説明

口腔衛生の維持のための組成物および方法

【課題】虫歯,歯周炎,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,または口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病,口腔細菌感染または疾病,口腔創傷またはこれらの組み合わせの予防および/または治療を含む,口腔衛生を維持するための方法および組成物の提供。
【解決手段】1またはそれ以上の単離されたLDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株および1またはそれ以上の単離されたS.oralis株および/または1またはそれ以上の単離されたS.uberis株を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は,米国特許仮出願60/494,169(2003年8月11日出願)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
虫歯は,歯の無機質部分の溶解を特徴とし,その結果歯の痛みおよび生存力の喪失が生じ,費用のかかる歯の修復または抜去が必要になる。米国においては,虫歯は5−9歳の小児の50%,12−17歳の青年の67%,および18歳以上の成人の94%に影響を及ぼしている(Morbidity and Mortality Weekly Reports 51: 144-147, 2002)。清潔な歯は虫歯になることはないが,精力的に掃除しても歯を十分に清潔に保つことは難しい。虫歯を予防または軽減するための種々の方法が開発されており,これには,例えば,フッ化ナトリウム,ケイフッ化ナトリウムまたはケイフッ化水素酸を飲料水に加えること,フッ化ナトリウムまたはフッ化スズを歯磨き剤および口洗剤等の局所用製剤に加えることが含まれる。ポリマー物質または封緘剤で歯をコーティングすることによる虫歯の予防が用いられている。しかし,これらの手法は費用がかかり,リン酸で歯を腐食させることを必要とし,まだ虫歯を発症していない若い小児にのみ有効でありうる。虫歯の治療用に,抗生物質等の抗菌剤も提案されている。抗生物質は,口の中で酸を生成する原因である微生物,例えば,Streptococcus mutansを殺すが,抗生物質は口腔細菌の殺菌に選択的ではなく,口腔中に存在する有益な細菌も殺す。このことにより,口腔中で微生物のバランスが崩れ,深刻な結果になる可能性がある。したがって,当該技術分野においては,虫歯の治療および予防のためのより有効な方法が求められている。
【0003】
Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)は早発性歯周炎,例えば,限局性および汎発性思春期前歯周炎,限局性および汎発性若年性歯周炎,および急速進行性または抗療性成人性歯周炎の主な病原因子である。破壊的な歯周病の最終的な有害な効果は歯の喪失である。米国での全国調査は,限局性若年性歯周炎の発症率は0.53%であり,汎発性若年性歯周炎は0.13%であることを明らかにした(Loe & Brown, J. Periodontol.62: 608-616 (1991)、非特許文献1)。多数の研究からの知見により,早発性疾患は他の工業化国でも同様であり,開発途上国ではより頻度が高いという結論が確認された(Loe & Brown, J. Periodontol. 62: 608-616 (1991))。
【0004】
さらに,一般に成人人口の半分以上に影響する,非常に慣用的な状態であるある種の成人性歯周炎は,口腔に自生する微生物の選択された群により引き起こされるようである。これらには,Aa,Porphyromonas gingivalis,Prevotella intermedia,Bacteroides forsythus,Treponema denticola,Campylobacter rectusおよびEikenella corrodensが含まれる。
【0005】
種々のタイプの歯周炎の治療としては,抗生物質,手術,および機械的治療法があるが,予防の手段はない。早発性歯周炎の治療にはテトラサイクリンが広く用いられてきた。しかし,テトラサイクリンに対する耐性を得た株,ならびに他の病原性微生物が過増殖する可能性に対する懸念が残る。歯周疾病の発症率をかんがみて,当該技術分野においては安全な予防および治療法が求められている。また,歯周感染が全身疾患(例えば,冠状動脈性心臓病)のリスク因子としての役割を有する可能性が最近注目されていることからも,歯周病の管理は非常に重要である。したがって,当該技術分野においては,早発性歯周炎,限局性および汎発性若年性歯周炎,および急速進行性または抗療性成人性歯周炎の治療および予防の方法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Loe & Brown, J. Periodontol. 62: 608-616 (1991)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は,口腔衛生の維持,例えば,歯周炎,虫歯,口腔におけるカンジダまたは真菌の過増殖,口臭,口内乾燥症誘導性虫歯,口腔細菌感染または疾病,および口腔創傷の治療および/または予防のための方法および組成物を提供する。本発明の1つの態様においては,口腔衛生の維持のためのプロバイオティクスが提供される。
【0008】
プロバイオティクスは,生きた単一または混合の培養微生物であり,これを動物またはヒトに適用すると,自生の微細菌叢の特性を改善することにより,その宿主に有益な影響を与える。伝統的には,プロバイオティクスの使用は胃腸管の健康の一般的なカテゴリーに焦点が当てられていたが,他の状態の予防または治療,例えば膣および尿路の健康の維持に,有益な生物を使用するアプローチを適用することが示唆されている。本発明においては,口腔衛生を維持するためにプロバイオティクスを用いる。
【0009】
本発明の1つの態様は,1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株および/または1またはそれ以上のS. uberis株を,乳酸脱水素酵素を欠損している1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株との組み合わせで含む組成物を提供する。ミュータンス・ストレプトコッカス株は,S. rattus,S. cricetus,S. mutans,S. sobrinus,S. downeii,S. macacae,およびS. ferusの1またはそれ以上のLDH欠損株であることができる。組成物はさらに,担体を含むことができる。ミュータンス・ストレプトコッカス株は,乳酸脱水素酵素を欠損している,天然に生ずる株であっても,遺伝的に改変された株であってもよい。ミュータンス・ストレプトコッカス株は,例えば,S. rattusJH145株であることができる。S. oralis株は,例えば,S. oralisKJ3株またはKJ3sm株であることができる。S. uberis株は,例えば,KJ2株またはKJ2sm株であることができる。
【0010】
本発明の別の態様は,1またはそれ以上の単離されたS. oralis株および/または1またはそれ以上の単離されたS. uberis株,および1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株を含み,ここで,ミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損していることを特徴とする食物組成物を提供する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は,1またはそれ以上の単離されたS. oralis株および/または1またはそれ以上の単離されたS. uberis株,および1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株を含み,ここでミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損していることを特徴とする,歯磨き剤,チューインガム,トローチ剤,口腔洗浄剤,または局所用薬剤組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の態様は,被験者の口腔衛生を維持する方法を提供し,この方法は,1またはそれ以上の単離されたS. oralis株および/または1またはそれ以上の単離されたS. uberis株,および1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株を含み,ここでミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損していることを特徴とする組成物を,被験者の口腔に投与することを含む。組成物は,約1日に1回,約1週に1回または約1か月に1回被験者に投与することができる。被験者は哺乳動物,例えばヒトであることができる。口腔衛生を維持することは,歯周炎,虫歯,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周炎,口腔細菌感染または疾病,口腔創傷またはこれらの組み合わせの治療,予防,または治療と予防の両方を含むことができる。
【0013】
本発明のさらに別の態様は,被験者の口腔に治療上有効な細菌を非永続的に定着させる方法を提供し,この方法は,被験者の口腔に,1またはそれ以上の単離されたS. oralis株および/または1またはそれ以上の単離されたS. uberis株,および1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株を含み,ミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損していることを特徴とする組み合わせを投与することを含む。被験者は哺乳動物,例えばヒトでありうる。
【0014】
したがって,本発明は,例えば,虫歯,歯周炎,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,または口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病,口腔細菌感染または疾病,口腔創傷またはこれらの組み合わせの予防および/または治療を含む,口腔衛生を維持するための方法および組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は,JH145による毎日投与治療の結果を示す。
【図2A】図2Aは,S. mutans JH145 ldh遺伝子とS. mutans BHT−2 ldh遺伝子の比較を示す。
【図2B】図2Bは,S. mutans JH145 ldh遺伝子とS. mutans BHT−2 ldh遺伝子の比較を示す。
【図2C】図2Cは,S. mutans JH145 ldhとS. mutans BHT−2 ldhの蛋白質配列の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
プロバイオティクスは,宿主に健康上の利益を与えるのに適当な量の生きた微生物を投与することであると定義することができる。プロバイオティクスは,元々“消化管の健康”のために開発されたが,現在,免疫系の調節,膣および尿路の健康,アレルギー,炎症性疾患および高血圧において研究されている。細菌はヒトにおける通常の居住者であり,口腔は300を越える微生物種の生態学的適所を提供する。論理的には,微生物の相互作用は,歯垢の生態学の管理において,したがってその結果である口腔衛生または疾患において非常に重要である。1つの予防方法は,保護作用をもつ種の集落形成および成長,または健康に良いバランスをもつ微生物細菌叢の確立を促進することである。有益な効果には,特定の酵素または代謝産物の産生が含まれ,またはプロバイオティクス生物は身体が有益な作用を生成するように作用することができる。有益な効果はまた,栄養または付着部位について競合することにより病原性微生物の集落形成または生長を阻害することによっても達成することができる。
【0017】
本発明は,口腔衛生を維持するための組成物,治療システムおよび使用方法を提供し,これには,例えば,被験者における,虫歯,歯周炎,口腔細菌感染および疾病の治療および/または予防,口腔創傷,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,または口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病,創傷治癒の促進,またはこれらの組み合わせが含まれる。本発明の組成物は,治療上有効量のLDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカスの1またはそれ以上の単離された株を,治療上有効量のS. oralisの1またはそれ以上の単離された株および/またはS. uberisの1またはそれ以上の単離された株との組み合わせで含む。
【0018】
Streptococcus oralisおよびStreptococcus uberis
Streptococcus oralis(以前はS. sanguisタイプIIとして知られていた)およびS. uberisは,歯周細菌叢を構成する微生物の正常な健康なバランスを維持するのに重要な成分である。Socransky et al. , Oral Microbiol. Immunol. 3: 1-7 (1988); Hillman and Shivers, Arch. Oral. Biol. , 33: 395-401 (1988); Hillman, et al. , Arch. Oral. Biol. , 30: 791-795 (1985)を参照。S. oralisは過酸化水素を産生し,これは歯周病原
体,例えば,Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa),Bacteroides forsythus,およびP. intermediaを阻害することができる。したがって,S. oralisおよびS. uberisは,口腔衛生の維持に有用でありうる。本発明の組成物は,S. oralisの1またはそれ以上の単離された株,例えば,ATCC35037,ATCC55229,ATCC700233,ATCC700234およびATCC9811を含む。S. oralisの他の株には,KJ3およびKJ3smがある。KJ3smはKJ3の天然に生ずる遺伝的変種であり,ストレプトマイシンに耐性である。ストレプトマイシン耐性は,細菌を容易に単離するためのマーカーを提供するため有利である。さらに,ストレプトマイシン耐性株は,やや弱体化されており,口腔中で野生型株ほど長く生存しない。この特性は,動物の口腔に細菌を非永続的に定着させることが目的である場合に有用である。
【0019】
歯垢中のS. uberisは,特に歯周病原体,例えば,Porphyromonas gingivalis,Campylocbacter recta,およびEikenella corrodensの定着を妨害することにより,歯周衛生と関連づけられてきた。本発明の組成物は,S. uberisの1またはそれ以上の単離された株,
例えば,ATCC13386,ATCC13387,ATCC19435,ATCC27958,ATCC35648,ATCC700407,ATCC9927,KJ2株またはKJ2sm株を含むことができる。KJ2smは,KJ2の天然に生ずる遺伝的変種である。これはストレプトマイシン耐性であり,S. oralisのストレプトマイシン耐性株と同じ利点を提供する。S. oralisの1またはそれ以上の単離された株またはS. uberisの1またはそれ以上の単離された株,またはその両方を本発明の組成物および方法において用いることができる。
【0020】
ミュータンス・ストレプトコッカス
本発明の組成物は,乳酸の産生能が欠失した1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス細菌種を含む。このような株としては,例えば,S. rattus,S. cricetus,S. mutans,S. sobrinus,S. downeii,S. macacae,およびS. ferusが挙げられる。本発明のミュータンス・ストレプトコッカス株は,実質的にL(+)乳酸脱水素酵素(LDH)を産生しない。そのような株は,LDH欠損株と称される。ミュータンス・ストレプトコッカスのLDH欠損株は,ミュータンス・ストレプトコッカスの野生型株より75%,80%,90%,95%,98%,99%,または100%少ない乳酸を産生する。LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株は,天然に生ずるミュータンス・ストレプトコッカスの株であってもよく,遺伝的に改変されたミュータンス・ストレプトコッカスの株であってもよい。LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカスは,口腔中で病原性細菌,例えば,虫歯の主要な病原因子であるS. mutansと競合するか,およ
び/またはこれを排除することができる。LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株は,プロバイオティクスとして投与したときに,口腔中で同じ栄養,定着部位などについてS. mutansと競合するであろう。したがって,LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株は,例えば,虫歯を予防および/または治療するために用いることができる。ミュータンス・ストレプトコッカスのLDH欠損株は非病原性であり,口腔の微小環境を変更させて,病原性生物の定着または成長を予防し,および/または病原体が宿主の自生の細菌叢の一部である場合には,口腔から病原性生物を排除する。
【0021】
LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株の例としては,例えば,S. rattus JH145(ATCC31377)(自然発生的な,天然に生ずるLDH欠損変異体)(JH145変異体のLDHのヌクレオチドおよびポリペプチド配列については図2A−Cを参照)およびJH140(ATCC31341)(化学的に改変したLDH欠損変異体)が挙げられる。例えば,Stanshenko & Hillman, Microflora of plaque in rats following infection with an LDH-deficient mutant of Streptococcus rattus, Caries Res. 23: 375-377 (1989); Hillman, Lactate dehydrogenase mutants of Streptococcus mutans: Isolation and preliminary characterization. Infect. Immun.21: 206-212 (1978);Abhyankar et al. , Serotypec Streptococcus mutans mutatable to lactate dehydrogenase deficiency. J Dent Res 1985 Nov; 64(11): 1267-71を参照。
【0022】
ミュータンス・ストレプトコッカスのLDH欠損株は,ミュータンス・ストレプトコッカス株から,例えば化学的または物理学的変異誘発手法を用いて誘導することができる。これらの手法を用いて変異誘発される株は,遺伝的に改変された株であると考えられる。例えば,ミュータンス・ストレプトコッカス株は,変異原,例えば,亜硝酸,ギ酸,硫酸水素ナトリウム,UV光,5−ブロモ−デオキシウリジン(5BU)等の塩基類似体変異原,エチルメタンスルホネート(EMS),メチルメタンスルホネート(MMS),ジエチルサルフェート(DES),およびニトロソグアニジン(NTG,NG,MNNG)等のアルキル化剤で処理することができる。例えば,In Vitro Mutagenesis Protocols, Braman, Ed. , Humana Press, 2002を参照。
【0023】
天然に生ずる,自然発生LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株は,例えば,Hillman,Lactate dehydrogenase mutants of Streptococcus mutans:isolation and preliminary characterization. Infect. Immun. 21: 206-212( 1978)に開示される方法を用いて製造することができる。自然発生のLDH欠損変異体は,約10-5の頻度で生ずる(Johnson et al. , Cariogenic potential in vitro in man and in vivo in the rat of lactate dehydrogenase mutants of Streptococcus mutans.Arch. Oral Biol. 25: 707-713 (1980)を参照)。
【0024】
ミュータンス・ストレプトコッカスの天然に生ずる,自然発生のLDH欠損株は,細菌をグルコーステトラゾリウム上に播種することにより,ミュータンス・ストレプトコッカスのLDH産生株から区別することができる。LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカスのコロニーは,グルコーステトラゾリウム培地上で明るい赤色であり,比較的コロニーのサイズが大きく,一方,親株は白色であり,比較的サイズが小さい。天然に生ずる,ミュータンス・ストレプトコッカスの自然発生LDH欠損株は,本発明の組成物において用いることができる。
【0025】
S. rattusのLDH欠損株が単離された。簡単には,トッドヒューイット培地中でS. rattus BHT−2の培養物を一晩成長させて飽和させ,希釈したサンプルをグルコーステトラゾリウム培地上に播種して,プレート1枚あたり約300個のコロニーを生じさせる。野生型の酸を産生するコロニーは,この培地上で白色である。LDH欠損変異体は明るい赤色である。S. rattus JH145は,スクリーニングした約100,000個の白色コロニー中の1つの赤色コロニーであった。したがって,S. rattus JH145は天然に生ずるLDH欠損変異体である。
【0026】
ミュータンス・ストレプトコッカスのLDH欠損株,例えば,S. rattus BHT−2のLDH欠損変異体は,グルコースおよび他の糖またはポリオールの存在下でインキュベートしたときに,より少ない総滴定酸を産生し,静止および成長培養の場合にはグルコースの存在下でインキュベートしたときに実質的に少ない乳酸を生成し,ショ糖の存在下で成長させたときに,ヒドロキシアパタイトによりよく接着し,多くの歯垢を蓄積する。LDH活性は,Brown & Wittenberger (J. Bacteriol. 110: 604, 1972)に記載されるようにしてアッセイすることができる。
【0027】
最終pHは,株(1:100)を1%グルコースを含むトッドヒューイット培地中でサブカルチャーすることにより決定することができる。キャンドル型びんで37℃で48時間インキュベートした後,培養物の580nmにおける吸収およびpHを決定することができる。培養物の乳酸濃度は,気液クロマトグラフィーにより決定することができる。Salanitro & Muirhead, Quantitative method for the gas chromatographic analysis of short-chain monocarboxylic and dicarboxylic acids in fermentation media. Appl. Microbiol. 29: 374-381 (1975); Hillman et al. , Acetoin production by wild-type strains and a lactate dehydrogenase-deficient mutant of Streptococcus mutans.Infect. Immun. 55: 1399-1402 (1987)を参照。
【0028】
さらに,当該技術分野において知られるいずれかの遺伝的改変手法を用いて,LDH産生ミュータンス・ストレプトコッカス親株からLDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株を作製することができる。例えば,挿入的変異誘発手法等を用いて,LDH遺伝子またはLDH遺伝子の一部を欠失させるかまたは変異させることができる。他の変異誘発手法としては,例えば,相同組換え,反復配列組換え,オリゴヌクレオチド指示性変異誘発,部位特異的変異誘発,エラープローンPCR,ホスホロチオエート修飾DNA変異誘発,ウラシル含有テンプレート変異誘発,キャップ付きデュープレックス変異誘発,点ミスマッチ修復変異誘発,修復欠損宿主株変異誘発,放射性変異誘発,欠失変異誘発,制限選択変異誘発,制限精製変異誘発,部位飽和変異誘発,アンサンブル変異誘発,反復アンサンブル変異誘発,およびキメラ核酸生成などが挙げられる。したがって,LDH遺伝子を働かないようにする任意の遺伝的改変手法を用いて,LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株を製造することができる。
【0029】
本発明の1つの態様においては,LDH欠損株は,天然に生ずるものであっても遺伝的に改変された変異体であっても,10-7より低い復帰頻度を有し,親の乳酸脱水素酵素活性のレベルの10%より低い活性を示す。
【0030】
本発明の組成物
本発明の組成物は,ミュータンス・ストレプトコッカスの1またはそれ以上の単離された株を,S. oralisの1またはそれ以上の単離された株,またはS. uberisの1またはそれ以上の単離された株,またはS. oralisの1またはそれ以上の単離された株とS. uberisの1またはそれ以上の単離された株との両方との組み合わせで含み,ここで,ミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素(LDH)欠損である。LDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカスとS. oralisおよび/またはS. uberisとの組み合わせは,例えば,この組み合わせを用いて虫歯および歯周炎の両方を予防および治療することができるという,顕著な実用上の有益性を与える。虫歯および/または歯周炎の治療とは,虫歯および/または歯周炎の1またはそれ以上の症状が永久にまたは一時的に緩和され,減少し,予防され,または改善されることを意味する。また,本発明の組成物および方法は,口腔におけるカンジダまたは真菌の過増殖(例えば口臭(臭い息)を治療または予防するための抗生物質治療による)を治療または予防するために,口腔乾燥症(口腔乾燥)に伴う虫歯および/または歯周炎を治療または予防するために,口腔細菌感染または疾病を治療または予防するために,口腔創傷を治療または予防するために,およびこれらの組み合わせに用いることができる。
【0031】
本発明のミュータンス・ストレプトコッカス,S. oralisおよび/またはS. uberis株は,治療上有効な任意の比率で存在することができる。治療上有効とは,虫歯,歯周炎,細菌感染または疾病,口腔創傷,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,または口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病またはこれらの組み合わせの1またはそれ以上の症状が,永久にまたは一時的に緩和され,減少し,予防され,または改善されるのに有効であることを意味する。治療上有効であるとはまた,口腔における創傷治癒を促進するのに有効であることを意味する。
【0032】
本発明の細菌株は,薬学的に許容しうる,または栄養的に許容しうる担体をさらに含むことができる。担体は,投与される被験者の口腔と生理学的に適合性である。担体は,錠剤,カプセル,トローチ剤,または粉体の形で製剤するための,固体系の乾燥材料から構成されるものであってもよい。担体はまた,液体,ゲルおよびチューインガムの形で製剤するための,液体またはゲル系の材料から構成されるものであってもよい。
【0033】
適当な液体またはゲル系の担体としては,限定されないが,水,生理学的塩溶液,尿素,アルコールおよびその誘導体,およびグリコール類(例えば,エチレングリコールまたはプロピレングリコール)が挙げられる。本発明の組成物はまた,天然のまたは合成の香味料および食物等級着色剤を含むことができ,これらはすべて,本発明の細菌株の生存の維持と適合するものである。本発明の組成物には,トウモロコシデンプン,グアーガム,カルボポール,およびキサンタンガム等の増粘剤を加えてもよい。
【0034】
芳香剤および/または着色剤も担体中に含ませることができる。本発明の組成物はまた,グリセロールまたはポリエチレングリコール等の流動化剤を含んでいてもよい。担体の組成は,本発明の細菌株の治療活性を有意に妨害しない限り,様々でありうる。
【0035】
組成物は,種々の方法で,例えば,液体,乾燥塊,歯磨き剤,うがい薬,口腔洗浄剤,液体懸濁液,局所用薬剤,粉末食品補助剤,ペースト,ゲル,固形食品,密封食品,ウエファ,トローチ剤,チューインガム等の中に,経口投与に適するように処方することができる。他の処方は当業者には明らかであろう。本発明の組成物は,栄養補助成分を含むことができ,よく知られる種々の栄養剤の任意のもの,例えば,ビタミン,ミネラル,必須および非必須アミノ酸,炭水化物,脂質,食品,健康補助食品等を含むことができる。
【0036】
本発明の細菌は,例えば,発酵槽で製造することができる。発酵槽から細菌を回収し,例えば濃縮することができる。本発明の細菌は,例えば,脱水またはスプレー乾燥により,使用のために製造することができる。スプレー乾燥は一般に,容器中で高温空気流下で細菌の懸濁液を噴霧することを含む。細菌はまた,マイクロ封入(例えば米国特許6,251,478を参照),凍結乾燥を用いることにより,または保護物質,例えば,トリアシルグリセロール,ワックス,有機エステル,大豆油,綿実油,パーム核油,および長鎖脂肪酸とアルコールのエステル等の脂質物質でコーティングすることにより,使用のために製造することができる。
【0037】
口腔衛生を維持する方法
動物の口腔に定着しうる病原性細菌,例えば,S. mutansおよびActinobacillus actinomycetemcomitansは,1またはそれ以上のLDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株および1またはそれ以上の単離されたS. oralis株,または1またはそれ以上の単離されたS. uberis株,または1またはそれ以上の単離されたS. oralis株と1またはそれ以上の単離されたS. uberis株との両方を含む組成物を口腔に投与することにより,阻害および/または防除することができる。組成物は,被験者,例えば哺乳動物,例えば,ヒト,非ヒト霊長類,イヌ,ネコ,ラット,マウス,ウマ,ヤギ,またはウサギ等の動物の口腔に投与することができる。本発明の細菌株は,口腔の一時的なまたは自生の細菌叢の少なくとも一部を形成することができ,口腔中で有益な予防的および/または治療的効果を示すことができる。
【0038】
本発明は,虫歯,歯周炎,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,または口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病口腔細菌感染または疾病,口腔創傷またはこれらの組み合わせの治療,予防,または治療と予防の両方のための方法を提供する。この方法は,本発明の組成物を被験者の口腔に投与することを含む。歯周炎としては,例えば,早発性歯周炎,限局性および汎発性の若年性歯周炎,および急速進行性または抗療性の成人性歯周炎が挙げられる。組成物は,1日に約1回,1週に約1回または1か月に約1回,被験者に投与する。
【0039】
本発明の組成物は,例えば,食物,水,歯磨き剤,ゲル,ペースト,エマルジョン,エアロゾルスプレー,チューインガム,トローチ剤,錠剤,カプセル,または液体懸濁液の形で経口投与することができる。細菌は,食物,水,ゲルまたは他の担体中に既に処方されているものであってもよく,ユーザが消費前に担体に加える組成物であってもよい。
【0040】
本発明の1つの態様は,被験者の口腔に治療上有効な細菌を非永続的に定着させる方法を提供し,この方法は,被験者の口腔に,S. oralisおよび/またはS. uberisの1またはそれ以上の単離された株およびミュータンス・ストレプトコッカス生物の1またはそれ以上の単離された株を含む組み合わせを投与することを含み,ここで,ミュータンス・ストレプトコッカス生物は乳酸脱水素酵素を欠損していることを特徴とする。本発明の1つの態様においては,投与した細菌株は口腔に永久的に定着するのではなく,細菌の投与の後,株は約1日間,約1週間,約2週間,約3週間,約1か月,約2か月または約3か月口腔中に存在する。場合により,細菌は,被験者の口腔中に永久におよび永続的に定着することができる。
【0041】
本発明の組成物は,約1x103,1x105,1x107,1x109,または1x1011CFUの生存細菌の投与量で投与することができる。1日に1,2またはそれ以上の用量を,約1週間,約2週間,約1か月,約2か月,約3か月,約1年またはそれ以上投与することができる。あるいは,1回用量を約2日に1回,約1週間に1回,約1か月に1回または1年に1回投与することができる。
【実施例1】
【0042】
口腔衛生の維持のためのミュータンス・ストレプトコッカス
JH145で毎日処置すると,栄養,付着部位,および他の因子についての競合のため,自生のStreptococcus mutansのレベルが減少する。自生のS. mutansのレベルの低下は,歯科衛生を増進する。この微生物は虫歯と密接に関連するためである。
【0043】
72匹の離乳(24日齢)スプラグドーリー・ラットに,約1010細胞/mlを含む100マイクロリットルの懸濁液をマイクロピペッターを用いてピペットで口に与えることにより,S. mutansNG8株に感染させた。感染計画は連続する日に2回繰り返した。動物は,別々に檻に入れて,TD80406食餌(Harlan Teklad)および水を自由に摂取させて維持した。NG8は4週間確立させた。動物は無作為に12匹ずつ6群に分け,以下のようにして16週間毎日処置した。
【0044】
a. 群1の動物には,1mlあたり1010個の細胞を含む100マイクロリットルのJH145の懸濁液をマイクロピペッターを用いて与えた。
b. 群2の動物には,1mlあたり109個の細胞を含む100マイクロリットルのJH145の懸濁液をマイクロピペッターを用いて与えた。
c. 群3の動物には,1mlあたり108個の細胞を含む100マイクロリットルのJH145の懸濁液をマイクロピペッターを用いて与えた。
d. 群4の動物には,1mlあたり107個の細胞を含む100マイクロリットルのJH145の懸濁液をマイクロピペッターを用いて与えた。
e. 群5の動物には,1mlあたり106個の細胞を含む100マイクロリットルのJH145の懸濁液をマイクロピペッターを用いて与えた。
f. 群6の動物はシャム処置群である。
【0045】
1週間ごとに綿棒を用いて歯垢および唾液をサンプリングし,サンプルをS. mutansスクリーニング/選択培地に播種して,NG8(白コロニー)およびJH145(赤コロニー)を選択的に培養した。NG8のレベルを時間の関数としてプロットした。図1を参照。
【0046】
第9週の間に,単変量分散分析(Univariate Analysis of Variance(ANOVA))を用いて,6群(すなわち,5つの処置群および1つの対照群)の間の相違を調べたところ,有意なグループ効果が示された。F(5,63)=5.53,p<0.001。この分析のエフェクトサイズ(ES=0.31)および観測検出力(Φ=0.99)は,群間のこの小さい効果を検出するのに十分な量の検出力があることを示した。推測的な予め計画した比較を用いてボンフェロニ(Bonferroni)補正を用いた追加のt検定(p=0.01)を行った。これは,各処置群を対照に対して検定するものである。これらの分析により,処置群1−4は対照群と比較して有意に少ないS. mutans NG8発現を示すことがわかった。t’s(1,21)2.7,p0.01。
【0047】
すなわち,ラットを>106細胞のJH145で毎日処置すると,自生のS. mutansのレベルが減少した。その後,虫歯のリスクが減少し,歯科衛生が改良されるはずである。治療の効果は,1回の処置あたり30−60秒間その口腔内でプロバイオティクスを保持しブクブクうがいをするであろうヒト被験者において顕著に優れていると考えられる。プロバイオティクス調製物を速やかに飲み込むラットと比較して,ヒトの歯はより長くJH145に曝露され,自生のS. mutansと競合する機会が増加し,その結果効果が改良されるはずである。
【0048】
ヒトでの研究を行って,ミュータンス・ストレプトコッカス,例えばS. rattus JH145(ldh,str)の懸濁液に毎日曝露すると自生のS. mutans株の数が減少し,曝露を中止すると最終的にはS. rattus JH145が排除され,自生のS. mutansが元のレベルに戻ることを確認することができる。自生のS. mutansのベースラインレベルを決定することができる。1日用量のS. rattus JH145を被験者の口腔に投与することができる。被験者の口腔細菌叢を毎週サンプリングし,野生型S. mutansのレベルの減少が観察されるまで,野生型S. mutansおよびS. rattus JH145のレベルをモニターすることができる。S. rattus JH145の投与を中止し,口腔細菌叢を毎週サンプリングして,S. rattus JH145のレベルの低下および野生型S. mutansのレベルの増加を追跡することができる。
【0049】
歯周衛生の維持のためのStreptococcus oralisおよびStreptococcus uberis
ヒトでの研究を行って,S. oralis(str)および/またはS. uberisの懸濁液に毎日曝露すると,自生の歯周障害性種およびう蝕原性種の数が減少すること,および治療を中止すると最終的にS. oralisおよび/またはS. uberisプロバイオティクス株が排除され,歯周障害性種およびう蝕原性種が元のレベルに戻ることを確認することができる。
【0050】
例えば,ヒト被験者について,唾液中の4種の歯周障害性細菌のベースラインレベルを決定することができる。1日用量のS. oralisおよび/またはS. uberisをヒト被験者の口腔に投与することができる。ヒト被験者の口腔細菌叢を毎週サンプリングして,1またはそれ以上の病原体のレベルの低下が観察されるまで,病原体およびS. oralisおよび/またはS. uberisのレベルをモニターすることができる。S. oralisおよび/またはS. uberisの投与を中止し,ヒト被験者の口腔細菌叢を毎週サンプリングして,S. oralisおよび/またはS. uberisのレベルの低下およびこれに対応した病原体のレベルの増加を追跡することができる。
【0051】
最後に,ヒトでの研究および動物での研究を行って,1またはそれ以上の単離されたS.oralis(str)および/またはS. uberis株の懸濁液および1またはそれ以上の単離されたLDH欠損のミュータンス・ストレプトコッカス株に毎日曝露すると,自生の歯周障害性種の数が減少すること,および治療を中止すると最終的にプロバイオティクス株が排除され,歯周障害性種が元のレベルに戻ることを確認することができる。
【0052】
本明細書において言及されるすべての特許,特許出願および他の科学技術文書は,その全体を本明細書の一部としてここに引用する。本明細書に例示的に記載されている発明は,本明細書に特定的に開示されていない任意の要素または限定なしでも適切に実施することができる。すなわち,例えば,本明細書における各例において,"・・・を含む","・・・から本質的になる"および"・・・からなる"との用語は,他の2つのいずれかと置き換えることができる。本明細書において用いた用語および表現は,説明の用語として用いるものであり,限定ではない。そのような用語および表現の使用においては,示されかつ記載されている特徴またはその一部の等価物を排除することを意図するものではなく,特許請求の範囲に記載される本発明の範囲中で種々の変更が可能であることが理解される。すなわち,好ましい態様および任意の特徴により本発明を特定的に開示してきたが,当業者には本明細書に記載される概念の変更および変種が可能であり,そのような変更および変種も特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0053】
さらに,発明の特徴および局面がマーカッシュグループまたは他のグループの用語で記載されている場合,当業者は,本発明が,マーカッシュグループまたは他のグループのメンバーの個々のメンバーまたはサブグループに関してもまた記載されていることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株,またはStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株,または1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株およびStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株;および(b)1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株であって,ここでミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損している,
を含む組成物。
【請求項2】
さらに担体を含む,請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が,S. rattus,S. cricetus,S. mutans,S. sobrinus,S. downeii,S. macacae,およびS. ferusからなる群より選択される,請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ミュータンス・ストレプトコッカス株がS. rattusJH145株である,請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が,乳酸脱水素酵素を欠損している天然に生ずる変異体である,請求項1記載の組成物。
【請求項6】
S. oralis株がS. oralis KJ3sm株またはKJ3株である,請求項1記載の組成物。
【請求項7】
S. uberis株がS. uberis KJ2sm株またはKJ2株である,請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が乳酸脱水素酵素を欠損している遺伝的に改変された株である,請求項1記載の組成物。
【請求項9】
(a)1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株,またはStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株,または1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株およびStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株;および(b)1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株であって,ここでミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損している,
を含む食物組成物。
【請求項10】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が,S. rattus,S. cricetus,S. mutans,S. sobrinus,S. downeii,S. macacae,およびS. ferusからなる群より選択される,請求項9記載の食物組成物。
【請求項11】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が乳酸脱水素酵素を欠損している天然に生ずる変異体である,請求項9記載の食物組成物。
【請求項12】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が乳酸脱水素酵素を欠損している遺伝的に改変された株である,請求項9記載の食物組成物。
【請求項13】
(a)1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株,またはStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株,または1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株およびStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株;および(b)1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株であって,ここで,ミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損している,を含む,歯磨き剤,口腔洗浄剤,チューインガム,トローチ剤,または局所投与用薬剤組成物。
【請求項14】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が,S. rattus,S. cricetus,S. mutans,S. sobrinus,S. downeii,S. macacae,およびS. ferusからなる群より選択される,請求項13記載の組成物。
【請求項15】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が乳酸脱水素酵素を欠損している天然に生ずる変異体である,請求項13記載の組成物。
【請求項16】
ミュータンス・ストレプトコッカス株が乳酸脱水素酵素を欠損している遺伝的に改変された株である,請求項13記載の組成物。
【請求項17】
被験者の口腔衛生を維持する方法であって,請求項1記載の組成物を被験者の口腔に投与することを含む方法。
【請求項18】
被験者が哺乳動物である,請求項17記載の方法。
【請求項19】
組成物が約1日に1回,約1週に1回,または約1か月に1回被験者に投与される,請求項17記載の方法。
【請求項20】
口腔衛生を維持することが,歯周炎,虫歯,カンジダまたは真菌の過増殖,口臭,口内乾燥症誘導性の虫歯または歯周病,口腔細菌感染,口腔細菌疾病,口腔創傷,またはこれらの組み合わせの治療,予防または治療と予防の両方を含む,請求項17記載の方法。
【請求項21】
被験者の口腔に治療上有効な細菌を非永続的に定着させる方法であって,被験者の口腔に,
(a)1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株,またはStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株,または1またはそれ以上の単離されたStreptococcus oralis株およびStreptococcus uberisの1またはそれ以上の単離された株;および(b)1またはそれ以上の単離されたミュータンス・ストレプトコッカス株であって,ここで,ミュータンス・ストレプトコッカス株は乳酸脱水素酵素を欠損している,
の組み合わせを投与することを含む方法。
【請求項22】
組み合わせが,約1日に1回,約1週に1回,または約1か月に1回被験者に投与される,請求項21記載の方法。
【請求項23】
被験者が哺乳動物である,請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2012−46528(P2012−46528A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207299(P2011−207299)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2006−523306(P2006−523306)の分割
【原出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(506047905)オラジェニックス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】