説明

口腔用組成物

【課題】カチオン性殺菌剤由来の苦味が低減し、嗜好性を損なうことなく、口臭と口腔内の乾燥とを効果的に抑制し予防することができ、製剤の保存安定性も良好な口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物に、(B)ポリグルタミン酸又はその塩と、(C)アシルサルコシン塩とを配合してなることを特徴とする口腔用組成物、及び、更に(D)ノニオン性界面活性剤を配合してなる上記口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性殺菌剤由来の苦味が低減し、嗜好性を損なうことなく、口臭と口腔内の乾燥とを効果的に抑制し予防することができ、製剤の保存安定性も良好な口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
薬の副作用、ストレス、全身疾患など、要因は様々又は複合的ではあるが、加齢と共に唾液の分泌量が低下するケースが見られ、このような唾液の分泌量低下による口の乾きが気になる層は、800万人に及ぶといわれている。口の乾きは、食事や会話などに支障をきたすだけでなく、口内環境の悪化による虫歯、歯周病の発症、口臭の発生などの原因となり、特に口臭は口腔乾燥症罹患者のなかで対処の要望が強い項目として挙げられている。口腔ケアに使用される薬用成分のうち、カチオン性殺菌剤は口腔内への滞留性が高く、唾液の分泌量が低下する就寝時の口臭予防成分として注目される。
【0003】
しかしながら、カチオン性殺菌剤は、苦味を有するため、特に液体口腔用組成物ではその苦味により嗜好性に劣り、また、経時で生じる口腔内の乾燥感を改善することができないという欠点が存在した。
【0004】
カチオン性殺菌剤の苦味を低減する方法としては、甘味料による甘味、香料成分によるマスキング技術が報告されている(特許文献1、2、3)。しかし、これら技術は、苦味の改善効果はあるものの高い製剤甘味度や香料による刺激感が生じることがあり、口腔内が乾燥し敏感な使用者層の嗜好性に合わず、また口腔内の乾燥感を改善することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−306768号公報
【特許文献2】特開平08−268855号公報
【特許文献3】特開2001−072562号公報
【特許文献4】特開2009−96748号公報
【特許文献5】国際公開第2009/020010号パンフレット
【特許文献6】特開2009−274967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、カチオン性殺菌剤由来の苦味が低減し、嗜好性を損なうことなく、口臭と口腔内の乾燥とを効果的に抑制し、予防することができ、製剤の保存安定性も良好な口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物に、(B)ポリグルタミン酸又はその塩と、(C)アシルサルコシン塩とを配合することにより、カチオン性殺菌剤由来の苦味が低減し、嗜好性を損なうことなく、口臭を抑制できると共に口腔内の乾燥を抑制でき、特に口腔乾燥をかかえる使用者の口臭及び口腔内乾燥を効果的に抑制し予防することができ、かつ低温及び高温保存後の外観安定性も良好な液体等の製剤が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
本発明者らは、本来、カチオン性殺菌剤はアニオン性化合物とカップリング反応を起こし、アニオン性化合物と併用し難いものであったが、意外にもアニオン性化合物の中で水溶性高分子であるポリグルタミン酸又はその塩にアシルサルコシン塩を併用し、これらをカチオン性殺菌剤と組み合わせて配合することによって、予想外に組成物の低温及び高温保存後の外観安定性が確保され、かつカチオン性殺菌剤由来の苦味を低減できると共に、口臭予防効果を向上できること、しかも、ポリグルタミン酸又はその塩由来の保湿性向上効果、唾液分泌促進効果が有効に発揮され、口腔内の潤い感が高まり口腔内乾燥も効果的に改善できることを見出した。
更に、本発明組成物に(D)ノニオン性界面活性剤を配合し、好ましくは(A)、(B)及び(C)成分の含有量に対する(D)成分の含有量が、質量比として0.4≦(D)/((A)+(B)+(C))≦3であることにより、カチオン性殺菌剤由来の苦味をより低減でき、低温外観安定性をより改善できることを見出した。
【0009】
なお、出願人は、液体口腔用組成物におけるカチオン性殺菌剤の殺菌力をラウロイルサルコシンナトリウム及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を適切に配合することで向上し得ること(特許文献4)、また、ポリグルタミン酸又はその塩を含有するエタノール無配合の液体口腔用組成物にアシルサルコシンナトリウム及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合し、ポリグルタミン酸又はその塩を安定化した技術(特許文献5)、ポリグルタミン酸又はその塩に有機酸又はその塩とグリセリンを適切に配合した口腔スプレー用組成物(特許文献6)を提案した。しかし、これら技術から、カチオン性殺菌剤にポリグルタミン酸又はその塩とアシルサルコシン塩とを併用することによる苦味の低減、低温及び高温保存後の外観安定性の改善は予測できない。
【0010】
従って、本発明は、(A)カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物に、(B)ポリグルタミン酸又はその塩と、(C)アシルサルコシン塩とを配合してなることを特徴とする口腔用組成物、及び、更に(D)ノニオン性界面活性剤を配合した上記口腔用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カチオン性殺菌剤由来の苦味が低減し、良好な嗜好性で、口臭と口腔内の乾燥とを効果的に抑制し得、保存安定性も良好な口腔用組成物を提供できる。本発明組成物は、唾液の分泌量が低下する就寝時の口臭と口腔内の乾燥とを有効に抑制することができ、特に口腔乾燥をかかえる使用者の口臭及び口腔内乾燥の予防に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳述する。本発明の口腔用組成物は、(A)カチオン性殺菌剤、(B)ポリグルタミン酸又はその塩、(C)アシルサルコシン塩を含有してなることを特徴とする。
【0013】
(A)成分のカチオン性殺菌剤としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウムなどの第4級アンモニウム塩型カチオン性殺菌剤;塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなどのピグアニド系殺菌剤;ヘキセチジン、メタロニダゾールなどが挙げられ、これらの1種を単独又は2種以上を併用して配合できる。好ましい殺菌剤は第4級アンモニウム塩型カチオン性殺菌剤であり、より好ましい殺菌剤は、高温の外観安定性の点で、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムである。
例えば、ロンザジャパン社製のハイアミン1622(塩化ベンゼトニウム)、和光純薬工業社製の塩化セチルピリジニウム、日本油脂社製のニッサンカチオンM2−100(塩化ベンザルコニウム)などの商品名で商品化されているもの等が挙げられる。
【0014】
カチオン性殺菌剤の配合量は、組成物全体の0.005〜0.08%(質量%、以下同様。)、特に0.01〜0.05%が好適である。0.005%未満では口臭予防効果が満足に発現しない場合があり、0.08%を超えると苦味が強く使用性が低下したり、低温及び高温保存時に濁りが生じ外観安定性が損なわれる場合がある。
【0015】
(B)成分のポリグルタミン酸又はその塩としては、具体的には化学的に公知の方法で合成されるγ−ポリグルタミン酸、納豆菌等の各種γ−ポリグルタミン酸産生菌株からの発酵生産物として得られる天然γ−ポリグルタミン酸や、これらの塩などの1種又は2種以上が使用できる。
これらの中でも、口腔用組成物に配合することから天然のγ−ポリグルタミン酸又はその塩が好ましく、工業的に大量生産できるγ−ポリグルタミン酸又はその塩が最も好適である。なお、γ−ポリグルタミン酸は、D体でもL体でもよく、D体及びL体が混合していてもよい。
【0016】
γ−ポリグルタミン酸は水に不溶であるが、塩にすることで水溶性となる。この場合、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩、塩基性アミノ酸塩などが挙げられ、口腔用組成物として使用できるものならば特に制限はない。なお、塩の中和度は、その1%濃度の水溶液がpH1〜14の範囲で目的に応じて任意に選ぶことができる。
【0017】
本発明に用いるポリグルタミン酸の分子量は特に限定されないが、下記のGPC法によるピークトップ分子量が1万〜500万、特に5万〜200万の範囲であることが好ましい。
GPC法
ポリグルタミン酸2mgを量り、0.1mol/Lリン酸緩衝液(約pH7.0)2mLに溶かし、試料溶液とする。別に、プルランP−82(P−10,P−50,P−200,P−1600)それぞれ2mgを量り、0.1mol/Lリン酸緩衝液2mLに溶かし、標準溶液とする。試料溶液及び標準溶液50μLにつき、次の条件でGPC試験を行い、島津C−R7A・GPCプログラムによりピークトップ分子量を求め、この値を分子量とする。
<分析条件>
検出器 :示差屈折計
プレカラム :Shodex Asahipak GS−IG 7B(昭和電工(株)製),7.6mmID×100mm又は相当品
メインカラム:Shodex Asahipak GF−710 HQ(昭和電工(株)製),7.6mmID×300mm+Shodex Asahipak GF−510 HQ(昭和電工(株)製),7.6mmID×300mm又は相当品
カラム温度 :40℃付近の一定温度
移動相 :0.1mol/Lリン酸緩衝液
リン酸水素二ナトリウム・無水(Na2HPO4)7.1g及びリン酸二水素カリウム(KH2PO4)6.8gを水に溶かし、1Lとする。
流量 :0.5mL/min
測定時間 :60分
【0018】
上記ポリグルタミン酸又はその塩としては、特に下記式(1)で示されるγ−ポリグルタミン酸ナトリウムが好適である。
【化1】

(但し、式中、nは66〜33,112、好ましくは331〜13,245の整数である。)
【0019】
ポリグルタミン酸又はその塩の粘度は、特に限定されないが、下記方法(以下、同様。)による25℃、4%水溶液の粘度が40〜200mPa・s、特に60〜120mPa・sの範囲であることが好ましく、製品の種類に応じて各種粘度のものを使用できる。
粘度測定法
200mLビーカーに水96gをとり、スターラーで攪拌しながらこれにγ−ポリグルタミン酸又はその塩を4.0g加えて完全に溶解させる。次に、25℃恒温水槽中に1時間静置後、BL型粘度計を用いて正確に1分後の粘度を測定する。
BL型粘度計:東京計器 B型粘度計 型式BL
ローター:No.2
回転数:60rpm
測定温度:25℃
【0020】
このようなポリグルタミン酸又はその塩としては、市販品を使用してもよく、例えば、明治フードマテリア社製の明治ポリグルタミン酸などの商品名で市販されているもの等が挙げられる。
【0021】
ポリグルタミン酸又はその塩の配合量は、組成物全体の0.05〜2%、特に0.1〜1%が好ましい。配合量が0.05%未満であると、使用後の潤い感及びカチオン性殺菌剤の苦味緩和効果が満足に発現せず苦味が問題となる場合があり、2%を超えると高温外観安定性を損なう場合がある。
【0022】
(C)成分のアシルサルコシン塩としては、アシルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を配合することができ、特にナトリウム塩が好ましい。アシルサルコシン塩の脂肪酸の鎖長は、低温保存時の外観安定性の点から8〜12、特に12が好適である。例えば川研ファインケミカル社製のソイポンSLP、日光ケミカルズ社製のNIKKOL サルコシネート MNなどの商品名で商品化されているもの等が挙げられる。
【0023】
アシルサルコシン塩の配合量は、組成物全体の0.05〜1%、特に0.07〜0.5%が好ましい。0.05%未満では低温及び高温外観安定性が十分に確保できない場合があり、1%を超えると低温外観安定性が損なわれる場合がある。
【0024】
本発明組成物には、更に(D)ノニオン性界面活性剤を配合することが好ましい。
(D)成分のノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。好ましくはエチレンオキサイド(E.O.)の平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル基の炭素数が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40のポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸の炭素数が12〜18のデカグリセリンモノ脂肪酸エステルであり、より好ましくはエチレンオキサイドの平均付加モル数が60〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル基の炭素数が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が20〜40のポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸の炭素数が12〜14のデカグリセリンモノ脂肪酸エステルである。
【0025】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のE.O.付加モル数が40未満では、可溶化力が低く、また界面活性剤自身の溶解性が低く、アニオン種とカチオン種の会合体の可溶化や初期外観に劣る場合があり、100を超えるものは市販されていない。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのE.O.付加モル数が10未満では、可溶化力が低く、また界面活性剤自身の溶解性が低く、アニオン種とカチオン種の会合体の可溶化や初期外観に劣る場合があり、40を超えるものは市販されていない。また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいてアルキル基の炭素数が16未満のものや18を超えるものでは高温保存時の外観安定性に劣る場合がある。
デカグリセリンモノ脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数が12未満のものや18を超えるものは、可溶化力が低くアニオン種とカチオン種の会合体の可溶化や初期外観に劣る場合がある。
【0026】
例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては日光ケミカルズ社製のNIKKOL HCO系、日本エマルジョン社製のエマレックスHC系、日本油脂社製のユニオックスHC系等が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては日光ケミカルズ社製のNIKKOL BC系、NIKKOL BS系、日本エマルジョン社製のエマレックス100系、エマレックス600系等が、デカグリセリンモノ脂肪酸エステルとしては日光ケミカルズ社製のNIKKOL Decagln系、三菱化学フーズ社製のリョートー(登録商標)ポリグリエステルDシリーズ等が商品化されており、これらの市販品を使用できる。
【0027】
(D)成分の総配合量は、組成物全体の0.2〜1%、特に0.3〜0.7%が好ましい。配合量が0.2%未満の場合、低温保存時に外観安定性が損なわれる場合があり、1%を超えると口臭予防効果が損なわれる場合がある。
【0028】
また、各成分の濃度比は、(D)/((A)+(B)+(C))が質量比として0.2〜4、特に0.4〜3であることが好ましい。0.2未満の場合、カチオン性殺菌剤の苦味緩和効果が満足に発現せず、苦味が十分に低減しない場合があり、また、アニオン種とカチオン種の会合体の可溶化が劣り高温外観安定性が改善しない場合がある。4を超えるとノニオン性界面活性剤によるカチオン性殺菌剤の不活性化効果が高くなり、口臭予防効果が十分に発現しない場合がある。
【0029】
本発明の口腔用組成物は、練歯磨、液状歯磨、液体歯磨等の歯磨剤、洗口剤等として調製され、特に洗口剤、液体歯磨等の液体製剤として好適に調製できる。また、その剤型に応じ、上記成分以外に適宜な公知成分を必要に応じて配合できる。例えば、各種研磨剤、湿潤剤、増粘剤、防腐剤、甘味剤、香料、(C)及び(D)成分以外の界面活性剤、更には必要により甘味料、香料、着色剤、防腐剤、pH調製剤、(A)及び(B)成分以外の有効成分などを、本発明の効果を妨げない範囲で通常量で用いることができる。
【0030】
研磨剤としては、本発明の効果を妨げない範囲で、例えばシリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、リン酸カルシウム系研磨剤、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を配合することができる。なお、研磨剤は配合しなくてもよく、その配合量は0〜40%、特に0〜30%とすることができる。
【0031】
湿潤剤としては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコールが挙げられる。配合量は通常、組成物全体の0〜20%、特に1〜10%である。
【0032】
粘結剤(増粘剤)としては、例えばキサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。その配合量は、通常0〜5%、特に0.1〜3%である。
【0033】
界面活性剤は、口腔用組成物に汎用されている界面活性剤を用いることができる。具体的には、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム等、カチオン性界面活性剤としてアルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩等を配合してもよい。これら界面活性剤の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常0〜1%、特に0〜0.5%の範囲である。
【0034】
甘味剤としてはサッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイト、スクラロース、還元パラチノース、エリスリトール、アスパルテーム等が挙げられる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。着色剤としては水溶性の色素などが挙げられる。
【0035】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油、及びl−メントール、l−カルボン、シンナミックアルデヒド、オレンジオイル、アネトール、1,8−シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール等の上記天然精油中に含まれる香料成分、また、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンツアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール−l−メンチルカーボネート等の香料成分、更には、いくつかの香料成分や天然精油を組み合わせてなる、アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーの1種又は2種以上が挙げられる。これら香料の配合量は、組成物中0.00001〜3%で、本発明の効果を妨げない範囲で使用することができる。
【0036】
有効成分としては、例えば抗炎症剤、酵素、フッ化物、殺菌剤などを本発明の効果を妨げない範囲で、有効量配合してもよい。
【0037】
本発明組成物は、溶剤として精製水が一般的に配合され、本発明組成物の水の含有量は、組成物全体の60%以上、特に70〜99.74%とすることができる。溶剤として、エタノール等の低級アルコールを本発明の効果を妨げない範囲で0〜10%配合してもよい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特に断らない限りいずれも質量%を示す。
【0039】
〔実施例、比較例〕
表1〜4に示す組成の洗口剤組成物を、精製水を攪拌しながら各配合成分を加え溶解して常法により調製し、これを試験組成物として用い、下記方法で評価した。結果を表1〜4に示す。
【0040】
〔評価方法1〕口臭予防効果
日常的に口の乾きが気になる成人に対し、下記方法で口臭の評価を行い、口臭の強度が2点以上3点以下の者を被験者として選定した。被験者は、口臭の評点の平均がほぼ同じ値となるように30群に分け(各群5名)、試験組成物約10mLを約20秒間洗口使用させた。3時間後に、再び口臭の評価を行い、下記評価基準により試験組成物の口臭抑制効果を評価した。
【0041】
口臭の評価
テドラバッグに採取した呼気1リットルの口臭強度を、専門評価者が下記評価基準に従い官能評価した。更に、下記式により、口臭改善度を求め、試験組成物の口臭抑制効果を下記判定基準により求めた。
<口臭強度の評価基準>
0点:口臭は認められない。
1点:わずかな口臭が認められる。
2点:口臭が認められる。
3点:著しい口臭が認められる。
<口臭改善度の算出式>
(口臭改善度)=(試験開始前の口臭強度平均値)−(試験後の口臭強度平均値)
なお、口臭強度平均値は、各群被験者の口臭強度を平均した値である。
<試験組成物の口臭抑制効果判定基準>
◎:顕著な効果あり。口臭改善度が、1.5点以上。
○:効果あり。口臭改善度が、0.5点以上1.5点未満。
×:効果なし。口臭改善度が、0.5点未満。
【0042】
〔評価方法2〕使用感
評価方法1の試験終了後、試験組成物の味、又は水洗口と比較した際の潤い感について下記方法で評価し、使用感の評価を行った。
(i)苦味の評価
苦味を下記評価基準にて官能評価し、その平均値から、下記判定基準により判定した。
<苦味の評価基準>
0点:苦味を感じない。
1点:苦味をほとんど感じない。
2点:苦味を若干感じる。
3点:苦味を感じる。
4点:苦味を強く感じる。
<苦味の判定基準>
☆:苦味の平均値が、0点以上0.5点未満。
◎:苦味の平均値が、0.5点以上1.0点未満。
○:苦味の平均値が、1.0点以上1.5点未満。
△:苦味の平均値が、1.5点以上2.5点未満。
×:苦味の平均値が、2.5点以上。
【0043】
(ii)潤い感の評価
洗口後の潤い感を下記評価基準にて官能評価し、その平均値から、下記判定基準により判定した。
<潤い感の評価基準>
0点:水洗口時と比較して洗口後の潤い感が低い。
1点:水洗口時と比較して洗口後の潤い感が同等。
2点:水洗口時と比較して洗口後の潤い感がやや高い。
3点:水洗口時と比較して洗口後の潤い感がかなり高い。
4点:水洗口時と比較して洗口後の潤い感が非常に高い。
<潤い感の判定基準>
◎:潤い感の平均値が、3.0点以上。
○:潤い感の平均値が、2.0点以上3.0点未満。
×:潤い感の平均値が、2.0点未満。
【0044】
〔評価方法3〕外観安定性
表に示した組成の試験組成物を満注量90mLのPET容器に80mL充填し、50℃に1ヶ月保存後(高温外観安定性)及び−5℃恒温槽に1ヶ月保存後(低温外観安定性)のオリ、ニゴリをそれぞれ下記基準に則り目視判定した。オリとニゴリの評価のうち、評価が異なる場合はより悪い方の評価点をもって外観安定性の評価値とした。
【0045】
<オリ評価基準>
☆:PET容器を緩やかに転置した際に沈降するオリが全く認められない。
◎:PET容器を緩やかに転置した際に沈降するオリがほとんど認められない。
○:PET容器を緩やかに転置した際に粒子状に沈降するオリがわずかに認められる
が、凝視しなければ判別できないレベルであり、問題ない。
△:PET容器を緩やかに転置した際に線状に連なって沈降するオリが明らかに認め
られる。
×:PET容器を転置させずともオリが認められる。
【0046】
<ニゴリ評価基準>
☆:ニゴリが全くない。精製水を充填したPET容器と比較しても全くニゴリが認め
られない。
◎:ニゴリが全くない。精製水を充填したPET容器と比較してもほとんどニゴリが
認められない。
○:精製水を充填したPET容器と比較して僅かにニゴリが認められるが、比較がな
ければ判別できないレベルであり、問題ない。
△:精製水を充填したPET容器と比較して明らかにニゴリが認められ、比較がなく
てもややニゴリが認められる。
×:精製水を充填したPET容器と比較しなくても明らかにニゴリが認められ、PE
T容器の向こう側を透かし見るのが困難なほど濁っている。
【0047】
使用原料の詳細は下記のとおりである。
塩化ベンゼトニウム:ロンザジャパン社製、商品名 ハイアミン1622
塩化セチルピリジニウム:和光純薬工業社製
塩化ベンザルコニウム:日本油脂社製、商品名 ニッサンカチオンM2−100
ポリグルタミン酸ナトリウム:
明治フードマテリア社製、商品名 明治ポリグルタミン酸
(γ−ポリグルタミン酸ナトリウム 使用したロットの25℃,4%水溶液の粘度85mPa・s、上述のGPC法により測定したピークトップ分子量100万)
ラウロイルサルコシンナトリウム:川研ファインケミカル社製、商品名 ソイポンSLP
POE(60)硬化ヒマシ油:日光ケミカルズ社製、商品名 HCO−60
POE(40)セチル(C16)エーテル:日光ケミカルズ社製
モノラウリン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ社製
クエン酸1水和物:扶桑化学工業社製
クエン酸3ナトリウム2水和物:扶桑化学工業社製
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カチオン性殺菌剤を含有する口腔用組成物に、(B)ポリグルタミン酸又はその塩と、(C)アシルサルコシン塩とを配合してなることを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
更に、(D)ノニオン性界面活性剤を配合してなる請求項1記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(D)ノニオン性界面活性剤が、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40〜100モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキル基の炭素数が16〜18でエチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜40のポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸の炭素数が12〜18のデカグリセリンモノ脂肪酸エステルから選ばれる1種以上である請求項2記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(A)、(B)及び(C)成分の含有量に対する(D)成分の含有量が、質量比として0.4≦(D)/((A)+(B)+(C))≦3である請求項2又は3記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(A)成分が、塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンゼトニウムである請求項1乃至4のいずれか1項記載の口腔用組成物。

【公開番号】特開2012−201607(P2012−201607A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65802(P2011−65802)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】