説明

可動ベッドの敷寝具構造

【課題】背上げの際に身体の引き上げを自動的になし、腹部の圧迫感を軽減すると共に、ずれ力fによる皮膚への負担を軽減することができる敷寝具構造の提供を図る。
【解決手段】上半身に対応する可動部分62が水平状態から傾斜状態になすための背上げ機構を備えたベッド本体61と、このベッド本体61上に配位された敷寝具を備える。敷寝具は、ベッド本体と共に上記の傾斜状態となる本体側寝具41と、この本体側寝具41の上に滑り移動可能に重ねられた滑り寝具51とを備える。滑り寝具51には接続部材53の一端が接続され、接続部材53の他端が引っ張り部63に接続される。引っ張り部63は、可動部分62が背上げ状態へ傾斜するにしたがって、接続部材53を引っ張るものであり、この接続部材53の引っ張りによって、滑り寝具51が頭頂側へ引き上げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、可動ベッドの敷寝具構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、介護用や病気の看護用に、特許文献1に示すような、上半身に対応する部分が水平状態から傾斜状態に背上げ可能なベッド本体を備えたベッドが知られている。このベッドは、食事の際や、車椅子への乗降の際に、背上げすることによって、被介護者の上体を起こすようにしたものである。このように、ベッド自体が変形することによって、その上に敷いた寝具類にしわがよったり、位置がずれたりすこることを防止するために、マットレスとシーツとの間に敷かれるベッドパッド において、滑り止め機能を有する素材から成るずれ止め部を、両面に設けたことを特徴とするベッドパッドが提案されている(特許文献2参照)。また、異なる厚みの蒲団あるいはベッド用マットレス等に対し、簡便に装着出来かつ装着後ずれたり、しわが寄ることのない、長さ調整機能と伸縮性を有するベルトを1本ないし複数本備えたシーツも提案されている(特許文献3参照)。
【0003】
このように、従来の可動ベッドの敷寝具構造にあっては、ベッドを管理する介護する者の側からの観点によって、ずれたり、しわが寄ったりすることがなく、確実に装着状態を維持することを主目的とする開発がなされてきた。
【0004】
他方、被介護者の側からすると、介護する側の観点のみでは解決できない種々の問題を抱える。その大きな問題の一つに、褥瘡の発生という問題がある。特に、背上げ可能な可動ベッドにあっては、背上げしないものに比して、褥瘡の発生が生じやすい傾向にあった。
【0005】
褥瘡の研究が進むにつれて、上記の傾向は、背上げ可能のベッドによるずれ力に関係すると考えられるようになった。このずれ力とは、一般的な用語ではないため、図8に基づき説明する。この図8は、人が横になった状態で、水平状態から背上げした状態の説明図である。この図に示すように、水平状態から背上げ状態になることにより、重力によって傾斜したベッドに沿って滑り移動しようとする力f(ずれ力)が人体にかかり、人体の身体が足先側にずれる。健常者の場合には、ずれが生じた際に、自然と体を持ち上げたり、左右に動かしたりすることにより、下方にずれた自己の上半身によって生ずる腹部の圧迫感を解消すると元に、ずれ力fによる皮膚への負担を解消している。ところが、要介護者の多くは、自力で体のずれを解消することができない。そのため、介護者は、要介護者の体を動かしてあげる必要が有るが、このような介助を行う必要性は未だ十分に認識されているとは言えず、また認識されていても、多忙な介護作業中に、この介助を忘れてしまっうこともある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−236432号公報
【特許文献2】特開2004−57377号公報
【特許文献3】特開2001−292882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、背上げの際に身体の引き上げを自動的になし、腹部の圧迫感を軽減すると共に、ずれ力fによる皮膚への負担を軽減することができる敷寝具構造の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上半身に対応する可動部分が水平状態から傾斜状態になすための背上げ機構を備えたベッド本体と、このベッド本体上に配位された敷寝具を備えた可動ベッドの敷寝具構造において、上記のベッド本体と共に上記の傾斜状態となる本体側寝具と、この本体側寝具の上に重ねられた滑り寝具とを備え、本体側寝具と滑り寝具との間が滑り移動可能な状態とされ、滑り寝具に接続部材の一端が接続され、接続部材の他端が引っ張り部に接続され、この引っ張り部は、上記のベッド本体の可動部分が背上げ状態へ傾斜するにしたがって、接続部材を引っ張るものであり、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであることを特徴とする可動ベッドの敷寝具構造を提供することにより、上記の課題を解決する。
上記の引っ張り部は、上記のベッド本体の可動部分の下面側に設けられた移動部位であり、この移動部位は可動部分の傾斜が大きくなるにしたがい足先側へ移動する部位であり、上記の接続部材が、滑り寝具から、可動部分の頭頂端を経由して、移動部位に接続され、この移動部位が足先側に移動するに伴い、接続部材を引っ張り、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるようにすることもできる。
また、上記の引っ張り部は、上記の接続部の他端を一定位置に固定しておく不動の部位であり、且つ、上記の可動部分の背上げ動作により可動部分の頭頂端からの距離が大きくなる部位であり、上記の接続部材は、その少なくとも一部に弾性を備え、且つ、滑り寝具から、上記の可動部分の頭頂端を経由して、移動部位に接続されたものであり、上記の背上げ動作によって、その弾性により伸長し、背上げ動作中当該伸びの範囲を越えることにより、接続部材を引っ張り、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであってもよい。
上記の本体側寝具の最上層と、滑り寝具最下層との何れかの層が、表裏2層の編地と、この2層の編地を連結する複数の連結糸より構成された立体編地によって構成されたものであり、この表裏2層の編地のなくとも表側の編地がメッシュ状の編地とされ、そのメッシュ状の編地1の編目の少なくとも30%から連結糸が他方の編地に向けて延びているものにすることもできる。
上記の立体編地は、表裏2層の編地を連結する連結糸の半数以上が一定方向に湾曲している方向性を備えた立体編地であり、上記の方向性によって縦方向移動への滑りが横方向への滑りよりも良好ものとして実施することもできる。
さらに、本体側寝具と滑り寝具との間に滑り用シートが配位され、この滑り用シートによって本体側寝具と滑り寝具との間の滑り性が良好となるものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、滑り寝具に接続部材の一端が接続され、接続部材の他端が引っ張り部に接続され、この引っ張り部は、上記のベッド本体の可動部分が背上げ状態へ傾斜するにしたがって、接続部材を引っ張るものであり、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであることを特徴とする可動ベッドの敷寝具構造を提供することにより、ベッド本体の背上げと共に、滑り寝具が頭頂側へ引き上げらるようにしたものであり、これにより、引き上げ介助と同等の身体の引き上げを自動的になし、腹部の圧迫感を軽減すると共に、ずれ力fによる皮膚への負担を軽減することができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1は本願発明の一の実施の形態に係る可動ベッドの敷寝具構造の分解斜視図である。図2は同可動ベッドの敷寝具構造の作動状態を示すもので、(A)は水平状態の説明図、(B)は背上げ状態の説明図である。
【0011】
この実施の形態に係る敷寝具構造は、ベッド本体61と、このベッド本体61の上に配位された敷寝具を備えた可動ベッドの敷寝具構造に関するものである。
ベッド本体61は、公知の背上げ機構で、手動又は自動的に上半身に対応する可動部分62が水平状態から傾斜状態に回動する、いわゆる背上げ可能なベッドである。
【0012】
ベッド本体61上に配置される敷寝具は、可動部分62と共に傾斜状態となる固定側寝具41と、この固定側寝具41の上に配位された滑り寝具51とを備える。ベッド本体61と固定側寝具41とは固定状態であり、固定側寝具41と滑り寝具51とは滑り移動可能な状態である。
【0013】
固定側寝具41は、敷布団やマットレスなどの周知の敷寝具本体42と、その上面に配置された布製のシーツなどの敷シート43とを備える。敷寝具本体42は固定側寝具41に対して、背上げの際にも不可分一体に回動する。敷シート43は、固定用ベルト44等の適宜固定手段で敷寝具本体42に固定されるものであり、たとえば、袋状にしてその中に敷寝具本体42を入れてもよく、大きな敷シート43の周囲を敷寝具本体42の下側に巻き込むようにしたものであってもよい。材質は、綿などの通常の敷シーツにもちいられるものであってもよいが、後述の耐圧分散シート3を用いてることが望ましい。また、滑り性の良い合成繊維製のシートの単体か、同シートを上面に備えたものであってもよく、さらに、この敷シート43を省略して実施することもできる。
【0014】
次に、滑り寝具51は、固定側寝具41の上方で固定側寝具41に対して滑り移動可能な状態に配置される。この滑り寝具51は、特別な素材とする必要は必ずしもなく、固定側寝具41と滑り寝具51との間が固定されておらず、滑り寝具51が固定側寝具41に対して滑り移動可能なものであれば、その素材や形状構造は自由でよい。ただし、滑り性が良好であることは望ましい条件であり、具体的には、クッションシーツと呼ばれる弾性を備えたシーツを用いることが、被介護者の体重による沈み込みを防止して、滑り寝具51と固定側寝具41との間の滑り性を向上させるのに有利である。また、後述の体圧分散シート3を滑り寝具51に用いることもできる。この滑り寝具51は固定側寝具41に対しては滑り移動可能であることによって、ベッド本体61が図2に示すように、水平状態から背上げ状態になった際、接続部材53によって引き上げられて、頭頂側に滑り移動する。この滑り寝具51は、固定側寝具41に対して、滑り移動することができることを条件に、固定側寝具41に対して、ゴム帯などの弾性体などによって、滑り移動可能な余地を残して固定することは、滑り寝具51の脱落防止などの点から望ましい。
【0015】
この接続部材53は、その一端が、滑り寝具の頭頂端に、逢着などによって接続され、他端は次に述べる引っ張り部63に接続される。接続部材53は、その接続の長さを変更可能なようにしておくことも望ましく、たとえば、接続部材53の全部又は一部を、起毛面状ファスナにて形成し、引っ張り部63にて折り返して、二つ折り状態で起毛面状ファスナを止める。これにより、接続部材の他端が引っ張り部63に接続されることとなる。
【0016】
この接続部材53は帯状をなしており、ベッド本体の可動部分62にて折り返されて引っ張り部63に接続される。そのため、接続部材53は屈曲可能な適度な柔軟性を有することが望ましく、起毛面状ファスナ以外としては、紐やベルトやチエーンなどの柔軟性のある素材によって形成する。また滑り寝具51をそのまま延長して、引っ張り部63に接続することによって、接続部材53の一部又は全部を、滑り寝具51として実施してもよい。接続部材53は、図の例では中央に1本が配置されているが、これに限らず、たとえば左右に2本としたり、左右と中央の3本としたり、適宜本数に変更でき、その幅も自由に設定することができる。このように、接続部材53はその具体的形態を問わず、固定側寝具41の頭頂端を超えて、滑り寝具51と引っ張り部63とを接続することができ、可動部分62の動きによって、滑り寝具51を頭頂側に引き上げるものであればよい。接続部材53と引っ張り部63との固定は、リング状の接続金具での固定や、くくりつけ、逢着、ボタンやホックなど、種々の方法を採用できる。
【0017】
上記の引っ張り部63は、上記のベッド本体の可動部分62が背上げ状態へ傾斜するにしたがって、接続部材53を引っ張るものである。この例では、引っ張り部63は、可動部分62の下面側に配位され、可動部分62の頭頂端が上昇するにしたがって、足先側に移動するものである。この足先側への移動に伴って、可動部分62の頭頂端で折り返された接続部材53が滑り寝具51を頭頂側に引き上げるものである。引き上げる長さは、2〜10cm程度が適当であり、望ましくは2〜5cmである。この引き上げによって、背上げにしたがって下方にずり落ちようとする人体が、上方に引き上げられて、介護者による引き上げ介助と同様に、腹部の圧縮感や皮膚への負担が軽減される。
【0018】
上記の引っ張り部63は、ベッド本体61の背上げ動作にしたがって、足先側に移動するものであればよく、適宜機構で実施する事が出来る。たとえば、可動部分62を電動機や手動で動かす背上げ機構に、リンク、歯車、チエーン等の動力を伝達しその動きの方向や早さを変更する動力伝達機構を設けて、引っ張り部63を動かすようにすればよい。
【0019】
たとえば、ベッド本体61を、脚部を備えて床上に設置されているベッドフレーム64と、このベッドフレーム64に回動可能に設けられた可動部分62と、人力や電動機によって回転駆動する駆動部(図示せず)と、この駆動部によって起伏する背上げアーム62aを有するものとし、この背上げアーム62aを上記可動部分62の下面に対向させて配置することで、背上げアーム62aを起こすことによって、可動部分62が傾斜して背上げ状態となるものとして実施することができる。この背上げアーム62aに引っ張り部63を設けることによって、可動部分62の傾斜が大きくなるにしたがって、背上げアーム62aは可動部分62の頭頂端に対して足先側に移動する。よって、引っ張り部63は、請求項2に言う移動部位として機能するものであり、この移動部位である引っ張り部63に接続部材53の他端を接続しておくことによって、上記の滑り寝具51を引き上げることができる。
【0020】
また、特開2003−290296によって提案され、同出願人より実用されている背上げ式ベッド装置を用いて実施することもできる。このベッド装置は、図3に示すように、可動部分62の左右の側部62bの下面に前後方向(頭頂から足先への方向)に伸びるように設けられた左右の突条部62cと、上記背上げアーム62aに設けられこの背上げアーム62aを起立方向に回動させて可動部分62を起上させたときに上記左右の突条部62cを押圧して可動部分62の左右の側部62bを可動部分62の中央部62dに対して所定の角度で屈曲させる左右の押し上げローラ62eとを具備したことを特徴とするものである。そして、この左右の押し上げローラ62eの間を結ぶバー材62fを、引っ張り部63とし、このバー材62fに、接続部材53を前述の要領で2つ折りにして固定するなどして、接続することも可能である。
【0021】
次に、図4は他の実施の形態を示すもので、この例では、上記の接続部材53の先端を固定する引っ張り部63を、ベッドフレーム64の頭頂端などの不動の部材としておくものである。この引っ張り部63は、上記の可動部分62の背上げ動作により可動部分62の頭頂端からの距離が大きくなる部位であればよく、ベッドの固定側の部位の他、室内の床や壁などであってもよい。この場合、背上げによって上下する可変長さが大きくなりすぎ、滑り寝具51を引き上げ過ぎてしまうため、
可動部分62の不要な移動距離分だけ、接続部材を53を長くしておいてもよい。例えば、可動部分62が水平状態のときと60度程度にまで背上げしたときの頭頂端の高さの変化が、60cmであるとすると、背上げしていないときの滑り寝具51と引っ張り部63との最短距離よりも、接続部材53の長さを、57cm長くしておく。これにより、可動部分62の頭頂端が57cmまで上昇する間は、滑り寝具51の引き上げはおこらず、最後の3cmが引き上げられるときに、滑り寝具51の引き上げが行われるようになる。また、他の例としては、接続部材53は、その少なくとも一部に弾性を備えたものとしておいてもよい。そして、背上げ動作によって、その弾性により伸長し、背上げ動作中当該伸びの範囲を越えることにより、滑り寝具51を引っ張り、滑り寝具51が頭頂側へ引き上げられるものとすることができる。また、ゴムなどの弾性をうまく調整することによって、より自然な引き上げを実現させることもできる。
【0022】
この他、引っ張り部63としては、接続部材53を巻き上げることができる回転する巻き芯のような部材を用いることもできるなど、要は、可動部分62の傾斜に際して、接続部材53を介して、滑り寝具51を引き上げることができるものであれば適宜変更して実施し得るものである。
【0023】
なお、図示は省略するが、固定側寝具41と滑り寝具51との間に、滑り用シートを配位することも望ましい。滑り用シートは、滑りの良いサテン地などの合成繊維製シートが望ましく、この滑り用シートによって固定側寝具41と滑り寝具51との間の滑り性が良好となる。また、滑り用シートを環状にしておくことにより、ずれようとする際に、滑り用シートがキャタピラのように回るようにずれて、さらに滑り性を高めることができる。
【0024】
最後に、固定側寝具41体の上面又は滑り寝具51の下面として用いるのに適する圧分散シート3についてより詳しく説明しておく。
【0025】
この体圧分散シート3は、メッシュ状の編地を用いるものであるが、このメッシュ状編地とは、メッシュ編地、マーキゼット編地等の複数の開口部を有する編地を意味する。より具体的には、図5や図6に例示したように、体圧分散シート3として、複数の開口部を有する編地1,2を表裏何れか少なくとも一方の面に備えた立体編地3を用いることによって、立体編地3内に空間を確保して、その空間を介して立体編地3に通気性を付与すると共に優れた体圧分散性能を示すものである。特に、表裏両方の面に、メッシュ状編地を用いることによって、通気性はさらに向上するものである。表裏の編地1,2は、同一の組織の編地としてもよいが、異なる組織を有するメッシュ状編地で形成してもよい。
【0026】
連結糸31は、メッシュ状の編地1の編目の少なくとも30%から他方の編地2に向けて伸びているものである。この連結糸31は、表裏の編地1,2の間に介在することによって、編地1,2間に間隔を形成すると共に、この連結糸31が弾性を持って変形することによって、編地1,2間の間隔を小さくして収縮するものである。ここで言う弾性とは、人の荷重によって変形することができ、荷重がなくなると元の形状に復帰することができる程度の弾性を言う。そして、適度の弾性を保つために、連結糸31は、メッシュ状の編地1,2の編目の30%以上必要とする。連結糸31の本数が編地1,2の編目の数の個数の30%に満たない場合には、充分な伸縮弾性が維持されないおそれがある。比較的固いクッションを得るには、より多くの連結糸31を必要とするため、各編目から少なくとも1本の連結糸31を出すようにし、連結糸31の本数が編目の本数と等しいか、それより多い本数とすることも望ましい。このように、比較的密に連結糸31を配位する場合には、モノフィラメントを連結糸31として採用することが望ましい。連結糸31は、表裏2層の編地1,2中に、ループ状の編目を形成してもよく、或いは、表裏2層の編目にタック組織で引っ掛けられたものであってもよい。
【0027】
連結糸31は、表裏の編地1,2間を実質的に垂直に延びて、表裏の編地1,2を連結する。即ち、図7(A)に示すように、表の編地1,2から連結糸31が出る点と、裏の編地1,2から連結糸31が出る点とを結ぶ線分(仮想線x1)が、編地1,2平面と実質的に直交するものとなっている。但し、編地1,2間隔を保持することができる限り、連結糸31を傾斜して配位してもよい。即ち、図7(B)に示すように、表の編地1,2から連結糸31が出る点と、裏の編地1,2から連結糸31が出る点とを結ぶ線分(仮想線x2)が、編地1,2平面に対して傾斜しているものでもよい。また、図7(A)や図7(B)に示すように、表の編地1,2から連結糸31が出る点と、裏の編地1,2から連結糸31が出る点とを結ぶ各線分(仮想線x1,x1)(仮想線x2,x2)が、互いに平行であってもよいが、各線分が平行ではなくともよく、さらには、図7(C)に示すように、X状に交差しているものであってもよい。
【0028】
連結糸31が延びる形状は、図7(A)や図7(B)に示すように、弓状に湾曲しているものであってもよく、或いは、図示はしないが、直線状であってもよい。また、図7(C)に示すように、不定形状であってもよい。さらに、直線状の連結糸31と、弓状に湾曲した連結糸31と、不定形に湾曲した連結糸31との少なくとも2種類を組み合わせるようにしてもよい。弓状に湾曲させる場合、表裏2層の編地1,2を連結する複数の連結糸31の半数以上が実質的に一定方向に湾曲させることが望ましい。例えば、図7(A)の例では、連結糸31は、表裏の編地1,2間を実質的に垂直に延びており、各連結糸31が同じ方向に揃って弓状に湾曲しているため、上下方向(表裏の方向)に力fが加わった場合、連結糸31が弓状に湾曲の度合いを高めるように揃って湾曲し、表裏の編地1,2間がスムーズに収縮する。図7(B)の例では、連結糸31が傾斜して配位されており、且つ、各連結糸31が同じ方向に揃って弓状に湾曲しているため、上下方向(表裏の方向)に力fが加わった場合、連結糸31が傾斜している方向に傾斜角度を強めるようになると共に、連結糸31が弓状に湾曲の度合いを高めるように揃って湾曲し、表裏の編地1,2間がよりスムーズに収縮する。各立体編地3における連結糸31は、全てを一定方向に揃って弓状に湾曲させてもよいが、少なくとも50%の連結糸31を一定方向に揃って弓状に湾曲させることによって、表裏の編地1,2間がスムーズに収縮する。このように、少なくとも50%の連結糸31を一定方向に揃って弓状に湾曲させることによって、収縮する際には、表又は裏の編地1,2が一定方向にスライドするようにして収縮する。このように、方向性を持って収縮することによって、編地1,2に無理な力が加わらず、スムーズに収縮することができる。表裏の編地1,2間がスムーズに収縮する。このように、少なくとも50%の連結糸31を一定方向に揃って弓状に湾曲させることによって、収縮する際には、表又は裏の編地1,2が一定方向にスライドするようにして収縮する。このように、方向性を持って収縮することによって、編地1,2に無理な力が加わらず、スムーズに収縮することができる。特に、この方向を縦方向に配置することによって、縦方向移動への滑りが横方向への滑りよりも良好となる。この方向性を縦方向にするとは、体圧分散シート3の長手方向に対して、少なくとも50%の連結糸31の方向を左右に45度未満に設定することを言う。
【0029】
連結糸31の太さは、適度な弾性や反発性を得るために、単糸デニールが15〜2000デニールのものが好ましく、50〜300デニールのものがより好ましい。この立体編地3は、2列針床を有する編地1,2(経編地或いは緯編地)であって、例えば、ダブルラッセル機やダブル丸編機によって製造することができる。使用する繊維の素材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトル等の合成繊維や再生繊維、さらにはウール、木綿等の天然繊維等、いずれであってもよく特に限定はされない。立体編地3をこのようにして構成するすることにより、厚さが好ましくは2〜3mm、目付が好ましくは50g/m2〜2.5kg/m2である立体編地3が得られ、これが体圧分散シート3として用いられる。
【0030】
上記のような立体編地3を長方形状に裁断して、少なくとも1枚を単独で、もしくは複数枚を重ね合わせることによって、固定側寝具41の上面又は滑り寝具51 の下面が構成される。重ね合わせた立体編地3は、互いに縫製や接着や熱溶着等で接合してもよいが、接合箇所の全面でなくとも、一部分であっても、使用上、重ね合わせ状態を維持できればよい。縫製としては、布製等の長尺のヘム用テープによって、複数枚重ね合わせた立体編地3の端縁の略全周を被覆し、被覆したヘム用テープの上縁と下縁とをそれぞれ、最上に位置する立体編地3の上面と、最下に位置する立体編地3の下面とに折り重ねて、上縁から下縁までを縫着するようにすることも望ましい。
【0031】
重ね合わせる立体編地3の種類は、単一のものであってもよいが、複数種類のものを組み合わせて用いることにより、弾性や伸縮性を調整できる。また、図7(A)や図7(B)に示すような、弓状に湾曲した連結糸31を用いて、収縮の際に方向性を生じるようにしたものを複数枚重ねる際、その方向を各立体編地3間において異にするようにしておくことも望ましい。即ち、異なる方向性を備えた立体編地3が複数組み合わされて積層することによって、各立体編地3は方向性を持ってスムーズに収縮するが、全体では方向性を低減したものとすることができる。尚、全ての立体編地3の方向性を異ならしめる必要はなく、一部の立体編地3の方向性を異ならしめることによって、全体の方向性を低減させることができる。勿論、方向性の無いものと有るものとを組み合わせてもよい。編地の全部又は一部については、抗菌加工や防臭加工等の品質を高める加工を施しておいてもよい。また、これらの加工は、編地完成後に行ってもよいが、糸の段階で行っておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の一の実施の形態に係る可動ベッドの敷寝具構造の分解斜視図である。
【図2】同可動ベッドの敷寝具構造の作動状態を示すもので、(A)は水平状態の説明図、(B)は背上げ状態の説明図である。
【図3】本願発明の実施の形態に係る可動ベッドの要部斜視図である。
【図4】本願発明の他の実施の形態に係る可動ベッドの敷寝具構造の説明図である。
【図5】本願発明の袋状シーツに用いる立体編地の模式図である。
【図6】本願発明の袋状シーツに用いる他の立体編地の模式図である。
【図7】(A)は本願発明の袋状シーツに用いる立体編地の断面を示す説明図であり、(B)は本願発明の袋状シーツに用いる他の立体編地の断面を示す説明図であり、(C)は本願発明の袋状シーツに用いるさらに他の立体編地の断面を示す説明図である。
【図8】従来の可動ベッドの敷寝具構造の作動状態の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 表の編地
2 裏の編地
3 体圧分散シート(立体編地)
31 連結糸
41 本体側寝具
42 敷寝具本体
51 滑り寝具
53 接続部材
61 ベッド本体
62 可動部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身に対応する可動部分が水平状態から傾斜状態になすための背上げ機構を備えたベッド本体と、このベッド本体上に配位された敷寝具を備えた可動ベッドの敷寝具構造において、
上記のベッド本体と共に上記の傾斜状態となる本体側寝具と、この本体側寝具の上に重ねられた滑り寝具とを備え、
本体側寝具と滑り寝具との間が滑り移動可能な状態とされ、
滑り寝具に接続部材の一端が接続され、接続部材の他端が引っ張り部に接続され、
この引っ張り部は、上記のベッド本体の可動部分が背上げ状態へ傾斜するにしたがって、接続部材を引っ張るものであり、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであることを特徴とする可動ベッドの敷寝具構造。
【請求項2】
上記の引っ張り部が、上記のベッド本体の可動部分の下面側に設けられた移動部位であり、この移動部位は可動部分の傾斜が大きくなるにしたがい足先側へ移動する部位であり、
上記の接続部材が、滑り寝具から、可動部分の頭頂端を経由して、移動部位に接続され、
この移動部位が足先側に移動するに伴い、接続部材を引っ張り、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであることを特徴とする請求項1記載の可動ベッドの敷寝具構造。
【請求項3】
上記の引っ張り部は、上記の接続部の他端を一定位置に固定しておく不動の部位であり、且つ、上記の可動部分の背上げ動作により可動部分の頭頂端からの距離が大きくなる部位であり、
上記の接続部材は、その少なくとも一部に弾性を備え、且つ、滑り寝具から、上記の可動部分の頭頂端を経由して、移動部位に接続されたものであり、上記の背上げ動作によって、その弾性により伸長し、背上げ動作中当該伸びの範囲を越えることにより、接続部材を引っ張り、この接続部材の引っ張りによって、滑り寝具が頭頂側へ引き上げられるものであることを特徴とする請求項1記載の可動ベッドの敷寝具構造。
【請求項4】
上記の本体側寝具の最上層と、滑り寝具最下層との何れかの層が、表裏2層の編地と、この2層の編地を連結する複数の連結糸より構成された立体編地によって構成されたものであり、
この表裏2層の編地のなくとも表側の編地がメッシュ状の編地とされ、そのメッシュ状の編地1の編目の少なくとも30%から連結糸が他方の編地に向けて延びているものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の可動ベッドの敷寝具構造。
【請求項5】
上記の立体編地は、表裏2層の編地を連結する連結糸の半数以上が一定方向に湾曲している方向性を備えた立体編地であり、
上記の方向性によって縦方向移動への滑りが横方向への滑りよりも良好であることを特徴とする請求項4記載の可動ベッドの敷寝具構造。
【請求項6】
本体側寝具と滑り寝具との間に滑り用シートが配位され、この滑り用シートによって本体側寝具と滑り寝具との間の滑り性が良好となるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の可動ベッドの敷寝具構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−69226(P2010−69226A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242748(P2008−242748)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(502194285)黒田株式会社 (3)
【出願人】(500172449)エフ・アイ・ティー・パシフィック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】