説明

可変タービン

【課題】非常に小さなノズルギャップにおける急激な圧力損失を回避することが可能な可変タービンを提供する。
【解決手段】ハウジング22と、タービンローターと、前記タービンローターの周囲に設けられた流体吸気口と、流体流を加速させるために設けられている前記流体吸気口と前記タービンローターの間に配置された羽根付きノズルからなり、前記ノズルは、ノズルギャップ23を変化させるために設けられた軸方向に調節可能なリング25および前記ノズルギャップを軸方向に規定する壁部19を有し、前記壁部は前記ハウジングおよび前記リングによって規定されるチャンバと前記ノズルをつなげるバランスホール26を有しており、前記ノズルギャップと面する前記壁部の表面18に前記穴によって形成された端部16において、流体流に対して下流側にある穴の部分17に大きな丸みが付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可変タービン、特には過給内燃機関のためのターボチャージャーのための可変タービン、および前記ターボチャージャーとエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可変タービン(VGT)は、タービンローターを取り囲むような渦巻き(スクロール)を形成する駆動流体吸気口と、前記吸気口の渦巻き部とタービンローターの間に配置された羽付き環状ノズルを有している。“移動壁”タイプのVGTにおいては、ノズルギャップは、タービンのパワーを、そして過給内燃機関のためのVGTターボチャージャーの場合には、エンジンの排気マニホルド(これは、排気ブレーキが使用されるとき特に有用である)における背圧をコントロールできるように軸方向に調節されている。
【0003】
図1には、典型的な“移動壁”VGTが示されている。そこには、タービンローター4(この断面図は示されていない)の軸10を含む平面に従う、長手方向の断面図が記載されている。流体吸気口の渦巻き部は、参照番号1によって指示される場所にある。流体を吸気口の渦巻き部からタービンローターへと流すことができる環状ノズルのギャップは参照番号3で、ノズルの羽根は参照番号7で指示されている。羽根は、矢印Aの方向に適切に平行移動するように、軸方向に調節可能なリング5に固定されている。一方向への動きはノズルギャップを減少させ、反対方向への動きはそれを増大させる。調節リングが閉鎖方向へ動かされるとき、羽根のグリッドはタービンハウジング2に設けられている環状中空部11の中に受け入れられ、羽根のグリッドの形状と対応したスロットを有する穴のあいた側板8は、流体の流れがノズルギャップを迂回することを防ぐ。別法では、羽根を軸方向に調節可能なリングの反対側の壁面に固定したり、羽根を受け入れるためのスロットを軸方向に調節可能なリングに設けたりする構成も可能である。調節可能なリングは環状ピストンのように構成されることも可能で、それは移動することおよびノズルギャップに挿入されることが可能なように、環状チャンバ12の内部に保持されている。そして、外部および内部シーリングリングといったシーリング手段13が、調節可能なリングとチャンバ壁部の間に配置されている。必要に応じて、動作システム(不図示)が、調節可能なリングの軸方向の位置をコントロールするために設けられる。作動装置は、空気圧式、水圧式、または電気式でもよく、場合によってはリセットスプリングからなっており、VGTハウジングの内部または外部に配置される。それは、例えば、軸方向に調節可能なリングが動く方向に沿って伸張するロッド(不図示)を通して作動することができ、前記ロッドは環状チャンバ12と対面している側面にあるリング5に取り付けられている。ロッド(もしくは、他の同様なガイドシステム)は、傾斜した羽根に対する流力に起因して調節可能なリングが軸10の周りを回転するのを防ぐことができる。作動装置は、軸方向に調節可能なリングに流体圧力によって加えられたかなりの大きさになり得るリセット力を保持しなければならない。作動装置および作動機構に加えられるリセット負荷を減少させるために、一般的にはバランスホール6が調節可能なリングの軸方向の壁部に設けられており、それは通常、ノズルギャップ3とチャンバ12の間の圧力の均衡をとるための、図2で示されているような、2つの連続した羽根の間に設けられた流体の通り道となる穴である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タービンによってもたらされた排出ガスと関係して、バランスホールの大きさは、往復機関、例えば標準的な内燃機関によって生み出された排気圧力波を適切に伝達するように調整されている。他にも、圧力波は作動機構全体に、およびシールやブッシングといった他の部材に振動摩耗を生み出すと考えられる。さらに、圧力波は作動機構、少なくともあるタイプの作動装置、特に空気圧式および電気式のものに重大な動揺を引き起こす。受容可能なレベルで振動および動揺を維持するために、バランスホールの大きさは比較的大きなものでなければならず、その直径は流体通路の幅の90%以上になる。このようなバランスホールは、好ましくないことに、ノズルギャップを通して流体流に著しい乱れを起こす。ノズルギャップを減少させると、連続する羽根の間の各々の流体通路は狭くなり、流体流が通る穴による乱れが増す。非常に狭いノズルギャップにおいては、ノズルギャップにある残りの流れ領域が、バランスホールが配列している全領域より小さくなる。そのような状況においては、バランスホールは流れにとって大きなシンクとなっており、穴への流体の流れ込みを進展させ、次にバランスホールの下流端部は流体力学的に重大な障害物となる。
【0005】
従来の圧力バランスアレイにおいては、バランスホールが機械的にまたはレーザーによって形成されており、および(流体力学的な見地からして)比較的鋭い端部を有しているのであるが、小さな皿穴がバリを除去するために設けられている。そのようなバランスホール端部の下流部分は流れの分断を引き起こし、それは穴へと続く流体通路の下流において望ましくない圧力損失を、したがって調節可能なリングに加えられるリセット力の減少を導く。この影響は、流体の速度が音速にまで達する小さなノズルギャップおよび流れが細い状況において最も顕著になる。前記状況では、軸方向に調節可能なリングに作用するリセット力が結果として非常に減少し、最終的には反対方向の力になる。
【0006】
図3では、一般的に調節可能なリングおよびそこから作動機構全体に作用するリセット力F(縦軸)がノズルギャップL(横軸)の関数として定性的に表現されている。ノズルギャップが減少するにつれ、リセット力はほぼ全調整範囲において徐々に増大し、ノズルギャップが狭くなると、流体流が通る穴が障害となって力が急減することが観察される。したがって、そのような小さなノズルギャップにおいては、可変ノズルの安全なコントロールは不可能であるので、最小許容ノズルギャップは特定の作動条件のもとで望ましい値よりも高く制限されている。一般的に、従来のシステムのコントロールは、小さなノズルギャップにおいては不満足なものである。したがって、VGT−過給自動車エンジンのターボブレーキ力(エンジンブレーキ力)は、過渡運転条件と同様に制限される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従うことで、すなわち、流体流に面するバランスホールノズルにあるバランスホールの下流端部に大きな丸みをつけることで上記課題は解決される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態に従えば、タービンはガスタービン、特に、過給内燃機関のためのターボチャージャーのタービンであり、ここで、前記ターボチャージャーおよびエンジンは本発明のさらなる特徴となっている。
【0009】
本発明は、付属の図面を参照することで、例として与えられている、好ましいが限定的なものではない実施形態の詳細な説明によってこれより明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に従うVGTは、バランスホールマズルの形状を除いては、前述した従来技術によるものと同様の方法で設計および製造されることが可能である。図4に示されているのは、本発明に従うVGTのノズルギャップ(羽根の傾きに依存)を通した流体の流れラインと平行な平面に従う細部の断面図である。そこにおいては、軸方向に調節可能なリング25が最小ノズルギャップにあることが示されており、および吸気口からタービンローターへの流れが矢印20によって概略的に示されている。バランスホール26は壁部19に設けられており、該壁部の表面18はノズルギャップ23と面している。表面18から穴26の範囲を規定する端部16は円形状をしており、流体を穴へと流す。
【0011】
好ましい実施形態に従うと、どの端部にも丸みがつけられているのではなく、不均一になるように湾曲が設けられている。端部の曲率は、0度(鋭角の端部)から、または乱れにはあまり関係のない領域における最小値から徐々に変化し、例えば流体の下流側の区画において穴の中央部に対して最大となる。この結果、丸みのある区画の形状は流体が流れる方向へと展開する。図5に示されているのは、ノズルギャップ23と面しているリング表面18の部分図である。そこでは、丸みのある部分17を有する羽根27およびバランスホール26が示されており、矢印20は流体の流方向を示している。羽根は続く通路14を規定している。好ましい実施形態によると、穴26にはそれぞれ通路14が設けられており、該穴26は通路を規定する2つの羽根の中央になるように位置している。丸みのある部分である縁部15は、壁部19の表面に、丸みが端部に好ましく沿うような形で形成されている(例えば、放物線または楕円形状)。
【0012】
有用な効果を達成するために、曲率半径Rは、その最大値がある端部部分において、穴の領域を越える流体流の方向における穴の最大幅Sの20%より大きいことが求められる(端数は考慮しない)。図5のVI−VI断面を示す図6を参照すると、寸法Sは実質的に穴の直径であり、そのときそれは円形断面を有することがわかる。図7および図8には、大きな丸み17’を有する好ましい実施形態が示されており、該大きな丸みの縁部15’は流体の流れの下流の方まで伸張している。バランスホール26’は円形断面または他の形状を有することが可能である。独立して、前記穴は調節可能なリング25’の壁部に対して垂直または傾斜した内壁を有することができる(湾曲領域は考慮しない)。可能な実施形態では、その内壁は、流体の流れの方向にある程度傾斜していることも可能である。そうすることで、リセット特性がさらに改善する。図9および図10には、非円形断面を有する傾斜した穴を備えたノズルリングが示されている。
【0013】
穴は、適切な従来の方法によって作られることが可能である。丸みも同様にして作られる。例えば、バランスホールの直径と等しいまたはわずかにそれより小さい直径を有する放射状またはトーラスのカッターを使用する3軸フライス加工によって作られることが可能である。
【0014】
従来技術にあるように、調節可能なリングには羽根が付けられてもよく、または反対側に固定された羽根グリッドの羽根を受け入れるのに適したスロットを有してもよい。本発明には、“移動壁”タイプのVGTに一般的に適用される全ての問題解決策が、適切な変更をもって適用されることが可能である。調節可能なリングは、前述したように、様々なタイプの作動装置によって動かされることが可能である。
【0015】
リングにあるバランスホールの位置およびその寸法は、従来技術としてすでにあるように、静圧がノズルに沿ってタービンの吸入渦巻きに対してはより高く、タービンローターに対してより低いことを考え、リングの背後にあるチャンバにおける望ましい圧力に従って選択される。穴は、(例えば)関係する羽根通路の幅の50〜90%の直径、または非円形断面の場合には同等の寸法を有することが可能である。本発明に従うVGTは大きな利点をもたらす。非常に小さなノズルギャップにおいて穴の障害によって引き起こされる急激な圧力損失が回避される。図11には、本発明に従うノズルギャップの関数であるリセット力の推移が概略的に示してある。力の急激な落下が生じないので(図3と比較)、ノズルギャップを先行技術の値よりもかなり小さい値まで狭くすることが可能であり、よって、例えば、過給内燃機関のためのターボチャージャータービンの場合においては、改善されたコントロール安定性と相まって、より高いブレーキ力および過渡状況におけるより良い性能を達成することができる。
【0016】
さらなる利点は、ノズルを通る流体の圧力損失を減少することができるという点であり、そうすることによって、より効果的にタービンが流体からエネルギーを受け取ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術に従うVGTの長手方向断面図である。
【図2】図1のVGTの軸方向に調節可能なリングをノズルギャップ側から見た略平面図である。
【図3】従来技術に従うバランスホールが設けられた軸方向に調節可能なリングを有するVGTにおける、ノズルギャップの関数である軸方向に調節可能なリングに加えられるリセット力の概略図である。
【図4】本発明に従うVTGの軸方向に調節可能なリングの略断面図である。
【図5】本発明に従うVGTの軸方向に調節可能なリングのノズルギャップ側から見た略平面図である。
【図6】図5の調節可能なリングのVI−VIの略断面図である。
【図7】本発明の別の様態に従うVGTの軸方向に調節可能なリングのノズルギャップ側から見た略平面図である。
【図8】図7の調節可能なリングのVIII−VIIIの略断面図である。
【図9】本発明のさらに別の様態に従うVGTの軸方向に調節可能なリングをノズルギャップ側から見た略平面図である。
【図10】図9における軸方向に調節可能なリングのX−Xの略断面図である。
【図11】本発明に従うVGTにおけるノズルギャップの関数である軸方向に調節可能なリングに加えられるリセット力の概略図である。
【符号の説明】
【0018】
1 渦巻き(スクロール)
2 タービンハウジング
3 ノズルギャップ
4 タービンローター
5 軸方向に調節可能なリング
6 バランスホール
7 羽根
8 側板
10 軸
11 環状中空部
12 環状チャンバ
13 シーリング手段
14 通路
15、15’ 縁部
16 端部
17 丸みのある部分
17’ 大きな丸み
18 壁部の表面
19 壁部
20 流れ方向
22 ハウジング
23 ノズルギャップ
25、25’ 軸方向に調節可能なリング
26、26’ バランスホール
27 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(22)と、タービンローター(4)と、前記タービンローターの周囲に設けられた流体吸気口(1)と、流体流を加速させるために設けられている前記流体吸気口と前記タービンローターの間に配置された羽根付きノズルからなり、
前記ノズルは、ノズルギャップ(23)を変化させるために設けられた軸方向に調節可能なリング(25)および前記ノズルギャップを軸方向に規定する壁部(19)を有し、前記壁部は前記ハウジングおよび前記リングによって規定されるチャンバ(12)と前記ノズルをつなげるバランスホール(26、26’)を有しており、
前記ノズルギャップと面する前記壁部の表面(18)に前記穴によって形成された端部(16)において、流体流に対して下流側にある穴の部分(17、17’)に大きな丸みが付けられていることを特徴とする可変タービン。
【請求項2】
前記端部の最大丸み湾曲部(17、17’)において、その曲率半径(R)は、平均流れ方向(20)におけるバランスホールの最大幅(S)の20%より大きいことを特徴とする請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
流れ方向(20)における丸み湾曲部は、基本的に放物線または楕円形状をしていることを特徴とする請求項1および2に記載のタービン。
【請求項4】
湾曲領域の縁部(15、15’)は、流体の流れ方向に伸ばされていることを特徴とする1から3のいずれか1項に記載のタービン。
【請求項5】
湾曲は、放物線状のカッターを用いた3軸フライス加工によって形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のタービン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のタービンを備えることを特徴とするガスタービン。
【請求項7】
過給内燃機関のターボチャージャーとして使用されることを特徴とする請求項6に記載のガスタービン。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービンを備えることを特徴とする過給内燃機関のためのターボチャージャー。
【請求項9】
請求項8に記載のターボチャージャーを備えることを特徴とする車のための過給内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−69779(P2008−69779A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234878(P2007−234878)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(507304915)イフェコ モトーレンフォアシュンク アクチェンゲゼルシャフト (10)
【Fターム(参考)】