説明

可塑性油脂組成物の成形方法

【目的】 冷蔵状態で流通・保存した場合や、ヒートショックを受けた場合でも製品(成形された可塑性油脂組成物)が互いに付着せず、使用時における作業性に優れるように、可塑性油脂組成物を成形することができる可塑性油脂組成物の成形方法を提供すること。
【構成】 可塑性油脂組成物を、所定の断面形状を有するノズルを通して、溶液中に連続的に押し出し成形した後、乾燥する可塑性油脂組成物の成形方法であって、上記溶液として、あらかじめグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドを溶解した、エタノール溶液またはエタノール水溶液を用いることを特徴とする可塑性油脂組成物の成形方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マーガリン、ショートニング、バター等の可塑性油脂組成物の成形方法に関し、更に詳しくは、成形された可塑性油脂組成物が互いに付着して塊状にならない可塑性油脂組成物の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、パイ、クロワッサン、デニッシュペーストリー等の積層構造を有するベーカリー製品を作る際には、マーガリン、ショートニング、バター等の可塑性油脂組成物が使用されている。特に近年では、上記可塑性油脂組成物として、生地に練り込んだり折り込み易くするために、円柱状、角柱状、平板状等の形状に成形したものが広く使用されており、これらの形状に成形した可塑性油脂組成物を、生地に練り込んだ後、包アン機等の装置で連続的に練りパイを作る等して、上記ベーカリー製品を製造することが広く行われている。
【0003】上記成形した可塑性油脂組成物を成形する方法としては、可塑性油脂組成物の主原料である油脂、バター等と、副原料である乳化剤、酸化防止剤、色素、脱脂粉乳、デンプン質原料、糖類、食塩、増粘多糖類、香料、保存料、水等とを配合槽に仕込み、油脂の融点以上の温度で油中水型に乳化し、次いで可塑化装置で適度な硬さまで可塑化処理を行って可塑性油脂組成物を得、得られた可塑性油脂組成物を直ちに所定の断面形状のノズルを通して連続的に押し出し、切断して成形する方法や、可塑化後に一旦可塑性油脂組成物を箱詰めし、適当な温度条件で適当な期間エージングする等して適度な硬さに調整した後、高圧ポンプが設置された成型機に供し、ノズルを通して連続的に所定の断面形状に押し出し、切断して成形する方法が行われている。
【0004】しかし、上述の成形方法では、得られる成形された可塑性油脂組成物が、お互いに付着して塊状になり商品価値が失われるという問題がある。
【0005】そこで、上記問題を解消するために、種々の方法が提案されている。例えば、■可塑性油脂組成物の原料油脂の融点を上げる方法、■円柱状の可塑性油脂組成物では可塑性油脂組成物をノズルを通して連続的に一定の断面形状に押し出し、切断して成形した後、可塑性油脂組成物製品の原料油脂の融点よりもずっと低い温度にて冷蔵または冷凍して流通・保管する方法、■平板状の可塑性油脂組成物ではポリエチレンフィルムで平板を1枚づつ包装する方法等が行われている。更に、特開平5−199859号公報においては、■可塑性油脂組成物をノズルを介して成形しながら、−50℃から5℃に保持したエタノールまたはエタノール水溶液の冷却した液中に押し出す方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記■の方法では、成形した可塑性油脂組成物の口溶けが悪く、これを用いて焼成したパイ製品も食感が硬く口溶けが悪くなるという問題がある。また上記■の方法は、成形した可塑性油脂組成物製品がお互いに付着するのを防止するために、冷蔵または冷凍して流通・保管することを必要とする方法であるが、冷蔵では徐々に付着するため特に冷凍する必要が生じ、該冷凍に際しては多大なコストがかかる。また、上記■の方法では、包装用の特殊な設備が必要である。
【0007】また、上記■の方法では、押し出した可塑性油脂組成物表面の結晶化が進むために、その後の切断時における製品のお互いの付着は防止できるものの、エタノールまたはエタノール水溶液が除去されると、冷蔵保管条件では徐々に製品がお互いに付着し始め、やがて塊状になり、商品価値を失ってしまう。また夏場等、製品が取扱の不備により常温に放置される等のヒートショックを受けて製品が少しでも軟化してしまうと、たとえ再び冷凍、冷蔵で保管し直しても製品はお互いに付着した塊状のままであり、使用時の作業性が悪化し商品価値を失ってしまうという問題点があった。
【0008】従って、本発明の目的は、冷蔵状態で流通・保存した場合や、ヒートショックを受けた場合でも製品(成形された可塑性油脂組成物)が互いに付着せず、使用時における作業性に優れるように、可塑性油脂組成物を成形することができる可塑性油脂組成物の成形方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定の溶質を溶解させた溶液中で可塑性油脂組成物を成形後、乾燥することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】即ち、本発明は、可塑性油脂組成物を、所定の断面形状を有するノズルを通して、溶液中に連続的に押し出し成形した後、乾燥する可塑性油脂組成物の成形方法であって、上記溶液として、あらかじめグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドを溶解した、エタノール溶液またはエタノール水溶液を用いることを特徴とする可塑性油脂組成物の成形方法を提供するものである。
【0011】以下、本発明の可塑性油脂組成物の成形方法について更に詳細に説明する。本発明に用いられる可塑性油脂組成物としては、通常ベーカリー製品等に用いられる可塑性油脂組成物であれば特に限定されるものではないが、マーガリン、ショートニング、バター等、あるいはこれらを加工して油中水型に乳化した物等を好ましく挙げることができる。
【0012】本発明に用いられるノズルは、所定の断面形状を有するノズルであり、可塑性油脂組成物を所望の形状(断面形状)に成形するためのものである。上記ノズルの材質及び該ノズルが有する断面形状等は特に限定されるものではないが、該ノズルとしては、例えば、ステンレス板等を材質とし、円形、三角形等の形状の断面形状の穴が1個以上設けられているもの等を好ましく挙げることができる。
【0013】本発明に用いられる溶液は、あらかじめグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドを溶解した、エタノール溶液またはエタノール水溶液である。
【0014】上記グリセリン酢酸脂肪酸エステルとしては、エタノールまたはエタノール水溶液に均一に溶解する物であれば特に限定されるものではないが、例えば、構成脂肪酸の炭素数が6〜12までの飽和脂肪酸のエステルや、不飽和脂肪酸主体のエステル好ましく、具体的には、モノグリセリドまたはモノグリセリドとジグリセリドとの混合物に、無水酢酸を反応させ、次いで未反応物を除去して得られるもの、あるいは油脂とトリアセチル化合物とをエステル交換して得られるもの等が挙げられ、市販品を用いることができる。また、上記グリセリン酢酸脂肪酸エステルは、脂肪酸の種類と結合している酢酸の量とから、氷点下で液体の物から常温で固体の物まである。
【0015】本発明に用いられる中鎖脂肪酸トリグリセライドとしては、エタノールまたはエタノール水溶液に均一に溶解する物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数6〜10の中鎖脂肪酸とグリセリンとのエステルで、ヤシ油等の天然油脂を加水分解した後蒸留して得られた脂肪酸とグリセリンとをエステル化し、次いで精製して得られる物が好ましく挙げられ、市販品を用いることができる。
【0016】上記エタノール水溶液は、エタノールの含有量が50体積%以上の物であるのが好ましく、前記グリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドを均一に溶解させられるエタノール濃度の物が好ましい。
【0017】また、上記溶液におけるグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドの濃度が低過ぎると、製品表面でのグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドによる皮膜の形成が不十分となり、一方、濃度が高過ぎると、成形後の乾燥に手間がかかるので、上記溶液におけるグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドと、エタノール又はエタノール水溶液との配合割合は、グリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライド1〜50重量%、エタノールまたはエタノール水溶液50〜99重量%の比率として、混合、溶解させるのが好ましい
【0018】而して、本発明の可塑性油脂組成物の成形方法を実施するには、上記可塑性油脂組成物を、上記ノズルを通して、上記溶液中に連続的に押し出し成形した後、乾燥することにより行うことができる。
【0019】更に詳述すると、可塑性油脂組成物をエージングなしで成形する場合は、まず、コンビネーター、コンプレクター、ボーテーター等の急冷可塑化の製品出口に上記ノズルをつなげ、該ノズルを上記溶液中に設置する。そして、該ノズルを通して押し出した可塑性油脂組成物を、上記溶液中で、ワイヤー、カッター、高圧の上記溶液の噴射等の切断方法により、通常の使用に適した長さに切断する等して成形を行う。次いで、網等ですくい取り、乾燥してエタノール又はエタノール及び水を除去する(これにより、可塑性油脂組成物表面に極薄いグリセリン酢酸脂肪酸エステル及びまたは中鎖脂肪酸トリグリセライドの皮膜が形成される)ことにより、本発明の可塑性油脂組成物の成形方法を実施することができる。
【0020】この際、上記溶液の温度は、上記可塑性油脂組成物における油脂の融解温度以下の−40℃〜+30℃程度に保持しておくのが好ましい。また、上記乾燥の方法は特に限定されないが、乾燥中に製品の温度が上昇しない方法、例えば、真空乾燥、真空凍結乾燥等の方法が好ましい。
【0021】また、上記可塑性油脂組成物の可塑化後に一旦可塑性油脂組成物を箱詰めし、通常の温度条件及び期間にてエージング等を行い、適度な硬さに調整した後、成形することもでき、この場合には、高圧ポンプが設置された成型機の出口に上記ノズルをつなげ、該ノズルを上記溶液中に設置し、該高圧ポンプで押し出した可塑性油脂組成物を、上述した方法と同様に成形、乾燥することにより行うことができる。
【0022】本発明の可塑性油脂組成物の成形方法により得られる、成形された可塑性油脂組成物は、その表面にグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/又は中鎖脂肪酸トリグリセライドの極薄い皮膜が形成されてなるものであり、該可塑性油脂組成物の流通・保管に際しては、冷凍が不要であり、冷蔵乃至は可塑性油脂組成物の原料油脂の融点以下の温度で流通・保管しても互いに付着することのないものである。
【0023】
【実施例】以下、実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0024】〔実施例1〕パーム硬化油(融点40℃)30重量部、大豆硬化油(融点36℃)52重量部、モノグリセライド0.1重量部、レシチン0.08重量部、酸化防止剤0.01重量部及び5%カロチン液0.01重量部を混合し、配合槽で60℃で保持しつつ、更に、食塩1重量部、脱脂粉乳0.6重量部、バターフレーバー0.2重量部、水16重量部を加え、油中水型に乳化し、可塑性油脂組成物を得た。
【0025】別に、95体積%エタノール水溶液95重量部にグリセリン酢酸脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製,商品名,「ポエムG002」)5重量部を溶解してグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液を調製した。
【0026】次いで、上記可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、そのままコンビネーター出口に設置した、直径5mmの円形の穴61個を有するノズルを通して、5℃に保持した上記グリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。このものを真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0027】〔実施例2〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化して、製品の温度が15℃になるように冷却し、15kgを段ボールに流し込んだ。次いで、これを5℃で7日間、エージングした後、高圧ポンプと出口に直径5mmの円形の穴61個を有するノズルとが設置された成型機を用い、該ノズルを通して、実施例1と同様に5℃に保持したグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。該製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0028】〔実施例3〕可塑性油脂組成物として市販のバターを10℃で2週間保管後、高圧ポンプと出口に直径5mmの円形の穴61個を有するノズルとが設置された成型機を用い、該ノズルを通して、実施例1と同様に5℃に保持したグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。このものを真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0029】〔実施例4〕パーム硬化油(融点45℃)5重量部、パーム油(融点36℃)30重量部、大豆硬化油(融点36℃)30重量部、米油17重量部、モノグリセライド0.18重量部、酸化防止剤0.01重量部、5%カロチン液0.01重量部を混合し、配合槽で60℃で保持しつつ、更に食塩1重量部、脱脂粉乳0.6重量部、バターフレーバー0.2重量部、水16重量部を加え、油中水型に乳化して可塑性油脂組成物を得た。
【0030】別に、85体積%エタノール水溶液95重量部に中鎖脂肪酸トリグリセライド(花王(株)製,商品名,「ココナードMT」)5重量部を溶解して中鎖脂肪酸トリグリセライドの5重量%エタノール水溶液を調製した。
【0031】上記可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンプレクターにより急冷可塑化し、そのままコンプレクター出口に設置した、直径5mmの円形の穴61個を有するノズルを通して、0℃に調整した上記中鎖脂肪酸トリグリセライドの5重量%エタノール水溶液中に押し出しつつワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。
【0032】得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。該製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0033】〔実施例5〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、製品の温度が15℃になるように冷却し、15kgを段ボールに流し込んだ。次いで、これを5℃で7日間、エージングした後、高圧ポンプと出口に幅300mm、高さ30mmの穴を有するノズルとが設置された成型機を用い、ノズルを通して、実施例1と同様に5℃に保持したグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液中に押し出し、ギロチンカッターで長さ330mmに切断して成形した。得られた製品は長さ330mm、幅300mm、高さ30mmの平板状であった。該製品を1枚ずつ真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、内面にポリエチレンのコーティングが施された段ボール箱に10枚を詰めた。
【0034】〔実施例6〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、製品の温度が15℃になるように冷却し、15kgを段ボールに流し込んだ。次いで、これを5℃で7日間、エージングした後、高圧ポンプと出口に直径5mmの穴61個を有するノズルとが設置された成型機を用いてノズルを通して、実施例1と同様に5℃に保持したグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液中に押し出し、一方ノズル出口方向に直角に設置した噴射ノズルより5℃に保持したグリセリン酢酸脂肪酸エステルの5重量%エタノール水溶液を高圧で噴射させて、長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。このものを真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0035】〔実施例7〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を調製し、配合槽で55℃に保持した。別に、70体積%エタノール水溶液90重量部にグリセリン酢酸脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製,商品名,「ポエムG002」)10重量部を溶解してグリセリン酢酸脂肪酸エステルの10重量%エタノール水溶液を調製した。次いで、上記可塑性油脂組成物をを加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、そのままコンビネーター出口に設置した、直径5mmの穴61個を有するノズルを通して、20℃に保持した上記グリセリン酢酸脂肪酸エステルの10重量%エタノール水溶液中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。該製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いたボール箱に5kgを詰めた。
【0036】〔実施例8〕実施例1と同様にして可塑性油脂組成物を得、配合槽で55℃に保持した。別に70体積%エタノール水溶液90重量部にグリセリン酢酸脂肪酸エステル(理研ビタミン(株)製,商品名,「ポエムG002」)10重量部を溶解してグリセリン酢酸脂肪酸エステルの10重量%エタノール水溶液を調製した。次いで、上記可塑性油脂組成物を加熱殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、そのままコンビネーター出口に設置した、直径5mmの穴61個を有するノズルを通して、マイナス20℃に保持した上記グリセリン酢酸脂肪酸エステルの10重量%エタノール水溶液中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。該製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0037】〔比較例1〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、そのままコンビネーター出口に設置した、直径5mmの穴61個を有するノズルを通して、5℃に保持したエタノール中に押し出し、ワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0038】〔比較例2〕可塑性油脂組成物として市販のバターを10℃で2週間保管後、高圧ポンプと出口に直径5mmの穴61個を有するノズルとが設置された成型機を用い、該ノズルを通して、比較例1と同様に5℃に保持したエタノール中に押し出しつつワイヤーカッターで長さ20mmに切断して成形した。得られた製品は直径5mm、長さ20mmの円柱状であった。該製品を真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、ポリ袋を敷いた段ボール箱に5kgを詰めた。
【0039】〔比較例3〕実施例1と同様にして得られた可塑性油脂組成物を殺菌後、コンビネーターにより急冷可塑化し、製品の温度が15℃になる様に冷却し、15kgを段ボールに流し込んだ。このものを5℃で7日間、エージングした後、高圧ポンプと出口に幅300mm、高さ30mmの穴を有するノズルが設置された成型機を用いてノズルを通して、5℃に保持したエタノール中に押し出し、ギロチンカッターで長さ330mmに切断して成形した。得られた製品は長さ330mm、幅300mm、高さ30mmの平板状であった。該製品を1枚ずつ真空乾燥機で乾燥して最終製品(成形された可塑性油脂組成物)を得、内面にポリエチレンのコーティングが施された段ボール箱に10枚を詰めた。
【0040】以上、実施例1〜8、比較例1〜3によって得られた最終製品をそれぞれ段ボールに詰めたまま、−18℃、0℃、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃で保管し、3日後の製品の状態を比較した。結果を下記〔表1〕に示す。
【0041】
【表1】


【0042】
【発明の効果】本発明の油脂組成物の成型方法によれば、冷蔵状態で流通・保存した場合や、ヒートショックを受けた場合でも製品(成形された可塑性油脂組成物)が互いに付着せず、使用時における作業性に優れるように、可塑性油脂組成物を成形することができ、従来の方法よりもお互いに付着しにくく、作業性良好な可塑性油脂組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 可塑性油脂組成物を、所定の断面形状を有するノズルを通して、溶液中に連続的に押し出し成形した後、乾燥する可塑性油脂組成物の成形方法であって、上記溶液として、あらかじめグリセリン酢酸脂肪酸エステル及び/または中鎖脂肪酸トリグリセライドを溶解した、エタノール溶液またはエタノール水溶液を用いることを特徴とする可塑性油脂組成物の成形方法。