説明

可動式ホーム柵監視用カメラ装置

【課題】都市部の駅ホームや、地下鉄の駅ホームでは、駅ホームのスペースが狭く、列車の乗降口または可動式ホーム柵の開閉部を広範囲にするための監視用カメラ装置のカメラ部の設置スペースを十分に確保できない。
【解決手段】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、可動式ホーム柵と、反射鏡と、前記可動式ホーム柵内に設置し前記反射鏡を介して前記可動式ホーム柵を撮像するカメラ部と、前記カメラ部が撮像した画像から乗客を検出する画像処理部と、モニタとを備え、前記画像処理部は、前記カメラ部が撮像した画像から前記可動式ホーム柵の開閉部およびその周辺を切り出して合成した合成画像を作成し、前記モニタは、前記合成画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ設置スペースを確保し難い狭小地の監視用カメラ装置に関わり、特に、可動式ホーム柵が設置された駅ホームの監視用カメラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、駅ホームに設置される監視用カメラ装置のカメラ部は、駅ホームの天井からポール等の支持具で吊り下げ固定されていた。その他、監視用カメラ装置のカメラ部は、駅ホームの柱や壁に固定されていた。
また、可動式ホーム柵(ホームドア)の開閉部には、赤外線センサーやフェンスセンサーなどのセンサーを内蔵して、開閉部に挟まれた人物を検知し、強制的に開扉するなどの制御を行なっている。
しかし、従来の監視用カメラ装置は、カメラ部が撮像した画像をもとに、人物が可動式ホーム柵の開閉部に挟まる危険を事前に回避したり、可動式ホーム柵の開閉部を強制開扉させるように構成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−074469号公報
【特許文献2】特開2003−146201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、プラットホーム(駅ホーム)の中央部天井に反射鏡を設置し、対向するプラットホームの上部側壁、またはプラットホーム側の側壁に設けた凹所にカメラ部を設置し、反射鏡に映ったプラットホームをカメラ部が撮像し、カメラ部によって撮像された情景を入力して列車の旅客数を検知するという技術が開示されている。しかし、可動式ホーム柵に関する技術については記載されておらず、カメラ設置スペースを確保し難い狭小地におけるカメラ部の設置に関わるが、可動式ホーム柵が存在するための問題についての記載がない。
特許文献2には、可動式ホーム柵が設置された駅ホームにおいて、カメラ部を可動式ホーム柵の側面等に設け、可動式ホーム柵と列車間をカメラ部で監視し、障害となる物や人がいた場合には、可動式ホーム柵の開閉部を開扉する技術が開示されている。ただし、カメラ部が可動式ホーム柵と列車間に設けられているため、プラットホーム(駅ホーム)側から開閉扉(開閉部)およびその周辺に近付く乗客を検出することができない(監視ができない)。
【0005】
都市部の駅ホームや、地下鉄の駅ホームでは、駅ホームのスペースが狭く、列車の乗降口または可動式ホーム柵の開閉部を広範囲にするための監視用カメラ装置のカメラ部の設置スペースを十分に確保できない問題がある。
また、列車の乗降口や可動式ホーム柵など、乗降客が出入りする最も監視したいポイントを上方向から俯瞰的に撮像しようとしても、建築限界の制約があり、カメラ部を設置することが困難であった。
さらに、撮像された画像は、奥に存在する可動式ホーム柵ほど小さく映るため、監視者が視認(監視)し難い問題がある。
またさらに、可動式ホーム柵には乗降客が挟まったタイミングで強制開扉する機能はあっても、乗降客の行動(移動方向、移動速度)から柵の閉扉タイミングを自動制御して事前に危険を回避することはできなかった。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、駅ホームのようなカメラ部の設置スペースを確保し難い狭小地でも、可動式ホーム柵内部またはホーム天井部に監視用カメラ装置のカメラ部を設置することで、可動式ホーム柵の開閉部の効率的な監視を可能にする可動式ホーム柵監視用カメラ装置を提供することにある。
また、本発明の監視用カメラ装置は、画像処理技術を組み合わせることで、可動式ホーム柵の開閉部の開閉タイミングを制御する。この結果、可動式ホーム柵の開閉部に挟まれた人物、または列車の車両と可動式ホーム柵の隙間に挟まった人物を自動的に検出し、可動式ホーム柵の開閉部を強制開扉したり警報ベルを鳴動するようにした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、可動式ホーム柵と、反射鏡と、前記可動式ホーム柵内に設置し前記反射鏡を介して前記可動式ホーム柵を撮像するカメラ部と、前記カメラ部が撮像した画像から乗客を検出する画像処理部と、モニタとを備え、前記画像処理部は、前記カメラ部が撮像した画像から前記可動式ホーム柵の開閉部およびその周辺を切り出して合成した合成画像を作成し、前記モニタは、前記合成画像を表示することを第1の特徴とする。
【0008】
また、上記本発明の第1の特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、前記カメラ部はメガピクセルカメラであることを第2の特徴とする。
【0009】
また、上記本発明の第2の特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、他の鉄道会社の乗り入れ駅など列車の編成に応じて可動式ホーム柵の開閉部が変わるため、外部から供給される列車信号により、列車の編成に応じて切りだしエリアを自動的に選択切り出して合成映像を作成することを第3の特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第3のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、前記反射鏡は、道路反射鏡であることを第4の特徴とする。
さらに、上記本発明の第1の特徴乃至第4のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、前記反射鏡は、駅ホームの天井に設けられたことを第5の特徴とする。
またさらに、上記本発明の第1の特徴乃至第5のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、前記カメラ部は、撮像した画像または合成した画像を左右反転させて出力することを第6の特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第6のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、天井設置の鏡で反射された映像をもとに画像処理で乗客を検出し、検出した乗客の移動方向、移動速度、前記柵可動式ホーム柵開閉部までの距離を算出し、これらの情報から前記可動式ホーム柵開閉部に到達するまでの時間を算出し、前記可動式ホーム柵の閉扉タイミングを制御することを第7の特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第7のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、前記反射鏡で反射された映像をもとに画像処理で乗客を検出し、前記可動式ホーム柵と列車の間及び前記可動式ホーム柵開閉部に一定時間以上乗客が留まっていると判断された場合、および閉扉前であった場合には、前記可動式ホーム柵開閉部の閉扉時間を延長し、閉扉後の場合は、前記駅ホーム設置の警報ベルを自動鳴動させると共に、前記可動式ホーム柵開閉部を強制開扉することを第8の特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第8のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、ホーム天井裏にカメラを設置し、ホーム天井部にスリット(隙間)を設けたスリット式カメラで可動式ホーム柵開閉部並びにその周辺を撮像する。撮像されたスリット画像は時間順に合成され1枚の静止画を提供することを第9の特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第9のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、合成されたスリット画像から、画像処理で人物を検出し、人物の移動方向、人物の可動式ホーム柵への移動速度、柵までの距離を算出し、これらの情報から可動式ホーム柵開閉部に到達するまでの時間を算出し、可動式ホーム柵の閉扉タイミングを制御することを第10の特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第9のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、合成されたスリット画像から、画像処理で人物を検出し、可動式ホーム柵と列車の間及び可動式ホーム柵開閉部に一定時間以上人物が留まっていると判断された場合、閉扉前であった場合は、可動式ホーム柵の閉扉時間を延長し、閉扉後の場合は、ホーム設置の警報ベルを自動鳴動させると共に、可動式ホーム柵を強制開扉することを第11の特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の第1の特徴乃至第11のいずれかの特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置は、ホーム天井に設置されたドーム式カメラで、ドーム式カメラ内部の凸面反射鏡で反射された像がさらに凹面反射鏡で反射した像を凸面反射鏡内部のカメラ部で撮像することで、凸面周囲の歪んだ画像を光学的に補正する。凸面反射鏡はマジックミラーとし、凸面反射鏡内部のカメラ部設置箇所を暗部、凸面反射鏡から外を明部とすることで、マジックミラーを通して、カメラ部は凹面鏡に反射された像を撮像することができることを第12の特徴とする。
【0017】
また、上記本発明の第12の特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、撮像された円形の画像を4分割した扇形の画像をさらに矩形の画像に変換し、この4画像を合成して1枚の画像に変換することを第13の特徴とする。
【0018】
また、上記本発明の第13の特徴の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、合成された画像の中から、柵開閉部周辺エリアを切りだして合成することで、可動式ホーム柵の開閉部を効率的に監視することを第14の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、駅ホームのようなカメラ設置スペースを確保し難い狭小な場所でも、可動式ホーム柵内部またはホーム天井部にカメラ部を設置することで、可動式ホーム柵開閉部など重要な監視ポイントを効率的に監視することが可能である。例えば、本発明によれば、カメラ部を可動式ホーム柵内部に設置して外部に設けられた反射鏡で反射された像を撮像したり、カメラ部を天井裏に設置して撮像することで、設置スペースの問題を解決すると共に、カメラ部が人の目に触れにくい場所に存在するためカメラ部による監視の威圧感も軽減される。
また、本発明によれば、監視用カメラ装置に画像処理技術を組み合わせて乗客の行動を検出および予測することで、可動式ホーム柵の開閉時刻を制御したり、可動式ホーム柵に挟まれた人物または車両と柵の隙間に挟まった人物を自動的に検出し、可動式ホーム柵の開閉部を強制開扉したり警報ベルを鳴動したりすることが可能である。例えば、本発明によれば、可動式ホーム柵の開閉部のみを切り出した映像を合成して提供することで、視認性を向上させることができる。また、合成画像を、拡大および座標変換して、相対的に開閉部が正面から見えるような画像とすることで、さらに、視認性を向上させることができる。
本発明によれば、画像処理により算出された乗降客の移動方向、および移動速度から可動式ホーム柵の閉扉タイミングを自動制御して事前に危険を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例の簡単な構成を説明するための図である。
【図2】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、カメラ部12が撮像した画像の一例である。
【図3】発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部(列車側)上面に設置されるカメラ部の一例を説明する図である。
【図4】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部上面に設置されるカメラ部で撮像された画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部上面に設置されるカメラ部で撮像された画像の一例を示す図である。
【図6】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の構成の一実施例を示す図である。
【図7】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例であって、天井裏に設置したカメラ部について説明するための構成例を示す図である。
【図8】図7に示したスリット式カメラ部72が撮像した画像を、時間順に合成した画像の一例を示す図である。
【図9】本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例にであって、天井等の上方に設置したドーム式カメラ部について説明するための構成例を示す図である。
【図10】図9のドーム式カメラ部が撮像した画像と該撮像画像を変換した変換画像を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態を図面等を用いて説明する。
なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を説明するためのものであり、本願発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素若しくは全要素をこれと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であり、これらの実施形態も本願発明の範囲に含まれる。
また、各図の説明において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、できるだけ説明の重複を避ける。
【0022】
図1は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例の簡単な構成を説明するための図である。図1(a)は横方向(ホームと平行方向)から見た構成図であり、図1(b)は駅ホーム側から可動式ホーム柵を見た構成図である。11は可動式ホーム柵(ホームドア)、12は可動式ホーム柵11の内部に設置された監視用カメラ装置のカメラ部、13は可動式ホーム柵11内部の側面部のカメラ部12の設置箇所に設けられたカメラ窓、14は駅ホーム側に設置された反射鏡である。カメラ部12は、例えば、メガピクセルカメラなどの高画素のカメラである。なお、反射鏡14は、道路反射鏡を用いても良い。
図1において、反射鏡14は、可動式ホーム柵11の開閉部や列車乗降口などを中心とした監視ポイントが広角に映し出されるように、駅ホーム側に設置される。カメラ部12は、可動式ホーム柵11の側面方向からカメラ窓13を通して、反射鏡14に映し出された像を入射し、当該入射光を電気信号に変換することによって撮像する。カメラ部12は、左右反転させた画像を出力する。反射鏡14は、例えば、カメラ部12がカメラ窓13および反射鏡14を介して可動式ホーム柵11の所望の場所(例えば、開閉部の周辺)を撮像可能に設置される。例えば、反射鏡14は、駅ホーム天井や駅ホームの壁面上部に、直接若しくは支持具で固定される。
反射鏡14は、平面鏡のほか、例えば凹面状等、曲面を持つものを使用しても良い。また、反射鏡14は、駅ホームの監視場所の形状に応じて、平面、凹面、凸面等を組み合わせた面形状としても良い。
なお、上記実施例では、カメラ部は撮像した画像を左右反転させて出力したが、カメラ部が左右反転せず、図6に後述する画像切出合成部63が左右反転させて出力しても良い。
【0023】
図2は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、カメラ部12が撮像した画像の一例である。21は図1のカメラ部12で撮像された画像、22は画像21中の可動式ホーム柵、23は画像21中の可動式ホーム柵22の開閉部Aを中心に切り出した画像、24は画像21中の可動式ホーム柵22の開閉部Bを中心に切り出した画像、25は画像21中の可動式ホーム柵22の開閉部Cを中心に切り出した画像、26は画像21中の可動式ホーム柵22の開閉部Dを中心に切り出した画像、27は開閉部A〜Dを中心に切り出した画像23〜26を合成した合成画像である。このように、可動式ホーム柵11の開閉部A〜Dの周辺部を切り出し、切り出した画像を合成する。
なお、図2において、メガピクセルカメラなどの高画素の監視用のカメラ12で撮像された画像の場合には、1枚の画像を複数の小さな画像に切り出しても人物の視認可能な画質レベルは保持される。
【0024】
図2に示すように、可動式ホーム柵11の開閉部A〜Dを中心に切り出した画像23〜26を合成して1枚の画像27として作成する。この結果、監視者は1枚の画像の中で効率的に監視したいポイントを、拡大した画像で効率的に視認することができる。
また、複数の鉄道会社の乗り入れ駅や、複数の路線が交わる駅など、車両編成の異なる列車がホームに入線するような場合においては、駅ホームの列車乗降口の位置が変わることがある。同様に、可動式ホーム柵の開閉部の位置が変わることがある。このような場合には、切り出す画像の場所を列車編成に応じて自動的に変更する。この結果、監視者が見たい画像を得ることができる。例えば、10両編成の列車が入線した場合は、開閉部Aを中心に切り出した画像23と開閉部Cを中心に切り出した画像25を合成した画像を作成し、14両編成の列車が入線した場合は、開閉部Bを中心に切り出した画像24と開閉部Dを中心に切り出した画像26を合成した画像を作成するなど、編成に応じた画像を作成する。また、例えば、開閉部A〜Dの中心で切り出すのではなく、開閉部Aと開閉部Bは中心よりやや左側にずらして切り出し、開閉部Cと開閉部Dは中心よりやや右側にずらして切り出し、これら切りだした画像を合成する。
なお、この切り出し位置の変更は、例えば、後述する図6の列車編成信号出力装置66から、画像切出合成部63が、入力される列車編成情報に基づいて予め定められ位置の画像を切り出す。
【0025】
図6は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の構成の一実施例を示す図である。62は映像分配器、63は画像切出合成部、64はモニタ、65は画像処理部、66は列車編成信号出力装置、67はアラーム音出力スピーカ、68は警報ベル、69は可動式ホーム柵である。
図6において、カメラ部12は、可動式ホーム柵11の側面方向からカメラ窓13を介して、反射鏡14に映し出された像を撮像する。そして、カメラ部12は、撮像した画像を映像分配器62に出力する。映像分配器62は入力された画像を分配し、分配したそれぞれの画像を画像切出合成部63と画像処理部65に出力する。
また、列車編成信号出力装置66は、駅ホームに入線する列車に関連する情報(例えば、列車編成信号)を画像切出合成部63に出力する。
画像切出合成部63は、列車編成信号出力装置66から入力された列車編成信号から必要箇所のみを切り出して合成した画像をモニタ64に出力する。モニタ64は画像を表示し、監視者は、モニタに表示された画像を見て、駅ホームの可動式ホーム柵の周辺を監視する(図2参照。)。
【0026】
画像処理部65は、入力された画像を所定の周知のアルゴリズムに基づいて画像処理し、人物(乗客)を抽出し、抽出した乗客それぞれについて、乗客の行動を検知する。画像処理部65は、もし、可動式ホーム柵11の閉扉直前の開閉部(開閉エリア)に向かう乗客が危険な行動をしていると判断した場合には、アラーム音出力スピーカ67、警報ベル68、可動式ホーム柵69に、それぞれ必要な制御信号を出力する。乗客の行動は、例えば、現在の乗客の位置、移動速度、若しくは移動方向等の移動情報である。また画像処理部65が危険な行動と判断する状態は、例えば、可動式ホーム柵11の開閉部に乗客が到達する時刻(若しくは、開閉部までの距離)を、移動情報に基づいて予想し、予想した時刻若しくはタイミングに開閉部が閉じている、若しくは、閉扉を開始していると判断した場合である。また、また画像処理部65が危険な行動と判断する状態は、乗客が、開閉部の領域(例えば、後述の図4で示す開閉部45)内に、所定の時間以上、若しくは、閉扉直前に留まっていると判断した場合である。
そして、上記の制御信号が入力されたことにより、アラーム音出力スピーカ67と警報ベル68は、警報(アラーム音出力スピーカ、警報ベル)を鳴らす。また、可動式ホーム柵62は、入力された制御信号に応じて、開閉部の強制開扉を行なう、あるいは、開閉部の閉扉を開始する時刻を延長させる。
【0027】
図3は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部(車両側)上面に設置されるカメラ部の一例を説明するための図である。
天井に設けた反射鏡14には、可動式ホーム柵11の開閉部や列車乗降口などを中心とした監視ポイントを上方向から俯瞰した像が映し出される。監視用のカメラ部12は、可動式ホーム柵11の上面方向からカメラ窓13を介して、天井の反射鏡14に映し出された像を撮像する。カメラ部12は、撮像した画像を左右反転させて出力する。
【0028】
図4は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部上面に設置されるカメラ部12で撮像された画像の一例を示す図である。41はカメラ部12で撮像された画像、42は可動式ホーム柵、43は移動速度の速い乗客、44は移動速度の遅い乗客、45は可動式ホーム柵の開閉エリア(開閉部)、46は可動式ホーム柵42の車両側のエリア、47は車両である。
乗客43および44は、矢印の方向に進み開閉部45または46を通過して車両47に乗ろうとしている。矢印の長さが、それぞれの乗客43および44の進む速度の大きさを示している。
【0029】
図5もまた、図4と同様に、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例において、可動式ホーム柵の内部上面に設置されるカメラ部12で撮像された画像の一例を示す図である。51は時刻tの時に撮像された画像、54は時刻t+1の時に撮像された画像、57は時刻t+2の時に撮像された画像である。また、52、55および58は乗客(A)、53、56および59は乗客(B)、510は乗客(A)58と可動式ホーム柵42の開閉部45までの距離を示す矢印である。
図5において、画像処理部65は、画像51、54、57の中から乗客を検出し、時刻の異なる複数の画像から同一人物の乗客の移動方向および移動距離を算出する。移動方向が可動式ホーム柵11の開閉部方向(車両側)ではないものは除外し、開閉部方向に向かう乗客の移動距離から平均移動速度を算出する。
時刻tから時刻t+1までに乗客Aが移動した距離は、時刻tの画像51で検出された乗客Aの位置と時刻t+1の画像54で検出された乗客Aの位置の差分距離で求める。移動速度は、求めた差分距離を時刻t+1から時刻tを引いた差分時間で除算した値である。なお、移動方向についても、時刻tの画像51で検出された乗客Aの位置と時刻t+1の画像54で検出された乗客Aの位置から求める。
同様に時刻t+2およびt+1の画像から速度を求めて、複数の速度の平均値を平均速度とする。時刻t+2の画像から乗客から開閉部までの距離を算出し、乗客が開閉部に到達する予想時刻を求める。予想時刻trは、平均速度をv、開閉部までの距離をLとすると、
tr=L/v ・・・式(1)
で求めることができる。
【0030】
即ち、現在時刻からtr後の時刻が予想時刻となる。予想時刻tr経過後に、可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉する場合には問題はない。しかし、予想時刻tr前に可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉する、または閉扉途中である場合には、画像処理部65から、制御信号を列車編成信号出力装置66、アラーム音出力スピーカ67、および可動式ホーム柵69に出力し、閉扉する時刻を延長すると共に、アラーム音を鳴動することで、乗客には閉扉が迫っていることを促す。
また、画像処理部65は、図4に示した可動式ホーム柵11の開閉部に一定時間乗客が留まっていると判断した場合には、制御信号を可動式ホーム柵69に出力し、可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉前であれば閉扉時刻を延長させる。また、可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉後であった場合には、画像処理部65から、制御信号を列車編成信号出力装置66、警報ベル68、および可動式ホーム柵69に出力し、可動式ホーム柵11の開閉部を強制開扉させると共に、警報ベルを鳴動させる。
また、画像処理部65は、図4に示した可動式ホーム柵11と車両47間に乗客が一定時間以上留まっていると判断した場合において、可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉前であれば、制御信号を列車編成信号出力装置66とアラーム音出力スピーカ67に出力し、アラーム音を鳴動することで、乗客に閉扉が迫っていることを促す。さらに、可動式ホーム柵11の開閉部が閉扉後であれば、制御信号を列車編成信号出力装置66、警報ベル68、および可動式ホーム柵11を強制開扉させると共に、警報ベルを鳴動させて列車出発を強制的に停止させる。
【0031】
図7は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例であって、天井裏に設置されたスリット式カメラ部について説明するための構成例を示す図である。図7(a)は、天井裏に設置されたスリット式カメラ部と可動式ホーム柵の一例を示す図であり、図7(b)は、スリット式カメラ部が撮像する領域(撮像エリア)の一例を示す図である。72はスリット式カメラ部、71は天井面、73は天井面72に開けられたスリット、75は可動式ホーム柵11を上から見た図、76はスリット式カメラ72の撮像エリアである。
図7のスリット式カメラ部72を用いた可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の構成は、図6の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の構成において、カメラ部12をスリット式カメラ部72に置き換えた構成である。
図7において、天井裏(天井71の上部)に設置されたカメラ部72は、スリット73を通して、可動式ホーム柵11の上方からの俯瞰画像を撮像する。撮像された画像は、図6と同様に、映像分配器62に出力される。以下、映像分配器62以降の説明は省略する。
【0032】
図8は、図7に示したスリット式カメラ部72が撮像した画像を、時間順に合成した画像の一例を示す図である。
80は合成画像、81は通常の歩行速度で列車に乗車した乗客、82は可動式ホーム柵の開閉部で留まっているか歩行速度の遅い乗客である。また、合成画像80において、83は時刻tのスリット画像、84は時刻t+1のスリット画像、85は時刻t+2のスリット画像、86は時刻t+3のスリット画像、87は時刻t+4のスリット画像、88は時刻t+5のスリット画像、89は時刻t+6のスリット画像、90は時刻t+7のスリット画像、91は時刻t+8のスリット画像、92は時刻t+9のスリット画像、・・・である。このように、画像切出合成部63は、時刻順にスリット画像を右方向に合成して画像80を生成する。生成された画像80は、モニタ64に出力され、監視者はモニタ64に表示される合成画像80を見て駅ホームの可動式ホーム柵の開閉部およびその周辺を監視する。
【0033】
このとき、通常の歩行速度で乗車した乗客は、通常の大きさの画像81として表示されるが、可動式ホーム柵11の開閉部で留まっているか、または歩行速度の遅い乗客は、横に間延びした画像82として表示される。
監視者は、このような横に間延びした乗客画像82を検出し、閉扉時刻が迫っていた場合にはアラーム音を鳴動させて乗客に注意を促す。また、閉扉後であれば可動式ホーム柵11の開閉部を強制開扉させると共に、警報ベルを鳴動させて列車出発を強制的に停止させる。監視者は、これらの指示を図示しない操作器を用いて実行することができる。
【0034】
また、図6の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、画像切出合成部63が作成した合成画像80を画像処理部65に出力するようにし、画像処理部65が画像処理によって、乗客を検出し、検出された乗客の大きさが所定の大きさより大きいか否かによって、可動式ホーム柵11の開閉部で留まっているか、または歩行速度の遅い乗客を検出し、閉扉時刻が迫っていた場合にはアラーム音を鳴動させて乗客に注意を促し、また、閉扉後であれば可動式ホーム柵11の開閉部を強制開扉させると共に、警報ベルを鳴動させて列車出発を強制的に停止させるようにしても良い。なお、乗客の大きさは、例えば、検出された乗客の時間方向(横方向)の長さが所定の値以上の場合に、乗客の大きさが大きいと判定しても良い。
【0035】
図9は、本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置の一実施例にであって、天井等の上方に設置したドーム式カメラ部について説明するための構成例を示す図である。92はドーム式のカメラ部、91はガラス面、93は凸面反射鏡、94は凹面反射鏡である。カメラ部92は、例えば、高感度カメラである。
図9において、凸面反射鏡93はマジックミラーであり、カメラ部92は、外部に対して暗く、凸面反射鏡93から外の映像を撮像することが可能である。
駅ホーム全体の画像は、凸面反射鏡93で反射され、凹面反射鏡94で再反射されてカメラ部92に入射する。凸面反射鏡93は、鏡面が凸面であるため、駅ホーム全体の広角な像を提供することが可能である。また、凸面反射鏡93で生じる周囲の画像歪みは凹面反射鏡94で光学的に補正するように設定する。
カメラ部92に入射する光像は、凸面反射鏡(マジックミラー)93を介しているため、光量が不足している。そのため、カメラ部92は、高感度型カメラとし、映像レベルをアンプする機能を有する。
従来の全方位型カメラでは、カメラが凸面反射鏡下部に設置されカメラ本体により画像中心部が大きな死角となっている。本発明のカメラは、凹面反射鏡94による死角は存在するが、凹面反射鏡94を凸面反射鏡93に対して小型にすることで、死角を軽減することが可能である。
【0036】
図10は、図9のドーム式カメラ部が撮像した画像と該撮像画像を変換した変換画像を説明するための図である。図10(a)はドーム式カメラ部が撮像した円画像を示す図であり、図10(b)は図10(a)の円形画像のうちの1/4を切り出した扇型画像を示す図であり、図10(c)は、図10(b)の扇型画像を矩形画像に変換した変換画像を示す図である。101はドーム式のカメラ部92が撮像した円形画像、102は円形画像101の1/4の扇形画像、103は扇形画像102を座標変換した矩形画像である。
図6における本発明の可動式ホーム柵監視用カメラ装置において、画像切出合成部63は、円形画像101から1/4の扇形画像102を切り出し、各扇形画像102を矩形画像103にそれぞれ変換する。このとき、扇形画像102の中心部に近いほど矩形画像103に変換する際の横方向の拡大率を大きくする必要がある。矩形画像103を、縦がXピクセル、横がYピクセルとすると、
矩形画像103の縦方向yにおける横方向の拡大率αyは、
αy=X/(2πr×1/4)=2X/πr ・・・式(2)
となる。なお、rは、円形画像101の半径である。
生成された4枚の矩形画像103には、可動式ホーム柵の開閉部などの監視ポイントが複数含まれている。このため、好ましくは、上述の画像切出合成部63では、監視ポイントのみを拡大して合成する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上記実施例において、反射鏡は、道路反射鏡を用いても良いとした。さて、路上に設置された道路反射鏡の問題点は、鏡に映った像が左右反転して、自動車等の車両の運転者が、遠近を見誤ることである。例えば、大きく見える像が小さく見える像より近いと考えるが、左右反転しているためにこの位置関係が逆になっている。本発明によれば、カメラ部または画像処理部若しくは画像切出合成部で、画像を左右反転しているため、このような見誤りは起きない。従って、路上における車両の前方を撮像しているカメラの画像についても同様に、左右反転させて表示するようにすることで、運転者の見誤りを防止することができる。
本発明の産業上の利用可能性として、道路反射鏡の像を撮像するカメラについての応用が考えられる。
【符号の説明】
【0038】
11:可動式ホーム柵、 12:カメラ部、 13:カメラ窓、 14:反射鏡、 21:画像、 22:可動式ホーム柵、 23開閉部Aを中心に切り出した画像、 24:開閉部Bを中心に切り出した画像、 25:開閉部Cを中心に切り出した画像、 26:開閉部Dを中心に切り出した画像、 27:合成画像、 41:画像、 42:可動式ホーム柵、 43:移動速度の速い乗客、 44:移動速度の遅い乗客、 45:可動式ホーム柵の開閉エリア(開閉部)、 46:車両側のエリア、 47:車両、 51:時刻tの時に撮像された画像、 54:時刻t+1の時に撮像された画像、 57:時刻t+2の時に撮像された画像、 52、55、58:乗客(A)、 53、56、59:乗客(B)、 510:乗客(A)と可動式ホーム柵の開閉部までの距離を示す矢印、 62:映像分配器、 63:画像切出合成部、 64:モニタ、 65:画像処理部、 66:列車編成信号出力装置、 67:アラーム音出力スピーカ、 68:警報ベル、 69:可動式ホーム柵、71:スリット式カメラ部、 72:天井面、 73:スリット、 75:可動式ホーム柵11を上から見た図、 76:撮像エリア、 80:合成画像、 81:通常の歩行速度で列車に乗車した乗客、 82:乗客、 83:時刻tのスリット画像、 84は時刻t+1のスリット画像、 91:ガラス面、 92:ドーム式のカメラ部、 93:凸面反射鏡、 94:凹面反射鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動式ホーム柵と、反射鏡と、前記可動式ホーム柵内に設置し前記反射鏡を介して前記可動式ホーム柵を撮像するカメラ部と、前記カメラ部が撮像した画像から乗客を検出する画像処理部と、モニタとを備え、
前記画像処理部は、前記カメラ部が撮像した画像から前記可動式ホーム柵の開閉部およびその周辺を切り出して合成した合成画像を作成し、前記モニタは、前記合成画像を表示することを特徴とする可動式ホーム柵監視用カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−67215(P2013−67215A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205527(P2011−205527)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】