説明

可とう性水性低汚染塗料組成物

【課題】塗膜に可とう性を付与させ、さらに汚染性を飛躍的に向上できる水性低汚染塗料組成物を提供する。
【解決手段】特定のエマルジョン粒子として、コア・シェル重合体を含み、コア・シェル重合体のガラス転移温度(Tg)が−10〜10℃であり、コア層が0℃以下のガラス転移温度を有し、シェル層が30〜70℃の範囲のガラス転移温度を有する。さらに、コア層には不飽和カルボン酸単量体が5重量%以下、シェル層は不飽和カルボン酸単量体が5〜20重量%の範囲で共重合されていて、いずれも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンから選ばれる単量体を主成分とする共重合体からなる(A)コア・シェル重合体を主成分とするアクリル樹脂エマルジョンの固形分100重量部、(B)添加剤0〜20重量部、(C)充填材10〜90重量部、(D)顔料0〜20重量部、(E)親水化剤0.5〜5重量部を含む水性塗料組成物を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可とう性水性低汚染塗料組成物に関するものであり、金属、ガラス、磁器タイル、コンクリート、サイディングボード、押出成形板、プラスチック等の各種素材の表面仕上げに使用することができる。更に詳しくは、主に建築物、土木構造等の躯体保護に使用する水性低汚染塗料用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築・土木構造物に使用する塗料分野においては有機溶剤を溶媒とする溶剤型塗料から、水を溶媒とする水性塗料への転換が図られつつある。これは、塗装作業者や居住者の健康被害を低減するためや、大気環境汚染を低減する目的で行われているものであり、年々水性化が進んできている。
【0003】
特に、近年フッ素樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料あるいはアクリルウレタン樹脂塗料等の高耐久性塗料の出現により、躯体の保護においては大きな進歩を遂げた。
しかしながら、これら高耐久性塗料では、工場や主要道路に隣接する都市部、市街地において、それらの排出ガス等の大気汚染によって生じる、著しいすす状あるいはすじ状の汚染(雨筋汚れ)に対する耐汚染性がさらに要求されるようになっている。
【0004】
公知の水性塗料の中には、耐候性、耐水性などに関しては溶剤型塗料と同等のレベルの性能を有するものもある。例えば、ポリアルキレンオキサイドセグメントなどの親水性セグメントを疎水性セグメントに含めたポリマーを塗料に含めることで、塗膜表面に疎水性と親水性を同時に付与し、汚染物質の付着の抑制及び降雨による洗浄効果を期待したものがある(特許文献1)。塗膜表面が親水性であるために、降水等による水が塗膜と汚染物質を洗い流す効果が得られるものである。しかし実際には、塗膜表面に水が触れる機会が得られない場合(塗膜形成直後)には疎水性となり、降雨時に塗膜表面が疎水性から親水性へ転換するのにある程度時間を有するという問題がある。特に汚染性に着目してみると、低汚染型と唄われる水性塗料でさえ、溶剤型の低汚染型塗料のレベルには遠く及ばないのが現状である。
【0005】
また、水性塗料による塗膜は一般的に溶剤型の塗料による塗膜に比べて、塗膜硬度が低く、汚染物質が付着した時の染み込み性が高い傾向にある。従って、一度汚染物質が付着すると、塗膜表面からその汚れを除去することは困難な場合が多い。
【0006】
このような問題を解決した低汚染型塗料としては、塗料中に特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を配合する技術が開示されている(特許文献2)。しかしながら、特定のオルガノシリケート及び/又はその縮合物を添加した際に起こる加水分解縮合反応を制御できないために、短時間で急激に塗料粘度が上昇し、さらには塗料全体がゲル化してしまい、通常の塗装作業をすることさえできないものであった。さらに、たとえ混合後、直ちに塗装を行い、塗膜を形成した場合においても、汚染物質の染み込み抵抗性に劣るという欠点があった。
【0007】
また、水性塗料とオルガノシリケート及び/又はその縮合物との相容性が悪く混合後に凝集物を生じるという問題もあった。特に、一般にグロスペイントと呼ばれる高光沢の水性塗料においては、この相容性の悪さによって、表面光沢が極端に低下してしまうという欠点がある。さらに、オルガノシリケート及び/又はその縮合物を添加した水性塗料を塗装し塗膜を乾燥硬化させた後、該塗膜上に同じ塗料あるいは別の塗料を塗り重ねる場合、十分な密着性が得られず、リコート性に劣るという問題もあった。
【0008】
このような問題を解決する低汚染型塗料としては、塗膜形成直後よりその表面が親水性となり、雨水と共に汚染物質を洗い流す作用が生じ、かつ、架橋により強固でありながら脆くならず、耐候性、その他の塗膜物性の良好な非汚染型の塗膜を提供する技術が公開されている。具体的には、アクリルシリコン樹脂、オルガノシリケートの架橋に、特定比率にて特定のポリエチレンオキサイドを架橋させることにより、上記作用を発現する低汚染型塗料(特許文献3)。あるいは、3級アミノ基含有アクリルポリオールの固形分、アルキレンオキサイド鎖を含有する、重量平均分子量150〜3500のアルコキシシラン化合物、アルキルシリケートまたはこれらの縮合物の固形分、ポリイソシアネートから構成される低汚染型塗料(特許文献4)が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの低汚染型塗料ではアクリルシリコン樹脂、アルコキシシラン化合物の架橋が充分でない場合、その効果が発現しにくいという問題がある。
【0010】
一方、特定のエマルジョン粒子として、コア層がシラン化合物、アクリル系化合物、スチレン、アクリルニトリル系化合物、メタクリル系化合物の共重合体、シェル層がシラン化合物、アクリル系化合物、スチレン、アクリルニトリル系化合物、メタクリル系化合物からなる共重合体のコア・シェル重合体の樹脂エマルジョンから構成される、水性低汚染塗料組成物(特許文献5、6)が開示されている。
【0011】
しかしながら、塗膜の架橋度合いを調整するアクリル樹脂に対して、架橋部位の多いシラン化合物を多量に配合すると、塗膜の架橋密度が大きくなりすぎ、塗膜が脆くなるといった問題があった。
【特許文献1】特開平4−370176
【特許文献2】WO94/06870
【特許文献3】特許第3202570号
【特許文献4】特許第3161587号
【特許文献5】特開平9−31297
【特許文献6】特開2004−161894
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、塗膜に可とう性を付与させ、さらに汚染性を飛躍的に向上することであり、これらの課題をすべて解決できる水性低汚染塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題を解決するために、本発明ではコア・シェル重合体を含み、コア・シェル重合体のガラス転移温度(Tg)が−10〜10℃であり、コア層が0℃以下のガラス転移温度を有し、シェル層が30〜70℃の範囲のガラス転移温度を有するエマルジョン粒子を特徴とし、コア層には不飽和カルボン酸単量体が5重量%以下の範囲で共重合されていて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンから選ばれる単量体を主成分とする共重合体からなる。さらに、シェル層は不飽和カルボン酸単量体が5〜20重量%の範囲で共重合されていて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンから選ばれる単量体を主成分とする共重合体からなる(A)コア・シェル重合体を主成分とするアクリル樹脂エマルジョンの固形分100重量部、(B)添加剤0〜20重量部、(C)充填材10〜90重量部、(D)顔料0〜15重量部、(E)親水化剤0.5〜5.0重量部を含む水性塗料組成物を特徴とする。さらに、実際の施工方法として、モルタル、サイディングボード等の下地にシーラーを塗布したのち、水性塗料組成物からなる下塗り材(上記配合した水性塗料からなる下塗り材を含む)、次いで上記配合した水性塗料組成物からなる上塗り材を塗布し、均一な厚みの塗膜をもつ仕上げを簡便な作業により実現可能としたものである。
【0014】
本発明に係わるシーラーは樹脂溶液又は樹脂エマルジョンとからなるもので、モルタルや最近使用例の多いサイディングボード等の塗料の浸透性があり吸い込みの激しい下地に対して、吸い込み防止のために使用される。
【0015】
シーラーにはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を各種有機溶剤に溶解してなる組成物やアクリル樹脂、アクリル・スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の樹脂エマルジョンが使用される。該シーラーは前記のように該下地に浸透して下塗り剤の浸透、吸い込み防止するとともに、下地の表面層の補強と塗材の密着性を確保することができる。
【0016】
下塗り材には水性塗料組成物からなる下塗り材または、請求項1に記載の水性塗料組成物が使用され、吹き付け、こて等の塗布方法で施工される。上塗り材には請求項1に記載の水性塗料組成物が使用され、吹き付け、こて等の塗布方法で施工される。
【0017】
本発明で得られる水性塗料組成物が常温で造膜性を有すると共に、得られる皮膜が強靭で耐久性に優れるように、請求項1に記載のコア・シェル重合体のガラス転移温度(Tg)が−10〜10℃であり、コア層が0℃以下のガラス転移温度を有し、シェル層が30〜70℃の範囲のガラス転移温度を有する。コア・シェル重合体のガラス転移温度が−10℃よりも低いときは、得られる皮膜が柔らかくなり耐汚染性が劣り、10℃よりも高い時は弾性、耐久性に劣ることになる。同様に、コア層が0℃よりも高い時は弾性、耐久性が劣り、シェル層が30℃よりも低い時は耐汚染性が劣り、70℃よりも高い時は弾性、耐久性に劣ることになる。
【0018】
本発明のコア・シェル重合体のガラス転移温度(Tg)は、使用する単量体(i)のホモポリマーのガラス転移温度(Tgi)と単量体の分率Xiとから以下の関係式で求められる。

1/Tg(コア・シェル重合体)=Σ(Xi/ Tgi)

Xi:単量体(i)の分率
Tgi:単量体(i)のTg
【0019】
本発明において、コア・シェル重合体の比率について、コア重合体が60重量%以上90重量%以下が好ましい。60重量%未満では十分な弾性、耐久性が得られず、90重量%を超えると耐汚染性が劣る。さらに、シェル層は不飽和カルボン酸単量体が5〜20重量%の範囲で共重合されていることが好ましい。不飽和カルボン酸単量体が5重量%未満では耐汚染性が不十分となり、20重量%を超えると塗膜の耐水性が低下する。
【0020】
本発明において、コア・シェル重合体を構成する粒子の平均粒子径が150〜300nmであることが好ましく、特に180〜250nmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が150nm未満では、固形分が低くなり水性塗料組成物の設計が難しくなる、300nmを超えると、水性塗料組成物中に含まれる、充填材、顔料との配合性が悪くなる。さらに、最低造膜温度は5℃以下であることが好ましく、特に0℃以下であることがより好ましい。5℃よりも高い時は塗膜の弾性、耐久性に劣る。
【0021】
本発明のコア・シェル重合体に含まれる不飽和カルボン酸単量体には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸など。マレイン酸、フマル酸などまたはこれらジカルボン酸のモノエステル、たとえばマレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステルなど、あるいはこれらジカルボン酸の酸無水物、たとえばマレイン酸無水物などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明で得られる水性塗料組成物が高い耐汚染性と耐水性にを得るために、請求項2に記載の、シェル層重合体の共重合体時に連鎖移動剤を共存させ、なおかつシェル層共重合体が架橋成分を含有することを特徴とする。連鎖移動剤の配合量としては、シェル層の共重合体100重量部に対して0.05重量%以上2重量%以下が好ましい。0.05重量%未満では、十分な耐汚染性が得られず、2重量%を超えると塗膜の耐水性が低下する傾向にある。
【0023】
上記の連鎖移動剤には、各種メルカプタン類、α−メチルスチレン、ハロゲン化アルキル、アルコール類等が使用される。さらに、シェル層の共重合体が含有する架橋性成分としては、(1)重合性二重結合を2つ以上有する単量体、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレートの共重合体。(2)カルボン酸基と反応する架橋性化合物、例えば、カルボジイミド化合物。(3)分子中に少なくとも1個のアルデヒドまたはケトン基と、少なくとも1個の重合可能な不飽和二重結合とを含有するカルボニル基含有単量体を共重合し、得られたコア・シェル重合体のエマルジョンの分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有するヒドラジン誘導体などがある。
【0024】
本発明の水性塗料組成物中に配合する添加剤には、消泡剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤、高沸点溶剤等から構成される。添加剤の配合量は水性塗料組成物の固形分換算で0〜20重量%が適当である。20重量%を超えると塗膜の弾性、耐水性に劣るため好ましくない。
【0025】
消泡剤には変成シリカシリコーン系化合物、ポリエーテル系、鉱物油系、金属石鹸系、ポリアマイド系、変性シリコーン系、ワックスエマルジョン系、脂肪酸エステル系化合物等が使用され、塗膜中の泡を効果的に解消することができる。中でも消泡性並びに水分散性の点から変性シリコーン系が適している。
【0026】
分散剤にはノニオン系界面活性剤、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリカルボン酸アンモニウム、有機酸エステル系、エーテル系若しくは反応系界面活性剤、アルコールエトキシ系若しくはナフタレン系無機塩などが使用され、塗料中に含まれる顔料を中心とした化合物等を効果的に分散することができる。1種、又は2種類以上を混合して使用しても良く、中でも分散が良好で環境汚染にならないポリカルボン酸ナトリウムとピロリン酸カリウム水溶液の混合物が好ましい。
【0027】
防腐剤には含ハロゲン窒素硫黄系化合物が使用され、塗料の腐敗による劣化を防ぐことができる。防カビ剤としては、有機窒素硫黄化合物、含窒素有機環状化合物、含窒素ハロゲン系化合物、特殊尿素系化合物などが使用されるが、中でも防カビ性、持続性、環境面から有機窒素硫黄化合物系が好ましい。
【0028】
高沸点溶剤にはテキサノール、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ等のエステル化合物が使用され、低温での塗膜形成を容易にすることが可能となる。また、塗装に適合した粘度とするためにはメチルセルロース、ヒドロキシエチル/メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはアクリル酸系の粘度調整材等を適量使用して調整することができる。
【0029】
本発明の水性塗料組成物中に配合する充填剤には、水酸化アルミニウム、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪砂紛、細珪砂等が固形分の調整、粘度・塗布性の調整、コスト調整などのために配合されるが、中でも重質炭酸カルシウムは安価でコスト的負担を減らすことができ、白色であるために塗材の各種調色に好都合である。また、骨材には、一般に塗料に配合されるものであれば何ら問題無く使用でき、珪砂、炭酸カルシウム、山砂、ガラス粉砕物、セラミック粉砕物等があり、これらは塗布方法により適正なサイズのものが選定使用されればよい。
【0030】
充填材及び骨材の配合量は水性塗料組成物の固形分換算で10〜90重量%が適当である。10重量%未満では水性塗料組成物の粘度が低くなり施工に適さない、90重量%を超えると水性塗料組成物の粘度が高くなり施工に適さなくなるため好ましくない。
【0031】
本発明の水性塗料組成物中に配合する顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(べんがら)、クロム酸鉛(モリブデードオレンジ)黄鉛、黄色酸化鉄、等の無機系顔料から構成される。
【0032】
顔料の配合量は水性塗料組成物の固形分換算で0〜20重量%が適当である。20重量%を超えると水性塗料組成物の粘度が高くなり施工に適さなくなるため好ましくない。また、顔料の粒度としては50μm以下のものが好ましい。50μmを超えると粒子が凝集したままで分散しづらく生産作業に時間がかかり、保存性が悪くなるなどの問題があるため好ましくない。
【0033】
塗材表面の親水性向上と、塗膜表面の静電気を帯電し難くするため、水性塗料組成物中に配合する親水化剤は0.5〜5.0重量%使用することが好ましく、特に0.5〜2.0重量%の範囲にあるのが好ましい。親水化剤が0.5重量%未満では、十分な効果が得られず、5.0重量%を超えると塗膜の耐水性が劣ることになる。使用する親水化剤にはアセチレングリコール化合物、アセチレングリコールポリエチレンオキサイド化合物、ショ糖、果糖を含む糖化合物又はそれらとの界面活性剤との混合物から構成される。
【発明の効果】
【0034】
本発明の可とう性水性塗料組成物は、塗膜形成後の降雨等によって初めて塗膜が親水性になるのではなく、塗膜形成直後よりその表面が親水性となり、降雨によって雨水と共に汚染物質が洗い流され、汚染物質の付着の抑制及び降雨による洗浄効果を期待したものである。得られた塗膜が可とう性であるために、クラック防止にも効果があり、降水等による水が塗膜の汚染物質を洗い流す効果が得られた。
【0035】
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
実施例1及び2
下地として窯業系サイジングボードを使用し、シーラーとしてアクリル樹脂系エマルジョン(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、下塗り材として表1に記載の水性塗料組成物を1.0kg/m2コテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、該下塗り層に表1に記載の水性塗料組成物を2.0kg/m2コテ塗り仕上げして塗装仕上した。なお、アクリル樹脂エマルジョンには、請求項1及び2に記載のコア・シェル重合体を含むものを使用し、固形分52%(固形分中のコア・シェル重合体の割合99%以上)のものを13重量%、添加剤として、消泡剤、分散剤、防腐剤、防カビ剤等を7重量%、充填材には、重質炭酸カルシウム13重量%、骨材には、珪砂紛等45重量%、顔料には酸化チタン4重量%、さらに、親水化剤を実施例1には1.0重量%、実施例2には3.0重量%を配合し、全体が100重量%となるよう水を加えて調整した。
【0037】
比較例1、2及び3
下地として窯業系サイジングボードを使用し、シーラーとしてアクリル樹脂系エマルジョン(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥したのち、下塗り材として表1に記載の水性塗料組成物を1.0kg/m2コテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、該下塗り層に表1に記載の水性塗料組成物を2.0kg/m2コテ塗り仕上げして塗装仕上した。なお、比較例1及び2のアクリル樹脂エマルジョンには、請求項1及び2に記載のコア・シェル重合体を含むものを使用し、固形分52%(固形分中のコア・シェル重合体の割合99%以上)のものを13重量%使用した。比較例3のアクリル樹脂エマルジョンには、請求項1及び2の範囲外であるコア・シェル重合体を含むものを使用し、固形分48.5%(固形分中のコア・シェル重合体の割合99%以上)のものを13重量%使用した。なお、添加剤、充填剤、骨材、顔料は実施例1及び2と同一のものを使用し、比較例1には親水化剤を0重量%、比較例2及び3には0.1重量%を配合し、全体が100重量%となるよう水を加えて調整した。
【0038】
汚染性試験
70×70mmのフレキシブルボードを突き合わせ、シーラーとしてアクリル樹脂系エマルジョン(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥した後、下塗り材として実施例1、2および比較例1、2及び3に記載の水性塗料組成物を1.0kg/m2コテ塗り仕上げし、下塗り層を形成し、該下塗り層に同配合の水性塗料組成物を2.0kg/m2コテ塗りでフラットに仕上げ、20℃、湿度65%の雰囲気で3日間養生した後、愛知県海部郡にあるアイカ工業株式会社の社内において、南面向き45度傾斜にて屋外暴露を実施し、6ヶ月後の明度差を目視で判断して測定した。表1参照。
【0039】
伸び物性試験
70×70mmのフレキシブルボードを突き合わせ、シーラーとしてアクリル樹脂系エマルジョン(JS−500、アイカ工業製)を塗布して乾燥した後、下塗り材として上記配合の水性塗料組成物を1.0kg/m2コテ塗り仕上げして下塗り層を形成し、該下塗り層に同配合の水性塗料組成物を2.0kg/m2コテ塗りでフラットに仕上げ、20℃、湿度65%雰囲気下にて7日間養生後、乾燥したものを試験体とした。
試験体はインストロン万能試験機で室温20℃、ヘッドスピード2mm/分の速度で引張り、塗膜にピンホールが発生した距離をゼロスパン距離とした。表1参照。
【0040】
表1







【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のエマルジョン粒子として、コア・シェル重合体を含み、コア・シェル重合体のガラス転移温度(Tg)が−10〜10℃であり、コア層が0℃以下のガラス転移温度を有し、シェル層が30〜70℃の範囲のガラス転移温度を有する。さらに、コア層には不飽和カルボン酸単量体が5重量%以下の範囲で共重合されていて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンから選ばれる単量体を主成分とする共重合体からなり、シェル層は不飽和カルボン酸単量体が5〜20重量%の範囲で共重合されていて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びスチレンから選ばれる単量体を主成分とする共重合体からなる(A)コア・シェル重合体を主成分とするアクリル樹脂エマルジョンの固形分100重量部に対し、(B)添加剤0〜20重量部、(C)充填材及び骨材10〜90重量部、(D)顔料0〜20重量部、(E)親水化剤0.5〜5.0重量部を含む水性塗料組成物。
【請求項2】
シェル層重合体の共重合時に連鎖移動剤を共存させ、かつそのシェル層共重合体が架橋性成分を含有している事を特徴とする請求項1に記載のコア・シェル重合体。

【公開番号】特開2006−77078(P2006−77078A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260872(P2004−260872)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】