説明

口腔送達システム

【解決課題】通常の乾燥粉末工程で混合でき、且つ標準的な錠剤製造機を用いて圧縮できる口腔送達システムを提供する。
【解決手段】(a)有効量の、1種類以上の活性成分;(b)マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上の、分子量1000〜8000のポリエチレングリコールまたはその誘導体;(c)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;(d)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに(e)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料;を含む口腔送達システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された治療薬送達を提供する口腔送達システムに関する。特に本発明は口腔投与製剤に関する。本発明は更に、口腔膜を介して1種類以上の活性成分を送達できる投薬製剤の、より簡便、且つより経済的な製造方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では文書、行為、または知識項目を参照または論じているが、この参照または論議は前記文書、行為、または知識項目、あるいはそれらの組み合わせが、優先日において公然と入手できること、公知であること、周知な知識の一部であること;または本明細書が関係する問題を解消する試みに関連していることが既知であることを是認するものではない。
【0003】
治療薬を動物、特にヒトに効率的に送達する能力は、レシピエントのコンプライアンスに依存することが多い。コンプライアンスはまた、作用物質の送達に用いた製剤と結びつくか、または関連することも多い。提供される製剤は製造の容易さにも依存する。
【0004】
これに加えて、製剤自体が送達される薬物の効力にとっても重要であることが多い。このことは特にパラセタモールのような鎮痛剤の送達に当てはまる。血流へのパラセタモール送達における律速段階の一つは、胃内容物排出速度である。パラセタモールをアルカリpHで提供する様々な製剤が提案されている。
【0005】
治療薬を効率的に素早く、その上不要な副作用を誘発することなしに送達する、より改善された薬物送達製剤を開発することが引き続き求められている。
【0006】
薬物送達システムの主な目的は、副作用を最小限に抑えながら作用標的部位で特異的生物学的作用を得ることである。医薬品の生物活性は、生物学的活性形状の放出を可能とする適正な生理化学的特性を持たない場合には最適ではないことが教示されている。そのために、改善された薬物送達のストラテジーは、安定性、溶解性、および分散性を含む活性薬物の物理化学的特性を変更することに焦点を合わせている。
【0007】
トローチ
1800年代には、口および咽喉感染症の治療にロゼンジが広く用いられていた。これらは口の中で溶解するようにした、小さな、四角形の、穏やかに薬効を発揮する固体である。完成したトローチはプラスチック製の較正済みの型に分配され、正確、且つ精密な投与単位を含有している。英国では、それらはロゼンジと呼ばれ、米国ではトローチと呼ばれ、フランスではタブレット(tablette)、そしてドイツではパスチレン(pastillen)と呼ばれた。トローチは口腔内でゆっくり溶解し、活性成分は殆どが頬内側の軟らかな内層によって吸収される。この場合は、血流が、針を使った注射と同様に他の体部までホルモンを運搬する。
【0008】
トローチは1841年にエジンバラ薬局方に初めて登場し、続いて1864年に英国薬局方に登場した。1800年代、トローチ製造は芸術的な作業であり、多くの実務経験を必要とした。トローチ製造に必要な器具は、それらを混ぜるための平滑な大理石の厚板、のし棒、トローチカッター、パレットナイフ、長い柔らかなアナグマの毛を使ったブラシ、リネン布、およびトローチ用のトレーであった。
【0009】
今日ではコンピュータによって、大理石の厚板、木製トレー、ブラシ等は複雑な電動式ミキサー、香味の付けられたポリ−グリコール基材、精密な電子秤(ミリグラムの投与量を測定できる)、および完成したトローチを正確、且つ精密な投与形態にする小型電気ホットプレートに取って代わられている。完成したトローチは、プラスチック製の較正済みの型に分配される。広範囲の香味料のトローチが利用でき、最も難しい患者から服薬遵守を得るのに役立つ。
【0010】
トローチは、小投与量の特製医薬品を血流に直接送達する手段を提供する。今日多くの薬剤が、生薬および合成薬共に、トローチの形状で用いることができ、作用の迅速な発現を得ること、および通常の血流内への吸収を回避し、このようにして肝臓を迂回することができる。これは肝臓への負荷を減らし、特に肝毒性薬物にとって有益である。
【0011】
今日トローチは主にホルモン補充療法に用いられているが、それは処方毎の成分変更が容易であり、頬での吸収には胃での代謝が関与しないからである。トローチはまた、それぞれの個別トローチが小投与量の様々な天然ホルモンの組み合わせを含有するように混合することもできる。例えばトローチは、任意のアイデンティカル天然ホルモン、例えばエストロゲン、プロゲステロン、テストステロン、およびDHEAの混合物を、任意の可能な用量で含有するように混合することもできる。この組み合わせは閉経症状の治療に用いられている。男性更年期症については、テストステロンおよびDHEAの組み合わせが最も一般的に用いられている。天然プロゲステロンのみ含有するトローチは月経前症候群にとって役立ち、月経周期後半に投与して月経前期に起こる抑鬱病、偏頭痛、悪心、および基本的に全てのPMT症状を軽減することができる。
【0012】
それらは麻酔薬、抗生物質、鎮痛薬、抗菌剤、鎮咳薬、粘滑剤、および医薬品のその他の組み合わせにも用いることができる。
【0013】
トローチは、頬循環内に直接吸収されると考えられており、従って胃および肝臓の初回通過代謝を迂回する薬物を投与する方法として市販されている。これは肝臓へのストレスを少なくし、その結果患者にとってもより有益であると言われている。実際には、トローチ投薬量の50%を超える量(70%まで)が、正常の唾液分泌の過程で実際に飲み込まれて、これらは胃酸に遭遇して、初回通過代謝を受けるが、残りは頬粘膜によって吸収される(非特許文献1)。口腔内の粘膜層から吸収されるのは投与量の30〜50%に過ぎないことから、カプセルと比べた場合の肝臓における初回通過代謝の低下はごく僅かであると考えられる。口腔粘膜か胃腸管かに関わらず、最終的に吸収されるホルモンは最終的にある段階で通常の循環を通り肝臓を通過するため、真の意味での肝臓節約作用は存在しない。臨床経験は、トローチに求められる投与量は、カプセルに求められる量と同じ範囲内であり、体部への全体の「総負荷量」はほぼ同じであり、従ってこの意味でも真の肝臓節約作用は得られないことを示している。一方クリームはトローチおよびカプセルに比べ必要とする投与量は低く、実際に胃および肝臓の初回通過代謝を迂回しており、従って肝臓への全体負荷を実際に軽減する唯一の方法である。
【0014】
プロゲステロンおよびテストステロンのような経口生体利用率(10〜15%生体利用率)が低いホルモンは、口腔投与の良い候補となる可能性がある。成功した場合は、口腔投与向け用量は、正常の生理学的用量、例えばプロゲステロンではクリームで見られるような1日20〜40mgに近くなるはずである。臨床での経験は、トローチに必要なプロゲステロンの投与量は通常は1日200〜400mgの間であり、これは前記投与量の多くが口腔粘膜によって吸収されないことを示しており、従って投与量の多くが飲み込まれる証明の裏付けとなる。恐らくは、口腔粘膜パッチは、トローチよりも良好な吸収特性を提供するが、現在は利用できない。これに加えて、既に良好な経口生体利用率を有する(90%を越える)エストロゲンおよびDHEAのようなホルモンについては、経口投与に対し口腔内粘膜投与を用いることについて真の利点は存在しない。
【0015】
トローチはまた薬物動態パラメータも不良である。このことは、トローチ服用後のホルモンの血清レベルが大きく変動することを意味する。トローチ服用直後、血清ホルモンレベルは急速に上昇し、時に極めて高いレベルにまで上昇し、それから4〜5時間以内に急速に低レベルまで下降する。それゆえに、少なくとも1日2回の投与が必要となるか、最高の結果を得るには、1日3〜4回投与して、適切なレベルを長期間保つ必要があるが、このタイプの投与スケジュールでは服薬遵守が大きな問題となる。このホルモンレベルの大きな変動は、理想的な状況ではない。クリームおよび徐放カプセルは、ホルモンを血中によりゆっくりと放出し、より長期間安定な血清レベルを達成することから、一般的には必要な投薬は1日1回だけである。
【0016】
トローチは2種類の基材から作られるが、その両方に幾つかの欠点がある:
・ポリエチレングリコール(PEG)−PEG基材はアレルギーおよび過敏反応を引き起こすことがよく知られており、口腔粘膜の炎症の原因になることもある。これに加えて、PEG基材は癌を起こすことが示されているダイオキシンを少量含むことがあり;また
・ゼラチン−は、バイオアイデンティカルホルモンのような疎水性(親脂質性)の粒子と一緒になって凝集物を形成させる親水性(水を好む)基材である。この粒子の凝集は粘膜吸収を更に低下させて、嚥下量を増加させ、更にホルモンがスラリー内で均一に分散できず、製造されたトローチ間での投与量の大きな変動の原因となる。
【0017】
要するに、トローチは現在女性へのバイオアイデンティカルホルモンの投与に広く用いられているが、それらには多くの欠点があり、最善の選択肢とは考えられない。経皮クリームは、それらがトローチやカプセルに比べて必要な投与量が低いこと、ならびにそれらが胃および初回通過代謝を真の意味で迂回する唯一の投与経路であることから、第1選択肢と考えられる。それらはより良好な放出パラメータを提供し、トローチに見られる大きな変動の無い、安定した血清レベルを提供する。それらは1日1回の投与でよく、従ってより便利であり、用量の調節も極めて簡便であり、それらは、最終的に標準の処方のコストが約$30/月と極めて安価である。クリームが不適当と見なされる場合には、第2選択肢は徐放カプセルとなるだろう。これらのカプセルはトローチに比べると良好な放出特性を提供し、投与は1日1回のみでよく、迅速に投与でき、苦みもない。トローチは、クリームが不適当であり、吸収不良症候群が発症し、その結果経口投与が不適切である患者に好適である。
【0018】
かくして患者への作用物質の舌下送達または口腔送達向けに、改善された製剤が求められている。
【0019】
ビスホスホネート
ある範囲の状況において特に有益である薬物の一群はビスホスホネートである。骨粗鬆症は、ビスホスホネート薬のアレンドネネートおよびリセドロネートがしばしば処方される状態の一つである。
【0020】
骨粗鬆症および選択された骨吸収状態は、世界中で数百万人の被害者を苦しめている重要な医学的障害である。他の骨吸収状態の例としては、骨塩密度が実際に減少しているか、または減少のリスクがあるその他疾患または生理学的状態、ならびに閉経、性腺機能低下、骨形成不全症、パジェット病、骨髄腫性骨疾患、骨への癌転移、原発性甲状腺機能亢進症、繊維性骨異形成症、および悪性病変の高カルシウム血症のような疾患または生理学的状態の結果として正常参照範囲から外れた骨溶解が挙げられる。
【0021】
例えば、現在全米で推定4400万人の50歳を越える人々が骨粗鬆症または低骨量であるとされている。この数は2020年には6100万を超える可能性がある(非特許文献2)。
【0022】
骨粗鬆症患者は、更なる骨損失を防ぐために抗吸収薬を用いた長期の薬物治療を受けなければならない。上記したように、一般的には抗吸収剤としてはアレンドロネートおよびリセドロネートが処方される。
【0023】
しかしながら両剤とも吸収が不良であり(摂取投与量の約1%)、この率は薬物を指示通りに服用しなかった場合は更に低下するだろう。しばしば悪心を引き起こし、一部の患者では嘔吐を起こすことさえあるビスホスホネートの胃腸管刺激によって、現在の投与プロトコールでは服薬遵守違反が一般的な問題である。
【0024】
ビスホスホネートは、閉経前後の性ホルモン産生減少の影響に対抗するためのホルモン補充療法(HRT)に関連してもしばしば処方されている。性ホルモンの補充は、一般的に胃腸管投与経路を用いるが、この場合、吸収される前に相当量のホルモンが消化環境によって分解される。そのために、治療投与量の血流への到達を保証するためには、経口ホルモン投与形態の製造時に必要とされる以上の量のホルモンを用いなければならない。
【0025】
女性の閉経症状特異的なHRTレジメンが数多く考案されているが、これらの臨床上の成功率は様々である。これらの治療の大部分は、天然型の17−β−エストラジオール、抱合型ウマエストロゲン、またはその他の抱合型エストロゲンを、ノル−エチステロン、レボノルゲストレル、およびジドロゲステロンのような合成プロゲステロンと組み合わせて使用することに基づいている。このような治療薬の組み合わせは症状の抑制に大きな効果を上げるが、この場合も患者の服薬遵守が全体の臨床効率の限定要因となることが多い。胃腸管刺激および鼓脹のような副作用は多くの患者にとって受け入れられないものである。
【0026】
不良な患者服薬遵守が処方レジメンの完了にとって大きな障害であり、臨床結果が最適とならない原因である。かくして、患者の服薬遵守に影響を及ぼす副作用を軽減する、薬物送達製剤の開発が求められている。
【非特許文献1】Int J Pharm Comp.,4,414−420,2000
【非特許文献2】National Osteoporosis Foundation America’s Bone Health:The State of Osteoporosis and Low Bone Mass、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、改善された活性作用成分の生体利用率を提供する口腔送達システムを提供する。本発明の口腔送達システムは、「初回通過代謝」における肝臓の作用を回避することから、活性成分の送達を増加することができ、時に85%を越えて増加することができる。本明細書では、用語「口腔(頬)」は、その最も広い意味で用いられており、口全体を指し、舌下も含む。
【0028】
本発明の口腔送達システムは改善された生体利用率を提供することから、本発明を利用することで、投与形態製造に使用する活性成分を少なくすることができる。
【0029】
これに加えて、本発明の口腔送達システムは、消化障害、疼痛、悪心、嘔吐、便秘、痙攣、下痢、および鼓腹のような、特定の作用物質の胃腸管副作用の重篤度を下げることができる。
【0030】
本発明はまた、全ての活性成分を通常の乾燥粉末に混合し、標準的な錠剤製造機を用いて圧縮する乾燥式製造工程を用いて作ることができることから、より簡便、且つより経済的に製造できる口腔送達システムも提供する。このような乾燥製剤は商業数製造し、通常のブリスタ包装で提供することができる。活性成分および賦形剤は従来技術のトローチに用いられているものに類似しているが、しかしながら賦形剤は変更されており、コストと時間のかかる特殊な湿潤製剤工場および設備、ならびに従来技術のトローチ(軟質ゲル製品)に必要な手加工は必要ない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
発明の第1局面によれば、通常の乾燥粉末工程で混合でき、且つ標準的な錠剤製造機を用いて圧縮できる口腔送達システムであって:
(a)有効量の、1種類以上の活性成分;
(b)マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上の、分子量1000〜8000のポリエチレングリコールまたはその誘導体;
(c)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;
(d)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに
(e)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料のマトリックス、を含む口腔送達システムを提供する。
【0032】
活性成分の有効量は、典型的には全マトリックスの約60重量%までの量である。
【0033】
マトリックスは、望まれる放出プロフィールに従って、数秒から数時間の適用以内から活性成分を放出できる。典型的には、活性成分は口腔内の1カ所以上の膜に適用した後、少なくとも2時間以内、好ましくは1時間の適用以内に、より更に好ましくは40分の適用以内にマトリックスから放出できる。最も好ましくは、溶解は12〜15分以内に起こる。緊急治療の場合は、好ましくはマ、トリックスは5分間の適用以内に溶解しなければならない。
【0034】
本明細書で使用する用語「口腔送達システム」は、口腔粘膜、頬側歯肉、舌粘膜、舌下膜、および軟口蓋を含む口内の1つ以上の膜を横切って活性成分が吸収される送達システムを指す。本用語は、通常の乾燥粉末工程を利用して製造でき、且つ標準的な錠剤製造機を用いて圧縮できる全ての好適な投与形状を包含している。
【0035】
「活性成分」の参照は、治療または予防作用成分、薬物、プロドラッグ、複合薬、中間薬、診断薬、酵素、医薬品、植物エキス、ハーブ混合物、植物化学物質、タンパク質、抗体、ナノボディー、抗体断片、酵素プロドラッグ治療薬を目的とする抗体(ADEPT)、生体活性化合物、栄養補助剤、または補助食品を含む。
【0036】
本明細書で使用する用語「マトリックス」は、1種類以上の溶解もしくは分散した活性成分を、それを取り巻く速度を制御する異質物質と共に含み、マトリックスが湿った拡散性の膜に直接触れると活性成分を放出する固体または半固体のモノリシック物質を指す。固体または半固体のモノリシック物質は、生物学的に活性な親脂質性または親水性の化合物を乳化、可溶化、錯体化、または膜を横切り送達する医薬品送達の技術分野で知られている範囲の物質を含むことができる。
【0037】
当業者は、送達システムにとって望ましい薬物動態を提供するのにはどのポリエチレングリコール(PEG)が好適であるかを周知しているだろう。例えば、PEGの選択は、ゼロ次または一次の放出どちらを望むかに関係するだろう。特に好ましい態様では、基材はPEG 1450である。
【0038】
ポリエチレングリコールは、界面活性特性を持つPEG−脂肪酸エステルの形で用いることができる。好適なPEG−脂肪酸エステルの例としては、PEG−10ラウラート、PEG−12ラウラート、PEG−20ラウラート、PEG−32ラウラート、PEG−32ジラウラート、PEG−12オレアート、PEG−15オレアート、PEG−20オレアート、PEG−20ジオレアート、PEG−32オレアート、PEG−200オレアート、PEG−400オレアート、PEG−15ステアラート、PEG−32ジステアラート、PEG−40ステアラート、PEG−100ステアラート、PEG−20ジラウラート、PEG−25グリセリルステアラート、PEG−32ジオレアート、PEG−20グリセリルラウラート、PEG−30グリセリルラウラート、PEG−20グリセリルステアラート、PEG−20グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルオレアート、PEG−30グリセリルラウラート、PEG−40グリセリルラウラート、PEG−40パーム核油、PEG−50水素添加ヒマシ油、PEG−40ヒマシ油、PEG−35ヒマシ油、PEG−60ヒマシ油、PEG−40水素添加ヒマシ油、PEG−60水素添加ヒマシ油、PEG−60コーン油、PEG−6カプラート/カプリラートグリセリド、PEG−8カプラート/カプリラートグリセリド、ポリグリセリル−10ラウラート、PEG−30コレステロール、PEG−25フィトステロール、PEG−30ダイズステロール、PEG−20トリオレアート、PEG−40ソルビタンオレアート、PEG−80ソルビタンラウラート、PEG−1450、ポリソルベート20、ポリソルベート80、POE−9ラウリルエーテル、POE−23ラウリルエーテル、POE−10オレイルエーテル、POE−20オレイルエーテル、POE−20ステアリルエーテル、トコフェリルPEG−100スクシナート、PEG−24コレステロール、ポリグリセリル−10オレアート、Tween40、Tween60、ショ糖モノステアラート、ショ糖モノラウラート、ショ糖モノパルミタート、PEG 10−100ノニルフェノールシリーズ、PEG 15−100オクチルフェノールシリーズ、ポロキサマー、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
当業者は、懸濁化剤の量が、送達システムの質感および粘稠度を改善するのに十分なものであることを理解するだろう。このような懸濁化剤の好適例は、シカクマメ(tetragonolobus)、Acacia glaucophylla、Acacia abyssinica、Acacia nilotica、Acacia gummifera、およびAcacia arabicaのようなゴム産出植物群のものである。その他の好適懸濁化剤としては、シリカゲルおよびコリドン、クレモホール、コリコート、スルトール、およびルジプレス(ludipress)が挙げられる。
【0040】
当業者は流動化剤(潤滑剤としても知られる)が、接着を防止、特に製造工程中での接着を防止するのに有効な量存在することを理解するだろう。流動化剤の好適例はステアリン酸マグネシウムである。
【0041】
口腔送達システムは、投与形態の感覚刺激特性を改善するのに十分な量の甘味料を含んでいる。好適甘味料の例としては、ショ糖、スクラロース;グルコン酸亜鉛;エチルマルチトール;グリシン;アセスルファム−K;アスパルテーム;サッカリン;果糖;キシリトール;ハチミツ;コーンシロップ、ゴールデンシロップ、ミスリ(misri)、噴霧乾燥甘草;グリセリリジン(glycerrhizine);デキストロース;グルコン酸ナトリウム;ステビア粉末;グルコノデルタ−ラクトン;エチルバニリン;バニリン;通常および高力化甘味料またはシロップ、あるいはそれらの塩が挙げられる。好ましくは、アスパルテーム、スクラロース、およびアセスルファム−Kから成る群より選択される強い甘みの甘味料が用いられる。
【0042】
別の局面では、本発明は、口腔内にある1つ以上の膜を横切り、1種類以上の活性成分を送達できる投与製剤の製造方法であって、
(a)(i)1種類以上の、有効量の活性成分;
(ii)1000〜8000の分子量を有し、マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上のポリエチレングリコールまたはその誘導体;
(iii)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;
(iv)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに
(v)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料、を混合することによってマトリックスを調製する段階、
(b)前記マトリックスを、口腔内の1つ以上の膜への投与に好適な錠剤形状に圧縮する段階を含み;
活性成分と賦形剤の割合が、所望時間内に活性成分の溶解および吸収を可能にする割合である方法を提供する。
【0043】
好適な活性成分の例としては、抗感染薬(抗生物質)、眼、耳、鼻、および咽頭調整剤、抗体を含む抗新生物薬、ナノボディー、抗体断片、酵素プロドラッグ治療向け抗体(ADEPT)、胃腸管薬、呼吸器薬、関節薬、血液形成および凝固薬、診断薬、光感受性剤(例えばポルフィリンおよび天然ポルフィリン産生を刺激する作用物質)、スタチン、ナプロキシン、インドール−3−酢酸、ホルモンおよび合成基質、心臓血管薬、皮膚および粘膜調整剤、NSAIDs、鎮痛剤、筋肉痙攣薬、抗炎症剤、中枢神経系薬、補助食品、糖尿病薬、ならびに電解質および水平衡剤、それらの混合物、ならびにそれらのプロドラッグ、薬物複合体、中間薬、酵素、ビタミン、およびタンパク質複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
その他の活性成分としては、例えば、インスリン、トリアムシノロン、テストステロン、レボノルゲステトレル、エストラジオール、フィトエストロゲン、エストロン、デキサメタゾン、エチノジオール、プレドニゾン、デソゲストレル、クリプトテロン、ノルエチンドロン、メゲストロール、ヒドロコルチゾン、ダナゾール、酢酸コルチソン、アビアン、ナンドロロン、フルオキシメステロン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン・デキサメタゾン・レボラ・フルドロコルチゾン・低オゲステレル(ogestrel)・メチルプレドニゾロン、ネコン、レボノルゲストレル、エストロピペート、レボキシル、メチマゾール、プロフィルチオウラシル・デスモプレシン、プレドニゾロン・オルゲストレル・ノルエチンドロン・トリアミシノロン・トリボラ(trivora)・ゾビア(zovia)ゲストデン、アルファカルシドール、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、クロミフェン、フィナステリド、およびチボロン、またはそれらの生物学的に関係する中間体、あるいはそれらの組み合わせを含むホルモン群から選択される天然または合成起源のホルモンが挙げられる。
【0045】
一つの好ましい態様では、活性成分は骨吸収状態の治療に有用なビスホスホン酸またはビスホスホネート塩である。「ビスホスホン酸」の参照は、1種類以上の酸ならびに薬学的に受け入れ可能なその塩および誘導体を含む。この用語は、「ビスホスホネート」のような塩の形を参照するのに用いることができる。好ましいビスホスホン酸およびそれらの塩としては、アレンドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、およびリセドロネート化合物を含む群が挙げられる。より更に好ましくは、ビスホスホネートは無水アレンドロネートまたは、アレンドロネートナトリウムのような水素化アレンドロネート塩を含む群から選ばれるアレンドロネートである。
【0046】
本発明の口腔送達システムは、2種類以上の活性作用成分を含有できる。活性成分は、同一時間に、即ち同時に、または異なる速度で放出できる。好ましい組み合わせは、1種類以上のビスホスホン酸(またはその塩)とエストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、および/またはデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)のようなホルモン補充療法に用いられる1種類以上のホルモンとの組み合わせである。
【0047】
効率的な薬物送達の技術は、薬物が水性の生体媒体に可溶性であり、且つ個々の薬物分子または薬物分子の非常に小さな凝集物の移送を可能にするのに相応しい形態であることも要求する。口腔送達システムは、結合剤、香味剤、着色剤、可溶性増強剤、崩壊剤、増量剤、タンパク質、補助因子、乳化剤、および可溶化または錯化剤のような薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を1種類以上更に含むことができるが、これらに限定されない。好ましい態様では、これらの賦形剤は膜を横切る活性成分の送達を改善するだろう。好適な賦形剤は、当業者には既知である。好適と思われる乳化剤の典型例の一つはトコフェロールポリエチレングリコール1000スクシナート(TPGS)である。錯化剤の例は、アミン官能基を含むアミノ酸、タンパク質、アミン官能性ステロールおよびリン脂質のようなアミン基またはその他の窒素官能基を含有する化合物である。好適な界面活性剤は、両親媒性、両性イオン、または陽イオン性界面活性剤である。好ましいこのタイプの錯化剤としては、ポリマーの主鎖に4級アンモニウム官能基を持つ水溶性陽イオン性ポリマー、および水溶性の陽イオングアー(ジャガーゴム)が挙げられる。
【0048】
好ましい態様では、口腔送達システムはヒドロキシプロピルメトセルロースのような結合ゲル化剤を含む。
【0049】
別の態様では、口腔送達システムは、色素または顔料である着色剤を更に含む。好適着色剤は、当技術分野で周知であり、クルクミン、カロテノイド、サンセットイエロー、タートラジン、インジゴ色素、キノ−フタレン色素、およびトリフェニルメタン色素が挙げられる。
【0050】
好ましい態様では、口腔送達システムは、感覚刺激特性を改善するための香味剤を更に含む。好適な香味剤は当技術分野で周知であり、アーモンドオイル;ババスー油;ルリヂサ油;クロフサスグリ種油;菜種油;ヒマシ油;ココナッツ油;コーン油;綿実油;月見草油;ブドウ種油;グランドナッツ油;カラシ油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナッツオイル;ブドウ種油;ベニバナ油;ゴマ油;サメ肝油;ダイズ油;ヒマワリ油;水素添加ヒマシ油;水素添加ココナッツ油;水素添加パーム油;水素添加ダイズ油;水素添加植物油;水素添加綿実・ヒマシ油;部分水素添加ダイズ油;ダイズ油;グリセリルトリカプロアート;グリセリルトリカプリラート;グリセリルトリカプラート;グリセリルトリウンデカナノエート;グリセリルトリラルラート;グリセリルトリオレアート;グリセリルトリリノレアート;グリセリルトリリノレナート;グリセリルトリカプラート/カプラート;グリセリルトリカプリラート/カプラート/ラウレート;グリセリルトリカプリラート/カプラート/リノレアート;グリセリルトリカプリラート/カプリラート/ステアラート;飽和ポリグリコール化グリセリド;リノレン酸グリセリド;カプリル酸/カプリン酸グリセリド;変性トリグリセリド;分画化トリグリセリド;サフロール、バニリン、クエン酸、マレイン酸、ならびにリン酸、またはこれらの塩および/もしくは混合物が挙げられる。
【0051】
別の態様では、口腔投与形態は、持続放出組成物として有用である。用語「持続放出」(「延長放出」とも呼ばれる)は、長時間かけて薬物を徐々に放出し、必ずではないが、好ましくは長期間、薬物のレベルを実質的に一定にする薬物製剤を指す通常の意味で用いられる。
【0052】
本発明は、発明の送達システムを用いて薬物を投与することによる、哺乳類、特にヒトの医学的状態の治療および/または予防方法も意図している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
次に図面を参照しながら発明の様々な態様/局面を説明する。
【実施例】
【0054】
次に発明の様々な態様/局面を、以下の非限定的実施例を参照しながら説明する。
【0055】
実施例1−比較例
本実施例は、従来技術によるトローチ調製のプロセスを示す。
【0056】
28個のトローチに使用した成分を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
構成要素の調製
・必要量の活性成分を計算する(例えば200mgのプロゲステロンのロゼンジ30個では、6.0gのプロゲステロンが必要)。
・必要な構成要素を秤量し、清潔な、ラベルの貼られた秤量トレーに載せる(例えば0.01g)。
【0059】
PEG基材の調製
・大型の4リットルビーカーの中で、その日に必要な基材を計算し(表2参照)、ホットプレートの上に置き、水層の中で溶解する。水層は60℃に設定する。
・基材Aが溶解したら、その他の成分を加えてスパチラを使って攪拌する。
【0060】
【表2】

【0061】
トローチの作製
・400mLのビーカーを秤の上に置き、風袋を測定する。活性成分を加える。次に上記で調製したPEGを総重量が30.0gになるまで加える。
・ビーカーをホットプレートの上に置いて、スターラーバーを回転させる。必要な香味料を加え、全ての活性成分が溶解するまで混合物を回転させる。
・次にトローチ混合物を型に注ぎ入れ、スパチラを使って平らにし、乾燥させる。
・ヘアードライヤーを使って、トローチの上部を、それが溶解し始めるまでゆっくり熱する。
・型の縁を利用して、清潔な屈曲型スパチラを使って余った部分そぎ落とす。余ったものを使って穴を埋め、各ロゼンジを均一な投与形態にする。この作業は、2〜3回繰り返す必要があるだろう。
・均一になったら、表面を軽く熱して仕上げる。次に湿らせた布を使って型をきれいにする。
【0062】
考察
この方法は商業規模の製造には向いていないことが分かる。商業規模の製造には、標準的な乾燥錠剤製造工程がより好ましく用いることができるだろう。
【0063】
実施例2
本実施例は発明によるLINGUET錠の製造を示す。
【0064】
活性成分のアレンドロネートナトリムを5、10、および40mg当量含む放出粉末を以下の賦形剤と混合した:
・錠剤の溶解に求められる硬度および時間によって変わる、分子量1000〜8000のPEG
・ステアリン酸マグネシウム:0.05〜2重量%
・コリドン:0.05〜2重量%
・ステビア:0.05〜2重量%
・活性成分:最大60重量%
【0065】
標準の乾燥混合は、水平方向の低エネルギーミキサーで60分間行った。次に粉末混合物をPEGと5分間混合し、TabletPress Incのベンチトップシングルプレス錠剤パンチを使って直接圧縮した。
【0066】
これらのLINGUET錠の溶解時間は、10〜20分の範囲であるが、口腔内投与後の完全溶解に必要な時間は若干長く、15〜20分であった。
【0067】
実施例3
本実施例は、病院での臨床試験において、発明の口腔送達システムを用いたホルモン補充治療活性成分の生体利用率を研究したものである。本試験は病院内の倫理委員会の承認を得て行われた。
【0068】
LINGUET錠は、17−β−エストラジオール(0.5mg)、プロゲステロン(200mg)、テストステロン(2.0mg)、およびDHEA(10.0mg)を含有するように生成された。LINGUET錠中の賦形剤は、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、アカシア、ステビア、およびポリエチレングリコール、ならびにワイルドベリー香味料から構成されていた。本試験で使用したLINGUET錠は、上記実施例2に記載した発明の工程を用いて、本試験用の単一バッチとして調剤された。LINGUET錠はRichard Stenlake Compounding Charmacist(Bondi Junction、Australia)から提供された。
【0069】
試験プロトコール
試験は6名の閉経後女性を対象としたオープンラベル形式研究であった。試験登録前に被験者にインフォームドコンセントを行い、医学および生化学スクリーニングを実施した。被験者は、一般的に健康状態は良好であり、少なくとも閉経後1年を経ていた。被験者の年齢は45〜60歳(平均56歳)であり、平均体重69kg(範囲、64〜76kg)、平均身長166cm(範囲157〜178cm)、および平均肥満指数25.2(範囲23.4〜27.6)であった。
【0070】
被験者には乳癌または子宮癌、血栓症、塞栓症、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の病歴を持たないか、または喫煙者であった。彼らはまた、通常の生化学および血液学スクリーニングについて臨床有意な異常を有していなかった。
【0071】
被験者は、試験初日少なくとも3日前には彼らに処方されていたHRT治療だけでなく薬草療法または代替療法も中止した。被験者は一泊後、各試験日の早朝に試験センターに出向いた。留置カテーテルを前腕静脈内に挿入し、ベースライン血液検体を採取した。
【0072】
初日、LINGUET半錠を口腔内(頬と歯肉の間)に置いて溶解させた。被験者には、製剤を飲み込まないように指示した。口腔内での製剤の溶解には40分を要した。45分の時点で被験者は口を水で濯いだ。24時間にわたる、定期的に血液をカニューレから採取した。被験者は退院したが、その後2週間にわたって、LINGUET半錠を1日2回、引き続き服用した。その後被験者は再度臨床試験センターに出向き、朝の投与を行い、12時間の投与インターバルの間、定期的に血液サンプルを採取した。
【0073】
血液サンプルは、以下の時間に単回投与した後に採取することとした:投与前(0)、単回投与後0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、3.0、4.0、6.0、8.0、12.0、16.0、20.0、および24.0時間目、ならびに投与前(0)、2週間の投与インターバル後(定常状態)、0.25、0.5、0.75、1.0、2.0、2.5、3.0、4.0、6.0、8.0、10.0、および12.0時間目。実際の時間を記録し、これらを薬物動態の計算に用いた。
【0074】
唾液を、ホルモン分析のために、検査所であるAustralian Reference Laboratories(Melbourne)が示した標準化法に従って採取し、発送前に凍結して保存した(−20℃)。簡単に説明すると、被験者は水を使って口をよく濯ぎ、口の中に唾液が溜まるまで5〜10分間待った。次に被験者は唾液を収集チューブに直接出した。
【0075】
唾液サンプルは、単回投与評価については、次の時間に採取された:投与前(0)、投与後1.0、4.0、8.0、12.0、16.0、および24時間目。定常状態分析については、唾液は投与前(0)、およびLINGUET錠投与後1.0、4.0、8.0、および12.0時間目に集められた。
【0076】
分析方法
ホルモンの血漿濃度は、通常の、妥当性が確認されている放射免疫測定技術を用いて、病院内の検査室(Sydpath、St Vincent’s Hospital、Sydeny)で行った。検査室は、ホルモン分析の国家的品質保証プログラムに参加している公認病理学検査提供施設である。
【0077】
唾液中のホルモン濃度は、妥当性が確認されている、市販の放射免疫アッセイを用いて、Analytical Reference Laboratories(Melbourne)で行われた。この検査室は、同様に公認病理学検査提供施設である。
【0078】
DHEAは、投与したホルモンとしてではなく、スルファート代謝物(DHEAS)としてモニタリングされた。
【0079】
エストラジオール:LINGUET錠の単回投与および複数回投与は、血漿中のエストロゲンについて非常によく似た平均濃度−時間プロフィールを示した。濃度に関する被験者間の実質的な変動が明らかになった(表3および4)。
【0080】
テストステロン:LINGUET錠の単回および複数回投与はまた、血漿中のテストステロンについても、実質的に重なり合う濃度−時間プロフィールを示し、濃度は4時間まで顕著に増加し、その後約8時間以内に処理前の濃度に戻った。このホルモンの吸収は、他のホルモンに比べて迅速であり、ピーク濃度は平均0.6時間目であった(表3および4)。
【0081】
プロゲステロン:プロゲステロンは定常状態までに、最大の投与量の蓄積を示した(表3)。このホルモンの排除は2相性と考えられ、単回および複数回投与の両方について約4時間後に2番目のピークが見られた。濃度は5時間以内に、子宮粘膜内の生物活性と一般的に関係する濃度以下まで減少した。
【0082】
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA):LINGUET1/2錠の単回投与(5mgDHEA)は、5〜10時間の間DHEASの血液濃度を倍増し、その後24時間以内に処理前の濃度に戻った。被験者間の変動は大きかった(表3および4)。
【0083】
結果および考察
唾液中のホルモンの濃度プロフィール:LINGUET錠の単回適用前、4種類全てのホルモンの唾液濃度は血液濃度に比べ上昇すると思われた。唾液中のエストラジオールおよびプロゲステロンの濃度は、LINGUET錠使用後、血液に比べ遙かに高くまで上昇した。この上昇はその後8〜12時間維持され、この大きな増加が口腔内に残存したホルモンだけに拠るものでないことが示唆された(表5−図6参照)。
【0084】
定常状態において唾液中のホルモン濃度は、予想外の高濃度まで上昇することが見出された。唾液の対血漿比は大きく変動した(表5−図6参照)。
【0085】
血漿ホルモン:4種類のホルモン、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、およびデヒドロエピアンドロステロンのそれぞれ(後者は活性スルファートとしてモニタリングされた)はLINGUET錠から容易に吸収され、月経期間中の正常な若年女性に見られる濃度に到達した。ピーク濃度は非常に短時間に達し、単回投与後4〜8時間の間にベースラインに戻った。定常状態時のプロフィールは、エストロゲンおよびテストステロンに極めて類似しており、それらの半減期が投与インターバルに対し短いことを映し出した。これに対し、定常状態においてプロゲステロンは、正常な若年女性の生理学的および生物学的活動と普通に関係する濃度を維持した。このプロゲステロンの持続された濃度が子宮内膜における有糸分裂を阻害するか、二次的な変化を発生させることが示されたならば、このプロゲステロン送達経路は閉経後症状の抑制に利用できるかもしれない。
【0086】
口腔送達経路の利点は、ホルモンの迅速な吸収を可能にし、生理学的濃度を達成できたことである。この製剤は、経口投与に伴う初回通過代謝から逃れると同時に、経皮適用に通常伴う問題、即ち不安定および不良な吸収の問題も回避する。
【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
表5は、血液および唾液中の平均ホルモン濃度を試験した第1日目のLINGUET錠単回投与の結果を示している。
【0090】
結論
発明の口腔送達システムを含んだLINGUET錠は、口腔を通してホルモンを血液内に送達した。得られた結果は、Wrenら「Pharmacokinetics of estradiol、progesterone、testosterone and dehydroepiandrosterone after transbuccal administration to postmenopausal women 」Clinacteric 2003、6:104〜111に従来技術のトローチについて発表されたものと同等であった。
【0091】
本既述および請求項の中で用いられる語「含む」および語「含む」の語形は、請求されている発明を限定し、変形および追加を排除するものではない。
【0092】
発明の変更および修正は、当業者にとって容易に明らかになるだろう。このような変更および修正は、本発明の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いてエストラジオールについて得られた結果を示す概略図である。
【図2】図2は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いてプロゲステロンについて得られた結果を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いてテストステロンについて得られた結果を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いてデヒドロエピアンドロステロン−スルファートについて得られた結果を示す概略図である。
【図5】図5は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いて試験した全てのホルモンについて得られた結果を示す概略図である。
【図6】図6は、実施例3の発明の口腔送達システムを用いて試験した全てのホルモンについて得られた結果を示す表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常の乾燥粉末工程で混合でき、且つ標準的な錠剤製造機を用いて圧縮できる口腔送達システムであって:
(a)有効量の、1種類以上の活性成分;
(b)マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上の、分子量1000〜8000のポリエチレングリコールまたはその誘導体;
(c)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;
(d)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに
(e)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料、を含む口腔送達システムを提供する。
【請求項2】
活性成分の有効量が、全マトリックスの約60重量%までの量である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項3】
マトリックスの溶解時間が、患者に投与した後少なくとも2時間以内である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項4】
マトリックスの溶解時間が40分以内である、請求項3に記載の口腔送達システム。
【請求項5】
マトリックスの溶解時間が12〜15分以内である、請求項4に記載の口腔送達システム。
【請求項6】
マトリックスの溶解時間が5分以内である、請求項5に記載の口腔送達システム。
【請求項7】
口腔送達システムが舌下投与に好適である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項8】
口腔送達システムが持続放出投与に好適である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項9】
ポリエチレングリコール(PEG)がPEG 1450である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項10】
ポリエチレングリコール(PEG)誘導体が界面活性剤特性を有するPEG−脂肪酸エステルである、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項11】
懸濁化剤が、シカクマメ(tetragonolobus)、Acacia glaucophylla、Acacia abyssinica、Acacia nilotica、Acacia gummifera、およびAcacia arabica、シリカゲル、コリドン、クレモホール、コリコート、スルトール、ルジプレス(ludipress)およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項12】
甘味料が、ショ糖、スクラロース;グルコン酸亜鉛;エチルマルチトール;グリシン;アセスルファム−K;アスパルテーム;サッカリン;果糖;キシリトール;ハチミツ;コーンシロップ、ゴールデンシロップ、ミスリ(misri)、噴霧乾燥甘草;グリセリジン(glycerrhizine);デキストロース;グルコン酸ナトリウム;ステビア粉末;グルコノデルタ−ラクトン;エチルバニリン;バニリン;通常および高力化甘味料またはシロップ、あるいはそれらの塩、ならびにそれらの混合物から成る群より選択される、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項13】
甘味料が、アスパルテーム、スクラロース、およびアセスルファム−Kから成る群より選択される高力価甘味料である、請求項12に記載の口腔送達システム。
【請求項14】
活性成分が、抗感染薬(抗生物質)、眼、耳、鼻、および咽頭調整薬、抗体を含む抗新生物薬、ナノボディー、抗体断片、酵素プロドラッグ治療向け抗体(ADEPT)、胃腸管薬、呼吸器薬、関節薬、血液形成および凝固薬、診断薬、光感受性剤、スタチン、ナプロキシン、インドール−3−酢酸、ホルモンおよび合成基質、心臓血管薬、皮膚および粘膜調整剤、NSAIDs、鎮痛剤、筋肉痙攣薬、抗炎症剤、中枢神経系薬、補助食品、糖尿病薬、ならびに電解質および水平衡剤、それらの混合物、ならびにそれらのプロドラッグ、薬物複合体、中間薬、酵素、ビタミン、およびタンパク質複合体から成る群より選択される、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項15】
活性成分がインスリン、トリアムシノロン、テストステロン、レボノルゲステトレル、エストラジオール、フィトエストロゲン、エストロン、デキサメタゾン、エチノジオール、プレドニゾン、デソゲストレル、クリプトテロン、ノルエチンドロン、メゲストロール、ヒドロコルチゾン、ダナゾール、酢酸コルチソン、アビアン、ナンドロロン、フルオキシメステロン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン・デキサメタゾン・レボラ・フルドロコルチゾン・低オゲステレル(ogestrel)・メチルプレドニゾロン、ネコン、レボノルゲストレル、エストロピペート、レボキシル、メチマゾール、プロフィルチオウラシル・デスモプレシン、プレドニゾロン・オルゲストレル・ノルエチンドロン・トリアミシノロン・トリボラ(trivora)・ゾビア(zovia)・ゲストデン、アルファカルシドール、1,25−ジヒドロキシビタミンD3、クロミフェン、フィナステリド、およびチボロン、またはそれらの生物学的に関係する中間体、あるいはそれらの組み合わせから成る群より選択される天然または合成起源のホルモンである請求項14に記載の口腔送達システム。
【請求項16】
活性成分が、アレンドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、およびリセドロネート化合物、ならびにそれらの塩から成る群より選択されたビスホスホン酸またはビスホスホネート塩である、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項17】
ビスホスホネートが、無水アレンドロネート、水素化アレンドロネート塩、およびそれらの混合物から成る群より選択される、アレンドロネートである、請求項16に記載の口腔送達システム。
【請求項18】
ビスホスホネートがアレンドロネートナトリウムである、請求項17に記載の口腔送達システム。
【請求項19】
ホルモン補充療法に用いられるホルモンを1種類以上更に含む、請求項16に記載の口腔送達システム。
【請求項20】
ホルモンが、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドステロン(DHEA)、およびそれらの混合物から成る群より選択される、請求項19に記載の口腔送達システム。
【請求項21】
他の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤を1種類以上更に含む、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項22】
薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤が、結合剤、香味剤、潤滑剤、着色剤、可溶性増強剤、崩壊剤、増量剤、タンパク質、補助因子、乳化剤、可溶化剤、錯化剤、およびそれらの混合物から成る群から選択される請求項21に記載の口腔送達システム。
【請求項23】
流動化剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項24】
結合ゲル化剤を更に含む、請求項1に記載の口腔送達システム。
【請求項25】
結合ゲル化剤がヒドロキシプロピルメトセルロースである、請求項24に記載の口腔送達システム。
【請求項26】
(a)有効量の、1種類以上の活性成分;
(b)マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上の、分子量1000〜8000のポリエチレングリコールまたはその誘導体;
(c)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;
(d)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに
(e)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料、を含むマトリックスの乾燥工程で調製された口腔製剤。
【請求項27】
口腔内の1つ以上の膜を横切り、1種類以上の活性成分を送達できる投与製剤の製造方法であって、
(a)(i)1種類以上の、有効量の活性成分;
(ii)1000〜8000の分子量を有し、マトリックスの溶解に必要な硬度および時間を提供するのに十分な量の、1種類以上のポリエチレングリコールまたはその誘導体;
(iii)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の懸濁化剤;
(iv)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の流動化剤;ならびに
(v)1種類以上の、全マトリックスの0.05〜2重量%の甘味料、を混合することによってマトリックスを調製する段階、
(b)前記マトリックスを、口腔内の1つ以上の膜への投与に好適な錠剤形状に圧縮する段階を含み;
活性成分と賦形剤の割合が、所望時間内に活性成分の溶解および吸収を可能にする割合である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534629(P2008−534629A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504582(P2008−504582)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000472
【国際公開番号】WO2006/105615
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(507306078)オズファーマ ピーティワイ エルティディ (1)
【Fターム(参考)】