説明

可変デュロメータのリングを有する外科手術レトラクタ

【課題】可変デュロメータの少なくとも1つのリングを有する外科手術レトラクタを提供すること。
【解決手段】近位端と、遠位端とを有する管状部材と、管状部材の近位端に固定される第1のリングと、管状部材の遠位端に固定される第2のリングとを備え、第1のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される、外科手術レトラクタ。一実施形態においては、上記第1のリングおよび第2のリングは、Oリングである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2010年12月21日に出願された米国仮出願第61/425,400号の利益および優先権を主張し、この仮出願の内容全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(背景)
(技術分野)
本開示は、外科手術レトラクタに関し、より詳細には、可変デュロメータの少なくとも1つのリングを有する外科手術レトラクタに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の背景)
外科手術処置が安全かつ効率的に行われることを可能にするために、適切な解剖学的曝露が必要である。解剖学的曝露は、自然のオリフィスの壁を分離するかまたは外科手術切開部の縁を離すように広げることによって達成される。難しい外科手術処置は、適切な退縮(retraction)によって容易にされ得、一方、比較的容易な外科手術処置は、適切な拡張の欠如によってより難しくまたはより危険にさえされ得る。曝露は、正しい切開配置および良く導かれた退縮によって最大にされる。
【0004】
退縮は、いくつかの異なる方法で達成され得る。外科手術創傷退縮の最も一般的な方法は、ハンドヘルドレトラクタの使用による。これらは、金属または熱プラスチックから作られ得、オペレータが拡張力を創傷縁に加えることを可能にし得る。それらは、異なる外科手術処置の要求を満たすために、使い捨てまたは再使用可能であり、様々な形状およびサイズで入手可能である。
【0005】
別のタイプのレトラクタは、フレーム取り付けレトラクタデバイスである。そのようなデバイスは、剛性の円形または馬蹄形フレームから成り、そのフレームに取り外し可能で可動のパドルレトラクタが取り付けられる。デバイスは、手術台に取り付けられて、確実な固定を提供し得る。拡張は、必要な方向に適用され得る。典型的には、そのようなレトラクタは、ステンレス鋼から作られて、再使用のための洗浄および滅菌を容易にする。
【0006】
さらに、様々な外科手術処置は、最小侵襲性方法で行われる。これは、患者の体壁を通って小さい切開部を形成することと、切開によって作られた創傷を保護し外科手術器具の挿入のための通路を提供するために、切開部を通ってアクセスポートを挿入することとを含む。アクセスポートは、概して、向かい合う第1のリングと、第2のリングとを有する可撓性の管状部材を含む。
【0007】
アクセスポートを選ぶ場合、アクセスポートが患者の体壁を完全に通過するのに十分な長さを有することを確実にするために注意がなされなければならない。さらに、アクセスポートは、アクセスポートが体腔の中に遠くに延び過ぎて、外科手術処置を妨げないように選ばれなければならない。しばしば、最少のアクセスポートで大面積の体腔にアクセスすることが必要である。この状況において、外科医は、外科医がアクセスポートを通って外科手術器具を挿入し得る角度によってしばしば制限される。さらに、外科手術処置中、アクセスポートの動きを防ぐために注意がなされなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、貫通された組織の周りにしっかりと安定させられ得るかまたは固定され得る外科手術アクセスポートまたは外科手術レトラクタを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(概要)
外科手術レトラクタが本明細書において開示される。外科手術レトラクタは、近位端と、遠位端とを有する管状部材と、管状部材の近位端に固定される第1のリングと、管状部材の遠位端に固定される第2のリングとを含む。第1のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される。
【0010】
さらに、第1のリングおよび第2のリングは、Oリングであり、可撓性である。管状部材は、スリーブまたはライナーであり、可撓性であり得る。近位リングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される。第2のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される。
【0011】
第1の材料は第1のリングの外周を規定し、第2の材料は第1のリングの内周を規定する。第1のデュロメータは、第2のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し得、一方、第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有し得る。
【0012】
さらに、実施例の実施形態において、第2の材料は、第1のリングの内側管状部分を規定し、第1の材料は、第2の材料の少なくとも一部分を取り囲むことによって、第1のリングの外側管状部分を規定する。他の実施例の実施形態において、第1の材料は、第1のリング内に空洞の内側部分が規定されるように第2の材料と組み合わされる。
【0013】
創傷プロテクタもまた本明細書において開示される。創傷プロテクタは、遠位リングと、近位リングと、近位リングと遠位リングとの間に延びる可撓性スリーブとを含む。
【0014】
外科手術中、流体および固体の交差汚染を防ぐために、外科手術レトラクタと共に用いる可撓性密閉リングもまた提示され、リングは少なくとも2つの材料から成り、第1の材料は第1のデュロメータを有し、第2の材料は第2のデュロメータを有し、第1のデュロメータは該第2のデュロメータよりも大きい。
【0015】
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
近位端と遠位端とを有する管状部材と、
該管状部材の該近位端に固定される第1のリングと、
該管状部材の該遠位端に固定される第2のリングと
を備え、該第1のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される、外科手術レトラクタ。
(項目2)
上記第1のリングおよび上記第2のリングは、Oリングである、上記項目に記載の外科手術レトラクタ。
(項目3)
上記第1のリングおよび上記第2のリングのうちの少なくとも1つは、可撓性である、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目4)
上記管状部材は、スリーブである、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目5)
上記管状部材は、可撓性である、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目6)
上記第2のリングは、上記第1のデュロメータを有する上記第1の材料と上記第2のデュロメータを有する上記第2の材料とを組み合わせることによって形成される、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目7)
上記第1の材料は、上記第1のリングの外周を規定し、上記第2の材料は、上記第1のリングの内周を規定する、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目8)
上記第1のデュロメータは、上記第2のデュロメータよりも大きい、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目9)
上記第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し、一方、上記第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有する、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目10)
上記第1の材料は、上記第2の材料とは異なるエラストマー特性を有する、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目11)
上記第2の材料は、上記第1のリングの内側管状部分を規定し、上記第1の材料は、該第2の材料の少なくとも一部分を取り囲むことによって、該第1のリングの外側管状部分を規定する、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目12)
上記第1の材料は、上記第1のリング内に空洞の内側部分が規定されるように上記第2の材料と組み合わされる、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目13)
上記第1のリングは、複数の可変のデュロメータの部分を含む、上記項目のいずれかに記載の外科手術レトラクタ。
(項目14)
遠位リングと、
近位リングと、
該近位リングと該遠位リングとの間に延びる可撓性スリーブと
を備え、該近位リングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される、創傷プロテクタ。
(項目15)
上記遠位リングおよび上記近位リングは、Oリングである、上記項目に記載の創傷プロテクタ。
(項目16)
上記遠位リングおよび上記近位リングのうちの少なくとも1つは、可撓性である、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目17)
上記遠位リングは、上記第1のデュロメータを有する上記第1の材料と上記第2のデュロメータを有する上記第2の材料とを組み合わせることによって形成される、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目18)
上記第1の材料は、上記近位リングの外周を規定し、上記第2の材料は、上記近位リングの内周を規定する、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目19)
上記第1のデュロメータは、上記第2のデュロメータよりも大きい、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目20)
上記第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し、一方、上記第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有する、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目21)
上記第1の材料は、上記第2の材料とは異なるエラストマー特性を有する、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目22)
上記第2の材料は、上記近位リングの内側管状部分を規定し、上記第1の材料は、該第2の材料を取り囲むことによって、該近位リングの外側管状部分を規定する、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目23)
上記第1の材料は、上記近位リング内に空洞の内側部分が規定されるように上記第2の材料と組み合わされる、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目24)
上記近位リングは、複数の可変デュロメータの部分を含む、上記項目のいずれかに記載の創傷プロテクタ。
(項目25)
外科手術中、流体および固体の交差汚染を防ぐために、外科手術レトラクタと共に用いる可撓性密閉リングであって、該リングは少なくとも2つの材料から成り、第1の材料は第1のデュロメータを有し、第2の材料は第2のデュロメータを有し、該第1のデュロメータは該第2のデュロメータよりも大きい、可撓性密閉リング。
(項目26)
上記リングは、Oリングである、上記項目に記載の可撓性密閉リング。
(項目27)
上記第1の材料は、上記リングの外周を規定し、上記第2の材料は、該リングの内周を規定する、上記項目のいずれかに記載の可撓性密閉リング。
(項目28)
上記第2の材料は、上記リングの内側管状部分を規定し、上記第1の材料は、該第2の材料を取り囲むことによって、該リングの外側管状部分を規定する、上記項目のいずれかに記載の可撓性密閉リング。
(項目29)
上記第1の材料は、上記リング内に空洞の内側部分が規定されるように上記第2の材料と組み合わされる、上記項目のいずれかに記載の可撓性密閉リング。
(項目30)
上記リングは、複数の可変デュロメータの部分を含む、上記項目のいずれかに記載の可撓性密閉リング。
【0016】
(摘要)
外科手術レトラクタは、近位端と、遠位端とを有する管状部材を含み、第1のリングは管状部材の近位端に固定され、第2のリングは管状部材の遠位端に固定される。第1のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される。あるいは、外科手術中、流体および固体の交差汚染を防ぐために、外科手術レトラクタと共に用いる可撓性密閉リングが提示され、リングは少なくとも2つの材料から成り、第1の材料は第1のデュロメータを有し、第2の材料は第2のデュロメータを有し、第1のデュロメータは第2のデュロメータよりも大きい。
【0017】
本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する添付の図面は、説明を参照して見られる場合、本開示を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本開示に従う外科手術レトラクタの斜視図であり、少なくとも1つのリングを例示する。
【図2A】図2Aは、本開示に従う、組織を通って部分的に挿入された、図1の外科手術レトラクタの斜視図である。
【図2B】図2Bは、本開示に従う、組織を通って完全に挿入された、図1の外科手術レトラクタの斜視図である。
【図3A】図3Aは、本開示に従う、組織を通って部分的に挿入された、図1の外科手術レトラクタの断面図である。
【図3B】図3Bは、本開示に従う、組織を通って完全に挿入された、図1の外科手術レトラクタの断面図である。
【図4】図4は、外科手術レトラクタの斜視図であり、本開示の第2の実施形態に従って、リングがスリーブを通って実質的に中ほどに位置を決められる。
【図5】図5は、本開示の第2の実施形態に従う、図4の外科手術レトラクタの断面図であり、スリーブを通って実質的に中ほどに位置を決められるリングを例示する。
【図6】図6は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図6A】図6Aは、本開示に従う、図6の断面図の拡大図である。
【図7】図7は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図7A】図7Aは、本開示に従う、図7の断面図の拡大図である。
【図8】図8は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図8A】図8Aは、本開示に従う、図8の断面図の拡大図である。
【図9】図9は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図9A】図9Aは、本開示に従う、図9の断面図の拡大図である。
【図10】図10は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図10A】図10Aは、本開示に従う、図10の断面図の拡大図である。
【図11】図11は、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図であり、リングが少なくとも2つのデュロメータを有することを例示する。
【図11A】図11Aは、本開示に従う、図11の断面図の拡大図である。
【0019】
本開示の他の特徴は、実施例として本開示の原理を例示する添付の図面に関連して解されると、以下の詳細の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(詳細な説明)
実施形態は、図面を参照してここで詳細に説明され、図面において類似の数字は、いくつかの図の各々において同一かまたは対応する要素を示す。当技術分野において一般的であるように、用語「近位」は、例えば外科医または内科医などのユーザまたはオペレータにより近い、部分または構成要素をいい、一方、用語「遠位」は、ユーザからより遠くに離れている、部分または構成要素をいう。以下の説明において、不必要な詳細で本開示を不明瞭にすることを避けるために、周知の機能または構造は詳細に説明されない。
【0021】
本開示の実施例の実施形態は、外科手術レトラクタまたは外科手術アクセスポートまたは創傷プロテクタを例示し、この場合、少なくとも1つのリングは可変デュロメータの性質を持つ。リングは、複数の形状およびサイズならびに構造の少なくとも2つのデュロメータから成り得る。
【0022】
本開示の実施形態に参照がここで詳細に行われる。本開示の特定の実施形態が説明されるが、それらの説明される実施形態に本開示の実施形態を限定することが意図されないことは理解される。それと反対に、本開示の実施形態を参照することは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の実施形態の精神および範囲内に含まれ得る、代替案、修正形態および均等物をカバーすることが意図される。
【0023】
図1を参照すると、本開示に従う、少なくとも1つのリングを例示する外科手術レトラクタ10の斜視図が提示される。
【0024】
レトラクタ10は、第1のリング14と、第2のリング16とを含み、それらは、管状の部材またはシースまたはライナーまたはスリーブ12に固定される。スリーブ12は、近位端と、遠位端とを有する概して円筒形の構成を有する。スリーブ12は、可撓性であり得るかまたは折りたたみ可能であり得る。第2のリング16は、組織18の切開部20内に挿入されるように構成される。第2のリング16は、患者の体内で安定させられるかまたは固定され(図2A、2Bを参照されたい)、一方、第1のリング14は、患者の外面で安定させられるかまたは固定される(例えば、組織18の切開部20の近く辺りに、図2Bを参照されたい)。
【0025】
第1のリング14および第2のリング16は、弾性材料または可撓性材料から作られるOリングであり得る。第1のリング14および第2のリング16は、切開部の内側リムおよび外側リムまたは周囲の辺りの適切な位置に第1のリング14および第2のリング16を拡張状態に保持するのに十分な硬さのエラストマー医療グレードのポリウレタンからプレフォームされ得る。Oリング材料は、第1のリング14がプレフォームされた構成からその環状の軸の周りに180°にわたり回ることを可能にするのに十分なコンプライアンスをもつ。第1のリング14および第2のリング16は、組織18の切開部20に挿入されるべき正しいOリングを容易に認識するために、白および青などの異なる色で色分けされ得る。
【0026】
スリーブ12は、任意のたわみ性プラスチックフィルム材料から構成され得る。第1のリング14および第2のリング16は、スリーブの遠位端に固定され得る。しかしながら、図1〜図5に示されるように、スリーブ12は、第1のリング14および第2のリング16とスライド可能に協働するか、または第1のリング14および第2のリング16に対して動き得る。いずれかの構成が企図される。構成に関わらず、スリーブ12は、第2のリング16に対して第1のリング14が動くことを可能にする。さらに、外科手術レトラクタ10は、複数の切開部サイズの範囲に適しており、任意のたわみ性プラスチックフィルム材料から容易に製造される。外科手術レトラクタ10はまた、使用時、操作することがかなり容易である。
【0027】
図2Aを参照すると、本開示に従う、組織を通って部分的に挿入された、図1の外科手術レトラクタの斜視図30が提示される。図2Bを参照すると、本開示に従う、組織を通って完全に挿入された、図1の外科手術レトラクタの斜視図40が提示される。
【0028】
スリーブ12はエラストマー特性を有するが、スリーブ12の自然の伸びない状態において第1のリング14および第2のリング16は、自然の距離だけ引き離されている。切開部20の近くの方にリング14を巻くことによって、リング14とリング16との間の距離は減少させられる。図2Aは、組織18の切開部20を通って部分的に挿入されたスリーブ12を示し、一方、図2Bは、組織18の切開部20を通って完全に挿入されたスリーブ12を示し、その結果、第1のリング14は、患者の外面に接し、第2のリング16は患者の内面に接する。
【0029】
リング14およびリング16の直径は、組織18の切開部20に所望される直径よりも大きいので、リング14およびリング16は、2つのリング14と16との間で張力を維持するのに十分な足がかりを有する。この張力は、自然の距離よりも大きい距離で伸ばされ保持された弾性材料によって作られる。多くの実施形態において、スリーブ12が非弾性被覆材料から形成され得ることは理解される。同様の方法で、図6〜図11を参照して下記に説明されるように、リング14およびリング16は、剛体の構成で提供され得るか、または代わりにエラストマー材料から形成され得るか、あるいは少なくとも2つの異なるデュロメータから形成され得る。
【0030】
図3Aを参照すると、本開示に従う、組織を通って部分的に挿入された、図1の外科手術レトラクタの断面図50が提示される。図3Bを参照すると、本開示に従う、組織を通って完全に挿入された、図1の外科手術レトラクタの断面図60が提示される。
【0031】
図3Aおよび図3Bに例示されるように、スリーブ12は、第2のリング16を圧搾して締め付けられた横長の形状にし、第2のリング16を切開部20を通って縦方向に挿入し、創傷の内側エッジの辺りの腹膜内で第2のリング16を拡張させることによって、組織18の切開部20に配置される。図3Bに示されるように、スリーブ12の外側端部分は、第1のリング14において親指および/または複数の指によって把持され、反対の方向に外側に折り返されて、第1のリング14が創傷または切開部20の外側エッジに接するまで第1のリング14にスリーブ12を巻く。しかしながら、ライナー材料の弾性の結果、増加調整装置(incremental adjustment)によっては適応されない任意の縦方向の調整は、第1のリング14と第2のリング16との間の、創傷内のスリーブ12が、それによって、創傷または切開部20のエッジマージン、従って創傷壁と接触するように引かれて、外科手術中、自己保持保護バリヤーを提供し、自己保持バリヤーは、汚染した固体および流体に対して不浸透性である。
【0032】
図4を参照すると、外科手術レトラクタ70の斜視図が提示され、この場合、本開示の第2の実施形態に従って、リングがスリーブを通って実質的に中ほどに位置を決められる。
【0033】
外科手術レトラクタ70は、単一のリング76を有するスリーブ72を含む。リング76は、スリーブ72を通って実質的に中ほどに位置を決められ得る。スリーブ72は、近位端74と、遠位端78とを含み得る。近位端74および遠位端78は、密閉部材であり得る。
【0034】
図5を参照すると、本開示の第2の実施形態に従う、図4の外科手術レトラクタ70の断面図80が提示され、スリーブを通って実質的に中ほどに位置を決められるリングを例示する。
【0035】
図5は、リング76がスリーブ72を係合する仕方を例示し、一方、リング76はスリーブ72の長さの端から端まで動く。リング76は、組織の切開部の上部表面に位置を決められるように構成される。リング76が組織にしっかりと安定させられるかまたは固定されることが想定される。
【0036】
図6〜図11Aを参照すると、本開示に従う、図1〜図5のリングの断面図が提示され、リングが2つのデュロメータを有することを例示する。
【0037】
図6および図6Aのリング90は、第1のデュロメータ92と、第2のデュロメータ94とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。リング90の外周は第1のデュロメータ92を含み、内周は第2のデュロメータ94を含む。
【0038】
図7および図7Aのリング100は、第1のデュロメータ102と、第2のデュロメータ104とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。リング100の上部周囲は第1のデュロメータ102を含み、下部周囲は第2のデュロメータ104を含む。
【0039】
図8および図8Aのリング110は、第1のデュロメータ112と、第2のデュロメータ114とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。第2のデュロメータ114は、第1のデュロメータ112内に含まれる。第2のデュロメータ114は、リング110の全距離に延びる円形であり得る。しかしながら、第2のデュロメータ114がリング110の1つ以上の部分のみを通って延びることが企図される。換言すると、第2の材料は、図1の第1のリング14の内側管状部分を規定し得、第1の材料は、第2の材料の少なくとも一部分を取り囲むことによって、図1の第1のリング14の外側管状部分を規定し得る。
【0040】
図9および図9Aのリング120は、第1のデュロメータ122と、第2のデュロメータ124とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。第1のデュロメータ122および第2のデュロメータ124は、リング120の全長にわたり一部重なり合うかまたは交換可能に混合され得る。
【0041】
図10および図10Aのリング130は、第1のデュロメータ132と、第2のデュロメータ134とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。第1のデュロメータは、リング130の内側のエッジまたは周囲および外側のエッジまたは周囲に位置を決められ、一方、第2のデュロメータ134は、第1のデュロメータ132の間に挟まれる。
【0042】
図11および図11Aのリング140は、第1のデュロメータ142と、第2のデュロメータ144とを含む。第2のデュロメータは、第1のデュロメータよりも大きい場合があり、逆もまた同様である。第2のデュロメータ144は、第1のデュロメータ142内に含まれる。第2のデュロメータ144は、リング140の全距離に延びる十字形であり得る。しかしながら、第2のデュロメータ144がリング140の一部分を通って延びることが企図される。換言すると、第2の材料は、図1の第1のリング14の内側管状部分を規定し得、第1の材料は、第2の材料の少なくとも一部分を取り囲むことによって、図1の第1のリング14の外側管状部分を規定し得る。
【0043】
従って、図6〜図11Aに従って、図1の第1のリング14は、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される。当業者は、様々な形状およびサイズの複数の異なるデュロメータを有する複数の材料を組み合せて、組織18に対する第1のリング14のよりしっかりした把持を提供することを企図し得る。
【0044】
本明細書に説明されるリングが第1のデュロメータおよび第2のデュロメータの全長にわたり、第1のデュロメータおよび第2のデュロメータの取り付けられた部分または取り外された部分を含むこともまた企図される。換言すると、リングは、第2のデュロメータの第2の層の隣に位置を定められる第1のデュロメータの第1の層を含み得、層は、互いに隣に交互に並んだ直立の態様で配置される。従って、第1のリングは、複数の可変デュロメータの部分を含み得、複数の可変デュロメータの部分は、交互に並んだ方式で互いに隣接するかまたは互いに離れて位置を決められる。
【0045】
本明細書に説明されるリングのデュロメータは、40〜100ショアーAの範囲であり得る。例えば、第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し得、一方、第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有し得、逆もまた同様である。もちろん当業者は、膨大な数のデュロメータを有する材料を組み合わせることを企図し得る。好ましい材料はウレタンであるが、シリコーンは取り付けおよび調整後にいくらかの安定性の減損があるが用いられ得る。デュロメータのサイズは、調整のための把持力(gripability)および調整後の安定性の両方に影響を及ぼす。なぜなら、所与のOリング断面直径に対してデュロメータのサイズが大きければ大きいほど、存在する安定性は小さくなるからである。
【0046】
手術時、実施例の実施形態の外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタは、創傷エッジに力を加えて、創傷エッジに虚血性傷害を引き起こすことなく適切な曝露を達成する。外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタは、癌細胞またはさもなければ悪性の細胞による交差感染または接種(seeding)から創傷エッジを保護する。別の利点は、外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタが、1回の使用後に処分され、それによって使用間における洗浄および滅菌の必要を除去することである。さらに、外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタは、創傷または自然の体の開口部における所望の位置に配置することが簡単で、特に、創傷プロテクタとしてデバイスを用いることから得られる利益を無効にすることなく、除去することが容易である。最後に、外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタは、組織に隣接して、より良い、よりしっかりした把持を提供する。なぜなら、外科手術レトラクタまたは創傷プロテクタは、様々な異なる形状およびサイズならびに構成の少なくとも2つのデュロメータから構成されるからである。
【0047】
本開示は、ある特定の実施形態の詳細な説明によって説明され、医学(人間および獣医学)用途に焦点を合わせたが、本開示の実施例の実施形態から同様に利益を得うる多くの他の産業がある。産業の他の領域において様々な修正および代用がなされ得ることは理解される。これらの変形形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるべきであり、またそのような実施形態の均等物を含むべきである。
【0048】
外科手術器具の本体を含む外科手術レトラクタもしくは創傷プロテクタの寸法および形状、または外科手術器具が製造される材料に関して制限があるべきではないことは理解される。サイズ、材料、形状、形態、機能、ならびに動作、組み立ておよび使用の方法における変形形態を含む、本開示の部分に対する最適な寸法的関係が当業者に容易に明らかであり自明であることが考えられ、図面に例示され、本明細書に説明されるものとのすべての均等の関係が本開示によって包含されることが意図されることは理解されるべきである。
【0049】
本開示は、好ましい実施形態に関して特に示され説明されたが、形態および詳細における様々な修正形態が本開示の範囲および精神から逸脱することなく本明細書においてなされ得ることは当業者によって理解される。従って、上記に提案された修正形態(これに限定されないが)などの修正形態は、本開示の範囲内であることが考慮されるべきである。
【符号の説明】
【0050】
10 外科手術レトラクタ
12 スリーブ
14 第1のリング
16 第2のリング
18 組織
20 切開部
50 断面図
70 外科手術レトラクタ
72 スリーブ
74 近位端
76 リング
78 遠位端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端と遠位端とを有する管状部材と、
該管状部材の該近位端に固定される第1のリングと、
該管状部材の該遠位端に固定される第2のリングと
を備え、該第1のリングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される、外科手術レトラクタ。
【請求項2】
前記第1のリングおよび前記第2のリングは、Oリングである、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項3】
前記第1のリングおよび前記第2のリングのうちの少なくとも1つは、可撓性である、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項4】
前記管状部材は、スリーブである、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項5】
前記管状部材は、可撓性である、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項6】
前記第2のリングは、前記第1のデュロメータを有する前記第1の材料と前記第2のデュロメータを有する前記第2の材料とを組み合わせることによって形成される、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項7】
前記第1の材料は、前記第1のリングの外周を規定し、前記第2の材料は、前記第1のリングの内周を規定する、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項8】
前記第1のデュロメータは、前記第2のデュロメータよりも大きい、請求項7に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項9】
前記第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し、一方、前記第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有する、請求項7に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項10】
前記第1の材料は、前記第2の材料とは異なるエラストマー特性を有する、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項11】
前記第2の材料は、前記第1のリングの内側管状部分を規定し、前記第1の材料は、該第2の材料の少なくとも一部分を取り囲むことによって、該第1のリングの外側管状部分を規定する、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項12】
前記第1の材料は、前記第1のリング内に空洞の内側部分が規定されるように前記第2の材料と組み合わされる、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項13】
前記第1のリングは、複数の可変のデュロメータの部分を含む、請求項1に記載の外科手術レトラクタ。
【請求項14】
遠位リングと、
近位リングと、
該近位リングと該遠位リングとの間に延びる可撓性スリーブと
を備え、該近位リングは、第1のデュロメータを有する第1の材料と第2のデュロメータを有する第2の材料とを組み合わせることによって形成される、創傷プロテクタ。
【請求項15】
前記遠位リングおよび前記近位リングは、Oリングである、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項16】
前記遠位リングおよび前記近位リングのうちの少なくとも1つは、可撓性である、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項17】
前記遠位リングは、前記第1のデュロメータを有する前記第1の材料と前記第2のデュロメータを有する前記第2の材料とを組み合わせることによって形成される、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項18】
前記第1の材料は、前記近位リングの外周を規定し、前記第2の材料は、前記近位リングの内周を規定する、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項19】
前記第1のデュロメータは、前記第2のデュロメータよりも大きい、請求項18に記載の創傷プロテクタ。
【請求項20】
前記第1の材料は、ショアーAデュロメータ上で約70〜100の範囲の硬さを有し、一方、前記第2の材料は、ショアーAデュロメータ上で約40〜70の範囲の硬さを有する、請求項18に記載の創傷プロテクタ。
【請求項21】
前記第1の材料は、前記第2の材料とは異なるエラストマー特性を有する、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項22】
前記第2の材料は、前記近位リングの内側管状部分を規定し、前記第1の材料は、該第2の材料を取り囲むことによって、該近位リングの外側管状部分を規定する、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項23】
前記第1の材料は、前記近位リング内に空洞の内側部分が規定されるように前記第2の材料と組み合わされる、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項24】
前記近位リングは、複数の可変デュロメータの部分を含む、請求項14に記載の創傷プロテクタ。
【請求項25】
外科手術中、流体および固体の交差汚染を防ぐために、外科手術レトラクタと共に用いる可撓性密閉リングであって、該リングは少なくとも2つの材料から成り、第1の材料は第1のデュロメータを有し、第2の材料は第2のデュロメータを有し、該第1のデュロメータは該第2のデュロメータよりも大きい、可撓性密閉リング。
【請求項26】
前記リングは、Oリングである、請求項25に記載の可撓性密閉リング。
【請求項27】
前記第1の材料は、前記リングの外周を規定し、前記第2の材料は、該リングの内周を規定する、請求項25に記載の可撓性密閉リング。
【請求項28】
前記第2の材料は、前記リングの内側管状部分を規定し、前記第1の材料は、該第2の材料を取り囲むことによって、該リングの外側管状部分を規定する、請求項25に記載の可撓性密閉リング。
【請求項29】
前記第1の材料は、前記リング内に空洞の内側部分が規定されるように前記第2の材料と組み合わされる、請求項25に記載の可撓性密閉リング。
【請求項30】
前記リングは、複数の可変デュロメータの部分を含む、請求項25に記載の可撓性密閉リング。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図9A】
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【図10】
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【図10A】
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【図11】
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【図11A】
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【公開番号】特開2012−130675(P2012−130675A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270149(P2011−270149)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(501289751)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (320)
【Fターム(参考)】