説明

可塑剤としてグリセロールエステルを含有する水性ポリマー組成物

グリセロールのモノ−、ジ−及びトリエステルを含む可塑剤を含む水性ポリマー分散体を提供する。当該水性ポリマー分散体は、向上した膜形成特性を有し、水性塗料、シーラント、接着剤、つや出し剤、フィルム及びインクとして有用である。この可塑剤をポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレン又は他のオレフィン類とのコポリマー、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、エラストマースチレン/ブタジエンコポリマー、ネオプレンを含む、水性膜形成組成物において、従来から使用されている任意の有機ポリマーと一緒に使用することができ、他の可塑剤及び合体剤と適合性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年3月18日付けで出願された米国特許出願第12/406,511号の継続出願であり、その優先権を主張する。前記特許出願明細書の内容はこれを参照することにより本明細書中に完全に組み込まれる。
【0002】
本発明は、水性ポリマー組成物であって、他の添加物が存在しない場合にはこれらのタイプのポリマー組成物に有効な可塑剤として以前には記載されていなかった一群のグリセロールエステルを含有する水性ポリマー組成物に関する。このエステル群の好ましいエステルは、分散されたポリマーのガラス転移温度を効果的に低下させることに加えて、水性ポリマー分散体の予期せぬほど大幅な粘度増大を示した。
【背景技術】
【0003】
接着剤、シーラント、ワックス、つや出し剤、塗料を含む塗膜、オーバープリント・ワニス、及びインクとして使用するのに適した水性ポリマー組成物は、膜形成成分として、微粉砕状の膜形成ポリマーを懸濁物の形態で含有している。これらの組成物はまた典型的には、分散体を基板に適用する場合に連続膜の形成を支援するために界面活性剤、可塑剤及び合体剤として機能する1種又は2種以上の化合物を含んでいてもよい。
【0004】
合体剤の機能のうちの1つは、懸濁されたポリマー粒子が基板上に連続膜を形成するようになる、MFFTと呼ばれる最低温度を低下させることである。合体剤は典型的には揮発性であり、膜の適用後すぐに蒸発する。可塑剤も合着膜の形成を支援することができるが、可塑剤は不揮発性であり、従って適用された膜内に残り、望ましい特性、例えばポリマーの軟化をもたらす。
【0005】
合体剤とは区別される、水性膜形成組成物のための周知の可塑剤は、1995年8月15日付けでJones他に発行された米国特許第5,442,001号明細書に挙げられたエステル及びエーテルを含む。米国特許第5,442,001明細書はグリセロールのエステルを記載していない。
【0006】
国際公開第2008/054277号パンフレットには、「水性バインダー組成物」のための合体剤として、グリセロールと炭素原子数1〜5のカルボン酸とのトリエステルを使用することが記載されている。バインダー組成物は、水性の塗料、接着剤、及びシーラントにおいて有用であると記載されている。この出願の第2頁に示されているように、「本発明の低い可塑化特性は、硬質膜が許容し得る硬度発達率まで形成されるのを可能にする」。従って、グリセロールエステルは、適用された膜において可塑剤として機能しているとは考えられていない。
【0007】
米国特許第3,668,158号明細書には、プラスチック膜を非金属基板に付着させる際に使用するための水性ポリマーエマルションが記載されている。膜形成ポリマー、つまり1−オレフィンと低級カルボン酸のビニルエステルとのコポリマーに加えて、エマルションは、1)合体剤として、C2−C8グリコールのモノC1−C4アルキルエーテルと、C2−C4飽和モノカルボン酸との水溶性エステルを含有し、そして2)グリセリンとC2−C4飽和モノカルボン酸との「可塑化性エステル」を含有している。合体剤及び可塑化エステルの両方は、所望の付着力を達成するために必要となる。米国特許第3,668,158号明細書は、グリセロールの低級エステル(すなわちトリアセテート)がトリブチレートに対してより良好な性能を提供することを示している。
【0008】
本発明は、塗膜、接着剤、つや出し剤、及びシーラント、並びに他の最終用途として有用な多くの水性ポリマー分散体のために、分散体の所望の膜形成特性、及び最終的な膜によって示される特性の両方が、上記米国特許第3,668,158号明細書に記載されたアルキルエーテル合体剤なしで、特定クラスのグリセロールエステルを使用して改善されるという発見に基づいている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
水性ポリマー分散体の膜形成特性、及びこれらの分散体から形成された膜によって示される特性は、グリセロールのモノ−、ジ−及びトリエステルを含む可塑剤を使用して改善される。分散体は、水性の塗膜、シーラント、接着剤、つや出し剤、フィルム、及びインクとして有用である。本発明の可塑剤は、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレン又は他のオレフィン類とのコポリマー、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、エラストマースチレン/ブタジエンコポリマー、ネオプレンを含む、水性膜形成組成物において、従来から使用されている有機ポリマーのうちのいずれかと一緒に使用することができ、そして他の可塑剤及び合体剤と適合性がある。
【0010】
1)水性相、2)膜形成有機ポリマーの粒子を含む懸濁相、及び3)前記ポリマーを可塑化するのに有効な量のグリセロールエステルを含む水性エマルションを含んで成る水性膜形成ポリマー組成物を提供する。グリセロールエステルは、グリセロールのモノエステル、ジエステル、及びトリエステル、並びにこれらの混合物から成る群から選択される。使用することができるグリセロールエステルは、一般式:
【0011】
【化1】

【0012】
(上記式中、0〜2つのX基はヒドロキシルであり、そして1〜3つのX基は
【0013】
【化2】

【0014】
であり、
ここで、R1は−(CH2n−CH3であり、nは0〜5であり、
全てのR1基は同じであり、そして
nが0である場合、1〜2つのX基はヒドロキシルである)
を有している。
【0015】
水性膜形成ポリマー組成物を製造する方法を提供する。この方法は、膜形成ポリマーの水性分散体を形成するために、膜形成有機ポリマーの粒子を水性相中に分散する工程を含む。前記一般式のグリセロールエステルを膜形成ポリマーの水性分散体と、このポリマーを可塑化するのに有効な量でブレンドする。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本可塑剤は、水性組成物中に典型的に使用される多種多様の膜形成ポリマーと適合性がある。これらのポリマーの一例としては、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリビニルアセテート及びコポリマー(例えばエチレン/ビニルアセテートコポリマーを含む)、アクリル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンコポリマー、並びにネオプレンが挙げられる。
【0017】
有用なグリセロールエステルは、一例としてグリセロールモノ−及びジアセテート、グリセロールモノ−、ジ−及びトリプロピオネート、グリセロールモノ−、ジ−及びトリブチレート、そしてグリセロールモノ−、ジ−及びトリヘキサノエートまでを含む、グリセロールと炭素原子数2〜6のカルボン酸とのモノエステル、ジエステル、及びトリエステルを含むが、これらに限定されない。重要な態様において、エステルは、所望の水性ポリマー分散体と適合可能である。所与のエステルと水性ポリマー分散体との適合性は、所望量のグリセロールエステルとポリマー分散体とを所望温度でブレンドすることにより容易に見極めることができる。
【0018】
本発明は一つには、分散されたポリマー粒子の可塑化を最大にするため、及びポリマーのガラス転移温度を低下させるために、当該ポリマー分散体のエステル相の平均分子量は典型的には、好ましくは所望の可塑剤濃度レベルのところで、分散体からエステルが分離するには僅かに及ばないポイントまで最大化されるべきであるということを見出したことに基づく。この態様において、ポリマー分散体のエステル相の平均分子量は、約239〜約386である。本グリセロールエステル及びそのブレンドは典型的には、水性膜形成ポリマー組成物の約0.1〜約50重量パーセント、好ましくは約0.1〜約20重量パーセントを占める。
【0019】
別の態様の場合、グリセロールエステルは、グリセロールのトリ−、ジ−及びモノエステルのブレンドを含む。この態様において、グリセロールエステルは、約15部〜約25部のモノエステルと、約45部〜約55部のジエステルと、約25部〜約35部のトリエステルとのブレンドである。重要な態様において、ブレンドは約20部のモノエステルと、約50部のジエステルと、約30部のトリエステルとを含む。
【0020】
グリセロールエステルは、水性ポリマー組成物中の唯一の可塑剤として使用されることができる。或いは、これらのエステルは、水性ポリマー分散体中に、従来から使用されている可塑剤のうちの1種又は2種以上と組み合わせて使用してもよい。これらの追加の可塑剤の一例としては、a)単官能性アルコールと単官能性酸との反応;b)グリコール又はジオールと単官能性酸、例えば安息香酸との反応、又はc)アルキル又は芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸と単官能性又は多官能性アルコールとの反応から誘導されたエステルが挙げられるがこれらに限定されない。安息香酸のエステルが、ヘキサヒドロフタル酸とも呼ばれる異性体シクロヘキサンジカルボン酸のモノ−及びジエステルとともに、補助可塑剤の好ましいクラスである。使用することができる他の可塑剤の一例としては、次の群、すなわちシトレート、スルホンアミド、アルキルスルホン酸エステル、アジペート、低分子量飽和ポリエステル、イソブチレート、グルタレートから成る群のうちの適合性のある員が挙げられる。
【0021】
本発明の水性ポリマー組成物中の可塑剤として適したグリセロールエステルの多くは、商業的に入手可能である。入手できないものは、グリセロール及び炭素原子数2〜6のモノカルボン酸を要する周知のエステル化反応を用いて調製することができる。グリセロールに対する酸のモル比は、最終エステル中に望まれる1分子当たりのエステル化ヒドロキシル基の平均数と実質的に同等となる。トリブチルエステルの場合、この生成物は、n−ブチル又はイソ−ブチル又はエステルの混合物として商業的に入手することができる。
【0022】
別の態様において、高級グリセロールエステル、例えばトリブチレートの不快臭は、一例としてジュニパー油を含む少量の香料を使用してマスキングすることができる。酪酸の混合エステルは臭気が極めて少ない。
【0023】
本発明の可塑剤を含有する水性ポリマー分散体は、これらの組成物を調製するためのコンベンショナルな技術を使用して調製することができる。典型的には、グリセロールエステル又はこれらのエステルの混合物は、膜形成ポリマーの攪拌された水性分散体に添加される。分散されたポリマー及び水に加えて、分散体は、一例として界面活性剤、合体剤、湿潤剤、顔料及び色素を含む、水性ポリマー分散体内に典型的に存在する追加の成分のうちの1種又は2種以上を含有することができる。
【0024】
本発明の可塑剤は、水性膜形成組成物中に従来から使用されている任意の有機ポリマーと一緒に使用することができる。本発明の水性組成物中に使用するのに適したポリマーの一例としては、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレン又は他のオレフィンとのコポリマー、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、エラストマースチレン/ブタジエンコポリマー、及びネオプレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
本発明のグリセロールエステル可塑剤は、数多くの最終用途のための多種多様の水性ポリマーエマルション中で単独で、或いは前述の周知の可塑剤との組み合わせにおいて好適である。これらの用途の一例としては、接着剤、ワニス、塗料、及び他のタイプの保護・装飾塗膜、コーキング剤、シーラント、つや出し剤、インク、及び保護フィルムが挙げられる。
【0026】
本発明のエステルの環境的に重要な利点は、石油系のアルコール及び酸とは対照的に自然発生材料から得られるグリセロール及びカルボン酸を使用してこれらを調製し得ることである。
【0027】
水性ポリマー分散体の膜形成特性、及びこれらの分散体から形成された膜によって示される特性は、グリセロールのモノ−、ジ−及びトリエステルを含む可塑剤を使用して改善される。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
下記の例は、本発明の可塑剤及び可塑化された組成物の好ましい態様を記載している。これらの例は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。他に断りのない限り、全ての部及びパーセンテージは重量に基づくものであり、報告された測定値及び他のデータは周囲条件下で得られたものである。
【実施例】
【0032】
例1:エステルの調製
グリセロールトリブチレート、グリセロールトリオクトエート及びグリセロールトリアセテートと以後呼ぶエステルを商業的供給元から購入した。
【0033】
グリセロールモノ−、ジ−及びトリブチレートの混合物と呼ぶエステル組成物を、以下の手順を用いて調製した。
【0034】
攪拌機、不活性ガス入口、充填蒸留塔、及びエステル化反応の副産物として形成された水を捕集する手段を備えた4口ガラス反応容器内に、以下のタイプ及び量の反応物質を装入した:259部のグリセリン、491部の酪酸、及び、エステル化触媒としての0.26部の炭酸ジルコニウム及び0.13部のシュウ酸錫。結果として生じた混合物を230℃の温度に加熱し、そして副産物の水を捕集した。エステル化過程に続いて、ガスクロマトグラフィ及び酸価の測定を行った。反応完了に続いて、反応混合物を、炭酸ナトリウムを使用して中和し、漂白し、そして水で洗浄した。結果として生じた混合物は、ほぼ20部のモノエステルと、50部のジエステルと、30部のトリエステルとを含有した。
【0035】
例2:接着剤の調製及び評価
グリセロールトリブチレート、モノ−、ジ−及びトリブチルエステルの混合物、及びグリセロールトリオクトエートを、商業的に入手可能な2種の水性ポリマー分散体中で評価した。グリセロールトリアセテート、及びBenzoflex(登録商標)LA 705として入手可能な商業的な安息香酸エステル可塑剤も、比較目的で評価した。
【0036】
分散体のうちの1つは、Pace(登録商標)383として識別されるForboの製品であり、ポリビニルアセテートホモポリマーを含有した。第2の分散体である、Airflex(登録商標)400として識別されるWacker Chemieの製品は、ビニルアセテート/エチレンコポリマーを含有した。
【0037】
均一の分散体を形成するために、ポリマー分散体を下記表で指定した量のエステルとブレンドすることにより、分散体のそれぞれから可塑化ポリマー組成物を調製した。グリセロールトリアセテートを含有する組成物、及び商業的な安息香酸エステルを対照として使用した。
【0038】
コポリマーエマルション中8パーセント、及びホモポリマーエマルション中12パーセントの濃度でグリセロールトリオクトエートを単独で含有する安定な分散体は、このエステルとポリマーとがこれらの濃度レベルでは適合性がないことにより、調製することができず、さらに評価することはしなかった。
【0039】
ポリマー組成物は、次の量のポリマー分散体及びエステルを含有した:
Pace 383−100部+評価しようとするエステル又はブレンド8、10又は12部。
Airflex 400−100部+評価しようとするエステル又はエステル・ブレンド3、5又は7部。
【0040】
可塑剤を含まない2種のポリマー分散体の例も対照として評価した。
【0041】
500rpmで動作するCaframo(登録商標)ミキサーを使用して、ポリマー分散体とエステルとのブレンドを10分間にわたって調製した。下記表に示された時点で接着剤の粘度を測定した。
【0042】
結果として生じたブレンドを、下記試験を用いて評価する前に72時間にわたって静置させておいた。
【0043】
適合性
Tg抑制(適用された膜上)
分散体のそれぞれを使用して適用された膜の開放時間
それぞれの分散体を使用して適用された膜の硬化時間
【0044】
これらの特性は、下記手順を用いて測定した:
適合性
3ミル厚の膜(湿潤時)をきれいなガラス板上にドローダウンした。板を24時間にわたって水準面上に乾かしておいた。次いで膜を、不透明さ、浸出、及び/又は表面欠陥の存在によって証明される不適合の兆候に関して試験した。
【0045】
粘度
可塑剤中にブレンドしてから1、24及び72時間後、又は1及び5日後に、25℃でBrookfield (RVT)粘度計を使用して測定を行った。粘度は、測定値を記録する前の30秒間にわたって安定にしておいた。
【0046】
Tg抑制
接着剤膜を6ミル厚でドローダウンし、そして周囲条件下で48時間にわたって乾かしておいた。次いで膜をカットして、 TA機器DSC 2920を使用して分析のために準備した。加熱速度10℃/分を用いて−60℃〜105℃で分析を行った。報告されたTg値は、転移開始時に求めたものである。
【0047】
硬化時間
2バー法を用いて硬化時間を測定した。一方のバーは、接着剤の適用量を計量するために使用され、他方のバーは、2つの基板を押し合わせるために使用される。計量バーは#16 Meyerロッドであった。使用された基板は50lbの被覆されていない未漂白クラフト紙であり、試験は周囲条件で行った。試験ストリップは1.5インチ幅(ボトム)又は1インチ幅(トップ)であり、12インチ長さであった。トップ・ストリップをボトム・ストリップ上でセンタリングし、締め付けた。約1ミリリットルの接着剤をクランプに置き、トップ基板をボトム基板に最小限の圧力で重ね合わせた。集成体をすぐにクランプから取り外し、タイマーをスタートさせた。ストリップを剥離させ、基板の幅方向の繊維引き裂けが80〜100%になるまでの時間を記録した。この時間が硬化時間である。
【0048】
3バー法(1つのバーは計量のために、そして2つのバーは基板の重ね合わせのために使用される)を用いた。50ボンドの未漂白クラフト紙を基板として使用し、試験条件は23℃及び50%のRHであった。#16 Meyerロッドを使用して接着剤を計量した。紙ストリップのサイズは、硬化時間を測定するための手順に記載したものと同じであった。#14 Meyerロッド及び1/4インチ直径のドローダウン・ロッド(押し下げ)を輪ゴムで組み立てた。2片の紙を硬化時間におけるように締め付け、トップシートが2つのバーの間をくぐるようにすることにより、1/4”ロッドが押し下げロッドになるようにした。2つのバーの真下に位置するボトム基板の地点に、約1ミリリットルの接着剤を置き、#16 Meyerロッドでドローダウンした。タイマーをスタートさせ、そしてトップ・ストリップをボトム・ストリップに重ね合わせる前に、接着剤を「開放」した状態にしておく、すなわち雰囲気条件に曝しておいた。結合が形成されている場合には、接着剤がもはや結合を形成することができない時点に達するまで、手順を繰り返した。開放時間は、接着剤の適用時点と、申し分ない結合を得ることができる状態に基板を1つにまとめた時点との間の最大時間間隔である。
【0049】
前述の試験の結果を下記表にまとめる。比較例を文字「C」によって示す。
全ての部は、ポリマー分散体100部当たりの重量部である。
【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
種々の個々の可塑剤の適合性を試験した。不適合であることが見いだされた唯一つのものはグリセロールトリオクタノエートであった。この可塑剤に対する試験は中止した。
【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
【表8】

【0056】
【表9】

【0057】
【表10】

【0058】
データは、モノ、ジ、トリブチレート・ブレンドが、商業的な標準対照Benzoflex LA 705と対比して、思いがけなく良好に機能することを示している。粘度応答は極めて良好であった。グリセロールトリブチレートも上記接着剤中で、トリアセチン(より効率的)及びBenzoflex LA 705と対比して機能する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)水性相、2)膜形成有機ポリマーの粒子を含む懸濁相、及び3)前記ポリマーを可塑化するのに有効な量のグリセロールエステルを含む水性エマルションを含んで成る水性膜形成ポリマー組成物であって、
該グリセロールエステルが、グリセロールのモノエステル、ジエステル、及びトリエステル、並びにこれらの混合物から成る群から選択され、
該グリセロールエステルが、一般式:
【化1】

(上記式中、0〜2つのX基はヒドロキシルであり、そして1〜3つのX基は
【化2】

であり、
ここで、R1は−(CH2n−CH3であり、nは0〜5であり、
全てのR1基は同じであり、そして
nが0である場合、1〜2つのX基はヒドロキシルである)
を有している水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項2】
前記エステルがトリエステルである、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項3】
1の炭素原子数が2〜5である、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項4】
該膜形成ポリマー組成物が、前記膜形成ポリマー組成物の総重量を基準として0.1〜50重量パーセントのグリセロールエステルを含んでいる、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項5】
前記有機ポリマーが、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレン又はオレフィン類とのコポリマー、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンエラストマー、ネオプレン並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項6】
前記有機ポリマーが、接着剤、塗膜、オーバープリント・ワニス、コーキング剤、シーラント、インク及び床磨き剤、及び自己支持型膜の用途のための組成物から成る群から選択される組成物の膜形成成分である、請求項5に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項7】
前記組成物が、フタレート、テレフタレート、シトレート、スルホンアミド、アルキルスルホン酸エステル、アジペート、低分子量飽和ポリエステル、イソブチレート、グルタレートから成る群から選択される少なくとも1種の追加の可塑剤を含有している、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項8】
前記組成物が、1)安息香酸と、一価アルコール、二価アルコール、単量体グリコール及びオリゴマーグリコールとのエステル、並びに2)1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素原子数1〜6の一価アルコールとのエステルから成る群から選択される少なくとも1種の追加の可塑剤を含有している、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項9】
前記有機ポリマーが、接着剤、塗膜、オーバープリント・ワニス、コーキング剤、シーラント、インク及び床磨き剤、及び自己支持型膜の用途のための組成物から成る群から選択される組成物の膜形成成分である、請求項8に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項10】
該グリセロールエステルは、約15部〜約25部のモノエステル、約45部〜約55部のジエステル、及び約25部〜約35部のトリエステルのブレンドである、請求項1に記載の水性膜形成ポリマー組成物。
【請求項11】
水性膜形成ポリマー組成物の製造方法であって、
膜形成ポリマーの水性分散体を形成するために、膜形成有機ポリマーの粒子を水性相中に分散する工程;そして
グリセロールエステルを該膜形成ポリマーの水性分散体と、該ポリマーを可塑化するのに有効な量でブレンドする工程
を含み、該グリセロールエステルが、グリセロールのモノエステル、ジエステル、及びトリエステル、並びにこれらの混合物から成る群から選択され、
該グリセロールエステルが、一般式:
【化3】

(上記式中、0〜2つのX基はヒドロキシルであり、そして1〜3つのX基は
【化4】

であり、
ここで、R1は−(CH2n−CH3であり、nは0〜5であり、
全てのR1基は同じであり、そして
nが0である場合、1〜2つのX基はヒドロキシルである)
を有している水性膜形成ポリマー組成物の製造方法。
【請求項12】
前記エステルがトリエステルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
1の炭素原子数が2〜5である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
該膜形成ポリマー組成物が、前記膜形成ポリマー組成物の総重量を基準として0.1〜50重量パーセントのグリセロールエステルを含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記有機ポリマーが、ポリビニルアセテート、ビニルアセテートとエチレン又はオレフィン類とのコポリマー、アクリルポリマー、アクリル/スチレンコポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンエラストマー、ネオプレン並びにこれらの混合物から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記有機ポリマーが、接着剤、塗膜、オーバープリント・ワニス、コーキング剤、シーラント、インク及び床磨き剤、並びに自己支持型膜の用途のための組成物から成る群から選択される組成物の膜形成成分である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、フタレート、テレフタレート、シトレート、スルホンアミド、アルキルスルホン酸エステル、アジペート、低分子量飽和ポリエステル、イソブチレート、グルタレートから成る群から選択される少なくとも1種の追加の可塑剤を含有している、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物が、1)安息香酸と、一価アルコール、二価アルコール、単量体グリコール及びオリゴマーグリコールとのエステル、並びに2)1,2−、1,3−、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、炭素原子数1〜6の一価アルコールとのエステル、から成る群から選択される少なくとも1種の追加の可塑剤を含有している、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記有機ポリマーが、接着剤、塗膜、オーバープリント・ワニス、コーキング剤、シーラント、インク及び床磨き剤、並びに自己支持型膜の用途のための組成物から成る群から選択される組成物の膜形成成分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該グリセロールエステルが、約15部〜約25部のモノエステル、約45部〜約55部のジエステル、及び約25部〜約35部のトリエステルとのブレンドである、請求項11に記載の方法。

【公表番号】特表2012−520928(P2012−520928A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500823(P2012−500823)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/026048
【国際公開番号】WO2010/107583
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(510153939)イーストマン スペシャルティーズ ホールディングス コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】