説明

可動シャワーフック装置

【課題】構造が簡単で、部品点数も少なく、設置作業が容易で故障の少ない可動シャワーフック装置を提供すること。
【解決手段】可動シャワーフック装置は、浴室壁面Wに固着した一対の既設シャワーフックF,Fに対し、既設シャワーフック間の距離より長く且つ既設シャワーフックの内径より細い支持管1と、支持管外面に嵌合する円筒状内面および既設シャワーフック内面に嵌合する下方が細い截頭円錐状外面を有する筒状形をなすと共に筒状形に縦方向の隙間を生じる切れ目が形成された一対の可撓材料製の係止具2と、支持管に挿嵌される縦通孔および縦通孔に隣接して設けられた可動シャワーフック3および停止部品14を備えたシャワーフック保持具4とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室等に設置される可動シャワーフック装置、特に既設シャワーフックに付加的に設置される可動シャワーフック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の浴室には、浴室壁面に垂直に固着された上下一対のシャワーフックが設置されているのが一般的である。これらの既存シャワーフックではシャワーヘッドが一定高さの位置にしか配置されないのでシャワーを使用する際に不便を生じる場合が多い。このような不便を解消するために、シャワーヘッドを任意位置に配置するための付加的な装置がが各種開発されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。しかしながらこれらの装置は、いずれも既存シャワーヘッドに付加的に取付ける接合構造が複雑で、細かい部品を使用する上に部品点数も多く、設置作業が複雑であったり、部品の一部が外れて紛失したりする欠点がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−42437号公報
【特許文献2】特開2005−113605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、構造が簡単で、部品点数も少なく、設置作業が容易で故障の少ない可動シャワーフック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の可動シャワーフック装置は、浴室壁面に垂直に固着された上下一対の既設シャワーフックに対し、一対の該既設シャワーフック間の距離より長く且つ該既設シャワーフックの内径より細い支持管と、該支持管外面に嵌合する円筒状内面および該既設シャワーフック内面に嵌合する下方が細い截頭円錐状外面を有する筒状形をなすと共に該筒状形に縦方向の隙間を生じる切れ目が形成された一対の可撓材料製の係止具と、該支持管に挿嵌される縦通孔および該縦通孔に隣接して設けられた可動シャワーフックおよび該支持管上の任意位置に停止させる停止部品を備えたシャワーフック保持具とよりなり、該シャワーフック保持具が挿嵌された該支持管に嵌合したそれぞれの該係止具をそれぞれの該既設シャワーフックに上方から押込むことによって該既設シャワーフックに該支持管を固定させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.浴室壁面に固着された既設シャワーフックに対し、特別な工事を必要としないで設置することが可能であり、設置作業も容易である。
B.全体の部品点数が少なく、部品の一部が外れて紛失するようなことがない。
C.可動シャワーフックは浴室内で浴室壁面から離れる距離が短く、邪魔になるようなことがない。
D.一対の既設シャワーフック間の距離よりも可成り長い支持管を設置した場合には、上側の既設シャワーフックよりも高い位置や、下側の既設シャワーフックより低い位置にシャワーフック保持具を位置させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0008】
図1には、本発明に係る可動シャワーフック装置の設置状態が示されている。一般的に浴室壁面Wには、上下一対の既設シャワーフックF,Fが垂直に間隔をあけて固着されている。これら既設シャワーフックF,FにシャワーヘッドHを保持させた場合には、シャワーは限定された一定の高さから噴出することになり、使い勝手が良くない。本発明では、これら一対の既設シャワーフックF,Fを利用して任意の高さにシャワーヘッドHを位置させるようにしたものである。
【0009】
図1および図2において、本発明の可動シャワーフック装置は、一対の該シャワーフックF,F間の距離より長く且つ一対の既設シャワーフックF,Fの内径より細い支持管1と、支持管1外面に嵌合する円筒形内面および一対の既設シャワーフックF,Fの内面に嵌合する下方が細い截頭円錐状外面を有する筒状形をなすと共に、後述するように、筒状形に縦方向の隙間を生じる切れ目が形成された一対の可撓材料製の一対の係止具2,2と、支持管1に挿嵌され可動シャワーフック3を保持し支持管1上の任意位置に停止させることのできるシャワーフック保持具4とよりなる。
【0010】
支持管1について詳細に説明すると、支持管1は一般的にアルミニウムやステンレス鋼等の金属管で形成され、支持管1間上下端には内部浸水を防止するためのキャップ10が嵌合されている。支持管1の長さは、一対のシャワーフックF,F間の距離より長く形成されればよく、図1に示されるように、略両端箇所を一対のシャワーフックF,Fに固定される場合や、図6に示されるように一対のシャワーフックF,Fから更に上下に延長される場合もある。
【0011】
次に係止具2について詳細に説明すると、係止具2はABS樹脂やポリオキシメチレン等の可撓製材料で製造される。係止具2の最も基本的な態様は、図3に示されるように、支持管1外面に嵌合する円筒状内面5および既設シャワーフックF内面に嵌合する下方が細い截頭円錐状外面6を有する筒状形をなすと共に筒状形に縦方向の隙間7を生じる切れ目8が形成されたものである。この隙間7は、筒状形の係止具2を既設シャワーフックFに打込む際に、截頭円錐状外面5が傾斜に沿って既設シャワーフックF内面に当接してその直径を小さくしながら進行するが、同時に小さくなる周囲長を許容するために設けられる。即ち係止具2における筒状形周囲の一箇所の切れ目8には対向して直線状に延長する双方の縦方向端縁9,9が形成され、係止具2の隙間7は双方の縦方向端縁9,9の間に形成されることになる。図4および図5には2分割した係止具分割体2a,2aによって構成される係止具2が示されている。即ち係止具2は2個の係止具分割体2aを筒状形に組合わせて構成されるもので、この場合に係止具2における筒状形周囲の切れ目8は隣接する一双の係止具分割体2a,2aの間に形成される。そして係止具2における筒状形周囲の切れ目8には対向して縦方向に出隅および入隅の角度が直角とされた相互に噛み合う双方の凹凸縁11,11が形成される。係止具2の隙間7は噛み合った双方の凹凸縁11,11の対向する双方の縦方向端縁9,9の間に形成される。2個の係止具分割体2a,2aは、分解しない状態を保持することができる。
【0012】
図4および図5に示されるような係止具2の隙間7の形成手段は、図3に示されるような一箇所の切れ目8を有する係止具2にも採用することができる。即ち図3に示されるような係止具2における筒状形周囲の一箇所の切れ目8に、図4に示されるような対向して縦方向に出隅および入隅の角度が直角とされた相互に噛み合う双方の凹凸縁11,11を形成して、係止具2の隙間7が噛み合った双方の凹凸縁11,11の対向する双方の縦方向端縁9,9の間に形成されるようにすることが可能である。凹凸縁11,11を設けた切れ目8が直線状の切れ目8より有利な点は、筒状形の係止具2を既設シャワーフックFに押込む際に、直線状の切れ目8では切れ目8で対向する双方の縦方向端縁9,9の間で縦方向のずれを生じて不確実な係止を生ずる虞があるが、凹凸縁11,11を設けた切れ目8では双方の横方向端縁12,12が係合しているから対向する双方の縦方向端縁9,9の間で縦方向のずれを生じることがなく常に確実な係止を保証できる点である。また凹凸縁11,11を設けた切れ目8では、係止具分割体2a,2aによって係止具2を組立てる際に、係止具分割体2a,2aの隣接する一双の横方向端縁12,12が係合していて相互の凹凸縁11,11が噛み合っているから、簡単には分解せず一時的に筒状形を保つことができるので押込み作業を容易に行うことができる。
【0013】
シャワーフック保持具4は、図2および図5に示されるように、支持管1に挿嵌される縦通孔13を備えると共に縦通孔13に隣接して可動シャワーフック3が設けられ、さらにシャワーフック保持具4を支持管1の任意位置に停止させる停止部品として、先端が支持管1を押圧する停止螺子14が螺孔15にねじ込まれる態様が採用されている。可動シャワーフック3が縦通孔13に隣接するために、可動シャワーフック3は浴室内で浴室壁面から離れる距離が短く、邪魔になるようなことがない。
【0014】
このような部品からなる可動シャワーフック装置の浴室壁面Wへの設置は、先ずシャワーフック保持具4の縦通孔13に挿通した支持管1の上下位置に一対の係止具2,2を取付ける。係止具2が図3に示されるような一体型の場合には、支持管1の上下から挿通し、図4に示されるように、係止具分割体2aを組立てる係止具2の場合には支持管1の上下位置で組立てる。次いで一対の係止具2,2を一対の既設シャワーフックF,Fに上方から押込むと、下方が細い各係止具2が各既設シャワーフックF内面に嵌合し、各係止具2は可撓材料製であるので各既設シャワーフックFに嵌着し、支持管1は一対の既設シャワーフックF,Fに支持される。支持管1に挿通されたシャワーフック保持具4の停止螺子14を緩めてシャワーフック保持具4を任意の高さ位置に設定して停止螺子4を締着すれば、シャワーフック保持具4の可動シャワーフック3に係合したシャワーヘッドHを任意の高さに位置決めすることができる。図6には一対の既設シャワーフックF,F間の距離よりも可成り長い支持管1を設置した場合が示されている。このように長い支持管1を採用した場合には、図6に示されるように、上側の既設シャワーフックFよりも高い位置や、下側の既設シャワーフックFより低い位置にシャワーフック保持具4を位置させることが可能となる。本発明では、全体として部品点数が少なく、部品の一部が外れて紛失するようなことがない。また設置作業も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】設置された可動シャワーフック装置の斜視図である。
【図2】設置された可動シャワーフック装置の縦断面図である。
【図3】係止具の一例を示す斜視図である。
【図4】係止具の他例を示す斜視図である。
【図5】可動シャワーフック装置の分解斜視図である。
【図6】延長した支持管を使用した可動シャワーフック装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0016】
1 支持管
2 係止具
2a 係止具分割体
3 可動シャワーフック
4 シャワーフック保持具
5 円筒状内面
6 截頭円錐状外面
7 隙間
8 切れ目
9 縦方向端縁
11 凹凸縁
13 縦通孔
14 停止螺子(停止部品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室壁面に垂直に固着された上下一対の既設シャワーフックに対し、一対の該既設シャワーフック間の距離より長く且つ該既設シャワーフックの内径より細い支持管と、該支持管外面に嵌合する円筒状内面および該既設シャワーフック内面に嵌合する該截頭円錐状外面を有する筒状形をなすと共に該筒状形に縦方向の隙間を生じる切れ目が形成された一対の可撓材料製の係止具と、該支持管に挿嵌される縦通孔および該縦通孔に隣接して設けられた可動シャワーフックおよび該支持管上の任意位置に停止させる停止部品を備えたシャワーフック保持具とよりなり、該シャワーフック保持具が挿嵌された該支持管に嵌合したそれぞれの該係止具をそれぞれの該既設シャワーフックに上方から押込むことによって該既設シャワーフックに該支持管を固定させることを特徴とする可動シャワーフック装置。
【請求項2】
前記係止具における筒状形周囲の前記切れ目には対向して直線状に延長する双方の縦方向端縁が形成され、前記係止具の前記隙間は双方の該縦方向端縁の間に形成されることを特徴とする請求項1記載の可動シャワーフック装置。
【請求項3】
前記係止具における筒状形周囲の前記切れ目には対向して縦方向に出隅および入隅の角度が直角とされた相互に噛み合う双方の凹凸縁が形成され、前記係止具の前記隙間は噛み合った双方の該凹凸縁の対向する双方の縦方向端縁の間に形成されることを特徴とする請求項1記載の可動シャワーフック装置。
【請求項4】
前記係止具は複数個の係止具分割体を筒状形に組合わせて構成され、前記係止具における筒状形周囲の前記切れ目は隣接する該係止具分割体の間に形成され、前記係止具における筒状形周囲の前記切れ目には対向して縦方向に出隅および入隅の角度が直角とされた相互に噛み合う双方の凹凸縁が形成され、前記係止具の前記隙間は噛み合った双方の該凹凸縁の対向する双方の縦方向端縁の間に形成されることを特徴とする請求項1記載の可動シャワーフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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