説明

可塑化混合物とその硬化方法

可塑化セラミックス成形用混合物及びこの混合物の硬化方法であり、この混合物は、無機粉末と、少なくとも1種の可塑化有機バインダーと、放射線硬化性モノマーと光開始剤と、水とからなり、硬化方法は、押し出し成形された混合物の表面に、押し出しに引き続いて電磁エネルギーを印加することによってその表面を硬化させるものである。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、ここにその開示を引用する、「可塑化混合物とその硬化方法」と題する、2006年11月29日に出願された米国仮特許出願第60/861585号の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、セラミックス粉末押出成形分野において、可塑化粉末混合物とその硬化方法に関し、特にセラミックス成形用粉末混合物及び押出成形後の混合物を電磁波照射によって硬化させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
可塑化の際の系の一部に液体を用いる塑性変形材料の成形において、比較的容易に成形可能なように材料の塑性を維持することと、自立性であり、成形した際に取り扱える成形体を作ることとの微妙なバランスが長年の課題となっている。これは、可塑化系の一部として液体を用いる偽塑性又はチキソトロピー性の材料について特に問題である。何故ならば、そのような材料は、この材料への剪断応力の印加を伴う成形プロセスにおいて特有に生じる「剪断減粘性(shear-thinning)」効果に起因して、成形直後に粘度が低下する傾向があるからである。
【0004】
一般に、塑性変形材料の粘度が低下するにつれて、それから成形された湿った構造体や成形品は、完全には自立性ではないために、形状が崩れてしまう傾向にある。反対に、自立性である最終押出成形体を作製するために塑性変形材料の粘度を増加させるにつれて、材料の成形に非常に高い圧力が必要となる傾向があり、これが転じて、重機器や、より頑丈な成形部材、および耐摩耗性部品を用いる必要があることを意味する。
【0005】
現在の技術において、とりわけ材料可塑化系の一部に液体が用いられている場合は、構造を変形させることなくしっかりと取り扱うことのできる薄肉自立性成形体を、塑性変形材料から形成することは非常に難しい。一般的に、この問題は、比較的厚肉な成形体を形成するか、もしくは、急冷又は急加熱により硬化できる材料から成形体を作製することにより解決されてきた。可塑化系の一部に液体が用いられている塑性変形材料から自立性成形体を形成した後は、機械的取扱いを可能にするために成形された材料を硬化させるか、粒状材料を焼結する前に、成形体を乾燥させて液体を除去することが必要である。
【0006】
特許文献1には、成形体に新たに成形された塑性変形材料の硬化方法が開示されている。この方法は、成形体の構成材料、極性分子、そして熱ゲル化点を有する高分子剤を含む材料に、107〜1013ヘルツの周波数の範囲内の電磁波を照射する工程を有している。この電磁波照射により、押出ダイから成形体が押し出されると同時に熱的なゲル化を生じる。
【0007】
また、特許文献2には、乾燥や焼成を行う前に、取扱い性を改善するための湿式押出セラミックス成形体の硬化装置及び方法が開示されている。例えば、押出成形によりハニカム形状に成形されたセラミックス成形体は、無機原料と、熱ゲル化点を有するバインダーなどの有機原料とを含む塑性変形材料から形成される。このセラミックス成形体がダイから押し出されるときに、このセラミック成形体はマイクロ波エネルギー場を通過して有機バインダーのゲル化点より高い温度に加熱される。その結果、セラミック成形体は硬化し、変形することなく容易に取り扱うことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5223188号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2995/0093209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記にもかかわらず、取扱いから乾燥まで成形された形を正確に保持できるような様式での湿式押出成形されたセラミックス成形体の成形には依然として数々の問題が残っている。従って、湿式押出法により成形されるセラミックス成形体における形状保持が、より効果的に達成される、最も好ましくは、既存の製造方法に対してより互換性のある装置および単純なプロセスを用いて達成される改良方法の開発にむけて精力的に研究が続けられている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、現行の製造方法に対して十分に互換性があるような様式で、湿式押出成形された塑性変形可能なセラミックス材料の表皮を瞬時に硬化させることができる改良方法を提供する。一般に、これらの結果は、押し出された材料の表面を瞬時に硬化させ、押し出された成形体の変形を最小限にするか又は回避するのに効果的な様式でセラミックス材料中の構成物質を瞬時に架橋させることができる、高効率な電磁波架橋ステップを用いることにより達成される。
【0011】
したがって、本発明の第1の態様は、セラミックス材料の安定した形状を製造する方法であって、最初に可塑化セラミックス粉末混合物を形成する工程を有してなる方法を含む。この混合物は、1種又は複数種の無機粉末、有機バインダー、および水に加え、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと少なくとも1種の光開始剤を含む。この無機粉末は、一般に、セラミックス形成粉末、すなわち、セラミックス材料または焼成の際にセラミックス材料に転化できる材料である。
【0012】
次いで、前記可塑化セラミックス粉末混合物は、例えばハニカム形状のような選択された形状に押出成形される、又は他の様式で成形される。次に、このように押し出された成形物は、その表面に、前記放射線硬化性モノマーの硬化及び典型的に架橋が開始されるのに効果的なエネルギーを有する電磁場の印加により処理される。
【0013】
また、本発明の別の態様は、セラミックス製品を製造する方法を含む。この方法によれば、セラミックス形成粉末と、可塑化有機バインダーと、水と、放射線硬化性モノマーと、光開始剤とを含む湿式可塑化セラミックス粉末混合物を押し出して押出プリフォームを得た後、この押出プリフォームの表面に、電磁場を印加して表面を硬化させる。次いでこのように処理されたプリフォームを加熱して前記粉末混合物を乾燥し、焼成してセラミックス製品を製造する。
【0014】
また、本発明のさらに別の態様は、セラミックス製品を製造するための可塑化セラミックス粉末混合物を提供する。この混合物は、少なくとも1種の無機粉末と、少なくとも1種の有機バインダーと、水と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、少なくとも1種の光開始剤を含む。この無機粉末は、セラミックスの粉末、又は、前記粉末混合物の焼成中における焼結や反応焼結によってセラミックスに転化できるセラミックス前駆体の粉末である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の湿式可塑化セラミックス混合物に関する印加した降伏応力対位置ずれをプロットしたグラフ
【図2】本発明にしたがって処理した湿式可塑化セラミックス混合物に関する印加した降伏応力対位置ずれをプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を添付の図面を参照して以下にさらに説明する。
【0017】
本発明の実施に使用するのに適した湿式可塑化セラミックス混合物は、無機粉末と、1種以上の可塑化有機バインダーと、放射線硬化性モノマーと、光開始剤と、水とにより構成されている。無機粉末、可塑化有機バインダー、及び水は、調製されたセラミックス混合物が、ハニカムのような複雑な形に押出成形されるのに適した可塑性を有する割合で含まれる。無機粉末は、成形体から水分を除去するための乾燥後の焼成中に、焼結又は反応焼結によりセラミックスの結合構造を形成しうるセラミックス材料の前駆体、又はセラミックス材料からなる。
【0018】
ほとんどの場合、複雑な成形体は連続した表面層や表皮を有して一体化されて押し出される。本発明の可塑化されたセラミックス混合物は、高い硬度及び湿潤強度を与え、且つ、表面欠陥の発生度を低減させる輻射処理を、効率的に施すことができる押出成形体を作製する際に特に有効である。具体的には、本発明の方法は、エアークラックや亀裂、溝等の欠陥が少ない表皮を有するセラミックス押出成形体を提供することができる。これらの表面欠陥が少なくなる特別な利点として、湿式押出成形体を乾燥及び焼成することによって製造される製品は、強度が増加している。
【0019】
本発明は、電磁波処理された可塑化混合物は、基本的に瞬時に硬化されるため特に好ましい。それゆえ、重合反応を確実におこすために、ラインスピードを低下させる必要がない。
【0020】
無機粉末70〜85質量%、水15〜25質量%、及び、1〜5質量%の可塑化有機バインダーを含むセラミックス粉末混合物のバッチには、良好な可塑性と成形特性が典型的に観察される。最良の押出特性を得るためには、混合物バッチに、随意的な固体滑剤、オイル、界面活性剤などを典型的に0.5〜2質量%の割合でさらに含んでもよいが、それより多い量、例えば、10質量%までの非溶媒オイルも慣習的に用いられる。
【0021】
上記押出成形可能な混合物の主成分又は副成分として有用な例示の無機粉末としては、粘土,タルク,アルミナ,シリカ,チタニア,アルカリ酸化物,アルカリ土類酸化物,コージエライト,チタン酸アルミニウム,ムライト,炭化ケイ素,窒化ケイ素,ZrO,ZnO,B,La,Pからなる群より選ばれる1種又は複数種の無機粉末が挙げられる。可塑化混合物が、タルク,アルミノシリケート系粘土,アルミナ、シリカ及びチタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種の無機粉末を含んでいることが好ましい。
【0022】
上記セラミックス粉末中に含まれる最も一般的な可塑化有機バインダーとしては、水溶性又は水分散性セルロース誘導体が挙げられる。かかるバインダーの例としては、「J. Reed著、Introduction of the Principles of Ceramic Processing、John Wiley and Sons、NY、1988年、第11章」に記載されているものなどのセルロースエステルが挙げられる。セルロースエステルの例としては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられ、これらのセルロースエステルは、METHOCEL(登録商標)やETHOCEL(登録商標)の商標名としてダウケミカル社から市販されている。
【0023】
湿式押出成形されたセラミックス材料の表面をより良好に架橋させて硬化させるためには、上記した可塑化混合物は、更に、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーを含んでいる。本明細書の目的を達成するためには、放射線硬化性モノマーは、活性化光又は電子線エネルギーに曝露されると重合する1つ又は複数のエチレン不飽和基を有する化合物である。活性化光は、可視光でも良いが、より典型的には、合成樹脂系の液体中の放射線硬化モノマーを重合させるのに従来用いられる周波数のUV光である。
【0024】
好適な放射線硬化モノマーとしては、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、N−ビニルアミド、スチレン、ビニルエーテル、ビニルエステル、エポキシなどが挙げられるがこれらに限られるものではない。湿式セラミックス混合物において効果的なものとしては、アクリレート官能性モノマー、特に、複数種のアクリレート官能基(メタクリレート官能基)を有する水溶性のアクリレート官能性モノマーが挙げられる。エポキシ基、ビニルエーテル基、又はチオレン基を含んでいるモノマーも極めて効果的である。
【0025】
これらの放射線硬化性モノマーは、少なくとも、湿った可塑化セラミックス成形体の表皮又は表面を迅速に硬化させるために効果的な割合で可塑化セラミックス混合物に添加される。かかる目的に有用な量は、セラミックス混合物と選択されたモノマーの特別な組成に応じて様々でありるが、日常の実験において容易に決定することができる。水溶性アクリレート官能性モノマーとUV照射に対して同等の感度を有するモノマーにおいては、可塑化混合物中において2〜8質量%の範囲内のモノマー濃度で通常効果的である。
【0026】
可塑化混合物は更に、放射線硬化性モノマーの重合及び架橋を開始するのに効果的な少なくとも1種の光開始剤を含んでいる。本明細書の目的のためには、光開始剤は、光を吸収することができ、放射線硬化性モノマーの重合を開始する反応種を形成できる組成物である。上記した放射線硬化性モノマーにおける上記目的に有用な光開始剤の例は、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ヒドロキシメチルフェニルプロパノン;ジメトキシフェニルアセトフェノン;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン;1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン;ジエトキシフェニルアセトフェノン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネート;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルホスフィンオキサイド;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4’−トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイド;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;(2−ベンジル2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン);ベンゾフェノン;ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロル−1−イル]チタニウム;2,4ホスフィンオキサイド;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート塩;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート塩;及びジアリルイオドイウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群より選択される1種又は複数種の化合物である。
【0027】
上述したモノマーの硬化の深さ及び表面硬化の最良のレベルを達成する、つまり、最も速く、効果的に湿式可塑化セラミックス混合物の表面又は表皮を硬化させるための光開始剤は、ケトン系及びホスフィンオキサイド系の開始剤からなる群より選択される。かかる開始剤の具体的な例としては、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルホスフィンオキサイドと1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを50:50で混合したブレンドが挙げられ、そのブレンドが、イルガキュア1850(登録商標)(チバスペシャリティケミカルズ社製、Basel, Switzerland)として市販されている。
【0028】
上述した混合物の各成分は、任意の順序で添加し、混合しても差し支えない。しかしながら、従来は、無機粉末と固体の有機成分を含む乾燥した成分を、完全に混合されるまでLittleford社製のミキサーでまず乾式で混合した後、水を含む湿った成分を乾燥混合物に添加して湿式混合する。次いで、湿った粉末バッチを、二軸スクリュー押出機等の押出機に供給し、そこで、可塑化され、成形ダイに通して押し出されて、湿式可塑化セラミックス成形体が形成される。かかるプロセスについては米国特許4,551,295(A)号明細書を参照されたい。
【0029】
既に例示したモノマー及び光開始剤が含まれた湿式可塑化セラミックス材料においてモノマーの重合及び架橋、そして表皮の硬化を最も効果的に開始する処理は、光の照射、とりわけUV光の照射である。押出ダイから押し出された直後の湿式可塑化混合物に対して、選択した放射線を照射することが最も好ましい。
【0030】
本発明の重要な実施の形態において、安定化すべき湿式可塑化混合物は、ハニカム形状の構造、すなわち、押出方向に成形体中を長手方向に延びている開いた細長いセル通路を取り囲む交差壁により画成された複雑な断面の構造体に押し出される。このようにして製造された、乾燥され焼成されたハニカム構造体は、触媒や触媒担体、そして、燃焼プロセスからの、例えば、自動車のエンジン動作からの排気ガス処理に用いられるウォールフロー型のフィルターとして幅広く商業的に利用されている。これらの用途では、ハニカム構造は、一般的に、上記したように欠陥の発生にさらされるが、セラミックス混合物への既に開示したモノマーと光開始剤の添加と、押出成形後の迅速な放射線照射とによって、効果的に硬化されて、それゆえ、変形やクラックから保護することができる、一体化された何層もの表皮層を備えて押し出される。上記したように硬化された表面層を備えた押出し成形体は、後続の乾燥及び焼成に必要な処理を、取扱いによる損傷を受ける傾向が非常に少ない状態で、実施することができる。
【0031】
本発明を、特定の実施の形態を参照して以下に記載するが、その実施の形態は、制限よりも生命を意図したものである。
【実施例】
【0032】
ハニカム押出法によるセラミックスハニカム構造体の製造に好適な2つの代表的な湿式可塑化セラミックス粉末混合物を調製した。混合物は、基本的に、成形乾燥後のハニカムプリフォーム中に存在する粘土ータルクーアルミナ粉末の反応焼結によるコージエライトハニカムの製造に適用した粘土ータルクーアルミナバッチであった。
【0033】
以下の表1に、水以外の成分の、各バッチ内の組成比が列記されている。表1において、無機粉末成分の組成比は、各バッチの調合物について、全無機原料粉末に対する質量パーセントで示してある。添加物の組成比は、混合された無機粉末成分の100質量部に対して添加された質量部で記載されており、つまり、混合された無機粉末原料を超過して構成物として記載されている。
【表1】

【0034】
各無機粉末成分をまず、よく混ざり合うまで乾式混合し、次いでメチルセルロースとステアリン酸の混合物からなる有機バインダー系を、乾式混合された無機粉末中に添加し完全に分散されるまで混合した。次いで、水ビヒクルを、両方のバッチにおいて最終湿式粉末混合物の23.5質量%を構成するのに充分な比率で、各乾式混合物に混合しながら添加した。最後に、事前に混合しておいたジアクリレートモノマーとホスフィン系光開始剤からなる混合物のセラミックス架橋性モノマー系を、調製した湿式粉末混合物に添加して分散させた。本実施例では、モノマー系には、SR344(商標)PEG400DAモノマーを、光開始剤には、Irgacure(登録商標)1850を使用した。次いで、得られた最終的な混合物を、バッチを均質化し、可塑化するのに十分な時間に亘り、パドル混合を行った。
【0035】
次いで、評価のために、可塑化バッチをを脱気して圧縮し、リボン状及びハニカム状に押出成形した。厚さ4mm、幅26mmのリボン状サンプルは、600ワットの紫外線D−bulbを用いて50%の出力下でUV架橋させた。次いで、UV照射後のリボン状サンプルと、UV架橋されていない同一サイズのサンプルとの比較を、リボン状サンプルから切り出されたドッグボーン状サンプルの引っ張り試験により弾性率の違いを決定することにより行った。引っ張り試験を、2.54mm/minの引っ張り速度にて実施したところ、以下の表2に示されるように、UV照射後及び非照射後のサンプルに対して典型的なヤング弾性率が得られた。
【表2】

【0036】
表2に示されるデータからわかるように、バッチへのUV硬化性モノマーの添加にが、UV照射後の押出リボンのヤング弾性率の顕著な増加をもたらした。このことは、放射線照射による硬化が押し出しバッチの硬化に利用することができることを示している。UV照射された配合Bにヤング弾性率の増加がみられないのは、配合Aの硬さの増加が光重合によるものであり、水分の除去やメチルセルロースバインダのゲル化のような他の効果によるものではないことを示している。
【0037】
ハニカム表皮の硬さへの効果を確認する表皮架橋試験に用いるハニカムサンプルは、表1に示される配合Aの組成を有する可塑化粉末バッチから押し出された直径2.5cmの筒状のハニカム構造体とした。そのハニカム構造体は、断面セル密度600/in、セル隔壁厚150μmであった。
【0038】
押出ハニカムサンプルの半分には、リボン状サンプルの架橋に用いたものと同様のUV光源を用いて、それぞれのサンプルの表皮部分に15秒活性光が照射されるようにUV照射した。残りのハニカムは、UV架橋を施さなかった。
【0039】
図1と図2に、種々の架橋あるいは非架橋ハニカム構造体に対して球押込み強度試験を実施して得られた表皮降伏応力値を示す。この試験では、球押し込み試験機を使用して、測定する表皮降伏応力を、表皮への球押込み中の球の位置ずれ量の関数として測定した。図1は、UV照射前のS1−S5のサンプルのデータ、図2は、UV照射後のS1’―S5’のサンプルのデータを示しており、すべてのサンプルは、同じ押し込み条件で評価を行った。図1、2の2種類のタイプの負荷−位置ずれ曲線に示されるように、ハニカム表皮のUV硬化による効果により、2つのケースの最大応力の位置ずれ時において、たわみ負荷ピーク値は、架橋した表皮の方が、非架橋の表皮に対しておよそ3倍に増加している。このことは、架橋したサンプルが表皮破壊に対して高い抵抗力を有する証拠となる。
【0040】
上記実施例は、当然のことながら本発明の実施例の一部にすぎない。本発明は、クレームに記載の範囲内において、形状保持性の改良が必要なセラミックスやそのほかの無機粉末製品すべてに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末と、有機バインダーと、放射線硬化性モノマーと、光開始剤と、水とを含む可塑化セラミックス粉末混合物を調製し、
該可塑化セラミックス粉末混合物を押出成形して押出成形体を形成し、
前記押出成形体の表面に電磁エネルギーを照射して前記放射線硬化性モノマーの硬化を開始させる、
各工程を有してなるセラミックス押出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記電磁エネルギーが紫外光であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
セラミックス製品の製造方法であって、
無機粉末と、有機バインダーと、放射線硬化性モノマーと、光開始剤と、水とを含む可塑化セラミックス粉末混合物を押出成形して前記セラミックス製品のプリフォームを形成し、
前記プリフォームの表面に電磁エネルギーを照射して前記表面を硬化させ、
前記プリフォームを乾燥し焼成して、焼結済みセラミック製品を製造する、
各工程を有してなる方法。
【請求項4】
セラミックス製品を形成するための可塑化セラミックス粉末混合物であって、
少なくとも1種の無機粉末と、少なくとも1種の有機バインダーと、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーと、少なくとも1種の光開始剤と、水とを含むことを特徴とする可塑化セラミックス粉末混合物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の無機粉末が、粘土,タルク,アルミナ,シリカ,チタニア,アルカリ酸化物,アルカリ土類酸化物,コージエライト,チタン酸アルミニウム,ムライト,炭化ケイ素,窒化ケイ素,ZrO,ZnO,B,La,Pからなる群より選ばれることを特徴とする請求項4に記載の混合物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の有機バインダーが、セルロース誘導体を含むことを特徴とする請求項4に記載の可塑化セラミックス粉末混合物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の放射線硬化性モノマーが、1つ又は複数のエチレン不飽和基を有することを特徴とする請求項4に記載の混合物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の光開始剤が、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;ヒドロキシメチルフェニルプロパノン;ジメトキシフェニルアセトフェノン;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン;1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン;ジエトキシフェニルアセトフェノン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド;エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネート;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルホスフィンオキサイド;ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4’−トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイド;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン;(2−ベンジル2−N,N−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン);ベンゾフェノン;ビス(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロル−1−イル]チタニウム;2,4ホスフィンオキサイド;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロアンチモネート塩;トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフェート塩;及びジアリルイオドイウムヘキサフルオロアンチモネートからなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載の可塑化セラミックス粉末混合物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の光開始剤が、ケトン系及びホスフィンオキサイド系の開始剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項4に記載の混合物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の光開始剤が、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4トリメチルペンチルホスフィンオキサイド又は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであることを特徴とする請求項4に記載の混合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511092(P2010−511092A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539283(P2009−539283)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/024416
【国際公開番号】WO2008/066800
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】