説明

可動接点部材及び該可動接点部材を用いたスイッチ装置

【課題】可動接点部材の寿命を低下させることなく、可動接点部材のストロークを長くできるとともに、該可動接点部材を用いたスイッチ装置の小型化が図れる可動接点部材及び該可動接点を用いたスイッチ装置を提供する。
【解決手段】可動接点部材1は、ドーム状に膨出し、押圧により反転動作可能な膨出部11と、膨出部11の外周縁部11aから連続して形成されるスカート部12とを有して構成されている。スカート部12は、四方の箇所で切り欠かれた切欠部32を有し、スカート部12の切欠部32以外の箇所が接触部52となっており、スカート部12の切欠部32以外の箇所が接地可能箇所となるように、スカート部12の切欠部32は、膨出部11側へ膨出しており、スカート部12が膨出していない状態で、切欠部32の切欠面形状は、直線形状または緩やかな曲線形状となっていることを特徴とした。また、この可動接点部材1を用いてスイッチ装置201を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点部材および該可動接点部材を用いたスイッチ装置に係わり、特に、押圧操作されることにより可動接点部材が反転動作して、接点の接離を行う可動接点部材及び該可動接点部材を用いたスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルカメラや携帯電話等の電子機器に用いられる可動接点部材として、作動力やクリック感等の操作フィ-リングを得るために、押圧操作されることにより可動接点部材が反転動作して、接点の接離を行う可動接点部材が用いられている。この可動接点部材として、金属薄板を加工して、所定の曲率でドーム状に形成したものが良く知られている。
【0003】
従来技術として、特許文献1では、図8(a)に示すように、ドーム状のばね804の外周に張り出した複数個の足812を設けた接点ばね811と該接点ばね811を用いたスイッチ装置800が提案されている。図8(a)に示す接点ばね811は、図8(b)に示す先行例の接点ばね844と比較して、足812を設けたことにより、スイッチ操作時のストロークが増えようになっている。
【0004】
そして、さらなる電子機器の小型化によって、スイッチ装置の小型化が望まれて、可動接点部材の小型化が図られてきた。しかし、可動接点部材の小型化に伴い、ドームの最大外形が益々小さくなってきたので、スイッチ操作時のストロークが充分得られないと言う問題が生じた。この問題を解決するために、従来技術として、図9に示すような脚部905を長くした可動接点部材911が提案されている(例えば、特許文献2参照)。スイッチ操作時のストロークは、ドーム状のばね部904の反転動作と脚部905とで決まるので、可動接点部材911は、脚部905を長くしたことにより、より長いストロークが得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−348556号公報
【特許文献2】特開2005−332664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図9に示す従来例2の可動接点部材911のように、脚部905を長くした場合、ドーム状のばね部904と脚部905との屈曲部分に応力が集中し、反転動作を数十万回繰り返すことにより、ばね部904と脚部905との境部分909にクラックが生じ、スイッチ寿命が低下するという課題があった。一方、スイッチ寿命を向上させるため、図8(a)に示す従来例1の接点ばね811のように、極端に足812を短くするか、図8(b)に示す先行例の接点ばね844のように、脚部を設けない構成にすれば良いが、前述したように、ストロークが充分得られないと言う課題が生じてしまう。また、一般的に角型形状で作製されるスイッチ装置に、ストロークを長くするために、図9に示す従来例2の可動接点部材911のような形状の接点ばねを用いた場合、ドームの最大外形よりも脚部を含めた最大外形の方が大きくなり、スイッチ装置の小型化が図れないと言う課題もあった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するもので、可動接点部材の寿命を低下させることなく、可動接点部材のストロークを長くできるとともに、該可動接点部材を用いたスイッチ装置の小型化が図れる可動接点部材及び該可動接点を用いたスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明の請求項1による可動接点部材は、ドーム状に膨出し、押圧により反転動作可能な膨出部と、該膨出部の外周縁部から連続して形成されるスカート部とを有し、該スカート部は、四方の箇所で切り欠かれた切欠部を有し、前記スカート部の前記切欠部以外の箇所が接触部となっており、前記スカート部の前記切欠部以外の箇所が接地可能箇所となるように、前記スカート部の前記切欠部は、前記膨出部側へ膨出しており、前記スカート部が膨出していない状態で、前記切欠部の切欠面形状は、直線形状または緩やかな曲線形状となっていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の請求項2による可動接点部材は、前記四方の前記切欠面形状は、対向する前記切欠面形状同士が平行な位置に、かつ隣り合う前記切欠面形状同士が直交する位置に配置されていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の請求項3による可動接点部材は、前記スカート部は、前記膨出部の外周縁部におけるドーム半径方向に延びる接線の接線方向に略一致するように前記膨出部の外周縁部から連続して形成されていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項4による可動接点部材は、前記スカート部及び前記切欠部は、平板状の板材を外形形状に沿って切断した後、膨出を伴った塑性加工を行うことにより形成されていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の請求項5によるスイッチ装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の可動接点部材と、該可動接点部材が収容される収容部を有するスイッチ基台と、前記収容部内に配設され、前記膨出部に離接される中央固定接点と、前記収容部内に配設され、前記接触部の少なくとも一つと接触する周辺固定接点と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、本発明の可動接点部材は、スカート部が、四方の箇所で切り欠かれた切欠部を有し、膨出部の外周縁部から連続してスカート部を形成しているので、膨出部の一部に切欠部を設けた場合や膨出部から脚部を設けた場合(従来例2)と比較して、可動接点部材の反転動作の際に、切欠部や外周縁部の部分に生じる応力集中を低減させることができる。このことにより、可動接点部材に発生するクラックを抑制でき、可動接点部材の寿命を長くすることができる。さらに、スカート部が、膨出部を支持した構成となっているので、脚部を設けない場合や脚部を極端に短くした場合(従来例1)と比較して、スカート部により、可動接点部材のストロークを長くすることができる。したがって、可動接点部材の寿命を低下させることなく、可動接点部材のストロークを長くした可動接点部材を提供することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、本発明の可動接点部材は、平面視して、四方に形成された切欠面形状は、対向する切欠面形状同士が平行な位置に、かつ隣り合う切欠面形状同士が直交する位置に配置されているので、切欠面形状を延長して繋げた切欠外形形状が、四角形(略正方形)になっている。このため、可動接点部材の反転動作の際に、切欠部や外周縁部の部分に生じる応力をバランス良く分散させることができる。このことにより、可動接点部材に発生するクラックをより抑制でき、可動接点部材の寿命をより長くすることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、本発明の可動接点部材は、スカート部が、ドーム半径方向に延びる接線の接線方向に略一致するように、膨出部の外周縁部から連続して形成されているので、膨出部とスカート部が変曲点を持って接続されている場合と比較して、可動接点部材の反転動作の際に、反転時の支点がその部分に形成されなく、膨出部の外周縁部に応力が集中することがない。このことにより、応力集中による可動接点部材のクラックの発生をより一層抑制でき、可動接点部材の寿命をより一層長くすることができる
【0016】
請求項4の発明によれば、本発明の可動接点部材は、スカート部及び切欠部の外形形状に沿って切断(外形加工)した後、膨出を伴った塑性加工(絞り加工)を行うようにしているので、膨出部の絞り加工の後にスカート部及び切欠部の外形加工(外形切断)を行う場合と比較して、外形切断による、膨出部のクラックの発生や膨出部のひずみ、或いは変形等の発生を抑制することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、本発明のスイッチ装置は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の可動接点部材を用いてスイッチ装置を構成しているので、ストロークが長くしかも小型化できるスイッチ装置が得られる。また、可動接点部材が長寿命化されているので、スイッチ装置の長寿命化も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の可動接点部材を説明する斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態の可動接点部材を説明する図であって、図2(a)は、上面図で、図2(b)は、側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の可動接点部材を説明する図であって、図3(a)は、図2(a)に示すIII−III線の断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すP部分の拡大断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のスイッチ装置を説明する斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態のスイッチ装置を説明する分解斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態のスイッチ装置を説明する図であって、図6(a)は、スイッチ基台の上面図で、図6(b)は、スイッチ基台に可動接点部材を載置した平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の可動接点部材の変形例を説明する図であって、図7(a)は、図3(b)に示す可動接点部材の拡大断面図の変形例1の拡大断面図で、図7(b)は、図3(b)に示す拡大断面図の変形例2の拡大断面図である。
【図8】図A(a)は、従来例1のスイッチ装置を説明する上面図であり、図A(b)は、従来例1の先行例の接点ばねを説明するスイッチ装置の上面図である。
【図9】従来例2の可動接点部材を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の可動接点部材1を説明する斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態の可動接点部材1を説明する図であって、図2(a)は、上面図で、図2(b)は、側面図である。図3は、本発明の第1実施形態の可動接点部材1を説明する図であって、図3(a)は、図2(a)に示すIII−III線における断面図であり、図3(b)は、図3(a)に示すP部分の拡大断面図である。
【0021】
図1に示すように、可動接点部材1は、導電性の金属板から形成され、押圧により反転動作可能な膨出部11と、膨出部11の外周縁部11aから連続して形成されるスカート部12とを備えて構成される。よって、スカート部12は、膨出部11の外周縁部11aに連続して形成されているので、膨出部11を支持した構成となっている。
【0022】
膨出部11は、図2に示すように、上面側(図1に示すZ1方向)に向けてドーム状に膨出し、ドームの所定の直径φの円の領域において所定の曲率で湾曲して形成されており、更には、所定の直径φの円とドームの最大の直径φの円との間の領域においても所定の曲率で湾曲して形成されている。
【0023】
また、膨出部11の外周縁部11aに連続して形成されているスカート部12は、所定の角度で傾斜して形成されている。この場合、スカート部12は、図2及び図3(b)に示すように、膨出部11の外周縁部11aにおけるドーム半径方向DDに延びる接線の接線方向SDに略一致するように、膨出部11の外周縁部11aから連続して形成されている。つまり、スカート部12は、膨出部11になだらかに接続されており、スカート部12と膨出部11との境目に屈曲部分が存在せず、反転時の支点がその部分に形成されないようになっている。
【0024】
また、スカート部12は、図1ないし図3に示すように、膨出部11を挟んで対向する四方の箇所で切り欠かれた切欠部32を有し、スカート部12の切欠部32以外の箇所が接触部52となって形成されている。また、スカート部12の切欠部32以外の箇所が接地可能箇所となるように、スカート部12の切欠部32は、膨出部11側へ膨出して(図2(b)を参照)、形成されている。また、スカート部12の切欠部32と接触部52との繋ぎ部分42は、屈曲してつながっている。また、スカート部12の接触部52の平面視した最大外形形状MSは、直径φの円状に形成されている。なお、スカート部12の接触部52の形状は、円弧状に形成しているが、直線状に形成しても良い。
【0025】
図2(a)に示すように、切欠部32の平面視した切欠面形状PSは、直線形状となっている。特に、四方に形成された切欠面形状PSは、対向する切欠面形状PS同士が平行な位置に、かつ隣り合う切欠面形状PS同士が直交する位置に配置されているので、切欠面形状PSを延長して繋げた切欠外形形状OSは、四角形(略正方形)になっている。また、一対の切欠部32間の間隔DSが膨出部11のドームの最大の直径φよりも大きくなっている。本発明の第1実施形態の切欠面形状PSは、ほぼ直線形状で構成されているが、緩やかな曲線形状であっても良い。
【0026】
このように構成された本発明の可動接点部材1は、膨出部11を全て残すようにスカート部12にのみ四方の切欠部32を形成し、膨出部11の外周縁部11aから連続してスカート部12を形成しているので、膨出部の一部に切欠部を設けた場合や膨出部から脚部を設けた場合(従来例2)と比較して、可動接点部材1の反転動作の際に、切欠部32や外周縁部11aの部分に生じる応力集中を低減させることができる。このことにより、可動接点部材1に発生するクラックを抑制でき、可動接点部材1の寿命を長くすることができる。さらに、スカート部12が、膨出部11を支持した構成となっているので、脚部を設けない場合や脚部を極端に短くした場合(従来例1)と比較して、スカート部12により、可動接点部材1のストロークを長くすることができる。
【0027】
また、本発明の可動接点部材1は、切欠面形状PSを延長して繋げた切欠外形形状OSが、四角形(略正方形)になっているので、可動接点部材1の反転動作の際に、切欠部32や外周縁部11aの部分に生じる応力をバランス良く分散させることができる。このことにより、可動接点部材1に発生するクラックをより抑制でき、可動接点部材1の寿命をより長くすることができる。さらに、膨出部から脚部を長く設けた場合(従来例2)と比較して、可動接点部材1の最大外形(切欠外形形状OS)を小さくすることができ、可動接点部材1のストロークを短くすることなく、可動接点部材1を小型にすることができる。
【0028】
この切欠外形形状OSは、膨出部11のドームの直径φより大きく、スカート部12の最大外形形状MSの直径φより小さい部分に切欠部32が配置されるように形成されるが、ドームの直径φと最大外形形状MSの直径φとの中間近傍に切欠部32が配置されるのが好適である。例えば、膨出部11のドームの直径φの近傍に切欠部32が配置された場合は、切欠部32により応力が集中し易くなり、可動接点部材1の寿命が低下する虞がある。例えば、最大外形形状MSの直径φの近傍に切欠部32が配置された場合は、スカート部12の接触部52の接地部分が狭くなるので、接触部52が均等に接地されないと言った虞や、相手側接点(例えば固定接点)の摩耗が増加すると言った虞がある。
【0029】
また、本発明の可動接点部材1は、スカート部12が、ドーム半径方向DDに延びる接線の接線方向SDに略一致するように、膨出部11の外周縁部11aから連続して形成されているので、膨出部11とスカート部12が変曲点を持って接続されている場合と比較して、可動接点部材1の反転動作の際に、反転時の支点がその部分に形成されなく、膨出部11の外周縁部11aに応力が集中することがない。このことにより、応力集中による可動接点部材1のクラックの発生をより一層抑制でき、可動接点部材1の寿命をより一層長くすることができる。
【0030】
可動接点部材1の製造方法は、金属材料からなる平板状の板材を、プレス型を用いて外形加工及び絞り加工を行う方法であるが、最初にスカート部12及び切欠部32の外形形状に沿って切断(外形加工)した後、膨出を伴った塑性加工(絞り加工)を行うようにしている。このことにより、膨出部11の絞り加工の後にスカート部12及び切欠部32の外形加工(外形切断)を行う場合と比較して、外形切断による、膨出部11のクラックの発生や膨出部11のひずみ、或いは変形等の発生を抑制することができる。
【0031】
また、スカート部12が膨出していない状態で、つまり外形加工後で絞り加工前の状態で、切欠部32の切欠面形状PSは、直線形状または緩やかな曲線形状となっているが、外側に僅かにふくらませた形状にするのがより好ましい。この外側に僅かにふくらませた形状にするのは、切欠部32の切欠面形状PSの中央部分は、その後の絞り加工により膨出部11側に湾曲するので、絞り加工後の切欠外形形状OSを四角形(略正方形)するためである。このことにより、可動接点部材1の反転動作の際に、切欠部32や外周縁部11aの部分に生じる応力をバランス良く分散させることができる。したがって、可動接点部材1に発生するクラックをより抑制でき、可動接点部材1の寿命をより長くすることができる。
【0032】
以上により、本発明の可動接点部材1は、スカート部12が、四方の箇所で切り欠かれた切欠部32を有し、膨出部11の外周縁部11aから連続してスカート部12を形成しているので、膨出部の一部に切欠部を設けた場合や膨出部から脚部を設けた場合(従来例2)と比較して、可動接点部材1の反転動作の際に、切欠部32や外周縁部11aの部分に生じる応力集中を低減させることができる。このことにより、可動接点部材1に発生するクラックを抑制でき、可動接点部材1の寿命を長くすることができる。さらに、スカート部12が、膨出部11を支持した構成となっているので、脚部を設けない場合や脚部を極端に短くした場合(従来例1)と比較して、スカート部12により、可動接点部材1のストロークを長くできる。したがって、可動接点部材1の寿命を低下させることなく、可動接点部材1のストロークを長くした可動接点部材1を提供することができる。
【0033】
また、平面視して、四方に形成された切欠面形状PSは、対向する切欠面形状PS同士が平行な位置に、かつ隣り合う切欠面形状PS同士が直交する位置に配置されているので、切欠面形状PSを延長して繋げた切欠外形形状OSが、四角形(略正方形)になっている。このため、可動接点部材1の反転動作の際に、切欠部32や外周縁部11aの部分に生じる応力をバランス良く分散させることができる。このことにより、可動接点部材1に発生するクラックをより抑制でき、可動接点部材1の寿命をより長くすることができる。
【0034】
また、スカート部12が、ドーム半径方向DDに延びる接線の接線方向SDに略一致するように、膨出部11の外周縁部11aから連続して形成されているので、膨出部11とスカート部12が変曲点を持って接続されている場合と比較して、可動接点部材1の反転動作の際に、反転時の支点がその部分に形成されなく、膨出部11の外周縁部11aに応力が集中することがない。このことにより、応力集中による可動接点部材1のクラックの発生をより一層抑制でき、可動接点部材1の寿命をより一層長くすることができる
【0035】
また、スカート部12及び切欠部32の外形形状に沿って切断(外形加工)した後、膨出を伴った塑性加工(絞り加工)を行うようにしている。このことにより、膨出部11の絞り加工の後にスカート部12及び切欠部32の外形加工(外形切断)を行う場合と比較して、外形切断による、膨出部11のクラックの発生や膨出部11のひずみ、或いは変形等の発生を抑制することができる。
【0036】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態のスイッチ装置201を説明する斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態のスイッチ装置201を説明する分解斜視図である。図6は、本発明の第2実施形態のスイッチ装置201を説明する図であって、図6(a)は、スイッチ基台4の上面図で、図6(b)は、スイッチ基台4に可動接点部材1を載置した平面図である。また、第1実施形態と同一構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
本発明の第2実施形態のスイッチ装置201は、図4ないし図6に示すように、本発明の第1実施形態の可動接点部材1と、可動接点部材1が収容される収容部14を有するスイッチ基台4と、可動接点部材1の膨出部11に離接される中央固定接点3と、可動接点部材1の接触部52の少なくとも一つと電気的に接触する周辺固定接点5とを備えて構成される。他に、押圧操作により可動接点部材1を反転動作させる操作部材6と、スイッチ基台4の収容部14を覆いスイッチ基台4に取り付けられるカバー9とから構成されている。
【0038】
スイッチ基台4は、合成樹脂などの絶縁材を用い、図4ないし図6に示すように、内部が凹状の収容部14を有し、外形が方形状で上面が開口された箱形に形成されている。この収容部14には、図6(b)に示すように、可動接点部材1が載置されて収容部14に収容される。また、収容部14の形状は、可動接点部材1の外形形状に合わせて、方形状に形成されているので、従来例2のような可動接点部材911を用いた場合と比較して、スイッチ基台4を小さくすることができる。このことにより、スイッチ装置201を小型に作製することができる。
【0039】
図6(a)に示すように、収容部14の内底面中央には、導電性の金属材からなる中央固定接点3が、上面側が表出された状態で配設されており、中央固定接点3は、押圧操作により可動接点部材1が反転動作した際に、可動接点部材1の膨出部11の裏面側(図5に示すZ2側)と電気的に接触する。また、同じく導電性の金属材からなる周辺固定接点5が、収容部14の内底面の4箇所の四隅の位置に上面側が表出された状態で配設されている。周辺固定接点5は、可動接点部材1が載置されて収容部14に収容された際に、可動接点部材1の接触部52の少なくとも一つと電気的に接触する。中央固定接点3及び周辺固定接点5のスイッチ基台4の収容部14への配設は、スイッチ基台4の形成の際、インサート成形で同時に行われる。
【0040】
また、図4ないし図6に示すように、スイッチ基台4の底壁の外側の対向する2辺には、中央固定接点3から導出された接続端子3aと、周辺固定接点5から導出された接続端子5cとが、機器などの回路基板への接続用に外方に突出されて形成されている。
【0041】
操作部材6は、例えば、合成樹脂材料で成形され、図4及び図5に示すように、押圧操作がされる凸設状の操作部6sを有し、可動接点部材1の上方側(Z1側)に配置される。この操作部6sを押圧操作することにより、下方側(Z2側)に配置された可動接点部材1の膨出部11を押すことになり、可動接点部材1を反転動作させることができる。
【0042】
カバー9は、例えば、板状の金属板で作製され、上面視して、略正方形の板状に形成されている。また、図4及び図5に示すように、カバー9の中央には、操作部材6の操作部6sを外部に露出させるために、大きめの操作開口部9kが設けられている。また、カバー9の四隅には、L字状の係止爪部19が形成されており、係止爪部19をスイッチ基台4の位置決め突起部4tに係合させることで、カバー9がスイッチ基台4に対して前後左右に位置決めされる。なお、カバー9は、板状の金属板のプレス加工(外形加工や穴あけ加工等)を行って作製したが、金属材に限らず、合成樹脂材を用いて、射出成形等で作製しても良い。
【0043】
以上のように構成された本発明の第2実施形態のスイッチ装置201は、本発明の第1実施形態の可動接点部材1を用いてスイッチ装置201を構成しているので、ストロークが長くしかも小型に作製できるスイッチ装置201が得られる。また、可動接点部材1が長寿命化されているので、スイッチ装置201の長寿命化も図ることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のように変形して実施することができ、これらの実施形態も本発明の技術的範囲に属する。
【0045】
図7は、本発明の第1実施形態の可動接点部材1の変形例を説明する図であって、図7(a)は、図3(b)に示す可動接点部材1の拡大断面図の変形例1の拡大断面図で、図7(b)は、図3(b)に示す拡大断面図の変形例2の拡大断面図である。
【0046】
<変形例1>
上記実施形態では、可動接点部材1の接触部52の接地部分は、直線状に傾斜させた構成にしたが、図7(a)に示すように、接触部C62の接地部分を湾曲させて構成してもよい。このため、可動接点部材C11の反転動作の繰り返しによる、周辺固定接点5及び接触部C62の摩耗を低減することができる。このことにより、スイッチ装置の寿命をより延ばすことができる。
【0047】
<変形例2>
上記実施形態では、可動接点部材1の接触部52が設けられているスカート部12は、直線状に傾斜させた構成にしたが、図7(b)に示すように、スカート部C22に上方側に折り曲げた屈曲部KKを設けても良い。このことにより、可動接点部材C21のストロークを大きくすることができる。
【0048】
<変形例3>
上記実施形態の可動接点部材1の膨出部11の裏面側(中央固定接点3と接触する側)に、小さい凸状の突起をいくつか設けても良い。このため、可動接点部材の反転動作に全く影響せずに、可動接点部材と中央固定接点3との接触を確実にできるとともに、摩耗粉によるコンタクト不良を低減することができる。このことにより、可動接点部材及び該可動接点部材を用いたスイッチ装置の長寿命化が図られる。
【0049】
<変形例4>
上記実施形態では、スカート部12の切欠部32と接触部52との繋ぎ部分42(図2(b)を参照)は、屈曲してつながるように構成にしたが、緩やかに繋がって構成した方がより好ましい。このことにより、繋ぎ部分にかかる応力が緩和して、可動接点部材1の寿命をより延ばすことができる。
【0050】
<変形例5>
上記第2実施形態の操作部材6と可動接点部材1の間に、可撓性を有する合成樹脂製のフィルムを設け、収容部14を覆うように配置した構成にしても良い。このフィルムにより、可動接点部材1の収容部14からの飛び出しや収容部14内への塵埃の侵入や静電気を防止することができる。
【0051】
<変形例6>
上記第2実施形態では、可動接点部材1を反転動作させるために操作部材6を用いたが、操作部材6を用いない構成にして、可動接点部材1を指で直接押すようにしても良い。
【0052】
本発明は上記実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1、C11、C21 可動接点部材
11 膨出部
11a 外周縁部
12、C22 スカート部
32 切欠部
52、C62 接触部
3 中央固定接点
4 スイッチ基台
14 収容部
5 周辺固定接点
DD ドーム半径方向
PS 切欠面形状
SD 接線方向
201 スイッチ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム状に膨出し、押圧により反転動作可能な膨出部と、該膨出部の外周縁部から連続して形成されるスカート部とを有し、
該スカート部は、四方の箇所で切り欠かれた切欠部を有し、
前記スカート部の前記切欠部以外の箇所が接触部となっており、
前記スカート部の前記切欠部以外の箇所が接地可能箇所となるように、前記スカート部の前記切欠部は、前記膨出部側へ膨出しており、
前記スカート部が膨出していない状態で、前記切欠部の切欠面形状は、直線形状または緩やかな曲線形状となっていることを特徴とする可動接点部材。
【請求項2】
前記四方の前記切欠面形状は、対向する前記切欠面形状同士が平行な位置に、かつ隣り合う前記切欠面形状同士が直交する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の可動接点部材。
【請求項3】
前記スカート部は、前記膨出部の外周縁部におけるドーム半径方向に延びる接線の接線方向に略一致するように前記膨出部の外周縁部から連続して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可動接点部材。
【請求項4】
前記スカート部及び前記切欠部は、平板状の板材を外形形状に沿って切断した後、膨出を伴った塑性加工を行うことにより形成されていることを特徴とする請求項3に記載の可動接点部材。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の可動接点部材と、
該可動接点部材が収容される収容部を有するスイッチ基台と、前記収容部内に配設され、前記膨出部に離接される中央固定接点と、前記収容部内に配設され、前記接触部の少なくとも一つと接触する周辺固定接点と、を備えたことを特徴とするスイッチ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−227071(P2012−227071A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95582(P2011−95582)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】