説明

口腔用組成物

【課題】本発明の目的は、ラクトフェリンとブドウ種子抽出物を含み、使用時に沈殿が形成されず、優れた使用感および保存安定性を有する口腔用組成物を提供することである。
【解決手段】成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または二糖類とを含む口腔用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンには、歯周病菌の内毒素(リポポリサッカライド:LPS)を不活化(不活性化)する作用があるため、歯周病予防の有効成分として口腔用組成物へ配合されており、例えば、ラクトフェリンを配合したチューインガム組成物(特許文献1および2)が提案されている。また、ラクトフェリンをマルチトールと共に配合することにより、ラクトフェリンの口中への咀嚼放出速度が速く、溶出性に優れる上、長期保存安定性に優れ、LPS不活化効果も向上することが報告されている(特許文献3)。
【0003】
一方、ブドウ種子抽出物は強い抗酸化作用がある。特許文献4には、小麦グリアジンおよびポリフェノールを含む機能性咀嚼物において添加できる機能剤として、ラクトフェリン(免疫力の向上)およびキシリトール(口腔内疾患の予防)とともに、ブドウ種子プロアントシアニジン(抗酸化剤)が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03−220130号公報
【特許文献2】特開平05−255109号公報
【特許文献3】特開2008−283964号公報
【特許文献4】特開2007−246541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ラクトフェリンとブドウ種子抽出物を含む組成物においては、使用時にラクトフェリンの沈殿を形成するおそれがあり、これにより、期待した効果が得られない、製剤の変色などの保存安定性低下、味に違和感を生じるなどの使用感の低下等の問題が発生する可能性があった。また、固体系の製剤を調製した場合にも、使用時に口腔内で製剤が溶解した際にラクトフェリンとブドウ種子抽出物による沈殿が形成する場合があり、期待した併用効果が得られないおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、ラクトフェリンとブドウ種子抽出物を含み、使用時に沈殿が形成されず、優れた使用感および保存安定性を有する口腔用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ラクトフェリンとブドウ種子抽出物を併用することにより、ブドウ種子抽出物によりラクトフェリンのLPS不活化効果が促進される(LPS不活化促進効果を有する)ことを見出した。そして、さらに糖アルコールおよび/または二糖類を併用したところ、ラクトフェリンの沈殿の形成が抑制され、優れた使用感および保存安定性を有する口腔用組成物が得られ、かつ、該組成物は、ラクトフェリンおよびブドウ種子抽出物の単独でのLPS不活化効果からは予想外の、顕著なLPS不活化効果を有することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、以下の発明を提供する。
〔1〕成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または二糖類とを含む口腔用組成物。
〔2〕成分(A)/成分(B)の純分換算値の質量比が1.5〜100である上記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕成分(C)/成分(B)の純分換算値の質量比が、純分換算値で組成物全体の10以上である、上記〔1〕または〔2〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕成分(B)の配合量が、純分換算値で組成物全体の0.0065%以上である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔5〕成分(C)が、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元パラチノース、およびトレハロースからなる群より選ばれる1つ以上である上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔6〕洗口剤組成物、キャンディ、錠菓、またはチューインガムである上記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔7〕チューインガムは、
チューインガム主体と、チューインガム主体を包含する糖衣とから構成され、
糖衣に、成分(A)、成分(B)および成分(C)が含まれるチューインガムである、上記〔6〕に記載の口腔用組成物。
〔8〕成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または二糖類とを含む歯周病予防および/または治療組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物は、顕著なLPS不活化効果を有し、ラクトフェリンの沈殿形成が抑制され、優れた使用感を発揮し、安定性にも優れている。そのため、洗口剤組成物などの医薬部外品、ガム、キャンディ、錠菓などの食品等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の説明において「%」は、特に説明がない場合「質量%」を示す。
【0011】
本発明の口腔用組成物は、成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または2糖類とを含む。
【0012】
成分(A)であるラクトフェリンは、動物の体内で広く分布している分子量約8万の鉄結合性の糖タンパク質である。ラクトフェリンの由来、製法は限定されない。例えば、哺乳類(例えばヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマなど)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、またはこれらの乳の処理物(例えば、脱脂乳、ホエーなど)から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィーなど)により分離したラクトフェリン、植物(例えば、トマト、イネ、タバコなど)から生産されたラクトフェリンが挙げられる。ラクトフェリンは市販品を使用してもよく、または公知の方法により調製したものを使用してもよい。ラクトフェリンとしてはウシ由来のものが好ましく使用される。
ラクトフェリンは市販品を用いてもよい。ウシ由来のラクトフェリンの市販品の例としては、森永乳業(株)から発売されている「森永ラクトフェリン」、日本新薬(株)から発売されている「ラクトフェリン」が挙げられる。ラクトフェリンは、ラクトフェリンを1種類用いればよいが、由来や分離条件の異なる2種類以上のラクトフェリンを組み合わせて用いてもよい。
【0013】
成分(A)の配合量は、優れたLPS不活化効果を発揮し、成分(B)によるLPS不活化促進効果が発揮される点で、組成物全体に対して0.01%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましい。配合量が0.01%以上であることにより、成分(A)のLPS不活化効果が十分に発揮され、成分(B)との併用により顕著なLPS不活化効果が発揮される。また、成分(A)の配合量は組成物全体に対して10%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。10%以下であることにより変色が抑制され保存安定性が確保できる。成分(A)の配合量は、組成物全体に対して、0.01〜10%が好ましく、0.1〜3%がより好ましい。
【0014】
成分(B)であるブドウ種子抽出物は、ブドウ種子から抽出された成分を意味する。抽出溶媒としては、有機溶媒、無機溶媒またはこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が使用できる。有機溶媒は、極性溶媒であっても非極性溶媒であってもよい。極性溶媒の例としては、水、エチルエーテル、エチレンクロライド、ジオキサン、アセトン、エタノール、メタノール、酢酸エチル、プロピレングリコールなどが挙げられる。非極性溶媒の例としては、n−ヘキサン、石油エーテル、リグロイン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。無機溶媒としては水、それに酸、アルカリまたはこれらの塩の水溶液が使用でき、具体的には塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、これらの酸、アルカリまたはこれらの塩は2モル以下の濃度で使用することが好ましい。好ましい溶媒は、水、炭素数1〜3の低級アルコール、多価アルコールである。特に、抽出溶媒は、水、エタノール、水/エタノール混合液が好ましい。また、以上に挙げた溶媒の使用量は、原料に対し等容量以上とすることが好ましい。
【0015】
ブドウ種子抽出物の抽出方法は特に限定されない。例えば、上記抽出溶媒で抽出することにより得られる成分、その抽出残渣の少なくとも一部の成分に対し溶媒抽出処理を行って得られる成分、これらの成分について精製を行うことにより単離される成分のいずれも、成分(B)として利用できる。精製により単離される成分の例は、特開昭59−203445号公報、特開昭57−204278号公報、特開昭59−1033665号公報に記載されており、カルノソール、カルノジン酸、7,11,12−トリヒドロキシ−6,10−(エポキシメタノ)アビエタ−8,11,13−トリエン−20−オン(ロズマノール)、およびこれらの塩などが挙げられる。
【0016】
ブドウ種子抽出物の性状は、液状であってもよいし粉末状であってもよい。口腔用組成物が錠菓、トローチなどである場合には、粉末状であることが好ましい。歯磨剤、洗口剤、ゲル剤、キャンディ、グミ、チューインガム、フィルム、口腔用パスタなどである場合には、液状および粉末状のいずれであってもよい。粉末化は、例えば、乾燥、賦形剤(例えば、デキストリン、エリスリトール、トレハロースなど)の添加等によることができる。
【0017】
成分(B)としては、キッコーマン(株)製のグラヴィノールなどの市販品を使用できる。成分(B)としては、ブドウ種子抽出物を1種類だけ用いればよいが、原料であるブドウ種子の種類、用いる溶媒の種類、抽出条件等が異なる2種類以上のブドウ種子抽出物を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
成分(B)の配合量は、純分換算値で組成物全体の0.0065%以上であることが好ましく、0.05%以上であることがより好ましい。0.0065%以上であることにより、成分(B)のLPS不活化促進効果が十分発揮される。また、成分(B)の配合量は、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。3%以下であることにより、成分(A)の沈殿の形成が抑制され、使用時にザラツキ感などの違和感が生じにくくなり優れた使用感が発揮され、変色を防止することができ優れた保存安定性が確保される。成分(B)の配合量は、優れたLPS不活化促進効果を発揮する点で、組成全体の0.0065%〜3%であることが好ましく、0.05〜2%である事が好ましい。
【0019】
成分(C)である糖アルコールおよび二糖類の例としては、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、パラチノース、還元パラチノース、ラクチトール、エリスリトール、トレハロース、マンニトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴、ショ糖、ラクツロース、乳糖、麦芽糖、セロビオースなどが挙げられる。成分(C)としては、マルチトール、キシリトール、還元水飴、エリスリトール、ソルビトール、還元パラチノース、トレハロース、還元麦芽糖水飴が好ましい。成分(C)は、糖アルコール1種類、糖アルコール2種類以上の組み合わせ、二糖類1種類、二糖類2種以上の組み合わせ、糖アルコール1種類と二糖類1種類との組み合わせ、糖アルコール1種類と二糖類2種類以上との組み合わせ、糖アルコール2種類以上と二糖類1種類との組み合わせ、および、糖アルコール2種類以上と二糖類2種類以上との組み合わせ、のうちのいずれであってもよい。
【0020】
成分(C)の配合量は、液体系の口腔用組成物の場合には、組成物全体の1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。1%以上であることによりラクトフェリンの沈殿形成が抑制され、使用時には優れた使用感を発揮し、変色が防止されるなど優れた保存安定性も発揮される。また、成分(C)の配合量は、組成物全体の70%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましい。70%以下であることにより、口腔用組成物を使用する際、ベタツキ感などの違和感が防止され優れた使用感を発揮できる。LPS不活化効果、優れた使用感、および保存安定性確保の観点から、液体系の口腔用組成物の場合には、組成物全体の1〜70%が好ましく、より好ましくは5〜50%である。
【0021】
成分(C)の配合量は、固体系の口腔用組成物の場合には、組成物全体の30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。配合量が30%以上であることにより、ラクトフェリンの沈殿の形成が抑制され、味の劣化およびザラツキ感などの違和感の発生などが防止され優れた使用感が発揮されうる。また、成分(C)の配合量は、99.9835%以下であることが好ましい。99.9835%以下であることにより、成分(A)および成分(B)を適量配合することができるので、LPS不活化効果が十分発揮される。成分(C)の配合量は、液体系の口腔用組成物の場合には、組成物全体の30〜99.9835%が好ましく、より好ましくは50〜99.9835%である。
【0022】
成分(A)/成分(B)の純分換算値による質量比は、1.5以上であることが好ましい。1.5以上であることにより、成分(A)の沈殿の形成が抑制され、LPS不活化促進効果が十分に発揮される。そして味を保ち、ザラツキ感などの違和感の発生が防止され、優れた使用感を発揮することができる。成分(A)/成分(B)の純分換算値による質量比は、100以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。100以下であることにより、変色が防止され保存安定性が確保でき、成分(A)の優れたLPS不活化効果および成分(B)の優れたLPS不活化促進効果が十分に発揮され得る。本発明の口腔用組成物が全体として優れたLPS不活化効果を発揮するために、(A)/(B)の純分換算値による質量比は1.5〜100であることが好ましく、1.5〜30であることがより好ましい。
【0023】
成分(C)/成分(B)の純分換算値による質量比は、10以上であることが好ましく、20以上であることが好ましい。液体系の口腔用組成物の場合には、10以上であることにより、ラクトフェリンの沈殿形成が抑制され、LPS不活化促進効果が十分に発揮され得る。成分(C)/成分(B)の純分換算値による質量比は8000以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。8000以下であることにより、使用時におけるベタツキ感などの違和感の発生が防止され、優れた使用感を得ることができる。成分(A)の沈殿形成を防ぎ、組成物全体としての優れたLPS不活化促進効果を得るためには、成分(C)/成分(B)の純分換算値による質量比は10〜8000であることが好ましく、20〜1000であることがより好ましい。さらに、成分(B)の含有量および(C)成分の含有量は、それぞれ上述の範囲であることが好ましい。
【0024】
固体系の口腔用組成物の場合には、(C)/(B)の純分換算値による質量比は20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。20以上であることにより、使用時に、口腔用組成物の各成分が口腔内で溶解した時に、ラクトフェリンの沈殿形成が抑制され、使用時におけるざらつき感などの違和感の発生が防止され、優れた使用感を得ることができる。固体系では(C)/(B)の純分換算値による質量比の上限値は特に制限はなく成分(A)、(B)の下限値以外の全てが成分(C)であっても問題はない。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、必要に応じて、有効成分である成分(A)、成分(B)および成分(C)のほかに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、例えば、界面活性剤、香料、酸味料、滑沢剤、研磨剤、着色剤、pH調整剤、保存料、光沢剤、流動化剤、除電剤、結合剤、粘稠剤、防腐剤、崩壊剤、有効成分、溶剤、賦形剤、甘味料等が挙げられ、これらの配合量は本発明の効果を損なわない範囲で適宜調整すればよく、常用量でもよい。
【0026】
以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。
【0027】
界面活性剤は、通常口腔用組成物に配合されるものであれば特に制限なく使用できるが、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、アニオン界面活性剤が好適である。
【0028】
非イオン界面活性剤の例としては以下のものが挙げられる:糖の脂肪酸エステルおよび糖アルコールの脂肪酸エステルである、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、マルトトリイトール脂肪酸エステル、マルトテトレイトール脂肪酸エステル、マルトペンタイトール脂肪酸エステル、マルトヘキサイトール脂肪酸エステル、マルトヘプタイトール、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなど;その他の非イオン界面活性剤である、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、アルキロールアミドなど。上記脂肪酸は炭素原子数が12〜18であることが好ましい。
【0029】
両性界面活性剤の例としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ラウリルメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられる。
【0030】
アニオン界面活性剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩などが挙げられる。具体的な例は以下のとおりである:アルキル鎖の炭素原子数が10〜16のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム;N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム;N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウムなど。
【0031】
界面活性剤としては非イオン界面活性剤が、口腔粘膜刺激性など使用感の面から好ましく、糖の脂肪酸エステル、糖アルコールの脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。界面活性剤を配合する場合、配合量は組成物全体に対して0.01〜3%が好ましい。
【0032】
香料としては、例えば、天然香料、合成香料(単品香料)、調合香料(油脂香料(油性香料)、粉末香料など)が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。
【0033】
天然香料の例としては、マスティック油、パセリ油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、メントール油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、コリアンダー油、オレンジ油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローレル油、カモミール油、カルダモン油、キャラウェイ油、ベイ油、レモングラス油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー、シトラス油、ミックスフルーツ油、ストロベリー油、シナモン油、クローブ油、グレープ油などが挙げられる。
【0034】
単品香料の例としては、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルアンスラニレート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチノンアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルフェイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルリオアセテート等が挙げられる。
【0035】
調合香料は、単品香料および/または天然香料を調合して作られる香料である。例えば、メントールミクロン、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、ヨーグルトフレーバー、フルーツミックスフレーバー、ハーブミントフレーバー等が挙げられる。
【0036】
香料の形態は限定されず、精油、抽出物、固形物、およびこれらのいずれかを噴霧乾燥した粉体のいずれでも構わない。香料を配合する場合、配合量は、組成物全体に対して0.001〜15%であることが好ましく、0.001〜10%であることがより好ましい。
【0037】
酸味料の例としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸が挙げられる。酸味料を配合する場合、配合量は組成物全体に対して0.001〜5%が好ましい。
【0038】
滑沢剤の例としてはグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0039】
研磨剤の例としては、以下のものが挙げられる:結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケートなどのシリカ系研磨剤;ゼオライト;リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウムなどのリン酸カルシウム;炭酸カルシウム;水酸化アルミニウム、アルミナ;炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム;ケイ酸ジルコニウム;、ハイドロキシアパタイト、合成樹皮系研磨剤など。
【0040】
研磨剤を配合する場合、配合量は、歯磨剤では組成物全体に対して2〜40%であることが好ましく、5〜20%とすることがより好ましい。洗口剤では組成物全体に対して0〜10%であることが好ましく、0〜5%であることがより好ましい。
【0041】
着色剤の例としては、以下のものが挙げられる:ベニバナ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素、シソ色素、紅麹色素、赤キャベツ色素、ニンジン色素、ハイビスカス色素、カカオ色素、スピルリナ青色素、クマリンド色素などの天然色素;赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号などの法定色素;リボフラビン、銅クロロフィンナトリウム、二酸化チタンなど。
【0042】
pH調整剤の例としては、以下のものが挙げられる:クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸などの有機酸;上記有機酸のナトリウム塩;上記有機酸のカリウム塩;リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどのリン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩。
【0043】
保存料の例としては、以下のものが挙げられる:安息香酸およびその塩;メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル);ソルビン酸およびその塩など。
【0044】
光沢剤の例としては、シェラック、カルナウバロウ、キャンデリラロウなどのワックス類、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。
【0045】
流動化剤の例としては、微粒子二酸化ケイ素などが挙げられる。
【0046】
着色剤を配合する場合、配合量は、組成物全体に対して0.00001〜3%であることが好ましい。pH調整剤、保存料、光沢剤、および流動化剤のいずれかを配合する場合、それぞれの配合量は、組成物全体に対して0.01〜5%が好ましい。
【0047】
結合剤としては、例えばプルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラヤガムなどが挙げられる。結合剤を配合する場合、配合量は製剤により異なり一律に規定することはできない。例えばフィルムの場合には、通常、組成物全体に対し0.01%以上である。上限は、本発明の有効成分以外のすべてを占めていてもよく特に規定されないが、一例を挙げると99%以下である。フィルム以外の場合には、通常、組成物全体に対して0.01〜10%である。
【0048】
粘稠剤の例としては、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。粘稠剤を配合する場合、配合量は、成分(C)の効果が損なわれない範囲で通常、組成物全体に対して1〜50%配合される。
【0049】
防腐剤としては、例えば以下のものが挙げられる:メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル;安息香酸またはその塩(ナトリウム塩など);エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウムなど。
【0050】
崩壊剤の例としては、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、クロスポピドン、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤は錠菓において配合されることが多い。また錠菓において配合される結合剤の例としては、上記のうち、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カラヤガムなどが挙げられる。錠菓において崩壊剤および/または結合剤を配合する場合、それぞれの配合量は、組成物全体に対して0.1〜10%が好ましい。
【0051】
成分(A)、(B)および(C)以外の有効成分の例としては以下のものが挙げられる:フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズなどのフッ素化合物;クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌又は抗菌剤;縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネートなどの歯石予防剤;トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩、β−グリチルレチン酸、アラントインなどの抗炎症剤;ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドなどの歯牙コーティング剤;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、溶菌酵素、プロテアーゼ、セルラーゼ、グルカナーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼなどの酵素剤;塩化ナトリウムなどの収斂剤;硝酸カリウムなどの知覚過敏抑制剤など。上記有効成分は1種配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。上記有効成分を配合する場合、それぞれの配合量は、本発明の効果を損なわず、薬剤学的に許容できる範囲で調整できる。
【0052】
溶剤の例としては、水、および、エタノール、プロパノールなどの炭素原子数3以下の低級アルコールなどが挙げられる。溶剤は、液体系の口腔用組成物には通常配合される。溶剤を配合する場合、溶剤が水の場合の配合量は、組成物全体に対して20〜95%が好ましい。溶剤が低級アルコールの場合の配合量は、組成物全体に対して1〜20%が好ましい。
【0053】
賦形剤の例としては、水飴、ブドウ糖、果糖、転化糖、デキストリン、オリゴ糖等などが挙げられる。口腔用組成物が食品製剤である場合、通常、賦形剤を配合する。
【0054】
甘味剤としては、例えば、ステビア、スクラロース、サッカリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン、サッカリンナトリウムなどが挙げられる。甘味料を配合する場合、配合量は、組成物全体に対して0.001〜3%であることが好ましい。
【0055】
本発明の口腔用組成物は、剤型は特に限定されないが、液体系(液体、液状、ペースト状)、固体系(固体、固形状)などの各種形状に調製できる。剤形の例としては、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨などの歯磨剤組成物、洗口剤組成物、塗布剤組成物、口腔用パスタ、口中清涼剤組成物、食品形態(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチなど)が挙げられる。食品形態においては、いつでもどこでも使用可能な簡便性、携帯性の点から、錠菓、キャンディ、チューインガム、グミおよびフィルムのいずれかが好ましい。
【0056】
キャンディの例としては、キャラメル、ヌガーなどのソフトキャンディ、ドロップ、タフィなどのハードキャンディなどが挙げられ、特に限定されないが、高い機能性実感付与の点でハードキャンディが好ましい。ハードキャンディは常法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、機能成分および香料以外の原料に水を加えて高温(例えば、140〜200℃)で煮詰めた後、冷却(例えば、70〜130℃まで)し、機能成分および香料を添加し、更に冷却、成型する方法で製造することができる。機能成分の活性を保持したまま安定に配合するために、機能成分および香料以外の原料に水を加えて高温(140〜200℃)で煮詰めた後に、冷却(例えば、70℃〜100℃まで)し、機能成分および香料を添加し、更に冷却、成型する方法で製造することがより好ましい。
【0057】
チューインガムとは、ガムベースと糖質を主原料とする咀嚼弾性のある食品であり、糖衣を有していてもよい。チューインガムは常法で製造することができ、特に限定されない。例えば、板状チューインガムの場合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含む各成分を混合し、成型することにより製造することができる。糖衣チューインガムの場合は、成分(A)、成分(B)および成分(C)は、糖衣およびガムベースのうちのいずれか、或いは両方に含まれていればよいが、糖衣に含まれていることが好ましい。これにより、糖衣チューインガムの保存安定性を向上させることができる。このような糖衣チューインガムの製造は、例えば、チューインガム主体の各原料を混合し成型した後に、成分(A)、成分(B)および成分(C)を含有する糖衣によりコーティングすることにより製造することができる。糖衣チューインガムの場合の糖衣層中の成分(A)、成分(B)、成分(C)の配合量は、糖衣の総量に対する上述の各成分の質量%であることが好ましい。(A)/(B)および(C)/(B)の純分換算値による質量比は、糖衣層を構成する組成物の合計を100%として計算してそれぞれの上述の数値範囲であることが好ましい。
【0058】
チューインガム主体に配合されるガムベースとしては、チューインガムに通常用いられるものを使用できる。ガムベースは、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂(平均重合度が約100〜約1000)、天然樹脂類(チクル、ジェルトン、ソルバなど)、ポリイソブチレン、ポリブデン、エステルガム等のガムベース用樹脂(基礎剤)、乳化剤、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、充填剤(タルクなど)、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、グリセリルトリアセテート、グリセリンなどの可塑剤又は軟化剤、天然ワックス、石油ワックス、パラフィンなどから選ばれる成分を配合したものが挙げられる。ガムベースは市販品を使用でき、具体的には、ナチュラルベース(株)製のガムベース、ユース(株)製のガムベースが好適である。なお、上記ガムベースは、クチナシ、ベニバナ、ベニコウジ等の天然色素や二酸化チタン等の着色剤を含有していてもよい。
【0059】
ガムベースの配合量は、組成物全体の10〜50%、特に15〜30%であることが好ましい。
【0060】
錠菓とは、糖質を主原料とし、打錠機などの機器で圧縮成型したものであり、糖衣を有していてもよい。錠菓は常法で製造することができ、特に限定されないが、例えば、各成分を混合し、打錠機などの機器で圧縮(例えば、5〜20kNの圧力条件で)することにより製造することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0062】
<使用した成分>
実施例で使用した成分は以下のとおりである。
ラクトフェリン:森永乳業(株)製「森永ラクトフェリン」
ブドウ種子抽出物:キッコーマン(株)製「グラヴィノールN」(純分70%品、デキストリンで賦形)
マルチトール:(三菱商事フードテック(株)製)、キシリトール:(三菱商事フードテック(株)製)、エリスリトール(三菱商事フードテック(株)製)、ソルビトール(三菱商事フードテック(株)製)、還元水飴(日研化成(株)製)、還元麦芽糖水飴(日研化成(株)製)、還元パラチノース(三井製糖(株)製)、トレハロース(林原商事(株)製)
【0063】
実施例L1〜L3および比較例L1〜L4<組成物(水溶液)の調製>
表1の組成に従い、常法に従って組成物を0.3kg製造し、後述の試験に供した。
【0064】
実施例1〜32および比較例1<洗口剤組成物の調製>
表2〜7の組成に従い、常法に従って洗口組成物を1kg製造し、後述の試験に供した。
【0065】
実施例33〜57および比較例2<キャンディの調製>
表8〜12の組成に従い、成分(A)、成分(B)および香料以外の各成分を混合し、糖質の50%程度の水を加え、加熱溶解し、更に約180℃で加熱し、濃縮した。その後、ゆっくりとかき混ぜながら放冷し、80℃前後にて成分(A)、成分(B)および香料を加えて均一に混合し、約3g/粒となるように成型し、キャンディを1kg作製した。得られたキャンディを、後述の試験に供した。
【0066】
実施例58〜61<チューインガムの調製>
表13の組成に従い、ガムベース(ナチュラルベース(株)製)、キシリトール(三菱商事フードテック(株)製)、マルチトール(三菱商事フードテック(株)製)、還元水飴(日研化成(株)製)、スクラロース(三栄源エフエフアイ(株)製)、および香料を加え、50℃前後にてニーダー中で均一に混練した。この混練物をブロック状に切断し、チューインガム主体(チューインガム層)を得た。この際、チューインガム主体の質量が約1gになるようにした。チューインガム主体に対して、糖衣掛けを行い表13に記載の組成を有する糖衣層を形成させて糖衣チューインガムを製造した。具体的には、糖衣パンまたは回転釜中に上記チューインガム主体を投入し、糖衣パンを15回転/分で回転させながら糖衣層形成用の糖衣液をチューインガム表面にかけ、送風により乾燥させて、チューインガム主体表面に糖衣層を形成させた。
【0067】
49kgのチューインガム主体に対して、複数層に用いる糖衣液の合計質量を36kgとした。糖衣液を乾燥させて得られる固形化した糖衣被覆層は、チューインガム主体質量1gに対して、0.5gの質量の糖衣被覆層が形成された。得られたチューインガムを、後述の試験に供した。
【0068】
実施例62〜65<錠菓の調製>
表14の組成に従い、全成分を均一に混合した後、打錠機〔(株)富士薬品機械製〕を用いて、約10kNの圧力で重量1g、直径13mmφの錠菓を1kg作製した。得られた錠菓を、後述の試験に供した。
【0069】
表中、成分(B)の配合量(%)の表中の記載については、上段に配合量を、下段の括弧内に純分換算値を示す。また、(A)/(B)および(C)/(B)は、成分(B)の純分換算値を用いて計算した値を示す。また、成分(A)、成分(B)、成分(C)およびその他共通の成分の合計が100%に満たない場合は、還元水飴で調整した。
【0070】
歯周病毒素活性抑制試験(LPS不活化効果促進効果の評価)
<サンプル調製>
各実施例で得られた口腔用組成物3gを300mLビーカーに移し、3%塩化ナトリウム(和光純薬工業(株)製)水溶液200mLを添加して30分間攪拌した。300mLにメスアップし、5分間超音波処理し、孔径0.45μm、膜径25mmのフィルター(クラボウ社製)でろ過し、3%塩化ナトリウム水溶液で適切な倍率の希釈を行い、サンプル液とした。
【0071】
<評価1> LPS不活化率
エンドスペシー法(生化学工業(株)製)の変法に従い、以下の手順でLPS不活化試験を行った。
【0072】
歯周病の原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス 381の内毒素(以下、Pg・LPSと略す。)1μg/mLと、上記方法で得たサンプル液、サンプルと同濃度の(A)成分単独配合品を上記方法で処理した溶液、または注射用蒸留水各1mLを37℃で30分インキュベーションした後、Pg・LPSが100pg/mLになるように希釈し、エンドスペシー法によりLPS活性を測定し、LPS不活化率を下記式1により算出した。
【0073】
〔式1〕
LPS不活化率(%)=〔(P−Q)/P〕×100
P=(Pg・LPS単独のABS*)−(注射用蒸留水のABS*
Q=〔(サンプル液+Pg・LPS)のABS*〕−(注射用蒸留水のABS*
*ABSは、545nmの吸光度を表す。
【0074】
<評価2> LPS不活化促進率(Z)
成分(B)による成分(A)のLPS不活化効果の促進率を以下の式2で算出した。
【0075】
〔式2〕
LPS不活化促進率Z=サンプルのLPS不活化率(%)/サンプルと同濃度の成分(A)単独配合製剤のLPS不活化率(%)
【0076】
<評価3> LPS不活化促進効果
下記の評価基準に基づき、LPS不活化促進効果の評価とした。
◎:上記式で算出されたLPS不活化効果促進率Zが1.2以上
○:上記式で算出されたZが1.1以上1.2未満
△:上記式で算出されたZが1.0以上1.1未満
×:上記式で算出されたZが1.0未満
【0077】
<評価4> 沈殿形成抑制効果
(1)液体製剤サンプルの場合(組成物(水溶液)、洗口剤組成物)
調製した液体製剤をポリプロピレン製100mLボトルに充填し、濁り具合を目視判定した。評価基準は以下の通りである。○以上を良好なレベルと判断した。
◎:全く濁りが発生しなかった
○:ほとんど濁りが発生しなかった
△:わずかに濁りが発生した
×:著しく濁りが発生した
【0078】
(2)食品製剤(固体)サンプルの場合(キャンディ、チューインガム、錠菓)
以下のとおり、使用を想定して(口腔内での製剤溶解時を想定して)ラクトフェリン沈殿形成を評価した。
【0079】
調製した食品製剤サンプル3gを30mLの人工唾液に溶解し、ラクトフェリンを含まない食品製剤を同様に溶解したものを比較対象として、濁り具合を目視判定した。評価基準は以下の通りである。○以上を良好なレベルと判断した。
◎:全く濁りが発生しなかった
○:ほとんど濁りが発生しなかった
△:わずかに濁りが発生した
×:著しく濁りが発生した
【0080】
<評価5> 保存安定性(変色)の評価
液体製剤サンプルの場合は、ポリプロピレン製100mLボトルに、5℃および40℃に2ヶ月間保存した。食品製剤サンプルの場合は、約50gを容量150mLのアルミパウチに封入し、5℃および40℃に2ヶ月間保存した。保存後にサンプルを取り出して、外観の色調の変化を評価した。5℃に2ヶ月間保存した対照品と比較して、以下の基準にて評価した。○以上を良好なレベルと判断した。
◎:対照と比較して変化無し
○:対照と比較してごくわずかに変色が認められるが、単独での識別が困難で問題ないレベル
△:対照と比較してやや変色が認められる
×:対照と比較して著しい変色が認められる
【0081】
<評価6> 使用感の評価
男女20名を対象に、食品製剤サンプル3gを適用し、下記評価を行った。評価法、評価基準は以下の通りである。
【0082】
使用中の味を以下の基準で評価した。
5点:異味、ベタツキ感、ザラツキ感などの違和感が全くない
4点:異味、ベタツキ感、ザラツキ感などの違和感がほとんどない
3点:異味、ベタツキ感、ザラツキ感などの違和感がわずかにある
2点:異味、ベタツキ感、ザラツキ感などの違和感がかなりある
1点:異味、ベタツキ感、ザラツキ感などの違和感が非常にある
【0083】
以上の基準にて評価した結果から平均点を算出し、下記の通り評価した。○以上を良好なレベルと判断した。
◎:4.5点以上
○:4点以上4.5点未満
△:3点以上4点未満
×:3点未満
【0084】
【表1】

【0085】
表1から以下のことが分かる。
比較例L2の成分(A)の配合量は比較例L1の成分(A)の配合量の5倍量であるが、LPS不活化効果は、1.2倍程度にしか向上しなかった。しかし、実施例L1〜L3では、成分(A)の配合量が比較例L1と同量であるにもかかわらず、少量の成分(B)を添加することにより、LPS不活化効果は比較例L1の1.2倍以上となり、成分(A)が5倍量である比較例L2と同程度以上であった。
比較例L4は、(C)が存在しないほかは実施例L3と同様である。しかし比較例L4では成分(A)の沈殿が生成して、LPS不活化効果は実施例L3と比較して劣っていた。
これらの結果は、成分(B)が成分(A)のLPS不活化効果を促進すること、および、成分(A)および成分(B)のほかに成分(C)を併用することにより、成分(A)の沈殿が抑制され、LPS不活化効果が十分に発揮されることを示している。
【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
【表5】

【0090】
【表6】

【0091】
【表7】

【0092】
【表8】

【0093】
【表9】

【0094】
【表10】

【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

【0098】
表13中の(A)/(B)および(C)/(B)は、糖衣層中の成分(A)、成分(B)、成分(C)の純分換算値による質量比をもとにそれぞれ算出した。
【0099】
【表14】

【0100】
表2〜14の結果は、本発明の口腔用組成物は、洗口剤組成物、キャンディ、チューインガム、錠菓などの各用途において有用であることを示している。
【0101】
<処方例>
以下、処方例を示す。処方例中の各成分名の右側の数字は配合量(単位:質量%)を示す。
【0102】
処方例1(練歯磨剤)
成分(A):ラクトフェリン 2
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.2
成分(C):キシリトール 30
成分(C):ソルビトール 10
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
アルギン酸ナトリウム 0.5
ポリアクリル酸ナトリウム 0.3
プロピレングリコール 3.0
サッカリンナトリウム 0.01
香料 0.15
メチルパラベン 0.3
精製水 残
合計 100%
成分(A)/成分(B)=14.3
成分(C)/(B)=285.7
【0103】
処方例2(練歯磨剤)
成分(A):ラクトフェリン 1
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.05
成分(C):エリスリトール 20
成分(C):ソルビトール 10
シリカ 15
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ポリアクリル酸ナトリウム 0.9
プロピレングリコール 3.0
デキストラナーゼ 0.2
フッ化ナトリウム 0.21
イソプロピルメチルフェノール 0.05
サッカリンナトリウム 0.01
香料 0.15
メチルパラベン 0.3
精製水 残
合計 100%
成分(A)/成分(B)=28.6
成分(C)/成分(B)=857.1
【0104】
処方例3(練歯磨剤)
成分(A):ラクトフェリン 1
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.05
成分(C):エリスリトール 10
成分(C):ソルビトール 20
成分(C):キシリトール 10
重質炭酸カルシウム 20
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ポリアクリル酸ナトリウム 0.4
プロピレングリコール 3.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.73
サッカリンナトリウム 0.01
香料 0.15
メチルパラベン 0.3
精製水 残
合計 100%
成分(A)/成分(B)=28.6
成分(C)/成分(B)=1142.9
【0105】
処方例4(洗口剤)
成分(A):ラクトフェリン 0.2
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.05
成分(C):キシリトール 5
プロピレングリコール 3
ポリオキシエチレン(100)硬化ひまし油 0.5
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
パラオキシ安息香酸エチル 0.05
クエン酸 0.03
クエン酸ナトリウム 0.25
グリセリン 4.5
サッカリンナトリウム 0.004
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.104
香料 0.3
精製水 残
合計 100%
成分(A)/成分(B)=5.7
成分(C)/成分(B)=142.9
【0106】
処方例5(チューインガム)
成分(A):ラクトフェリン 2
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 1
成分(C):キシリトール 5
成分(C):マルチトール 34
成分(C):還元パラチノース 20
成分(C):還元水飴 5
ガムベース 30
香料 2
メントール 1
合計 100%
成分(A)/成分(B)=2.9
成分(C)/成分(B)=91.4
【0107】
処方例6(トローチ)
成分(A):ラクトフェリン 5
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.5
成分(C):キシリトール 10
成分(C):パラチノース 72.44
ハイドロキシアパタイト 5
アラビアガム 6
香料 1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
ラウロイルザルコシンナトリウム 0.01
合計 100%
成分(A)/成分(B)=14.3
成分(C)/成分(B)=235.5
【0108】
処方例7(口中清涼剤)
成分(A):ラクトフェリン 0.1
成分(B):ブドウ種子抽出物(70%品) 0.01
成分(C):キシリトール 5
エタノール 45
グリセリン 10
ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油 2.5
香料 0.5
塩化ベンザルコニウム 0.01
精製水 残
合計 100%
成分(A)/成分(B)=14.3
成分(C)/成分(B)=714.3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または二糖類とを含む口腔用組成物。
【請求項2】
成分(A)/成分(B)の純分換算値の質量比が1.5〜100である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(C)/成分(B)の純分換算値の質量比が、純分換算値で組成物全体の10以上である、請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(B)の配合量が、純分換算値で組成物全体の0.0065%以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(C)が、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元パラチノース、およびトレハロースからなる群より選ばれる1つ以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
洗口剤組成物、キャンディ、錠菓、またはチューインガムである請求項1〜5のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
チューインガムは、
チューインガム主体と、チューインガム主体を包含する糖衣とから構成され、
糖衣に、成分(A)、成分(B)、および成分(C)が含まれるチューインガムである、請求項6に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
成分(A):ラクトフェリンと、成分(B):ブドウ種子抽出物と、成分(C):糖アルコールおよび/または二糖類とを含む歯周病予防および/または治療組成物。

【公開番号】特開2013−18757(P2013−18757A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155205(P2011−155205)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】