説明

口金具刻印機

【課題】安価に、口金具に刻印することが可能な口金具刻印機を得る。
【解決手段】レール18に沿って矢印M1方向に直線移動可能とされた支持ブロック20に、2つの支持ローラ32が平行で回転可能に取り付けられる。支持ローラ32上の口金具14に刻印駒40を降下させて口金具14を刻印駒40と2つの支持ローラ32とで挟持し、スライド操作レバー30を操作して支持ブロック20を矢印M1方向にスライドさせることで、口金具14の外周面に所定の情報が刻印される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形の口金具の外周面に、製造ロット番号等を直接刻印する口金具刻印機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒形の口金具の外周面に、製造ロット番号等を直接刻印する口金具刻印機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この口金具刻印機は、揺動自在な印字駒とこの印字駒に対向する2個のローラとの間に、円筒形の樹脂被覆鋼管を挟み、印字駒と2個のローラとの間隔を狭めて樹脂被覆鋼管を挟圧し、該樹脂被覆鋼管の被覆樹脂に印字駒の活字を食い込ませた状態のまま、樹脂被覆鋼管を中心としてその周りを前記印字駒と2個のローラとを一緒に回動させて刻印するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−263476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如き口金具刻印機では、曲面刻印駒を使用し、この曲面刻印駒を回動させることにより、口金具に刻印文字を転写するようになっている。このため、曲面刻印駒の加工が困難であり、高価なものになっている。本発明は上記事実を考慮し、より安価に、口金具に刻印することが可能な口金具刻印機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、円筒形の口金具をその中心軸周りに回転可能に支持する支持部材と、前記支持部材に支持された前記口金具の外周面に刻印するための刻印駒が保持され、刻印駒を口金具に押圧させる駒保持部材と、前記刻印駒が前記口金具に押圧された状態を維持しながら前記支持部材と前記駒保持部材との少なくとも一方を前記中心軸と直交する方向に直線移動可能とするスライド手段と、を有する。
【0006】
この口金具刻印機では、支持部材によって回転可能に支持された口金具に対し、駒保持部材の刻印駒が押圧される。ここで、支持部材と駒保持部材の少なくとも一方は、スライド手段により、刻印駒が口金具に押圧された状態を維持しながら、口金具の中心軸と直交する方向に直線運動可能とされている。このように直線運動させることで、口金具が刻印駒に接触しつつ回転するので、刻印駒によって口金具の外周面に刻印がなされる。支持部材と駒保持部材は相対的に直線運動するので、刻印駒としては、刻印部分が平面状に形成された平面刻印駒を使用することができる。そして、平面刻印駒を使用することで、曲面刻印駒を用いた構成における曲面刻印駒への加工等が不要となるので、安価に口金具に刻印することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記支持部材が、前進した前記駒保持部材の前記刻印駒との間で前記口金具を回転可能に挟持する複数のローラを有する。
【0008】
複数のローラの間で口金具を支持すると共に、刻印駒との間で回転可能に挟持できるので、安定して口金具を支持して刻印できる。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記支持部材及び前記駒保持部材が組み付けられた台座部を備え、前記スライド手段が、前記台座部に対し前記支持部材を直線移動可能としている。
【0010】
すなわち、台座部及び駒保持部材に対し、支持部材が直線運動することになるので、駒保持部材を直線運動させる構成と比較して、構造の複雑化を回避できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、安価に、口金具に刻印することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の口金具刻印機を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の口金具刻印機を用いて口金具に刻印する工程を(A)〜(C)へと順に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明の第1実施形態の口金具刻印機12が示されている。この口金具刻印機12は、図2(A)〜(C)に示すように、円筒状に形成された口金具14の外周面に、製造ロット番号などの情報表示を直接刻印するために用いられるものである。
【0014】
口金具刻印機12は、平板状に形成された台座部16を有しており、台座部16の上面には、所定方向に延在されるレール18が形成されている。レール18には、支持ブロック20が矢印M1方向及びその反対方向にスライド(直線運動)可能で、且つ不用意に抜けないように取り付けられている。
【0015】
台座部16の上面には、さらに、スライド操作機構22が設けられている。スライド操作機構22は、台座部16の奥側の支軸24により回転可能に取り付けられた主リンク26と、この主リンク26の中間部分と支持ブロック20とを連結する連結リンク28、さらに、主リンク26の先端側のスライド操作レバー30と、を有している。スライド操作レバー30を矢印R1方向に回転させることで、支持ブロック20を矢印M1方向にスライドさせることができる。
【0016】
支持ブロック20上には、2つの支持ローラ32が平行で、かつそれぞれ回転可能に取り付けられている。支持ローラ32のローラ中心A1は、平面視したときに支持ブロック20のスライド方向(矢印M1方向)と直交する方向とされている。また、支持ローラ32の間に口金具14を支持できるように、支持ローラ32の間隔(ローラ中心A1の間隔)が決められている。
【0017】
したがって、2つの支持ローラ32の上に口金具14を支持した状態で、口金具14の金具中心A2は、ローラ中心A1と平行となっており、支持ブロック20の直線移動方向とは、平面視にて直交している。さらに、口金具14を2つの支持ローラ32で支持した状態で、その金具中心A2周り(図2(B)に示す矢印R2方向及びその反対方向)に回転させることができる。このとき、2つの支持ローラ32はいずれも、矢印R3方向に回転する。
【0018】
台座部16からは、レール18よりも奥側において、垂直に昇降ポール34が立設されており、昇降ポール34には、昇降可能に保持ブロック36が取り付けられている。保持ブロック36には、昇降操作レバー38が設けられており、この昇降操作レバー38の操作により、保持ブロック36を昇降させたり、所定の昇降位置でロックさせたりすることができるようになっている。
【0019】
保持ブロック36の下面の先端側には、刻印駒40が固定されている。刻印駒40は、本実施形態では刻印面が平面状の平面刻印駒とされ、その下面に、口金具14に刻印すべき所定の情報が形成されている。保持ブロック36は、本発明の「駒保持部材」の一例となっている。
【0020】
保持ブロック36の昇降範囲は、支持ローラ32上に支持された口金具14に対し刻印駒40を前進(降下)させ、口金具14を刻印駒40で押圧可能な範囲とされている。さらには、このように口金具14を刻印駒40に押圧した状態で、保持ブロック36が不用意に上昇しないように、昇降操作レバー38でロック可能とされている。
【0021】
次に、本実施形態の口金具刻印機12の作用を説明する。
【0022】
口金具14に刻印する場合には、まず、図2(A)に示すように、保持ブロック36を上昇させておき、支持ローラ32上に、刻印前の口金具14を載せる。そして、刻印駒40が降下したときに、刻印駒40の刻印開始端部40Sが口金具14に接する位置となるように、保持ブロック36を所定の位置までスライドさせる。あるいは、保持ブロック36のスライドの始端を、あらかじめこの条件が満たされる位置に設定しておく構造でもよい。
【0023】
そして、昇降操作レバー38の操作により保持ブロック36を降下させて刻印駒40を口金具14に向かって前進させる。図2(B(に示すように、刻印駒40が口金具14を押圧した状態で、口金具14は、刻印駒40と2つの支持ローラ32とによって回転可能に挟持される。ここで、保持ブロック36の昇降をロックする。
【0024】
ついで、スライド操作レバー30の操作により、図2(C)に示すように、支持ブロック20を矢印M1方向にスライドさせる。口金具14は、刻印駒40との接触状態を維持しつつ(但し、刻印駒40に対し滑ることはなく)矢印R2方向に回転し、口金具14の外周面に所定の情報が刻印される。刻印後は、昇降操作レバー38の操作により保持ブロックを上昇させ、刻印済みの口金具14を取り出す。そして、スライド操作レバー30の操作により支持ブロック20を矢印M1と反対の方向に移動させて初期位置に戻すことで、次の口金具14への刻印を行うことが可能となる。
【0025】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、本発明の支持部材である2つの支持ローラを直線運動可能としており、これによって、刻印駒40として、刻印面が平面状の平面刻印駒を用いることができるようになっている。平面刻印駒は、曲面刻印駒等と比較して汎用性が高く、且つ安価に製造できるので、刻印駒40への刻印も低コストで行うことが可能になる。
【0026】
なお、上記では、本発明の支持部材として、2つの支持ローラ32を有する構成を挙げたが、支持ローラ32の数はこれに限定されず、たとえば、2つの支持ローラ32の間で口金具14をさらに下方から支持する支持ローラを有する構成でもよい。
【0027】
本発明の支持部材としても支持ローラに限定されず、たとえば、平面状に形成された支持板の上を口金具14が転がる構成でもよい。あるいは、口金具14の内部に支軸を貫通させ、この支軸を回転可能に支持しつつ、矢印M1方向に移動させる構成でもよい。
【0028】
また、上記では、台座部16に対し、支持部材(支持ローラ32)が直線運動する構成を挙げたが、たとえば、支持ブロック20は台座部16に固定しておき(支持ローラ32も直線運動しない)、昇降ポール34及び保持ブロック36を直線運動させる構成でもよく、さらには、支持ローラ32及び保持ブロック36の双方を直線運動させる構成でもよい。本実施形態のように、台座部16に対し、支持部材(支持ローラ32)が直線運動する構成では、昇降ポール34や保持ブロック36を直線運動させる必要がないので、構造の複雑化を回避できる。
【符号の説明】
【0029】
12 口金具刻印機
14 口金具
16 台座部
18 レール
20 支持ブロック
22 スライド操作機構
24 支軸
26 主リンク
28 連結リンク
30 スライド操作レバー
32 支持ローラ
34 昇降ポール
36 保持ブロック
38 昇降操作レバー
40 刻印駒
40S 刻印開始端部
A1 ローラ中心
A2 金具中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の口金具をその中心軸周りに回転可能に支持する支持部材と、
前記支持部材に支持された前記口金具の外周面に刻印するための刻印駒が保持され、刻印駒を口金具に押圧させる駒保持部材と、
前記刻印駒が前記口金具に押圧された状態を維持しながら前記支持部材と前記駒保持部材との少なくとも一方を前記中心軸と直交する方向に直線移動可能とするスライド手段と、
を有する口金具刻印機。
【請求項2】
前記支持部材が、前進した前記駒保持部材の前記刻印駒との間で前記口金具を回転可能に挟持する複数のローラを有する請求項1に記載の口金具刻印機。
【請求項3】
前記支持部材及び前記駒保持部材が組み付けられた台座部を備え、
前記スライド手段が、前記台座部に対し前記支持部材を直線移動可能としている請求項1又は請求項2に記載の口金具刻印機。

【図1】
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【図2】
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