタノール 7.0
チョウジ油 0.1
l-メントール 0.2
水 残部
合計 100.0
【0065】
処方例4
成分 質量%
塩化セチルピリジニウム 0.3
アラントイン 0.5
グリチルリチン酸二カリウム 0.4
メチルセルロース 1.3
グリセリン 5.0
クエン酸ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.2
ステビアエキス 0.02
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
エタノール 10.0
香料 0.1
水 残部
合計 100.0
【0066】
処方例5
成分 質量%
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
フッ化ナトリウム 0.2
硝酸カリウム 0.5
ヒドロキプロピルメチルセルロース 2.0
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
サッカリンナトリウム 0.2
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
l−メントール 0.2
香料 0.3
水 残部
合計 100.0
【0067】
処方例6
成分 質量%
塩化セチルピリジニウム 0.05
アラントイン 0.3
ヒノキキオール 0.1
グリチルリチン酸二カリウム 0.2
メチルセルロース 1.0
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
エタノール 10.0
サッカリンナトリウム 0.1
アルキルグルコシド 2.0
d−カンフル 0.1
香料 0.1
水 残部
合計 100.0
【0068】
処方例7
成分 質量%
塩酸クロルヘキシジン 0.3
アラントイン 0.3
塩化リゾチーム 0.05
ヒドロキプロピルメチルセルロース 0.5
メチルセルロース 0.7
グリセリン 5.0
プロピレングリコール 5.0
ソルビット液 10.0
エタノール 10.0
サッカリンナトリウム 0.2
l-メントール 0.1
水 残部
合計 100.0
【符号の説明】
【0069】
1:塗布部
2:送路部
3:貯蔵部
4:送り出し機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーター一体型容器に用いるための、カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物であって、
(I)以下(A)〜(C)を含有し、
(A)カチオン性殺菌剤を0.05〜0.5質量%
(B)ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種のノニオン性増粘剤を0.05〜2.5質量%
(C)水を50質量%以上
(II)剪断速度8s−1で500〜15000mPa・sの粘度を有する、
口腔用組成物。
【請求項2】
カチオン性殺菌剤が、第四級アンモニウム塩及び/又はビグアニド系殺菌剤である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
さらにグリセリンを5〜15質量%含有する、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
アプリケーター一体型容器のアプリケーター塗布部がブラシ形態である、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。

【図1a】
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【図1b】
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【公開番号】特開2010−280612(P2010−280612A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135471(P2009−135471)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】