説明

古紙再生処理装置および脱墨方法

【課題】脱墨槽の蓋の開閉用スペースを不要にし得る古紙再生処理装置を提供する。
【解決手段】脱墨剤15を添加した古紙パルプ液12中に散気を行って印刷成分を分離する脱墨装置4を備えた古紙再生処理装置1であって、脱墨装置4は、脱墨槽17と、脱墨槽17内の古紙パルプ液12中に散気を行う散気装置18と、制御装置23を有し、制御装置23は、脱墨槽17から外側へ溢れ出した泡沫19を消泡することによって得られる脱墨排液21の所定時間における生成量に基いて、脱墨条件を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱墨装置を備えた古紙再生処理装置および脱墨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の古紙再生処理装置としては、例えば、図9に示すように、脱墨槽120内の古紙パルプ液121中に散気を行うことによって、古紙パルプ液121から印刷成分を分離する脱墨装置122が備えられているものがある。脱墨装置122は脱墨槽120内の底部から多数の気泡123を発生させる散気装置124を有している。また、脱墨槽120の上部には開口部125が形成され、脱墨槽120内の古紙パルプ液121の液面に浮上して開口部125から脱墨槽120の外側へ溢れ出す泡沫126の押上力を受けて開閉する蓋127が脱墨槽120の上部に設けられている。
【0003】
また、脱墨装置122には、蓋127の開き量128を検出する検出装置129と、供給経路134から脱墨槽120へ供給される古紙パルプ液121に脱墨剤130を添加する脱墨剤添加装置131と、検出装置129の検出値に基いて脱墨剤添加装置131を制御する制御装置132とが備えられている。
【0004】
これによると、脱墨剤添加装置131によって古紙パルプ液121に脱墨剤130を添加し、この古紙パルプ液121を供給経路134から脱墨槽120内に導入し、散気装置124によって脱墨槽120内の古紙パルプ液121中に多数の気泡123を放出させる。これにより、古紙パルプ液121中の印刷成分が気泡123に付着し、印刷成分を付着した気泡123は、古紙パルプ液121の液面に浮上した後、泡沫126(フロス)として開口部125から脱墨槽120の外側へ溢れ出す。この際、開口部125から溢れ出る泡沫126の押上力を受けて蓋127が開き、蓋127の開き量128が検出装置129によって検出される。
【0005】
ここで、古紙パルプ液121への脱墨剤130の添加量が多いほど、脱墨槽120内において古紙パルプ液121の脱墨が促進され、開口部125から脱墨槽120の外側へ溢れ出す泡沫126の量が増えるため、検出装置129により検出される蓋127の開き量128が増大するという関係を有している。
【0006】
したがって、検出された蓋127の開き量128に基づいて、脱墨槽120の外側へ溢れ出す泡沫126の排出量を把握することができ、泡沫126の排出量から古紙パルプ液121の脱墨状態を判断し、これに基づいて脱墨剤添加装置131を制御し、新たに添加する脱墨剤130の添加量を調節することができる。これにより、古紙パルプ液121に対して適切な脱墨処理を行なうことが可能であり、古紙パルプ液121が要求される度合い(程度)を上回って過度に脱墨されたり或いは古紙パルプ液121の脱墨度合いが不足するのを防止することができる。
【0007】
尚、上記のような脱墨装置122を備えた古紙再生処理装置は下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−38206
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、脱墨槽120の上方に、蓋127が開閉するための開閉用スペース133を確保する必要があるといった問題がある。特に、脱墨槽120が大型化すると、これに伴って蓋127も大型化するため、開閉用スペース133が増大するといった問題がある。
【0010】
本発明は、脱墨槽の蓋の開閉用スペースを不要にし得る古紙再生処理装置および脱墨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本第1発明は、脱墨剤を添加した古紙パルプ液中に散気を行って印刷成分を分離する脱墨装置を備えた古紙再生処理装置であって、
脱墨装置は、脱墨槽と、脱墨槽内の古紙パルプ液中に散気を行う散気装置と、制御装置を有し、
制御装置は、脱墨槽から外側へ溢れ出した泡沫を消泡することによって得られる脱墨排液の所定時間における生成量に基いて、脱墨条件を制御するものである。
【0012】
これによると、脱墨槽内において、脱墨剤を添加した古紙パルプ液中に散気を行うことにより、古紙パルプ液中の印刷成分が気泡に付着し、印刷成分を付着した気泡は、古紙パルプ液の液面に浮上した後、泡沫として脱墨槽の外側へ溢れ出す。この際、溢れ出した泡沫を消泡することにより、泡沫から脱墨排液が得られる。
【0013】
このようにして得られる脱墨排液の所定時間における生成量に基いて、制御装置が脱墨条件を制御する。このように、脱墨槽の外側へ溢れ出す泡沫の排出量ではなく、脱墨排液の生成量に基いて脱墨条件を制御するため、脱墨槽に開閉自在な蓋を設ける必要は無く、したがって、蓋を開閉するための開閉用スペースを脱墨槽の上方に確保する必要は無く、開閉用スペースを不要にし得る。
【0014】
尚、脱墨排液の生成量は、泡沫の排出量に比べて、容易且つ正確に計測することができ、これに基いて脱墨条件を制御することで、脱墨の度合いがばらつかず、再生紙の品質をほぼ一定に調整することができる。
【0015】
本第2発明における古紙再生処理装置は、脱墨条件は散気装置の散気量と脱墨剤の添加量との少なくともいずれかであるものである。
これによると、脱墨排液の生成量が目標の生成量よりも少ない場合、制御装置は、脱墨の度合いが不足していると判断して、散気装置の散気量を増やす制御と脱墨剤の添加量を増やす制御との少なくともいずれかを行う。
【0016】
また、脱墨排液の生成量が目標の生成量よりも多い場合、制御装置は、脱墨の度合いが過剰であると判断して、散気装置の散気量を減らす制御と脱墨剤の添加量を減らす制御との少なくともいずれかを行う。
【0017】
これにより、脱墨排液の生成量が目標の生成量に近付き、脱墨の度合いが過不足なく適切に調整される。
本第3発明における古紙再生処理装置は、脱墨槽から排出された脱墨排液を貯留する脱墨排液貯留部が備えられ、
脱墨排液の所定時間における生成量は、所定時間で脱墨排液貯留部に貯留された脱墨排液を脱墨排液貯留部の下流側へ排出するのに要する排出時間、又は、脱墨排液貯留部に所定量の脱墨排液を貯留するのに要する貯留時間のいずれかの時間に基いて決定されるものである。
【0018】
これによると、脱墨槽から排出された脱墨排液は脱墨排液貯留部に流れ込んで貯留される。この際、脱墨排液を所定時間にわたって脱墨排液貯留部に貯留し、その後、この所定時間にわたって貯留された脱墨排液を下流側へ排出する。このとき、排出するのに要する排出時間を計測し、この排出時間に基いて、脱墨排液の所定時間における生成量を決定することができる。
【0019】
或は、脱墨排液貯留部に所定量の脱墨排液を貯留するのに要する貯留時間を計測し、この貯留時間に基いて、脱墨排液の所定時間における生成量を決定することも可能である。
本第4発明における古紙再生処理装置は、脱墨排液貯留部内の脱墨排液には消泡剤が添加されており、
脱墨排液貯留部内の脱墨排液を脱墨槽から溢れ出した泡沫に噴射し、且つ、噴射した脱墨排液を脱墨排液貯留部内に戻す消泡装置が備えられているものである。
【0020】
これによると、消泡剤を添加した脱墨排液が泡沫に噴射され、泡沫が消泡されることにより、泡沫から新たに脱墨排液が生成される。このようにして新たに生成された脱墨排液は、泡沫に噴射された脱墨排液と共に、脱墨排液貯留部に回収される。
【0021】
本第5発明は、脱墨剤を添加した古紙パルプ液中に散気を行って印刷成分を分離する脱墨方法であって、
脱墨槽から外側へ溢れ出した泡沫を消泡することによって得られる脱墨排液の所定時間における生成量に基いて、脱墨条件を制御するものである。
【0022】
これによると、脱墨槽の外側へ溢れ出す泡沫の排出量ではなく、脱墨排液の生成量に基いて脱墨条件を制御するため、脱墨槽に開閉自在な蓋を設ける必要は無く、したがって、蓋を開閉するための開閉用スペースを脱墨槽の上方に確保する必要は無く、開閉用スペースを不要にし得る。尚、脱墨排液の生成量は、泡沫の排出量に比べて、容易且つ正確に計測することができ、これに基いて脱墨条件を制御することで、脱墨の度合いがばらつかず、再生紙の品質をほぼ一定に調整することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によると、脱墨槽の蓋の開閉用スペースが不要であり、脱墨の度合いを過不足なく適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態における古紙再生処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】同、古紙再生処理装置の脱墨装置およびその近辺の装置の図である。
【図3】同、脱墨装置の脱墨槽の横断面図である。
【図4】同、脱墨装置の制御系のブロック図である。
【図5】同、脱墨装置の脱墨方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態における脱墨装置の図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態における脱墨装置の計測手段の図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態における脱墨装置の計測手段の図である。
【図9】従来の古紙再生処理装置の脱墨装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態において、図1は古紙再生処理装置1の構成を示す概略図であり、古紙再生処理装置1は古紙パルプ製造装置2と貯蔵タンク3と脱墨装置4と抄紙装置5と仕上装置6と排液処理装置7とを一体的に備えた小型のものである。
【0026】
図2に示すように、古紙パルプ製造装置2は、古紙10を裁断する裁断部11と、裁断された古紙10を水および離解促進剤の液体と攪拌し離解を行って古紙パルプ液12を製造するパルパー13を有している。パルパー13は、パルパー槽14と、パルパー槽14内に設けられた攪拌装置24とを有している。また、貯蔵タンク3はパルパー13において製造された古紙パルプ液12を貯留するものである。
【0027】
脱墨装置4は、パルパー槽14内に脱墨剤15を添加する第1脱墨剤添加装置9と、貯蔵タンク3内に脱墨剤15を添加する第2脱墨剤添加装置16と、脱墨槽17と、脱墨槽17内の古紙パルプ液12中に散気を行う散気装置18と、脱墨槽17から外側へ溢れ出した泡沫19(フロス)を消泡する消泡装置20と、泡沫19を消泡することにより生じる脱墨排液21の所定時間Tにおける生成量Aを計測する計測手段22と、計測された生成量Aに基いて散気装置18の散気量(脱墨条件の一例)と脱墨剤15の添加量(脱墨条件の一例)とを制御する制御装置23が備えられている。
【0028】
第1脱墨剤添加装置9は、脱墨剤15を貯留する脱墨剤タンク25と、脱墨剤タンク25からパルパー槽14内に連通する第1脱墨剤供給経路26と、第1脱墨剤供給経路26に設けられた第1脱墨剤供給用ポンプ27および第1脱墨剤供給用電磁弁28とを有している。
【0029】
第2脱墨剤添加装置16は、脱墨剤タンク25から貯蔵タンク3内に連通する第2脱墨剤供給経路67と、第2脱墨剤供給経路67に設けられた第2脱墨剤供給用ポンプ68および第2脱墨剤供給用電磁弁69とを有している。
【0030】
図2,図3に示すように、脱墨槽17は、上端に開口部29を有する四角箱形状の部材であり、古紙パルプ液12を貯蔵タンク3内から脱墨槽17内に流入させる流入部30と、古紙パルプ液12を脱墨槽17内から抄紙装置5へ排出させる排出部31とを備えている。
【0031】
貯蔵タンク3の底部と脱墨槽17の流入部30とは配管等からなる供給経路32でつながっており、供給経路32には、貯蔵タンク3内の古紙パルプ液12を脱墨槽17内へ強制的に送る供給ポンプ33が設けられている。
【0032】
脱墨槽17の排出部31と抄紙装置5のヘッドボックス34とは配管等からなる排出経路35でつながっており、排出経路35には、脱墨後の古紙パルプ液12を脱墨槽17内からヘッドボックス34へ強制的に送る送出ポンプ36が設けられている。尚、供給および送出ポンプ33,36には例えばチューブポンプが用いられる。
【0033】
脱墨槽17の内部は複数の仕切壁37によって複数の脱墨室38a〜38dに区画されており、各仕切壁37の一部が開口していることにより、全ての脱墨室38a〜38dが連通している。これにより、脱墨槽17内には、上流側の流入部30から各脱墨室38a〜38dを通って下流側の排出部31に至る蛇行した流通経路が形成されている。
【0034】
脱墨槽17には、開口部29から外側へ溢れ出した泡沫19を受ける受泡槽40(受泡部の一例)が設けられている。
散気装置18は、脱墨槽17内の底部に設置された平板形状の第1〜第4気泡発生部材43a〜43dと、各第1〜第4気泡発生部材43a〜43dに空気を供給する給気装置44とを有している。尚、気泡発生部材43a〜43dには、例えば多孔体等が用いられている。
【0035】
給気装置44は、空気を供給する複数のエアポンプ45a,45bと、エアポンプ45a,45bと気泡発生部材43a〜43dとの間に接続された給気管46を有している。尚、両方のエアポンプ45a,45bが稼動した場合、各気泡発生部材43a〜43dへの空気供給量が増大し、各気泡発生部材43a〜43dから放出される気泡48の放出量が増加する。また、エアポンプ45a,45bのいずれか片方のみが稼動した場合、各気泡発生部材43a〜43dへの空気供給量が減少(半減)し、各気泡発生部材43a〜43dから放出される気泡48の放出量が減少(半減)する。
【0036】
計測手段22は、脱墨槽17から排出された脱墨排液21を貯留する脱墨排液タンク50(脱墨排液貯留部の一例)と、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位(すなわち液面)が計測基準液位Bに達したことを検出する液位検出装置51と、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を排液処理装置7に排出する排出装置52とを有している。
【0037】
受泡槽40の底の最下部と脱墨排液タンク50との間には、脱墨排液21を受泡槽40から脱墨排液タンク50へ回収するための配管等からなる脱墨排液回収経路54が設けられている。また、計測基準液位Bとは、脱墨排液21の生成量Aの計測を開始する液位であって、脱墨排液タンク50に予め設定されている。尚、液位検出装置51には、例えばフロートスイッチ等が用いられている。
【0038】
排出装置52は、脱墨排液21を単位時間当り一定流量Cで脱墨排液タンク50内から排液処理装置7に排出する能力を有しており、脱墨排液タンク50と排液処理装置7とに連通する配管等からなる脱墨排液排出経路56と、脱墨排液排出経路56に設けられた排出ポンプ57と、電磁式の排出弁58とを有している。尚、排出ポンプ57は脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を単位時間当り一定流量Cで排出する能力を有している。
【0039】
尚、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21には、消泡剤60が消泡剤添加装置(図示省略)により添加されている。消泡剤添加装置は、第2脱墨剤添加装置16と同様に、消泡剤60を貯留する消泡剤タンクと、消泡剤タンクから脱墨排液タンク50内に連通する消泡剤供給経路と、消泡剤供給経路に設けられた消泡剤供給用ポンプおよび消泡剤供給用電磁弁とを有している。
【0040】
消泡装置20は、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を脱墨槽17の開口部29から外側へ溢れ出した泡沫19に噴射して消泡し、噴射した脱墨排液21を脱墨排液タンク50内に戻すものであり、受泡槽40内に設けられた噴射装置63と、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を噴射装置63に供給するための配管等からなる脱墨排液供給経路64と、脱墨排液供給経路64に設けられた消泡用ポンプ65と、先述した脱墨排液回収経路54とを有している。
【0041】
図4に示すように、制御装置23は、時間を計測するタイマー部71を有しており、液位検出装置51による検出とタイマー部71で計測された時間とに基いて、各ポンプ27,33,36,45a,45b,57,65,68と各弁28,58,69とを制御する。
【0042】
図2に示すように、抄紙装置5は、脱墨装置4において脱墨処理された古紙パルプ液12を抄紙するものであり、古紙パルプ液12を濾過脱水して湿紙を形成する抄紙ワイヤー部75と、抄紙ワイヤー部75に古紙パルプ液12を供給するヘッドボックス34と、湿紙を脱水し乾燥させる脱水乾燥装置(図示省略)とを有している。
【0043】
図1に示すように、仕上装置6は、抄紙装置5において生成された再生紙を所定サイズに裁断する裁断装置(図示省略)等を有している。
図2に示すように、排液処理装置7は、脱墨排液タンク50内から脱墨排液排出経路56を通って排出された脱墨排液21に対して廃液処理を行なった後、古紙再生処理装置1の外部に排出するものである。
【0044】
上記構成における作用を説明する。
図2に示すように、使用済みの古紙10を古紙再生処理装置1の古紙パルプ製造装置2に投入することにより、古紙10は、裁断部11において裁断され、パルパー槽14に投入される。パルパー槽14内において、裁断された古紙10と水と離解促進剤とが攪拌装置24により攪拌され、これにより、古紙10が離解処理されて、再生パルプを含有した古紙パルプ液12が生成される。
【0045】
このようにして得られた古紙パルプ液12は、パルパー槽14から貯蔵タンク3に供給され、貯蔵タンク3内に貯蔵される。
パルパー槽14内に脱墨剤15を添加する場合、制御装置23が第1脱墨剤添加装置9の第1脱墨剤供給用ポンプ27を稼動させると共に第1脱墨剤供給用電磁弁28を開くことにより、脱墨剤タンク25内の脱墨剤15が第1脱墨剤供給経路26を通ってパルパー槽14内に添加される。
【0046】
また、貯蔵タンク3内に脱墨剤15を添加する場合、制御装置23が第2脱墨剤添加装置16の第2脱墨剤供給用ポンプ68を稼動させると共に第2脱墨剤供給用電磁弁69を開くことにより、脱墨剤タンク25内の脱墨剤15が第2脱墨剤供給経路67を通って貯蔵タンク3内に添加される。
【0047】
このようにして脱墨剤15を添加した古紙パルプ液12は、供給ポンプ33の稼動により、貯蔵タンク3内から供給経路32を通り、流入部30から脱墨槽17内に流入し、最上流側の第1脱墨室38aから順次下流側の脱墨室38b,38cを流れた後、最下流側の第4脱墨室38dに至る。脱墨槽17内全体が古紙パルプ液12で満たされると、供給ポンプ33を停止し、所定時間脱墨処理が行われ、その後、送出ポンプ36を稼動することで、脱墨後の古紙パルプ液12が、排出部31から排出され、排出経路35を通ってヘッドボックス34に供給される。この際、送出ポンプ36の稼動と同じタイミングで供給ポンプ33を稼動し、貯蔵タンク3内から新たな古紙パルプ液12が流入部30から脱墨槽17内に流入し、連続的に脱墨処理が行われる。
【0048】
この際、制御装置23が両エアポンプ45a,45bの少なくともいずれかを稼動することにより、各気泡発生部材43a〜43dから気泡48が放出され、脱墨槽17内の古紙パルプ液12に対して散気が行われる。このとき、両エアポンプ45a,45bを共に稼動した場合、気泡48の放出量が増加し、散気量が増加する。また、両エアポンプ45a,45bのいずれか一方のみを稼動し他方を停止した場合、気泡48の放出量が減少し、散気量が減少する。このようにして、散気装置18の散気量を調節することができる。
【0049】
このように、脱墨槽17内の古紙パルプ液12に散気を行うことにより、古紙パルプ液12に含まれる印刷成分(トナー等)が気泡48に付着して気泡48と共に液面へ浮上する。液面へ浮上した気泡48は泡沫19となって開口部29から外側へ溢れ出し、溢れ出した泡沫19は受泡槽40内に受けられる。これにより、古紙パルプ液12から印刷成分が分離除去され、古紙パルプ液12が脱墨処理される。
【0050】
尚、この際、脱墨剤15の添加量が多い又は散気装置18の散気量が多い場合、泡沫19の発生量が増加し、脱墨効率が向上する。反対に、脱墨剤15の添加量が少ない又は散気装置18の散気量が少ない場合、泡沫19の発生量が減少し、脱墨効率が低下する。
【0051】
受泡槽40に受けられた泡沫19は消泡装置20により消泡されて脱墨排液21となり、この脱墨排液21は受泡槽40から脱墨排液回収経路54を通って脱墨排液タンク50に貯留される。脱墨排液タンク50内の脱墨排液21には、消泡剤添加装置によって消泡剤60が添加されており、これにより、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21はほぼ所定濃度の消泡剤60を含んでいる。
【0052】
尚、制御装置23が消泡用ポンプ65を稼動することにより、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21が一定の流量で脱墨排液供給経路64を通って噴射装置63から泡沫19に噴射され、噴射された脱墨排液21は消泡剤60を含んでいるため、泡沫19が消泡され、泡沫19から新たに脱墨排液21が生成される。このようにして新たに生成された脱墨排液21は、噴射装置63から噴射された脱墨排液21と共に、脱墨排液回収経路54を通って脱墨排液タンク50に回収される。
【0053】
また、制御装置23が排出ポンプ57を稼動すると共に排出弁58を開くことにより、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21は、脱墨排液排出経路56を通って排液処理装置7に排出され、廃液処理される。
【0054】
また、抄紙装置5のヘッドボックス34に供給された古紙パルプ液12はヘッドボックス34から抄紙ワイヤー部75に供給されて濾過脱水され、これにより、湿紙が形成される。この湿紙は脱水乾燥装置で脱水乾燥され、これにより、再生紙77が生成され、この再生紙77は、仕上装置6において所定サイズに裁断され、図1に示すように古紙再生処理装置1の排紙部から排出される。
【0055】
以下に、脱墨装置4による脱墨方法を説明する。
上記のように脱墨処理を行っている際、脱墨排液21の生成量Aを計測手段22で以下のようにして計測する。
【0056】
制御装置23は、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が計測基準液位Bよりも上昇した状態から、排出ポンプ57を稼動すると共に排出弁58を開き、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を排液処理装置7に排出し、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が計測基準液位Bまで低下して液位検出装置51で検出されると、排出ポンプ57を停止すると共に排出弁58を閉じる。このようにして、脱墨排液21の液位を計測基準液位Bに一致させた後、所定時間T(例えばT=15分間)放置する。この間、脱墨処理は継続して行われているので、図2の仮想線で示すように、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位は、所定時間Tにおいて新たに生成されて脱墨槽17から排出され脱墨排液タンク50内に流れ込んだ脱墨排液21の量だけ、計測基準液位Bから上昇する。
【0057】
制御装置23は、所定時間Tが経過すると、再び排出ポンプ57を稼動すると共に排出弁58を開き、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を排液処理装置7に排出し、図2の実線で示すように、脱墨排液21の液位が計測基準液位Bまで下降して液位検出装置51で検出されると、排出ポンプ57を停止すると共に排出弁58を閉じる。
【0058】
この際、制御装置23は、排出ポンプ57を稼動開始させてから稼動停止させるまでの稼動時間tを計測する。尚、計測された稼動時間tは、所定時間Tにおいて脱墨排液タンク50内に貯留された脱墨排液21を、排液処理装置7へ排出するのに要する排出時間に相当する。この際、排出ポンプ57は脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を単位時間当り一定流量Cで排出する能力を有しているため、制御装置23は、上記計測された稼動時間t(すなわち排出時間)に基いて、脱墨排液タンク50から所定時間T内に排出された脱墨排液21の排出量を算出する。
【0059】
例えば、一定流量Cの一例として、排出ポンプ57が脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を0.31リットル/秒の流量で排出する場合、下記表1に示すように、排出ポンプ57の稼動時間tが5秒間の場合、脱墨排液21の排出量は1.55リットルとなり、稼動時間tが10秒間の場合、脱墨排液21の排出量は3.1リットルとなり、稼動時間tが15秒間の場合、脱墨排液21の排出量は4.65リットルとなる。
【0060】
このようにして求められた排出量は所定時間Tにおける脱墨排液21の生成量Aに相当し、制御装置23は、排出ポンプ57の稼動時間tすなわち脱墨排液21の生成量Aに基いて、散気装置18の散気量と脱墨剤15の添加量とを例えば下記表1および図5のフローチャートに基いて以下のように制御している。
【0061】
先ず、適切な脱墨処理が行なわれている場合の脱墨排液21の生成量Aを、予め、目標生成量として設定しておく。
例えば、表1の第2欄に示すように、脱墨排液21の目標生成量を1.55〜3.1リットルに設定しておき、計測された脱墨排液21の生成量Aが目標生成量の範囲内である場合(図5のS−1参照)、制御装置23は、脱墨の度合い(程度)が適切であると判断し、両方のエアポンプ45a,45bを稼動させ、第1脱墨剤供給用ポンプ27を稼動させると共に第1脱墨剤供給用電磁弁28を開き、第2脱墨剤供給用ポンプ68を停止させると共に第2脱墨剤供給用電磁弁69を閉じる(図5のS−2参照)。
【0062】
これにより、図2に示すように、第1〜第4気泡発生部材43a〜43dから多量の気泡48が連続的に放出され、脱墨剤タンク25内の脱墨剤15が第1脱墨剤供給経路26を通ってパルパー槽14内に添加され、脱墨剤15が貯蔵タンク3内に添加されない。尚、表1の第2欄に示すように、この時の脱墨の度合い(脱墨能力)は100%であり、脱墨槽17の開口部29から脱墨排液21と共に脱墨排液タンク50に排出される繊維の量(すなわち繊維損失量)は15%である。
【0063】
尚、表1の第3〜第5欄に示すように、脱墨の度合いが過剰であると、古紙パルプ液12に含まれる繊維の損失量(以下、繊維損失量と記載)が増加するため、再生紙77に含まれる繊維量が不足して再生紙77の厚さが若干薄くなったり、繊維の損失により、貯蔵タンク3から脱墨槽17へ供給すべき古紙パルプ液12の量が増加するために、貯蔵タンク3が枯渇する等の虞がある。
【0064】
また、繊維損失量を低下させようとすると、脱墨の度合いが不足してしまうため、再生紙77の白色度が不足する虞がある。このような再生紙77の厚さと白色度とをバランス良く確保するために、上記表1の第2欄に示すような脱墨排液21の目標生成量が設定されている。
【0065】
また、計測手段22により計測された脱墨排液21の生成量Aが目標生成量よりも少ない場合、制御装置23は、脱墨の度合いが不足していると判断して、散気装置18の散気量を増やす制御と脱墨剤15の添加量を増やす制御との少なくともいずれかを行う。
【0066】
例えば、下記表1の第1欄に示すように、計測された脱墨排液21の生成量Aが目標生成量の1.55リットル未満の場合(図5のS−3参照)、制御装置23は、第1〜第4気泡発生部材43a〜43dから多量の気泡48を連続的に放出するとともに、脱墨剤15を第1脱墨剤供給経路26からパルパー槽14内に添加し、さらに、第2脱墨剤供給用ポンプ68を稼動させると共に第2脱墨剤供給用電磁弁69を開いて、脱墨剤タンク25内の脱墨剤15を第2脱墨剤供給経路67から貯蔵タンク3内に添加する(図5のS−4参照)。これにより、下記表1の第1欄では、第2欄に比べて、脱墨剤15の添加量が増加するため、脱墨効率が向上し、脱墨槽17の開口部29から溢れ出す泡沫19の量が増加し、脱墨槽17から脱墨排液タンク50へ回収される脱墨排液21の量が増加し、計測される脱墨排液21の生成量Aが増加する。
【0067】
尚、貯蔵タンク3への脱墨剤15の添加は、排出ポンプ57の稼動時間tを計測した後、直ぐに行う。貯蔵タンク3には、タンク高さの略半分の位置に、古紙パルプ液12の液位を検出する液位センサーが設けられている。脱墨剤15を貯蔵タンク3に添加する際、貯蔵タンク3内の古紙パルプ液12の液位が、液位センサー設置位置より高い場合、予め実験より求めた所定量の脱墨剤15を添加し、液位センサー設置位置より低い場合、上記所定量の半分の量の脱墨剤15を添加し、古紙パルプ液12に含まれる脱墨剤15の濃度を調整する。
【0068】
また、パルパー槽14への脱墨剤15の添加は、古紙10の離解処理が略終了したときに行う。これは、離解処理の早い段階で脱墨剤15を添加すると、泡立ちにより離解処理の進行が阻害されるからである。よって、必ずしも、排出ポンプ57の稼動時間tを計測した後、直ぐに脱墨剤15の添加が行われるとは限らない。
【0069】
また、計測手段22により計測された脱墨排液21の生成量Aが目標生成量よりも多い場合、制御装置23は、脱墨の度合いが過剰であると判断して、散気装置18の散気量を減らす制御と脱墨剤15の添加量を減らす制御との少なくともいずれかを行う。
【0070】
例えば、下記表1の第3欄に示すように、計測された脱墨排液21の生成量Aが目標生成量の3.1リットル以上で4.65リットル未満の場合(図5のS−5参照)、制御装置23は、脱墨剤15を第1脱墨剤供給経路26からパルパー槽14内に添加するとともに貯蔵タンク3内には添加せず、一方のエアポンプ45aを稼動した状態で、他方のエアポンプ45bを間欠的に稼動させて(図5のS−6参照)、各気泡発生部材43a〜43dからの気泡48の放出量を減らしている。これにより、下記表1の第3欄では、第2欄に比べて、散気装置18の散気量が減少するため、脱墨効率が低下し、脱墨槽17の開口部29から溢れ出す泡沫19の量が減少し、脱墨槽17から脱墨排液タンク50へ回収される脱墨排液21の量が減少し、計測される脱墨排液21の生成量Aが減少する。
【0071】
また、下記表1の第4欄に示すように、計測された脱墨排液21の生成量Aが4.65リットル以上の場合(図5のS−7参照)、制御装置23は、脱墨剤15を第1脱墨剤供給経路26からパルパー槽14内に添加するとともに貯蔵タンク3内には添加せず、一方のエアポンプ45aを稼動した状態で、他方のエアポンプ45bを停止して(図5のS−8参照)、各気泡発生部材43a〜43dからの気泡48の放出量をさらに減らしている。
【0072】
これにより、下記表1の第4欄では、第3欄に比べて、散気装置18の散気量が減少するため、脱墨効率がさらに低下し、脱墨槽17の開口部29から溢れ出す泡沫19の量がさらに減少し、脱墨槽17から脱墨排液タンク50へ回収される脱墨排液21の量がさらに減少し、計測される脱墨排液21の生成量Aもさらに減少する。
【0073】
また、下記表1の第5欄に示すように、計測された脱墨排液21の生成量Aが4.65リットル以上になる場合が三回連続して発生すると(図5のS−9参照)、制御装置23は、各気泡発生部材43a〜43dからの気泡48の放出量を第4欄と同量に保つと共に、脱墨剤15を貯蔵タンク3内に添加せず、さらに、第1脱墨剤供給用ポンプ27を停止すると共に第1脱墨剤供給用電磁弁28を閉じて、脱墨剤15をパルパー槽14内に添加しない(図5のS−10参照)。
【0074】
これにより、表1の第5欄では、第4欄に比べて、脱墨剤15の添加量が減少するため、脱墨効率がより一段と低下し、脱墨槽17の開口部29から溢れ出す泡沫19の量がより一段と減少し、脱墨槽17から脱墨排液タンク50へ回収される脱墨排液21の量がより一段と減少し、計測される脱墨排液21の生成量Aもより一段と減少する。
【0075】
このように表1および図5のフローチャートに示したような制御を行うことにより、脱墨排液21の生成量Aが第2欄で示した目標生成量に保たれ、脱墨の度合いが過不足なく適切に調整される。
【0076】
また、脱墨槽17の外側へ溢れ出す泡沫19の排出量を計測するのではなく、脱墨排液21の生成量Aを計測手段22により計測するため、脱墨槽17に開閉自在な蓋を設ける必要は無く、したがって、蓋を開閉するための開閉用スペースを脱墨槽17の上方に確保する必要は無く、開閉用スペースを不要にし得る。
【0077】
尚、脱墨排液21の生成量Aは、泡沫19の排出量に比べて、容易且つ正確に計測することができ、これに基いて脱墨条件を制御することで、脱墨の度合いがばらつかず、再生紙77の品質をほぼ一定に調整することができる。
【0078】
【表1】


(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、図6に示すように、脱墨槽17の上方に、開口部29から溢れ出す泡沫19を受泡槽40に強制的に掻き出す掻出装置85が設けられている。掻出装置85は、開口部29の真上を横方向Dへ往復移動自在な掻出板86と、掻出板86を移動させる移動装置(図示省略)とを備えている。
【0079】
これによると、掻出板86が横方向Dへ往復移動することによって、開口部29から溢れ出した泡沫19が強制的に掻き出されて確実に受泡槽40内に受けられる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、図7に示すように、排液処理装置7は脱墨排液タンク50の下方に設置され、排出装置52は、脱墨排液タンク50と排液処理装置7とに連通する上下方向の配管等からなる脱墨排液排出経路56と、脱墨排液排出経路56に設けられた電磁式の排出弁58とを有している。
【0080】
これによると、制御装置23が排出弁58を開くことにより、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21が、自重によって脱墨排液排出経路56を流下し、排液処理装置7に排出される。この際、脱墨排液21は、液位に応じて単位時間当りの流量が変化しつつ、脱墨排液タンク50内から排液処理装置7に排出される。脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位に対する単位時間当りの流量を実験に基いて予め算出しておくことで、脱墨排液21の排出量を算出することができ、このようにして求められた排出量が所定時間Tにおける脱墨排液21の生成量Aに相当する。
【0081】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、図8に示すように、計測手段80は、脱墨排液タンク50と、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が第1計測基準液位B1に達したことを検出する第1液位検出装置81と、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が第2計測基準液位B2に達したことを検出する第2液位検出装置82と、排出装置52とを有している。第2計測基準液位B2は第1計測基準液位B1よりも上方に設定されている。
【0082】
脱墨処理を行っている際、脱墨排液21の生成量Aを計測手段80で以下のようにして計測する。
制御装置23は、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が第1計測基準液位B1よりも上昇した状態から、排出ポンプ57を稼動すると共に排出弁58を開き、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21を排液処理装置7に排出し、図8の実線で示すように、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位が第1計測基準液位B1まで低下して第1液位検出装置81で検出されると、排出ポンプ57を停止すると共に排出弁58を閉じる。このようにして、脱墨排液21の液位を第1計測基準液位B1に一致させた後においても、脱墨処理は継続して行われているため、脱墨排液タンク50内の脱墨排液21の液位は、第1計測基準液位B1から次第に上昇し、図8の仮想線で示すように、第2計測基準液位B2に達した時点で第2液位検出装置82により検出される。
【0083】
この際、制御装置23は、第1液位検出装置81が第1計測基準液位B1を検出してから第2液位検出装置82が第2計測基準液位B2を検出するまでに要した経過時間を計測する。脱墨排液タンク50内の第1計測基準液位B1から第2計測基準液位B2までの容積は一定であるため、上記経過時間は脱墨排液タンク50内に所定量(すなわち第1計測基準液位B1から第2計測基準液位B2までの量)の脱墨排液21を貯留するのに要する貯留時間に相当する。上記第1計測基準液位B1から第2計測基準液位B2までの容積と上記計測された経過時間とに基いて、所定時間T(例えばT=15分間)内に脱墨槽17から脱墨排液タンク50内に排出された脱墨排液21の排出量が算出され、この排出量が脱墨排液21の生成量Aに相当する。
【0084】
尚、上記第4の実施の形態における計測手段80と先述した第1の実施の形態における計測手段22(図2参照)とを比較すると、計測手段22は一個の検出装置51を備えているのに対し、計測手段80は二個の検出装置81,82を備えているため、第1の実施の形態における計測手段22の方が部品点数を減らしてコストダウンをすることが可能である。
【0085】
上記各実施の形態において記載された具体的な数値および表1と図5に記載された具体的な数値は一例であり、これらの数値に限定されるものではない。
上記各実施の形態では、表1の第1欄に示したように、計測手段22により計測された脱墨排液21の生成量Aが第2欄に示した目標生成量よりも少ない場合、脱墨剤15の添加量を増やす制御を行っているが、散気装置18の散気量を増やす制御を行っても良いし、或は両者の制御を行っても良い。
【0086】
また、表1の第3欄〜第5欄では、一方のエアポンプ45aを連続的に稼動させるとともに他方のエアポンプ45bを間欠的に稼動又は停止させているが、一方のエアポンプ45aを間欠的に稼動又は停止させるとともに他方のエアポンプ45bを連続的に稼動させても良い。
【0087】
さらに、第3欄および第4欄では、脱墨剤15をパルパー槽14内に添加するとともに貯蔵タンク3内への添加を停止しているが、脱墨剤15を貯蔵タンク3内に添加するとともにパルパー槽14内への添加を停止してもよい。
【0088】
上記各実施の形態では、脱墨剤15を、パルパー槽14と貯蔵タンク3に添加しているが、脱墨槽17に添加しても良い。また、脱墨剤15をパルパー槽14と貯蔵タンク3と脱墨槽17とのいずれか一つに添加するようにし、電磁弁の開度を調整する等して、脱墨剤15の添加量を調節してもよい。
【0089】
上記各実施の形態では、図2に示すように、脱墨槽17内を四つの脱墨室38a〜38dに区画したが、四つ以外の複数又は単数に区画しても良い。また、散気装置18は四つの気泡発生部材43a〜43dを備えているが、四つ以外の複数又は単数の気泡発生部材を備えても良い。さらに、散気装置18は二台のエアポンプ45a,45bを備えているが、二台以外の複数台又は単数台のエアポンプを備えても良い。
【0090】
上記各実施の形態では、エアポンプ45a,45bから気泡発生部材43a〜43dに供給される空気の供給量(流量)を調整することにより、散気量を調節しているが、空気の圧力や供給時間等の少なくともいずれかを調整することにより、散気量を調節しても良い。この場合、空気の圧力を高く又は供給時間を長くする程、泡沫19の発生量が増加し、脱墨効率が向上する。反対に、空気の圧力を低く又は供給時間を短くする程、泡沫19の発生量が減少し、脱墨効率が低下する。
【符号の説明】
【0091】
1 古紙再生処理装置
4 脱墨装置
12 古紙パルプ液
15 脱墨剤
17 脱墨槽
18 散気装置
19 泡沫
20 消泡装置
21 脱墨排液
23 制御装置
50 脱墨排液タンク(脱墨排液貯留部)
60 消泡剤
A 生成量
T 所定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱墨剤を添加した古紙パルプ液中に散気を行って印刷成分を分離する脱墨装置を備えた古紙再生処理装置であって、
脱墨装置は、脱墨槽と、脱墨槽内の古紙パルプ液中に散気を行う散気装置と、制御装置を有し、
制御装置は、脱墨槽から外側へ溢れ出した泡沫を消泡することによって得られる脱墨排液の所定時間における生成量に基いて、脱墨条件を制御することを特徴とする古紙再生処理装置。
【請求項2】
脱墨条件は散気装置の散気量と脱墨剤の添加量との少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の古紙再生処理装置。
【請求項3】
脱墨槽から排出された脱墨排液を貯留する脱墨排液貯留部が備えられ、
脱墨排液の所定時間における生成量は、所定時間で脱墨排液貯留部に貯留された脱墨排液を脱墨排液貯留部の下流側へ排出するのに要する排出時間、又は、脱墨排液貯留部に所定量の脱墨排液を貯留するのに要する貯留時間のいずれかの時間に基いて決定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の古紙再生処理装置。
【請求項4】
脱墨排液貯留部内の脱墨排液には消泡剤が添加されており、
脱墨排液貯留部内の脱墨排液を脱墨槽から溢れ出した泡沫に噴射し、且つ、噴射した脱墨排液を脱墨排液貯留部内に戻す消泡装置が備えられていることを特徴とする請求項3記載の古紙再生処理装置。
【請求項5】
脱墨剤を添加した古紙パルプ液中に散気を行って印刷成分を分離する脱墨方法であって、
脱墨槽から外側へ溢れ出した泡沫を消泡することによって得られる脱墨排液の所定時間における生成量に基いて、脱墨条件を制御することを特徴とする脱墨方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−11022(P2013−11022A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142407(P2011−142407)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】