説明

可変な焦点距離を備えた電気活性な適応レンズ

【課題】焦点が調整可能で、電気的に制御可能な電気活性なレンズを提供する。
【解決手段】電気活性な液晶レンズの一般的な構造は、液晶層440が、パターン化された複数の電極420と接地電極460との間に挟まれている。前記パターン化された複数の電極420は、半径が所望の焦点距離により決定される、複数のリングの円形のアレイを有している。液晶440の電気光学的効果の結果、電気的に制御可能な複屈折が生じ、レンズに渡る位相プロファイルは、前記パターン化された複数の電極420に適当な電圧を印可することにより、調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、ここで参照によりその全体が組み込まれている、2005年1月21日に出願された米国仮出願No.60/645,839の優先権を主張している。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
加齢に関係する、目の光学的変化を矯正することは、平均余命が増加し続けるにつれて、ますます重要になっている。加齢に関係する、目の光学的変化の1つは、老眼であり、この場合、人々は、レンズの柔軟性が減少するために、近い物体の焦点を網膜上に合わせることが困難である。老眼は、通常、40代の人々に影響与え始めるため、この視力矯正に対する深刻な必要性がある。固定された集光特性を備えた眼科用レンズが、老眼そして他の状態を矯正するために、眼鏡及びコンタクトレンズとして広く用いられてきた。
【0003】
眼科用レンズは、これらが調整可能な集光度(focusing power)を有している(すなわち、集光度が静的ではない)ならば、最も有用である。調整可能な集光度により、眼には、複数の異なる距離の所の関心のある物体に焦点を合わせる外部での順応性が与えられる。調整可能な集光度を、機械的なズームレンズを用いて達成することができる。しかしながら、この機械的なアプローチにより、眼鏡がかさばり高価になる。
【0004】
様々な光学技術が、近視野と遠視野の両方を可能とするように、遠近両用レンズで利用されてきた。例えば、使用者は、各々に目に異なる集光度を提供する複数のレンズを使用することができる。1つは、近くの物体のためのレンズであり、他方は、遠くの物体のためのレンズである。代わりに、レンズの領域分割、遠近両用回折レンズ、又は他の分割技術を使用することにより、遠近両方の複数の物体が、網膜上に投影され、脳はこれら像を識別する。遠近両用回折レンズを除くと、これらの光学技術を用いた視野は小さい。さらに、虹彩がレンズの環状部分を通過する光線を遮断するため、これらの光学技術は、瞳孔が小さい場合、うまく働かない。矯正のための他の選択肢は、単眼視野レンズ(monovision lenses)を使用することである。この場合、各々の眼に異なる集光度が提供される。1つは、近くの物体のための集光度であり、他方は、遠くの物体のための集光度である。しかしながら、単眼視野レンズが用いられた場合、両眼の奥行き知覚(binocular depth perception)が影響される。
【0005】
電気的にスイッチ可能なレンズ(例えば、液晶の方向が電場の印可に応じて変化する、2つの導電プレートの間に挟まれた液晶の層を備えたレンズ)が、光学系での使用のために説明されている(例えば、Kowel,Appl.Opt.23(16),2774−2777(1984);Dance,Laser Focus World 28,34(1992)を見よ)。電気的にスイッチ可能なレンズでは、フレネルゾーンプレート電極構造を含む、様々な電極の構成が研究されてきた(Williams,SPIE,Current Developments in Optical Engineering and Commercial Optics,1168,352−357(1989);McOwan,Optics Communications 103,189−193(1993))。可変の焦点距離の液晶レンズが説明されてきた(Sato,Jap.J.Appl.Phys.24(8),L626−L628(1985))。しかしながら、眼鏡レンズの用途で液晶レンズを用いることは、焦点距離が変化される場合の低い回折効率と、液晶層の必要とされる厚さの結果から生じる遅いスイッチングタイムとを含む多くの因子にため、限定されている。調整可能な集光度を備えた改良されたレンズが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
レンズの焦点距離を調整するためのレンズのデザインと、対応する装置と方法とが提供されている。新しいデザインは、個々にアドレス可能な電極パターンに基づいている。ここでは、新しいデザインのうち2つの用途が説明されている。第1の用途により、焦点距離を複数の別々の値の間で切替えることが可能となる。一実施形態において、焦点距離は、初期の焦点距離とこの初期の焦点距離の整数の倍数との間で切替えられる。第2の用途により、焦点距離がデザインパラメータに基づく可能な最小値から無限大まで連続的に調整される、より一般的な使用が可能となる。この新しいデザインにより、上述の困難が克服される。
【0007】
より具体的には、調節可能に焦点を合わせ電気的に制御可能な電気活性なレンズが提供されている。電気的に制御可能な電気活性なレンズの焦点距離を、不連続に又は連続に調整するための方法も提供されている。電気的に制御可能な電気活性なレンズにより、かさばり非効率な機械的な動作なしで焦点距離が調整されることが可能となる。各々のビジョンのための視野が狭いコリドー(corridor)に限定され使用者が2つの像に直面する、遠近両用の、三焦点の、又は多重焦点の、眼鏡もしくはコンタクトレンズと、両眼の奥行き知覚が影響される単眼視野のレンズとは対照的に、電気活性なレンズ(electro-active)は、集光度を調整し、開口部全体が、各作動状態で、同一の集光度を有している。調節可能に焦点を合わせ電気的に制御可能なレンズから形成された装置により、異なる物理的なレンズの間で切替える必要なく、大きな視野と高画質とで調節可能な焦点合わせがもたらされる。このレンズの他の好都合な点には、コンパクト、比較的軽量、低コスト、及び低電圧と低電力消費とでの比較的容易な動作が含まれる。
【0008】
一実施形態では、1対の透明な基板の間に位置している液晶層と、MとLとを正の整数として各々の領域が前記液晶層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置している個々にアドレス可能なL個のサブ領域を備えた、M個の領域を有しているフレネルゾーンにパターン化された電極(Fresnel zone patterned electrode)と、前記液晶層と第2の透明な基板の内向きの面との間の導電層とを有している、調節可能に焦点を合わせ電気的に制御可能な電気活性なレンズが提供されている。前記フレネルゾーンにパターン化された電極の、個々にアドレス可能な複数のサブ領域は、同一の水平面にあることができ、これらサブゾーンは、電気的なショートを防止するように絶縁体により分離されており、又は前記フレネルゾーンにパターン化された電極の、個々にアドレス可能な複数のサブ領域は、各々が絶縁層により分離された2つ以上の水平面にあることができ、又は当該技術で知られているように他の構成を用いることもできる。
【0009】
初期の焦点距離Fの整数の倍数によりレンズの焦点距離を調整する方法であって、1対の透明な基板の間に入れられた液晶層を備えているレンズと、各領域がL個のサブ領域を有するM個の領域を有し、前記液晶層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置し、全てでM・L個の個々にアドレス可能な電極を有している、フレネルゾーンにパターン化された電極と、前記液晶層と第2の透明な基板の内向きの面との間の導電層と、前記電極の領域と導電層とに電気的に接続されている電気制御部とを提供することと、kを1からMLまでの一整数として、前記焦点距離をkFに調整するように、k個の個々にアドレス可能な電極の各々に同一の電圧を印可することとを有する方法が提供される。焦点距離は、Fから無限大に不連続に調整されることができる。
【0010】
(a)1対の透明な基板の間に入れられた液晶層と、この液晶層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置し、個々にアドレス可能な複数のリングからなる円形のアレイであり、L個の回折レベル(diffraction level)を有する、フレネルゾーンにパターン化された電極と、前記液晶層と第2の透明な基板のうち面の面との間の導電層と、電極領域と導電層とに電気的に接続されている電気的制御部とを提供することと、(b)所望の焦点距離(f’)を決定することと、(c)f’を設計焦点距離(design focal length)、λを設計波長(design wavelength)、rをm番目のサブ領域の半径として、前記フレネルゾーンにパターン化された電極のm番目の領域の面積を次の式を用いて計算することと、
【数1】

【0011】
(d)設計サブ領域(design subzone)を形成している個々にアドレス可能な複数の電極の数を決定するために、前記m番目の領域の計算された面積をL以上の整数で割ることと、(e)設計サブ領域内の、前記数の個々にアドレス可能な電極に同一の電圧を印可することとを有する、レンズの焦点距離を連続的に調整する方法が提供される。この焦点距離を連続的に調整するための方法は、工程(a)の前に、1つ以上の設計焦点距離を決定することと、全ての設計焦点距離が設計サブ領域内に形成されることを可能とする、前記フレネルゾーンにパターン化された電極内の最大のリングのサイズを計算することとをさらに有することができる。
【0012】
一実施形態において、電極領域は、パターン化されたITO(インジウムスズ酸化物)から形成される。各領域の位相遅延は、当該技術で知られているように、印可される電場を用いて液晶を再配向することにより変調される。
【0013】
ここで説明される調節可能に焦点を合わせ電気的に制御可能な電気活性なレンズは、現在の複数のアプローチに多くの利点を提供する。1つの利点は、レンズの集光度を調節可能に変化させる能力である。回折レンズの焦点距離は、前記電極領域の間隔により決定される。ここで説明されるレンズでは、電極パターンは、固定され、焦点距離を、前記複数の電極への電気駆動接続(electric driving connections)と印可される電圧とを直接変化させることにより変化させることができる。一実施形態では、前記個々にアドレス可能な電極領域により、近方視力(例えば、読書)と、中間視力(例えば、コンピュータスクリーン)と、遠方視力とを含む、異なる距離の視力のための矯正を可能となる。集光度は、距離計により直接、又は使用者により手動で調整されることができる。一実施形態では、複数の超小型電子回路がレンズに組込まれ、この結果、組立体はコンパクトである。また、電極構造は、眼に見えず、このことは、広い段々になった(terraced)液晶のアプローチに対して装飾上の好都合な点を提供する。電力の損失により、遠方視力(電流が全く供給されない場合に提供される集光度)は影響されないだろう。各動作状態で、開口部全体は、同一の集光度を有している。ここで一実施形態で説明されているフレネルゾーン構造により、眼科用レンズの用途のために必要とされる比較的大きな開口部が可能となる。ここで説明される本発明の他の好都合な点には、コンパクトなデザインと、軽量と、低コストと、低電圧及び低電力とでの比較的容易な動作とが含まれる。
【0014】
当該技術で知られているように、ここで説明されるレンズの焦点距離と対応するジオプトリ値とは、印可される電圧に応じて、正又は負になりうる。これらの変形例は、必要以上の実験なしで当業者に知られており、ここに含まれている。
【0015】
ここで用いられているように、「調整可能に焦点を合わせる(adjustable focusing)」は、レンズの焦点距離は、従来の光学レンズにおけるように、一距離で固定されていないことを意味する。調節可能に焦点を合わせるレンズの焦点距離は、当該技術で知られている手段により、複数の電極に印可される電圧を変化させることにより調整される。一実施形態では、焦点距離は、所望の距離のところの物体を見るように(provide vision)、使用者により調整される。「個々にアドレス可能な(individually addressable)」は、同一の、又は異なる電圧を、異なる複数の電極に独立に印可することができることを意味する。「電気的に制御可能な(electrically controllable)」は、当該技術で知られているような、液晶の配向状態のようなパラメータを制御し、又は変化させるために、電圧が印可されることを意味する。「連続的に調整する(continuously adjusting)」は、焦点距離が、初期の焦点距離の厳密な倍数ではない多くの異なる値に調整されることができることと、現在のパターン化された電極の作成技術の物理的な限界のため、あらゆる異なる焦点距離が達成可能であることを必ずしも意味しないこととを意味する。
【0016】
ここで用いられているように、「層(layer)」は、完全に一様なフィルムを必要としない。前記層が、ここで説明されているような、その意図された目的を実行する限り、複数の不均一な厚さ、割れ(cracks)、又は他の欠陥が存在してもよい。ここで用いられているように、「垂直な(perpendicular)」は、前記基板の面にほぼ垂直なことを意味する。光軸は、一般に、前記基板の面にほぼ垂直であることに留意されたい。ここで用いられているように、複数の電極の間の「非水平なギャップ(no horizontal gap)」は、垂直な方向に見られた場合に、複数の電極がこれら電極の間に全く間隔を有していない状況を含み、また、垂直な方向に見られた場合に、光学機器(optic)の回折効率を理論的な最大値、及びこの光学機器の(therein)全ての個々の値と範囲とから25%より大きく減少させない、複数の電極間の間隔がある状況を含む。
【0017】
本発明の装置は、人間、又は動物の視力の矯正と修正とのために用いられるレンズを含む、当該技術で知られている様々な用途で用いられることができる。これらレンズは、当該技術で知られているように、眼鏡に組み込まれることができる。これら装置は、また不必要な実験なしで当業者に知られているように、ディスプレイの用途で用いられることができる。本発明のレンズは、従来のレンズや光学機器と用いられることができる。本発明のレンズは、従来のレンズの一部として、例えば従来のレンズ、又は従来のレンズの組合せ内のインサートとして用いられることができ、本発明のレンズは、積み重ねられて用いられることができる。
【0018】
本発明は、見られる物体からの距離に基づいて集光度を調整するレンズを有している眼鏡を作成する際に有用である。一実施形態では、測距機構と、バッテリと、制御回路とがこの眼鏡に収容され、又は別の制御システムの一部である。一例として、測距機構は、眼鏡と所望の物体との間の距離を決定するように用いられる。この情報は、前記個々にアドレス可能な複数の電極に印可される電圧を調整するマイクロプロセッサに供給され、このマイクロプロセッサは、物体を見るための所望の位相伝達機能をレンズに与える。
【0019】
当該技術で知られているように、前記複数の電極に電圧を印可する様々な方法を用いることができる。当該技術で知られているように、バッテリ、又は他の方法を電圧を供給するために用いることができる。プロセッサと、マイクロプロセッサと、集積回路と、コンピュータチップとを含む、複数の電極に印可される電圧の全ての局面を制御する様々な方法を用いることができることが知られている。印可される電圧は、当該技術で知られているように、所望の位相伝達関数により決定される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】回折レンズの示す図である。グラフ(a)は、従来の回折レンズである。グラフ(b)は、連続する2次ブレーズプロファイルを有する回折レンズである。グラフ(c)は、バイナリー回折レンズである。グラフ(d)は、回折レンズの4値近似である。
【図2】回折レンズの構成を示す図である。
【図3】液晶セルを示す図である。
【図4】パターン化された複数の電極を備えた電気活性の液晶レンズの一般的な構造を示す図である。
【図5A】図5Aは、全ての電極が同一の平面にあり(1層構造)、隣り合うサブゾーンの間に小さな間隔がある構造を示す図である。
【図5B】奇数番の電極と偶数番の電極とが2つの水平な層に交互配置され、隣り合うサブゾーンの間に隙間が全くない構造(2層構造)を示す図である。
【図6】個々にアドレス可能な電極パターンを用いた、デジタル可変焦点距離の例を示す図である。
【図7】適当な分解能を備えた、電極の個々にアドレス可能な円形のアレイを用いた、焦点距離の連続調整を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明をよく理解するために、液晶セル、及び回折レンズのいくつかの基礎的概念と適応レンズ(adaptive lens)の原理を、ここで簡潔にまとめる。
【0022】
回折レンズ
回折レンズは、当該技術では、既知である。回折レンズの機能は、フレネルゾーンパターンによる近視野回折に基づく。構造体から生じている(emerging)各点は、球面波の放出体(emitter)としての役割を果たす。特定の観測点での光の場は、構造体全体にわたる放出された球面波の寄与の和である。様々な点から来る球面波の強め合う干渉により、前記観測点での高い強度が生ぜられ、高い回折効率に対応する。
【0023】
図1は、回折レンズの図を示している。グラフ(a)は、従来の屈折レンズ、グラフ(b)は、連続する2次ブレーズプロファイル(continuous quadratic blaze profile)を備えた回折レンズ、グラフ(c)は、バイナリー(binary)回折レンズ、グラフ(d)は、回折レンズの4値近似(4-level approximation)、である。
【0024】
図1のグラフ(a)は、従来の屈折レンズの一部を示している。この屈折レンズから2π位相遅れの複数倍を取り除くことにより、図1グラフ(b)に示されているように、回折レンズが得られる。各ゾーンの境界での位相のとびは、設計波長λに対して2πであり、各ゾーンでのブレーズプロファイルにより、焦点で完全な強め合う干渉が生じる。図1グラフ(c)と図1グラフ(d)とは、図1(b)の所望の位相プロファイル(phase profile)の異なる近似を示しており、各ゾーンでの複数のステップは、所望の位相プロファイルを近似するように用いられている。
【0025】
図2は、回折レンズの構成を示している。焦点距離(f)は、光軸に沿って示されている。半径(r)は、この光軸に垂直に示されている。半径(r)でレンズに入り焦点Fに到達する光が進む経路は、強め合う干渉を行なうために、焦点距離(f)に波長の整数(倍)を加えたものに同等であることに留意されたい。
【0026】
換言すれば、回折レンズの焦点距離(f)は、複数の前記ゾーンの周期(period)により決定される。光路長の違いは、波長の倍数である。m番目のゾーンに対して、f+mλが図2の直角三角形の斜辺であることに留意すると、
【数2】

【0027】
である。
【0028】
近軸近似(paraxial approximation)f>>mλに対して、複数の前記ゾーン又はゾーンの境界の半径(r)は、
【数3】

【0029】
により与えられる。ここで、rは、m番目のゾーン(m=1、2、3、・・・M)の外側半径、λは、波長、fは、焦点距離である。L値(L-level)回折レンズに対して、各ゾーンは、等しいサイズ(面積)のL個のサブゾーンからなる。L個のサブゾーンがあり、これらサブゾーンの各々は、異なる光学的な厚さを有しており、この結果、L個の位相レベル(phase level)があることに留意されたい。
m番目のゾーンのn番目のサブゾーン(n=1、2、3、・・L、Lは、各ゾーンでの位相レベルである。)の外側半径は、
【数4】

【0030】
により与えられる。
【0031】
これにより、rが周期的なフレネルゾーンパターンが決定される。周期は、rに等しい。rは、第1のゾーンの半径であり、全てのゾーンが同一の面積を有していることに留意されたい。前記回折レンズの焦点距離は、
【数5】

【0032】
である。
【0033】
上の複数の方程式は、ゾーンの周期を選択することにより焦点距離を変化させることができることを意味している。焦点距離p・fを備えたレンズに対して、各ゾーンのサイズ(面積)は、p・rである。
複数値(複数レベル)回折レンズ(すなわち、L位相レベル回折レンズ)の回折効率は、
【数6】

【0034】
により与えられる。
【0035】
表1は、1ジオプトリ回折レンズに対する様々なパラメータを示している。表1に見られるように、位相レベルの数が増加するにつれて回折効率は増加し、レンズの開口が大きくなるにつれて最後のサブゾーンの幅は減少する。
【表1】

【0036】
液晶セル
液晶セルは、当該技術で既知である。多くのセルの構成と液晶セルの操作とが、また、当該技術では、既知である。
【0037】
図3は、電気活性な液晶セルの実施形態の図を示しており、液晶の層が、伝導性の内面を有している2つのガラスのプレートの間に挟まれている。これらプレートの表面は、ポリビニルアルコール(PVA)又はナイロン6,6のような配向膜でコーティングされており、一様な分子配向を与えるようにラビングにより処理される。これら配向膜は、当該技術で知られているように、複数の矢印で示されている方向に研磨される(buffed)。電圧が、これらプレートの内側の導電性面に印可される。電気活性な媒質として液晶を用いる電気活性なセルにおいて、全てのゾーンは、同じ厚さを有しているが、異常ビーム(異常光線)(extraordinary beam)の屈折率は、電圧が媒質に印可された場合、液晶分子の再配向のために変化される。図3に示されているように、液晶分子の初期配向は、研磨の方向(buffering direction)により決定される。液晶分子の長軸(光軸)は、垂直に整列される。適切な電圧が印可された場合、この分子は、回転される。有効屈折率(n’)は、
【数7】

【0038】
により与えられる。ここで、n、nは、それぞれ、常ビームと異常ビームに対する屈折率、θは、分子の光軸と垂直軸との間の角度である。異常ビームは、最初、最大屈折率nを有している。印可された電圧の増加で、有効屈折率n’は、より小さくなり、飽和電圧が印可されると、分子の光軸は水平に整列し、有効屈折率n’は、最小に達し、nに等しくなる。(水平に偏光した)前記常ビームに対する屈折率は、常に同一である。この結果、電気光学(electro-optic)的な効果により、異常ビームの有効屈折率は、変調される。
【0039】
ここで説明された液晶セルにおいては、一基板上の導電性物質は、一様な層を形成せず、ここでさらに説明されるように、むしろ複数の電極のパターンが形成される。
【0040】
図4は、パターン化された複数の電極を備えた電気活性な液晶レンズの一般的な構造を示している。上部から底部へ、複数の層は、
410 基板、
420 パターン化された複数の電極(個々に制御可能な複数の電極)、
430 配向膜、
440 液晶、及び450 スペーサ(又は複数のスペーサ)、
430 配向膜、
460 接地、及び
410 基板からなる。
【0041】
具体的には、図4は、ここで用いられる電気活性な液晶レンズの一般的な構造を示している。液晶層430は、パターン化された複数の電極420と接地電極460との間に挟まれている。このパターン化された電極430は、当該技術で知られているように、ガラス基板上に堆積された伝導性のフィルムのフォトリソグラフィープロセスにより製造されてもよく、接地電極460は、一様な伝導層を有しており、この伝導層は、当該技術で知られているようないかなる方法でも形成される。前記パターン化された複数の電極は、ここで説明されるように、半径が所望の焦点距離により決定される、複数のリングの円形のアレイを有している。液晶440の電気光学的効果の結果、電気的に制御可能な複屈折が生じる。ここでさらに説明されるように、レンズに渡る(across)位相プロファイルは、前記パターン化された複数の電極に適当な電圧を印可することにより、調整される。
【0042】
前記導電性物質は、ここで具体的に説明される物質を含むどんな適当な物質でもよく、当該技術で知られている他の物質でもよい。酸化インジウム、酸化スズ、又はインジウムスズ酸化物(ITO)のような、前記導電性物質は、透明であることが好ましい。前記基板は、当該技術で知られているように、石英、ガラス、又はプラスチックのような所望の光伝達を提供でき、ここで説明される複数の装置と複数の方法とで機能することができるどんな物質でもよい。前記伝導層の厚さは、典型的に、30nmと200nmとの間である。この層は、適切な伝導を提供するように十分に厚くなければならないが、レンズの全体の構造に過剰な厚さを与えるほど厚くてはならない。パターン化された複数の電極420は、ここで説明され当業者に知られているリソグラフィー技術のようなフォトリソグラフィー技術を用いて形成されてもよい。
【0043】
図5Aは、全ての複数の電極が同一平面にあり(一層構造(one-layer structure))、隣のサブゾーンとの間に小さな間隔がある構造を示している。コントローラ即ちドライバ510は、複数の配線520により、複数のバイア(vias)即ち複数の接点530に接続され、これら接点530は、個々に制御可能な複数の電極540に接続されている。これら配線520は、絶縁層(図示されていない)により複数の電極540から電気的に絶縁されていてもよく、これら配線は、複数のバイア(前記絶縁層の複数の孔、又は経路)即ち複数の接点530を介して、複数の電極に選択的に接触されていてもよい。このタイプの接点製作は、製造リソグラフィーと、集積回路製造とでよく知られている。
【0044】
より具体的には、1つの層の、同心状で個々にアドレス可能な(個々に制御可能な)リング形状の複数の電極のレイアウトを示している。複数の配線520と絶縁を介した複数のバイアを無視すれば、このレイアウトは、電極の全てが単一の層にあるため、「一層」構造として規定されている。
【0045】
代わりに、複数の配線520は、同心状の複数の電極に対して径方向に延びているバス(図示されていない)に緊密に集められてもよい。
【0046】
他のパターン化された電極の形状が用いられてもよいことに留意されたい。例えば、六角形のアレイが、六角形の画素を有してもよく、グリッドのアレイが正方形の画素を有してもよい。また、不規則的な形状のセットが非対称の屈折障害を矯正するかもしれない。不規則な、又は複雑な形状の複数の電極が、特定の非対称な、非従来的な、又は高次の屈折障害を矯正するように製作されてもよい。加えて、これら電極は、液晶とより複雑な相互作用を生じるために、光軸の方向に可変な厚さを有していてもよい。
【0047】
代わりに、特に、1つのリング状の電極の幅の内側に2つより多い画素が適合するならば、複数の回折レンズを生ずるように、図5Aの同心状のリングを近似するように、高い画素密度を備えた複数のアレイを制御してもよい。このような高い画素密度の複数のアレイは、比較的複雑な形状を近似することもできる。
【0048】
図5Aに戻り、最も内側のリング状の電極を電極番号1を、そして外側に向かって16番目まで数え、最も外側の電極を規定しよう。前記最も内側の電極がリングの代わりに完全な円であっても好ましいことに留意されたい。しかし、図5Aは、対称性のためと、この最も内側のリング状の電極と共にバイア即ち接点530をより明確に示すために、リングを図示している。
【0049】
4値(4 level)、即ち4段階(4 phase)回折レンズを生ずるように、最も内側の4つのリングは、1つのゾーンに組にされている。この第1のゾーンは、最も内側の電極から外側に番号を付けて、電極1−4からなる。これら電極1−4の各々は、この第1のゾーンのサブゾーンである。第2のゾーンは、電極5−8からなる。第3のゾーンは、電極9−12からなる。第4のゾーンは、電極13−16からなる。16個の電極をこうして組織することにより、4つのゾーンを備えた4値(即ち、段階)の回折レンズが生ぜられる。
【0050】
各リング状の電極540は、上述したように、独立して配線520によりアドレス可能である。もし、全ての電極が1つの層に分布されているのならば、電気的に絶縁性の隙間が隣り合う複数の電極間になければならない。これら電極の間の隙間は、位相の歪みを生じることができ、この設計のシミュレーションでは、この位相の歪みが、回折効率と他の性能の尺度に大きく影響することができることが示されている。
【0051】
1層デザインの複数の電極の間の絶縁性の隙間により起こされる歪みを軽減するために、他の電極の構成を用いることができる。例えば、これらリング状の電極は、「2層」デザインを生じるように、2つの別個の層に分離されてもよい。
【0052】
具体的には、奇数に番号付けされたリングは、一方の電極層に位置されることができ、偶数に番号付けされたリングは、別の第2の電極層に位置されることができる。これら2つの電極層は、SiOのような絶縁層により分離されることができる。
【0053】
図5は、奇数に番号付けされた複数の電極と偶数に番号付けされた複数の電極とが2つの水平な層に交互配置され、隣り合うサブゾーンの間に隙間がない構造を示している(2層構造)。
【0054】
コントローラすなわちドライバ510は、複数の配線520を介して複数の前記電極に連絡し、これら電極は、複数の偶数番のリングを備えた層542と、複数の奇数番のリングを備えたそう544とに組にされている。これら2つの電極層は、絶縁層SiO544により分離されている。Crのアライメントマーク560も、フォトグラフィーの製造アライメントのために示されている。図5Aの隣接する複数のゾーンに対応して、ゾーンm 580、及びゾーンm+1 590も、示されている。
【0055】
図5Bには、2層電極パターンの断面が示され、奇数番、及び偶数番のリングが、2つの別の層に配置され、垂直な方向から見られた(光軸に沿って見られた)場合、2つの隣り合う電極の間に隙間はない。具体的には、ゾーンm 580は、rからrm+1に延び、全てで4つの電極を有している。ゾーン580のこれら4つの電極のうち2つは、偶数で番号付けされ層542にあり、ゾーンm580の残りの2つの電極は、層544にある。
【0056】
この場合、リング状の各電極540は、追加の層(図5Bには図示されていない)から、1層の場合のように複数のバイアを介して個々にアドレスされることができる。複数の前記配線520は、どんな都合のよい位置、又は層に位置してもよい。
【0057】
以下は、2層構造の形成の一例である。パターン化された複数の電極が適用される複数の基板に対して、複数のアライメントマーク560が導電層に堆積される。このアライメントマークには、Crのような、どんな適当な物質が用いられてもよい。これらアライメントマーク560により、前記基板に対する様々なフォトグラフィーの適当なマスクが可能となり、この結果、前記複数の電極がパターン化される場合に、これら電極の所望のフォトグラフィックの全体の規定を得る(have the desired total photographic definition)ために形成された「マスクの組」のうちの各マスクの使用と関連付けられたプロセスの工程で生ぜられる前記複数のパターンの適当なマスクが可能となる。パターン化された複数の電極のゾーンの一部は、当該技術で既知でここで説明された複数の方法を用いて導電層に形成される。SiO 550のような絶縁体の層は、パターン化された導電体の層に堆積されている。導電体からなる第2の層は、このSiO2に堆積され、前記パターン化された複数の電極のゾーンは、導電体からなるこの第2の層に形成されている。
【0058】
アライメント層(図示されていない)が、伝導体からなる第2の層に位置され、第2の基板の伝導体に渡って位置されている。このアライメント層は、一方向ラビング(unidirectional rubbing)のような、当該技術で既知の手段により作成される。現在用いられているアライメント層は、スピンコートされたポリビニルアルコール、又はナイロン6,6である。一方の基板のアライメント層が、他方の基板のアライメント層から反平行にラビングされる(rubbed)ことが好ましい。この結果、当該技術で知られているように、液晶が適当にアライメントすることが可能となる。液晶の層がこれら基板の間に位置し、これら基板は、ガラスのスペーサ、又は当該技術で知られているほかの手段で、(3ミクロンと20ミクロンとの間で離れているような)所望の距離離れて保たれている。複数のスペーサは、マイラー(Mylar(登録商標))、ガラス、又は石英、もしくは所望の間隔を与えるために有用な他の物質でもよい。効率的な回折を達成するために、1波長の活性化された遅れ(one wave of activated retardation)(d>λ/δn〜2.5μm、ここでδnは液晶媒質の複屈折)を与えるのに十分に厚くなければならないが、比較的厚い液晶層により、飽和現象が避けられる。比較的厚いセルの不都合な点は、(dに比例する)長いスイッチング時間と、電気活性な特徴の鮮明度(definition)の損失とである。複数の透明な基板はどんな距離でも離間されることができ、この結果、パターン化された電極の所望の数と、液晶層の所望の厚さとが可能となる。特定の実施形態では、これら透明な基板は、3乃至20ミクロンの間と、この中の(therein)全ての個々の値と範囲とで離間されている。1つの現在好まれる間隔は、5ミクロンである。
【0059】
動作に際して、屈折率を所望のレベルに変化させるのに必要とされる電圧がコントローラにより複数の前記電極に印可される。「コントローラ」は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、集積回路、IC、コンピュータチップ、並びに/もしくはチップを有し、又はこれらに含まれている。典型的には、約2Vrmsまでの電圧が複数の前記電極に印可される。位相が同期した、波形制御ドライバが、共通の接地構成で各電極の組に接続されている。ドライバの振幅は、同時に、最大限の焦点回折効率のために最適化されている。屈折率を所望のレベルに変化させるように必要とされる電圧は、当該技術で知られているように、液晶、又は用いられる液晶の混合物により決定される。
【0060】
図6は、個々にアドレス可能な電極パターンを用いた、デジタルの可変な焦点距離の例を示している。グラフ(a)は、始めの単一の電極の面積(すなわち、始めの構造の周期)により決定される基本の焦点距離Fに対応している。この構造の周期は、始めの単一の電極の面積である。焦点距離を、レンズの周期を増加させることにより、回折効率に影響を与えることなく、Fの倍数に増加することができる。グラフ(b)は、焦点距離2Fに対応している。図6Bの各ゾーン(サブゾーン)の面積は、図6Aの各ゾーン(サブゾーン)の面積の2倍である。回折効率は、両方の場合に同一である。
【0061】
1つの具体的な例では、特定の4段階レベルレンズ(4-phase level lens)の4つの電極に印可される電圧は、それぞれ、1.1V、1.31V、1.49V、及び1.72Vである。他の例では、特定の8段階レベルレンズの8つの電極に印可される電圧は、それぞれ、0.71V、0.97V、1.05V、1.13V、1.21V、1.30V、1.37V、及び1.48Vである。これら電極に印可される電圧は、不必要な実験無しで当業者により容易に決定され、当該技術で知られているように、用いられる液晶、セルの配置、及び他の因子の関数である。上述のように、電圧は、当該技術で知られているように、所望の焦点距離に応じて、正もしくは負になりうる。一実施形態では、これら電極に印可される電圧は、0.5乃至2Vの間と、この中の個々の値とサブ範囲とで、で正、又は負である。
【0062】
絶縁性の物質は、ここで具体的に述べた物質と、当該技術で知られている他の物質とを含む、いかなる適当な物質であってもよい。一実施形態では、導電性の物質と絶縁性の物質とは、交互のパターン、例えば半径が増加する複数の円、に配置されている。これらパターンは、ここで述べたような、所望の効果を与える円形の、半円形の、正方形の、角ばった、又は他の形状のようなどんな所望のパターンでもよい。用語「円形の、半円形の、正方形の、角ばった」と他の形状とは、完全な形状が形成されていることを意味するように意図されるのではなく、むしろ、この形状は、ほぼ形成され、当該技術で知られているように、前記基板を介して電流を運ぶ、バスライン又は他の手段を有することができる。
【0063】
どんな液晶も本発明で用いられることができる。ユーザが1つの焦点距離から他の焦点距離への切替えでの遅れに気がつかないように、スイッチング時間は十分に早いことが好ましい。ここで説明される特定の実施形態では、ネマチック液晶が電気光学的媒質として用いられる。この実施形態では、レンズは、光の2つの直交する偏光成分の一方に光学応答を有している。偏光に無感性のコレステリック液晶も用いられることができ、この場合には、偏光器は不要である。本発明で用いられる液晶は、電場で制御されることができる長距離配向秩序を有するネマチック、スメチック、又はコレステリック相を形成する液晶を含んでいる。液晶が、広いネマチック温度範囲と、容易な整列可能性(alignability)と、低い閾値電圧と、大きな電気活性反応と、早いスイッチング速度と、並びに、照明された安定性と、信頼性のある商業的利用可能性とを有していることは好ましい。1つの好ましい実施形態において、E7(Merckにより販売されているシアノビフェニルとシアノテルフェニルとのネマチック液晶混合物)が用いられる。本発明で用いられることができる他のネマチック液晶の例は、ペンチル−シアノ−ビフェニル(5CB)、(n−オクチロキシ)−4−シアノビフェニル(80CB)である。本発明で用いられることができる液晶の他の例は、化合物 4−シアノ−4−n−アルキルビフェニル、4−n−ペンチロキシ−ビフェニル、4−シアノ−4’’−n−アルキル−p−テルフェニルのn=3,4,5,6,7,8,9、及びBDH(British Drug House)−Merckにより作られているE36、E46、及びZLI−シリーズのような商業的な混合物である。
【0064】
本発明では、電気活性なポリマが用いられることもできる。電気活性なポリマは、J.E.Mark,American Institute of Physics,Woodburry,N.Y.,1996による「Physical Property of Polymers Handbook」に開示されているようなどんな透明な光学的な高分子材料も含み、Ch.Bosshard et al.,Gordon and Breach Publishers,Amsterdam,1995による「Organic Nonlinear Optical Materials」に開示されているようなドナーとアクセプターのグループの間の非対称な偏極した共役π電子を有している分子(発色団と称される)を含む。ポリマの例は、以下の通りである。ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール、ポリイミド、ポリシラン。発色団の例は、パラニトロアニリン(PNA)、ディスパース レッド1(DR1)、3−メチル−4−メトキシ−4’−ニトロスチルベン、ジエチルアミノニトロスチルベン(DANS)、ジエチル−チオ−バルビツール酸である。電気活性なポリマは、当該技術で知られているように、a)ゲストホスト方式(guest/host approach)に従い、b)発色団のポリマ(ペンダント(pendant)、及び主鎖)への共有結合(incorporation)により、並びに/もしくはc)架橋結合のような格子硬化法(lattice hardening approach)により、製造されることができる。
【0065】
本発明では、高分子液晶(PLC)が用いられることもできる。高分子液晶は、時には、液晶性ポリマ、低分子量液晶、自己補強ポリマ(self-reinforcing polymers)、インシトゥ複合材料(insitu-composites)、並びに/もしくは分子複合材料(molecular composites)とも称される。PLCは、A.A.Collyer,Elsevier,New−York−London,1992により編集され、W.Brostowによる「Liquid Crystalline Polymers:From Structure to Applications」の1章に開示されているような、同時に比較的に硬い配列と柔軟な配列とを含む共重合体である。PLCの例は、4−シアノフェニル安息香酸塩側基と他の同様の化合物である。
【0066】
本発明では、ポリマ分散型液晶(PDLC)も用いられることができる。PDLCは、ポリマのマトリックス中の液晶滴の分散からなる。これらの物質は、当該技術で知られているように、ネマチック曲線整列相(nematic curvilinear aligned phases)(NCAP)により、熱誘起相分離法(TIPS)により、溶媒誘起相分離法(SIPS)により、及び重合誘起相分離法(PIPS)により、複数の方法で形成されることができる。ODLCの例は、液晶E7(BDH−Merck)とNOA65(Norland products,Inc.NJ)との混合物、E44(BDH−Merck)とポリメチルメタクリレート(PMMA)との混合物、E49(BDH−Merck)とPMMAとの混合物、モノマー ジペンタエリトロルヒドロキシペンタアクリレート、液晶E7、N−ビニルピロリドン、N−フェニルグリシン、及び色素 ローズベンガルの混合物である。
【0067】
本発明では、ポリマ安定化液晶(PSLC)も用いられることができる。PSLCは、ポリマのネットワーク中の液晶からなり、ポリマが重量で液晶の10%未満を構成する物質である。光重合可能なモノマが液晶とUV光重合開始剤と共に混合されている。液晶が整列された後、モノマの重合が典型的にはUVへの露出により開始され、結果のポリマは、液晶を安定化させるネットワークを生じさせる。PSLCの例として、例えば、C.M.Hudson et al. Optical Studies of Anisotropic Networks in Polymer−Stabilized Liquid Crystals,Journal of the Society for Information Display,vol.5/3,1−5,(1997)、G.P.Wiederrecht et al,Photorefractivity in Polymer−Stabilized Nematic Liquid Crystals,J.of Am.Chem.Soc.,120,3231−3236(1998)を見よ。
【0068】
本発明では、自己組織化非線形超分子構造も用いられることができる。自己組織化非線形超分子構造は、電気活性な非対称の有機膜を有し、この有機膜を、以下のアプローチで作成することができる。ラングミューアブロジェット膜、水溶液からの多価電解質の交互の堆積(多価陰イオン/多価陽イオン)、分子ビームエピタキシ法、共有結合反応による逐次合成(sequential reaction)(例えば、有機トリクロロシランベースの自己組織化多分子層堆積)。これらの技術により、通常、約1μm未満の厚さを有する薄膜がもたらされる。
【0069】
ここでの非限定的な記述により、特定の例示的な実施形態のさらなる詳細が与えられるが、様々なレンズと電極との構成が様々な用途に対して有用である。例えば、レンズが液晶の溶液に浸されることができ、又は液晶が屈折率の変化の勾配を有する平面状電極プレートの間に挟まれることができる。後者により、液晶の整列がより容易になり、セルをより薄くし、この結果、より早いスイッチングが可能となる。加えて、様々な電極ゾーンの構成が、本発明の方法と装置とで用いられることができる。これらの様々なレンズと電極ゾーンとの構成と当該技術で知られているような他の構成とがこの開示に含まれるように意図されている。
【0070】
個々にアドレス可能なパターン化された複数の電極を備える新しいデザイン
以前のデザインの制限を克服するために、前記パターン化された電極の各電極サブゾーンは、個々にアドレスされなければならない。ここでは、2つの異なる例示的な用途が紹介される。一方は、基本的な(elementary)焦点距離とこの基本的な焦点距離の倍数との間のスイッチングを可能にする。他方は、より一般的であり、焦点距離の、可能な最小限から無限までの連続的な調整を可能とする。
【0071】
1:焦点距離の不連続な調整
図3に示されている液晶レンズの一般的な構造と、図5A又は図5Bに示されている電極パターンとを考えよ。レンズに渡る位相プロファイルは、前記パターン化された複数の電極に適当な電圧を印可することにより調整され、この位相プロファイルは、回折効率を決定する。
【0072】
前記パターン化された複数の電極の複数のサブゾーンに個々にアドレスすることにより、前記ゾーンの周期が増加することができ、この結果、回折効率を犠牲にせずに焦点距離が増加することができる。電極パターンがL位相レベル(phase level)位相変調を備えた焦点距離Fのために設計されていると仮定せよ。式(2a)、式(2b)、及び式(3)に基づくと、もし、あらゆる2つの隣り合うサブゾーンを1つの組にすることにより、すなわち、これら2つの隣り合う電極に同一の電圧を印可することにより、ゾーンの周期rが、2rに増加されるならば、焦点距離は、回折効率の変化を伴わずに2Fに変化される(図6)。同様に、固定された電極パターンで、ゾーンの周期を3r、4r、・・に増加させることにより、この焦点距離を、それぞれ、3F、4Fに変化させることができる。一般的に、ゾーンの周期をkrに増加させることにより、この焦点距離をkFに変化させることができる(kは、正の整数である)。
【0073】
前記個々にアドレス可能な電極パターンが、例えば3ジオプトリ(焦点距離F=33.33cm)の基本の集光度と8値位相ステップ(8-level phase step)とを備えている適応レンズのために設計されているならば、このレンズは、95%の回折効率を有する。前記周期を2倍に増加させることにより、焦点距離は、2F=66.67cm(集光度=1.5ジオプトリ)に増加される一方で、効率は、依然として95%である。前記周期を3倍に増加させることにより、焦点距離は、1ジオプトリの集光度に対応する、3F=100cmに増加される一方で、効率は依然として同じである。前記周期を4倍に増加させることにより、焦点距離は、0.75ジオプトリの集光度に対応する、4F=133.32cmに増加される一方で、効率は依然として同じである。同じように、より大きな焦点距離(より小さな周光度)を同一の効率で達成することができる。このレンズが、オフにされた場合、集光度はない。表2は、様々な集光度に対する複数のパラメータを示している。3ジオプトリ、1.5ジオプトリ、及び1ジオプトリのレンズの各サブゾーンの半径が、表3乃至5にそれぞれ示されている。これらの構成パラメータを、ここで示される式から計算することができる。これら3つの集光度に対するサブゾーンの境界の間の関係を容易に見ることができる。
【0074】
表2は、個々にアドレス可能なパターン化された複数の電極を用いて達成されることができる集光度のいくつかの例を示している。基本の集光度が3ジオプトリ(F=33.3cm)であり、レンズの開口が10mmであると仮定せよ。表2は、焦点距離が変化されるにつれて回折効率は、同じに留まることを示している。
【表2】

【0075】
前記個々にアドレス可能なパターン化された複数の電極の大きな好都合な点は、これら電極が、同じ回折効率で異なる集光度のための適応可能性を備えた同一のレンズを間違いなく提供することである。
【0076】
この用途では、調整可能な焦点距離は、基本の焦点距離Fと、この基本の焦点距離の倍数とである。このように、調整の分解能もFである。例えば、前記電極が10cmの基本の焦点距離のために設計されているならば、前記調整可能な焦点距離は、10cm、20cm、30cmなどのようになり、無限大までになるだろう。もし他の中間の焦点距離が望まれるならば、より小さな基本の焦点距離を用いることができる。しかしながら、Fが小さい場合、前記複数の電極の特徴的なサイズ(feature size)は、大きなレンズ開口にとって非常に小さくなり、これら電極を現在利用可能な技術で低コストで作成することは、難しい。
【0077】
2:焦点距離の連続的調整
全ての患者と用途とにより用いられることができるように、適応レンズを設計することは、望ましい。このことにより、レンズが所望の範囲で焦点距離を連続的に変化させる能力を有することが必要とされる。この目的のために、焦点距離の連続的な調整を可能とするより一般的な設計方法論が開発された。上述のように、前記パターン化された複数の電極は、特定のサイズの複数のリングの円形のアレイである。各リングは、個々にアドレス可能である。このリングの適当な分解能は、調整される焦点距離範囲により決定される。所望の各焦点距離に対して、全てのゾーンの各サブゾーンのサイズを式(2a)と式(2b)とを用いて計算することができる。各サブゾーンを形成するようにある数のリングを選択することができ、適切な電圧を印可することができる。もし、リングの分解能が十分によいならば、レンズは、焦点距離が変化するにつれて効率が全く大きな変化をせずに、常に高い効率を有することができる。前記パターン化された複数の電極に必要な分解能は、ここで説明されるように、所望のレンズのための最後のいくつかのゾーンのサブゾーンのサイズにより決定される。
【0078】
図7は、適当な分解能を備えた、複数の電極の個々にアドレス可能な円形のアレイを用いた、焦点距離の連続的調節を示している。図7の4つの例は、複数の電極のサブセットの電極間隔をμmで示している。3D、2.5D、2D、及び1Dの集光度のための幾何学的パラメータが、それぞれ、例A、B、C、及びDに示されている。rは、ゾーン境界の半径である。
【0079】
ここでは、焦点距離を〜30cmから無限に連続的に変化させることの例が図示されている。レンズの直径が10mmであり、8値位相変調(8-level phase modulation)が用いられていると仮定せよ。原理を示すために、3D、2.5D、2D、及び1Dの調整可能な集光度のための幾何学的なパラメータが図7に示され、ここで、各ゾーンの境界の半径と、最後の1ゾーン又は2ゾーンに対する各サブゾーンの幅とが、明らかに示されている。これらのレンズのためのより詳細なパラメータを表3乃至7に見出すことができる。特定の集光度に対して、各サブゾーンの幅の変化は、これらレンズのエッジでは非常に小さく、レンズの開口が増加するにつれてこの変化はさらにより小さいことが見られる。比較的高い集光度に対して、各サブゾーンの幅、及び面積は、比較的小さい。この領域で各電極が1μm幅であると仮定せよ。この例では、各サブゾーンの幅は、1μmより大きいため、複数の電極は、1つのサブゾーンを形成するようにともに結合されることができ、各サブゾーンの境界は、最も近い電極の境界まで丸められる(rounded)ことができる。前記電極を結合するとは、これら電極に同じ電圧を印可することを意味する。
【0080】
例えば、2Dの場合に対して(例C)、7個の電極が、ゾーン45の全てのサブゾーンを形成するように結合されることができる。全ての他のサブゾーンは、同様に生成されることができる。丸め誤差により、回折効率に非常に小さい変化が起こされる。他方では、レンズの中心に近い領域では、もし、同様の細い(fine)複数の電極が用いられるならば、位相ステップ(phase step)は、8より多くなることができ、この結果、回折効率が、この領域で増加されることができる。一般には、集光度が調整された場合、回折効率は、ほとんど同一であろう。焦点距離が1m(集光度1D)から無限まで増加するにつれて、各サブゾーンの幅は増加し、全てのサブゾーンは、計算された数の電極を結合させることにより生成されることができる。したがって、この例では、〜30cmから無限までの全ての焦点距離(0から3Dまでの集光度)が調整されることができ、レンズは、この範囲で異なる距離の視野(different distance vision)に対して矯正を必要とする全ての被験者に用いられることができる。
【0081】
上で指摘されたように、中心に近いゾーンは比較的大きな幾何学的サイズを有しているため、前記電極の密度は、この領域では、エッジに近い領域と比較してより小さくなりうる(中心に近い電極のサイズは、他の領域の電極のサイズより大きくなりうる)。もし、この中心に近い領域で電極の同一の密度が保たれるならば、比較的高い位相レベルを得ることができ、回折効率は、増加されるだろう。
【0082】
この目的への他のアプローチは、小さな矩形の画素が用いられる、画素に区画された(pixilated)空間光変調器を用いることである。これら画素は、図5Bに示されている円形の電極からなる2つの層と同様に、基板に垂直に見られた場合、間隔を減少させ、又はなくすように、複数の層にあってもよい。
【0083】
ここでの説明は、多くの特異性を有しているが、これらは、本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではなく、本発明の現在好ましい実施形態のいくつかの例を提供しているだけであるように解釈されるべきである。追加の実施形態は、本発明の範囲内にある。本発明は、眼鏡の使用に限定されない。本発明は、顕微鏡、鏡、双眼鏡、及びユーザが介して見ることができる他の光学装置で用いられることもできる。加えて、当業者に明らかであろうように、本発明は、電気通信、光スイッチ、及び医療装置のような他の分野で有用である。当業者により知られているように、本発明では、所望の波長で所望の位相伝達機能を与えるどんな液晶又は複数の液晶の混合物でも、有用である。適当な電圧を決定し、この適当な電圧を液晶素材に所望の位相伝達機能を生じさせるように印可することは、当該技術では既知である。
【0084】
説明され、又は例示されたあらゆる装置又は構成要素の組合せが、特に銘記しない限り、本発明を実施するために用いられることができる。用いられる電圧を印可する複数のドライバ、電圧のためのコントローラ、及び任意の追加的な光学的構成要素のような追加的な構成要素が当業者に既知であり、不必要な試行を行なうことなく組み込まれる。当業者は、同一の化合物を様々に命名しうることが知られているので、化合物の特定の名前は、例示的であることが意図されている。ここで、化合物の異性体又は光学異性体が特定されないように、例えば化学式で又は化学名で記載された場合、この記載は、個々に説明され、又は任意の組合せで記載された化合物の各異性体又は光学異性体を含むように意図されている。当業者は、具体的に説明されたもの以外の、複数の方法、装置部材、出発物質、及び製造方法が、不必要な試行を行なうことなく、本発明の実施に用いられることができることを理解するだろう。どのようなこのような方法、装置部材、出発物質、及び製造方法の当該技術で既知の機能的な複数の等価物は、本発明に含まれることが意図されている。範囲、例えば厚さの範囲又は電圧範囲が明細書で与えられたときはいつでも、全ての中間の範囲と部分的な範囲(subrange)、及びこの与えられた範囲に含まれる全ての個々の値は、本開示に含まれることが意図されている。
【0085】
ここで用いられているように、「具備する(comprising)」は、「有する(including)」、「含む(containing)」又は「により特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、包括的すなわち限度がなく、追加的な、記載されていない部材、又は方法の工程を除外しない。ここで用いられているように、「からなる(consisting of)」は、請求項の要素(claim element)で特定されていないどんな部材、工程、又は材料も除外する。ここで用いられているように、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的で新規な特徴に実質的に影響を与えない素材又は工程を除外しない。特に、組成の構成要素の記載で、又は装置の部材の記載で、ここでの用語「具備する(comprising)」のどんな記載も、記載された構成要素又は部材から本質的になり、これら記載された構成要素又は部材からなる組成又は部材を包含するように理解される。ここで図を示して説明された本発明は、ここで、具体的に開示されないどんな部材、又は複数の部材、限定、又は複数の限定がなくても適切に実施されることができる。
【0086】
用いられてきた用語と表現とは、説明の用語として用いられており、限定の用語として用いられていない。このような用語と表現との使用に、図示され説明された態様又はこの態様の部分のどんな等価物も除外する意図はない。しかし、請求項に記載され、説明された本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが理解される。このように、本発明は、好ましい実施形態と選択的な態様とにより具体的に開示されてきたが、ここで開示された概念の変更と変形とは当業者に主張される(resorted)ことができることと、このような変更と変形とは、本発明の範囲内であると考えられることとが理解されるべきである。
【0087】
一般には、ここで用いられる用語と語句とは、これら用語と語句との当該技術で認められた意味(art-recognized)を有し、この意味は、標準的な教科書、雑誌参考資料、及び当業者に既知の文脈を参照することにより見つけられることができる。本明細書で言及された全ての特許と刊行物とは、本発明の属する当業者のレベルを示している。
【0088】
当業者は、直ちに、本発明が、対象を実行し、言及された目的と好都合な点、及び本発明に固有の目的と好都合な点とを得るために、よく適合されていることを認めるだろう。装置と方法と、現在好ましい実施形態を代表するとしてここで説明された補足的な方法とは、例示的であり、本発明の範囲の限定として意図されていない。本発明の変化と他の使用とは、当業者が想到し、これらは、本発明の精神に含まれ、請求項の範囲により規定されている。
【0089】
ここで引用された全ての参照文献は、本明細書の開示内と矛盾がない程度で、これにより、参照により組み込まれる。ここで提供されているいくつかの参照文献は、追加的な装置の構成要素、追加的な液晶セルの構成、パターン化された電極の追加的なパターン、追加的な分析法、及び本発明の追加的な使用に関する詳細を提供するように、ここで参照により組み込まれている。
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【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【表5】

【表6−1】

【表6−2】

【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の透明な基板の間に位置する液晶の層と、
MとLとを正の整数として、前記液晶の層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置しているL個の個々にアドレス可能なサブゾーンを各々のゾーンが有している、M個のゾーンを備えているフレネルゾーンでパターン化された電極と、
前記液晶の層と第2の透明な基板の内向きの面との間の導電層とを具備する焦点を調整可能で電気的に制御可能な電気活性なレンズ。
【請求項2】
前記フレネルゾーンでパターン化された電極の個々にアドレス可能な複数のサブゾーンは、同一の水平面にある請求項1のレンズ。
【請求項3】
前記液晶は、ネマチック、コレステリック、電気活性なポリマ、高分子液晶、ポリマ分散型液晶、ポリマ安定化液晶、及び自己組織化非線形超分子構造からなるグループから選択される請求項1のレンズ。
【請求項4】
前記液晶は、ネマチックである請求項3のレンズ。
【請求項5】
前記液晶は、E7である請求項4のレンズ。
【請求項6】
前記透明な基板は、ガラスである請求項1のレンズ。
【請求項7】
前記透明な基板は、プラスチックである請求項1のレンズ。
【請求項8】
前記個々にアドレス可能な複数のサブゾーンと導電層とに電気的接続された電気的制御部をさらに具備する請求項1のレンズ。
【請求項9】
前記電気的制御部は、前記個々にアドレス可能な複数のサブゾーンに正の、又は負の電圧を印可する請求項8のレンズ。
【請求項10】
前記電圧は、マイナス3ボルトとプラス3ボルトとの間である請求項9のレンズ。
【請求項11】
前記電気的制御部に電気的に接続された測距装置をさらに具備する請求項8のレンズ。
【請求項12】
前記パターン化された電極と導電層とは、透明である請求項1のレンズ。
【請求項13】
前記パターン化された電極と導電層とは、インジウムスズ酸化物である請求項12のレンズ。
【請求項14】
前記液晶の層を囲んでいるアライメント層をさらに具備する請求項1のレンズ。
【請求項15】
前記アライメント層は、ポリビニルアルコールである請求項14のレンズ。
【請求項16】
前記アライメント層は、ナイロン6,6である請求項14のレンズ。
【請求項17】
複数の前記透明な基板は、約3ミクロンないし約20ミクロンの間で離間されている請求項1のレンズ。
【請求項18】
前記焦点距離は、正である請求項1のレンズ。
【請求項19】
前記焦点距離は、負である請求項1のレンズ。
【請求項20】
レンズの焦点距離を最初の焦点距離Fの整数倍だけ調整する方法であって、
1対の透明な基板の間に囲まれた液晶の層を有するレンズと、前記液晶の層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置し、M個のゾーンを有し、各ゾーンがL個のサブゾーンを有し、全てでM・L個の個々にアドレス可能な電極を有する、フレネルゾーンでパターン化された電極と、前記液晶の層と第2の透明な基板の内向きの面との間の導電層と、前記電極のゾーンと導電層とに電気的に接続された電気的制御部とを提供することと、
kを1からM・Lの整数として、前記焦点距離をk・Fに調整するように、k個の個々にアドレス可能な電極の各々に同一の電圧を印可することとを具備する方法。
【請求項21】
印可される前記電圧は、マイナス3ボルトとプラス3ボルトとの間である請求項20の方法。
【請求項22】
(a)1対の透明な基板の間に囲まれた液晶の層を有するレンズと、L個の回折レベルを有し、前記液晶の層と第1の透明な基板の内向きの面との間に位置し、個々にアドレス可能な複数のリングの円形のアレイである、フレネルゾーンでパターン化された電極と、前記液晶の層と第2の透明な基板の内向きの面との間の導電層と、前記電極のゾーンと導電層とに電気的に接続された電気的制御部とを提供することと、
(b)所望の焦点距離(f’)を決定することと、
(c)前記フレネルゾーンでパターン化された電極のm番目のゾーンの面積を以下の式を用いて計算することと、
【数1】

ここで、f’は、設計焦点距離、λは、設計波長である。
(d)設計サブゾーンを形成する個々にアドレス可能な複数の電極の数を決定するように、前記m番目のゾーンの計算された面積をL以上の整数で割ることと、
(e)設計サブゾーンの前記数の個々にアドレス可能な複数の電極に同一の電圧を印可することととを具備するレンズの焦点距離を連続的に調整する方法。
【請求項23】
1つ以上の設計焦点距離を決定することと、
全ての設計焦点距離が設計サブゾーンに形成されることを可能とする、前記フレネルゾーンでパターン化された電極の最大のリングのサイズを計算することとを工程(a)の前にさらに具備する請求項22の方法。
【請求項24】
前記レンズと所望の物体との間の距離を決定するように、測距装置を用いて、設計焦点距離を決定することをさらに具備する請求項22の方法。
【請求項25】
印可される前記電圧は、マイナス3ボルトとプラス3ボルトとの間である請求項22の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−47823(P2013−47823A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−223409(P2012−223409)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2007−552257(P2007−552257)の分割
【原出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(591175675)ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド (44)
【Fターム(参考)】