説明

口金洗浄方法及び塗布装置

【課題】幅方向に長く先端で開口しているスリット7が内部に形成されている口金3において、従来では振動波(振動波に基づくキャビテーション)の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となり、短時間で所望の洗浄結果を得る。
【解決手段】洗浄槽11内の振動波を与えた洗浄液Lに口金先端9を浸漬させ、スリット7を通じて当該洗浄液Lを口金内部へ流入させる。この状態から、スリット7を通じて口金内部に気体を、スリット7の幅方向全長にわたって、流入させる。この後、口金先端9を洗浄槽11内の振動波を与えた洗浄液Lに浸漬させ、スリット7を通じて当該洗浄液Lを口金内部へ流入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に対して塗布液を吐出する口金を洗浄する口金洗浄方法、及び、この洗浄方法を実行可能な塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、太陽電池パネル等には、画素、回路パターン等が形成された基板が用いられており、このような基板は、例えばレジスト液(塗布液)を塗布して行うフォトリソグラフィ技術が用いられることにより、製作されている。
そして、基板に対して塗布液を塗布する装置として、幅方向に長いスリットが内部に形成されている口金を有した塗布装置が知られている。この塗布装置によれば、基板に対して口金を水平移動させながら、スリットから塗布液を吐出することで、基板表面に塗布液の膜を形成することができる。
【0003】
この塗布装置による塗布作業が長時間継続して行われていると、スリット、スリットが開口している口金先端、及び、口金先端の外側面などに、塗布液の固化物や塗布液に混入した異物といった固着物が固着することがあり、これら固着物は塗布液の吐出に影響を与え、塗布欠陥が発生するおそれがある。
そこで、例えば特許文献1に開示されているような、口金を洗浄する洗浄装置が提案されている。
【0004】
この洗浄装置は、洗浄液が貯留されこの洗浄液に口金先端を浸漬する洗浄槽と、洗浄液を口金(スリット)に流すための流路とを備えている。さらに、この流路の途中で洗浄液に超音波振動を付与する超音波発振器が設けられており、この超音波振動により口金内部に付着している固着物を浮かび上がらせ、洗浄効果を高めようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253093号公報(図1、図2、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の洗浄装置の場合、洗浄液に超音波振動を付与する位置は、洗浄液を流す流路の途中であって口金(スリット)から離れているため、超音波の振動エネルギーが減衰し、口金の洗浄効果を高めることはあまり期待できない。
そこで、洗浄液に対して超音波振動を付与する位置が、口金先端の近くとなるように、例えば、洗浄液を貯留していると共にこの洗浄液に口金先端を浸漬させる洗浄槽の底部に振動子を設け、この振動子によって洗浄液に振動波(超音波振動)を付与し、口金の洗浄を行うことが考えられる。
【0007】
しかし、このように、洗浄液に浸漬した口金先端の近くに設けた振動子によって、洗浄液に振動波(超音波振動)を付与するだけでは、スリットが開口している口金先端、及び、口金先端の外側面は洗浄できるが、開口幅が非常に狭いスリット(特に口金先端から離れるスリット奥部)には、洗浄液に付与した振動波(振動波に基づくキャビテーション)が到達せずに、スリットの固着物を洗浄することができない。
そこで、洗浄液に付与した振動波(振動波に基づくキャビテーション)を口金のスリット(スリット奥部)まで到達させるために、振動波(超音波振動)が付与された洗浄液を口金先端から吸引する方法が考えられる。
しかし、固着物が固着している領域は固着物の抵抗により洗浄液が流れにくいため、単にキャビテーションを含む洗浄液を口金から吸引するだけでは、洗浄液は固着物を回避して流れてしまい、キャビテーションが固着物に到達せず、固着物を効率良く洗浄できないという問題がある。
つまり、従来では、洗浄作用が弱く、幅方向に長いスリット(口金)の全体にわたってムラのない所望の洗浄結果を得ることが困難であり、また、所望の洗浄結果を得るためには、洗浄を繰り返し行う必要があり、洗浄時間が多くかかる。このため、塗布作業を再開するまでの時間を要し、生産効率の向上の妨げとなっている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来では振動波(振動波に基づくキャビテーション)の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となり、短時間でムラのない所望の洗浄結果を効率良く得ることができる口金の洗浄方法、及び、この洗浄方法を実行可能な塗布装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の口金の洗浄方法は、幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金の洗浄方法であって、洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させ、前記スリットを通じて当該洗浄液を口金内部へ流入させる第1流入工程と、前記第1流入工程において洗浄液を口金内部へ流入させている状態から、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、当該スリットの幅方向全長にわたって、流入させる気体流入工程と、前記気体流入工程の後、前記口金先端を前記洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に浸漬させ、前記スリットを通じて当該洗浄液を前記口金内部へ流入させる第2流入工程とを含むことを特徴とする口金の洗浄方法。
【0010】
本発明によれば、第1流入工程において、振動波を与えた洗浄液を口金内部へ流入させることにより、口金内部に固着していた固着物を浮き上がらせることが可能である。そして、洗浄液を口金内部へ流入させている状態から、スリットを通じて口金内部に気体を、スリットの幅方向全長にわたって、流入させることにより、スリットの幅方向全長にわたって気体と洗浄液との気液界面を一斉に移動させることができる。この結果、口金内部において固着物を剥ぎ取る効果を与えると共に、第2流入工程で再び振動波を与えた洗浄液を口金内部へ流入させる際に、振動波(振動波に基づくキャビテーション)が伝播する態様(経路)が第1流入工程から改められ、従来では振動波の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となる。この結果、短時間で所望の洗浄結果を得ることができる。
【0011】
また、前記気体流入工程では、前記口金先端と前記洗浄液の液面とを離すことにより、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、前記スリットの幅方向全長にわたって、流入させるのが好ましい。
この場合、洗浄槽内の洗浄液に口金先端を浸漬させていた状態から、この口金先端と洗浄液の液面とを離す操作を行えばよく、簡単に、スリットを通じて口金内部に気体を、スリットの幅方向全長にわたって、流入させることができる。
【0012】
第1流入工程から気体流入工程へと移行した際に口金内部側へと流れた洗浄液には、気体が多く含まれるため、洗浄液中に気体が溶存することから、この洗浄液をそのまま洗浄槽へ戻して、後に第1流入工程(又は第2流入工程)を行う場合、溶存気体量が増加した洗浄液に対して振動波が与えられることとなる。この場合、溶存気体によって洗浄液中の振動波によるキャビテーションの発生が阻害され、キャビテーションによって固着物を浮き上がらせる効果が弱まるおそれがある。
そこで、前記口金の洗浄方法は、前記第1流入工程及び前記第2流入工程において前記スリットから流入させた洗浄液で満たされる流路を通じて洗浄液を前記洗浄槽に戻すと共に、前記流路から、前記気体流入工程で流入した気体を、前記スリットとは別の排出流路を通じて排出する気体排出工程を、更に含むのが好ましい。なお、「洗浄槽に戻す洗浄液」は、第1流入工程及び第2流入工程においてスリットから流入させた洗浄液であってもよく、又は、新たな洗浄液であってもよい。スリットから流入させた洗浄液を戻す場合、当該洗浄液に含まれている気体を、排出流路を通じて排出する。新たな洗浄液の場合、スリットから流入させた洗浄液に含まれている気体を、当該洗浄液と共に、排出流路を通じて排出し、この洗浄液の代わりに新たな洗浄液を洗浄槽に戻す。
この場合、洗浄液を洗浄槽に戻しても、洗浄槽内の洗浄液の溶存気体量が増えるのを抑えることができ、後に第1流入工程(又は第2流入工程)を行っても、振動波によって固着物を浮き上がらせる効果が弱まるのを防ぐことができる。
【0013】
また、洗浄液に振動波を与えることにより洗浄槽内で異物が浮遊している場合、第1流入工程及び第2流入工程の一方又は双方によれば、その洗浄槽内の浮遊異物が洗浄液と共に口金内部側へ吸い込まれるおそれがある。
そこで、前記口金の洗浄方法は、前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記第1流入工程及び前記第2流入工程の一方又は双方において前記口金内部側へ洗浄液を流入させた後、(スリットから流入させた又は新たな)洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、この仕上げ工程では、前記洗浄槽の洗浄液に振動波を付与したまま、当該洗浄槽の洗浄液に浸漬させていた前記口金先端を、当該洗浄液の液面から離すのが好ましい。
この場合、洗浄槽内の浮遊異物が洗浄液と共に、口金内部側へ吸い込まれ、口金内部の接液面に付着していても、仕上げ工程によれば、(スリットから流入させた又は新たな)洗浄液を洗浄槽へ吐出することで、口金内部の接液面に付着した洗浄槽内の異物を、振動波により浮き上がらせて、口金内部から吐き出すことができる。しかも、洗浄槽の洗浄液に振動波を付与したまま、洗浄槽の洗浄液に浸漬させていた口金先端を、当該洗浄液の液面から離すので、前記洗浄槽内を浮遊している異物が口金内部と口金先端とに再付着するのを防ぐことができる。その結果、洗浄作業が完了後、人手を介すことなく、速やかに塗布作業へ移行することが可能となる。
【0014】
また、洗浄槽内で浮遊する異物が、振動波によってスリット内を浮遊して口金内部へ侵入しやすい形態(比重、大きさなど)を有している場合は特に、第1流入工程及び第2流入工程の一方又は双方によれば、その洗浄槽内の浮遊異物が洗浄液と共に口金内部側へ吸い込まれやすくなる。
この場合、前記口金の洗浄方法は、前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記第1流入工程及び前記第2流入工程の一方又は双方において前記口金内部側へ洗浄液を流入させた後、(スリットから流入させた又は新たな)洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、この仕上げ工程では、洗浄液を前記洗浄槽へ吐出している途中で、当該洗浄槽内の洗浄液への振動波の付与を停止するのが好ましい。
この場合、洗浄槽内の浮遊異物が洗浄液と共に、口金内部側へ吸い込まれていても、この仕上げ工程によれば、洗浄槽内の洗浄液に振動波を付与している間に、(スリットから流入させた又は新たな)洗浄液を洗浄槽へ吐出することで、口金内部へ吸い込まれた洗浄槽内の浮遊異物を簡単に口金内部から吐き出すことができる。さらに、この際、超音波付与により口金先端に異物が付着するのを回避することができる。しかも、洗浄液を洗浄槽へ吐出している途中で、洗浄槽内の洗浄液への振動波の付与を停止することで、洗浄槽内の異物が沈降し、振動波によって洗浄槽内を浮遊するのを防ぐことができ、口金先端へ異物が付着するのを回避することができる。その結果、洗浄作業が完了後、人手を介すことなく、速やかに塗布作業へ移行することが可能となる。
【0015】
また、前記口金の洗浄方法は、超音波振動子を低振動数で振動させることによって前記振動波を発生させて行った前記第1流入工程及び前記第2流入工程の後であって、再び前記第1流入工程を行う場合において、当該第1流入工程を再び行う前に、前記洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替える入れ替え工程を、更に含むのが好ましい。
この場合、超音波振動子を低振動数で振動させることによって振動波を発生させて第1流入工程及び第2流入工程を行うことにより、口金の洗浄効果をより一層高めることが可能となる。なお、低振動数としては、20kHz以上であり40kHz以下である。しかし、このような低振動数の場合、洗浄液の温度が上昇しやすく、再び第1流入工程を行うことにより、このような洗浄液を口金内部側に流入させると、口金の温度も上昇する。この場合、口金が熱膨張してスリットの寸法が変化し、この口金を用いて直ぐに塗布作業を行うと、塗布品質に影響を与えるおそれがある。このため、洗浄液の温度が所定の温度に低下するまで作業を休止する必要があり、時間のロスとなる。そこで、このような場合には、前記入れ替え工程によって、洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替え、温度が上昇した洗浄液によって再び第1流入工程が行われるのを防ぐことができる。
【0016】
また、前記口金の洗浄方法は、超音波振動子を低振動数で振動させることによって前記振動波を発生させている間、前記洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替える連続的入れ替え工程を、更に含むのが好ましい。
この場合、超音波振動子を低振動数(20kHz以上であり40kHz以下)で振動させることによって振動波を発生させることにより、口金の洗浄効果をより一層高めることが可能となるが、このような低振動数の場合、洗浄液の温度が上昇しやすく、後に、このような洗浄液を口金内部側に流入させると、口金の温度も上昇する。この場合、口金が熱膨張してスリットの寸法が変化し、この口金を用いて直ぐに塗布作業を行うと、塗布品質に影響を与えるおそれがある。このため、洗浄液の温度が所定の温度に低下するまで作業を休止する必要があり、時間のロスとなる。そこで、このような場合には、前記連続的入れ替え工程によって、洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替え、温度が上昇した洗浄液を使用しないようにすることができる。
【0017】
また、本発明の塗布装置は、幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金を有し、当該スリットから基板に対して塗布液を吐出して塗布する装置本体と、前記口金を洗浄する洗浄機構とを備え、前記洗浄機構は、洗浄液を貯留する洗浄槽と、前記洗浄槽内の前記洗浄液に振動波を与える発振装置と、前記洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させた状態で、前記スリットを通じて当該洗浄液を口金内部へ流入させる送液手段と、前記送液手段によって洗浄液を口金内部へと流入させている状態から、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、当該スリットの幅方向全長にわたって、流入させる制御を行う制御装置とを有していることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、振動波を与えた洗浄液を口金内部へ流入させることにより、口金内部に付着していた固着物を浮き上がらせることが可能である。そして、洗浄液を口金内部へ流入させている状態から、スリットを通じて口金内部に気体を、スリットの幅方向全長にわたって、流入させることにより、スリットの幅方向全長にわたって気体と洗浄液との気液界面を一斉に移動させることができる。この結果、口金内部において固着物を剥ぎ取る効果を与えると共に、再び振動波を与えた洗浄液を口金内部へ流入させる場合に、洗浄液の流れに沿って振動波(振動波に基づくキャビテーション)が伝播する態様(経路)が改められ、従来では振動波の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となる。この結果、短時間で所望の洗浄結果を得ることができる。
【0019】
また、前記塗布装置は、前記洗浄槽内の洗浄液の液面と、前記口金先端との高さ方向についての相対位置を変更する位置変更手段を、更に備え、前記制御装置は、前記位置変更手段を制御して、前記口金先端と前記洗浄液の液面とを高さ方向について離すことにより、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、前記スリットの幅方向全長にわたって、流入させるのが好ましい。
この場合、口金先端を、洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に浸漬させていた状態から、位置変更手段によって、この口金先端と洗浄液の液面とを高さ方向について離すことにより、簡単に、スリットを通じて口金内部に気体を、スリットの幅方向全長にわたって、流入させることができる。
【0020】
また、前記送液手段によって、口金内部側へと流れた洗浄液には、気体が多く含まれることから、この洗浄液をそのまま洗浄槽へ戻して、後に、洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させた状態で、スリットを通じて洗浄液を口金内部へ流入させる場合、溶存気体量が増加した洗浄液に対して振動波が与えられることとなる。この場合、溶存気体によって洗浄液中の振動波によるキャビテーションの発生が阻害され、キャビテーションによって固着物を浮き上がらせる効果が弱まるおそれがある。
そこで、前記塗布装置は、前記送液手段によって前記スリットから流入させた洗浄液で満たされる流路を通じて(スリットから流入させた又は新たな)洗浄液を前記洗浄槽に戻す洗浄液戻し部と、前記スリットから流入させた気体を前記洗浄槽以外の領域に排出する排出流路とを更に備えているのが好ましい。
この場合、洗浄液を洗浄槽に戻しても、洗浄槽内の洗浄液の溶存気体量が増えるのを抑えることができ、振動波によって固着物を浮き上がらせる効果が弱まるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スリットの幅方向全長にわたって気体と洗浄液との気液界面を一斉に移動させることによって、口金内部において固着物を剥ぎ取る効果を与えると共に、再び振動波を与えた洗浄液を口金内部へ流入させる際に、振動波(振動波に基づくキャビテーション)が伝播する態様(経路)が改められ、従来では振動波の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となり、短時間で所望の洗浄結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の塗布装置の実施の一形態を示す概略図である。
【図2】口金及び洗浄機構の説明図である。
【図3】洗浄方法を説明するフロー図である。
【図4】洗浄方法に含まれる工程の説明図である。
【図5】口金及び洗浄槽の説明図であり、(A)は第1流入工程、(B)は気体流入工程、(C)と(D)は第2流入工程を示している。
【図6】仕上げ工程を説明するための口金及び洗浄槽の説明図である。
【図7】気体流入手段の他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔塗布装置の構成について〕
図1は、本発明の塗布装置1の実施の一形態を示す概略図である。この塗布装置1は、基板(矩形の枚葉部材)Wを載置可能なステージ2と、スリット7が内部に形成されている口金3と、この口金3を搭載しステージ2上の基板Wに対して当該口金3を水平移動(X方向移動)させる駆動装置4とを備えている。これらにより装置本体8が構成されており、この装置本体8によれば、駆動装置4が口金3を水平移動させながら、スリット7から基板Wに対して塗布液を吐出して塗布することにより、基板W上に塗布液による膜(塗膜)Mを形成することができる。このため、口金3の移動方向が塗布方向(X方向)となる。さらに、塗布装置1は、口金3を洗浄する洗浄機構6を備えている。また、この塗布装置1は、装置本体8及び洗浄機構6の動作を制御する制御装置5を備えており、制御装置5は、塗布液を基板Wに吐出する塗布動作の制御、及び、洗浄機構6による口金3の洗浄動作の制御を行う。
【0024】
口金3の内部に形成されているスリット7は、口金3の幅方向に長く、口金先端(口金下端)9で開口している。口金3の幅方向は、塗布方向(X方向)と直交する水平方向(Y方向)である。スリット7は、塗布方向に薄く、また、口金3の内部に形成されているマニホールド10と繋がっており、マニホールド10及びスリット7を通じて塗布液が口金先端9から吐出される。なお、マニホールド10も、スリット7と同様に、幅方向に長く形成されている。スリット7が開口している口金先端9(スリット7の開口端)は、水平であり、幅方向全長にわたって直線的に形成されている。
【0025】
洗浄機構6は、口金3を洗浄する洗浄液Lが貯留されている洗浄槽11を備えており、この洗浄槽11は、ステージ2の近傍に設置されている。塗布動作を終えた後、駆動装置4が口金3を水平移動させることにより、口金3を洗浄槽11の上方に位置させることができる。駆動装置4は口金3を上下移動させる機能も有しており、口金3を降下させることにより、口金先端9を洗浄槽11内の洗浄液に浸漬させることができる。
【0026】
図2は、口金3及び洗浄機構6の説明図である。洗浄機構6は、洗浄液Lを貯留している前記洗浄槽11の他に、洗浄槽11内の洗浄液Lに振動波を与える発振装置12と、口金3と配管P1を介して繋がっているポンプ13とを備えている。さらに、本実施形態の洗浄機構6は、口金3と配管P2を介して繋がっている廃液部(廃液ボトル)14と、洗浄槽11内の洗浄液Lを吸い出すポンプ15aを含み吸い出した洗浄液Lを洗浄槽11へ戻す流路を構成している循環流路15と、循環流路15の途中に設けられ洗浄液Lから脱気を行う脱気モジュール16と、循環流路15の途中に設けられ洗浄液を冷却する熱交換機17とを備えている。また、循環流路15には、タンク24、フィルター18a,18b及び三方向弁19a,19bが設けられている。また、洗浄機構6は洗浄槽11を昇降させる昇降装置20を備えている。
【0027】
ポンプ13は、洗浄槽11内の洗浄液Lに口金先端9を浸漬させた状態で、当該口金先端9で開口しているスリット7を通じて、洗浄槽11内の洗浄液Lを口金内部へ流入させることができ、吸引した洗浄液を一時的に貯留することができる。
また、洗浄機構6は、ポンプ13によって口金内部側へ流入させた洗浄液を逆流させて洗浄槽11に戻す洗浄液戻し部を有している。本実施形態では、ポンプ13がこの洗浄液戻し部の機能を兼ね備えている。つまり、ポンプ13は、洗浄液Lを正逆の両方向へ送ることができる送液手段であり、運転状態を切り替えることにより、自身によって口金内部側へ流入させた洗浄液を逆流させ洗浄槽11に戻すことができる。更に、ポンプ13を、塗布運転の動作の際に、塗布液を口金3に供給する供給ポンプとして兼用することも可能である。この場合、図示しない塗布液貯蔵タンクと、この塗布液貯蔵タンクからポンプ13を繋ぐ塗布液の供給路とが、別回路としてポンプ13に接続されている。
なお、本実施形態では送液手段としてポンプ13を使用する例について示しているが、送液手段としてタンク(図示せず)を接続し、このタンク内の圧力を制御するものであってもよい。すなわち、ポンプ13の代わりにタンクを接続し、このタンクと真空源と加圧源とを連結させる。そして、真空源を制御することにより口金内部に洗浄液を流入させ、加圧源を制御することにより口金内部の洗浄液を逆流させる。
【0028】
また、洗浄機構6は、このポンプ(洗浄液戻し部)13の機能によって逆流する洗浄液が流れる流路から分岐していると共に、この逆流する洗浄液に含まれている気体を洗浄槽11以外の領域に排出する排出流路を更に備えている。
本実施形態では、上記の「逆流する洗浄液が流れる流路」とは、図4(C)に示しているように、ポンプ13から口金内部のマニホールド10及びスリット7を経て洗浄槽11の洗浄液Lに至るまでの流路21である。そして、上記の排出流路22は、マニホールド10から分岐して口金3の外部の廃液部(廃液ボトル)14へと通じる流路であり、この流路の途中にバルブ(エアベントバルブ)22aが設けられている。なお、図2によれば、前記配管P2が排出流路22の一部を構成している。
【0029】
図2において、発振装置12は、振動子(超音波振動子)12aと、この振動子12aの振動数(発振周波数)を制御するコントローラ12bとを有している。このコントローラ12bは、制御装置5と連係して機能する。発振装置12は、振動子12aを振動させることにより洗浄槽11内の洗浄液Lに対して振動波を付与する。本実施形態では、振動波として超音波振動を付与する。特に、振動子を低振動数(20kHz〜40kHz)で振動させることによって、超音波を付与する。ここで、20kHzより低い振動数や40kHzより高い振動数では、とりわけ強固に固着している固着物を短時間で剥離させるのに必要なキャビテーション効果の発現が困難であるため、20kHz〜40kHzが好ましい。
【0030】
本実施形態の洗浄槽11は、二層式であり、振動子12aの振動波を伝播させる溶媒Sが貯留されている溶媒槽11aと、この溶媒槽11a内に設置され洗浄液Lを貯留している本洗浄槽11bとを有している。振動子12aが振動すると、その超音波(振動波)は、溶媒Sに伝播され、本洗浄槽11bを介して洗浄液Lに伝播される。そして、この洗浄液Lに口金先端9を浸漬させた状態で、振動子12aが振動し、当該洗浄液Lに超音波振動が付与され、当該洗浄液Lを口金3の内部へ流入させることができる。超音波振動により激しく揺さぶられた洗浄液L中では、正負の圧力が交互に作用し、洗浄液L中において、負圧が作用した場所に真空の空洞(泡)が発生し、この空洞(泡)が正の圧力により消滅するという現象が起こる(キャビテーション)。この空洞(泡)が消滅する際に衝撃波が発生して発現するキャビテーション効果により、口金3の内部の表面及び口金先端9の外側面から、固着物(汚れ)を浮き上がらせることが可能となる。
なお、洗浄槽11は二層式であることから、前記循環流路15は、本洗浄槽11b内の洗浄液Lがポンプ15aによって吸い出され、吸い出された洗浄液Lが本洗浄槽11bへ戻る流路となる。また、洗浄液Lの冷却効果をより一層高めるために、溶媒槽11aの溶媒Sについても、溶媒槽11a内と溶媒槽11a外との間を循環させてもよく、この場合、本洗浄槽11b及び溶媒槽11aの双方において、洗浄液L及び溶媒Sを循環させることとなる。
洗浄槽11は一層式であってもよく、この場合、洗浄液Lが貯留されている洗浄槽11に振動子12aが設けられている。
【0031】
脱気モジュール16は、洗浄槽11へ供給する洗浄液を予め脱気する機能を有し、洗浄液L中に溶存する気体を減少させることができる。洗浄液L中に溶存する気体が多く含まれていると、溶存気体によって洗浄液L中におけるキャビテーションの発生が阻害されるため、洗浄槽11において洗浄効果が低減されてしまう。
【0032】
〔口金の洗浄方法について〕
以上の構成を備えた塗布装置1によって実行される口金3の洗浄方法を説明する。図3は、洗浄方法を説明するフロー図であり、図4は、洗浄方法に含まれる工程の説明図である。
【0033】
〔洗浄準備工程及び洗浄動作工程〕
口金3による塗布動作を終え、この口金3の洗浄を行うために、制御装置5の指令信号に基づいて駆動装置4(図1参照)が口金3を洗浄槽11の上方へ移動させ、その後、口金3を降下させ、口金先端9を、その幅方向全長にわたって、洗浄槽11(本洗浄槽11b)の洗浄液Lに浸漬させる(図4(A)参照:図3の洗浄準備工程S1)。
ここで、塗布動作を終えた後の口金3は、口金内部が塗布液で満たされている状態であっても、塗布液を排出して空の状態であっても良い。口金内部が塗布液で満たされている場合は、洗浄槽11内の洗浄液Lが汚れやすくなることから、また、口金内部が空の状態の場合は、口金内部に残存している塗布液が乾燥して新たな固着物が発生してしまうことから、口金内部は、洗浄液を満たした状態であるのが好ましい。
そして、振動子12aによって洗浄液Lに超音波振動(振動波)を与え、ポンプ13が吸引動作を開始し、スリット7の長手方向全長にわたって、スリット7を通じて洗浄液Lを口金内部へ流入させる(図3の第1流入工程S2)。つまり、洗浄液Lに超音波振動を与えながら当該洗浄液Lを口金内部へ吸引させる。この第1流入工程S2は、所定時間継続して行われる。
【0034】
この第1流入工程S2によれば、図5(A)に示しているように、超音波振動(振動波)を与えた洗浄液Lにより、口金内部(特にスリット7)に付着していた固着物Fを浮き上がらせることが可能である。そして、この浮き上がらせた固着物Fを、洗浄液Lと共にポンプ13側へ吸い込ませる。なお、この第1流入工程S2では、スリット7において、超音波振動による微細な泡(キャビテーション)が多く衝突した領域では、固着物Fを浮き上がらせ、ポンプ13側へ吸い込むことができるが、微細な泡(キャビテーション)の衝突が弱い領域では、固着物Fは残留している。
このように領域の差が生じるのは、洗浄液Lの流れの態様(経路)、及び、超音波振動(超音波に基づくキャビテーション)が伝播する態様に起因しており、ある領域に向かって超音波振動による微細な泡(キャビテーション)が発生すると、その微細な泡はその領域に向かって効率よく発生し続けるが、微細な泡の発生効率が悪い領域では、その状態が継続することに基づく。特に、非常に薄い形状であるスリット7に、大きな固着物Fが存在している場合、その固着物Fは超音波振動で完全に浮き上がることが出来ずに残留する。このようにスリット7に固着物Fが残留すると、残留した固着物Fの抵抗により洗浄液Lが流れにくくなるため、洗浄液Lは固着物Fを回避して流れてしまう。その結果、この洗浄液Lが回避する領域が、微細な泡の衝突(キャビテーション)が弱い領域(洗浄効果が低い領域)となり、固着物Fが残留し続ける。
【0035】
そして、この第1流入工程S2において、ポンプ13により洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態から、制御装置5の指令信号に基づいて駆動装置4が口金3を上昇させることにより、スリット7が開口している口金先端9と、洗浄液Lの液面とを離す。これにより、口金内部を大気開放状態とし、ポンプ13により洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態から、スリット7を通じて口金内部に気体(大気)を流入させる(図4(B)参照:図3の気体流入工程S3)。つまり、本実施形態では、駆動装置4が、スリット7の幅方向全長にわたって気体を流入させる気体流入手段となる。
スリット7が開口している口金先端9(スリット7の開口端)は、水平であり、直線的に形成されていることから、洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態から、口金3が上昇し口金先端9と洗浄液Lの液面とが離れると、気体は、口金先端9からスリット7を通じて口金内部に、スリット7の幅方向(長手方向)全長にわたって流入する。
なお、本実施形態では気体として大気を使用しているが、窒素等でもよく、気体であれば特に限定されない。
【0036】
このように、洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態から、スリット7を通じて口金内部に気体を、スリットの幅方向全長にわたって、流入させることにより、図5(B)に示しているように、スリット7の幅方向全長にわたって、気体aと洗浄液Lとの気液界面B1(洗浄液Lから気体aへと変わる界面)を一斉にかつ一様に、マニホールド10側へ移動させることができる。
なお、この気体流入工程S3は、前記気液界面B1が、スリット7の開口端から始まって、気体aによる幅方向に長い帯状の空間が形成されて、この帯状の気体a(空間)がスリット7を通過することができる時間、行われればよく、この時間は数秒(2〜3秒)程度で充分に足り、この時間について口金先端9を洗浄液Lの液面から離せばよい。
【0037】
そして、気体流入工程S3の後、制御装置5の指令信号に基づいて駆動装置4が口金3を降下させることにより、口金先端9を洗浄槽11内の超音波振動を与えた洗浄液Lに再び浸漬させ、スリット7の長手方向全長にわたって、当該スリット7を通じて洗浄液Lを口金内部へ流入させる(図4(A)参照:図3の第2流入工程S4)。この第2流入工程S4は所定時間、継続して行われる。この気体流入工程S3は、口金先端9を液面から一時的に離す工程である。
このように、再びスリット7を通じて洗浄液Lを口金内部へ流入させることで、図5(C)から図5(D)に示しているように、超音波振動を与えている洗浄液Lが吸引され始め、超音波(超音波に基づくキャビテーション)を伝播させている洗浄液Lの、スリット7を流れる態様が、第1流入工程S2の際と比べて変化する。つまり、気体aから洗浄液Lに変わる気液界面B2(図5(C)参照)の移動に伴う揺さぶり効果により、固着物Fが完全に浮かび上がる、もしくは固着物Fの一部が浮かび上がることで固着物Fが縮小することにより、洗浄液Lのスリット7を流れる様態が、第1流入工程の際と比べて変化する。このため、第1流入工程S2では微細な泡(キャビテーション)の衝突が弱かった領域が、第2流入工程S4では、微細な泡(キャビテーション)が多く衝突する領域へと変化することが期待される。
【0038】
以上の第1流入工程S2、気体流入工程S3及び第2流入工程S4によれば、超音波振動を与えた洗浄液により、口金内部に付着していた固着物Fを素早く、効率的に浮き上がらせることが可能である。そして、第1流入工程S2において洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態から、スリット7を通じて口金内部に気体a(図5(B)参照)を、スリット7の幅方向全長にわたって、流入させることにより(気体流入工程S3)、スリット7の幅方向全長にわたって、気体aと洗浄液Lとの気液界面B1を、一斉にかつ一様に移動させることができる。さらに、スリット7を通じて口金内部に洗浄液Lを、再び、スリット7の幅方向全長にわたって、流入させることにより(図5(C)と(D)参照:第2流入工程S4)、スリット7の幅方向全長にわたって、気体aと洗浄液Lとの気液界面B2を、一斉にかつ一様に移動させることができる。
この結果、口金内部において固着物Fを剥ぎ取る効果を与えると共に、第2流入工程S4で再び振動波を与えた洗浄液Lを口金内部へ流入させる際に、この洗浄液Lの流れの態様(経路)、及び、超音波(超音波に基づくキャビテーション)が伝播する態様(経路)が改められ、従来では振動波の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となる。
【0039】
また、第1流入工程S2から気体流入工程S3へと移行した際に口金内部側へと流れた洗浄液には、気体が多く含まれることから、この洗浄液をそのまま洗浄槽11へ戻した場合、後に再び第1流入工程S2を行うと、溶存気体量が増加した洗浄液Lに対して振動波が与えられることとなる。この場合、溶存気体によって洗浄液L中におけるキャビテーションの発生が阻害され、超音波振動によって固着物Fを浮き上がらせる効果が弱まるおそれがある。
そこで、前記第2流入工程S4を終えると、制御装置5によってポンプ13の運転状態が切り替えられ、第1流入工程S2及び第2流入工程S4において口金内部側へ流入させた洗浄液を、逆流させる(図4(C)参照)。この際、前記バルブ(エアベントバルブ22a)を開状態に切り替え、逆流によって洗浄液を洗浄槽11に戻す流路21の途中から、当該洗浄液に含まれている気体を、スリット7とは別の排出流路22を通じて排出する(図3の気体排出工程S5)。なお、バルブ22aを開状態とするのはこの気体排出工程S5のみであり、他の工程では閉状態とする。
【0040】
この気体排出工程S5は、ポンプ13が吸い込んだ洗浄液をすべて吐き出すまで実行される。ポンプ13から吐き出された洗浄液は、一部が排出流路22を経て、廃液部14へ流れる。
前記流路21に含まれるスリット7は非常に薄いのに対し、排出流路22の流路断面ははるかに大きく、スリット7を通じて洗浄槽11へ逆流する洗浄液の抵抗は、排出流路22を流れる洗浄液の抵抗よりも大きい。また、マニホールド10における排出流路22の分岐部は、当該マニホールド10の上部に位置している。このため、逆流する洗浄液中に含まれる気体は、マニホールド10で捕捉され、捕捉された気体が洗浄液の一部に連れられて排出流路22へと流れることができる。そして、この気体がバルブ22aを通じて外へ排出される。
この気体排出工程S5によれば、ポンプ13の吸引によって口金内部側へと流れた洗浄液を、逆流させて洗浄槽11に戻しても、洗浄槽11内の洗浄液Lの溶存気体量が増えるのを抑えることができ、後に第1流入工程S2を行っても、超音波振動によって固着物Fを浮き上がらせる効果が弱まるのを防ぐことができる。
【0041】
以上、第1流入工程S2から気体排出工程S5までが、1サイクルの洗浄動作工程であり、この洗浄動作工程は、複数サイクル繰り返し実行されてもよい。つまり、制御装置5には、この洗浄動作工程を実行する回数が設定されており、この回数に到達するまで、洗浄動作工程を繰り返し実行する(図3の判定工程S6のNoの場合)。設定回数について実行を終えると(判定工程S6のYesの場合)、仕上げ工程S7へと進む。
【0042】
〔仕上げ工程(その1)〕
図1の塗布装置1は、クリーンルームに設置されているが、例えば駆動装置4などが駆動することにより微細な金属粉が発生し、これらがクリーンルーム中(大気中)に舞い、洗浄槽11(本洗浄槽11b)に落下することがある。すると、このような金属粉は洗浄槽11に異物Rとして洗浄液L中に存在する。このように、洗浄槽11に異物Rが存在している場合、第1流入工程及び第2流入工程によれば、振動波を与えることで洗浄槽11内を異物Rが浮遊するため、その異物Rが洗浄液Lと共に口金内部側へ吸い込まれる。そこで、このような異物Rを口金内部側から排出する仕上げ工程S7が行われる。
【0043】
図6(A)に示しているように、口金先端9を洗浄槽11の洗浄液Lに浸漬させた状態で、第1流入工程S2及び第2流入工程S4において口金内部側へ流入させた洗浄液を、ポンプ13によって、逆流させることにより洗浄槽11へ吐出する(図3の仕上げ工程S7)。この際、バルブ22aは閉状態である。
そして、この仕上げ工程S7では、発振装置12によって、洗浄槽11の洗浄液Lに超音波振動を付与したまま、工程の途中から、制御装置5の指令信号に基づいて駆動装置4が口金3を上昇させることにより、洗浄槽11の洗浄液Lに浸漬させていた口金先端9を、洗浄液Lの液面から離す(図6(B)参照)。なお、洗浄液Lの液面から口金先端9を離す動作の間、口金内部側の洗浄液を吐出させた状態としている。
この場合、洗浄槽11に存在していた異物Rが、第1流入工程及び第2流入工程によって、洗浄液Lと共に、口金内部側へ吸い込まれていても、その洗浄液Lを洗浄槽11へ吐出することで、異物Rを口金内部から吐き出すことができる。しかも、洗浄槽11の洗浄液Lに超音波振動を付与したまま、洗浄槽11の洗浄液に浸漬させていた口金先端9を、洗浄液Lの液面から離すので、一旦、吐き出した異物Rが口金先端9に再付着するのを防ぐことができる。
また、この工程S7は、洗浄液Lに超音波振動を与えた状態で行われるので、口金内部に詰まっている異物Rを超音波振動によって浮き上がらせてスリット7の内壁面との摩擦抵抗を下げ、この状態で、洗浄液を吐出することにより、前記異物Rが口金内部に付着することなく効果的に排出することができる。
【0044】
〔仕上げ工程(その2)〕
仕上げ工程S7の他の例を説明する。洗浄槽11に存在している異物Rが、超音波振動によってスリット7内を浮遊して口金内部へ侵入しやすい形態(比重、大きさなど)を有している場合、第1流入工程及び第2流入工程によれば、その異物Rが洗浄液と共に口金内部側へ吸い込まれやすくなる。この場合、以下の仕上げ工程S7とするのが好ましい。
【0045】
図6(A)に示しているように、口金先端9を洗浄槽11の洗浄液Lに浸漬させた状態で、第1流入工程S2及び第2流入工程S4において口金内部側へ流入させた洗浄液を、ポンプ13によって、逆流させることにより洗浄槽11へ吐出する(図3の仕上げ工程S7)。この際、バルブ22aは閉状態である。
そして、この仕上げ工程S7では、洗浄液を逆流させることにより洗浄槽11へ吐出している途中で、洗浄槽11内の洗浄液Lへの超音波振動の付与を停止する(図6(C)参照。)。
この場合、洗浄槽11に存在していた異物Rが、第1流入工程及び第2流入工程によって、洗浄液Lと共に、口金内部側へ吸い込まれても、その洗浄液Lを洗浄槽11へ吐出することで、異物Rを口金内部から吐き出すことができる。しかも、洗浄液Lを逆流させることにより洗浄槽11へ吐出している途中で、洗浄槽11内の洗浄液Lへの超音波振動(振動波)の付与を停止するので、異物Rが、超音波振動によって洗浄槽11内を浮遊して口金内部へ侵入するのを防ぐことができる。
【0046】
以上の仕上げ工程(その1又はその2)が終了されると、制御装置5の指令信号に基づいて駆動装置4(図1参照)が口金3を装置本体8側へ移動させ、ステージ2上に保持されている基板Wに対して塗布液を吐出して塗布する塗布動作を開始する準備を行う(塗布準備工程S8)。なお、前記仕上げ工程(その1又はその2)では、洗浄液を洗浄槽11へ吐出させているが、この洗浄液は、口金内部側へと吸い込んだ洗浄液だけでなく、口金3へ供給した新たな洗浄液であってもよい。
【0047】
また、上記の各工程において、発振装置12による振動子12aの振動数は、高い洗浄効果が得られるキャビテーションを発生させることができる低い帯域(20kHz〜40kHz)である。この低振動数に基づく超音波振動を発生させて第1流入工程S2及び第2流入工程S4を行うことにより、この帯域以外の振動数で行う場合に比べて、口金先端9の洗浄効果をより一層高めることが可能となる。
しかし、このような振動子12aを低振動数で振動させることによって超音波振動を発生させて第1流入工程S2及び第2流入工程S4を行った場合、洗浄液Lの温度が上昇しやすい。そして、図3の判定工程S6に基づいて(判定工程S6でNo)、再び、第1流入工程S2が行われ、温度が上昇した洗浄液Lを口金内部側に流入させると、口金3の温度も上昇する。この場合、口金3が熱膨張してスリット7の寸法が変化し、この口金3を用いて直ぐに塗布作業を行うと、塗布品質に影響を与えるおそれがある。このため、洗浄槽11の洗浄液Lの温度が所定の温度に低下するまで作業を休止する必要があり、時間のロスとなる。
【0048】
そこで、再び、第1流入工程S2を行う前に、洗浄槽11の洗浄液Lを少なくとも一部入れ替える入れ替え工程S9(図3参照)を行うのが好ましい。この工程S9によれば、温度が上昇した洗浄液Lによって再び第1流入工程S2が行われるのを防ぐことができる。入れ替え工程S9の具体例を説明する。第1の方法としては、図2において、ポンプ15aによって吸い出した洗浄液を、三方向弁19aによって、廃液としてタンク23に回収する。そして、廃液とする洗浄液に代わる新しい洗浄液を、三方向弁19bを通じて供給する。なお、本実施形態では新しい洗浄液は、脱気モジュール16を経てから洗浄槽11に供給される。以上より、洗浄槽11の使用済みの洗浄液Lの一部を、新しい洗浄液に入れ替えることができ、洗浄槽11の洗浄液Lの温度が高くなるのを防ぐことができる。
【0049】
第2の方法としては、ポンプ15aによって吸い出された洗浄液は、三方向弁19aを通じて、熱交換機17に送られ、冷却される。冷却された洗浄液は、循環流路15を通じて、洗浄槽11へ戻される。なお、本実施形態では循環する洗浄液は、脱気モジュール16を経てから洗浄槽11に戻される。以上より、洗浄槽11の使用済みの洗浄液Lの一部を循環させ、その途中で熱交換が行われ、洗浄槽11では冷えた洗浄液Lに入れ替えられる。
【0050】
また、このような洗浄液Lの入れ替えを、第1流入工程S2、気体流入工程S3及び第2流入工程S4の、各工程中において、又は、各工程後において、実行してもよい。つまり、本実施形態における口金の洗浄方法には、超音波振動子12aを低振動数(20kHz〜40kHz)で振動させることによって超音波を発生させている間、洗浄槽11の洗浄液Lを少なくとも一部入れ替える工程(連続的入れ替え工程)が、更に含まれていてもよい。
【0051】
以上、本実施形態に係る口金の洗浄方法によれば、図5(B)に示しているように、スリット7の幅方向全長にわたって気体aと洗浄液Lとの気液界面B1を一斉に上に移動させ、また、図5(C)に示しているように、スリット7の幅方向全長にわたって気体aと洗浄液Lとの気液界面B2を一斉に上に移動させることによって、口金内部において固着物Fを剥ぎ取る効果を与えると共に、超音波振動を与えた洗浄液Lを再び口金内部へ流入させる際に、洗浄液Lの流れの態様(経路)、及び、超音波(超音波に基づくキャビテーション)が伝播する態様(経路)が改められる。このため、従来では超音波振動の伝播が充分にされず残っていた固着物を、浮かび上がらせることが可能となり、超音波振動を与えた洗浄液Lを再び口金内部へ流入させることで、従来では残留していたであろう固着物を洗浄することができる。この結果、短時間で所望の洗浄結果を得ることができる。
そして、洗浄時間が短時間でよいことから、超音波振動を洗浄液Lに付与する時間も短くて済み、超音波振動による口金3の発熱を抑えることができ、迅速に塗布作業を開始することが可能となる。
【0052】
また、振動子12aを中空の部材から構成し、内部に冷媒を通過させてもよい。中空の振動子12aに冷媒(例えば窒素ガス)を供給する接続口を設け、この接合口を通じて振動子12a内に冷媒を流し、振動子12a及び洗浄液Lに熱が蓄えられないようにするのが好ましい。
【0053】
また、本発明の塗布装置及び口金の洗浄方法は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、気体流入工程において、洗浄槽11の洗浄液Lの液面と口金先端9とを離すために、当該液面と当該口金先端9との高さ方向についての相対位置を変更する位置変更手段を、口金3を上下移動させる駆動装置4として説明したが、これ以外であってもよく、位置変更手段を、洗浄槽11を昇降させる昇降装置20(図2参照)としてもよい。または、口金先端9と洗浄槽11との高さ方向の相対位置は変化しないが、気体流入工程の際に、洗浄液Lの液面の高さを低下させ、その後、その液面を上昇させてもよい。これは、洗浄槽11に対する洗浄液Lの排出・供給を行えばよい。
【0054】
また、気体流入工程において、ポンプ13によって洗浄槽11内の洗浄液Lを口金内部へと流入させている状態から、スリット7を通じて口金内部に気体を、スリット7の幅方向全長にわたって、流入させるために、上記実施形態では、洗浄液Lの液面に対する口金先端9の高さを変更することによって実現する場合を説明したが、これ以外であってもよい。例えば、図7(A)に示すように、本洗浄槽11b内に、口金先端9と接続可能となる接続ポート50aを有した気体供給部50が設けられており、この気体供給部50には、洗浄槽11外から気体が供給されている。駆動装置4(図1参照)によって、図7(B)に示すように、口金3を降下させることにより、口金先端9が接続ポート50aと接続され、気体供給部50からスリット7を通じて口金内部に気体を流入させる。図7(C)に示すように、接続ポート50aは、スリット7(口金先端9)の幅方向全長にわたって設けられており、スリット7の幅方向全長にわたって、気体を流入させることができる。
以上より、洗浄液Lを口金内部へ流入させている状態(図7(A))から、スリット7を通じて口金内部に気体を、スリット7の幅方向全長にわたって、流入させるために(図7(B))、駆動装置4によって口金3を降下させればよく、この降下は、制御装置5の制御によって実行される。つまり、この場合、駆動装置4及び気体供給部50が、口金内部に気体を、スリット7の幅方向全長にわたって流入させる気体流入手段となる。
【0055】
また、上記実施形態では、気体排出工程、仕上げ工程において、口金内部に流入させた洗浄槽11の洗浄液Lを逆流させて洗浄槽11に戻す例について説明したが、口金内部に洗浄液Lを流入させた後、新たな洗浄液を洗浄槽11に戻してもよい。
例えば、図2に示すように、配管P1(口金3とポンプ13との間)にバルブ25を設け、ポンプ13と洗浄液供給タンク28との間に三方弁27を設け、この三方弁27の出力ポートの一つは廃液タンク23と接続されている。また、三方弁27とポンプ13との間にはバルブ26が設けられている。この構成によっても、洗浄液Lに含まれる気体(気体流入工程でスリット7から吸い込んだ気体)が洗浄槽11に戻るのを抑えることができる。
【0056】
すなわち、バルブ25を開、バルブ26を閉状態にしてポンプ13を吸引動作させることにより、口金内部の気体を含む洗浄液が、配管P1を通ってポンプ13内に吸入される。そして、バルブ25を閉、バルブ26を開、三方弁27をポンプ13側からタンク23へ繋がるルート(図2ではC1ルート)にして、ポンプ13を吐出動作させることにより、ポンプ13の洗浄液がタンク23に排出される。つまり、スリット7からポンプ13へと流入させた洗浄液で満たされる流路(スリット7からポンプ13までの流路)から、気体流入工程で流入した気体を、当該洗浄液と共に、ポンプ13からタンク23までの流路(排出流路)を通じて、当該タンク23に排出することができる。
そして、バルブ25を閉、バルブ26を開、三方弁27を洗浄液供給タンク28からポンプ13側へと繋がるルート(図2ではC2ルート)に切り替え、ポンプ13を吸引動作させることにより、洗浄液供給タンク28内の新しい洗浄液がポンプ13に吸入される。そして、バルブ25を開、バルブ26を閉にしてポンプ13を吐出動作させることにより、ポンプ13に吸入されていた新しい洗浄液が配管P1を通じて口金内部に供給される。さらに、ポンプ13を作動させ続けることによりスリット7を通じて新しい洗浄液が洗浄槽11に戻される。これにより、気体流入工程により洗浄液に取り込まれた気体を、洗浄槽11に戻るのを抑えることができ、溶存気体によって洗浄槽11内の洗浄液中における振動波の伝播が阻害され、振動波によって固着物を浮き上がらせる効果が弱まるのを抑えることができる。この場合においても、洗浄液供給タンク28とポンプ13との間に脱気モジュール17を備えておくことが好ましい。
【0057】
また、上記実施形態では、洗浄液の入れ替え工程は、第1流入工程及び第2流入工程の後であって、再び第1流入工程を行う場合において、この第1流入工程を再び行う前に、洗浄槽11の洗浄液Lを少なくとも一部入れ替える例について説明したが、いずれの工程においても入れ替え工程が、連続的に行われてもよい。具体的には、各工程において、超音波振動子12aを低振動で振動させて振動波を発生させている間、常時、入れ替え工程を行うことにより、洗浄液を常時循環させる。
すなわち、洗浄液の温度によっては、洗浄液に口金3を浸漬させているだけで口金3の温度が上昇する場合がある。この場合、口金3が熱膨張してスリット7の寸法が変化することにより塗布品質に影響を与えるおそれがある。そこで、超音波振動子12aを低振動数で作動させている際に、洗浄液を常時循環させることにより、洗浄液を常に冷却させる。これにより、洗浄液の温度上昇を抑えることができ、口金3の温度上昇を抑え、塗布品質への影響を抑えることが可能となる。
【0058】
口金の洗浄方法に関して、参考発明を説明する。
この参考発明の課題は、洗浄液に対して超音波振動を付与する位置が、口金先端の近くとなるように、例えば、洗浄液を貯留していると共にこの洗浄液に口金先端を浸漬させる洗浄槽の底部に振動子を設け、この振動子によって洗浄液に振動波(超音波振動)を付与し、口金の洗浄を行うことが考えられるが、洗浄槽内の洗浄液に対して振動波を与えることにより、この洗浄槽内で異物が浮遊して、口金の洗浄中に、その浮遊している異物が口金内部へ侵入するおそれがある、という点である。
そこで、参考発明は、幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金の洗浄方法であって、
洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させ、前記スリットを通じて洗浄液を流して口金内部の洗浄を行う洗浄工程と、
前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記洗浄工程において前記口金内部の洗浄を行った後、洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、
この仕上げ工程では、前記洗浄槽の洗浄液に振動波を付与したまま、当該洗浄槽の洗浄液に浸漬させていた前記口金先端を、当該洗浄液の液面から離す洗浄方法である。
この参考発明によれば、洗浄工程において、洗浄槽内で浮遊している異物が、口金内部へ侵入し、口金内部の接液面に付着していても、仕上げ工程によれば、洗浄液を洗浄槽へ吐出することで、口金内部の接液面に付着した異物を、振動波により浮き上がらせて、口金内部から吐き出すことができる。しかも、洗浄槽の洗浄液に振動波を付与したまま、洗浄槽の洗浄液に浸漬させていた口金先端を、当該洗浄液の液面から離すので、洗浄槽内を浮遊している異物が口金内部と口金先端とに再付着するのを防ぐことができる。これにより、洗浄工程から素早く塗布運転に移行することが可能となる。
【0059】
また、口金の洗浄方法に関して、他の参考発明を説明する。
この参考発明の課題は、
洗浄液に対して超音波振動を付与する位置が、口金先端の近くとなるように、例えば、洗浄液を貯留していると共にこの洗浄液に口金先端を浸漬させる洗浄槽の底部に振動子を設け、この振動子によって洗浄液に振動波(超音波振動)を付与し、口金の洗浄を行うことが考えられるが、洗浄槽内で浮遊する異物が、振動波によってスリット内を浮遊して口金内部へ侵入しやすい形態(比重、大きさなど)を有している場合は特に、その洗浄槽内で浮遊している異物が口金内部側へ侵入し付着するおそれがある、という点である。
そこで、参考発明は、幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金の洗浄方法であって、
洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させ、前記スリットを通じて洗浄液を流して口金内部の洗浄を行う洗浄工程と、
前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記洗浄工程において前記口金内部の洗浄を行った後、洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、
この仕上げ工程では、洗浄液を前記洗浄槽へ吐出している途中で、当該洗浄槽内の洗浄液への振動波の付与を停止する洗浄方法である。
この参考発明によれば、洗浄工程において、洗浄槽内で浮遊している異物が、口金内部側へ侵入していても、仕上げ工程によれば、洗浄液を洗浄槽へ吐出することで、前記異物を簡単に口金内部から吐き出すことができる。さらに、この際、超音波付与により口金先端に異物が付着するのを回避することができる。しかも、洗浄液を洗浄槽へ吐出している途中で、洗浄槽内の洗浄液への振動波の付与を停止するので、洗浄槽内の異物が、振動波によって洗浄槽内を浮遊するのを防ぐことができ、口金先端へ異物が付着するのを回避することができる。これにより、洗浄工程から素早く塗布運転に移行することが可能となる。
【0060】
なお、これら参考発明それぞれにおける洗浄工程は、前記実施形態で説明した第1流入工程、気体流入工程及び前記第2流入工程を含む前記洗浄動作工程と同じであり、また、参考発明それぞれにおける洗浄工程及び仕上げ工程に対して、前記各実施形態の口金の洗浄方法で説明した洗浄動作工程及び仕上げ工程の各事項を、適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:塗布装置 3:口金 4:駆動装置(位置変更手段) 5:制御装置 6:洗浄機構 7:スリット 8:装置本体 9:口金先端 11:洗浄槽 12a:振動子 13:ポンプ(洗浄液戻し部) 21:流路 22:排出流路 a:気体 B1,B2:気液界面 F:固着物 L:洗浄液 R:異物 W:基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金の洗浄方法であって、
洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させ、前記スリットを通じて当該洗浄液を口金内部へ流入させる第1流入工程と、
前記第1流入工程において洗浄液を口金内部へ流入させている状態から、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、当該スリットの幅方向全長にわたって、流入させる気体流入工程と、
前記気体流入工程の後、前記口金先端を前記洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に浸漬させ、前記スリットを通じて当該洗浄液を前記口金内部へ流入させる第2流入工程と、
を含むことを特徴とする口金の洗浄方法。
【請求項2】
前記気体流入工程では、前記口金先端と前記洗浄液の液面とを離すことにより、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、前記スリットの幅方向全長にわたって、流入させる請求項1に記載の口金の洗浄方法。
【請求項3】
前記第1流入工程及び前記第2流入工程において前記スリットから流入させた洗浄液で満たされる流路を通じて洗浄液を前記洗浄槽に戻すと共に、前記流路から、前記気体流入工程で流入した気体を、前記スリットとは別の排出流路を通じて排出する気体排出工程を、更に含む請求項1又は2に記載の口金の洗浄方法。
【請求項4】
前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記第1流入工程及び前記第2流入工程の一方又は双方において前記口金内部側へ洗浄液を流入させた後、洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、
この仕上げ工程では、前記洗浄槽の洗浄液に振動波を付与したまま、当該洗浄槽の洗浄液に浸漬させていた前記口金先端を、当該洗浄液の液面から離す請求項1〜3のいずれか一項に記載の口金の洗浄方法。
【請求項5】
前記口金先端を前記洗浄槽の洗浄液に浸漬させた状態で、前記第1流入工程及び前記第2流入工程の一方又は双方において前記口金内部側へ洗浄液を流入させた後、洗浄液を前記スリットから当該洗浄槽へ吐出する仕上げ工程を、更に含み、
この仕上げ工程では、洗浄液を前記洗浄槽へ吐出している途中で、当該洗浄槽内の洗浄液への振動波の付与を停止する請求項1〜3のいずれか一項に記載の口金の洗浄方法。
【請求項6】
超音波振動子を低振動数で振動させることによって前記振動波を発生させて行った前記第1流入工程及び前記第2流入工程の後であって、再び前記第1流入工程を行う場合において、当該第1流入工程を再び行う前に、前記洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替える入れ替え工程を、更に含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の口金の洗浄方法。
【請求項7】
超音波振動子を低振動数で振動させることによって前記振動波を発生させている間、前記洗浄槽の洗浄液を少なくとも一部入れ替える連続的入れ替え工程を、更に含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の口金の洗浄方法。
【請求項8】
幅方向に長く先端で開口しているスリットが内部に形成されている口金を有し、当該スリットから基板に対して塗布液を吐出して塗布する装置本体と、
前記口金を洗浄する洗浄機構と、を備え、
前記洗浄機構は、
洗浄液を貯留する洗浄槽と、
前記洗浄槽内の前記洗浄液に振動波を与える発振装置と、
前記洗浄槽内の振動波を与えた洗浄液に口金先端を浸漬させた状態で、前記スリットを通じて当該洗浄液を口金内部へ流入させる送液手段と、
前記送液手段によって洗浄液を口金内部へと流入させている状態から、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、当該スリットの幅方向全長にわたって、流入させる制御を行う制御装置と、を有している
ことを特徴とする塗布装置。
【請求項9】
前記洗浄槽内の洗浄液の液面と、前記口金先端との高さ方向についての相対位置を変更する位置変更手段を、更に備え、
前記制御装置は、前記位置変更手段を制御して、前記口金先端と前記洗浄液の液面とを高さ方向について離すことにより、前記スリットを通じて前記口金内部に気体を、前記スリットの幅方向全長にわたって、流入させる請求項8に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記送液手段によって前記スリットから流入させた洗浄液で満たされる流路を通じて洗浄液を前記洗浄槽に戻す洗浄液戻し部と、
前記スリットから流入させた気体を前記洗浄槽以外の領域に排出する排出流路と、を更に備えている請求項8又は9に記載の塗布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17961(P2013−17961A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153903(P2011−153903)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】