説明

口腔貼付用錠剤

【課題】
口腔、上気道及び食道の疾病、更に、口腔微生物の異常増殖によって惹起される疾病、又は口腔内の悪臭を治療/予防する口腔貼付用錠剤において、特に歯茎等にも良好に貼着して効率よく有効成分を吸収させること。
【解決手段】
扁平な板状錠剤において、一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面とし、他面をなだらかなアールを有する凸面とすることにより、口腔内の粘膜はもとより、歯茎等にも良好に貼着して効率よく有効成分を吸収させることができる口腔貼付用錠剤がえられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の粘膜等に長期間に亘って安定に貼着することが出来る口腔貼付用錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔、上気道及び食道の疾病、更に、口腔微生物の異常増殖によって惹起される疾病、又は口腔内の悪臭等を治療/予防するために、口腔内に薬剤を徐々に放出したり、或いは口腔から薬剤を吸収させる口腔貼付用錠剤が用いられているが、従来品はごく普通の錠剤、すなわち、両面ともアールの小さい凸型の錠剤が用いられている(例えば、特許文献1又は特許文献2)。
【0003】
しかしながら、医療の現場において従来の形状の口腔貼付用錠剤を用いた場合、粘膜の硬軟で貼付しづらいケースも多く、口腔内、特に、歯茎に貼着しにくく、ややもすると口腔内を移動し、誤って飲み込んだり、噛み砕いたりして、長期間口腔内に止まらないこともあり、口腔内に薬剤を徐々に放出したり、或いは口腔から薬剤を吸収させるという本来の目的を達成できないこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開特開2002−322088号公報
【特許文献2】再公表WO2005−084703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、口腔内に貼付する組織部位の硬軟に応じて具合よく貼付できるようにすることである。具体的には、骨に支持された比較的硬い粘膜、例えば、硬口蓋、歯槽粘膜などや、逆に、骨に支持されていない比較的軟らかい粘膜、例えば、軟口蓋、頬粘膜、口唇など、貼付する粘膜組織の硬軟に応じて固着しやすくすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような従来の口腔貼付用錠剤の短所を改善するために種々検討した結果、少なくとも一方の面を緩やかな凹面状とすることにより、口腔内、特に、歯茎にも良好に貼着させることができることを知見し、さらに鋭意検討して、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
すなわち、本発明は、扁平な板状錠剤において、少なくとも一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面とすることにより、口腔内の粘膜はもとより、歯茎等にも良好に貼着して効率よく有効成分を吸収させることができる口腔貼付用錠剤である。また、本発明は、扁平な板状錠剤において、一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面とし、他面をなだらかなアールを有する凸面とした口腔貼付用錠剤である。さらに、本発明は、粘着成分およびまたは徐放成分を含有する口腔貼付用錠剤である。本発明は、さらに、一方の面をなだらかなアールを有する凹面とし、他面をなだらかなアールを有する凸面とした口腔貼付用錠剤である。本発明の口腔貼付用錠剤では、たとえば、骨に支持された硬口蓋や歯槽などの硬い部位では凸面をあてがって被着面積を稼ぎ、骨に支持されない軟口蓋、頬粘膜、口唇、舌、口腔底などには凹面をあてがうことにより、ペクチンによる化学的接着のみならず、錠剤と粘膜面とで形成される微小空間が陰圧になることによる物理的な吸着力も利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の口腔貼付用錠剤の平面図
【図2】本発明の口腔貼付用錠剤の側面図
【図3】図1の平面図A-Bにおける断面図
【図4】本発明の他の口腔貼付用錠剤の平面図
【図5】図4の平面図A-Bにおける断面図
【図6】図4の平面図C-Dにおける断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の口腔貼付用錠剤は、扁平な板状錠剤において、一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面としたものである。このような本発明の口腔貼付用錠剤は、通常、円形に構成するが、楕円状、板状、帯状など、任意の形状でよい。本発明の口腔貼付用錠剤は、口腔内、特に、歯茎に貼着しやすくするもので、短径を0.1−2センチ、好ましくは0.3−1.5センチにするのが望ましい。長径は0.5−5センチ、好ましくは0.8−3センチ程度あってもよい。本発明の口腔貼付用錠剤は、比較的長期にわたって口腔内に貼着させるのが望ましく、錠剤の厚みは違和感を感じさせない程度が望ましい。通常は、0.1−0.5センチ、好ましくは0.1−0.3センチ程度が望ましい。本発明の口腔貼付用錠剤は、扁平な板状錠剤において、一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面としたものであるが、有効成分を可久的に大量含有させるために、他方の面はなだらかなアールを有する凸面とすることが望ましい。
【0010】
本発明の口腔貼付用錠剤は、粘着成分を含有させるのが望ましい。粘着成分としては、たとえば、澱粉、カゼイン、トラガカントゴム、プルラン、水溶性大豆多糖類、コラーゲンなどの植物性、動物性成分、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、アルギン酸ナトリウムなどを用いることができる。このような粘着成分は、貼り付けた部位から移動しにくくなるに十分な量で用いるのが望ましく、通常、1錠あたり約5−100ミリグラム程度含有させるのが望ましい。
【0011】
また、本発明の口腔貼付用錠剤は、徐放成分を含有させて、比較的長期にわたって口腔内に貼着させて、常に一定量の有効成分を徐々に放出させるのが望ましい。このような徐放成分としては、たとえば、ガラクツロナンまたはポリガラクツロン酸を主体とする植物由来のコロイド性の炭水化物誘導体、例えばプロトペクチン、ペクチニン酸、ペクチナート、ペクチン、ペクチン酸などを用いることが出来る。また、本発明の口腔貼付用錠剤は、口腔内の体温や唾液の存在により弾性化ないし柔軟化しても良い。このような本発明の口腔貼付用錠剤は、有効成分の放出完了後、溶解して消失するように、その他の製剤成分を配合するのが望ましい。
【0012】
本発明の製剤の調製には、従来の製造技術を用いることができる。例えば錠剤製造法を応用することができる。顆粒圧縮法または直接粉末圧縮法のいずれも用いることができる。有効成分としてタンパク質など水分の添加と乾燥時の加熱の影響を受けやすいものを用いる場合には、直接粉末圧縮法が望ましい。本発明の製剤では、崩壊剤を特に添加しない他は、一般的な医薬品用添加剤である、増量剤(例えば、微結晶セルロース、澱粉、力ルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン)、呈味料(例えば、単糖、二糖類)、低分子生理活性物質(例えば、ビタミンおよびアミノ酸)、香料(例えば、メントール)等を添加することができる。
【0013】
このような本発明の口腔貼付用錠剤は、口腔内での溶解時間(または溶解して消失する時間)は、投与される者の唾液分泌量や貼付位置等によって異なるものであるが、例えば、約5分〜1日、好ましくは約10分〜12時間、より好ましくは約15分〜8時間、さらに好ましくは約0.3〜5時間、最も好ましくは約0.5〜1時間である。本発明の製剤の口腔内溶解時間は、適当な装置を用いた測定で得られた値より算出することができる。
【0014】
本発明の製剤は、患部や患部の近くに貼付することができる。本発明の製剤は、複数個を同時に、また繰り返して貼付することができる。例えば、口腔内の複数の場所に、複数の製剤を貼付することができる。また、貼付した製剤が溶解し、消失した後、同じ場所または異なる場所に、別の製剤を貼付することができる。さらに、例えば1日1〜10回、好ましくは1日2〜5回、使用することができる。本発明の製剤は、長期間継続して用いることができる。この期間は、貼付目的や、貼付の効果の程度に応じて適宜設定することができる。通常は、数日〜50日程度である。貼付は毎日でもよく、数日おきでもよく又は連続貼付の間に投与しない期間を設けてもよい。また、食後、食間、就寝前の貼付が好ましい。他の医薬または食品と併用することもできる。
【0015】
本発明の口腔貼付用錠剤には、口腔、上気道および食道の疾病、すなわち口腔乾燥症、齲歯、歯周病、歯肉炎、口臭、口内炎、上気道炎、逆流性食道炎、擦過傷、咬傷、義歯性辱創、口角ビラン等の治療および/または予防、並びに口腔内微生物の異常増殖の抑制のために用いられる有効成分等を含有させることができる。たとえば、唾液産生の誘導、口腔、上気道もしくは食道の痛みの緩和、上気道もしくは食道の消炎、または口腔、上気道もしくは食道の殺菌のためのタンパク質性の活性成分、好ましくは、ラクトフェリン、ラクトパーオキシダーゼおよびリゾチームなどを含有させることもできる。また、慢性剥離性歯肉炎、ビランまたは潰瘍を伴う難治性口内炎、舌炎、およびアフタ性口内炎の治療薬として、グルココルチコイドのトリアムシノロン・アセトナイドを含有させることもできる。
【実施例】
【0016】
図1〜3に示されるような、一方の面がなだらかなアールを有する凹面で、他面がなだらかなアールを有する凸面の口腔貼付用錠剤を製造した。ラクトフェリン(タツア・ミルク・バイオロジクス社製)385g、ペクチン(「スローセット」;八宝商会製)385g、キシリトール(「キシリット」;東和化成工業製)230g、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステル「B−370F」;三菱化学フーズ製)15gを充分に混合し、卓上型ロータリー式打錠機(RIVA社)を使用して、打錠圧8kNで8mm径の錠剤(厚さ約1mm、Rサイズ:12R)を調製した。ラクトフェリンおよびキシリトールは、微粉砕後、100メッシュで篩過したものを使用し、ペクチンは市販品を80メッシュで篩過したものを使用した。
【0017】
調製した錠剤は、ヒトロ腔内における付着性が従来品に比べて著しく良好で、特に頬粘膜、軟口蓋などへの付着力があり、使用中に位置がずれるなどの問題がなくなった。また付着時の違和感も殆どなかった。さらに、口腔内に付着した錠剤は、徐々に溶解し、約1〜2時間後にほぼ消失し、徐放性も問題ないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0018】
近年、オーラルケアの目的でラクトフェリンなどの有効成分を口腔内に徐々に放出する治療が行われる。本発明はこのような治療目的に好適の剤形を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な板状錠剤において、一方の面を平面ないしなだらかなアールを有する凹面とし、他面をなだらかなアールを有する凸面とすることを特徴とする口腔貼付用製剤。
【請求項2】
一方の面が平面である請求項1に記載された口腔添付用製剤。
【請求項3】
一方の面がなだらかなアールを有する凹面である請求項1に記載された口腔添付用製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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