説明

口腔用組成物

本発明は、共有結合、好ましくはエステル結合またはアミド結合を含む切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合しているポリマー、好ましくはメチルビニルエーテルおよび無水マレイン酸のコポリマーを含む口腔用組成物を提供し、ここでそのポリマーは口腔中の表面に付着することができ、その切断可能なリンカーは口腔中で切断されてその甘味剤を放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001] 口腔用組成物、例えばロゼンジ、チューインガムおよびマウスウォッシュ(mouthwash)はしばしば、甘味を提供し、呼気臭を改善するために甘味料を含む。一度その組成物が口腔に適用されると、高レベルの甘味料が急速に放出され、即時の味覚を提供する。しかし、この味覚は、味蕾の高レベルの甘味料への順応および口腔の唾液中から胃への甘味料の移動のため、急速に減少する。
【0002】
[0002] 米国特許第6464961号および米国特許第6315987号は、殺菌剤、香味料および/または精油化合物に共有結合した反応性の基を有する口腔ケア組成物において有用なポリマーを開示しており、前記の結合は水溶液中で加水分解して前記の化合物を前記の組成物中にゆっくりと放出することができる。米国特許第6464961号および米国特許第6315987号は、メントールおよびチモールを含む香味料のポリマー類、例えばGantrez(登録商標)への結合を開示している。しかし、米国特許第6464961号および米国特許第6315987号のいずれも、甘味剤を含み、その甘味剤がその組成物の中にゆっくりと放出され、その甘味剤が舌の上での味蕾との相互作用により味に影響を与える組成物は開示していない。香味料は嗅覚応答に影響を与え、それらは鼻の奥での嗅覚ニューロンとの相互作用により匂いを提供する。加えて、甘味剤はしばしば香味料とは異なる化学物質の種類に属する。結果として、甘味剤は香味料とは異なる化学的および物理的特性を示し得る。例えば甘味剤のほとんどは水溶性であり、一方で香味料の大部分は油溶性である。
【0003】
[0003] 米国特許公開第2005/0260266号は、少なくとも1種類の封入された有効物質およびその少なくとも1種類の有効薬剤を少なくとも部分的に封入するポリマー母材を含む口腔送達系を開示している。その封入母材は、その少なくとも1種類の有効物質の周囲に少なくとも部分的に物理的な防壁を形成しており、それはその有効物質の口腔中での放出を制御された方式で延長し、および/またはその有効物質の口腔中での放出の均一性を高める。その有効な構成要素には口腔ケア有効物質、抗細菌剤、脱感作剤、呼気臭を打ち消すための薬剤、プラークの酸を緩衝する薬剤および甘味料が含まれる。その組成物には、その配合物のその他の構成要素を収容する(accommodate)ためのキャリヤー組成物が含まれる。そのキャリヤー組成物は、薄膜形成ポリマー、例えばGantrez(商標)を、汚れの形成を低減する手段として含んでいてよい。
【0004】
[0004] 米国特許第5661221号は、口腔ケア製剤において望まれる向上した線形粘弾性特性を有する架橋されたアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを調製するためのプロセスを開示しており、ここでそのアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーのポリオール化合物による架橋は50°から90°までの温度で行われ、その架橋された生成物を回収する。適切なポリオール架橋剤には、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、スクロース、フルクトース、アルキルポリグルコシド、グリセリン、ペンタエリスリトール(pentaerythrytol)、エチレングリコールおよびポリプロピレングリコールが含まれる。その架橋剤は甘味料、例えばスクロースであってよい。しかし、そのスクロースは、それは架橋剤であるため、口腔中に放出されて甘味剤として働くことは無いであろう。そのポリオール類は加水分解反応により切断されてよい。しかし、そのポリオールが架橋剤として用いられる場合(少なくとも2個のエステル結合がそのポリオールにつながっている)、それが加水分解されて放出されるのには、そのポリオールが単一のエステル結合によりそのポリマーに結合している場合よりもはるかに長い時間を要する可能性がある。
【0005】
[0005] 従って、既知の甘味剤を含む口腔用組成物の不利な点を克服することが本発明の目的である。甘味剤の制御された放出を可能にしてそれによりより長い味覚を提供する向上した口腔用組成物を提供することが本発明の目標である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6464961号
【特許文献2】米国特許第6315987号
【特許文献3】米国特許公開第2005/0260266号
【特許文献4】米国特許第5661221号
【発明の概要】
【0007】
[0006] 本発明は、口腔用組成物、口腔用組成物を作るための方法、口腔用組成物中の甘味剤の放出を制御するための方法、口腔用組成物中の香味の感覚を増進する、および/または維持するための方法ならびにそのためのポリマーの使用に関する。
【0008】
[0007] 本発明の第1観点は、切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合しているポリマーを含む口腔用組成物を提供し、ここでそのポリマーは口腔中の表面に付着することができ、その切断可能なリンカーは口腔中で切断されてその甘味剤を放出することができる。
【0009】
[0008] その甘味剤が即時に口腔中に放出されないため、その組成物は好都合である。本組成物は、ポリマーに結合していない甘味剤を含む口腔用組成物と比較して甘味剤の延長された、および/またはより均一な放出を可能にすることができる。従って、その組成物は口腔中の香味の感覚を増進する、および/または維持することができる。その組成物は延長された、および/または均一な甘味および/または呼気臭の改善も提供することができる。
【0010】
[0009] そのポリマーは、口腔中の表面に付着することもできる。これは、その甘味剤が、ポリマーに結合していない甘味剤を含む口腔用組成物と比較してより長い期間口腔中に留まるため、好都合である。
【0011】
[00010] 本発明は、上記で定めた口腔用組成物を含む携帯用投与物品も提供する。
[00011] 第2観点において、本発明は、そのポリマーを切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合させることを含む、上記で定めた口腔用組成物を作るための方法を提供する。
【0012】
[00012] 第3観点において、本発明は、上記で定めた口腔用組成物または上記で定めた携帯用投与物品を口腔に適用することを含む、口腔中での甘味剤の放出を制御するための方法を提供し、ここでその切断可能なリンカーは口腔中で切断されて甘味剤を放出する。
【0013】
[00013] 第4観点において、本発明は、口腔中での香味の感覚を増進および/または維持するためのポリマーの使用を提供し、ここでそのポリマーはその甘味剤に切断可能なリンカーを介して結合しており、ここでそのポリマーは口腔中の表面に付着することができ、その切断可能なリンカーはその香味の感覚が増進および/または維持されるように口腔中で切断されてその甘味剤を放出することができる。
【0014】
[00014] 本発明は、上記で定めた口腔用組成物または上記で定めた携帯用投与物品を口腔に適用することを含む、口腔中での香味の感覚を増進および/または維持するための方法も提供する。甘味および香味の知覚の間に交差反応があることが報告されている(J. Agric. Food Chem. 1999, 47, 43364340)。ミントの香味の知覚は、その甘味が消えれば著しく低下する。その甘味を延長することができれば、香味の知覚が延長される可能性が増大する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00015] 詳細な記述および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していないことは理解されるべきである。
【0016】
[00016] 下記の定義および限定的ではないガイドラインは、本明細書で述べるこの発明の記述の再吟味において考慮されなければならない。本明細書で用いられる見出し(例えば“導入”および“要約”)および副見出し(例えば“組成物”および“方法”)は、本発明の開示内の題目の全体的な組織化だけを意図しており、本発明の開示またはそのいずれかの観点を制限することを意図していない。特に、“導入”において開示されている主題は本発明の範囲内の技術の観点を含んでいてよく、先行技術の列挙を構成してはならない。“要約”において開示されている主題は、本発明の範囲全体またはそのあらゆる態様の余すところのない、または完全な開示では無い。この明細書の節の中での物質の特定の有用性を有するものとしての(例えば“有効な”または“キャリヤー”成分であるとしての)分類または論考は便宜のためになされており、その物質が、それがあらゆる所与の組成物中で用いられた際に、本明細書におけるそれの分類に必ず従って、またはそれにのみ従って機能しなければならないという推論を引き出すべきでは無い。
【0017】
[00017] 本明細書における参考文献の引用は、それらの参考文献が先行技術である、または本明細書で開示される本発明の特許性に何らかの関連を有するという自認を構成しない。導入において引用されている参考文献の内容のあらゆる論考は、単にその参考文献の著者によりなされた主張の概略的な要約を提供することを意図しており、そのような参考文献の内容の正確さに関する自認を構成しない。
【0018】
[00018] 詳細な説明および具体的な実施例は本発明の態様を示すものであるが、説明の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していない。さらに、明記された特徴を有する多数の態様の列挙は、追加の特徴を有する他の態様またはその明記された特徴の異なる組み合わせを組み込む他の態様を除外することを意図していない。具体的な実施例は、この発明の組成物および方法をどのように作る、および用いるかの説明的な目的のために提供されており、別途明示的に記載しない限り、この発明の所与の態様が作られた、もしくは試験された、または作られていない、もしくは試験されていないという表現であることを意図していない。
【0019】
[00019] 本明細書で用いられる語“好ましい”および“好ましくは”は、特定の状況の下で特定の利益を与える本発明の態様を指す。しかし、同じ、または他の状況の下で他の態様も好ましくてよい。さらに、1個以上の好ましい態様の列挙は他の態様が有用ではないことを暗に意味せず、本発明の範囲から他の態様を除外することを意図していない。
【0020】
[00020] 本明細書で用いられる語“含む”およびその変形は、リスト中の品目の列挙が、それもこの発明の材料、組成物、装置、および方法において有用である可能性がある他の同様の品目の除外では無いように限定的で無いことを意図している。
【0021】
[00021] 本明細書で言及される際、別途明記しない限り、全ての組成の百分率はその組成物全体の重量による。
組成物
[00022] 本発明は、切断可能なリンカーを介してポリマーに結合している甘味剤を含む口腔用組成物を提供する。その組成物は、ヒトまたは他の動物の対象に投与または適用されてよい。
【0022】
そのポリマーは口腔の表面に付着することができる。典型的には、そのポリマーが付着することができる表面または層は、歯、粘膜、歯肉、頬、舌および口唇から選択される。好ましくは、そのポリマーは、歯、粘膜、歯肉、頬、舌および口唇を含む全ての口の表面に付着することができる。そのポリマーはその表面に、電荷相互作用またはファンデルワールス相互作用により接着することができる。好ましい態様において、そのポリマーは粘膜付着性ポリマーを含む。
【0023】
[00023] 好ましい態様において、その甘味剤はそのポリマーから、同じ量のポリマーに結合していない甘味剤を含む組成物と比較して延長された期間の間口腔中での香味の感覚および/またはさわやかな呼気の増進を提供する速度で放出される。好ましくは、本発明に従う組成物は、ポリマーに結合していない甘味剤を含む組成物が口腔中で甘味および/またはさわやかな呼気を提供する期間の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍の期間の間、口腔中での香味の感覚および/またはさわやかな呼気の増進を提供する。好ましくは、本発明に従う組成物は、口腔中での香味の感覚および/またはさわやかな呼気の増進を少なくとも5分間提供する。
【0024】
[00024] 本発明に従う口腔用組成物中のポリマーは、それが切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合することができ、口腔への投与に適しているならば、特に限定されない。典型的には、そのポリマーはその甘味剤への結合に適した少なくとも1種類のモノマーを含むコポリマーである。その甘味剤への結合に関する適切なモノマーには、アクリレート、マレエートおよびフマレートが含まれる。そのポリマーは、例えばビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸およびビニルアセテートを含む1種類以上の異なるタイプのモノマーを含んでいてもよい。好ましい態様において、そのポリマーは無水マレイン酸およびメチルビニルエーテルのコポリマー、例えばGantrez(商標)である。
【0025】
[00025] 1態様において、そのポリマーはポリオール化合物で架橋されたアルキルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーでは無く、ここでそのポリオール化合物は好ましくはソルビトール、キシリトール、マンニトール、スクロース、フルクトース、アルキルポリグルコシド、グリセリン、ペンタエリスリトール(pentaerythrytol)またはエチレングリコールである。
【0026】
[00026] そのポリマーをその甘味剤に結合させる切断可能なリンカーは、口腔中で切断されることができるあらゆる適切なリンカーであってよい。好ましい態様において、そのリンカーは共有結合である。この態様において、その共有結合はそのポリマーとその甘味剤の間のあらゆる適切な化学反応から形成されてよい。例えば、そのリンカーはエステル結合またはアミド結合を含んでいてよい。
【0027】
[00027] それぞれのポリマーは甘味剤の1つの化合物に結合していてよい。あるいは、それぞれのポリマーは甘味剤の2個以上の同じまたは異なる化合物に結合していてよい。
【0028】
[00028] その切断可能なリンカーは、口腔中であらゆる適切な手段により切断可能であってよい。好ましい態様において、そのリンカーは加水分解により切断される。そのリンカーは口腔中に存在する酵素により切断されてよい。
【0029】
[00029] 本発明に従う組成物中の甘味剤は、それがポリマーに結合できるならば、特に限定されない。典型的には、その甘味剤は、デキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥した転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分的に加水分解されたデンプン、水素化デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト(isomalt)、アスパルテーム、ネオテーム(neotame)、サッカリンおよびその塩類、スクラロース、ジペプチドに基づく強い甘味料、シクラメート類、ジヒドロカルコン類、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0030】
[00030] その甘味剤およびそのポリマーの量は特に制限されておらず、その甘味剤の必要とされる用途に応じたあらゆる適切な量であってよい。典型的には、そのポリマーはその組成物中に0.001%〜10%の量で存在する。典型的には、その甘味剤はその組成物中に0.005%から5%まで、場合により0.01%から1%までの量で存在する。
【0031】
[00031] 本発明に従う組成物は、典型的には抗プラーク剤、白化剤、抗細菌剤、洗浄剤、香味剤、接着剤、界面活性剤、発泡調節剤(foam modulators)、研磨剤、pH修正剤(pH modifying agents)、湿潤剤、食感剤(mouth feel agents)、着色剤、研磨剤、歯石制御(抗歯石)剤、フッ化物イオンの源、唾液刺激剤、栄養素およびそれらの組み合わせから選択される1種類以上のさらなる薬剤も含んでいてよい。
【0032】
[00032] 好ましい態様において、その組成物はさらに1種類以上の香味剤を含む。この態様は、ポリマーが結合した甘味剤が口腔中でその香味剤の香味の感覚を増進および/または維持することができるため、好都合である。
【0033】
[00033] 本明細書において有用である香味料の中の香味料には、その組成物の味を向上するように作用することができるあらゆる物質または物質の混合物が含まれる。あらゆる口に許容できる天然または合成の香味料、例えば香味油、香味アルデヒド類、エステル類、アルコール類、類似の物質、およびそれらの組み合わせを用いることができる。香味料には、バニリン、セージ、マヨラマ、パセリ油、スペアミント油、桂皮油、ウィンターグリーンの油(サリチル酸メチル)、ペパーミント油、チョウジ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、柑橘油、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツ、アプリコット、バナナ、ブドウ、リンゴ、イチゴ、サクランボ、パイナップル等に由来する果実油およびエッセンス剤(essences)を含む果実油およびエッセンス剤、豆および木の実由来の香味、例えばコーヒー、ココア、コーラ、ピーナッツ、アーモンド等、吸着された、および封入された(encapsulated)香味料、ならびにそれらの混合物が含まれる。芳香および/または冷却または昇温作用を含む口の中の他の感覚作用を提供する成分も、本明細書における香味料の範囲内に含まれる。そのような成分には、メントール、酢酸メンチル(menthyl acetate)、乳酸メンチル、ショウノウ、ユーカリ油、ユーカリプトール、アネトール、ユージノール、カシア(cassia)、オキサノン(oxanone)、[アルファ]−イリゾン([alpha]−irisone)、プロペニルグエトール(propenyl guaiethol)、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、桂皮アルデヒド、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミン(N−ethyl−p−menthan−3−carboxamine)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタンアミド、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール(3−1−menthoxypropane−1,2−diol)、桂皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メトングリセロールアセタール(methone glycerol acetal)(MGA)、およびそれらの混合物が含まれる。1種類以上の香味料は場合により0.01%〜5%、場合により様々な態様において0.05から2%まで、0.1%から2.5%まで、および0.1から0.5%までの総量で存在する。
【0034】
[00034] 食感剤には、その組成物の使用の間に望ましい質感または他の感触を与える物質が含まれる。
[00035] 本明細書において有用な着色剤の中の着色剤には、顔料、染料、レーキおよび特定の光沢または反射性を与える薬剤、例えばパール化剤(pearling agent)が含まれる。様々な態様において、着色剤は歯の表面上に白色または淡色のコーティングを提供し、その組成物により有効に接触された歯の表面上の位置の指標として働く、および/または、その組成物の外観、特に色および/または不透明度を改変して消費者への魅力を増進させるように作用することができる。FD&C染料および顔料、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、赤色、黄色、茶色および黒色酸化鉄、フェロシアン化第二鉄アンモニウム、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、チタン化雲母(titaniated mica)、オキシ塩化ビスマス、ならびにそれらの混合物を含むあらゆる口に許容できる着色剤を用いることができる。1種類以上の着色剤は、場合により0.001%〜20%、例えば0.01%〜10%または0.1%〜5%の総量で存在する。
【0035】
[00036] 本発明の組成物はさらに例えば研磨剤(polishing agent)として有用な任意の研磨剤(abrasive)を含む。あらゆる口に許容できる研磨剤を用いることができるが、研磨剤のタイプ、粉末度(粒径)および量は、その組成物の通常の使用において歯のエナメル質が過度にすり減らされないように選択されるべきである。
【0036】
[00037] 適切な任意の研磨剤には、例えば沈降シリカの形の、またはアルミナと混合されたものとしてのシリカ、不溶性ホスフェート類、炭酸カルシウム類、およびそれらの混合物が含まれる。研磨剤として有用な不溶性ホスフェート類の中には、オルトホスフェート類、ポリメタホスフェート類およびピロホスフェート類がある。説明的な例は、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウムおよび不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。
【0037】
[00038] 本発明の組成物は場合により歯石制御(抗歯石)剤を含む。本明細書において有用な歯石制御剤の中の歯石制御剤には、これらの薬剤のいずれかの塩類、例えばそれらのアルカリ金属およびアンモニウム塩類が含まれる:ホスフェート類およびポリホスフェート類(例えばピロホスフェート類)、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、ポリオレフィンスルホネート類、ポリオレフィンホスフェート類、ジホスホネート類、例えばアザシクロアルカン−2,2−ジホスホネート類(例えば、アザシクロヘプタン−2,2−ジホスホン酸)、N−メチルアザシクロペンタン−2,3−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(EHDP)およびエタン−1−アミノ−1,1−ジホスホネート、ホスホノアルカンカルボン酸。有用な無機リン酸およびポリリン酸塩類には、一塩基性、二塩基性および三塩基性リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸一、二、三および四ナトリウム、トリメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムならびにそれらの混合物が含まれる。
【0038】
[00039] 本発明の組成物は場合により、例えば抗齲食剤として有用なフッ化物イオンの源を含む。カリウム、ナトリウムおよびアンモニウムのフッ化物およびモノフルオロリン酸塩、フッ化第1スズ、フッ化インジウム、アミンフッ化物類、例えばオラフルール(olaflur)(N’−オクタデシルトリメチレンジアミン−N,N,N’−トリス(2−エタノール)−ジヒドロフルオリド)、およびそれらの混合物を含む、あらゆる口に許容できる微粒子化されたフッ化物イオンの源を用いることができる。場合により1種類以上のフッ化物イオンの源が、その口腔用組成物に臨床的に効果的な量の可溶性フッ化物イオンを提供する量で存在する。
【0039】
[00040] 本発明の組成物は場合により、例えば口内乾燥の改善において有用である唾液刺激剤を含む。限定では無いが食物酸(food acids)、例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フマル酸および酒石酸、ならびにそれらの混合物を含むあらゆる口に許容できる唾液刺激剤を用いることができる。場合により、1種類以上の唾液刺激剤が、唾液を刺激するのに有効な総量で存在する。
【0040】
[00041] 本発明の組成物は場合により栄養素を含む。適切な栄養素には、ビタミン類、鉱質、アミノ酸、およびそれらの混合物が含まれる。ビタミン類にはビタミンCおよびD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラアミノ安息香酸、バイオフラボノイド類、ならびにそれらの混合物が含まれる。栄養補給剤には、アミノ酸(例えばL−トリプトファン、L−リシン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチンおよびL−カルニチン)、脂向性物質(lipotropics)(例えばコリン、イノシトール、ベタイン、およびリノール酸)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0041】
[00042] 1態様において、本発明に従う口腔用組成物は口腔ケア組成物である。本明細書で言及される際、“口腔ケア組成物”は、ヒトまたは動物の対象の口腔への、その対象の健康、衛生または外観を増進するための投与または適用に適したあらゆる組成物であり、好ましくは以下のような利益を提供する:口腔の歯、歯肉、粘膜または他の硬もしくは軟組織の病気または障害の予防または処置;全身性の病気または障害の予防または処置;感覚、装飾または美容的利益の提供;およびそれらの組み合わせ。
【0042】
[00043] 様々な態様において、本発明に従う口腔用組成物は意図して飲み込まれるのでは無く、むしろ意図される有用性を達成するのに十分な時間の間口腔中で保持される。他の携帯用の態様(例えばロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、小さな携帯用噴霧器からの口への適用のために配合された液体、小さな携帯用の液滴を生じさせるボトルからの口への適用のために配合された液体、または軟らかい柔軟な錠剤)では、その口腔用組成物は、場合により意図される有用性を達成するのに十分な時間の間口腔中で保持された後意図して飲み込まれる。
【0043】
[00044] 本発明に従う組成物は、好ましくは、マウスウォッシュ、練り歯磨き、歯科用クリーム、チューインガム、義歯用接着剤または携帯用投与物品、例えばロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、小さな携帯用噴霧器(スプレーボトル)での口への適用のために配合された液体、小さな携帯用の液滴を生じさせるボトルでの口への適用のために配合された液体、もしくは軟らかい柔軟な錠剤(“チューイー(chewie)”)(それらに限定されない)のような製品において、口に許容できるキャリヤーを含む。本明細書で用いられる際、“口に許容できるキャリヤー”は本発明の組成物中での使用に関して安全であり、適度な利益/危険性比と釣り合う物質または物質の組み合わせを指す。
【0044】
[00045] 本発明は、上記で定めた口腔用組成物を含む携帯用投与物品も提供し、ここでその携帯用投与物品はロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、スプレーとしての口への適用のために配合された液体中の前記の組成物を含む小さな携帯用噴霧器、液滴としての口への適用のために配合された液体中の前記の組成物を含む小さな携帯用のボトル、および軟らかい柔軟な錠剤から選択される。
【0045】
[00046] 従って、好ましくは、この発明において用いられるための具体的な物質および組成物は、医薬的に、または美容的に許容でき、臨床的に有効であり、および/または臨床的に効果的である。本明細書で用いられる際、そのような“医薬的に許容できる”または“美容的に許容できる”、“臨床的に有効な”、および/または“臨床的に効果的な”構成要素は、ヒトおよび/または動物での使用に適した構成要素であり、適切な量(臨床的に効果的な量)で提供されて、過度の有害な副作用(例えば毒性、刺激、およびアレルギー反応)無しに、適度な利益/危険性比と釣り合う望まれる療法的、予防的、感覚的、装飾的、または美容的利益を提供する。
【0046】
[00047] 本発明は、口腔中で香味の感覚を増進および/または維持するためのポリマーの使用も提供し、ここでそのポリマーは切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合しており、ここでそのポリマーは口腔中の表面に付着することができ、その切断可能なリンカーはその香味の感覚が増進および/または維持されるように口腔中で切断されてその甘味剤を放出することができる。その甘味剤およびポリマーは好ましくは上記で本発明の第1観点において定められたものである。
【0047】
[00048] 製造の方法。本発明は、そのポリマーをその甘味剤に切断可能なリンカーを介して結合させることを含む、上記で定めた口腔用組成物を作るための方法も提供する。
[00049] 上記で論じたように、そのポリマーはあらゆる適切な手段により、好ましくはエステル化によりその甘味剤に結合させることができる。
【0048】
[00050] その方法は、そのポリマーが結合した甘味剤を口に許容できるキャリヤーと、当業者により伝統的に実行されているようなこれらの配合物を作るための伝統的なプロセスにより混合して配合物、例えばマウスウォッシュ、練り歯磨き、歯科用クリーム、もしくはロゼンジを提供する(または本明細書で前に記述したような別の携帯用の形の態様の中に混合して携帯用投与物品、例えば、限定では無いが、ロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、スプレーとしての口への適用のために配合された液体を含む小さな携帯用噴霧器、液滴としての口への適用のために配合された液体を含む小さな携帯用のボトル、もしくは軟らかい柔軟な“チューイー”錠剤を提供する)工程も含んでいてよい。
【0049】
[00051] 使用の方法。本発明は、上記で定めた口腔用組成物または上記で定めた携帯用投与物品を口腔に適用することを含む、口腔中での甘味剤の放出を制御するための方法も提供し、ここでその切断可能なリンカーは口腔中で切断されて甘味剤を放出することができる。
【0050】
[00052] 本発明は、上記で定めた口腔用組成物または上記で定めた携帯用投与物品を口腔に適用することを含む、口腔中での香味の感覚を増進および/または維持するための方法も提供する。
【0051】
[00053] 本組成物は歯磨剤(例えば、限定では無いが、練り歯磨き、または歯科用クリーム)またはマウスウォッシュとして直接歯に適用されてよい。本明細書で言及される際、“歯(単数)”または“歯(複数)”は、天然の歯、義歯、歯科用プレート、充填物、キャップ、歯冠、ブリッジ、歯科インプラント、および同様のもの、ならびに口腔内で永久的または一時的のどちらかで固定されているあらゆる他の硬い表面の歯科用補綴物を指す。この態様において、その歯磨剤は歯のそれぞれの表面に対して歯ブラシで攪拌され、またはそのマウスウォッシュは力強く音を立てて動かす(vigorous swishing)ことにより歯に対して攪拌される。本明細書で用いられる際、“適用する”は、それによりその歯磨剤またはマウスウォッシュがその歯の表面と接触した状態に置かれるあらゆる方法を指す。そのような方法は、様々な態様において、塗布およびブラッシングのような方法による組成物の直接の適用を含む。様々な態様において、その組成物の適用は、その複合物(composite)が歯の表面に洗浄を可能にするために十分な時間の間接触するのを維持するのを助ける適用装置の使用を含む。
【0052】
[00054] 本発明に従う方法は、(a)安全かつ有効な量の上記で定めた組成物の配合された投与量を、携帯用投与物品、例えば、限定では無いが、ロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、スプレーとしての口への適用のために配合された液体を含む小さな携帯用噴霧器、液滴としての口への適用のために配合された液体を含む小さな携帯用のボトル、もしくは軟らかい柔軟な“チューイー”錠剤から口腔中に摂取し、(b)場合によりその投与量をある期間の間口腔内に保持し、そして(c)その投与量を飲み込む工程も含んでいてよい。
【0053】
[00055] 様々な態様において、その対象はその歯磨剤および/またはマウスウォッシュ口腔用組成物が歯の表面と接触している間は食べない、または飲まないのが好ましい。その口腔用組成物は必要に応じて、および必要な時に、任意に、標準的な口腔衛生の手順、例えばブラッシングの使用により、または例えば水を用いたすすぎにより除去することができる。そのプロセスは、望まれる結果、例えば洗浄が成し遂げられるまで、数回繰り返すことができる。
【0054】
[00056] 様々な態様において、本発明の組成物が1種類以上のさらなる有効成分を含む場合、その組成物は、虫歯の予防、白化、プラークの予防または低減、歯肉炎の予防または低減、歯石の制御、敏感性の予防または低減、呼気の悪臭の予防または低減、および汚れの予防を含む口腔中の障害の処置または予防のために用いられてよい。本発明の組成物は、全身性の障害の処置または予防、例えば、全身性の疾患、例えば心臓血管疾患、卒中、糖尿病、重篤な呼吸器感染症、未熟および低い出生時体重の乳児(神経性の/発生的な機能における関係する分娩後機能不全を含む)の発現の危険性、ならびに関係する増大した死亡の危険性の低減により特性付けられる全体的な全身の健康の向上のためにも用いられてよい。
【0055】
[00057] 本発明は下記の限定的で無い実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0056】
[00058] 実施例1:練り歯磨き
【0057】
【表1】

【0058】
[00059] 実施例2:マウスリンス
【0059】
【表2】

【0060】
[00060] 実施例3:薄膜/ウェファー
【0061】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合しているポリマーを含む口腔用組成物であって、ポリマーが口腔中の表面に付着することができ、切断可能なリンカーが口腔中で切断されて甘味剤を放出することができる、前記口腔用組成物。
【請求項2】
表面が歯、粘膜、歯肉、頬、舌および口唇から選択される、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ポリマーが粘膜付着性ポリマーを含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
ポリマーが無水マレイン酸およびメチルビニルエーテルのコポリマーから選択される、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
ポリマーが0.001%〜10%の量で存在する、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
切断可能なリンカーが共有結合を含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
リンカーがエステル結合またはアミド結合を含む、請求項6に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
切断可能なリンカーが加水分解により切断可能である、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
切断可能なリンカーが酵素により切断可能である、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
甘味剤がデキストロース、ポリデキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥した転化糖、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分的に加水分解されたデンプン、水素化デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリンおよびその塩類、スクラロース、ジペプチドに基づく甘味料、シクラメート類、ジヒドロカルコン類、ならびにそれらの混合物から選択される、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
甘味剤が0.005%から5%までの量で存在する、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項12】
甘味剤がそのポリマーから少なくとも5分間口腔中で香味の感覚の増進を提供する速度で放出される、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項13】
組成物が練り歯磨き、歯科用クリーム、マウスウォッシュ、チューインガムまたは義歯用接着剤のための口に許容できるキャリヤーを含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項14】
組成物が抗プラーク剤、白化剤、抗細菌剤および洗浄剤から選択される1種類以上のさらなる薬剤を含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項15】
さらに香味剤を含む、いずれかの前記の請求項に記載の口腔用組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の口腔用組成物を含む携帯用投与物品であって、その携帯用投与物品がロゼンジ、ミント剤、ビーズ、ウェファー、スプレーとしての口への適用のために配合された液体中の前記の組成物を含む小さな携帯用噴霧器、液滴としての口への適用のために配合された液体中の前記の組成物を含む小さな携帯用のボトル、および軟らかい柔軟な錠剤から選択される、前記携帯用投与物品。
【請求項17】
ポリマーを切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合させることを含む、請求項1〜15のいずれかに記載の口腔用組成物を作るための方法。
【請求項18】
ポリマーをエステル化により甘味剤に結合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
口腔中での甘味剤の放出を制御するための方法であって、請求項1〜15のいずれかに記載の口腔用組成物または請求項16に記載の携帯用投与物品を口腔に適用することを含み、切断可能なリンカーが口腔中で切断されて甘味剤を放出する、前記方法。
【請求項20】
口腔中での香味の感覚を増進および/または維持するためのポリマーの使用であって、ポリマーが切断可能なリンカーを介して甘味剤に結合しており、ポリマーが口腔中の表面に付着することができ、香味の感覚が増進および/または維持されるように切断可能なリンカーが口腔中で切断されて甘味剤を放出することができる、前記使用。
【請求項21】
ポリマーが請求項2〜12のいずれかに記載のものである、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
ポリマーが請求項13〜15のいずれかに記載の口腔用組成物中で口腔に投与される、請求項20または請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれかに記載の口腔用組成物または請求項16に記載の携帯用投与物品を口腔に適用することを含む、口腔中での香味の感覚を増進および/または維持するための方法。

【公表番号】特表2012−527455(P2012−527455A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511792(P2012−511792)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/044336
【国際公開番号】WO2010/134903
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】