説明

口腔用組成物

【課題】口腔内細菌に対する殺菌活性を有するカチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着効果を向上させながら、さらに製剤上の溶液安定性を保持させた口腔用組成物の提供。
【解決手段】カチオン性殺菌剤およびグリセロリン酸カルシウムを含有する口腔用組成物。該カチオン性殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウムであることが好ましく、塩化セチルピリジニウムの配合量としては、0.05〜0.3質量%であることが好ましい。液体口腔用組成物の場合では、さらにエタノールを10質量%以下含有する組成物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム塩を配合した組成物において、口腔内細菌に対する殺菌活性を有する塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着効果を促進した口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化セチルピリジニウムに代表されるカチオン性殺菌剤は、口腔内細菌に対する殺菌活性が高いだけでなく、口腔粘膜や歯牙表面に吸着する。吸着したカチオン性殺菌剤は、口腔内細菌の吸着を阻害することで歯垢形成を抑制し、齲蝕予防効果、歯周病の症状改善や予防効果が得られることが期待できる。一方、カルシウム塩を口腔用組成物に配合すると齲蝕予防や初期齲蝕の改善効果を期待することができる。しかし、齲蝕予防効果を高めるためカチオン性殺菌剤とカルシウム塩を併用すると、カチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着が阻害されることが知られている。
【0003】
そこでカチオン性殺菌剤の口腔内細菌に対する殺菌活性をさらに高めるために種々の方法が開示されている。特許文献1には、塩化セチルピリジニウムにN−長鎖アシル塩基性アミノ酸の低級アルキルエステルまたはその塩を組み合わせると塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着が促進されること、さらに特許文献2には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸の低級アルキルエステルまたはその塩によるカチオン性殺菌剤の歯牙への吸着促進作用が、pH5.5〜6.5の領域において最も高まることが開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、カチオン性殺菌剤と非イオン性界面活性剤とを併用した口腔用組成物に対し、特定の化合物を配合すると、殺菌剤の失活が効果的に防止されることが開示されている。また、特許文献4には、塩化セチルピリジニウムに特定のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を組合せると他の界面活性剤と比べて塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着を阻害しないことが開示されている。さらに、特許文献5には、塩化セチルピリジニウムの歯牙への吸着性を高めるために、ポリビニルアルコールが用いられている。しかし、これらの技術を以ってしても、依然として満足できる程度にまでカチオン性殺菌剤の活性を向上させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−36231号公報
【特許文献2】特開平9−286712号公報
【特許文献3】特開昭60−255717号公報
【特許文献4】特開平4−173728号公報
【特許文献5】特開2003−113059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カルシウム塩の存在下において塩化セチルピリジニウムに代表されるカチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着効果を向上させることで、カチオン性殺菌剤の活性を高めた口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、カチオン性殺菌剤とグリセロリン酸カルシウムを併用した場合、カチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着効果が飛躍的に改善することが判明し、本発明を見出すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、特に以下の項1〜6の口腔用組成物を提供するものである。
項1.
カチオン性殺菌剤とグリセロリン酸カルシウムを含有することを特徴とする口腔用組成物。
項2.
グリセロリン酸カルシウムの配合量が0.02〜2.0質量%であることを特徴とする項1に記載の口腔用組成物。
項3.
カチオン性殺菌剤が塩化セチルピリジニウムであることを特徴とする項1又は2の何れかに記載の口腔用組成物。
項4.
塩化セチルピリジニウムの配合量が0.05〜0.3質量%であることを特徴とする項1〜3の何れかに記載の口腔用組成物。
項5.
口腔用組成物が液体口腔用組成物であることを特徴とする項1〜4の何れかに記載の口腔用組成物。
項6.
さらにエチルアルコールを10質量%以下配合したことを特徴とする請求項5に記載の口腔用組成物。
さらに、本発明は、エチルアルコールを配合しないことを特徴とする液体口腔用組成物をも提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性殺菌剤歯牙表面への吸着効果を促進することにより活性をさらに高め、齲蝕や歯周病などを引き起こす口腔内細菌の歯牙表面への吸着を阻害して歯垢の形成を効果的に抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性殺菌剤およびグリセロリン酸カルシウムを配合することを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いるカチオン性殺菌剤は、塩化セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウムなどが挙げられ、このうち塩化セチルピリジニウムが最も好ましい。かかるカチオン性殺菌剤は、本発明の口腔用組成物の全量に対して0.01〜1質量%を配合することができ、好ましくは0.05〜0.3質量%、さらに好ましくは0.05質量%を配合することができる。0.01質量%未満になると、カチオン性殺菌剤の歯牙表面への吸着効果が低下してしまい、一方1質量%を超えると、使用時の苦味、歯の着色等の問題が生じてしまう可能性があるため好ましくない。
【0012】
本発明に用いるグリセロリン酸カルシウムは、例えば市販品を使用できる。市販品としては、例えば、岩城製薬株式会社製の「グリセロリン酸カルシウム」を挙げることができる。グリセロリン酸カルシウムの配合量は、本発明の口腔用組成物の全体の全量に対して0.02〜2.0質量%を配合する事ができる。特に0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%が最も好ましい。配合量が0.02質量%未満の場合は十分な齲蝕予防効果が得られない可能性があり、2.0質量%を超えると渋味・苦味が強く感じられるため使用感の点で好ましくなく、溶解しない場合がある。
【0013】
口腔用組成物が液体口腔用組成物の場合、エチルアルコールの存在はカチオン性殺菌剤の歯牙への吸着改善効果を減ずる作用やカルシウムの水溶性を減ずる作用を有するため、本発明の液体口腔用組成物においてはエチルアルコールの含有量が10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましく、3質量%以下とすることがさらに好ましく、配合しないことが最も好ましい。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、練歯磨、ペースト剤、液体歯磨、洗口剤、液剤、ジェル剤、軟膏剤、スプレー剤などの形態で提供することができる。かかる口腔用組成物は前記の成分に加えて、さらに組成物の形態に応じた以下のような適当な成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0015】
例えば、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および陰イオン界面活性剤を配合する事ができる。非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、ショ糖脂肪酸エステルやマルトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル;マルチトール脂肪酸エステル等の糖アルコール脂肪酸エステル;モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸ジエタノールアミドのような脂肪酸アルカノールアミド;ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ラウリルグルコシド、デシルグルコシドなどのアルキルグルコシド;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられ、それぞれ単独または2種以上を配合させることができる。これら非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、そのエチレンオキサイドの平均付加モル数は通常2〜150であり、中でも40〜100が好ましく、さらには40〜80が特に好ましい。両性イオン界面活性剤としては、Nーラウリルジアミノエチルグリシン、NーミリスチルジアミノエチルグリシンなどのNーアルキルジアミノエチルグリシン、NーアルキルーNーカルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウムなどが挙げられる。また、陽イオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなどが挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−アシルサルコシンナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、本発明の口腔用組成物の全量に対して0.01〜1質量%である。
【0016】
香料としては、特に制限されるものではないが、ミント系香料を用いるのが好ましい。ミント系香料は常法により得ることができ、例えば香料素材として、メントール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、アネトール、オイゲノール、プラムオイル、メントンなどを用いることができる。なかでもメントール、スペアミント油、ペパーミント油、メントンを好ましく用いることができる。これら香料素材は、それぞれ単独または2種以上を配合させることができる。香料の配合量は、組成物全量に対して通常0.01〜1質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%である。配合量が0.01質量%よりも少ないと香味が低く使用性が悪くなり、また、1質量%より多いと、香味が強すぎ使用性が悪く、さらに刺激も高くなる。
【0017】
また湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。配合量は、通常、本発明の口腔用組成物の全量に対して3〜20質量%である。
【0018】
さらに、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ−メトキシシンナミックアルデヒド、スクラロース、パラチノース、還元パラチノース、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトールなどの甘味剤を、組成物全量に対して0.001〜1質量%配合することができる。これらの中でも、還元パラチノース、パラチノース、キシリトール、エリスリトールが好ましく、還元パラチノースが最も好ましい。
【0019】
またpH調整剤としては、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸、グルタミン酸、アジピン酸、およびこれらの塩や、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの成分は単独または2種以上を組合せて本発明の口腔用組成物に含ませることができる。なお、本発明の口腔用組成物は、口腔内で使用できる範囲であれば、そのpHは特に制限されないが、通常pH3.0〜10.5、好ましくはpH5.5〜8.0である。
【0020】
なお、本発明の口腔用組成物には、カチオン性殺菌剤以外の薬効成分を配合する事ができる。例えば油溶性薬効成分としては、殺菌剤としてトリクロサン(2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)などのハロゲン化ジフェニルエーテルやイソプロピルメチルフェノールなどのフェノール系化合物;血行促進剤として酢酸dl−α−トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチルなどのp−ヒドロキシ安息香酸エステル、グリチルレチン酸などが挙げられる。また、水溶性薬効成分としては、殺菌剤としてドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;抗炎症剤としてグリチルリチン酸ジカリウムなどのグリチルリチン酸塩;抗プラスミン剤としてトラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸など;出血改善剤としてアスコルビン酸など;組織修復剤としてアラントインなど;その他、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、塩化亜鉛などが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができ、その配合量は、通常、本発明の口腔用組成物の全量に対して0.001〜5質量%である。
【0021】
さらに、本発明の口腔用組成物には、カチオン化ヒドロキシエチルセルロ−ス、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネ−ト;アルギン酸プロピレングリコ−ルエステル、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギ−ナンなどのガム類;ポリビニルアルコ−ル、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマ−、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの粘結剤などの1種又は2種以上を配合することができる。これらを配合する場合の配合量は、通常、本発明の口腔用組成物の全量に対して0.001〜1質量%である。これらの中でもカチオン性殺菌剤の効果を損ねないという観点から、ヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0022】
また、本発明の口腔用組成物には、N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩を配合することができる。塩基性アミノ酸部分は、特に、オルニチン、リジン、アルギニンがよく、これらは光学活性体またはラセミ体のいずれであってもよい。アシル基は、炭素数8〜22の飽和または不飽和の天然または合成脂肪酸残基であり、例えば、ラウロイル基、ミリスチル基、パルミトイル基、ステアロイル基などの単一脂肪酸残基が例示され、ヤシ油脂肪酸残基、牛油脂肪酸残基などの天然系の混合脂肪酸残基であってもよい。低級アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルが例示される。これらのN−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルの塩としては、塩酸塩、硫酸塩のような無機酸塩;グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、脂肪酸塩、酸性アミノ酸塩などの有機酸塩が挙げられる。特に、グルタミン酸塩、ピログルタミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩が好適である。N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩としては、具体的には、N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩(CAE)、N−ラウリル−L−アルギニンエチルエステル・ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。N−長鎖アシル塩基性アミノ酸低級アルキルエステルまたはその塩を配合する場合の配合量は、口腔用組成物全体に対し0.005〜1重量%程度が好ましい。また、塩化セチルピリジニウムに対し、質量比で1/5以上程度が好ましい。この場合の質量比の上限は特に限定されるものではないが、通常、10倍程度である。
【実施例】
【0023】
<塩化セチルピリジニウムの歯牙表面への吸着試験>
歯牙のエナメル質のモデルとしてヒドロキシアパタイト粉末(BIO−RAD Lab. Hydroxyapatite Bio−Gel HTP Gel)(以下、HAと略す。)を、人の唾液中に37℃、15時間浸漬したものを使用した。唾液中に浸漬することにより、HA表面に唾液ムコ蛋白質などを吸着させ、唾液に濡れた実際の歯牙エナメル質の状態に近似させた。この唾液処理済みHAに表1および2に示す各試料をそれぞれ添加して37℃にて、15分間振とうさせた。その後、蒸留水ですすぎ、最終的にHAに吸着した塩化セチルピリジニウムを液体クロマトグラフィーを用いて定量し、歯牙表面への吸着量を検証した。各試料の配合量は、カルシウム量が0.13質量%となるように各々定めた。塩化セチルピリジニウムの吸着量の判断基準としては、以下の通りとした。ここで、塩化セチルピリジニウムの吸着量の単位はμg/HA50mgである。

○:塩化セチルピリジニウムの吸着量が300以上
×:塩化セチルピリジニウムの吸着量が300未満
【0024】
なお、塩化セチルピリジニウムの吸着量は、300以上のものが好ましく、吸着量が300未満のものは十分な殺菌効果を発揮することができないと考えられ、好ましくない。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示したとおり、グリセロリン酸カルシウムは、他のカルシウム塩と比較して、優れた塩化セチルピリジウムの吸着量を示した。また、グリセロリン酸カルシウムとエチルアルコールを配合した処方はエチルアルコールを配合しない処方に比べ吸着量が劣ることがわかった。なお、クエン酸カルシウム及び硫酸カルシウムは完全に溶解しなかったため、吸着量の測定を行なわなかった。
【0027】
以下、本発明に係る口腔用組成物の実施例の処方を挙げるが、本発明は下記の処方に限定されるものではない。また、特に断らない限り配合量は質量%である。
【0028】
処方例1 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.2
ソルビット 50.0
研磨性シリカ 20.0
増粘性シリカ 2.0
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
ケイ酸ナトリウム 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
キサンタンガム 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
酸化チタン 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0029】
処方例2 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
ソルビット 40.0
結晶セルロース 18.0
研磨性シリカ 10.0
硝酸カリウム 5.0
増粘性シリカ 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
グリセロリン酸カルシウム 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
酸化チタン 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0030】
処方例3 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.3
グリセロリン酸カルシウム 1.0
炭酸カルシウム 15.0
グリセリン 10.0
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
香料 1.0
キサンタンガム 0.7
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
酢酸トコフェロール 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.2
精製水 残 部
合計 100.0
【0031】
処方例4 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.05
グリセリン 20.0
研磨性シリカ 10.0
増粘性シリカ 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
アルキル(8〜16)グルコシド 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
l−メントール 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0032】
処方例5 練歯磨剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
グリセリン 20.0
研磨性シリカ 10.0
還元パラチノース 10.0
増粘性シリカ 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
アルキル(8〜16)グルコシド 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
カラギーナン 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.02
精製水 残 部
合計 100.0
【0033】
処方例6 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
ソルビット 20.0
プロピレングリコール 8.0
研磨性シリカ 5.0
増粘性シリカ 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ラウロイルサルコシンナトリウム 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
キサンタンガム 0.7
炭酸水素ナトリウム 0.5
デキストラナーゼ 0.5
l−メントール 0.5
DL−アラニン 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0034】
処方例7 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
ソルビット 20.0
研磨性シリカ 10.0
グリセリン 8.0
ポリエチレン末 3.0
エリスリトール 3.0
モノステアリン酸プロピレングリコール 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
トリクロサン 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
キサンタンガム 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.7
水酸化ナトリウム 0.5
スクラロース 0.5
酸化チタン 0.5
l−メントール 0.5
フィチン酸 0.2
精製水 残 部
合計 100.0
【0035】
処方例8 練歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 1.5
歯磨用リン酸水素カルシウム 10.0
グリセリン 8.0
ハイドロキシアパタイト 3.0
キシリトール 3.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
ステビアエキス 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.7
ゼオライト 0.2
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ニコチン酸トコフェロール 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0036】
処方例9 練歯磨剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
ソルビット 20.0
研磨性シリカ 10.0
グリセリン 8.0
エリスリトール 3.0
モノステアリン酸プロピレングリコール 1.0
サッカリンナトリウム 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
キサンタンガム 0.7
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.7
水酸化ナトリウム 0.5
フィチン酸 0.2
酢酸トコフェロール 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0037】
処方例10 練歯磨剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 2.0
ソルビット 55.0
研磨性シリカ 13.0
増粘性シリカ 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
キサンタンガム 0.3
酸化チタン 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 残 部
合計 100.0
【0038】
処方例11 練歯磨剤

成分 配合量
塩化ベンザルコニウム 0.01
グリセロリン酸カルシウム 0.2
ソルビット 40.0
研磨性シリカ 8.0
プロピレングリコール 5.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.5
キサンタンガム 0.4
ポリエチレングリコール4000 0.5
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
酸化チタン 0.3
アルギン酸ナトリウム 0.2
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1.0
精製水 残 部
合計 100.0
【0039】
処方例12 練歯磨剤

成分 配合量
塩酸クロルヘキシジン 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
ソルビット 50.0
研磨性シリカ 13.0
増粘性シリカ 2.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
カルボキシメチルセルロース 0.5
キサンタンガム 0.3
酸化チタン 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 1.0
精製水 残 部
合計 100.0
【0040】
処方例13 液体歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
トリクロサン 0.05
サッカリンナトリウム 0.01
無水クエン酸 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0041】
処方例14 液体歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 4.0
N−ココイル−L−アルギニンエチルエステル
・ピロリドンカルボン酸塩 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.4
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.05
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0042】
処方例15 液体歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 1.0
グリセリン 10.0
1,3ブチレングリコール 4.0
還元パラチノース 1.0
キシリトール 0.5
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.4
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
香料 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
精製水 残 部
合計 100.0
【0043】
処方例16 液体歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 1.0
グリセリン 10.0
1,3ブチレングリコール 3.0
マルチトール 1.5
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
パラオキシ安息香酸エチル 0.4
香料 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
精製水 残 部
合計 100.0
【0044】
処方例17 液体歯磨剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.8
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.4
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
トリクロサン 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.05
クエン酸ナトリウム 0.03
ε−アミノカプロン酸 0.01
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0045】
処方例18 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
キシリトール 2.0
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.4
水酸化ナトリウム 0.2
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
白色セラック 0.1
エデト酸二ナトリウム 0.05
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
炭酸水素ナトリウム 0.03
サッカリンナトリウム 0.01
青色1号 0.0002
精製水 残 部
合計 100.0
【0046】
処方例19 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.6
グリセリン 10.0
1,3ブチレングリコール 2.5
シクロデキストリン 0.1
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(C12−16)パレス−6リン酸 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.05
クエン酸ナトリウム 0.02
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0047】
処方例20 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.8
ソルビット 6.0
エリスリトール 3.0
還元パラチノース 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
マルチトール 0.2
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
香料 0.1
スクラロース 0.1
トリクロサン 0.02
クエン酸ナトリウム 0.01
クエン酸 0.003
精製水 残 部
合計 100.0
【0048】
処方例21 洗口剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
ポリエチレングリコール 3.0
トレハロース 3.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.5
DL−リンゴ酸 0.5
パラオキシ安息香酸エチル 0.2
ポリリン酸ナトリウム 0.1
香料 0.1
スクラロース 0.1
水酸化カリウム液 0.05
精製水 残 部
合計 100.0
【0049】
処方例22 洗口剤

成分 配合量
グルコン酸クロルヘキシジン 0.05
グリセロリン酸カルシウム 1.0
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 3.0
還元パラチノース 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
香料 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
精製水 残 部
合計 100.0
【0050】
処方例23 洗口剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.3
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 3.0
キシリトール 1.5
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
香料 0.1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
酢酸トコフェロール 0.05
精製水 残 部
合計 100.0
【0051】
処方例24 洗口剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.7
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
香料 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
トリクロサン 0.05
クエン酸ナトリウム 0.02
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0052】
処方例25 洗口剤

成分 配合量
塩化ベンゼトニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 3.0
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.4
香料 0.1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
クエン酸ナトリウム 0.03
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0053】
処方例26 ジェル剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 1.0
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
ヒドロキシエチルセルロース 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.2
キサンタンガム 0.2
香料 0.1
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0
【0054】
処方例27 スプレイ剤

成分 配合量
塩化セチルピリジニウム 0.05
グリセロリン酸カルシウム 0.5
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
エタノール 5.0
還元パラチノース 1.0
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 1.0
l−メントール 0.5
パラオキシ安息香酸エチル 0.1
香料 0.1
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 残 部
合計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性殺菌剤とグリセロリン酸カルシウムを含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
グリセロリン酸カルシウムの配合量が0.02〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
カチオン性殺菌剤が塩化セチルピリジニウムであることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の口腔用組成物。
【請求項4】
塩化セチルピリジニウムの配合量が0.05〜0.3質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
口腔用組成物が液体口腔用組成物であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の口腔用組成物。
【請求項6】
さらにエチルアルコールを10質量%以下配合したことを特徴とする請求項5に記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2011−140454(P2011−140454A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1228(P2010−1228)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】